JP2011225501A - 新規m−ターフェニル化合物及びこれを有する有機発光素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】 T1エネルギーの高いm−ターフェニル化合物とそれを有する有機発光素子を提供する。
【解決手段】 下記一般式[1]で示されるm−ターフェニル化合物を提供する。
【化1】

〔式[1]においてArはナフタレンジイル基、フェナンスレンジイル基、トリフェニレンジイル基、ジベンゾチオフェンジイル基、およびジベンゾフランジイル基からなる群より選ばれる。〕
【選択図】 図1

Description

本発明は新規m−ターフェニル化合物及びこれを有する有機発光素子に関する。
有機発光素子は陽極と陰極と、それら両電極間に配置される有機化合物層とを有する素子である。有機発光素子は、前記各電極から注入させる正孔(ホール)及び電子が有機化合物層内で再結合することで励起子が生成し、励起子が基底状態に戻る際に光が放出される。有機発光素子の最近の進歩は著しく、駆動電圧が低く、多様な発光波長、高速応答性、薄型、軽量の発光デバイス化が可能である。
燐光発光素子は前記有機化合物層中に燐光発光材料を有し、その三重項励起子由来の発光が得られる有機発光素子である。燐光発光素子の発光効率には更なる改善の余地がある。
燐光発光素子の発光層に使用される材料として、例えば以下に示す化合物H01が特許文献1に、化合物H02が特許文献2に記載されている。
特開2009−215333号公報 WO2007/111176パンフレット
特許文献1及び2に開示されている化合物は改善の余地がある。
フェナンスレンを有するH01は最低励起三重項励状態のエネルギー(T1エネルギー)を高く且つLUMO準位を深く(電子親和力を大きく)するために改善の余地がある。またジベンゾチオフェンを有するH02もT1エネルギーを高く且つLUMO準位を深くするために改善の余地がある。
本発明では、T1エネルギーが高くて且つLUMO準位が深い新規なm−ターフェニル化合物を提供することを目的とする。さらにそれを有する有機発光素子により、発光効率が高く駆動電圧の低い優れた有機発光素子を提供することを目的とする。
よって本発明は、下記一般式[1]で示されることを特徴とするm−ターフェニル化合物を提供する。
〔式[1]において、R乃至R26は水素原子または炭素数1乃至4のアルキル基からそれぞれ独立に選ばれる。Arは式[2]中に示すアリーレン基群から選ばれる。〕
〔式[2]において*はm−ターフェニル基との結合部位を表す。〕
本発明によれば、T1エネルギーが高くて且つLUMO準位が深い新規なm−ターフェニル化合物を提供することができる。そしてそれを有する発光効率が高く、駆動電圧の低い有機発光素子を提供することができる。
有機発光素子とこの有機発光素子に接続するスイッチング素子とを示す断面模式図である。
本発明に係るm−ターフェニル化合物を説明する。
本発明に係るm−ターフェニル化合物は下記一般式[1]で示される。
式[1]において、R乃至R26は水素原子または炭素数1乃至4のアルキル基からそれぞれ独立に選ばれる。
炭素数1乃至4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基である。
上記のアルキル基は置換基を有してもよい。例えばフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、フルオレニル基等の炭化水素芳香環基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基等の複素芳香環基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基等の置換アミノ基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基等のアリールオキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基である。
式[1]のArは式[2]中に示すアリーレン基群から選ばれる。
式[2]において*はm−ターフェニル基との結合部位を表す。
式[1]のArで示される部分構造、すなわち式[2]で示されるナフタレン環、フェナンスレン環、トリフェニレン環、ジベンゾチオフェン環およびジベンゾフラン環を、本発明に係る化合物における中心縮環と以下記す。
(本発明に係るm−ターフェニル化合物の性質について)
下記の表1に主な縮環の単体でのT1エネルギー(波長換算値)と、LUMO準位(計算値)を示す。T1エネルギーが480nm以下でなおかつLUMO準位が−0.9eV以下と深い縮環は、本発明に係る化合物における中心縮環として用いられる式[2]で示す縮環である。
また本発明に係る化合物のHOMO及びLUMOは主として中心縮環上に局在している。一般に有機化合物のHOMO及びLUMOは励起やキャリア伝導に深く関与しており、化合物内でそれらが局在する部分には電気エネルギー的に大きな負荷がかかる。従ってHOMO及びLUMOが局在する部分には化学的安定性が求められるため、本発明に係る化合物の中心縮環のように酸化されやすいsp3炭素を持たない縮環が好ましい。
本発明に係る化合物は高いキャリア伝導性を有する。そのため特に発光層ホスト材料として用いると、素子の駆動電圧を低くすることができる。そして本発明に係る化合物の中心縮環は広いπ共役面を持つ縮環である。これに対してベンゼンやチオフェンのような単環の芳香環は好ましくない。
本発明に係る化合物の物性はその中心縮環の物性が反映され、特にT1エネルギー、HOMO準位及びLUMO準位の各物性値で強く反映される。
本発明の化合物はその中心縮環に2つのm−ターフェニル置換基を有する。これは有機発光素子に好ましい。以下に説明する。
有機発光素子では、前記のような縮環をそのまま無置換で用いると、結晶性が高いのでアモルファス膜にならず発光素子に用いることができない。そこで置換基としてアリール基等を使用することが知られている。しかしその際、中心縮環から置換基としてのアリール基へとπ共役が広がると、化合物全体のT1エネルギーは低くなり、中心縮環に特有のT1エネルギーを維持できなくなる。中心縮環と置換アリール基のπ共役の大きさは、それら二つの芳香環、即ち中心縮環と置換アリール環との二面角の大きさでほぼ決まる。そのため二面角を大きくすることができれば両者の間のπ共役を小さく、そして分子としてのT1エネルギーを中心縮環自体のT1エネルギーに近い値にすることができる。これによりT1エネルギーの高い中心縮環を用いた際に、その高いT1エネルギーを維持することができる。
本発明者は中心縮環に置換基としての二つのm−ターフェニル基が2’位で置換していることが重要であることに気付いた。中心縮環と置換ベンゼン環(m−ターフェニルの中央のベンゼン環)の二面角は大きい。m−ターフェニルの置換位置番号を以下に示す。
以下の表2にm−ターフェニル基の各置換位置の比較を、中心縮環がフェナンスレン環である化合物を例に分子軌道計算による構造最適化後のフェナンスレン環と置換ベンゼン環の二面角で行った結果を示す。2’位置換体においてフェナンスレン−フェニル結合に対してオルト位の二つのフェニル基が大きな立体障害基として作用するので、二面角が大幅に大きくなる。このような大きな立体障害の効果は、4’位と5’位の置換位置では得ることができない。従って2’位置換体のT1エネルギーはフェナンスレンの高いT1エネルギーから大きく低下せずに最大となる。一方、4’位置換体ではフェナンスレンからp−ビフェニル部位へのπ共役の広がりが大きくなるので、T1エネルギーの低下が顕著になる。
このような効果はフェナンスレン環以外の表1に示したナフタレン環、トリフェニレン環、ジベンゾチオフェン環、そしてジベンゾフラン環といった中心縮環についても同様である。つまり2’位置換体のT1エネルギーは、中心縮環のこれらの範囲においてその種類に依らず、中心縮環の高いT1エネルギーから大きく低下せずに、全ての位置の置換体の中で最大になると言える。
さらに、本発明に係る化合物はLUMO準位が深い。これは中心縮環のLUMO準位が深いため、それが化合物全体において強く反映されたからである。
(本発明に係るm−ターフェニル化合物を用いた有機発光素子の性質について)
本発明に係る化合物は主として有機発光素子の発光層に用いられる。さらに発光層以外の各層、即ちホール注入層、ホール輸送層、ホール・エキシトンブロッキング層、電子輸送層、あるいは電子注入層の何れの層に用いてもよい。
このとき発光層は複数種の成分から構成されていてよく、それらを主成分と副成分とに分類することができる。主成分とは発光層を構成する全化合物の中で重量比が最大の化合物であり、ホスト材料と呼ぶことができる。副成分とは主成分以外の化合物であり、ゲスト(ドーパント)材料、発光アシスト材料、電荷注入材料と呼ぶことができる。ここでゲスト材料とは、発光層内で主たる発光を担う化合物である。これに対してホスト材料とは、発光層内でゲスト材料の周囲にマトリックスとして存在する化合物であって、主にキャリアの輸送、及びゲスト材料への励起エネルギー供与を担う化合物である。
ホスト材料に対するゲスト材料の濃度は、発光層の構成材料の全体量を基準として、0.01wt%以上50wt%以下であり、好ましくは0.1wt%以上20wt%以下である。さらに好ましくは、濃度消光を防ぐためにゲスト材料の濃度は10wt%以下であることが望ましい。またゲスト材料はホスト材料からなる層全体に均一に含まれてもよいし、濃度勾配を有して含まれてもよいし、特定の領域に部分的に含ませてゲスト材料を含まないホスト材料層の領域を設けてもよい。
本発明に係る化合物は、燐光発光材料をゲスト材料とする発光層のホスト材料に主に用いられる。このとき燐光発光材料の発光色は特に限定されないが、その最大発光ピーク波長が500nm以上530nm以下の範囲にある緑色発光材料であることが好ましい。
一般に燐光発光素子では、ホスト材料のT1から非放射失活による発光効率の低下を防ぐために、ホスト材料のT1エネルギーはゲスト材料である燐光発光材料のT1エネルギーよりも高いことが必要とされている。
本発明に係る化合物はその中心縮環のT1エネルギーが475nm以下であるので、本発明に係る化合物のT1エネルギーは低くとも490nmであり、緑色燐光発光材料のT1エネルギーよりも高い。従ってこれを緑燐光発光層のホスト材料に用いると発光効率が高い有機発光素子を得ることができる。
さらに本発明に係る化合物はLUMO準位が深いので、これを発光層のホスト材料に用いると、素子の駆動電圧を低くすることができる。なぜならLUMO準位が深いと、発光層の陰極側に隣接する電子輸送層またはホールブロッキング層からの電子注入障壁が小さくなるからである。
(本発明に係るm−ターフェニル化合物の例示)
以下に本発明に係るm−ターフェニル化合物の具体的な構造式を例示する。
例示化合物のうちA群に示す化合物は、一般式[1]のArで示される中心縮環が炭化水素芳香環であり、R乃至R26が全て水素原子である化合物であって、化合物が水素原子とsp2炭素のみから構成される。従ってこれらA群の化合物は化学的安定性が非常に高く、それらを発光層ホスト材料に用いた有機発光素子では長寿命化を期待できる。
例示化合物のうちB群に示す化合物は、一般式[1]のArで示される中心縮環がジベンゾチオフェンまたはジベンゾフランであり、R乃至R26が全て水素原子である化合物である。ジベンゾチオフェン及びジベンゾフランのT1エネルギーはArで示される中心縮環の中でも特に高いので、B群に示す化合物のT1エネルギーは440nm未満になり非常に高い。従って緑色燐光発光材料に加え、最大発光波長が440nm以上470nm以下の青色燐光発光材料をゲスト材料とする燐光発光素子のホスト材料にも満足に用いることができる。
例示化合物のうちC群に示す化合物は、一般式[1]のR乃至R26のうち少なくとも一つが炭素数1乃至4のアルキル基である化合物である。m−ターフェニル基に置換するアルキル基によって化合物の溶解性が向上するので、C群に示す化合物は材料のハンドリング向上や塗布プロセスにより有機発光素子を作製する場合に効果的である。また、アルキル基の排除体積効果により化合物のアモルファス膜状態における分子間距離が大きくなるので、C群に示す化合物はキャリア移動度がより低い材料である。そのため発光層内でのキャリア移動度を低くしたい場合に発光層ホスト材料として有用である。
(本発明に係るm−ターフェニル化合物の合成方法)
次に、本実施の形態に係る式[1]で示されるm−ターフェニル化合物の合成方法について説明する。
本発明に係るm−ターフェニル化合物は、下記式[3]のように中心縮環Arのビスピナコールボロン酸エステル化合物と、m−ターフェニルの2’−ハロゲン体とPd触媒によるカップリング反応で合成することができる。
〔式[3]において、Arは一般式[2]中に示すアリーレン基群から選ばれる。Xは臭素またはヨウ素である。Rは水素原子または炭素数1乃至4のアルキル基である。〕
上記反応のうちArとRをそれぞれ適宜選択することで、所望の本発明のm−ターフェニル化合物を合成することができる。
また本発明に係る化合物は、有機発光素子に用いられる場合には直前の精製として昇華精製が好ましい。なぜなら有機化合物の高純度化において昇華精製は精製効果が大きいからである。このような昇華精製においては、一般に有機化合物の分子量が大きいほど高温が必要とされ、この際高温による熱分解などを起こしやすい。従って有機発光素子に用いられる有機化合物は、過大な加熱なく昇華精製を行うことができるように、分子量が1000以下であることが好ましい。
(本発明に係る有機発光素子について)
次に本発明に係る有機発光素子を説明する。
本発明に係る有機発光素子は、互いに対向しあう一対の電極である陽極と陰極とそれらの間に配置される有機化合物層とを少なくとも有する発光素子である。前記有機化合物層のうち発光材料を有する層が発光層である。そして本発明に係る有機発光素子は、前記有機化合物層が一般式[1]で示されるm−ターフェニル化合物を含有する。
本発明に係る有機発光素子としては、基板上に、順次陽極/発光層/陰極を設けた構成のものが挙げられる。他にも順次陽極/ホール輸送層/電子輸送層/陰極を設けた構成のものが挙げられる。また順次陽極/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/陰極を設けたものや順次陽極/ホール注入層/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/陰極を設けたものを挙げることができる。あるいは順次陽極/ホール輸送層/発光層/ホール・エキシトンブロッキング層/電子輸送層/陰極を設けたものを挙げることができる。ただしこれら五種の多層型有機発光素子の例はあくまでごく基本的な素子構成であり、本発明に係る化合物を用いた有機発光素子の構成はこれらに限定されるものではない。例えば、電極と有機化合物層界面に絶縁性層を設ける、接着層あるいは干渉層を設ける、電子輸送層もしくはホール輸送層がイオン化ポテンシャルの異なる二層から構成されるなど多様な層構成をとることができる。
その場合の素子形態としては、基板側の電極から光を取り出すいわゆるトップエミッション方式でも、基板と逆側から光を取り出すいわゆるボトムエミッション方式でも良く、両面取り出しの構成でも使用することができる。
本発明に係るm−ターフェニル化合物は、該発光素子の有機化合物層として何れの層構成でも使用することができるが、発光層として使用することが好ましい。より好ましくは発光層のホスト材料として使用することが好ましく、さらに好ましくは燐光発光材料をゲスト材料とする発光層のホスト材料として使用することが好ましい。
本発明に係るm−ターフェニル化合物が燐光発光層のホスト材料として用いられる場合、ゲスト材料として用いられる燐光発光材料はイリジウム錯体、白金錯体、レニウム錯体、銅錯体、ユーロピウム錯体、ルテニウム錯体等の金属錯体である。なかでも燐光発光性の強いイリジウム錯体であるが好ましい。また、励起子やキャリアの伝達を補助することを目的として、発光層が複数の燐光発光材料を有していてもよい。
以下に本発明の燐光発光材料として用いられるイリジウム錯体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ここで、本発明の化合物以外にも、必要に応じて従来公知の低分子系及び高分子系の化合物を使用することができる。より具体的にはホール注入性化合物あるいは輸送性化合物あるいはホスト材料あるいは発光性化合物あるいは電子注入性化合物あるいは電子輸送性化合物等を一緒に使用することができる。
以下にこれらの化合物例を挙げる。
ホール注入輸送性材料としては、陽極からのホールの注入が容易で、注入されたホールを発光層へと輸送することができるように、ホール移動度が高い材料が好ましい。ホール注入輸送性能を有する低分子及び高分子系材料としては、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(チオフェン)、その他導電性高分子が挙げられる。
主に発光機能に関わる発光材料としては、前述の燐光発光ゲスト材料、もしくはその誘導体以外に、縮環化合物(例えばフルオレン誘導体、ナフタレン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、テトラセン誘導体、アントラセン誘導体、ルブレン等)、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、スチルベン誘導体、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム等の有機アルミニウム錯体、有機ベリリウム錯体、及びポリ(フェニレンビニレン)誘導体、ポリ(フルオレン)誘導体、ポリ(フェニレン)誘導体等の高分子誘導体が挙げられる。
電子注入輸送性材料としては、陰極からの電子の注入が容易で注入された電子を発光層へ輸送することができるものから任意に選ぶことができ、ホール注入輸送性材料のホール移動度とのバランス等を考慮して選択される。電子注入輸送性能を有する材料としては、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、有機アルミニウム錯体等が挙げられる。
陽極材料としては仕事関数がなるべく大きなものがよい。例えば金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム、タングステン等の金属単体あるいはこれらを組み合わせた合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物が使用できる。またポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性ポリマーも使用できる。これらの電極物質は一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用して使用してもよい。また、陽極は一層で構成されていてもよく、複数の層で構成されていてもよい。
一方、陰極材料としては仕事関数の小さなものがよい。例えばリチウム等のアルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、チタニウム、マンガン、銀、鉛、クロム等の金属単体が挙げられる。あるいはこれら金属単体を組み合わせた合金も使用することができる。例えばマグネシウム−銀、アルミニウム−リチウム、アルミニウム−マグネシウム等が使用できる。酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化物の利用も可能である。これらの電極物質は一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用して使用してもよい。また陰極は一層構成でもよく、多層構成でもよい。
本発明に係る有機発光素子において、本発明に係る有機化合物を含有する層及びその他の有機化合物からなる層は、以下に示す方法により形成される。一般には真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング、プラズマあるいは、適当な溶媒に溶解させて公知の塗布法(例えば、スピンコーティング、ディッピング、キャスト法、LB法、インクジェット法等)により薄膜を形成する。ここで真空蒸着法や溶液塗布法等によって層を形成すると、結晶化等が起こりにくく経時安定性に優れる。また塗布法で成膜する場合は、適当なバインダー樹脂と組み合わせて膜を形成することもできる。
上記バインダー樹脂としては、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、尿素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらバインダー樹脂は、ホモポリマー又は共重合体として一種単独で使用してもよいし、二種以上を混合して使用してもよい。さらに必要に応じて、公知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を併用してもよい。
(有機発光素子の用途)
本発明に係る有機発光素子は、表示装置や照明装置に用いることができる。他にも電子写真方式の画像形成装置の露光光源や、液晶表示装置のバックライトなどがある。
表示装置は本発明に係る有機発光素子を表示部に有する。表示部とは画素を有しており、該画素は本発明に係る有機発光素子を有する。表示装置はPC等の画像表示装置として用いることができる。
表示装置はデジタルカメラやデジタルビデオカメラ等の撮像装置の表示部に用いられてもよい。撮像装置は該表示部と撮像するための撮像光学系を有する撮像部とを有する。
図1は有機発光素子を画素部に有する画像表示装置の断面模式図である。本図では二つの有機発光素子と二つのTFTとが図示されている。一つの有機発光素子は一つのTFTと接続している。
図中符号3は画像表示装置、38はスイッチング素子であるTFT素子、31は基板、32は防湿膜、33はゲート電極、34はゲート絶縁膜、35は半導体層、36はドレイン電極、37はソース電極、39は絶縁膜である。また310はコンタクトホール、311は陽極、312は有機層、313は陰極、314は第一の保護層、そして315は第二の保護層である。
画像表示装置3は、ガラス等の基板31上に、その上部に作られる部材(TFT又は有機層)を保護するための防湿膜32が設けられている。防湿膜32を構成する材料は酸化ケイ素又は酸化ケイ素と窒化ケイ素との複合体等が用いられる。防湿膜32の上にゲート電極33が設けられている。ゲート電極33はスパッタリングによりCr等の金属を製膜することで得られる。
ゲート絶縁膜34がゲート電極33を覆うように配置される。ゲート絶縁膜34は酸化シリコン等をプラズマCVD法又は触媒化学気相成長法(cat−CVD法)等により製膜し、パターニングして形成される膜である。パターニングされてTFTとなる領域ごとに設けられているゲート絶縁膜34を覆うように半導体層35が設けられている。この半導体層35はプラズマCVD法等により(場合によっては例えば290℃以上の温度でアニールして)シリコン膜を製膜し、回路形状に従ってパターニングすることで得られる。
さらに、それぞれの半導体層35にドレイン電極36とソース電極37が設けられている。このようにTFT素子38はゲート電極33とゲート絶縁層34と半導体層35とドレイン電極36とソース電極37とを有する。TFT素子38の上部には絶縁膜39が設けられている。次に、コンタクトホール(スルーホール)310は絶縁膜39に設けられ、金属からなる有機発光素子用の陽極311とソース電極37とが接続されている。
この陽極311の上には、発光層を含む多層あるいは発光層単層の有機層312と、陰極313とが順次積層されており、画素としての有機発光素子を構成している。
有機発光素子の劣化を防ぐために第一の保護層314や第二の保護層315を設けてもよい。
尚、スイッチング素子に特に限定はなく、上述のTFT素子の他にMIM素子も用いることができる。
<実施例1>
(例示化合物A04の合成)
以下に示す試薬、溶媒を100mLナスフラスコに投入した。
2,7−ジクロロフェナンスレン:760mg(3.08mmol)
ビス(ピナコラト)ジボロン:1.95g(7.69mmol)
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0):177mg(0.31mmol)
トリシクロヘキシルホスフィン:259mg(0.92mmol)
酢酸カリウム:0.60g(6.11mmol)
1,4−ジオキサン:32mL
この反応溶液を、窒素下、90℃で7時間撹拌を行った。反応終了後、反応溶液を水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた後に濃縮し粗生成物を得た。次にこの粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン)で精製し、中間体PT−Bpinを1.02g得た(収率77%)。
続いて以下に示す試薬、溶媒を200mLナスフラスコに投入した。
2’−ヨード−m−ターフェニル:2.11g(5.92mmol)
PT−Bpin:1.02g(2.37mmol)
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0):137mg(0.12mmol)
トルエン:40mL
エタノール:20mL
30wt%炭酸セシウム水溶液:20mL
この反応溶液を、窒素下、撹拌しながら3時間加熱還流させた。反応終了後、反応溶液に水を加えて撹拌し、析出した結晶をろ別し、水、エタノール、アセトンで洗浄し粗生成物を得た。次にこの粗生成物をクロロベンゼンに加熱溶解後、熱時ろ過し、クロロベンゼン溶媒で再結晶を2回行った。得られた結晶を150℃で真空乾燥後、10−4Pa、340℃の条件下で昇華精製を行い、高純度の例示化合物A04を834mg得た(収率55%)。
得られた化合物の同定は質量分析により行った。
[MALDI−TOF−MS(マトリックス支援イオン化−飛行時間型質量分析)]
実測値:m/z=634.31 計算値:C5034=634.27
また例示化合物A04について、以下の方法でT1エネルギーの測定を行った。
例示化合物A04のトルエン希薄溶液について、Ar雰囲気下、77K、励起波長350nmにおいて燐光スペクトルの測定を行った。得られた燐光スペクトルの第一発光ピークのピーク波長からT1エネルギーを求めると波長換算値で468nmであった。
次に例示化合物A04について、以下の方法でエネルギーギャップの測定を行った。
例示化合物A04をガラス基板上に加熱蒸着し、膜厚20nmの蒸着薄膜を得た。この蒸着薄膜について、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製V−560)を用いて吸光スペクトルを測定した。得られた吸光スペクトルの吸収端を求めると347nmであり、例示化合物A04のエネルギーギャップは3.57eVであった。
さらに例示化合物A04について、以下の方法でイオン化ポテンシャルの測定を行った。
上記のエネルギーギャップの測定に用いた蒸着薄膜を用いて、光電子分光装置AC−3(理研計器株式会社製)によりイオン化ポテンシャルを測定した。測定の結果、例示化合物A04のイオン化ポテンシャルは6.43eVであった。
さらに化合物のLUMO準位はイオン化ポテンシャル値とエネルギーギャップ値の差から見積もることができ、上記のイオン化ポテンシャル値とエネルギーギャップ値から例示化合物A04のLUMO準位を見積もると−2.86eVであった。
<実施例2>
(例示化合物A06の合成)
(1)中間体TRP−Bpinの合成
以下に示す試薬、溶媒を300mLナスフラスコに投入した。
1,2−ジヨードベンゼン:5.40g(16.4mmol)
3−メトキシフェニルボロン酸:5.22g(34.3mmol)
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0):0.70g(0.61mmol)
トルエン:100mL
エタノール:50mL
10wt%炭酸ナトリウム水溶液:50mL
この反応溶液を、窒素下、撹拌しながら6時間加熱還流させた。反応終了後、反応溶液を水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた後に濃縮し粗生成物を得た。次にこの粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘプタン/クロロホルム=1/1)で精製し、1,2−ビス(3−メトキシフェニル)ベンゼンを2.29g得た(収率48%)。
続いて以下に示す試薬、溶媒を300mLナスフラスコに投入した。
1,2−ビス(3−メトキシフェニル)ベンゼン:1.73g(5.98mmol)
ジクロロメタン:108mL
メタンスルホン酸:12mL
この混合溶液に0℃にて2,3−ジクロロ−5,6−シアノ−p−ベンゾキノン(DDQ)を2.03g(8.96mmol)を加えて、0℃で30分間攪拌した後炭酸ナトリウム水溶液を加えて反応を停止した。続いてこの反応溶液を水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた後に濃縮して粗生成物を得た。次にこの粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘプタン/トルエン=1/1)で精製し、2,7−ジメトキシトリフェニレンを1.00g得た(収率58%)。
またH−NMR分析により得られた化合物の同定を行った。
H−NMR(400MHz、CDCl)]
δ 8.58(dd,2H),8.47(d,2H),8.03(d,2H),7.66(dd,2H),7.26(t,2H),4.03(s,6H).
続いて以下に示す試薬、溶媒を100mLナスフラスコに投入した。
2,7−ジメトキシトリフェニレン:800mg(2.77mmol)
ジクロロメタン:40mL
この溶液に0℃にて三臭化ホウ素の1Mジクロロメタン溶液5.83mL(5.83mmol)を加えて、0℃で30分間攪拌した。さらに室温にて6時間攪拌した後メタノールを加えて反応を停止した。得られた白色析出物をろ別し、エタノール/ヘプタン混合溶媒にて加熱分散洗浄して精製し、2,7−ジヒドロキシトリフェニレンを687mg得た(収率95%)。
続いて以下に示す試薬、溶媒を滴下漏斗を備えた100mLナスフラスコに投入した。
2,7−ジヒドロキシトリフェニレン:700mg(2.69mmol)
ジクロロメタン:38mL
ピリジン:1.7mL
この溶液に0℃にて、トリフルオロメタンスルホン酸無水物1.20mL(7.14mmol)とジクロロメタン3mLの混合溶液を5分間で滴下した。さらに0℃にて1時間攪拌した後、水を加えて反応を停止した。続いてこの反応溶液を水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた後に濃縮して粗生成物を得て、さらにエタノール溶媒にて加熱分散洗浄して精製し、中間体TRP−OTfのを1.32g得た(収率94%)。
続いて以下に示す試薬、溶媒を100mLナスフラスコに投入した。
中間体TRP−OTf:833mg(1.49mmol)
ビス(ピナコラト)ジボロン:713mg(3.28mmol)
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0):86mg(0.15mmol)
トリシクロヘキシルホスフィン:126mg(0.45mmol)
酢酸カリウム:439mg(4.47mmol)
1,4−ジオキサン:30mL
この反応溶液を、窒素下、90℃で4時間撹拌を行った。反応終了後、反応溶液を水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた後に濃縮し粗生成物を得た。次にこの粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/酢酸エチル)で精製し、中間体TRP−Bpinを453mg得た(収率63%)。
(2)例示化合物A06の合成
以下に示す試薬、溶媒を100mLナスフラスコに投入した。
2’−ヨード−m−ターフェニル:925mg(2.60mmol)
TRP−Bpin:453mg(0.943mmol)
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0):80mg(69μmol)
トルエン:20mL
エタノール:10mL
30wt%炭酸セシウム水溶液:10mL
この反応溶液を、窒素下、撹拌しながら3時間半加熱還流させた。反応終了後、反応溶液に水を加えて撹拌し、析出した結晶をろ別し、水、エタノール、アセトンで洗浄して粗生成物を得た。次にこの粗生成物をトルエンに加熱溶解後、熱時ろ過し、トルエン溶媒で再結晶を行った。得られた結晶を150℃で真空乾燥後、10−4Pa、360℃の条件下で昇華精製を行い、高純度の例示化合物A06を251mg得た(収率39%)。
得られた化合物の同定を行った結果を以下に示す。
[MALDI−TOF−MS]
実測値:m/z=684.35 計算値:C5436=684.28
H−NMR(400MHz、CDCl)]
δ 8.07(d,2H),8.04(d,2H),7.99(dd,2H),7.57−7.45(m,6H),7.41(dd,2H),7.18−7.00(m,22H).
また例示化合物A06について、実施例1と同様の方法でT1エネルギーの測定を行ったところ、波長換算値で469nmであった。
さらに例示化合物A06について実施例1と同様の方法でエネルギーギャップの測定を行ったところ、吸光スペクトルの吸収端は363nmであり、例示化合物A06のエネルギーギャップは3.42eVであった。
さらに例示化合物A06について実施例1と同様の方法でイオン化ポテンシャルの測定を行ったところ、例示化合物A06のイオン化ポテンシャルは6.34eVであった。
さらに例示化合物A06について実施例1と同様の方法でLUMO準位を見積もると、例示化合物A06のLUMO準位は−2.92eVと見積もられた。
<実施例3>
(例示化合物B01の合成)
以下に示す試薬、溶媒を100mLナスフラスコに投入した。
2,8−ジブロモジベンゾチオフェン:600mg(1.75mmol)
(1,3−ビス[ジフェニルホスフィノ]プロパン)ジクロロニッケル(II):380mg(0.70mmol)
トルエン:24mL
トリエチルアミン:1.46mL
この反応溶液を窒素下にて90℃まで加熱し、4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランを1.53mL(10.5mmol)加えた後、6時間半加熱した。反応溶液を室温まで冷却した後、水を加えて反応を停止し、反応溶液をろ過して不溶物を除去した。ろ液中の生成物をトルエンで抽出し、この抽出液を水で洗浄してから硫酸ナトリウム上で乾燥後、濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン)で精製して中間体S−Bpinを124mg得た(収率16%)。
続いて以下に示す試薬、溶媒を50mLナスフラスコに投入した。
2’−ヨード−m−ターフェニル:245mg(0.688mmol)
S−Bpin:120mg(0.275mmol)
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0):25mg(22μmol)
トルエン:6mL
エタノール:3mL
30wt%炭酸セシウム水溶液:3mL
この反応溶液を、窒素下、撹拌しながら4時間半加熱還流させた。反応終了後、反応溶液を水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた後に濃縮し粗生成物を得た。次にこの粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘプタン/クロロホルム=3/1)で精製し、さらにヘキサン/エタノール混合溶媒で加熱分散洗浄を行った。得られた結晶を150℃で真空乾燥後、10−4Pa、340℃の条件下で昇華精製を行い、高純度の例示化合物B01を120mg得た(収率68%)。
得られた化合物の同定を行った結果を以下に示す。
[MALDI−TOF−MS]
実測値:m/z=640.23 計算値:C4832=640.22
H−NMR(400MHz、CDCl)]
δ 7.75−7.42(m,6H),7.35(d,2H),7.16−7.01(m,22H),6.85(dd,2H).
また例示化合物B01について、実施例1と同様の方法でT1エネルギーの測定を行ったところ、波長換算値で423nmであった。
さらに例示化合物B01について実施例1と同様の方法でエネルギーギャップの測定を行ったところ、吸光スペクトルの吸収端は322nmであり、例示化合物B01のエネルギーギャップは3.85eVであった。
さらに例示化合物B01について実施例1と同様の方法でイオン化ポテンシャルの測定を行ったところ、例示化合物B01のイオン化ポテンシャルは6.49eVであった。
さらに例示化合物B01について実施例1と同様の方法でLUMO準位を見積もると、例示化合物B01のLUMO準位は−2.64eVと見積もられた。
<実施例4>
(例示化合物C02の合成)
以下に示す試薬、溶媒を50mLナスフラスコに投入した。
4,4”−ジメチル−2’−ヨード−m−ターフェニル:1.12g(2.91mmol)
PT−Bpin:500mg(1.16mmol)
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0):67mg(58μmol)
トルエン:20mL
エタノール:10mL
30wt%炭酸セシウム水溶液:10mL
この反応溶液を、窒素下、撹拌しながら5時間加熱還流させた。反応終了後、反応溶液に水を加えて撹拌し、析出した結晶をろ別し、水、エタノール、アセトンで洗浄し粗生成物を得た。次にこの粗生成物をトルエンに加熱溶解後、熱時ろ過し、トルエン溶媒で再結晶を2回行った。得られた結晶を150℃で真空乾燥後、10−4Pa、350℃の条件下で昇華精製を行い、高純度の例示化合物C02を418mg得た(収率52%)。
得られた化合物の同定は質量分析により行った。
[MALDI−TOF−MS(マトリックス支援イオン化−飛行時間型質量分析)]
実測値:m/z=690.45 計算値:C5442=690.33
また例示化合物C02について、実施例1と同様の方法でT1エネルギーの測定を行ったところ、波長換算値で469nmであった。
さらに例示化合物C02について実施例1と同様の方法でエネルギーギャップの測定を行ったところ、吸光スペクトルの吸収端は349nmであり、例示化合物C02のエネルギーギャップは3.55eVであった。
さらに例示化合物C02について実施例1と同様の方法でイオン化ポテンシャルの測定を行ったところ、例示化合物C02のイオン化ポテンシャルは6.40eVであった。
さらに例示化合物C02について実施例1と同様の方法でLUMO準位を見積もると、例示化合物C02のLUMO準位は−2.85eVと見積もられた。
<比較例1>
(T1エネルギー、イオン化ポテンシャル、LUMO準位見積もり値の比較)
下記に示す比較化合物H01乃至H04について、実施例1と同様の方法でT1エネルギーおよびイオン化ポテンシャルの測定を行い、さらにそれらの値からLUMO準位を見積もった。実施例1乃至4の結果と合わせて、結果を表3に示す。
中心縮環が同じフェナンスレン環の構造異性体である例示化合物A04及びC02と比較化合物H01を比較すると、本発明の例示化合物A04及びC02の方がT1エネルギーが高くLUMO準位の見積もり値が深い(絶対値が大きい)。同様に中心縮環がトリフェニレン環である例示化合物A06と比較化合物H03、およびジベンゾチオフェン環である例示化合物B01と比較化合物H02についても、本発明の化合物の方がT1エネルギーが高くLUMO準位の見積り値が深い。また中心縮環がフルオレン環である比較化合物H04を、同じ2’−m−ターフェニル置換基と炭化水素の中心縮環を有する本発明の例示化合物A04、A06及びC02と比較すると、H04はT1エネルギーが低くLUMO準位の見積もり値が浅い。
<実施例5>
本実施例では、基板上に順次陽極/ホール輸送層/発光層/ホールブロッキング層/電子輸送層/陰極が設けられた構成の有機発光素子を以下に示す方法で作製した。
ガラス基板上に、陽極としてITOをスパッタ法にて膜厚120nmで製膜したものを透明導電性支持基板(ITO基板)として使用した。このITO基板上に、以下に示す有機化合物層及び電極層を、10−5Paの真空チャンバー内で抵抗加熱による真空蒸着によって連続的に製膜した。このとき対向する電極面積は3mmになるように作製した。
ホール輸送層(40nm) HTL−1
発光層(30nm) ホスト材料:例示化合物A04、ゲスト材料:Ir−1(10wt%)
ホールブロッキング層(10nm) HBL−1
電子輸送層(30nm) ETL−1
金属電極層1(0.5nm) LiF
金属電極層2(100nm) Al
次に、有機発光素子が水分の吸着によって素子劣化が起こらないように、乾燥空気雰囲気中で保護用ガラス板をかぶせアクリル樹脂系接着材で封止した。以上のようにして有機発光素子を得た。
得られた有機発光素子について、ITO電極を正極、Al電極を負極にして、5.1Vの印加電圧をかけたところ、発光効率が60.8cd/Aで、輝度2000cd/mの緑色発光が観測された。またこの素子においてCIE色度座標は、(x,y)=(0.30,0.63)であった。
<実施例6>
実施例5において、発光層のホスト材料を例示化合物A04に代えて例示化合物A06を使用した他は、実施例5と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例5と同様に評価を行った。結果を表4に示す。
<実施例7>
実施例5において、発光層のホスト材料を例示化合物A04に代えて例示化合物C02を使用した他は、実施例5と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例5と同様に評価を行った。結果を表4に示す。
<比較例2>
実施例5において、発光層のホスト材料を例示化合物A04に代えて比較化合物H01を使用した他は、実施例5と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例5と同様に評価を行った。結果を表4に示す。
<比較例3>
実施例5において、発光層のホスト材料を例示化合物A04に代えて比較化合物H03を使用した他は、実施例5と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例5と同様に評価を行った。結果を表4に示す。
<比較例4>
実施例5において、発光層のホスト材料を例示化合物A04に代えて比較化合物H04を使用した他は、実施例5と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例5と同様に評価を行った。結果を表4に示す。
<実施例8>
本実施例では、基板上に順次陽極/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/陰極が設けられた構成の有機発光素子において、ホール輸送層がイオン化ポテンシャルの異なる二層から構成される素子を以下に示す方法で作製した。
実施例5と同様の方法で作製したITO基板上に、以下に示す有機化合物層及び電極層を、10−5Paの真空チャンバー内で抵抗加熱による真空蒸着によって連続的に製膜した。このとき対向する電極面積は3mmになるように作製した。
ホール輸送層1(13nm) HTL−1
ホール輸送層2(20nm) HTL−2
発光層(40nm) ホスト材料:例示化合物B01、ゲスト材料:Ir−11(10wt%)
ホールブロッキング層(10nm) HBL−1
電子輸送層(30nm) ETL−2
金属電極層1(0.5nm) LiF
金属電極層2(100nm) Al
次に、有機発光素子が水分の吸着によって素子劣化が起こらないように、乾燥空気雰囲気中で保護用ガラス板をかぶせアクリル樹脂系接着材で封止した。以上のようにして有機発光素子を得た。
得られた有機発光素子について、ITO電極を正極、Al電極を負極にして、6.1Vの印加電圧をかけたところ、発光効率が26.5cd/Aで、輝度2000cd/mの青色発光が観測された。またこの素子においてCIE色度座標は、(x,y)=(0.16,0.35)であった。
<比較例5>
実施例8において、発光層のホスト材料を例示化合物B01に代えて比較化合物H02を使用した他は、実施例8と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例8と同様に評価を行った。結果を表5に示す。
以上のように本発明に係るm−ターフェニル化合物は、T1エネルギーが高くLUMO準位が深い新規な化合物であり、有機発光素子に用いた場合、駆動電圧が低くて発光効率の高い発光素子を得ることができる。
3 表示装置
38 スイッチング素子
311 陽極
312 有機層
313 陰極

Claims (8)

  1. 下記一般式[1]で示されることを特徴とするm−ターフェニル化合物。

    〔式[1]において、R乃至R26は水素原子または炭素数1乃至4のアルキル基からそれぞれ独立に選ばれる。Arは式[2]中に示すアリーレン基群から選ばれる。〕

    〔式[2]において*はm−ターフェニル基との結合部位を表す。〕
  2. 乃至R26が全て前記水素原子であることを特徴とする請求項1に記載のm−ターフェニル化合物。
  3. 一対の電極と前記一対の電極の間に配置される有機化合物層とを有する有機発光素子において、前記有機化合物層は請求項1及び2の何れか一項に記載のm−ターフェニル化合物を有することを特徴とする有機発光素子。
  4. 前記有機化合物層は発光層であることを特徴とする請求項3に記載の有機発光素子。
  5. 前記発光層がホスト材料とゲスト材料から構成され、前記ホスト材料が前記m−ターフェニル化合物であることを特徴とする請求項4に記載の有機発光素子。
  6. 前記ゲスト材料が燐光発光材料であることを特徴とする請求項5に記載の有機発光素子。
  7. 前記燐光発光材料がイリジウム錯体であることを特徴とする請求項6に記載の有機発光素子。
  8. 請求項3乃至7の何れか一項に記載の有機発光素子と前記有機発光素子と接続するスイッチング素子とを有する画像表示装置。
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