JP2005062225A - ズームレンズ及びそれを有する画像投射装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】前方側より後方へ順に、負の屈折力を有する第1レンズ群、正の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、負の屈折力を有する第4レンズ群、正または負の屈折力を有する第5レンズ群正の屈折力を有する第6レンズ群を有し、広角端から望遠端へのズーミングに際して少なくとも4つのレンズ群が移動するズームレンズであって、該第1レンズ群の最も前方側の面頂点から前方側主平面位置までの距離をo1、該第1レンズ群の全長をL1、該第6レンズ群は、1以上の正レンズを有し、該1以上の正レンズの材料の平均アッベ数をνd、平均部分分散比をθgFを適切に設定したこと。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はズームレンズに関し、例えば広画角で長いバックフォーカスを有し、照明系との瞳整合性が良好に保たれた、コンパクトなズームレンズであって高精細モバイル液晶プロジェクターに好適なものである。
【0002】
この他本発明はレンズシャッターカメラ、ビデオカメラ、デジタルカメラ等のうち比較的にバックフォーカスの長いカメラ(光学機器)に最適な高い光学性能を有したズームレンズに関する。
【0003】
【従来の技術】
従来より、液晶表示素子等の表示素子を用いて、その表示素子に基づく画像をスクリーン面に投射する液晶プロジェクター(画像投射装置)が種々提案されている。
【0004】
特に、液晶プロジェクターはパソコン等の画像を大画面に投影してみることができる装置として会議およびプレゼンテーション等に広く利用されている。
【0005】
液晶表示素子を3枚使用する3板方式のカラー液晶プロジェクション装置では、液晶表示素子により変調された色光を合成するダイクロイックプリズムおよび偏光板等の素子を配置するスペースを液晶表示素子と投写レンズとの間に設けなければならず、投写レンズに関してある一定長のバックフォーカスを確保することが必要となる。
【0006】
カラー液晶プロジェクターに用いる投影光学系(投写レンズ)としては、
・前記ダイクロイックプリズムに設けている色合成膜の角度依存の影響を極小にする為、また照明系との良好な瞳整合性を確保するために液晶表示素子(縮小)側の瞳が無限遠方にある所謂テレセントリック光学系であること、
・3色の液晶表示素子の絵(画像)をスクリーンに合成投写したとき、パソコンの文字等が二重に見えたりして解像感および品位がそこなわれないように各色の画素を画面の全域にて重ね合わせられなければならない。そのため、投写レンズにて発生する色ずれ(倍率色収差)を可視光広帯域において良好に補正されていること、
・また、投影された画像に関して輪郭部で歪んで見苦しくならないように歪曲収差も良好に補正されていること、
等が要望されている。
【0007】
また最近では、画面の高輝度・画像の高精細化といったニーズの一方で、小型パネル搭載のプロジェクターには機動・携帯性を重視した装置の小型・軽量化が求められている。
【0008】
従来より液晶プロジェクター用の投写レンズとして、拡大側(前方)より順に負・正・正・負・正(もしくは負)・正の屈折力の第1〜第6レンズ群の配列による全体として6つのレンズ群より構成し、このうち所定のレンズ群を適切に移動させてズーミングを行っている6群ズームレンズが提案されている(例えば特許文献1)。
【0009】
この6群ズームレンズは第1および6レンズ群をズーミングの為に固定として広角端〜望遠端へのズーミングに際してレンズ系内部の第2〜第5レンズ群を全て縮小共役側(後方側)へ移動するため、ズーミング時レンズ全長は一定に保たれており、またズーミングの際の歪曲収差と色収差を少なくしたテレセントリック性となっている。
【0010】
この他の従来の液晶プロジェクター用の投写レンズとして、拡大側(前方)より順に負、正、正、負、正、正の屈折力の第1〜第6レンズ群の配列による全体として6つのレンズ群より構成し、このうち所定のレンズ群を適切に移動させてズーミングを行っている6群ズームレンズが提案されている(例えば特許文献2)。この6群ズームレンズは、第1、4及び6レンズ群を固定として広角端から望遠端への変倍に際してレンズ系内部の第2、3及び5レンズ群を移動させるため、レンズ全長が一定に保たれ、変倍時の色収差等の諸収差の変動を抑えたテレセントリック性となっている。
【特許文献1】
特開2001−235679号公報
【特許文献2】
特開2001−108900号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
現在、液晶プロジェクターの更なる小型の要望とともに、特にホームシアター用に大きなメリットとなる近距離投影できること、つまり液晶プロジェクターの広画角化が強く求められている。
【0012】
また投影映像の高輝度化を目的として投影レンズとして明るい大口径比のものが求められている。
【0013】
特開2001−235679号公報で開示されている6群ズームレンズでは、最も拡大側(前方)に正の屈折力のレンズ群が配置されているため、歪曲収差の補正が有利である。しかしながら、前玉径等が大型化するのと、最も縮小側(後方)に付加されている第6レンズ群に屈折率が小さい硝材が選択されているため特に軸外光束に対する収差補正が困難となる傾向があった。
【0014】
本発明は、レンズ系全体の小型化を図りつつ、ズーミングに伴う諸収差を良好に補正し、画面全体にわたり良好なる光学性能を有した液晶プロジェクター用に好適なズームレンズ及びそれを有する画像投射装置の提供を目的とする。
【0015】
この他本発明は、画像情報をフィルム、CCD等の撮像手段面上に形成するビデオカメラ、フィルムカメラ、デジタルカメラ等の光学機器に好適なズームレンズの提供を目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明のズームレンズは、前方より後方へ順に、負の屈折力を有する第1レンズ群、正の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、負の屈折力を有する第4レンズ群、正または負の屈折力を有する第5レンズ群、正の屈折力を有する第6レンズ群を有し、広角端から望遠端へのズーミングに際して少なくとも4つのレンズ群が移動するズームレンズであって、該第1レンズ群の最も前方側の面頂点から前方側主平面位置までの距離をo1、該第1レンズ群の全長をL1、該第6レンズ群は、1以上の正レンズを有し、該1以上の正レンズの材料の平均アッベ数をνd、平均部分分散比をθgF、g、d、F、C線における材料の屈折率を各々ng、nd、nF、ncとし、
νd=(nd−1)/(nF−nC)
θgF=(ng−nF)/(nF−nC) とするとき、
0.00<o1/L1<0.38
−0.015<θgF−(0.6438−0.001682νd)<0.04
の条件式を満足することを特徴としている。
【0017】
請求項2の発明のズームレンズは、前方側より後方へ順に、負の屈折力を有する第1レンズ群、正の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、負の屈折力を有する第4レンズ群、正または負の屈折力を有する第5レンズ群、正の屈折力を有する第6レンズ群を有し、広角端から望遠端へのズーミングに際して少なくとも4つのレンズ群が移動するズームレンズであって、該第1レンズ群の最も前方側の面頂点から前方側主平面位置までの距離をo1、該第1レンズ群の全長をL1、該第5、第6レンズ群は各々1以上の正レンズを有し、これら1以上の正レンズの材料の平均屈折率をN56pとするとき、
0.00<o1/L1<0.38
1.62<N56p<1.85
の条件式を満足することを特徴としている。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1の発明において前記第5レンズ群は1以上の正レンズを有し、該第5レンズ群の1以上の正レンズと前記第6レンズ群の1以上の正レンズの材料の平均屈折率をN56pとするとき、
1.62<N56p<1.85
の条件式を満足することを特徴としている。
【0019】
請求項4の発明は、請求項1、2又は3の発明において前記第1、第6レンズ群はともにズーミングの為には後方の共役面に対して固定であることを特徴としている。
【0020】
請求項5の発明は、請求項1、2、3又は4の発明において前記第2〜第5レンズ群は広角端から望遠端へのズーミングに際していずれも前方側へと移動することを特徴としている。
【0021】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれか1項の発明において広角端における前記第2、第3レンズ群の合成の、結像倍率をβ23wとするとき
0.1<−β23w<1.0
の条件式を満足することを特徴としている。
【0022】
請求項7の発明は、請求項1から6のいずれか1項の発明において広角端における前記第4レンズ群の結像倍率をβ4wとするとき、
1<β4w<5
の条件式を満足することを特徴としている。
【0023】
請求項8の発明は、請求項1から7のいずれか1項の発明において1枚以上の非球面レンズを含むことを特徴としている。
【0024】
請求項9の発明は、請求項1から8のいずれか1項の発明において前記第5レンズ群は、前方から後方に順に、両レンズ面が凹面の負レンズと、2枚以上の正レンズより成ることを特徴としている。
【0025】
請求項10の発明は、請求項1から9のいずれか1項の発明において広角端における全系の焦点距離をfw、前記第6レンズ群の焦点距離をf6とするとき、
1.2<f6/fw<3.0
の条件式を満足することを特徴としている。
【0026】
請求項11の発明は、請求項1から10のいずれか1項の発明において前記第6レンズ群は、1以上の正レンズを有し、該1以上の正レンズの材料の平均屈折率をN6pとするとき、
1.70<N6p<1.85
の条件式を満足することを特徴としている。
【0027】
請求項12の発明は、請求項1から11のいずれか1項の発明において前記第1レンズ群は光軸上移動して、フォーカス調整を行うことを特徴としている。
【0028】
請求項13の発明の画像投射装置は請求項1乃至12のいずれか1項のズームレンズを用いて投影像原画をスクリーン面上に投射していることを特徴としている。
【0029】
請求項14の発明の光学機器は請求項1乃至12のいずれか1項のズームレンズを用いて画像情報を撮像手段面上に形成していることを特徴としている。
【0030】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施形態1のズームレンズを用いた画像投射装置(液晶ビデオプロジェクター)の要部概略図である。図2(A)、(B)は本発明の実施形態1に対応する後述する数値実施例1の数値をmm単位で表わした時の物体距離(第1レンズ群からの距離)2.3mのときの広角端(短焦点距離側)と望遠端(長焦点距離側)における収差図である。
【0031】
図3は本発明の実施形態2のズームレンズを用いた画像投射装置(液晶ビデオプロジェクター)の要部概略図である。図4(A)、(B)は本発明の実施形態1に対応する後述する数値実施例2の数値をmm単位で表わした時の物体距離(第1レンズ群からの距離)2.8mのときの広角端(短焦点距離端)と望遠端(長焦点距離端)における収差図である。
【0032】
図5は本発明の実施形態3のズームレンズを用いた画像投射装置(液晶ビデオプロジェクター)の要部概略図である。図6(A)、(B)は本発明の実施形態1に対応する後述する数値実施例3の数値をmm単位で表わした時の物体距離(第1レンズ群からの距離)2.3mのときの広角端(短焦点距離端)と望遠端(長焦点距離端)における収差図である。
【0033】
図7は本発明の実施形態4のズームレンズを用いた画像投射装置(液晶ビデオプロジェクター)の要部概略図である。図8(A)、(B)は本発明の実施形態1に対応する後述する数値実施例4の数値をmm単位で表わした時の物体距離(第1レンズ群からの距離)2.3mのときの広角端(短焦点距離端)と望遠端(長焦点距離端)における収差図である。
【0034】
図9は本発明の実施形態5のズームレンズを用いた画像投射装置(液晶ビデオプロジェクター)の要部概略図である。図10(A)、(B)は本発明の実施形態1に対応する後述する数値実施例5の数値をmm単位で表わした時の物体距離(第1レンズ群からの距離)2.1mのときの広角端(短焦点距離端)と望遠端(長焦点距離端)における収差図である。
【0035】
図1、図3、図5、図7、図9の実施形態1〜5における画像投射装置ではLCDの原画(被投影画像)をズームレンズ(投影レンズ、投写レンズ)PLを用いてスクリーン面S上に拡大投影している状態を示している。
【0036】
Sはスクリーン面(投影面)、LCDは液晶パネル(液晶表示素子)等の原画像(被投影画像)である。スクリーン面Sと原画像LCDとは共役関係にあり、一般にはスクリーン面Sは距離の長い方の共役点(第1共役点)で拡大側(前方側)に、原画像LCDは距離の短い方の共役点(第2共役点)で縮小側(後方側)に相当している。尚、ズームレンズを撮影系として用いるときは、スクリーン面S側が物体側、厚画像LCD側が撮像面となる。
【0037】
GBは色合成プリズムや偏光フィルター、そしてカラーフィルター等のガラスブロックである。
【0038】
ズームレンズPLは接続部材(不図示)を介して液晶ビデオプロジェクター本体(不図示)に装着されている。ガラスブロックGB以降の液晶表示素子LCD側はプロジェクター本体に含まれている。
【0039】
L1は負の屈折力の第1レンズ群、L2は正の屈折力の第2レンズ群、L3は正の屈折力の第3レンズ群、L4は負の屈折力の第4レンズ群、L5は正又は負の屈折力の第5レンズ群、L6は正の屈折力の第6レンズ群である。
【0040】
各実施形態では広角端から望遠端へのズーミング(変倍)に際して矢印のように第2レンズ群L2、第3レンズ群L3、第4レンズ群L4そして第5レンズ群L5を拡大側である第1共役点側(スクリーンS側)へ独立に移動させている。ズーミングの為には、第1レンズ群L1、第6レンズ群L6は固定である。又、第1レンズ群L1を光軸上移動させてフォーカスを行っている。尚、フォーカスは表示パネルLCDを移動させて行っても良い。
【0041】
絞りは第4レンズ群L4と第5レンズ群L5との間に設けている、各レンズ面には反射防止用の多層コートが施されている。
【0042】
図2、図4、図6、図8、図10の収差図においてGは波長550nm、Rは波長610nm、Bは波長450nmでの収差を示し、S(サジタル像面の倒れ)、M(メリジオナル像面の倒れ)はどちらも波長550nmでの収差を示す。FはFナンバーである。ωは半画角である。
【0043】
次に各実施形態のズームレンズの特徴について説明する。
【0044】
第1レンズ群L1の最も前方側の面頂点から前方側主平面位置までの距離をo1第1レンズ群L1の全長をL1、第6レンズ群L6は1以上の正レンズを有し、1以上の正レンズの材料の平均アッベ数をνd、平均部分分散比をθgF(第6レンズ群L6が1枚の正レンズより成るときは、該正レンズの材料のアッベ数をνd、部分分数比をθgFとする)g、d、F、C線における材料の屈折率を各々ng,nd,nF,nCとし、
νd=(nd−1)/(nF−nC)
θgF=(ng−nF)/(nF−nC)とするとき、
0.00<o1/L1<0.38 (1)
−0.015<θgF−(0.6438−0.001682νd)<0.04(2)
の条件式を満足している。
【0045】
負の屈折力のレンズ群が先行するネガティブリード型のズームレンズの構成により、広画角化および長いバックフォーカスを確保するといった特徴を引き出している。反面高変倍化が難しい点に対しては、ズーミングにおける可動成分を4成分(4つのレンズ群)とすることによりコンパクトな光学系を実現している。条件式(1)は第1レンズ群L1の主平面位置に関する規定である。条件式(1)の下限を超えるとレンズ全長等、光学系全体をコンパクトに設計できるメリットはあるものの、歪曲などの軸外収差の補正が困難となる。逆に上限を超えると収差補正の面では有効であるが前玉径およびレンズ全長が大型化するため好ましくない。条件式(2)は第6レンズ群L6を構成する正レンズの材料について、固有の部分分散比(θgF)とアッベ数から算出されるnormal−line(K7−F2を結んだ標準硝材ライン)値との差を規定するものであり、所謂異常分散度と呼ばれる特性をあらわしている。条件式(2)下限を超えると特に短波長(青紫)側の倍率色収差の補正が困難となる。条件式(2)を満足する硝子材としては例えば(株)オハラ社の材料では、屈折率が高いフリント系列の、Ba(バリウム)・Ti(チタン)系が適用できる。
【0046】
第5レンズ群L5と第6レンズ群L6は各々1以上の正レンズを有し、これら1以上の正レンズの材料の平均屈折率をN56Pとするとき、
1.62<N56p<1.85 (3)
の条件式を満足している、
条件式(3)は、主に絞りから縮小共役側に配置される正レンズの材料に関する屈折率の条件を規定するものである。レトロフォーカスタイプを用いると屈折力が非対称配置となる為に内向性コマ・歪曲収差が多く発生する。条件式(3)はこのときの収差を上手く補正するためのものである。第5・第6レンズ群L5、L6などの縮小共役側に配置される正レンズの材料に条件式(3)を満足する硝材を選択することにより、内向性コマや歪曲収を良好に差補正するとともにペッツバール条件の劣化を防止している。
【0047】
第1・第6レンズ群L1,L6はともにズーミングに際して、縮小共役面に対して固定とし、全ズーム範囲でレンズ全長を不変としている。これにより投写レンズの堅牢性を確保しズーミング時、外径の大きな第1レンズ群L1が固定されているため重量バランス等の変化が少なく機構面で有利に作用するようにしている。
【0048】
各実施形態において、主たる変倍を担うのは第2レンズ群L2と第4レンズ群L4である。そこで、第2レンズ群L2と第3レンズ群L3の合成レンズ群の広角端における結像倍率をβ23wとするとき、
0.1<−β23w<1.0 (4)
の条件式を満足している。
【0049】
条件式(4)は、第2・第3レンズ群L2,L3の合成レンズ群の結像倍率を等倍以下で使用することを表しており、下限を超えるとレンズ全長が長くなる等光学系全体のコンパクト化への妨げとなる。逆に上限を超えると光学系全体のコンパクト化には有利な構成となるが、ズーミング時の収差変動が大きくなる傾向を示し望ましくない。
【0050】
広角端における第4レンズ群L4の結像倍率をβ4wとするとき、
1<β4w<5 (5)
の条件式を満足している。
【0051】
条件式(5)は、第4レンズ群L4の結像倍率を規定したものである。下限を超えると、第4レンズ群L4の屈折力が小さくなりペッツバールの条件が劣化して像面湾曲が大きくなったり所望のバックフォーカスを確保できなくなる。更にズーミング時の移動量が増加することによる収差変動が大きくなったり、レンズ群間隔が縮小される等、機構面からも問題が生じてくる。逆に上限を超えると、負の屈折力が大きくなりすぎ必要以上のバックフォーカス用のスペースが生まれるなど好ましくない。
【0052】
前述のように、第4レンズ群L4は拡大倍率にて作用するため、ズーミングに際して縮小共役側から拡大共役側に移動することによって増倍作用をする。前述の増倍作用によって、広角端から望遠端へのズーミング時、ピント面がより長い方向にずれてしまうのを、縮小倍率で作用する第3レンズ群L3が拡大共役側に移動することで補正している。第5レンズ群L5は、第3レンズ群L3内に存在する絞りが拡大共役側に移動することによるズーミング時の瞳・収差変動を抑えるために第3レンズ群L3と同じ拡大共役側に移動している。したがって、第2〜第5レンズ群は広角端から望遠端へのズーミングに際して全て拡大共役側へと移動する。
【0053】
また、投影系としての高機能化の際に発生する諸収差の劣化等の弊害を低減するために、投写レンズPLの内部に少なくとも1枚の非球面レンズを採用している。このときの非球面はガラス成形によるもの、または薄い樹脂などを成形してなるハイブリッド非球面等を選ぶことができる。解像度の目標と、非球面の敏感度によっては、プラスチック成形による非球面レンズとしてもよい。除去しようとする収差にもよるが、主に軸外諸収差を良好に補正するため第1レンズ群L1、第5レンズ群L5または第6レンズ群L6といった絞り面からなるべく遠い面に非球面を採用するのが効果的である。
【0054】
第5レンズ群L5は、拡大側(前方側)から順に、1枚の両レンズ面が凹面の負レンズと、2枚以上の正レンズにより構成している。これは、軸上光線の高さが最も小さくなる位置に強い負の屈折力を持ったレンズを配置する為のものであり、これにより効率良くペッツバール和を小さくしている。また、正レンズは絞りから縮小共役側に配置された負レンズで跳ね上げられた光線を緩やかに屈曲させて良好なテレセントリック性能を持たせなければならないので少なくとも2枚以上で構成している。又、非点収差の発生を抑える目的で、好ましくは絞り面に向かってコンセントリックな形状とし、硝材の屈折率は条件式(3)で述べたように高い材料を用いている。
【0055】
広角端における全系の焦点距離をfw、第6レンズ群L6の焦点距離をf6とするとき、
1.2<f6/fw<3.0 (6)
の条件式を満足している。
【0056】
尚、広角端と望遠端とは変倍用レンズ群が機構上、光軸方向に移動可能な範囲の両端に位置したときのズーム位置をいう。
【0057】
第6レンズ群L6を像面近傍に付加することにより、第1から第5レンズ群L1〜L5の合成屈折力を弱める作用をし、高画角化および大口径化に有利な作用をするようにしている。条件式(6)の下限をこえると第6レンズ群L6の屈折力が大きくなりすぎ、歪曲および内向性コマフレア等が大きくなる。また逆に上限をこえると第6レンズ群L6の屈折力が小さくなりすぎ、第1から5レンズ群L1〜L6の屈折力を弱める効果が少なくなり、高性能化の効果がうすれてくるので好ましくない。また、硝材に関しては第5レンズ群L5の正レンズと同様、屈折率がなるべく高い材料が望ましい。
【0058】
第6レンズ群L6を構成する1以上の正レンズの材料の平均屈折率(1つのレンズのときは該レンズの材料の屈折率)をN6pとするとき、
1.70<N6p<1.85 (7)
の条件式を満足している。
【0059】
条件式(7)の下限を超えると、主に歪曲および内向性コマなどが劣化するため好ましくない。
【0060】
また、拡大側の投写距離に応じたフォーカス機構は第1レンズ群L1で担うことによって、最も簡易的な機構で光学系を実現している。
【0061】
尚、収差補正及び装置全体の小型化を図る為には前述の条件式(1)〜(7)の数値範囲を次の如く設定するのが良い、
0.1<o1/L1<0.33 (1a)
−0.01<θgF−(0.6438−0.001682νd)<0.03(2a)
1.65<N56p<1.8 (3a)
0.2<−β23w<0.8 (4a)
1.4<β4w<4.5 (5a)
1.4<f6/fw<2.5 (6a)
1.72<N6p<1.84 (7a)
次に各実施形態毎の具体的な特徴について説明する。
【0062】
図1の実施形態1では、第1レンズ群L1を、拡大共役側より順に、負レンズ、負レンズ、正レンズの3枚レンズ構成とし、拡大共役寄りに主平面を配置している。これにより、レンズ全長のコンパクト化を容易にしている。また、最も拡大共役側のレンズを負レンズとすることで見かけの瞳位置を、より縮小共役側に配置して、これにより前玉径の小型化を容易にしている、
第2レンズ群L2は、主たる変倍用のレンズ群としての役割を担っており、大きな屈折力が与えられている。この為、正レンズには高屈折率の硝材を用いてペッツバール和およびズーミング時の球面収差等の収差の変動を小さくしている。大口径比のズームレンズで高空間周波数で高いレスポンスが要求されると許容錯乱径が小さくなり、焦点深度が浅くなるため、中間像高等での像面湾曲および非点収差が大きいと解像感が急激に劣化する。このため各実施形態では前述の如く第2レンズ群L2を構成して、ペッツバール和が小さくなるようにしている。
【0063】
これと、可視光領域の広帯域にて良好に倍率色収差を補正するといった両観点から正レンズには、La(ランタン)系重フリント材を用いている。
【0064】
第4レンズ群L4は、第2レンズ群L2で確保できなかった変倍比を補う役割を担っており、所謂副変倍レンズ群である。第4レンズ群L4は1枚の負レンズで構成されており、変倍全域に関して第4レンズ群L4の結像倍率は等倍以上であり広角端から望遠端へのズーミングに際して第2および3レンズ群L2、L3の移動と同じ拡大共役側へ移動している。
【0065】
第5レンズ群L5は、拡大共役側に強い負の屈折力を与えている。この強い負の屈折力により、ペッツバール和を小さく設定している。さらに主平面位置を縮小共役側に配置して、良好なテレセントリック性能およびバックフォーカスを十分長く確保している。
【0066】
第6レンズ群L6は、1枚の両レンズ面が凸面の正レンズで構成している。第6レンズ群L6には適当な(条件式(6)による)屈折力が与えられることによって、第1から第5レンズ群L1〜L5の合成屈折力を弱める作用をし、高画角化および大口径化に有利な作用をしている。第6レンズ群L6は絞り面から遠い位置に配置している為歪曲などの軸外収差に影響を及ぼす。この為、正レンズの材料の屈折率Ndが、Nd=1.81と高い屈折率を有するTi(チタン)系重フリント材を使用している。この重フリント材は条件式(2)によれば0.015と大きな(短波長光を多く屈折させる)異常分散度を有しており、通常補正が困難となる画面周辺領域に関する短波長(青紫)側の倍率色収差を良好に補正できるといった効果を有する。また、前述のように屈折率が1.81と高いため歪曲・内向性コマおよびペッツバール条件などの収差補正面でも有利に作用している。
【0067】
以下実施形態2〜5については実施形態1と異なる構成を中心に述べる。
【0068】
図3の実施形態2では、第1レンズ群L1を、拡大側より順に、負レンズ、負レンズ、正レンズの3枚レンズ構成とし、このうち2番目の負レンズに(株)オハラ社製のFSL5(商品名)を使って倍率色収差などを良好に補正している。実施形態2では、さらなる倍率色収差の改善のために(株)オハラ社製のFPL51(商品名)などの異常分散性が高い硝材を採用しても良い。
【0069】
第6レンズ群L6は、両レンズ面が凸面の単一の正レンズで構成しており、その材料の屈折率Ndは、Nd=1.76と、高い屈折率を有するTi(チタン)系重フリント材を使用している。この重フリント材も条件式(2)によれば0.014と比較的大きな(短波長光を多く屈折させる)異常分散度を有しており、特に通常補正が困難となる画面周辺領域に関する短波長側の倍率色収差を良好に補正できるといった効果を有する。その他の点については前述の実施形態1と略同じである。
【0070】
図5の実施形態3では、第6レンズ群L6は両レンズ面が凸面の単一の正レンズで構成している。このときの正レンズは実施形態1、2と異なり、材料はLa(ランタン)系の重フリント材を使っている。条件式(2)の値は−0.004と負の値をとる。そのため先の実施形態1・2で示したTi(チタン)系重フリント材とは逆の振る舞いを示すため短波長(青紫)側の倍率色収差の補正をする観点上は好ましくないが、条件式(3)に示す第5〜6レンズ群L5,L6を構成する正レンズの材料の平均屈折率がN56p=1.76と高いため主に歪曲・内向性コマなどの収差補正面の方で有利に作用する。その他の点については実施形態1略同じである。
【0071】
図7の実施形態4では、第5レンズ群L5は弱い負の屈折力を有している。前述のように、第5レンズ群L5の最も拡大共役側には強い屈折力の負レンズが配置されることが好ましく、特にペッツバール和を効率よく補正するために第5レンズ群L5は負の屈折力にて構成している。その他の点に関しては、実施形態1と略同じである。
【0072】
図9の実施形態5では、第1レンズ群L1の最も拡大共役側の負レンズの縮小共役側の面に非球面を採用することで、歪曲などの軸外諸収差を効率的に補正している。実施形態5では、前記非球面を用いて実施形態3をさらに広画角化している。その他の点については、前述の実施形態3と略同じである。
【0073】
各実施形態について最大像高における倍率色収差特性を図11に示す。横軸は波長、縦軸は最大像高における倍率色収差値を表しており、主波長はいずれも550nmである。構成など異なる実施形態間の比較であるため一概にはいえないが、この図によれば、条件式(2)の値の大小は倍率色収差2次スペクトル成分に少なからず影響を与えていることが判る。
【0074】
以下に実施形態1〜5のズームレンズのに各々対応する数値実施例
1〜5を示す。各数値実施例においてiは拡大側(前方側)からの光学面の順序を示し、riは第i番目の光学面(第i面)の曲率半径、diは第i面と第i+1面との間の間隔、niとνiはそれぞれd線に対する第i番目の光学部材の材質の屈折率、アッベ数を示す。fは焦点距離、FNOはFナンバーである。ωは半画角である。
【0075】
θgfiは第i番目の面を構成する材料の部分分数比をあらわしている。
【0076】
また数値実施例1、3、4、5の最も縮小側の2つの面と数値実施例2の最も縮小側の8つの面は、色分解プリズム、フェースプレート、各種フィルター等に想到するガラスブロックGBを構成する面である。
【0077】
またkを離心率、A、B、C、Dを非球面係数、光軸からの高さhの位置での光軸方向の変位を面頂点を基準にしてxとするとき、非球面形状は、
x=(h2/r)/[1+[1−(1+k)(h/R)2]1/2]+Ah4+Bh6+Ch8+Dh10
で表示される。但しrは曲率半径である。
【0078】
なお、例えば「e−Z」の表示は「10−Z」を意味する。
【0079】
前述の各条件式1〜7と数値実施例1〜5における諸数値との関係を表1に示す。
【0080】
【外1】
【0081】
【外2】
【0082】
【外3】
【0083】
【外4】
【0084】
【外5】
【0085】
【表1】
【0086】
図12は本発明の画像投射装置の実施形態の要部概略図である。
【0087】
同図は前述したズームレンズを3板式のカラー液晶プロジェクターに適用し複数の液晶表示素子に基づく複数の色光の画像情報を色合成手段を介して合成し、投射レンズでスクリーン面上に拡大投射する画像投射装置を示している。図12においてカラー液晶プロジェクター1はR、G、Bの3枚の液晶パネル5B、5G、5GからのRGBの各色光を色合成手段としてのプリズム2で1つの光路に合成し、前述したズームレンズより成る投影レンズ3を用いてスクリーン4に投影している。
【0088】
図13は本発明の光学機器の実施形態の要部概略図である。本実施形態ではビデオカメラ、フィルムカメラ、デジタルカメラ等の撮像装置を含む光学機器に撮影レンズとして前述したズームレンズを用いた例を示している。
【0089】
図13においては被写体9の像を撮影レンズ8で感光体7に結像し、画像情報を得ている。
【0090】
【発明の効果】
本発明によれば、レンズ系全体の小型化を図りつつ、ズーミングに伴う諸収差を良好に補正し、画面全体にわたり良好なる光学性能を有した液晶プロジェクター用に好適なズームレンズ及びそれを用いた画像投射装置を達成することができる。
【0091】
この他本発明によれば画像情報をフィルム、CCD等の撮像手段面上に形成するビデオカメラ、フィルムカメラ、デジタルカメラ等の光学機器に好適なズームレンズを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1のズームレンズを用いた画像投射装置の要部概略図
【図2】本発明の数値実施例1のズームレンズをmm単位で表わしたときの物体距離2.3mのときの収差図
【図3】本発明の実施形態2のズームレンズを用いた画像投射装置の要部概略図
【図4】本発明の数値実施例2のズームレンズをmm単位で表わしたときの物体距離2.8mのときの収差図
【図5】本発明の実施形態3のズームレンズを用いた画像投射装置の要部概略図
【図6】本発明の数値実施例3のズームレンズをmm単位で表わしたときの物体距離2.3mのときの収差図
【図7】本発明の実施形態4のズームレンズを用いた画像投射装置の要部概略図
【図8】本発明の数値実施例4のズームレンズをmm単位で表わしたときの物体距離2.3mのときの収差図
【図9】本発明の実施形態5のズームレンズを用いた画像投射装置の要部概略図
【図10】本発明の数値実施例5のズームレンズをmm単位で表わしたときの物体距離2.1mのときの収差図
【図11】本発明の数値実施例1〜5における最大像高の倍率色収差の説明図
【図12】本発明の画像投射装置をカラー液晶プロジェクターに適用したときの要部概略図
【図13】本発明の光学機器の実施形態の要部概略図
【符号の説明】
L1 第1レンズ群
L2 第2レンズ群
L3 第3レンズ群
L4 第4レンズ群
L5 第5レンズ群
L6 第6レンズ群
ASP 非球面
LCD 液晶表示装置(像面)
GB 硝子ブロック(色合成プリズム)
ΔS Sagittal像面の倒れ
ΔM Meridional像面の倒れ
1 液晶プロジェクター
2 色合成手段
3 投射レンズ
4 スクリーン
5(5B、5G、5R) 液晶パネル
6 撮像装置
7 撮像手段
8 撮影レンズ
9 被写体
Claims (14)
- 前方より後方へ順に、負の屈折力を有する第1レンズ群、正の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、負の屈折力を有する第4レンズ群、正または負の屈折力を有する第5レンズ群、正の屈折力を有する第6レンズ群を有し、広角端から望遠端へのズーミングに際して少なくとも4つのレンズ群が移動するズームレンズであって、該第1レンズ群の最も前方側の面頂点から前方側主平面位置までの距離をo1、該第1レンズ群の全長をL1、該第6レンズ群は、1以上の正レンズを有し、該1以上の正レンズの材料の平均アッベ数をνd、平均部分分散比をθgF、g、d、F、C線における材料の屈折率を各々ng、nd、nF、ncとし、
νd=(nd−1)/(nF−nC)
θgF=(ng−nF)/(nF−nC) とするとき、
0.00<o1/L1<0.38
−0.015<θgF−(0.6438−0.001682νd)<0.04
の条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。 - 前方より後方へ順に、負の屈折力を有する第1レンズ群、正の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、負の屈折力を有する第4レンズ群、正または負の屈折力を有する第5レンズ群、正の屈折力を有する第6レンズ群を有し、広角端から望遠端へのズーミングに際して少なくとも4つのレンズ群が移動するズームレンズであって、該第1レンズ群の最も前方側の面頂点から前方側主平面位置までの距離をo1、該第1レンズ群の全長をL1、該第5、第6レンズ群は各々1以上の正レンズを有し、これら1以上の正レンズの材料の平均屈折率をN56pとするとき、
0.00<o1/L1<0.38
1.62<N56p<1.85
の条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。 - 前記第5レンズ群は1以上の正レンズを有し、該第5レンズ群の1以上の正レンズと前記第6レンズ群の1以上の正レンズの材料の平均屈折率をN56pとするとき、
1.62<N56p<1.85
の条件式を満足することを特徴とする請求項1のズームレンズ。 - 前記第1、第6レンズ群はともにズーミングの為には後方の共役面に対して固定であることを特徴とする請求項1、2又は3のズームレンズ。
- 前記第2〜第5レンズ群は広角端から望遠端へのズーミングに際していずれも前方側へと移動することを特徴とする請求項1、2、3又は4のズームレンズ。
- 広角端における前記第2、第3レンズ群の合成の、結像倍率をβ23wとするとき
0.1<−β23w<1.0
の条件式を満足することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項のズームレンズ。 - 広角端における前記第4レンズ群の結像倍率をβ4wとするとき、
1<β4w<5
の条件式を満足することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項のズームレンズ。 - 1枚以上の非球面レンズを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項のズームレンズ。
- 前記第5レンズ群は、前方から後方に順に、両レンズ面が凹面の負レンズ、と2枚以上の正レンズより成ることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項のズームレンズ。
- 広角端における全系の焦点距離をfw、前記第6レンズ群の焦点距離をf6とするとき、
1.2<f6/fw<3.0
の条件式を満足することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項のズームレンズ。 - 前記第6レンズ群は、1以上の正レンズを有し、該1以上の正レンズの材料の平均屈折率をN6pとするとき、
1.70<N6p<1.85
の条件式を満足することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項のズームレンズ。 - 前記第1レンズ群は、光軸上移動して、フォーカス調整を行うことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項のズームレンズ。
- 請求項1乃至12のいずれか1項のズームレンズを用いて投影像原画をスクリーン面上に投射していることを特徴とする画像投射装置。
- 請求項1乃至12のいずれか1項のズームレンズを用いて画像情報を撮像手段面上に形成していることを特徴とする光学機器。
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