JP2004189696A - 光学活性6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ラセミ体の5,5’−置換−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体を光学活性な2級アルコールとのリン酸エステルに誘導し、光学分割する。それを水素化分解して、光学活性5,5’−置換−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体を合成する。さらに、上記光学活性5,5’−置換−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体を脱アルキル化して6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオールを製造する。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、不斉合成反応の配位子、該配位子の原料、および光学活性化合物を合成するための光学分割剤として有用な、光学活性6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体の製造方法ならびに該誘導体の原料物質として利用される光学活性5,5’−置換−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体およびその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光学活性6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体は、不斉合成反応の配位子およびその不斉配位子の原料並びに光学活性化合物を合成するための光学分割剤として有用である。たとえば、6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオールと水素化リチウムアルミニウムとから得られる還元剤は、アルキルアリールケトンの不斉還元剤として有効であることが知られている。(非特許文献1参照)
これらの光学活性6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体の製造方法に関しては以下(A)、(B)の方法が知られている。
(A)光学活性な6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体の前駆体を製造した後、誘導する方法
(1)光学活性な置換基を持つフェノール化合物を不斉グリニヤールカップリングさせて、光学活性なビフェニル骨格を合成し、その置換基を還元等の数工程によりメチル基に誘導する方法。(非特許文献2参照)
(2)ビフェニル化合物と光学活性なジオールとのエーテル化により、光学活性なビフェニル骨格を合成し、その後、有機亜鉛試薬によるアルキル化反応により誘導する方法。(非特許文献3参照)
しかし、これらのキラルなビフェニル骨格を合成してから誘導する方法は工程数が多く、操作が煩雑である。
【0003】
(B)6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体のラセミ体から、光学活性体を分離する方法。
(1)ラセミ体の6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体をクロマトグラフィーにより離する方法
たとえば、光学活性なカラムを用いたクロマトグラフィーによる方法が知られている。(非特許文献4参照)
しかしながら、多量の溶媒を必要とする等の理由により、大量に合成するには適さない。
【0004】
(2)ラセミ体の6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体をジアステレトピックな塩に誘導して分離する方法
▲1▼光学活性なアミンを用いて包接化合物を形成させることにより、分離する方法(特許文献1参照)が知られている。
この方法は、光学活性なアミンが高価であるだけでなく、目的とする2種のキラル体化合物の、一方の光学活性体しか一度には分離できない。両方の光学活性体を得るためには、再度、反対の立体配置を持つアミンと包接化合物を生成させる必要があるという問題点がある。
【0005】
▲2▼ラセミ体の6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体をリン酸ジエステルに変換した後に、光学活性アミンと塩を形成させることにより分離する方法(非特許文献5参照)が知られている。
この方法も、目的とする6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体の、一方の光学活性体しか一度には分離できない。両方の光学活性体を得るためには、再度、異なるアミンを用いて塩を形成させる事が必要である。
【0006】
そして、これらの方法に用いるラセミ体を製造するための方法として、対応するフェノール化合物の酸化的カップリング反応により合成する方法が、原料の入手の容易さ等の理由により一般的である。しかし、この酸化的カップリング反応は、原料となるフェノール化合物の水酸基のオルト位およびパラ位に起こる反応であり、本発明の対象となる6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体のようなパラ位が非置換のフェノール化合物のカップリング反応により得られる化合物を合成する際には、収率が悪いという問題点があった。すなわち、目的とするオルト位同士がカップリングした生成物だけでなく、パラ位同士でカップリングした化合物や、オルト位とパラ位がカップリングした化合物、更にはカップリング生成物に更にもう1分子のフェノールがカップリングした三量体や、それ以上のオリゴマーが生成するという問題点があった。また、酸化カップリングによらない合成法も知られている(非特許文献6参照)が、工程数が多く、収率が低いという問題点がある。 このように、従来の技術では、本願発明の5,5’位が非置換の6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体のラセミ体を合成する方法も、更に、そのラセミ体を光学分割する方法も満足できるものではなかった。
【0007】
なお、5,5’位がメチル基で置換された6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体である、5,5’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体に関しては、酸化カップリング反応によりラセミ体の5,5’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体を合成し、これを光学分割する方法(非特許文献7)が知られている。しかし、5,5’位位にメチル基のような容易に除去することが困難な置換基がある場合には、この化合物を更に修飾することが困難であるという問題点がある。
【0008】
一方、5,5’位に置換基のない6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体では5位および/または、5’位に更に修飾による機能化を行うことが可能であるという点で有用である。たとえば、クロロメチル化されたポリスチレン樹脂を反応させることにより、不斉合成用の配位子として回収再利用が容易な光学活性6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体化合物を作ることが可能である事が知られている。(非特許文献1)
【0009】
【特許文献1】
特開平10−45648号公報
【非特許文献1】
Suda, Hiroshi; Kanoh, Shigeyoshi; Umeda, Nobuhiro; Ikka, Masahiko; Motoi, Masatoshi. Chem. Lett. (1984), (6), 899-902.
【非特許文献2】
Moorlag, Henk; Meyers, A. I. Tetrahedron Lett. (1993), 34(44), 6993-6.
【非特許文献3】
Tuyet, Tran Mai Thi; Harada, Toshiro; Hashimoto, Kazuyuki; Hatsuda, Masanori; Oku, Akira. J. Org. Chem. (2000), 65(5), 1335-1343.
【非特許文献4】
Kaida, Yuriko; Okamoto, Yoshio. Bull. Chem. Soc. Jpn. (1993), 66(8), 2225-32.
【非特許文献5】
Kanoh, Shigeyoshi; Tamura, Nobuyuki; Motoi, Masatoshi; Suda, Hiroshi. Bull. Chem. Soc. Jpn. (1987), 60(6), 2307-9.
【非特許文献6】
Y.Sugii; H.Shindo,薬学雑誌 54, 829-844 (1934)
【非特許文献7】
Alexander, John B.; Schrock, Richard R.; Davis, William M.; Hultzsch, Kai C.; Hoveyda, Amir H.; Houser, Jeffrey H. Organometallics (2000), 19(18), 3700-3715.
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記の通り、従来公知の方法によれば、不斉合成反応の配位子の原料として有用な光学活性な6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体を工業的に製造するには、収率や操作の複雑さの点で充分でない場合があった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく光学活性な6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体の製造方法について鋭意研究を重ねた結果、新規な光学活性5,5,’−置換−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体が、これを脱アルキル化することにより、工業的に有利に光学活性な6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体を製造できることを見出し、本発明を完成した。本発明は、不斉合成反応の配位子およびその不斉配位子の原料並びに光学活性化合物を合成するための光学分割剤として有用な光学活性な6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体を工業的に有利に製造する方法、およびその原料物質として利用される光学活性5,5’−置換−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体およびその製造法を提供するものである。
【0012】
すなわち、本発明の要旨は、下記一般式(1−1)及び/又は(1−2)で表される光学活性5,5’−置換−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体を脱アルキル化することを特徴とする下記一般式(2−1)及び/又は(2−2)で表される光学活性6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体の製造方法に存する。
【0013】
【化5】
【0014】
(一般式(1−1)及び(1−2)中、R1は、炭素数1〜20の、置換基を有してもよい炭化水素基であって、各R1は同じでも異なっていても良い。R2は水素原子、炭素数1〜20の、置換基を有してもよい炭化水素基、炭素数1〜10の、置換基を有してもよいアルコキシ基、またはハロゲン原子であって、各R2は同じでも異なっていても良い。R3は炭素数3〜20で2級または3級の、置換基を有してもよいアルキル基であって、各R3は同じでも異なっていても良い。Meはメチル基を表す。)
【0015】
【化6】
【0016】
(一般式(2−1)及び(2−2)中、R2は式(1−1)及び(1−2)におけるR2と同一である、水素原子、炭素数1〜20の、置換基を有してもよい炭化水素基、炭素数1〜10の、置換基を有してもよいアルコキシ基、またはハロゲン原子であって、各R2は同じでも異なっていても良い。R4は水素原子、または式(1−1)及び(1−2)中のR1である、炭素数1〜20の、置換基を有してもよい炭化水素基であって、各R4は同じでも異なっていても良い。)
また、本発明は、6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体を工業的に有利に製造するための反応原料として利用される、一般式(1−1)及び(1−2)で表される光学活性5,5’−置換−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体に存する。
【0017】
更には、下記(a)〜(d)の工程により製造されることを特徴とする光学活性置換−5,5’−置換−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体の製造方法に存する。
(a) (i)下記式(3)で表されるラセミ体の5,5’−置換−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体化合物と、(ii)三塩化リン、および(iii)光学活性2級アルコールから誘導される、リン原子を含む環状構造を有するホスファイト化合物を、
(b) 酸化してリン酸エステルに誘導した後に、
(c) 再結晶により光学分割して光学活性体を調製し、
(d) それを水素化分解する
【0018】
【化7】
【0019】
(一般式(3)中、R1は、炭素数1〜20の、置換基を有してもよい炭化水素基であって、各R1は同じでも異なっていても良い。R2は水素原子、炭素数1〜20の、置換基を有してもよい炭化水素基、炭素数1〜10の、置換基を有してもよいアルコキシ基、またはハロゲン原子であって、各R2は同じでも異なっていても良い。R3は炭素数3〜20で2級または3級の、置換基を有してもよいアルキル基であって、各R3は同じでも異なっていても良い。Meはメチル基を表す。)
【0020】
【発明の実施の形態】
<式(2−1)及び(2−2)の化合物の製造方法>
本発明の製造方法においては、式(1−1)及び/又は(1−2)の化合物から式(2−1)及び/又は(2−2)の化合物を得る。
以下、式(1−1)及び(1−2)を合わせて式(1)、式(2−1)及び(2−2)を合わせて式(2)ということがある。
【0021】
具体的には例えば式(1)の化合物を酸触媒等により脱アルキル化反応を行うことにより、式(2)の化合物を製造することができる。
<反応原料<式(1)の化合物の説明>>
【0022】
【化8】
【0023】
式(1)中、R1は炭素数1〜20の、置換基を有してもよい炭化水素基である。炭素数は1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。なお、本発明において置換基を有してもよい炭化水素基の炭素数とは、炭化水素基の炭素数と置換基の炭素数とを合計した炭素数である。
炭化水素基としてはアルキル基、アリール基、アラルキル基が挙げられるが、原料化合物の入手が容易である点でアルキル基が好ましい。特に好ましい炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、第3ブチル基、または第3アミル基が挙げられる。
置換基としてはアルコキシ基、カルボアルコキシ基、ジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基等が挙げられる。アルコキシ基の炭素数は通常1〜10、カルボアルコキシ基の炭素数は通常2〜10であって2〜4が好ましく、ジアルキルアミノ基の炭素数は通常2〜10である。
原料化合物の合成が容易であるため、置換基はない方が好ましい。
【0024】
また、各R1はそれぞれ異なっていても良いが、原料化合物の合成が容易であるため同一であるのが好ましい。
R2は水素原子、炭素数1〜20の、置換基を有してもよい炭化水素基、炭素数1〜10の、置換基を有してもよいアルコキシ基、またはハロゲン原子である。
炭化水素基の炭素数は1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。アルコキシ基の炭素数は1〜5が好ましい。なお、本発明において置換基を有してもよいアルコキシ基の炭素数とは、炭化水素基の炭素数と置換基の炭素数とを合計した炭素数である。
【0025】
炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基が挙げられるが、原料化合物の入手が容易である点でアルキル基が好ましい。これらの中でも、水素、メチル基、メトキシ基、塩素またはフッ素がより好ましい。各R2はそれぞれ異なっていても良いが、原料化合物の合成が容易であるため同一であるのが好ましい。
R3は炭素数3〜20の2級または3級の、置換基を有してもよいアルキル基である。
本発明においてはビフェニルの5の位置(R3の置換位置)に分岐アルキル基を有することにより、該位置の脱アルキル化反応を容易にしたものである。脱離が容易な点で、R3は、2級のアルキル基よりも3級のアルキル基の方が好ましい。すなわち、化合物(1)からの化合物(2)の製造は、酸触媒等により脱アルキル化反応を行うことにより、容易に可能である。
R3の炭素数は3〜7がより好ましく、3または4が更に好ましい。脱アルキル化反応により生成する、R3に由来する生成物の分子量が小さい方が、目的生成物からの分離が容易なためである。
【0026】
R3としては具体的にはイソプロピル基、s−ブチル基、第3ブチル基、第3アミル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、シクロペンチル基が好ましく、イソプロピル基、第3ブチル基、第3アミル基がより好ましく、第3ブチル基が最も好ましい。各R3はそれぞれ異なっていても良いが、反応条件の設定や生成物の分離の煩雑さがない点で、同一であるのが好ましい。
【0027】
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、以下式(3−1)〜(3−22)のような化合物が挙げられる。(下記式には(S)体の構造が記載されているが、対応する(R)体も含む)
【0028】
【化9】
【0029】
【化10】
【0030】
また、式(1)で表される化合物の中でも、前記式(2)で表される化合物を容易に合成できる原料化合物として、下記一般式(4−1)及び/又は(4−2)(以下、一般式(4−1)及び(4−2)を合わせて式(4)ということがある。)で表される光学活性置換5,5’−ジターシャリーブチル−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール化合物があげられる。
【0031】
すなわち、脱アルキル化反応により前記一般式(2)で表される化合物を合成する際に、R3が2級のアルキル基である場合に比べて3級のアルキル基の方が脱離させやすいという利点がある。
また、R1に2級のアルキル基が存在する前記式(2)で表される化合物を目的とする場合にR3が2級のアルキル基であると、脱アルキル化反応の際にR3だけを選択性良く脱アルキル化することが困難であるため、R3として3級のアルキル基が優れている。さらに、3級アルキル基の中でも、ターシャリーブチル基は安価なイソブテンを対応するフェノール化合物と反応させることにより合成が可能であると言う点で優れている。
【0032】
【化11】
【0033】
式(4−1)及び(4−2)中、R1およびR2は式(1)の規定と同一である。すなわち、R1は炭素数1〜20の、置換基を有しても良い炭化水素基である。
炭素数は1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。置換基を有しても良い炭化水素基の炭素数とは、炭化水素基の炭素数と置換基の炭素数とを合計した炭素数である。
【0034】
炭化水素基としてはアルキル基、アリール基、アラルキル基が挙げられるが、原料化合物の入手が容易である点でアルキル基が好ましい。特に好ましい炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、第3ブチル基、または第3アミル基が挙げられる。
置換基としてはアルコキシ基、カルボアルコキシ基、ジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基等が挙げられる。アルコキシ基の炭素数は通常1〜10、カルボアルコキシ基の炭素数は通常2〜10であって2〜4が好ましく、ジアルキルアミノ基の炭素数は通常2〜10である。原料化合物の合成が容易であるため、置換基はない方が好ましい。また、各R1はそれぞれ異なっていても良いが、原料化合物の合成が容易であるため同一であるのが好ましい。
【0035】
R2は水素原子、炭素数1〜20の、置換基を有してもよい炭化水素基、炭素数1〜10の、置換基を有してもよいアルコキシ基、またはハロゲン原子である。炭化水素基の炭素数は1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。アルコキシ基の炭素数は1〜5が好ましい。
炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基が挙げられるが、原料化合物の入手が容易である点でアルキル基が好ましい。これらの中でも、水素、メチル基、メトキシ基、塩素またはフッ素がより好ましい。各R2はそれぞれ異なっていても良いが、原料化合物の合成が容易であるため同一であるのが好ましい。
【0036】
式(4)で表される、好ましい化合物の具体例としては、R1がtBu基のものとしては、3,3’,5,5’−テトラ−ターシャリーブチル−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール、3,3’,5,5’−テトラ−ターシャリーブチル−4,4’,6,6’−テトラメチルメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール、4,4’−ジクロロ−3,3’,5,5’−テトラ−ターシャリーブチル−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール、4,4’−ジフルオロ−3,3’,5,5’−テトラ−ターシャリーブチル−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール、4,4’−ジメトキシ−3,3’,5,5’−テトラ−ターシャリーブチル−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオールの光学活性体が挙げられる。
【0037】
R1がイソプロピル基のものとしては、3,3’−ジイソプロピル−5,5’−ジターシャリーブチル−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール、3,3’−ジイソプロピル−5,5’−ジターシャリーブチル−4,4’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール、3,3’−ジイソプロピル−4,4’−ジクロロ−5,5’−ジターシャリーブチル−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール、3,3’−ジイソプロピル−4,4’−ジフルオロ−5,5’−ジターシャリーブチル−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール、3,3’−ジイソプロピル−4,4’−ジメトキシ−5,5’−ジターシャリーブチル−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオールの光学活性体が挙げられる。
【0038】
R1がメチル基のものとしては、5,5’−ジターシャリーブチル− 3,3’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール、5,5’−ジターシャリーブチル− 3,3’,4,4’,6,6’−ヘキサメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール、4,4’−ジクロロ−5,5’−ジターシャリーブチル− 3,3’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール、4,4’−ジフルオロ−5,5’−ジターシャリーブチル− 3,3’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール、4,4’−ジメトキシ−5,5’−ジターシャリーブチル−3,3’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール、の光学活性体が挙げられる。
【0039】
より好ましい化合物としては、3,3’,5,5’−テトラ−ターシャリーブチル−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール、3,3’,5,5’−テトラ−ターシャリーブチル−4,4’,6,6’−テトラメチルメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール、3,3’−ジイソプロピル−5,5’−ジターシャリーブチル−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール、5,5’−ジターシャリーブチル− 3,3’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール、5,5’−ジターシャリーブチル− 3,3’,4,4’,6,6’−ヘキサメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオールの光学活性体が挙げられる。
【0040】
最も好ましくは、光学活性な3,3’,5,5’−テトラ−ターシャリーブチル−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオールである。
式(1)で表される本発明の化合物は、前述したように、式(2)で表される化合物の原料として有効であるだけでなく、化合物そのものとして、光学分割剤や触媒反応に用いられる不斉配位子の原料として使用可能な化合物である。
<反応方法>
式(1)の化合物を脱アルキル化反応して式(2)の化合物を得る。
【0041】
<酸触媒>
脱アルキル化反応は特に制限されるものではないが、通常酸触媒が用いられる。酸触媒としては、特に限定される物ではなく、ブレンステッド酸、ルイス酸のいずれでも構わない。
具体的には、塩酸、硫酸の様な無機酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等のアリールスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のアルキルスルホン酸、トリフルオロ酢酸のような有機酸、ZSM−5等のゼオライト、ガンマアルミナ、Nafion−H等の固体酸、塩化アルミニウム、酢酸亜鉛、炭酸セシウム、四塩化チタン、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド等のルイス酸があげられる。
好ましくは、硫酸、パラトルエンスルホン酸のようなアリールスルホン酸、塩化アルミニウムがあげられる。
【0042】
<反応条件>
脱アルキル化を行う反応条件に関しても、特に限定される物ではなく、用いる酸触媒によって適宜選定される。
すなわち、硫酸やパラトルエンスルホン酸を用いる場合には、脱アルキル化により生成するオレフィン化合物を効果的に除去するために溶媒を用いて加熱還流することが望ましく、塩化アルミの様な反応性の高い触媒を用いる場合には、室温下またはそれ以下の反応温度で良好に反応が進行する。
【0043】
<溶媒>
脱アルキル化反応時に用いる溶媒としては、反応を行うために支障がない溶媒で有ればいずれの溶媒であっても構わない。たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭素数6〜12の芳香族炭化水素、酢酸等の炭素数2〜10の脂肪族カルボン酸、ニトロメタン等のニトロアルカン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアルキルアミドが用いられる。また、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素がトランスアルキル化により反応の進行が容易であるという点でより好ましい。
【0044】
<温度> 反応温度に関しては、特に制限されるものではなく、通常−20℃から350℃の範囲で行われる。好ましくは、使用する酸触媒によるが、アリールスルホン酸等のブレンステッド酸を用いる場合には、0℃から150℃の範囲で行われる。また、塩化アルミ等のルイス酸を用いる場合には、―20℃から150℃の範囲で行われる。さらに、アルミナ等の固体酸を用いる場合には、室温から350℃の範囲のより高温で行われる。
【0045】
<時間> 反応時間に関しても特に制限されるものではなく、化合物に応じて原料の消失を経時的に分析する等の方法により容易に決定することができる。通常は数分から数日の間で反応は完了する。
<圧力> 反応圧力に関しては、特に制限されるものではなく、通常1Torr程度の減圧から1Mpa程度の加圧まで任意の範囲で可能である。
必要な反応温度が保持できる場合には、脱離反応により生成するオレフィン化合物の除去を促進するために、減圧で行うことが好ましい。また、同様の理由により、反応に不活性なガスを通気する事も差し支えない。
<式(2)の化合物の説明>
【0046】
【化12】
【0047】
一般式(2)中、
R2は水素原子、炭素数1〜20の、置換基を有してもよい炭化水素基、炭素数1〜10の、置換基を有してもよいアルコキシ基、またはハロゲン原子である。炭化水素基の炭素数は1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。アルコキシ基の炭素数は1〜5が好ましい。
【0048】
炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基が挙げられるが、原料化合物の入手が容易である点でアルキル基が好ましい。これらの中でも、水素、メチル基、メトキシ基、塩素またはフッ素がより好ましい。各R2はそれぞれ異なっていても良いが、原料化合物の合成が容易であるため同一であるのが好ましい。
【0049】
R4は水素原子または式(1)中のR1すなわち炭素数1〜20の炭化水素基である。前述の脱アルキル化反応によりR3と共にR1が脱離した場合には水素原子となり、R1が脱離しなかった場合にはR1のままである。
炭素数は1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。
炭化水素基としてはアルキル基、アリール基、アラルキル基が挙げられるが、原料化合物の入手が容易である点でアルキル基が好ましい。
【0050】
特に好ましくは、水素、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、第3ブチル基、第3アミル基である。最も好ましくは、水素、メチル基、イソプロピル基である。各R4はそれぞれ異なっていても良いが、原料化合物の合成が容易であるため同一であるのが好ましい。
一般式(2)で表される化合物は、パラ位に更に修飾による機能化が可能である点で非常に有用である。一般式(2)で表される化合物の具体例としては、以下のような化合物が挙げられる。(下記式には(S)体の構造が記載されているが、対応する(R)体も含む)
【0051】
【化13】
【0052】
<式(1)の化合物の製造方法>
式(1)の化合物は、
(a) (i)下記式(3)で表されるラセミ体の5,5’−置換−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体化合物と、(ii)三塩化リン、および(iii)光学活性2級アルコールから誘導される、リン原子を含む環状構造を有するホスファイト化合物を、
(b)酸化してリン酸エステルに誘導した後に、
(c)再結晶により光学分割して光学活性体を調製し、
(d)それを水素化分解する
ことにより製造することができる。
【0053】
【化14】
【0054】
光学活性2級アルコールとしては、光学分割する際の分離性能が優れるという点で光学活性なシクロアルカノールが望ましい。より好ましくは、天然物から容易に入手可能な光学活性テルペンアルコール類が好ましく、具体的にはメントール、ボルネオール、イソピノカンフェオール、ピナノール、イソプレゴール等が挙げられる。最も好ましくはメントールである。
【0055】
<(a)ホスファイト化合物の製造方法>
ホスファイト化合物は、(a-1) 三塩化リンと光学活性2級アルコールを、反応させて生成するジクロロホスファイト化合物を調製し、これとラセミ体の一般式(3)で表される置換6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール化合物とを反応させることにより合成することができる。
【0056】
別の方法としては、(a-2) 三塩化リンとラセミ体の一般式(3)で表される置換6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール化合物とを反応させて環状のモノクロロホスファイト化合物を調製し、これに光学活性2級アルコールを反応させることにより合成できる。
どちらの方法を用いるかは、化合物(3)により異なるが、R1として、第3ブチル基のような嵩高い3級の置換基を持つ化合物の場合には、(a-1)のジクロロホスファイト化合物を経由する方法が好ましい。
【0057】
以下、(a-1)の方法について詳細に説明する。
<ジクロロホスファイト調製の反応条件>
ジクロロホスファイトを調製する際の反応条件は、特に限定される物ではなく、公知の方法を用いることができる。
この反応において、副生成物であるモノクロロホスファイト化合物の生成を抑制するために、三塩化リンを過剰に用いて反応を行い、過剰の三塩化リンを蒸留により除く事が望ましい。
【0058】
また、発生する塩化水素を捕捉するために塩基を加えると、モノクロロホスファイトの生成が増加するために好ましくない。
<(b)リン酸エステルへの変換方法>
次に、ホスファイト化合物を酸化してリン酸エステルへの変換方法に関しては、特に限定される物ではなく、公知の方法を用いることができる。
【0059】
具体的には、ホスファイト化合物を酸素、空気等の酸素を含有するガス、オゾン、臭素、ヨウ素等のハロゲン、過酸化水素、過ヨウ素酸等の無機過酸、有機過酸または有機過酸化物等の酸化剤の存在下に処理することにより、合成することが可能である。
有機過酸としては、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、メタクロロ過安息香酸等の炭素数1〜20の過酸化有機酸が挙げられる。
【0060】
有機過酸化物としては、通常、ターシャリーブチルヒドロパーオキシド、クミルパーオキシド、ジメチルジオキソラン、ベンゾイルパーオキシド、ヨードソベンゼン等の炭素数2〜20、好ましくは炭素数4〜15のパーオキシドが挙げられる。
好ましくは、酸素を含有するガス、無機過酸、有機過酸、有機過酸化物であり、より好ましくは過酸化水素、過安息香酸、メタクロロ過安息香酸であり、中でも後処理が容易な点で過酸化水素がより好ましい。
【0061】
<温度>反応温度に関しては、特に制限されるものではなく、通常−100℃から150℃の範囲で行われる。好ましくは、−100℃から100℃の範囲で行われる。
<時間> 反応時間に関しても特に制限されるものではなく、化合物に応じて原料の消失を経時的に分析する等の方法により容易に決定することができる。通常は数分から数日の間で反応は完了する。
【0062】
<圧力> 反応圧力に関しては、特に制限されるものではなく、通常1Torr程度の減圧から1Mpa程度の加圧まで任意の範囲で可能である。好ましくは常圧で実施する。
<(c) 再結晶により光学分割>
次に、このリン酸エステル化合物のジアステレオマー混合物を、再結晶により光学分割する。例えば、上記の再結晶溶媒に加熱して溶解した後に、冷却することにより結晶化させる方法。または、トルエン等の少量の良溶媒に過熱下溶解し、上記の再結晶溶媒を添加した後、冷却することにより結晶化させる方法により、分割することが可能である。
【0063】
<(c-1)溶媒>
再結晶溶媒は特に限定されないが、通常、低級アルコール、低級カルボン酸、高極性の有機溶媒、飽和炭化水素、またはこれらの混合溶媒が用いられる。
リン酸エステル化合物は室温ではメタノール、エタノール等の低級アルコールや酢酸、プロピオン酸等の低級カルボン酸、アセトン、アセトニトリル等の極性の有機溶媒、または、ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素溶媒に対する溶解度が低いためである。
【0064】
好ましい再結晶溶媒としては、メタノール、アセトニトリル、またはトルエン−アセトニトリル混合溶媒が用いられる。これらの溶媒を用いた場合には、分離される化合物の光学純度が高くなるため、再結晶を繰り返す回数が少なくなるため優れている。
特に、3,3’,5,5’−テトラ−ターシャリーブチル−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオールから誘導されるリン酸エステル化合物の分割には、メタノール、およびアセトニトリルが分離性能の点で適している。特に、メタノールが最適である。
【0065】
<(c-2)再結晶条件>
再結晶を行う条件に関しては、特に限定される物ではなく、公知の方法を用いることができるが、通常は以下のような条件で行う。
<溶媒量>
溶媒の量は、特に限定されないが、回収率を向上させるため、加熱還流下で飽和になるような量の溶媒を用いることが好ましい。
【0066】
<冷却>
こうして得られた均一溶液を、冷却する事により結晶化を行う。
冷却する温度は、用いる溶媒の沸点未満から−50℃程度の範囲から選ばれる。好ましくは、40℃から−20℃程度の温度が用いられる。より好ましくは、20℃から0℃の範囲が良い。
【0067】
<時間>
再結晶を行う時間は特に制限されず、その他の条件に応じて所定の収率で目的生成物が得られるまで行う。
<(c-3)さらに行ってもよい方法>
1回の再結晶で得られた光学活性なリン酸エステル化合物の光学純度が低い場合には、再結晶を繰り返すことにより、所望の光学純度の化合物を得ることが可能である。また、一方のジアステレオマーが結晶として析出した濾液を濃縮することにより、他方のジアステレオマーを取得することが可能である。
【0068】
さらに、濾液から光学純度の高い他方のジアステレオマーを有効に回収するためには、一方のジアステレオマーが析出した濾液を濃縮した後に、最初に析出する光学純度の低い混合物を、一旦濾別し、その濾液から結晶化させると、光学純度の高い、他方のジアステレオマーを得ることが可能である。
また、途中で分離される光学純度の低い混合物も、リサイクルして再結晶を行うことにより、更に分離可能である。
【0069】
公知の再結晶の方法は、一方のジアステレオマーを分離した後、他方のジアステレオマーが濃縮された濾液から、再結晶に用いた溶媒を留去し、次に別の溶媒を用いて、その濾液側に濃縮されたジアステレオマーを結晶化させる事が必要であるが、本発明の単一溶媒による再結晶による光学分割方法によれば、同じ溶媒を用いて、濃縮するだけで両方のジアステレオマーを効率良く分離できるという点で優れている。
<(d)水素化分解反応>
水素化分解反応は特に限定されないが、例えば金属水素化物を用いて行うことができる。
【0070】
金属水素化物は、アルミニウム化合物の水素化物が好ましく、水素化リチウムアルミニウム、水素化ナトリウムビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウム(Red−Al)がより好ましい。
水素化分解を行う条件に関しては、特に限定される物ではなく、公知の方法を用いることができる。
【0071】
<反応条件>
<温度>反応温度に関しては、特に制限されるものではなく、通常−100℃から150℃の範囲で行われる。好ましくは、−30℃から100℃の範囲で行われる。
<時間> 反応時間に関しても特に制限されるものではなく、化合物に応じて原料の消失を経時的に分析する等の方法により容易に決定することができる。 通常は数分から数日の間で反応は完了する。
【0072】
<圧力> 反応圧力に関しては、特に制限されるものではなく、通常1Torr程度の減圧から1Mpa程度の加圧まで任意の範囲で可能である。好ましくは常圧で実施する。
<生成物の分離>
<回収>反応後は、過剰の金属水素化物を水、酸、アルカリ等で分解し、生成する無機化合物との分離は有機溶媒による抽出、または濾過等の操作により行うことができる。そして、溶媒を留去することにより目的とするビフェノール化合物を回収することができる。
<精製>さらに混入する光学活性2級アルコールを除去するために、メタノール等の溶媒による懸洗や再結晶、クロマトグラフィー等の方法により精製することができる。
【0073】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
実施例1
(3,3’,5,5’−テトラ−ターシャリーブチル−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオールの製造方法)
以下に反応スキームを示す。
【0074】
【化15】
【0075】
1) ジクロロメンチルホスファイトの合成
窒素雰囲気下、0℃に冷却したトルエン 15mlに三塩化リン 25.9g(188mmol)を溶解させ、溶液を激しく攪拌しながらトルエン 23.5mlに溶解させた(l)-メントール 22.3g(142mmol)を0.5時間で滴下した。滴下後、反応液を室温まで昇温し、2時間攪拌して反応を完結させた。つづいて反応液を50℃に加熱しながら65〜70mmHgに減圧し、未反応三塩化リンとトルエンを留去した。反応器中の三塩化リンを完全に除いた残さとして (l)- ジクロロメンチルホスファイトを得た。(31P NMR純度96%、31P NMR (トルエン) δ : 174.67)
2) (l)-メンチル 3,3',5,5'-テトラターシャリーブチル-6,6'-ジメチル-1,1'-ビフェニル−2,2'−ジイル ホスファイトの合成
1)で得られた(l)- ジクロロメンチルホスファイト 33.0g(128mmol)を脱水THF(テトラヒドロフラン) 60.0mlに溶解し、窒素雰囲気下、室温で攪拌し、これに3,3',5,5'-テトラ-t-ブチル-6,6'-ジメチル-1,1'−ビフェニル−2,2'-ジオール 50.0g(114mmol)、トリエチルアミン 48.0ml(344mmol)の脱水THF 450ml溶液を10分で滴下した。滴下終了後室温で攪拌を継続し、(l)- ジクロロメンチルホスファイトが消失したのを確認して反応終了とした。生成したトリエチルアミン塩酸塩を吸引濾過で除去し、得られたろ液を減圧濃縮した。粗体中に残るTHFの除去のため、反応粗体にトルエンを加えて溶液とし、溶媒を減圧留去する操作を二度行い、(l)-メンチル 3,3',5,5'-テトラターシャリーブチル-6,6'-ジメチル-1,1'-ビフェニル−2,2'−ジイル ホスファイトを得た。(収量81.6g、収率115%(トルエン含む)、溶媒を除き純度99.8%)
・HPLC(GLサイエンス株式会社製、イナートシル ODS-2(4.6mmΦx150mm)使用、20℃、アセトニトリル、1.0ml/min.、254nm、保持時間40.9min.、47.2min.)
・1H NMR (CDCl3) δ : 0.45(d, 3H, J=6.80), 0.66(d, 3H, J=7.08), 0.75(d, 3H, J=7.08), 0.78(d, 3H, J=6.56), 0.87(d, 3H, J=6.84), 0.90(d, 3H, J=6.56), 0.83-1.01(m, 4H), 1.12-1.33(m, 4H), 1.41(s, 18H), 1.42(s, 18H), 1.43(s, 18H), 1.46(s, 18H), 1.55-1.65(m, 8H), 1.96(s, 6H), 1.98(s, 3H), 2.00(s, 3H), 2.20(2H), 3.95(m, 2H), 7.35-7.40(m, 4H)
・31P NMR (トルエン) δ : 135.99, 140.89
3) (l)-メンチル 3,3',5,5'-テトラターシャリーブチル-6,6'-ジメチル-1,1'-ビフェニル−2,2'−ジイル ホスフェートの合成
2)で得られた、トルエンを9wt%含む (l)-メンチル 3,3',5,5'-テトラターシャリーブチル-6,6'-ジメチル-1,1'-ビフェニル−2,2'−ジイル ホスファイトの粗体 42.6g(68mmol)をトルエン430mlに溶解し室温で攪拌した。30-35.5%の過酸化水素水 22ml (約230mmol)を30分間で滴下し、 (l)-メンチル 3,3',5,5'-テトラターシャリーブチル-6,6'-ジメチル-1,1'-ビフェニル−2,2'−ジイル ホスファイトが消失した時点で反応を終了とした。氷冷し、10wt% Na2S2O3水溶液を加えて攪拌後有機層と水層を分離し、有機層を脱塩水、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、溶媒減圧留去して (l)-メンチル 3,3',5,5'-テトラターシャリーブチル-6,6'-ジメチル-1,1'-ビフェニル−2,2'−ジイル ホスフェートを得た。
(収量45.5g、収率104%(トルエン含む)、溶媒を除き純度98.9%)
・HPLC(GLサイエンス株式会社製、イナートシル ODS-2(4.6mmΦx150mm)使用、22℃、アセトニトリル 1.0ml/min.、254nm、保持時間(S)20.0min.、(R)23.6min.)
・1H NMR (CDCl3) δ : 0.38(d, 3H, J=6.84), 0.61(d, 3H, J=6.80), 0.75-1.04(m, 5H), 0.78(d, 3H, J=6.56), 0.80(d, 3H, J=6.84), 0.84(d, 3H, J=6.80),0.92(d, 3H, J=6.60), 1.12-1.38(m, 5H), 1.40(s, 18H), 1.40-1.43(1H), 1.42(s, 18H), 1.44(s, 18H), 1.50(s, 18H), 1.55-1.68(m, 4H), 1.69-1.77(m, 1H), 1.94(s, 6H), 2.00(s, 6H), 2.15(m, 1H), 2.46(m, 1H), 4.18-4.35(m, 2H),7.43-7.44(4H)
・31P NMR (トルエン) δ : -7.438, -5.955
4) (l)-メンチル 3,3',5,5'-テトラターシャリーブチル-6,6'-ジメチル-1,1'-ビフェニル−2,2'−ジイル ホスフェートの光学分割
3)で得られた、トルエン10.5gを含み、ビフェニル骨格部分の組成が(S):(R) =51.8:48.2の 3,3',5,5'-(l)-メンチル 3,3',5,5'-テトラターシャリーブチル-6,6'-ジメチル-1,1'-ビフェニル−2,2'−ジイル ホスフェート 72.7g (114mmol)にメタノール 300mlを加えて還流させ均一溶液とした。溶解後、室温まで放冷後19時間静置し、析出した白色固体を吸引濾過により回収した。回収した白色固体は27.1g、ビフェニル骨格部位の組成は(S):(R) =97.0:3.0であった。上記回収固体27.1gにメタノール935mlを加え、還流して均一溶液とした。攪拌を止めて室温まで放冷し、更に12時間静置して析出した白色固体を吸引濾過により回収し、ビフェニル骨格部位の組成が(S):(R) =99.9:0.1 の組成の(l)-メンチル (S)-3,3',5,5'-テトラターシャリーブチル-6,6'-ジメチル-1,1'-ビフェニル−2,2'−ジイル ホスフェートを得た。(回収量18.8g、回収率50%)
・HPLC(GLサイエンス株式会社製、イナートシル ODS-2(4.6mmΦx150mm)使用、22℃、アセトニトリル 1.0ml/min.、254nm、保持時間(S)20.0min.)
・1H NMR (CDCl3) δ : 0.78(d, 3H, J=6.56), 0.78-1.05(m, 3H), 0.80(d, 3H,J=6.92), 0.84(d, 3H, J=6.92), 1.24-1.34 (m, 2H), 1.40 (s, 9H), 1.42 (s,9H), 1.44(s, 9H), 1.50 (s, 9H), 1.55-1.67(m, 2H), 1.70-1.78 (m, 1H), 1.94 (s, 3H), 2.00 (s, 3H), 2.14-2.25(m, 1H), 4.26 (m, 1H), 7.43 (s, 2H)
・13C NMR δ : 15.61, 18.89, 18.99, 20.89, 22.01, 22.76, 25.24, 31.19, 31.26, 31.41, 31.56, 33.85, 35.10, 35.30, 36.13, 41.82, 48.18, 48.23, 81.93(d), 125.13, 125.40, 131.04, 131.22, 134.80, 135.31, 136.75(d), 136.88, 144.37, 144.61, 145.23, 145.34
・HRMS 638.4437、(計算値638.446)
・比旋光度[α]Na589 22 125.4° (c=2.02, THF)
1回目の再結晶ろ液は濃縮、乾燥後で44.3g、ビフェニル骨格部位の組成は(S): (R) =21.8:78.2であった。これに、メタノール440mlを加え、還流条件下で均一溶液とした。室温まで放冷した後攪拌を止め、40時間室温のまま静置することにより得られた結晶を吸引濾過により濾取した。この(l)-メンチル 3,3',5,5'-テトラターシャリーブチル-6,6'-ジメチル-1,1'-ビフェニル−2,2'−ジイル ホスフェートの組成は(S):(R)=49.7:50.3であった。
【0076】
ろ液を更に室温で40時間静置して結晶を析出させ、この結晶を吸引濾過により回収した。得られた結晶を減圧乾燥し、ビフェニル骨格部位の組成が(S):(R)=0.1:99.9の組成の(l)-メンチル (R)-3,3',5,5'-テトラターシャリーブチル-6,6'-ジメチル-1,1'-ビフェニル−2,2'−ジイル ホスフェートを得た。(回収量 13.2g、回収率38%)
・HPLC(GLサイエンス株式会社製、イナートシル ODS-2(4.6mmΦx150mm)使用、26℃、アセトニトリル 1.0ml/min.、254nm、保持時間(R)23.6min.)
・1H NMR (CDCl3) δ : 0.38(d, 3H, J=6.86), 0.61(d, 3H, J=6.98), 0.77-0.98(m, 2H), 0.92(d, 3H, J=6.42), 1.14-1.31 (m, 3H), 1.40 (s, 9H), 1.40-1.44(1H), 1.42 (s, 9H), 1.44(s, 9H), 1.50 (s, 9H), 1.55-1.67(m, 2H), 1.94 (s, 3H), 2.00 (s, 3H), 2.46-2.49(m, 1H), 4.23 (m, 1H), 7.43 (s, 1H), 7.44(s, 1H)
・13C NMR δ : 15.33, 18.86, 20.67, 21.83, 22.71, 24.63, 31.18, 31.28, 31.39, 31.53, 33.91, 35.19, 35.34, 36.10, 36.12, 42.58, 48.43, 48.51, 80.68(d), 125.20, 125.43, 131.95, 131.34, 134.88, 135.19, 136.60(d), 136.89(d), 144.36, 144.61, 145.35, 145.46
・31P NMR (CDCl3) δ : -7.438
・HRMS 638.4468、(計算値638.446)
・比旋光度[α]Na589 22 -194.0° (c=1.97, THF)
5) (S)-3,3',5,5'-テトラ-t-ブチル-6,6'-ジメチル-1,1'−ビフェニル−2,2'-ジオールの合成
窒素雰囲気下、脱水THF 55.0mlに水素化アルミニウムリチウム 0.6g (15mmol)を加えて懸濁液とし、氷冷下攪拌した。この懸濁液に脱水THF 37.0mlに溶解した、4)で得られたラセミ体から最初に結晶化してくる(l)-メンチル (S)-3,3',5,5'-テトラターシャリーブチル-6,6'-ジメチル-1,1'-ビフェニル−2,2'−ジイル ホスフェート 3.0g (4.7mmol)を15分で滴下し、滴下後室温へ昇温して1時間攪拌後、40℃で2時間加熱攪拌した。反応終了後、酢酸エチルのトルエン溶液を加えて残存する還元剤を分解し、続いて脱塩水と6N-HClを加えて生じたアルミニウムの塩を溶解した。脱塩水、トルエンを加えて分液し、水層をトルエンで一回抽出した。合せた有機層を洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥した後に減圧濃縮して粗体を得た。得られた粗体はメタノールに懸濁させ、沈殿した(S)-3,3',5,5'-テトラ-t-ブチル-6,6'-ジメチル-1,1'−ビフェニル−2,2'-ジオールを吸引濾過で回収した。(収量1.6g、収率77%)
・HPLC(GLサイエンス株式会社製、イナートシル ODS-2(4.6mmΦx150mm)使用、22℃、アセトニトリル 1.0ml/min.、254nm、保持時間(S)8.6min.)
・1H NMR (CDCl3) δ : 1.40 (s, 18H), 1.42 (s, 18H), 2.00 (s, 6H), 4.80(s, 2H), 7.38 (2H)
・13C NMR (CDCl3) δ : 18.60, 29.56, 31.47, 34.92, 35.76, 123.35, 125.31, 132.42, 133.76, 140.02, 149.79
・比旋光度[α]Na589 22 -59.8° (c=2.05, THF)
6) (R)-3,3',5,5'-テトラ-t-ブチル-6,6'-ジメチル-1,1'−ビフェニル−2,2'-ジオールの合成
窒素雰囲気下、脱水THF 55mlに水素化アルミニウムリチウム 0.6g (16mmol)を加えて懸濁液とし、氷冷下攪拌した。この懸濁液に脱水THF 38mlに溶解した、4)で(S)体を分離し後の濾液から結晶として得られた (l)-メンチル (R)-3,3',5,5'-テトラターシャリーブチル-6,6'-ジメチル-1,1'-ビフェニル−2,2'−ジイル ホスフェート 3.0g (4.7mmol)を10分で滴下した。滴下後室温へ昇温して攪拌し、続いて40℃で4時間加熱した。反応終了後、酢酸エチルのトルエン溶液を加えて残存する還元剤を分解し、30-35.5%の過酸化水素水を加えて攪拌した。Na2S2O3水溶液を加えて攪拌後、HClで酸性とし、トルエン、脱塩水を加えて分液した。水層をトルエンで一度抽出し、合せた有機層を洗浄後、無水硫酸マグネシウム上で乾燥して減圧濃縮し粗体を得た。得られた粗体はメタノールに懸濁させ、沈殿した(R)-3,3',5,5'-テトラ-t-ブチル-6,6'-ジメチル−1,1'−ビフェニル−2,2'-ジオールを吸引濾過で回収した。(収量1.6g、収率77%)
・HPLC(GLサイエンス株式会社製、イナートシル ODS-2(4.6mmΦx150mm)使用、21℃、アセトニトリル 1.0ml/min.、254nm、保持時間(R)8.6min.)
・1H NMR (CDCl3) δ : 1.40 (s, 18H), 1.42 (s, 18H), 2.00 (s, 6H), 4.80(s, 2H), 7.38 (2H)
・13C NMR (CDCl3) δ : 18.60, 29.56, 31.47, 34.92, 35.76, 123.35, 125.31, 132.42, 133.76, 140.02, 149.79
・比旋光度[α]Na589 22 +58.2° (c=2.02, THF)
実施例2〜12 (l)-メンチル 3,3',5,5'-テトラターシャリーブチル-6,6'-ジメチル-1,1'-ビフェニル−2,2'−ジイル ホスフェートの光学分割
実施例1の1)〜3)と同様の方法で合成した(l)-メンチル 3,3',5,5'-テトラターシャリーブチル-6,6'-ジメチル-1,1'-ビフェニル−2,2'−ジイル ホスフェートを、実施例1の4)の再結晶における溶媒を変えて光学分割を行った。結果を以下の表−1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
実施例13 (S)-6,6'-ジメチル-1,1'-ビフェニル-2,2'-ジオール
実施例1の5)で得られた(S)-3,3',5,5'-テトラ-t-ブチル-6,6'-ジメチル-1,1'−ビフェニル−2,2'-ジオール 100mg (23mmol)のジクロロメタン 3.0ml溶液を窒素雰囲気下室温で攪拌した。無水塩化アルミニウム 0.1g(0.8mmol)を加え、原料が消失するまで室温で攪拌を行った。反応収量後に脱塩水を加えて分液し、水層をジクロロメタンで抽出して有機層を合わせ、無水硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒を減圧留去して(S)-6,6'-ジメチル-1,1'-ビフェニル-2,2'-ジオールの黄色粉末状固体を得た。(収量39mg、収率80.0%)
得られた固体をHPLC(ダイセル化学工業(株)製、Chiralcel OD(4.6mmΦx250mm)使用、40℃、ヘキサン:イソプロパノール=9:1、0.5ml/min.、254nm)で分析した結果、保持時間26.5min.の(S)-6,6'-ジメチル-1,1'-ビフェニル2,2'-ジオールのみが観測された。
【0079】
実施例14 (R)-6,6'-ジメチル-1,1'-ビフェニル-2,2'-ジオール
実施例13において、反応原料として(S)-3,3',5,5'-テトラ-t-ブチル-6,6'-ジメチル-1,1'−ビフェニル−2,2'-ジオールに変えて実施例1の6)で得られた(R)-3,3',5,5'-テトラ-t-ブチル-6,6'-ジメチル-1,1'ビフェニル-2,2'-ジオールを用いた以外は同様の方法で処理することにより、(R)-6,6'-ジメチル-1,1'−ビフェニル−2,2'-ジオールを得た。 収量35mg、収率71%。 同様に得られた固体をHPLC(ダイセル化学工業(株)製、Chiralcel OD(4.6mmΦx250mm)使用、40℃、ヘキサン:イソプロパノール=9:1、0.5ml/min.、254nm)で分析した結果、保持時間34.3min.の(R)-6,6'-ジメチル-1,1'−ビフェニル−2,2'-ジオールのみが観測された。
【0080】
比較例1
特許文献2に記載の方法と同様に、光学活性ジアミンを用いて3,3',5,5'-テトラ-t-ブチル-6,6'-ジメチル-1,1'−ビフェニル−2,2'-ジオールの光学分割を行った。
3,3',5,5'-テトラ-t-ブチル-6,6'-ジメチル-1,1'−ビフェニル−2,2'-ジオール 3.8g(877mmol)、(1R,2R)-(-)シクロヘキシルジアミン 1.0g(878mmol)、トルエン 4.5mlを混合し、窒素雰囲気下で加熱還流の後、室温まで冷却した。放冷により析出した板状結晶を吸引濾過で回収、トルエンで洗浄し2.7gの結晶を得た。
【0081】
得られた結晶は1H NMRで分析し、その積分値から3,3',5,5'-テトラ-t-ブチル-6,6'-ジメチル-1,1'−ビフェニル−2,2'-ジオールと(1R,2R)-(-)シクロヘキシルジアミンの約1:1の組成であることを確認した。
得られた結晶2.7g、メタノール 30.0ml、1N-HClを混合し、室温で1時間攪拌した。析出した白色固体を吸引濾過で回収し、脱塩水、メタノールで洗浄後乾燥して3,3',5,5'-テトラ-t-ブチル-6,6'-ジメチル-1,1'−ビフェニル−2,2'-ジオールを2.0gを回収した。
回収した3,3',5,5'-テトラ-t-ブチル-6,6'-ジメチル-1,1'−ビフェニル−2,2'-ジオールを不斉部位を有する化合物と反応させて誘導体化し、分析したところその成分比はNMRで1:1であり光学分割は行われていなかった。
【0082】
比較例2
Tetrahedron , 56, (2000), 4447-4451に記載されている光学分割法で3,3',5,5'-テトラ-t-ブチル-6,6'-ジメチル-1,1'−ビフェニル−2,2'-ジオールの光学分割を行った。
3,3',5,5'-テトラ-t-ブチル-6,6'-ジメチル-1,1'−ビフェニル−2,2'-ジオール 0.2g(0.5mmol)、N-ベンジルシンコニウムクロリド 0.18g(0.3mmol)、THF1.0ml、メタノール0.5mlを混合し加熱攪拌して均一溶液とした後室温まで放冷し、析出した白色固体を吸引濾過で回収した。得られた固体の1H NMRでは3,3',5,5'-テトラ-t-ブチル-6,6'-ジメチル-1,1'−ビフェニル−2,2'-ジオール、N-ベンジルシンコニウムクロリドのケミカルシフト値はそれぞれの単一成分と同一であり、その積分値からはビフェノール誘導体:シンコニウム塩=1:13である事を確認した。これにより二成分は光学分割に有効な錯形成を起こさず、混合物として回収されたことがわかった。
【0083】
各実施例における物性の測定に用いた装置は次のとおりである。
旋光計
日本分光製 DIP-370型ディジタル旋光計,光源:Naランフ゜(589 nm)
セル内径10mm×セル長100mm(約10ml)
HR-MS
日本電子(株) JMS-700/Mstation
NMR
ブルカー製 AVANCE-400
31P NMRのケミカルシフトはリン酸トリフェニルを基準物質とし、その ケミカルシフトを -18.0ppmとして測定した。
Claims (3)
- 下記一般式(1−1)及び/又は(1−2)で表される光学活性5,5’−置換−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体を脱アルキル化することを特徴とする下記一般式(2−1)及び/又は(2−2)で表される光学活性6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体の製造方法。
- 下記(a)〜(d)の工程により製造されることを特徴とする光学活性置換−5,5’−置換−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体の製造方法。
(a) (i)下記式(3)で表されるラセミ体の5,5’−置換−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール誘導体化合物と、(ii)三塩化リン、および(iii)光学活性2級アルコールから誘導される、リン原子を含む環状構造を有するホスファイト化合物を、
(b) 酸化してリン酸エステルに誘導した後に、
(c) 再結晶により光学分割して光学活性体を調製し、
(d) それを水素化分解する
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