彼らの「本気」をハイレゾで! 鈴木慶一率いるControversial Spark、待望のファースト・フル・アルバム配信開始!
2013年8月11日(日)に行われたWORLD HAPPINESS 2013でデビューを飾った、鈴木慶一率いるControversial Spark(コントロヴァーシャル・スパーク)。あれから1年、待ちに待った待望のフル・アルバムがついに到着。OTOTOYでは24bit/48kHzのハイレゾで独占配信中です。
元カーネーションの矢部浩志、栗コーダーカルテット等で活躍中の近藤研二、The Uranusのメンバーとしても活動中のベースの岩崎なおみ、the roomsのkonore、そして鈴木慶一というメンバーが繰り出す音から感じるのは、バンド名からもわかるように、世代や性別といった垣根なんて必要ない、音楽に対する火花を散らすような本気。岡村詩野の本気のレヴューとともにお楽しみください。
待望のファースト・フル・アルバム!
Controversial Spark / Section I
【配信形態】
[左] ALAC / FLAC / WAV (24bit/48kHz)
[右] ALAC / FLAC / WAV (16bit/44.1kHz) / mp3
【価格】
[左]2,500円(税込)
[右] ALAC / FLAC / WAV (16bit/44.1kHz) 2,500円 mp3 2,000円(税込)
01. Hello Mutants
02. Ex-Car
03. Section 1
04. くりかえす
05. Jigoku No Hamabe
06. Over Heaven
07. Moonlight N.M.D.
08. Sweet Home
09. a Hook
10. Greys
11. Controversial Short Stories (Suite Controversial Stories)
12. Spark Stories (Suite Controversial Stories)
13. First Session (ボーナストラック)
摩訶不思議なトランスフォーマー
以前、鈴木慶一は筆者に取材か何かの現場で「自分以外の何物かになってみたい」と話してくれたことがある。それは、今の自分に満足していないということではなく、ある時突然、何物かになっていたらどうなるだろう? という好奇心の現れだったのだと今にして思う。そもそもが鈴木慶一は常に何か新しいことを求めて鼻をピクピクさせているようなアーティストだ。しかしながら、今回ばかりはちょっとした刺激、エッセンスを注入するような感覚とは明らかに違うことがよくわかる。
紹介しよう、Controversial Spark!
鈴木慶一は本気だ。鈴木によって集められた年齢差、性別差を超えた新たな仲間たちも本気だ。本気で音楽のマジカルな偶然に翻弄されようとしている。翻弄されながら、どこかで薄ら笑いを浮かべている奇妙な5人。その様子がここに見事に刻まれている。
“朝、目が覚めたら肩から先がない”。カフカの『変身』よろしく、今までの自分ではないナニモノかに突如姿が変わってしまった...といった意味の歌詞に始まる1曲目「HelloMutants」。奇妙な生命体になってしまったことに戸惑いつつ、どこかで楽しんでしまうような愛嬌あるリリックだが、これこそがまさにこのバンドの予測不可能な面白さを象徴しているだろう。
あさっての方向、という言い方があるが、この5人組に関していえば、あさってどころか明々後日、いや、一週間先、一ヶ月先、一年先かもしれない。その上全く見当がつかないところに着地してしまうかもしれない。ハタと気がついたら、そこはここではないどこか別の世界になっているかもしれない。私は私ではない誰か別の人になっているかもしれない。これはもうこれまでの音楽とは全く別のモノになっているかもしれない。そんな摩訶不思議なトランスフォーマー。Controversial Sparkとは、そんな自分たちも変わるし、周囲も変えてしまう、巻き込む力を持った、言わばポップ変異体だ。
そんなControversial Spark、助走も十分に堂々とファースト・アルバムの完成である。タイトルは『SectionI』。ここから新たな歴史が始まることを予感させるニュートラルなタイトルに確かな手応えを覚えるも、しかしながら、さて実際に1曲目から聴いていくと、これががっちり掴んだかと思いきや、たちまちのうちにスルスルと手の中をすり抜けて、どんどんと実体を変貌させていく。その奇妙に人なつこい展開たるや、それこそカフカの『変身』を読んだ時の、本来は不気味で重い内容のはずなのに、なぜかそのユーモラスな表現に引き込まれ、しまいにはククク…と笑ってしまうような、あの重層的なマジカルさを思い出させてくれるほどだ。
Controversial Spark誕生のニュースが正式に伝えられたのは昨年夏のことだった。当初は、ムーンライダーズの活動を休止した鈴木慶一による新バンドとして紹介されることが多かったが(もちろん今もそういう機会が多いのだろうが)、ここに届いた『SectionI』のジャケットを見て驚くことに、一番手前に大きく写っているのはベイビーフェイスが可愛い、ヴォーカルとギターを担当する女性メンバーのkonore。その後ろに続くのは、こちらは知性的な表情が際立つもう一人の女性メンバーでベースを担当する岩崎なおみ。ドラムの矢部浩志、ギターの近藤研二らベテランの男性陣はその後ろにピンボケ状態で控えるといった具合で、リーダーの鈴木慶一でさえ顔の一部が切れている始末だ。この5人が活動を開始して1年弱、本作に向けた準備の合間を縫っていくつものライヴを重ね、イベント、フェスへの出演などによって、バンドの内部がいい温度を保ちながら5人の距離を縮め、関係性を自由に撹拌させてきたことがわかる。
最初のシングル『Controversial Spark』が届けられてからも早1年になるが、もう、今のControversial Sparkは“鈴木慶一のバンド”というだけではないのだろう。無論、鈴木慶一のバンドではあるが、同時に、konoreのバンド、岩崎なおみのバンド、矢部浩志のバンド、近藤研二のバンドでもある。この『SectionI』というアルバムがいみじくも伝えているのは、そうやって当のバンド自体も何かの力によって変身させられてきた、ということだ。いや、もちろん実際は、鈴木慶一が音作りの現場で細かなディレクションをして進めてきているに違いない。だが、それでもバンドは生き物だ。昨年夏、鈴木慶一、konore、矢部浩志に彼らにとっての最初の取材で話を聞いた時、例えばモビー・グレイプのように3本のギターを軸にしたバンド・サウンドがカギとなっていること、メンバーそれぞれが曲を作り、それを持ち寄ってセッションを重ねていく醍醐味を生かすこと、ロックの伝統的なマナーを生かしつつもそれを壊していくことなどなど、バンドのカギとなる重要なファクターを話してくれたが、そこから僅か1年で、さらにバンドはさらに進化だけではなく深化をも遂げていた。緻密な作業とハッピー・サプライズが、まさしくスパークしたということなのだろう。
本作で聴ける12曲は1曲ごとに全く異なる表情を見せ、しかも1曲の中で捻りに捻って展開を見せるものも少なくない。これは昨年発表した最初のEPで聴けた「inMay」や「ハイハイそこの野に咲く花」などでも十分伝わってきたこのバンド最大の特徴であり魅力だが、しかしながら、今作は一聴した限りでは普通に良いポップスと思える曲も多く含まれている。例えば、60'sスタイルのサーフ・ロック・スタイルのポップ・ナンバーで、konoreの舌足らずなヴォーカルがメインとなる「MoonlightN.M.D.」。あるいは、鍵盤の滴るような音色を生かしたBPMが70にも満たないスロ・テンポの「SweetHome」でもいいが、これら口ずさめるほどにキャッチーな曲が要所要所に置かれている意味を考えてみるといいだろう。いや、もちろんそれらの曲もよく聴けば層の厚い演奏と精緻なアレンジの妙味に舌を巻くことになるわけだし、作業がスタートするとなかなかスタジオから出て来ない彼らのこと、一筆描きのごとくたやすく作られた曲など一つもないだろうことも想像に難くない。
だが、彼らはここでそれをあからさまには見せない。魔術師的なトリックも使わない。そう、あたかもドラマティックでアクロバティックな物語を作って驚かせるのではなく、どうなっていくか予測はつかないが、気がついたら周りの風景が鮮やかに変化していた、というような。ウィットに富んだ親しみやすいポップな風合いに気をとられている間に、想像もつかない場所に誘われていた、とでもいうような。そんなさりげなくもマジカルなトランスフォームが、1年前よりさらにポップに磨かれたソングライティングの影でジワジワと起こっているのが本作ではないだろうか。そう考えると、そもそも(本作のジャケット写真のごとく)女性メンバーが前に出てメイン・ヴォーカルをとる曲が多いということも何やら象徴的だ。
聞けば、レコーディングでは様々で突飛なアイデアが飛び交い、それをどのように調理するのかにそれぞれが意見を述べ合いながらギリギリのところで抜きつ抜かれつの攻防をおくっていたのだそうだ。無論、そうしたぶつかり合い、切磋琢磨はどのようなバンドの現場でも起こりえることだが、このControversial Sparkの場合は、曲を完成させるプロセスとしてのセッションではなく、もっと奇々怪々でエクスペリメンタルな仕業、客観性をも孕んだ言わばオペに近い作業だったのではないかと想像できる。そう、それは互いの楽器パートの役割、境目をシームレスにするような作業であり、ひいてはポップ・ミュージックというフォーマットを解体してはまたまとめ、また異なるパーツを組み合わせては解体して最終的にやっぱりポップスというカタチにしていくような作業……。それを彼らは、まるで人体実験のごとく、自らの体から自らの手で腕を切り離してはまた縫合し、今度はそこに足を接着させてみるかのように行う。これほどラジカルかつシニカルな作業などないのではないだろうか。だって、ここに届いた作品は、どうしようもなくポップでキャッチーで人なつこく、不気味なほど我々の耳にこびりついてくるからだ。
そういう意味では、本作はインスタントに作られた今日の名ばかりのポップ・ミュージックやロックンロールへのカウンターとして作られた1枚と言ってもいいかもしれない。いや、対峙するだけではなく、それらインスタントな音楽と敢えて肩を並べてみることを5人のメンバー自身好んでいるようにさえ感じられる。その冷ややかなシニシズムもこのバンドの武器だろう。だが、それこそカフカの『変身』が現代小説としてのヴィヴィッドさを保ちながらも、我々の本棚の中で今なお圧倒的な違和感を漂わせているように、Controversial Sparkのこのファースト・アルバムも、ポップな輝きを放ちつつも、何とも言えぬ居心地の悪さを今後何十年、何百年後も伝えていくことだろう。そして我々は、気がついたら、この作品によって得体の知れない何かにトランスフォームさせられているのだ、きっと。
本気で音楽に翻弄されようとする5人の船出に幸あれ!
21世紀の荒野に咲くポップス解体新書たるこのアルバムにハレルヤ
2014年10月 岡村詩野
Controversial Spark 過去作
Controversial Spark / Controversial Spark
【左】24bit/48kHz【右】16bit/44.1kHz
2013年8月11日に、東京・夢の島公園で開催されたWORLD HAPPINESS 2013でのライヴで販売された3曲入りのアナログ 7インチE.P.『Controversial Spark』(500枚のLimited Edition)をOTOTOY独占で配信。
Controversial Spark / CONTROVERSIAL MUSIC SPARK (24bit/48kHz)
鈴木慶一が結成した「Controversial Spark」初のCD音源をOTOTOYでは48kHz / 24bitで配信! デビュー盤(アナログEP)収録3曲のMONO ミックスヴァージョンに加え、録りおろし新曲収録。20代から60代までの各世代メンバーによって構成される、Between Generationなバンドでもある。どこか捩じれたポップ感覚はPOST・POST・POSTニューウェイヴ!
Moonriders、鈴木慶一 過去作
Moonriders / マニアマニエラ
81年に制作されたが、レコード会社から難解すぎるという理由で発売中止にされ、翌年、まだまったくハードが普及していなかったCDで発売されたという「早すぎた傑作」。
Moonriders / アマチュアアカデミー
1984年に発表した大名盤。
Moonriders / 青空百景
鈴木慶一、白井良明らの前衛的感覚で日本のニュー・ウェーブなポップ・ロック・グループとして`70年代を駆け抜けたムーンライダーズの1982年9月発表の作品。「物は壊れる、人は死ぬ 三つ数えて、眼をつぶれ」「霧の10m2」「アケガラス」「くれない埠頭」他、全10曲入り。
Moonriders / Ciao!
【左】24bit/48kHz【右】16bit/44.1kHz
2011年、突然の活動休止宣言! をうけてのニュー・アルバム。
Moonriders / Here we go'round HQD (24bit/48kHz)
6ヵ月連続でリリースした配信限定シングルを、限定シングル・コレクション『Here we go'round HQD』として、24bit/48KHzのハイレゾで配信。
Moonriders / Come Up
配信限定シングル第6弾。 かしぶち哲郎作詞・作曲。
Moonriders / 三日月の翼
配信限定シングル第5弾。鈴木博文作曲の今作は、シンプルなメロディ構成ながら、ヴァイオリン等のアレンジがキラリと光る、大人の渋さの詰まった一曲。
Moonriders / Tokyo Navi
配信限定シングル第4弾。武川雅寛作曲。
Moonriders / You & Us
配信限定シングル第3弾。今作は渋さと甘酸っぱさが入り混じった、おだやかなナンバー。
Moonriders / 恋はアマリリス
配信限定シングル第2弾。これは大好きなムーンライダース流青春ソング。91年に発売された珠玉の一曲「涙は悲しさで、出来ているんじゃない」を彷彿させる。
Moonriders / Tokyo, Round & Round
配信限定シングル第1弾。『Tokyo, Round & Round』にちなんだジャケ写もかわいい。
ムーンライダーズ feat. 小島麻由美 / ゲゲゲの女房のうた
【左】24bit/48kHz【右】16bit/44.1kHz
長年に渡り、様々な人々に影響を与え続けてきた先鋭的音楽家集団"ムーンライダーズ"と、 稀有な魅力を持つシンガーソングライター"小島麻由美"の邂逅。これは10年代ニッポン音楽界最初の奇跡?映画版『ゲゲゲの女房』(2010年11月公開予定/監督:鈴木卓爾/出演:吹石一恵、宮藤官九郎)のエンディング・テーマ。
鈴木慶一とムーンライダーズ / 火の玉ボーイ
鈴木慶一とムーンライダースのデビュー・アルバム「火の玉ボーイ」が1976年1月25日に発売され来年2011年1月26日に35周年を迎える。当初は鈴木慶一のソロとして制作され、ムーンライダースの他に、ティン・パン・アレイ、ラスト・ショウ、矢野顕子、南佳孝、矢野誠らが、参加。紛れもなく、日本ロック史上に残る大名盤。
FIRST SUICIDE NOTE / No Lie-Sense
ナゴムレコード再始動第1弾。鈴木慶一とKERAのスーパー・ユニット始動!多彩なゲストを迎え多種多様な楽器を用いて、破天荒かつ深淵な音世界を展開する!セルフ・カヴァー3曲に書き下ろしの新曲7曲を収録。
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Yogee New Waves / PARAISO (24bit/48kHz)
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The Wisely Brothers / ファミリー・ミニアルバム
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PROFILE
Controversial Spark(コントロヴァーシャル・スパーク)
鈴木慶一(Gt.) / 近藤研二(Gt.) / 矢部浩志(Dr.) / 岩崎なおみ(Ba.) / konore(Vo、Gt.)
ムーンライダーズ活動休止後、鈴木慶一が結成した新バンド。メンバーは元カーネーションの矢部浩志、栗コーダーカルテット等で活躍中の近藤研二、幅広いミュージシャンのサポートもつとめ、現在The Uranusのメンバーとしても活動中のベースの岩崎なおみ、the roomsのkonore。WORLD HAPPINESS 2013で、ライヴ・デビュー。
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