JPH10218847A - タートラニル酸の製造法 - Google Patents

タートラニル酸の製造法

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JPH10218847A
JPH10218847A JP3037297A JP3037297A JPH10218847A JP H10218847 A JPH10218847 A JP H10218847A JP 3037297 A JP3037297 A JP 3037297A JP 3037297 A JP3037297 A JP 3037297A JP H10218847 A JPH10218847 A JP H10218847A
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剛毅 三浦
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 光学分割剤として有用なタートラニル酸を工
業的有利に製造する方法を提供することを目的とする。 【解決手段】 (+)−、(−)−又は(±)−酒石酸
1モルを3.0〜3.3モルの無水酢酸中、触媒量の有
機スルホン酸又はルイス酸等の存在又は不存在下、70
〜100℃に加熱反応させた後、直ちに副生した酢酸及
び過剰の無水酢酸を溜去することによって得られた結晶
性の(+)−、(−)−又は(±)−ジアセチル酒石酸
無水物を不活性な溶媒の存在下に、室温乃至用いた溶媒
の沸点の温度範囲でアニリン類の1〜1.2モル当量と
反応させて得られるジアセチルタートラニル酸を単離す
ることなく、室温乃至冷却下に3.3〜3.5モルのア
ルカリ水溶液に転溶し、室温放置又は加熱下に加水分解
後酸性とすることを特徴とする結晶状の(+)−、
(−)−又は(±)−タートラニル酸を製造する方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、(+)−タートラ
ニル酸、新規(±)−タートラニル酸、又は新規(−)
−タートラニル酸及びその工業的製造法に関する。
(+)−、及び(−)−タートラニル酸はラセミ塩基性
有機化合物の光学分割剤として有用である。言うまでも
なく、医薬、農薬、化粧品、液晶材料、あるいは不斉有
機反応や生物活性物質を対象とする研究などの分野で、
光学活性物質を取り扱う機会は益々多くなってきてい
る。光学活性物質を得る手段としての、光学分割剤を用
いるジアステレオマー法は古典的ではあるが、現在もな
お有効な方法として広く用いられている。(+)−、及
び(−)−タートラニル酸はラセミ塩基性有機化合物の
光学分割剤のみならず、アルコールの光学分割や不斉有
機反応におけるchiral auxiliaryとして利用することも
可能である。
【0002】
【従来の技術】ラセミ塩基性有機化合物の光学分割剤と
して最も多用されるのは天然酒石酸である。天然酒石酸
は、極めて水溶性が大で光学分割後の回収再使用には煩
雑な操作が必要である。高価な非天然酒石酸では更に経
済的な問題が加わる。又、ジベンゾイル酒石酸、ジトル
オイル酒石酸は、酒石酸に次いで広く用いられている。
これらは回収再使用の問題は少ないと思われるが、比較
的アルカリに不安定なエステル結合を有するので、反復
使用の際に徐々に加水分解が生じ、分割剤の品質低下は
避けられない。その他、天然物由来の光学分割剤、例え
ばカンファースルホン酸、修飾アミノ酸等も高価な物が
多く、それらの対掌体は通常入手困難であり合成上検討
すべき問題もあり、現時点に於いては、工業的規模での
利用は困難である。
【0003】これらの観点から、(+)−、及び(−)
−タートラニル酸は、既存の光学分割剤と比較していく
つかの長所をもっている。これらは水には比較的難溶、
アルカリ水溶液に易溶な良結晶性の安定な物質で、通常
の光学分割条件下ではラセミ化、アミド結合の加水分解
等が起こる確率は極めて小さいと考えられる。(+)
−、及び(−)−タートラニル酸は、光学分割で塩基性
物質を分離した後の母液を酸性にすることによって容易
に結晶として分離回収され回収率も良好である。天然酒
石酸由来の(+)−タートラニル酸の文献記載は古く(A
rppe,Ann.,93,352(1855),Bischoff,Nastvogel,Ber.,23
、2047(1890), Polikier,Ber.,24,2959(1891),Tingle,
Bates,J.Am.Chem.Soc, 31,1240(1909),Casale,Gazz.Chi
mm.Ital.,471,272(1917),Pressman,et al,J.Am.Chem.So
c.,70,1352(1948)), また、(+)−タートラニル(N
−フェニル酒石酸イミド)を用いたアルコールの光学分
割の例もあるが(Barrow,Atkinson,J.Chem.Soc., 1939,6
38),ラセミ塩基性有機化合物の光学分割に用いられた例
は少ない(特公昭57-8102 号公報、Montzka,et al,J.Or
g.Chem.,33,3993(1968),Montzka,U.S.P.3,452,086(196
9))。
【0004】(±)−、及び(−)−タートラニル酸の
合成、応用に関する文献記載は、2’−クロロ−,又は
2’−ブロモ−(−)−タートラニル酸を除けば未載で
あり、従って、それらは新規物質である。(±)−、及
び(−)−タートラニル酸の原料となる(±)−、及び
(−)−酒石酸は近年工業的規模での生産が行われるよ
うになり、容易に入手可能である。従って(+)−、及
び(−)−タートラニル酸の合成で得られる一組の光学
分割剤によって、ラセミ塩基性有機化合物の何れの対掌
体も全く同じ操作を行うことで容易に得ることが可能と
なった。(+)−、及び(−)−タートラニル酸は
(±)−タートラニル酸の光学分割によって得ることも
出来るので該酸の合成も又工業的に有意義である。
【0005】(+)−タートラニル酸の製法としては、
酒石酸モノアニリドの加熱脱水による方法が知られてい
る。本発明者らはこの方法を追試した結果、反応生成物
は複雑であり、高温加熱による着色物の生成が多く、目
的物の収率も低く旋光度は文献記載値よりも低かった。
上記文献中Pressman等の方法は、(+)−酒石酸を無水
酢酸と触媒量の硫酸の作用によりジアセチル酒石酸無水
物に誘導し、この物質にアニリンを反応させて得られる
ジアセチル酒石酸モノアニリド(ジアセチルタートラニ
ル酸)を加水分解して、(+)−タートラニル酸を得る
と言うものである。上記文献中Montzka 等は、この方法
を用いてベンゼン環に置換基を有するタートラニル酸を
合成している。ジアセチル酒石酸無水物の合成法は、N.
Rabjohn,Ed., Organic Syntheses,Coll.Vol.IV, John W
iley & Sons,INC.,New York N.Y.,1963,p 242 に記載さ
れている。本法によれば、酒石酸と無水酢酸は触媒量の
硫酸存在下に激しく反応し生成した酢酸は沸騰するに至
る。反応物を冷却して析出したジアセチル酒石酸無水物
は濾過し、ベンゼン、エーテルで漏斗上洗浄すれば、7
1〜77%の収率で得られる。此の物質はやや不安定で
長時間の保存には耐えられないので、必要に応じて調製
するのが望ましいとされている。
【0006】ジアセチル酒石酸無水物とアニリンの反応
は、メチレンクロライド、クロロホルムの様な不活性な
溶媒に前者を溶解又は懸濁し、この中にアニリンを直
接、又は溶媒に希釈して、室温ないし溶媒の沸騰温度で
添加することによって行われる。反応完結のために、普
通数時間加熱する。生成したジアセチルタートラニル酸
は、3.3モル当量のアルカリ水溶液を用いて抽出し、
抽出層は暫時50℃程度に保ってアセチル基の加水分解
を行い、冷却後、酸性にして析出したタートラニル酸を
濾過する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】タートラニル酸を工業
的規模で光学分割剤として利用している例は少ない(特
公昭57-8102 号公報,Montzka,U.S.P.3,452,086(1969))
。しかしながら、本発明者らは(+)−、又は(−)
−タートラニル酸が、安価な原料、少ない工程数、高い
収率で得られること、又、これらタートラニル酸が極め
て取扱い容易であることを研究の結果知ったので、工業
的規模での製造は、これらによって光学分割して得られ
る光学活性アミン、即ち、医薬、農薬、液晶組成物等、
有用物の生産にとって貢献するところ大であると考え、
工業生産に適する方法を研究し、本発明を完成した。
(±)−タートラニル酸は、(+)−、又は(−)−タ
ートラニル酸を得る中間体として重要である。本発明は
光学分割剤として有用なタートラニル酸を工業的有利に
製造する方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
解決するため鋭意研究したところ酒石酸と無水酢酸との
反応においては、従来必要とされて来た硫酸触媒の代わ
りに、無触媒或いは有機スルホン酸、ルイス酸等温和な
触媒を用いることにより、副生する酢酸、過剰の無水酢
酸を直接反応混合物から留去することを可能とし、それ
により不安定なジアセチル酒石酸無水物を単離すること
なく直ちにアニリン類との反応を行うことができること
を発見し本発明に到達した。すなわち、本発明は以下の
各項に要約することができる。
【0009】(1)(+)−、(−)−又は(±)−酒
石酸1モルを3.0〜3.3モルの無水酢酸中、触媒量
の有機スルホン酸又はルイス酸等の存在又は不存在下、
70〜100℃に加熱反応させた後、直ちに副生した酢
酸及び過剰の無水酢酸を溜去することを特徴とする結晶
性の(+)−、(−)−又は新規(±)−ジアセチル酒
石酸無水物の製造方法。 (2)上記(1)に記載の方法で得られた結晶性の
(+)−、(−)−又は(±)−ジアセチル酒石酸無水
物を不活性な溶媒の存在下に、室温乃至用いた溶媒の沸
点の温度範囲でアニリン類(アニリン又はハロゲン置換
誘導体)の1〜1.2モル当量と反応させて得られるジ
アセチルタートラニル酸を単離することなく、室温乃至
冷却下に3.3〜3.5モルのアルカリ水溶液に転溶
し、室温放置又は加熱下に加水分解後酸性とすることを
特徴とする結晶状の(+)−、新規(−)−又は新規
(±)−タートラニル酸を製造する方法。
【0010】(3)上記(1)に記載の方法で得られた
結晶性の(+)−、(−)−又は(±)−ジアセチル酒
石酸無水物を不活性な溶媒の存在下に、室温乃至用いた
溶媒の沸点の温度範囲でアニリン類(アニリン又はハロ
ゲン置換誘導体)の1〜1.2モル当量と反応させて得
られるジアセチルタートラニル酸を単離することなく、
不活性溶媒を留去した後メタノールに置換し、この溶液
に3.3〜3.5モル当量のKOHのメタノール溶液を
加えて加水分解し、結晶状に分離した(+)−、(−)
−又は(±)−タートラニル酸カリウム水和物を濾取
し、水に溶解後酸性とすることを特徴とする結晶状の
(+)−、新規(−)−又は新規(±)−タートラニル
酸を製造する方法。
【0011】(4)結晶性の(+)−、(−)−又は
(±)−ジアセチル酒石酸無水物を不活性な溶媒の存在
下に、室温乃至用いた溶媒の沸点の温度範囲でアニリン
類の1〜1.2モル当量と反応させて得られるジアセチ
ルタートラニル酸を単離することなく、室温乃至冷却下
に3.3〜3.5モルのアルカリ水溶液に転溶し、室温
放置又は加熱下に加水分解後酸性とすることを特徴とす
る結晶状の(+)−、(−)−又は(±)−タートラニ
ル酸を製造する方法。
【0012】(5)結晶性の(+)−、(−)−又は
(±)−ジアセチル酒石酸無水物を不活性な溶媒の存在
下に、室温乃至用いた溶媒の沸点の温度範囲でアニリン
類の1〜1.2モル当量と反応させて得られるジアセチ
ルタートラニル酸を単離することなく、不活性溶媒を留
去した後メタノールに置換し、この溶液に3.3〜3.
5モル当量のKOHのメタノール溶液を加えて加水分解
し、結晶状に分離した(+)−、(−)−又は(±)−
タートラニル酸カリウム水和物を濾取し、水に溶解後酸
性とすることを特徴とする結晶状の(+)−、(−)−
又は(±)−タートラニル酸を製造する方法。
【0013】(6)下記一般式で表される(−)−又は
(±)−タートラニル酸。
【化2】
【0014】
【発明の実施の形態】上記Org.Synth.所載のジアセチル
酒石酸無水物の合成法によれば、硫酸の様な強酸性触媒
の使用、生じたジアセチル酒石酸無水物の濾過、ベンゼ
ン洗浄、エーテル処理等現代化学工業上好ましくない副
原料の使用、不安定な目的物を取り扱うには不適当な工
程などが含まれている。本発明者は、この反応を検討し
た結果、酒石酸と無水酢酸の反応によって生ずる酢酸を
留去することを考えた。ところが、硫酸の存在によっ
て、例え低温で濃縮しても、あるいは無水酢酸ナトリウ
ムで中和した後低温で濃縮しても、ジアセチル酒石酸無
水物が著しく着色してしまい、その後の反応によって得
られたタートラニル酸の収量、品質ともに満足できるも
のではなかった。そこで硫酸触媒に代わる、(+)−、
(−)−又は(±)−酒石酸と無水酢酸の反応触媒を見
出せば課題を解決出来ると考え研究した。
【0015】上記文献中Pressmanらは、ジアセチル酒石
酸無水物をクロロホルム、メチレンクロライド等の不活
性溶媒中アニリンと反応させ、生じたジアセチルタート
ラニル酸を単離せず、過剰のアルカリ水溶液に抽出しそ
のままアセチル基を加水分解し、塩酸で酸性にして、析
出するタートラニル酸を濾取している。本反応の後処理
として、加える塩酸の量はタートラニル酸に対して3.
3モル当量以上必要である。その結果、酢酸2モル当
量、タートラニル酸1モル当量、塩化アルカリ3.3モ
ル当量が生成する。しかしながら、2モル当量の酢酸の
存在は目的物であるタートラニル酸の溶解度を増大させ
るので、収量が低下し、又、酢酸臭の除去は困難で品質
低下の原因となる。更に、副生する塩化アルカリは目的
物に付着し、タートラニル酸を分析するとハロゲンの反
応が陽性であり、再結晶を繰り返す必要が生じる。本発
明者らはタートラニル酸合成の後処理の段階で、これら
の問題を解決出来れば、目的物タートラニル酸の収量、
品質向上に役立つと考えた。
【0016】本発明者らは、硫酸触媒を加えない場合で
も、(+)−、又は(−)−酒石酸と無水酢酸の反応は
約100℃で容易に進行するが(±)−酒石酸と無水酢
酸の反応は100℃でも極めて遅いことを見出した。前
述したように、不安定なジアセチル酒石酸無水物を単離
せずに次の工程に用いる為には副生した酢酸、過剰の無
水酢酸を溜去すれば良いが、硫酸触媒が存在するのでジ
アセチル酒石酸無水物が褐変し、更に目的のタートラニ
ル酸の収量、品質も満足できるものではなかった。無触
媒でも反応が進行したので、そのまま副生した酢酸、過
剰の無水酢酸の留去を試みたところ、ジアセチル酒石酸
無水物が無色の結晶状で得られ、収率も定量的であっ
た。
【0017】そこで、温和な酸性触媒の有無を更に検討
した。その結果、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホ
ン酸、メタンスルホン酸等の有機スルホン酸、塩化亜
鉛、塩化錫、塩化アルミニウム、塩化鉄等のいわゆるル
イス酸が酸性触媒として、無触媒の場合よりも極めて顕
著に触媒効果を示し、70〜100℃において3〜10
分で酒石酸が消失し、20〜30分の反応後、副生酢
酸、過剰の無水酢酸の溜去においても生成ジアセチル酒
石酸無水物の着色もなく、無色の結晶として目的物が定
量的収率で得られた。反応性の低い(±)−酒石酸と無
水酢酸の反応の場合でも10〜15分で原料酒石酸が消
失し、(+)−、又は(−)−酒石酸におけると全く同
様の結果が得られた。これらの酸性触媒はその後の工程
においても全く影響を与えなかった。上記触媒は一般に
酒石酸に対して0〜1.0重量%の範囲で用いるのが好
ましい(触媒量)。
【0018】(従来の技術)の項で説明した様にタート
ラニル酸製造工程においては、 1)ジアセチル酒石酸無水物の単離 2)不活性溶媒中でのジアセチル酒石酸無水物とアニリ
ン類の反応 3)生成ジアセチルタートラニル酸の苛性アルカリ水溶
液による抽出、加水分解 4)加水分解後、酸性として分離析出したタートラニル
酸の単離 5)タートラニル酸の精製 がある。本発明によれば、ジアセチル酒石酸無水物の単
離精製は不要で、副生酢酸の留去後直ちに2)の工程を
行い、更に溶媒留去後KOHメタノール溶液に置換して
加水分解し、難溶性のタートラニル酸カリウム塩・水和
物を濾過して易溶性の酢酸カリウムと分離、次いで上記
4)、5)の工程を行う。この間、ジアセチル酒石酸無
水物の製造からジアセチルタートラニル酸の加水分解ま
での工程を反応容器を変えることなく1ポットで行うこ
とが出来るので極めて合理的である。
【0019】すなわち、ジアセチル酒石酸無水物製造工
程で、副生酢酸、過剰の無水酢酸を溜去後、反応容器に
メチレンクロライド、ジクロロエタン、クロロホルム、
トルエン等の不活性溶媒を注入してジアセチル酒石酸無
水物の大部分を溶解し、一部懸濁のまま室温乃至40℃
で攪拌しながら、1.05〜1.1モル当量のアニリン
又はハロゲン置換アニリン誘導体、例えば4−クロロア
ニリンをそのまま、又は上記溶媒に溶解してゆっくりと
注入すると一部懸濁していたジアセチル酒石酸無水物は
消失して反応が進行する。この間顕著な発熱は無いが必
要に応じて流水で冷却する。添加後2〜4時間40℃に
保ち反応を完結させる。次いで溶媒を留去すると、ジア
セチルタートラニル酸が粘稠なオイル状残さとして得ら
れる。ジアセチルタートラニル酸は単離することなく、
これにメタノールを加えて溶解し、さらにKOH3.3
〜3.5モル当量のメタノール溶液を攪拌しながら水冷
却下に加える。暫くするとカリウム塩が析出し始める。
アルカリ溶液添加後反応温度を60〜70℃に保って加
水分解する。
【0020】この間嵩高な微細結晶が多量析出して来る
が時間と共に重質な結晶に変化する。60〜70℃で3
〜4時間反応させた後十分に冷却し、タートラニル酸カ
リウム塩を濾過し、冷メタノールで洗浄、乾燥する。収
率80〜90%。少量を取り、メタノール・水から再結
晶するとタートラニル酸カリウム・1.5水和物が得ら
れ、分析一致した。 C1013NO5 K・1.5 H2 O(分子量290.307) 理論値:C;41.38%,H;4.51%,N;4.82% 実験値:C;41.43%,H;4.79%,N;4.60%
【0021】この工程は次の様に示される。
【化3】
【0022】即ち、タートラニル酸カリウム塩1モル、
酢酸カリウム2モル及び水1モルが生じるが前者はメタ
ノールに難溶であるのに対して後者は極めて易溶であ
る。従って両者は濾過によって容易に分離することが出
来、次工程のタートラニル酸単離・精製が容易となる。
この工程において、文献に従ってジアセチルタートラニ
ル酸の加水分解をアルカリ水溶液中で行った場合タート
ラニル酸単離に必要な塩酸は3.3モル等量以上とな
り、副生する酢酸はタートラニル酸の回収量を低下さ
せ、且つ品質に悪影響を及ぼす。本発明の方法によれ
ば、タートラニル酸カリウム塩は精製することなく4倍
量の熱水に溶解し、計算量より若干過剰の濃塩酸を加え
るとタートラニル酸が析出してくる。冷後氷水で十分冷
却し濾過、冷水少量で洗い乾燥すると約90%の収率で
タートラニル酸が得られる。本品はそのまま光学分割に
使用できる純度であるが、必要に応じて4倍量の水から
再結晶すれば回収率80〜90%で純粋なタートラニル
酸が得られる。
【0023】 (+)−タートラニル酸 (+)-(2R,3R)-2,3-ジヒドロキシ -4-オキソ -4-フェニルアミノブタン酸 C1011NO5 (分子量225.20) 理論値:C;53.33%,H;4.92%,N;6.22% 実験値:C;53.24%,H;4.99%,N;6.15% 〔α〕D +114.0°(C 4.05,MeOH,25℃) m.p.179〜182℃
【0024】 (−)−タートラニル酸 (-)-(2S,3S)-2,3-ジヒドロキシ -4-オキソ -4-フェニルアミノブタン酸 C1011NO5 (分子量225.20) 理論値:C;53.33%,H;4.92%,N;6.22% 実験値:C;53.37%,H;5.12%,N;6.38% 〔α〕D −114.6°(C 4.03,MeOH,25℃) m.p.179〜182℃
【0025】 (±)−タートラニル酸 (±)-(2RS,3RS)-2,3-ジヒドロキシ -4-オキソ -4-フェニルアミノブタン酸 C1011NO5 (分子量225.20) 理論値:C;53.33%,H;4.92%,N;6.22% 実験値:C;53.15%,H;5.05%,N;6.27% m.p.179〜182℃
【0026】 (+)−4−クロロ−タートラニル酸 (+)-(2R,3R)-2,3-ジヒドロキシ -4-オキソ -4-(4'-クロロフェニルアミノ) ブタン酸 C1010ClNO5 (分子量269.5) 理論値:C;46.26%,H;3.83%,N;5.40% 実験値:C;46.04%,H;3.52%,N;5.45% 〔α〕D +110.5°(C 4.00,MeOH,25℃) m.p.192〜195℃
【0027】 (−)−4−クロロ−タートラニル酸 (-)-(2S,3S)-2,3-ジヒドロキシ -4-オキソ -4-(4'-クロロフェニルアミノ) ブタン酸 C1010ClNO5 (分子量269.5) 理論値:C;46.26%,H;3.83%,N;5.40% 実験値:C;46.25%,H;3.51%,N;5.28% 〔α〕D −112.1°(C 4.01,MeOH,25℃) m.p.192〜195℃以上説明したタートラニル酸
の製法は(+)−、(−)−及び(±)−酒石酸のいず
れの酸を原料としても適応できる。(−)−及び(±)
−タートラニル酸は文献未載の新規化合物であり、
(±)−タートラニル酸から光学分割によって(+)
−、及び(−)−タートラニル酸を得ることができる。
反応装置、中間生成物の処理、副原料等に問題のあった
従来の方法を工業生産に適するよう触媒の選定、加水分
解法等の研究を行った結果、高品質のタートラニル酸
を、短時間、好収量で得ることを可能にした。
【0028】
【実施例】以下、実施例を上げて本発明を更に詳しく説
明するが、勿論下記実施例に限定されるものではない。 (実施例1)(+)−酒石酸 75g(0.5mo
l)、無水酢酸160ml(d=1.08,172.8
g,1.69mol,1.13mol等量)を1Lナス
型フラスコに仕込み、ロータリー・エバポレーターに装
着する。沸騰水浴中で攪拌すると約10分で酒石酸が完
全に消失して無色均一溶液となった。そのまま30分攪
拌してから浴温を70℃に下げ、減圧下に副生した酢酸
と過剰の無水酢酸を可及的に留去すると、残留物は固化
し結晶塊となった。冷却後メチレンクロライド500m
lを加えて攪拌すると、大部分のジアセチル酒石酸無水
物は溶解し一部懸濁状態となった。この懸濁液に、攪拌
下アニリン51g(0.547mol)のメチレンクロ
ライド200ml溶液を浴温20〜25℃で添加した。
不溶物は急速に溶解して淡桃色透明溶液になった。次い
で浴温を40℃に上げて更に4時間反応させた。メチレ
ンクロライドを減圧留去するとジアセチルタートラニル
酸が淡褐色透明なオイルとして得られた。この物を単離
することなく、メタノール430mlを加えて溶解し、
攪拌しながらKOH 110g(1.96mol,1.
3mol当量)のメタノール400ml溶液を水で冷却
しながら加えた。この時、中和熱で反応温度が上がり結
晶の析出が始まった。添加後浴温を70℃に上げて4〜
6時間加熱攪拌を続けた。この間結晶の量が増加して攪
拌効果が低下したが、そのまま攪拌していると結晶の状
態は徐々に変化し、重質の結晶となった。反応後冷却
し、結晶を吸引濾過した。濾斗上冷メタノールで洗い、
乾燥すると無色の(+)−タートラニル酸カリウム塩1
17g(1水和物として83.2%)が得られた。
【0029】(実施例2)(+)−酒石酸 150g
(1.0mol)、無水酢酸350ml(d=1.0
8,378g,3.7mol,1.23mol当量)及
び無水塩化亜鉛1gを2Lナス型フラスコに仕込み、ロ
ータリー・エバポレーターに装着する。沸騰水浴中で攪
拌すると約3分で酒石酸が完全に消失して無色均一溶液
となった。そのまま30分攪拌してから浴温を70℃に
下げ、減圧下に副生した酢酸と過剰の無水酢酸を可及的
に留去すると、残留物は固化し結晶塊となった。冷却後
メチレンクロライド1200mlを加えて攪拌すると、
大部分のジアセチル酒石酸無水物は溶解し一部懸濁状態
となった。この懸濁液に、攪拌下アニリン108g
(1.16mol)のメチレンクロライド400ml溶
液を浴温20〜25℃で添加した。不溶物は急速に溶解
して淡桃色透明溶液になった。次いで浴温を40℃に上
げて更に4時間反応させた。メチレンクロライドを減圧
留去するとジアセチルタートラニル酸が淡褐色透明なオ
イルとして得られた。この物を単離することなく、メタ
ノール1000mlを加えて溶解し、攪拌しながらKO
H 220g(3.92mol,1.3mol当量)の
メタノール500ml溶液を水で冷却しながら加えた。
この時、中和熱で反応温度が上がり結晶の析出が始まっ
た。添加後浴温を70℃に上げて4〜6時間加熱攪拌を
続けた。この間結晶の量が増加して攪拌効果が低下した
が、そのまま攪拌していると結晶の状態は徐々に変化
し、重質の結晶となった。反応後冷却し、結晶を吸引濾
過した。濾斗上冷メタノールで洗い、乾燥すると無色の
(+)−タートラニル酸カリウム塩252g(1水和物
として89.6%)が得られた。
【0030】(実施例3)(−)−酒石酸 15g
(0.1mol)、無水酢酸35ml(d=1.08,
37.8g,0.37mol,1.23mol当量)及
び無水塩化亜鉛0.1gを200mlナス型フラスコに
仕込み、ロータリー・エバポレーターに装着する。沸騰
水浴中で攪拌すると約3分で酒石酸が完全に消失して無
色均一溶液となった。そのまま30分攪拌してから浴温
を70℃に下げ、減圧下に副生した酢酸と過剰の無水酢
酸を可及的に留去すると、残留物は固化し結晶塊となっ
た。冷却後メチレンクロライド120mlを加えて攪拌
すると、大部分のジアセチル酒石酸無水物は溶解し一部
懸濁状態となった。この懸濁液に、攪拌下アニリン1
0.8g(0.12mol)のメチレンクロライド40
ml溶液を浴温20〜25℃で添加した。不溶物は急速
に溶解して淡桃色透明溶液になった。次いで浴温を40
℃に上げて更に4時間反応した。メチレンクロライドを
減圧留去するとジアセチルタートラニル酸が淡褐色透明
なオイルとして得られた。この物を単離することなく、
メタノール100mlを加えて溶解し、攪拌しながらK
OH22g(0.39mol,1.3mol等量)のメ
タノール50ml溶液を水で冷却しながら加えた。この
時、中和熱で反応温度が上がり結晶の析出が始まった。
添加後浴温を70℃に上げて4〜6時間加熱攪拌を続け
た。この間結晶の量が増加して攪拌効果が低下したが、
そのまま攪拌していると結晶の状態は徐々に変化し、重
質の結晶となった。反応後冷却し、結晶を吸引濾過し
た。濾斗上冷メタノールで洗い、乾燥すると無色の
(−)−タートラニル酸カリウム塩25g(1水和物と
して89.%)が得られた。
【0031】(実施例4)(+)−酒石酸15g(0.
1mol)、無水酢酸35ml(d=1.08,37.
8g,0.37mol,1.23mol当量)及びp−
トルエンスルホン酸・1水和物0.1gを用いて実施例
1と同じ反応を行い、得られたジアセチル酒石酸無水物
をアニリン10.8g(0.12mol)と反応させ
た。反応生成物(ジアセチルタートラニル酸)をメタノ
ール中KOH22g(0.39mol,1.3mol当
量)で加水分解し、(+)−タートラニル酸カリウム塩
25g(1水和物として89%)を得た。
【0032】(実施例5)(+)−酒石酸15g(0.
1mol)、無水酢酸35ml(d=1.08,37.
8g,0.37mol,1.23mol当量)及びメタ
ンスルホン酸0.1gを用いて実施例1と同じ反応を行
い、得られたジアセチル酒石酸無水物をアニリン10.
8g(0.12mol)と反応させた。反応生成物(ジ
アセチルタートラニル酸)をメタノール中KOH22g
(0.39mol,1.3mol当量)で加水分解し、
(+)−タートラニル酸カリウム塩23g(1水和物と
して82%)を得た。
【0033】(実施例6)(±)−酒石酸15g(0.
1mol)、無水酢酸35ml(d=1.08,37.
8g,0.37mol,1.23mol当量及び無水塩
化亜鉛・0.1gを用いて実施例1と同じ反応を行い、
得られたジアセチル酒石酸無水物をアニリン10.8g
(0.12mol)と反応させた。反応生成物(ジアセ
チルタートラニル酸)をメタノール中KOH22g
(0.39mol,1.3mol当量)で加水分解し、
(±)−タートラニル酸カリウム塩24g(1水和物と
して85%)を得た。
【0034】(実施例7)(+)−酒石酸15g(0.
1mol)、無水酢酸35ml(d=1.08,37.
8g,0.37mol,1.23mol当量)及び塩化
第二錫0.1gを用いて実施例1と同じ反応を行い、得
られたジアセチル酒石酸無水物をアニリン10.8g
(0.12mol)と反応させた。反応生成物(ジアセ
チルタートラニル酸)をメタノール中KOH22g
(0.39mol,1.3mol当量)で加水分解し、
(+)−タートラニル酸カリウム塩24g(1水和物と
して85%)を得た。
【0035】(実施例8)(+)−酒石酸75g(0.
5mol)、無水酢酸160ml(d=1.08,17
2.8g,1.69mol,1.13mol当量)及び
無水塩化亜鉛0.5gを1Lナス型フラスコに仕込み、
ロータリー・エバポレーターに装着する。沸騰水浴中で
攪拌すると約10分で酒石酸が完全に消失して無色均一
溶液となった。そのまま30分攪拌してから浴温を70
℃に下げ、減圧下に副生した酢酸と過剰の無水酢酸を可
及的に留去すると、残留物は固化し結晶塊となった。冷
却後メチレンクロライド500mlを加えて攪拌する
と、大部分のジアセチル酒石酸無水物は溶解し一部懸濁
状態となった。この懸濁液に、攪拌下アニリン51g
(0.547mol)のメチレンクロライド200ml
溶液を浴温20〜25℃で添加した。不溶物は急速に溶
解して淡桃色透明溶液になった。次いで浴温を40℃に
上げて更に4時間反応させた。室温に冷却してKOH1
10g(1.96mol,1.3mol当量)の水60
0ml溶液でジアセチルタートラニル酸を水層に抽出
し、そのまま40℃に2時間保って加水分解した。黄褐
色の水溶液に濃塩酸200mlを加えて酸性とし、氷水
中で十分冷却した後、析出したタートラニル酸を吸収濾
過した。濾斗上冷水少量で洗い乾燥した。収量81.7
g(72.6%)。淡褐色で僅かに酢酸臭があり、熱水
溶液はハロゲン試験に対して強陽性であった。本品を3
00mlの水から再結晶して68g(回収率83%)の
回収率でハロゲン含有率の低いタートラニル酸を得た。
【0036】(実施例9)実施例1〜7に準じて合成し
た(+)−タートラニル酸カリウム塩・1水和物252
g(0.89mol)に水1リットルを加えて加熱溶解
した。この熱水溶液に濃塩酸100mlを加えると発熱
して反応し、(+)−タートラニル酸が析出した。氷水
中十分冷却し、結晶を吸引濾過、濾斗上冷水少量で洗い
乾燥した。185g(92%)。本品は殆ど無色の長薄
片状結晶でハロゲン試験に対して微陽性であった。更に
水750mlから再結晶して149g(80.5%回収
率)の純(+)−タートラニル酸が得られた。
【0037】(実施例10)実施例9に記載した(+)
−タートラニル酸再結晶母液(約850ml)に25
5.5g(0.91mol)の(+)−タートラニル酸
カリウム塩・1水和物を加えて加熱溶解し、これに濃塩
酸90mlを加えた。発熱して反応し、(+)−タート
ラニル酸が析出した。氷水中十分冷却し、結晶を吸引濾
過、濾斗上冷水少量で洗い乾燥した。216g(92
%)。本品は殆ど無色の長薄片状結晶でハロゲン試験に
対して微陽性であった。更に水800mlから再結晶し
て172g(79.5%回収率)の純(+)−タートラ
ニル酸が得られた。
【0038】(実施例11)実施例6に準じて、(+)
−酒石酸15g(0.1mol)、無水酢酸35ml及
び無水塩化亜鉛0.1gを反応させて(+)−ジアセチ
ル酒石酸無水物を得、4−クロルアニリンと反応させて
4’−クロル−ジアセチルタートラニル酸に誘導した。
この物質をメタノール中KOHで加水分解して4’−ク
ロルタートラニル酸カリウム塩水和物27.8g(88
%)を得た。本品を150mlの熱水に溶解し濃塩酸1
1mlを加えて酸性とし、定法に従って処理して(+)
−4’−クロルタートラニル酸23.5g(90%回
収、収率79.2%)を得た。m.p.192〜194
℃,〔α〕D +111.0°(C 2.3,EtOH,
25℃)
【0039】(実施例12)実施例4に準じて、(−)
−酒石酸15g(0.1mol)、無水酢酸35ml及
びp−トルエンスルホン酸0.1gを反応させてジアセ
チル酒石酸無水物を得、4−クロルアニリンと反応させ
て4’−クロル−ジアセチルタートラニル酸に誘導し
た。この物質をメタノール中KOHで加水分解して4’
−クロルタートラニル酸カリウム塩水和物28.4g
(90%)を得た。本品を150mlの熱水に溶解し濃
塩酸11mlを加えて酸性とし、定法に従って処理して
(−)−4’−クロルタートラニル酸23.8g(88
%回収、収率80.1%)を得た。m.p.192〜1
94℃,〔α〕D −111.0°(C 2.2,EtO
H,25℃)。本品を水から再結晶して、m.p.19
2〜195℃,〔α〕D −112.1°(C 4.0
1,EtOH,25℃)の純品を得た。
【0040】(参考例)(+)−酒石酸75g(0.5
mol)を無水酢酸170mlに加え、これに濃硫酸4
滴を加えて75℃で攪拌すると約2分で酒石酸が溶解消
失した。そのまま30分反応させ、これに無水酢酸ナト
リウム0.3gを加えて10分攪拌した。副生した酢酸
及び過剰の無水酢酸を70〜75℃で減圧下に留去し
た。反応物は次第に褐色を帯びてきた。この後実施例1
に準じて反応し、茶褐色に着色した(+)−タートラニ
ル酸カリウム塩・1水和物96gを得た。本品を定法に
従って処理し60g(53.3%)の不純なタートラニ
ル酸を得た。
【0041】
【発明の効果】
i)酒石酸と無水酢酸の反応に於いて、従来必要とされ
て来た硫酸触媒の代わりに、無触媒或いは有機スルホン
酸、ルイス酸等緩和な触媒を用いることにより、副生す
る酢酸、過剰の無水酢酸を直接反応混合物から留去する
ことを可能にした。このことにより不安定なジアセチル
酒石酸無水物を単離することなく直ちにアニリン類との
反応を行うことができる。 ii)ジアセチルタートラニル酸の加水分解をメタノール
中KOHによって行い、生成したメタノール難溶性のタ
ートラニル酸カリウム塩・1水和物を濾過洗浄するのみ
で易溶性の酢酸カリウム塩から容易に且つ高純度に分離
取得できる。 iii)この結果、タートラニル酸カリウム塩の複分解に
要する塩酸の量を1/3に削減でき、同時に酢酸の副生
を避けることが出来るので、回収タートラニル酸の収率
が向上し、酢酸臭、無機塩の混入が殆ど無い。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 洪 南基 神奈川県平塚市須賀2700番地 大東化学株 式会社内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (+)−、(−)−又は(±)−酒石酸
    1モルを3.0〜3.3モルの無水酢酸中、触媒量の有
    機スルホン酸又はルイス酸等の存在又は不存在下、70
    〜100℃に加熱反応させた後、直ちに副生した酢酸及
    び過剰の無水酢酸を溜去することを特徴とする結晶性の
    (+)−、(−)−又は(±)−ジアセチル酒石酸無水
    物の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の方法で得られた結晶性の
    (+)−、(−)−又は(±)−ジアセチル酒石酸無水
    物を不活性な溶媒の存在下に、室温乃至用いた溶媒の沸
    点の温度範囲でアニリン類の1〜1.2モル当量と反応
    させて得られるジアセチルタートラニル酸を単離するこ
    となく、室温乃至冷却下に3.3〜3.5モルのアルカ
    リ水溶液に転溶し、室温放置又は加熱下に加水分解後酸
    性とすることを特徴とする結晶状の(+)−、(−)−
    又は(±)−タートラニル酸を製造する方法。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の方法で得られた結晶性の
    (+)−、(−)−又は(±)−ジアセチル酒石酸無水
    物を不活性な溶媒の存在下に、室温乃至用いた溶媒の沸
    点の温度範囲でアニリン類の1〜1.2モル当量と反応
    させて得られるジアセチルタートラニル酸を単離するこ
    となく、不活性溶媒を留去した後メタノールに置換し、
    この溶液に3.3〜3.5モル当量のKOHのメタノー
    ル溶液を加えて加水分解し、結晶状に分離した(+)
    −、(−)−又は(±)−タートラニル酸カリウム水和
    物を濾取し、水に溶解後酸性とすることを特徴とする結
    晶状の(+)−、(−)−又は(±)−タートラニル酸
    を製造する方法。
  4. 【請求項4】 結晶性の(+)−、(−)−又は(±)
    −ジアセチル酒石酸無水物を不活性な溶媒の存在下に、
    室温乃至用いた溶媒の沸点の温度範囲でアニリン類の1
    〜1.2モル当量と反応させて得られるジアセチルター
    トラニル酸を単離することなく、室温乃至冷却下に3.
    3〜3.5モルのアルカリ水溶液に転溶し、室温放置又
    は加熱下に加水分解後酸性とすることを特徴とする結晶
    状の(+)−、(−)−又は(±)−タートラニル酸を
    製造する方法。
  5. 【請求項5】 結晶性の(+)−、(−)−又は(±)
    −ジアセチル酒石酸無水物を不活性な溶媒の存在下に、
    室温乃至用いた溶媒の沸点の温度範囲でアニリン類の1
    〜1.2モル当量と反応させて得られるジアセチルター
    トラニル酸を単離することなく、不活性溶媒を留去した
    後メタノールに置換し、この溶液に3.3〜3.5モル
    当量のKOHのメタノール溶液を加えて加水分解し、結
    晶状に分離した(+)−、(−)−又は(±)−タート
    ラニル酸カリウム水和物を濾取し、水に溶解後酸性とす
    ることを特徴とする結晶状の(+)−、(−)−又は
    (±)−タートラニル酸を製造する方法。
  6. 【請求項6】 下記一般式で表される(−)−又は
    (±)−タートラニル酸。 【化1】
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