[第1例]
本開示の実施の形態の第1例について、図1~図11(D)を用いて説明する。なお、軸方向、径方向、および周方向とは、特に断らない限り、逆入力遮断クラッチ1の軸方向、径方向、および周方向をいう。本例において、逆入力遮断クラッチ1の軸方向、径方向、および周方向は、入力部材3の軸方向、径方向、および周方向と一致し、かつ、出力部材4の軸方向、径方向および周方向と一致する。また、軸方向一方側とは、入力部材3側(図3の右側)をいい、軸方向他方側とは、出力部材4側(図3の左側)をいう。
<逆入力遮断クラッチの構造の説明>
本例の逆入力遮断クラッチ1は、被押圧部材2と、入力部材3と、出力部材4と、係合子5と、板ばね6とを備える。逆入力遮断クラッチ1は、入力部材3に入力される回転トルクを出力部材4に伝達するのに対し、出力部材4に逆入力される回転トルクは完全に遮断して入力部材3に伝達しないか、または、その一部のみを入力部材3に伝達して残部を遮断する逆入力遮断機能を有する。
被押圧部材2は、内周面に被押圧面7を有する。被押圧面7の径方向内側に、入力部材3の入力側係合部14および出力部材4の出力側係合部21が同軸に配置され、かつ、係合子5が被押圧面7に対する遠近方向の移動を可能に配置される。被押圧面7の径方向内側で、入力側係合部14、出力側係合部21、および係合子5は回転可能である。また、被押圧面7は、係合子5が被押圧面7に近づく方向に移動した場合に、係合子5の押圧面33と接触する面を構成する。
本例では、被押圧面7は、軸方向から見て円環状であり、これに限られないが、本例では、軸方向に関して内径の変化しない円筒面状の形状を有する。
本例では、被押圧部材2は、ハウジングなどの使用時にも回転しない固定部分に支持固定されて、その回転が拘束される。あるいは、被押圧部材2は、該固定部分により構成される。被押圧部材2は、内周面に被押圧面7を有する限り、その形状は問われない。
本例では、被押圧部材2は、出力側素子8と、図示しない入力側素子とを備える。
出力側素子8は、段付円筒面状の内周面を有する。すなわち、出力側素子8の内周面は、軸方向一方側の大径円筒面部9と、軸方向他方側の小径円筒面部10とを、軸方向一方側を向いた接続面部11により接続してなる。本例では、大径円筒面部9により、被押圧面7が構成されている。また、出力側素子8は、小径円筒面部10の軸方向他方側の端部に、径方向内側に向けて突出した内向フランジ部12を有する。
出力側素子8に前記入力側素子をがたつきなく嵌合(インロー嵌合)させることにより、出力側素子8と前記入力側素子とを径方向に位置決めした状態で、該出力側素子8と該入力側素子とを、ボルトなどの結合部材により互いに結合することにより、被押圧部材2を構成する。被押圧部材2は、前記固定の部分に備えられた通孔に挿通したボルトを、出力側素子8の軸方向他方側の側面に開口するねじ孔13に螺合することにより、前記固定の部分に支持固定される。
入力部材3は、被押圧面7の径方向内側に配置された入力側係合部14を有し、被押圧面7と同軸に配置されている。入力部材3は、電動モータなどの入力側機構に接続され、回転トルクが入力され、該回転トルクの入力により、被押圧面7の径方向内側において回転可能に構成される。入力側係合部14は、入力部材3の回転中心Oから径方向外側に外れた部分に設けられ、係合子5の入力側被係合部34と係合する部分を有する。入力側係合部14は、入力部材3または係合子5の回転に伴って、その径方向内側面17を、入力側被係合部34の径方向内側面36に係合(接触)させるように構成される。
本例では、入力部材3は、入力側係合部14のほかに、入力軸部15と、入力フランジ部16とを有する。
入力軸部15は、円筒形状を有する。
入力フランジ部16は、入力軸部15の軸方向他方側の端部外周面から径方向外側に向けて全周にわたり突出している。
入力側係合部14は、入力フランジ部16の軸方向他方側の側面のうちで回転中心Oから径方向外側に外れた部分から軸方向他方側に向けて突出している。
入力側係合部14は、係合子5の入力側被係合部34と係合するように構成されている限り、その形状については限定されない。また、入力側係合部14の個数は、係合子5の個数に応じて決定され、係合子5が複数の係合子5により構成される場合、入力側係合部14も複数の入力側係合部14により構成される。
本例の逆入力遮断クラッチ1では、係合子5は、2つの係合子5により構成される。このため、入力側係合部14は、係合子5の個数に合わせて、2つの入力側係合部14により構成される。2つの入力側係合部14は、入力フランジ部16の軸方向他方側の側面の径方向反対側2箇所位置に配置され、かつ、入力部材3の径方向に関して互いに離隔している。また、それぞれの入力側係合部14は、周方向に関して対称な形状を有する。
本例では、それぞれの入力側係合部14は、軸方向から見て、径方向外側に向かうほど周方向幅が大きくなる略扇形または略台形の端面形状を有する。それぞれの入力側係合部14の径方向内側面17は、互いに平行な平坦面により構成されており、かつ、それぞれの入力側係合部14の径方向外側面18は、入力フランジ部16の外周面と同じ円筒面状の輪郭形状を有する。それぞれの入力側係合部14の2つの周方向側面19は、径方向外側に向かうほど互いに離れる方向に傾斜した平坦面により構成されている。径方向内側面17と周方向側面19とは、軸方向から見て略円弧形の輪郭形状を有する曲面部20により接続されている。
入力部材3は、被押圧部材2あるいは前記固定部分に回転自在に支持されることができる。本例では、入力部材3は、ラジアル軸受により、前記入力側素子の内側に回転自在に支持されている。
出力部材4は、被押圧面7の径方向内側において入力側係合部14よりも径方向内側に配置された出力側係合部21を有し、被押圧面7と同軸に配置されている。すなわち、出力部材4は、入力部材3とも同軸に配置されている。出力部材4は、減速機構などの出力側機構に接続されており、その回転に伴って、該出力側機構に回転トルクを出力するように構成されている。
出力側係合部21は、入力側係合部14よりも径方向内側であるが、出力部材4の回転中心Oから径方向外側に外れた部分を有し、当該部分が、係合子5の出力側被係合部35と係合可能な位置に配置される。出力側係合部21は、出力部材4または係合子5の回転に伴って、前記部分が出力側被係合部35と係合するように構成される。
本例では、出力部材4は、出力側係合部21のほか、出力軸部22と、出力フランジ部23と、小径軸部24とを有する。
出力軸部22は、段付円柱形状を有する。
出力フランジ部23は、出力軸部22の軸方向一方側の端部外周面から径方向外側に向けて全周にわたり突出している。
出力側係合部21は、出力軸部22の軸方向一方側の側面の中央部から軸方向一方側に向けて突出している。
出力側係合部21は、出力側被係合部35と係合する部分を有するように構成されている限り、その形状については限定されない。また、出力側係合部21のうちの出力側被係合部と係合する部分の個数は、係合子5の個数に応じて決定され、係合子5が複数の係合子5により構成される場合、出力側係合部21も複数の前記係合する部分を有するように構成される。なお、係合子が1つの係合子により構成される場合にも、出力側係合部は、複数の前記係合する部分を備えることができる。
本例では、出力側係合部21は、係合子5の個数に合わせて、2つの出力側被係合部35と係合する部分を有するように構成されている。
本例では、出力側係合部21は、軸方向から見て略矩形または略長円形の端面形状を有し、出力軸部22の軸方向一方側の端面の中央部から軸方向一方側に向けて突出している。すなわち、出力部材4の回転中心Oから、出力側被係合部35と係合する部分である出力側係合部21の外周面までの距離は、周方向に関して一定でない。このため、出力側係合部21は、カム機能を有する。
より具体的には、出力側係合部21の外周面は、互いに平行な2つの平坦面25と、それぞれが部分円筒面状の2つの凸曲面26とにより構成されている。したがって、出力部材4の回転中心Oから出力側係合部21の外周面までの距離は、周方向にわたり一定でない。2つの凸曲面26のそれぞれは、出力部材4の回転中心Oを中心とする部分円筒面により構成されている。
出力側係合部21は、出力部材4の回転中心Oを通り、かつ、平坦面25に直交する仮想平面に対して面対称である。さらに、出力側係合部21は、出力部材4の回転中心Oを通り、かつ、平坦面25に平行な仮想平面に対して面対称である。
このような出力側係合部21は、2つの入力側係合部14同士の間部分に配置される。
小径軸部24は、円柱形状を有し、出力側係合部21の軸方向一方側の端面の中央部から軸方向一方側に向けて突出している。
出力部材4は、被押圧部材2あるいは前記固定部分に回転自在に支持されることができる。本例では、出力部材4は、ラジアル転がり軸受27により、被押圧部材2の出力側素子8の径方向内側に回転自在に支持されている。ラジアル転がり軸受27の外輪28は、出力側素子8の小径円筒面部10にがたつきなく内嵌され、かつ、内向フランジ部12の軸方向一方側の側面と、小径円筒面部10の軸方向一方側の端部に係止された止め輪29aとの間で軸方向に挟持されている。ラジアル転がり軸受27の内輪30は、出力軸部22の軸方向一方側の端部にがたつきなく外嵌され、かつ、出力フランジ部23の軸方向他方側の側面と、出力軸部22の軸方向中間部外周面に係止された止め輪29bとの間で軸方向に挟持されている。
なお、図示の例では、ラジアル転がり軸受27は、転動体31として玉を使用した玉軸受により構成されている。ただし、出力部材4を支持するためのラジアル転がり軸受は、転動体として円すいころを使用した円すいころ軸受や円筒ころを使用したころ軸受により構成することもできる。
また、出力部材4の小径軸部24は、入力部材3の内側に滑り軸受(スリーブ)32により、入力部材3に対する相対回転を自在に支持されている。
係合子5は、被押圧面7に対向する押圧面33と、入力側係合部14と係合可能な入力側被係合部34と、出力側係合部21と係合可能な出力側被係合部35とを有し、被押圧面7に対する遠近方向である第1方向の移動を可能に配置されている。
係合子5は、入力部材3に回転トルクが入力されると、入力側係合部14が入力側被係合部34に係合することに基づいて、第1方向に関して被押圧面7から離れる方向に移動し、出力側被係合部35を出力側係合部21に係合させることで、入力部材3に入力された回転トルクを出力部材4に伝達するのに対し、出力部材4に回転トルクが逆入力されると、出力側被係合部35に出力側係合部21が係合することに基づいて、押圧面33を被押圧面7に押し付けて、押圧面33を被押圧面7に摩擦係合させるように構成されている。
係合子5は、かかる構成を備えた1つの係合子5により構成することもできるし、2つ以上の係合子5により構成することもできる。
本例では、係合子5は、2つの係合子5により構成される。それぞれの係合子5が、係合子5としての機能を有する。それぞれの係合子5は、軸方向から見て略半円形の端面形状を有し、かつ、幅方向(図5に矢印Bで示す方向)に関して対称な形状を有する。以下、それぞれの係合子5の構成について説明する。
本例では、係合子5に関して径方向とは、被押圧面7に対する押圧面33の遠近方向であり、図5において矢印Aで示す方向に相当する。係合子5に関して幅方向とは、被押圧面7に対する押圧面33の遠近方向と入力部材3の軸方向との両方に直交する方向であり、図5において矢印Bで示す方向に相当する。本例では、係合子5に関する径方向が、第1方向に相当し、係合子5に関する幅方向が、第2方向に相当する。
押圧面33は、被押圧面7に対向する係合子5の径方向外側面に備えられている。本例では、押圧面33は、係合子5の径方向外側面のうち、周方向に関して互いに離隔した2箇所位置に備えられた、2つの押圧面33により構成されている。それぞれの押圧面33は、被押圧面7の曲率半径よりも小さい曲率半径を有する部分円筒面状の凸曲面により構成されている。
係合子5の径方向外側面のうち、2つの押圧面33から周方向に外れた部分は、軸方向から見た場合に、入力部材3の中心軸Oを中心とし、かつ、2つの押圧面33に接する仮想円よりも、径方向内側に存在している。すなわち、2つの押圧面33が被押圧面7に当接した状態で、2つの押圧面33から周方向に外れた部分は、被押圧面7に当接しない。
押圧面33は、係合子5のその他の部分よりも被押圧面7に対する摩擦係数が大きい表面性状を有することが好ましい。また、押圧面33は、係合子5のその他の部分と一体に構成することもできるし、係合子5のその他の部分に、貼着や接着などにより固定された摩擦材の表面により構成することもできる。
本例では、入力側被係合部34は、係合子5の幅方向中央部の径方向中間部に備えられている。より具体的には、これに限定されないが、入力側被係合部34は、軸方向から見て略弓形の開口形状を有し、かつ、係合子5の幅方向中央位置の径方向中間部を軸方向に貫通する貫通孔により構成されている。
入力側被係合部34は、入力側係合部14を緩く挿入できる大きさを有する。したがって、入力側被係合部34の内側に入力側係合部14を挿入した状態で、入力側係合部14と入力側被係合部34の内面との間には、係合子5の幅方向および径方向にそれぞれ隙間が存在する。このため、入力側係合部14は、入力側被係合部34に対し、入力部材3の回転方向に関する変位が可能であり、入力側被係合部34は、入力側係合部14に対し、係合子5の径方向の変位が可能である。
入力側被係合部34は、入力側係合部14と係合可能に構成されている限り、その形状については限定されない。
本例では、入力側被係合部34の内面のうち、径方向外側を向いた径方向内側面36は、第1方向に直交する平坦面により構成されており、かつ、入力側被係合部34の内面のうち、径方向内側を向いた径方向外側面37は、軸方向から見て略V字形の輪郭形状を有する複合面により構成されている。具体的には、径方向外側面37は、係合子5の幅方向に関する中間部に、部分円筒面状の凹曲面部38を有し、かつ、係合子5の幅方向に関する両側部分に、該係合子5の幅方向に互いに離れるほど係合子5の径方向に関して内側に向かう方向に傾斜した2つの傾斜面部39を有する。径方向内側面36の第2方向両側の端部と径方向外側面37の第2方向両側の端部とを接続する周方向側面40は、部分円筒面状の凹曲面により構成されている。
本例では、出力側被係合部35は、係合子5の径方向内側面の幅方向中央部に備えられている。出力側被係合部35は、出力側係合部21と係合可能に構成されている限り、その形状については限定されない。
本例では、係合子5は、径方向内側面に、該係合子5の径方向に直交する平坦面部41を有し、かつ、平坦面部41のうち、係合子5の幅方向に関する2箇所位置に、径方向内側に向けて突出する2つの凸部42を有する。そして、出力側被係合部35は、平坦面部41のうち、幅方向に関して2つの凸部42同士の間に存在する部分により構成されている。なお、本例では、出力側被係合部35の幅方向寸法、すなわち2つの凸部42同士の間隔は、出力側係合部21の平坦面25の幅方向寸法よりも大きくなっている。
本例の逆入力遮断クラッチ1では、2つの係合子5の押圧面33を径方向に関して互いに反対側に向け、かつ、平坦面部41を互いに対向させた状態で、それぞれの係合子5を被押圧部材2の径方向内側に、それぞれの係合子5の径方向であり、被押圧面7に対する押圧面33の遠近方向に相当する第1方向の移動を可能に配置する。また、軸方向一方側に配置した入力部材3の2つの入力側係合部14を、2つの係合子5のそれぞれの入力側被係合部34に軸方向に挿入し、かつ、軸方向他方側に配置した出力部材4の出力側係合部21を、2つの係合子5の出力側被係合部35同士の間に軸方向に挿入する。すなわち、2つの係合子5は、それぞれの出力側被係合部35により、出力側係合部21を径方向外側から挟むように配置される。
2つの係合子5を被押圧部材2の径方向内側に配置した状態で、被押圧面7と2つの押圧面33との間部分、および、2つの係合子の2つの凸部42同士が対向することにより構成される凸部42同士の2つの組み合わせのそれぞれの先端面同士の間部分の少なくとも一方に隙間が存在するように、被押圧部材2の内径寸法と係合子5の径方向寸法が規制されている。
板ばね6は、第2方向に関して入力側係合部14の両側に配置され、かつ、入力側係合部14と入力側被係合部34との間で弾性的に挟持される2つの被挟持部43と、該2つの被挟持部43同士を接続する基部44とを有する。
2つの被挟持部43は、第2方向に関して互いに向き合う方向の成分と、係合子5の径方向に関して外側を向いた成分とを有する弾力を入力側係合部14に付与する。また、2つの被挟持部43は、第2方向に関して互いに離れる方向の成分と、係合子5の径方向に関して内側を向いた成分とを有する弾力を係合子5に付与する。
本例では、それぞれの被挟持部43は、該被挟持部43自身の周方向1箇所位置に不連続部を有し、かつ、外周面の曲率半径が、入力側被係合部34の周方向側面40よりもわずかに小さい欠円筒形状を有する。なお、これに限定されるものではないが、図示の例では、それぞれの被挟持部43は、軸方向から見て略3/4円弧形の端面形状を有する。
基部44は、入力側係合部14の径方向外側面18と、入力側被係合部34の径方向外側面37との間に配置されて、2つの被挟持部43の基端部同士、すなわち2つの被挟持部43自身の周方向に関する両側の端部のうち、第2方向に関して互いに遠い側の端部同士を接続する。
本例では、基部44は、軸方向から見て略V字形の端面形状を有する。具体的には、基部44は、第2方向に関する中間部に、部分円筒状の湾曲部45を有し、かつ、第2方向に関する両側部分に、該第2方向に互いに離れるほど第1方向に関して被押圧面7から遠ざかる方向に向かう方向に傾斜した2つの傾斜板部46を有する。
板ばね6は、2つの被挟持部43を互いに近づけるように、基部44を弾性変形させた状態で、入力側被係合部34の内側に配置され、かつ、それぞれの被挟持部43は、弾性的に圧縮(縮径)された状態で、入力側係合部14の周方向側面19と、入力側被係合部34の周方向側面40との間で挟持されている。このため、それぞれの被挟持部43が拡径するように弾性的に復元しようとすることに基づいて、被挟持部43の先端部付近の外周面が、入力側係合部14の周方向側面19に弾性的に押し付けられる。
また、基部44が2つの被挟持部43を互いに遠ざける方向に弾性的に復元しようとするとともに、それぞれの被挟持部43が拡径するように弾性的に復元しようとすることに基づいて、それぞれの被挟持部43の外周面のうち、周方向側面19に当接した部分と被挟持部43の径方向に関して略反対側に位置する部分が、入力側被係合部34の周方向側面40に弾性的に押し付けられる。
板ばね6を入力側被係合部34の内側に配置した状態において、基部44の径方向外側面のうちの少なくとも1箇所位置を、入力側被係合部34のうちで径方向内側を向いた径方向外側面37に当接させている。本例では、湾曲部45の径方向外側面を、入力側被係合部34の径方向外側面37のうちの凹曲面部38に当接させている。
本例では、板ばね6は、第2方向に関して対称な形状を有する。したがって、2つの被挟持部43のばね特性は互いに同じになっている。また、2つの被挟持部43の軸方向に関する幅寸法と、基部44の軸方向に関する幅寸法とを互いに同じとしている。さらに、2つの被挟持部43の軸方向に関する幅寸法および基部44の軸方向に関する幅寸法を、係合子5の軸方向厚さとほぼ同じとしている。
ただし、2つの被挟持部の軸方向に関する幅寸法および基部の軸方向に関する幅寸法を、係合子の軸方向厚さよりも小さくしたり大きくしたりすることもできる。また、2つの被挟持部の軸方向に関する幅寸法と、基部の軸方向に関する幅寸法とを互いに異ならせることもできる。
板ばね6は、係合子5に対する軸方向の相対変位を規制する規制部47をさらに有する。
規制部47は、2つの被挟持部43または基部44の軸方向両側の端部から折れ曲がり、かつ、係合子5のうち、入力側被係合部34の周辺部分の軸方向両側部分に配置される折れ曲がり片48を有する。
本例では、規制部47は、基部44を構成するそれぞれの傾斜板部46の軸方向両側の端部から該係合子5の径方向外側に向けて折れ曲がり、かつ、係合子5のうち、傾斜面部39の径方向外側に位置する部分の軸方向両側に配置された4つの折れ曲がり片48を有する。別の言い方をすれば、それぞれの折れ曲がり片48により、係合子5のうち、傾斜面部39の径方向外側に位置する部分を軸方向両側から挟持することで、係合子5に対する板ばね6の軸方向の相対変位を規制している。
このような板ばね6は、鋼板などの弾性を有する金属板に、プレスによる打ち抜き加工や曲げ加工を施すことにより、全体を一体に造られている。
本例の逆入力遮断クラッチ1は、任意の構成要素として、付勢部材49と、2つのスペーサ50およびストッパ部材51とをさらに備える。
付勢部材49は、出力部材4の出力側係合部21と係合子5との間に備えられ、係合子5を、第1方向に関して押圧面33を被押圧面7に近づける方向に弾性的に付勢する。本例では、付勢部材49は、2つの係合子5の径方向内側面と出力部材4の出力側係合部21との間にそれぞれ配置された、2つの付勢部材49により構成されている。
それぞれの付勢部材49は、2つの腕部52と2つの接続部53を有する板ばねにより構成されている。それぞれの腕部52は、先端部に開口する切り欠きを有し、板厚方向(係合子5の径方向)から見て略U字形の平面形状を有する。それぞれの接続部53は、2つの腕部52の基端部のうち、軸方向両側の端部同士を接続する矩形平板により構成されている。
それぞれの付勢部材49は、2つの腕部52に形成された切り欠きを、係合子5の2つの凸部42に係合させることにより、係合子5に支持されている。本例では、それぞれの係合子5と出力側係合部21との位置関係、具体的には、それぞれの係合子5の径方向位置およびそれぞれの係合子5に対する出力側係合部21の回転位相にかかわらず、出力側係合部21が、それぞれの付勢部材49を構成する2つの接続部53に弾性的に当接するようにしている。これにより、出力側係合部21と出力側被係合部35との間のがたつきを抑えている。
なお、付勢部材は、係合子を、押圧面を被押圧面に近づける方向に弾性的に付勢することで、出力部材に回転トルクが逆入力された際に、速やかにロック状態または半ロック状態に切り換えることができる限り、その形状は特に限定されない。たとえば、付勢部材を、2つの係合子の径方向内側面同士の間に弾性的圧縮した状態で挟持されたねじりコイルばねにより構成することもできる。
それぞれのスペーサ50は、平板状に構成され、軸方向から見て略長円形または略矩形の端面形状を有する。それぞれのスペーサ50は、出力側係合部21をがたつきなく挿通可能な通孔54を有する。それぞれのスペーサ50は、それぞれの通孔54に出力側係合部21をがたつきなく挿通した状態で、2個の係合子5の軸方向両側に配置される。
ストッパ部材51は、欠円環状の止め輪により構成されている。すなわち、ストッパ部材51は、軸方向から見て略C字形の端面形状を有する。
ストッパ部材51は、小径軸部24の軸方向他方側の端部に係止されている。これにより、2つのスペーサ50のうち、軸方向一方側のスペーサ50の軸方向一方側への変位が阻止されている。本例では、2つの係合子5に支持された付勢部材49を、2つのスペーサ50を介して、出力フランジ部23の軸方向一方側の側面とストッパ部材51との間で軸方向に挟持することにより、出力部材4に対する2個の係合子5の軸方向に関する相対変位を防止している。
<逆入力遮断クラッチの動作説明>
本例の逆入力遮断クラッチ1の動作について、図6および図7を用いて説明する。なお、図6および図7は、板ばね6および付勢部材49を省略するとともに、入力部材3および出力部材4と、2つの係合子5との間の径方向に関する隙間を誇張して示している。
入力部材3に回転トルクが入力されると、入力部材3の回転方向に関係なく、2つの係合子5は被押圧面7から離れる方向に移動する。より具体的には、図6に示すように、入力側係合部14が、第2方向に関して入力側係合部14の両側に配置された2つの被挟持部43のうちで入力部材3の回転方向に関して入力側係合部14の前側に配置された被挟持部43から入力側係合部14に付与される抵抗力に抗して、該前側に配置された被挟持部43を弾性的に圧縮させながら、入力側被係合部34の内側で入力部材3の回転方向(図6の例では反時計方向)に回転する。
これにより、入力側係合部14の径方向内側面17と入力側被係合部34の径方向内側面36との間の隙間を減少させ、入力側係合部14の径方向内側面17を入力側被係合部34の径方向内側面36に接触させる。
この状態から、入力部材3がさらに回転すると、入力側係合部14の径方向内側面17により入力側被係合部34の径方向内側面36が径方向内側に向けて押圧され、係合子5が被押圧面7から離れる方向に移動する。すなわち、2つの係合子5が、入力部材3との係合に基づき、互いに近づく方向である径方向内側に向けて移動して、2つの係合子5の径方向内側面が互いに近づき、2つの係合子5の出力側被係合部35により出力部材4の出力側係合部21が径方向両側から挟持される。
このように、出力側係合部21の平坦面25が係合子5の平坦面部41と平行になるように出力部材4を回転させつつ、出力側係合部21と係合子5の出力側被係合部35とをがたつきなく係合させる。この結果、入力部材3に入力された回転トルクが、2つの係合子5を介して、出力部材4に伝達され、該出力部材4から出力される。
出力部材4に回転トルクが逆入力されると、出力部材4の回転方向に関係なく、2つの係合子5は被押圧面7に近づく方向に移動する。より具体的には、図7に示すように、出力側係合部21が、2つの係合子5の出力側被係合部35同士の内側で、出力部材4の回転方向(図7の例では時計方向)に回転する。出力側係合部21の外周面のうち、平坦面25と凸曲面26との接続部(角部)により出力側被係合部35が径方向外側に向けて押圧され、2つの係合子5が被押圧面7に近づく方向に移動する。
すなわち、2つの係合子5が、出力部材4との係合に基づき、互いに離れる方向である径方向外側に向けて移動して、2つの係合子5の押圧面33が、被押圧面7に接触し、被押圧面7に対して摩擦係合する。
この結果、出力部材4に逆入力された回転トルクが完全に遮断されて入力部材3に伝達されないか、または、出力部材4に逆入力された回転トルクの一部のみが入力部材3に伝達され残部が遮断される。
出力部材4に逆入力された回転トルクを完全に遮断して入力部材3に伝達されないようにするには、係合子5の押圧面33が被押圧面7に対して摺動(相対回転)しないように、係合子5を出力側係合部21と被押圧部材2との間で突っ張らせ(挟持して)、出力部材4をロックする。
出力部材4に逆入力された回転トルクのうちの一部のみが入力部材3に伝達され残部が遮断されるようにするには、係合子5の押圧面33が被押圧面7に対して摺動するように、係合子5を出力側係合部21と被押圧部材2との間で突っ張らせ(挟持して)、出力部材4を半ロックする。
本例の逆入力遮断クラッチ1では、以上の動作が可能となるように、各構成部材間の隙間の大きさが調整されている。特に、2つの係合子5の押圧面33が被押圧面7に接触した位置関係において、入力側係合部14の径方向内側面17と入力側被係合部34の径方向内側面36との間に隙間が存在するようにしている。
これにより、出力部材4に回転トルクが逆入力されたときに、係合子5の径方向外側への移動が入力側係合部14によって阻止されることが防止され、かつ、押圧面33が被押圧面7に接触した後も、押圧面33と被押圧面7との接触部に作用する面圧が、出力部材4に逆入力された回転トルクの大きさに応じて変化するようにして、出力部材4のロックまたは半ロックが適正に行われるようにしている。
本例の逆入力遮断クラッチ1によれば、国際公開2019/026794号に記載の逆入力遮断クラッチと同様の理由により、軸方向寸法を短くでき、かつ、部品点数を抑えることができる。
本例の逆入力遮断クラッチ1は、入力部材3および出力部材4のそれぞれの回転を、係合子5の径方向移動に変換する。このように入力部材3および出力部材4の回転を係合子5の径方向移動に変換することで、係合子5を、該係合子5の径方向内側に位置する出力部材4に係合させたり、係合子5を、該係合子5の径方向外側に位置する被押圧部材2に押し付けたりするようにしている。
このように、本例の逆入力遮断クラッチ1は、入力部材3および/または出力部材4の回転によって制御される係合子5の径方向移動に基づき、入力部材3から出力部材4に回転トルクが伝達可能になる非ロック状態と、出力部材4の回転が防止されるロック状態または出力部材4の回転が抑制される半ロック状態とを切り替えることができるため、逆入力遮断クラッチ1の装置全体の軸方向寸法を短くできる。
しかも、係合子5に、入力部材3に入力された回転トルクを出力部材4に伝達する機能と、出力部材4をロックまたは半ロックする機能との両方の機能を持たせている。このため、逆入力遮断クラッチ1の部品点数を抑えることができ、かつ、回転トルクを伝達する機能とロックまたは半ロックする機能とをそれぞれ別の部材に持たせる場合に比べて、動作を安定させることができる。
たとえば、回転トルクを伝達する機能とロックまたは半ロックする機能とを別の部材に持たせる場合、ロック解除または半ロック解除のタイミングと回転トルクの伝達開始のタイミングとがずれる可能性がある。この場合、ロック解除または半ロック解除から回転トルクの伝達開始までの間に出力部材に回転トルクが逆入力されると、出力部材が再びロックまたは半ロックされてしまう。
本例では、係合子5に、回転トルクを出力部材4に伝達する機能と、出力部材4をロックまたは半ロックする機能との両方の機能を持たせているため、このような不都合が生じることを防止できる。
また、入力部材3から係合子5に作用する力の向きと、出力部材4から係合子5に作用する力の向きとを逆向きにしているため、両方の力の大小関係を規制することで、係合子5の移動方向を制御できる。このため、出力部材4のロック状態または半ロック状態と非ロック状態との切り換え動作を安定して確実に行うことができる。
特に、本例の逆入力遮断クラッチ1では、板ばね6を構成する2つの被挟持部43を、第2方向に関して入力側係合部14の両側に配置し、かつ、入力側係合部14と入力側被係合部34との間で弾性的に挟持している。このため、入力部材3が回転する際には、2つの被挟持部43のうちで入力部材3の回転方向に関して入力側係合部14の前側に配置された被挟持部43を、該ねじりコイルばね6から入力側係合部14に付与される抵抗力に抗して弾性的に圧縮させる必要がある。
したがって、逆入力遮断クラッチ1の組立作業の作業性を確保すべく、入力側係合部14と入力側被係合部34との間の周方向に関する隙間をある程度確保した場合でも、係合子5に対する入力部材3のがたつきを抑えることができる。このため、本例の逆入力遮断クラッチ1によれば、ロック解除または半ロック解除時にも、入力側係合部14と入力側被係合部34とが勢い良く衝突することを防止でき、入力側係合部14と入力側被係合部34との衝突に基づいて耳障りな異音が発生するのを防止することができる。
本例では、上述のように、入力部材3のがたつきを抑えるための板ばね6を、弾性を有する金属板に、プレスによる打ち抜き加工や曲げ加工を施すことにより、全体を一体に造っている。このため、たとえば、第2方向に関して入力側係合部の両側部分にそれぞれ、2つのねじりコイルばねを配置する場合と比較して、部品点数を抑えることができ、逆入力遮断クラッチ1の製造コストを抑えやすくできる。
本例の逆入力遮断クラッチ1では、2つの被挟持部43は、第2方向に関して互いに向き合う成分を有する弾力を入力側係合部14に付与する。さらに、2つの被挟持部43のばね定数や自由長などのばね特性を同じとしている。このため、入力部材3と出力部材4とのいずれにもトルクが加わっていない中立状態において、第2方向に関して、入力側係合部14を入力側被係合部34の中央位置に位置させることができる。
換言すれば、入力部材3の回転方向にかかわらず、入力側係合部14と入力側被係合部34との間の周方向に関する隙間を同じにすることができる。このため、入力部材3に入力される回転トルクの向きが逆転する際に、入力側係合部14と入力側被係合部34との間の周方向隙間が大きくなることを防止できて、入力部材3のがたつきが大きくなることを防止できる。
ただし、入力部材3の片方向の回転にのみ、高い応答性が求められ、他方向の回転については、高い応答性を求められない場合などには、互いに係合する入力側係合部と入力側被係合部との間に配置された2つの被挟持部のばね特性を互いに異ならせることもできる。
2つの被挟持部のばね特性を異ならせることで、入力部材と出力部材とのいずれにもトルクが加わっていない中立状態において、入力側係合部と入力側被係合部との間の周方向に関する隙間のうち、入力部材が片方向に回転する場合に前側に存在する隙間を、入力部材が他方向に回転する場合に前側に存在する隙間よりも小さくすることができる。このため、入力部材が片方向に回転する場合の応答性を向上させることができる。
また、本例の逆入力遮断クラッチ1によれば、組立作業の作業性を向上させることができる。
逆入力遮断クラッチ1を組み立てる際には、まず、入力部材3を前記入力側素子の内側に回転自在に支持し、かつ、出力部材4を出力側素子8の内側に、ラジアル転がり軸受27により回転自在に支持する。また、係合子5の入力側被係合部34の内側に板ばね6を組み付けるとともに、係合子5の径方向内側の端部に付勢部材49を組み付ける。
次に、出力部材4の小径軸部24および出力側係合部21を、軸方向他方側のスペーサ50の通孔54に軸方向他方側から挿入し、該軸方向他方側のスペーサ50の軸方向他方側の側面と、出力フランジ部23の軸方向側の側面とを当接させる。
次いで、板ばね6および付勢部材49が組み付けられた2つの係合子5を、出力部材4の出力側係合部21と、出力側素子8の内周面に備えられた被押圧面7との間に配置する。
そして、前記入力側素子の内側に回転自在に支持された入力部材3の2つの入力側係合部14と、2つの係合子5の入力側被係合部34との周方向に関する位相を一致させた状態で、入力部材3および前記入力側素子と、出力部材4および出力側素子8とを軸方向に関して互いに近づく方向に変位させる。これにより、出力側素子8に前記入力側素子をがたつきなく嵌合させるとともに、2つの入力側係合部14を、それぞれの入力側被係合部34に挿入する。そして、前記入力側素子と出力側素子8とを、結合部材により互いに結合することにより、逆入力遮断クラッチ1を組み立てる。
本例の逆入力遮断クラッチ1では、板ばね6を構成する基部44の径方向外側面のうちの少なくとも1箇所位置を、入力側被係合部34のうちで径方向内側を向いた径方向外側面37に当接させている。具体的には、本例では、湾曲部45の径方向外側面を、入力側被係合部34の径方向外側面37のうちの凹曲面部38に当接させている。このため、入力部材3の入力側係合部14を入力側被係合部34に挿入する以前の状態で、入力側被係合部34の内側での板ばね6の位置決めを図ることができる。したがって、入力側係合部14を入力側被係合部34に挿入する作業を行いやすく、逆入力遮断クラッチ1の組立作業の作業性を向上させることができる。
なお、逆入力遮断クラッチ1を組み立てる手順は、矛盾を生じない限り、入れ替えたり同時に実施したりすることができる。
本例の逆入力遮断クラッチ1は、係合子5を、第1方向に関して押圧面33を被押圧面7に近づける方向に弾性的に付勢する付勢部材49を備える。このため、本例の逆入力遮断クラッチ1によれば、出力部材4に回転トルクが逆入力された際に、速やかにロック状態または半ロック状態に切り換えることができる。すなわち、本例の逆入力遮断クラッチによれば、ロック性能を良好に確保することができる。
本例の逆入力遮断クラッチ1では、2つの被挟持部43が係合子5に付与する弾力は、第1方向に関して押圧面33を被押圧面7から遠ざける方向の成分を含んでいる。ただし、本例では、付勢部材49により係合子に付与される弾力のうち、第1方向に関して押圧面33を被押圧面7に近づける方向の成分を、2つの被挟持部43により係合子5に付与される弾力のうち、第1方向に関して押圧面33を被押圧面7から遠ざける方向の成分よりも大きくしている。したがって、板ばね6を設けた場合でも、入力部材3と出力部材4とのいずれにもトルクが加わっていない中立状態において、係合子5を、第1方向に関して押圧面33を被押圧面7に近づける方向に弾性的に付勢することができる。
本例では、係合子5に設けられた入力側被係合部34を、該係合子5を軸方向に貫通する貫通孔により構成しているが、本開示を実施する場合、たとえば、図12に示すように、入力側被係合部34aを、係合子5aの径方向外側面に開口する切り欠きにより構成することもできる。あるいは、入力側被係合部を、係合子の軸方向一方側面にのみ開口する有底孔により構成することもできる。
本開示を実施する場合、入力部材、出力部材、被押圧部材、および、係合子の材質は、特に限定されない。たとえば、これらの材質としては、鉄合金、銅合金、アルミニウム合金などの金属のほか、必要に応じて強化繊維を混入した合成樹脂などを適用することができる。また、入力部材、出力部材、被押圧部材、および、係合子のそれぞれに対して、同じ材質を適用することもできるし、異なる材質を適用することもできる。
本開示を実施する場合、出力部材に回転トルクを逆入力した場合に、出力部材がロックまたは半ロックする条件さえ満たせば、入力部材、出力部材、被押圧部材、および、係合子が相互に接触する部分に、潤滑剤を介在させることもできる。あるいは、入力部材、出力部材、被押圧部材、および、係合子のうちの少なくとも1つを含油メタル製とすることもできる。
[第2例]
本開示の実施の形態の第2例について、図13および図14を用いて説明する。本例では、係合子5bの入力側被係合部34bの開口形状および板ばね6aの形状が、第1例と異なる。
本例では、入力側被係合部34bの内面のうち、径方向外側を向いた径方向内側面36は、第1方向に直交する平坦面により構成されている。また、入力側被係合部34bの内面のうち、径方向内側を向いた径方向外側面37aは、第2方向中間部に、部分円筒面状の凹曲面部38aを有し、かつ、係合子5bの第2両側部分に、係合子5の径方向に直交する平坦面部55を有する。径方向内側面36の第2方向両側の端部と径方向外側面37aの第2方向両側の端部とを接続する周方向側面40は、部分円筒面状の凹曲面により構成されている。
板ばね6aは、2つの被挟持部43aと、基部44aと、規制部47aを有する。
それぞれの被挟持部43aは、軸方向から見て略1/2円弧形の端面形状を有する。それぞれの被挟持部43aは、弾性的に縮径された状態で、入力側係合部14の周方向側面19と、入力側被係合部34bの周方向側面40との間で挟持されている。
基部44aは、湾曲部56と、2つの平板部57と、2つの傾斜板部58とを有する。
湾曲部56は、係合子5bの径方向に関する外側が凸となるように、部分円筒状に湾曲している。
それぞれの平板部57は、第2方向に関して湾曲部56の両側に隣接する部分に備えられ、第1方向に直交する矩形平板により構成されている。
それぞれの傾斜板部58は、第2方向に関して2つの平板部57の互いに遠い側の端部から、第1方向に関して押圧面7から遠ざかる方向に向け鈍角に折れ曲がっている。
規制部47aは、それぞれの傾斜板部58の軸方向両側の端部から径方向外側に向けて折れ曲がり、かつ、係合子5bのうち、周方向側面40の周囲に位置する部分の軸方向両側に配置された4つの折れ曲がり片48aを有する。
板ばね6aは、2つの被挟持部43aを互いに近づけるように、基部44aのうちの湾曲部56を弾性変形させた状態で、入力側被係合部34bの内側に配置され、かつ、それぞれの被挟持部43aは、弾性的に圧縮された状態で、入力側係合部14の周方向側面19と、入力側被係合部34bの周方向側面40との間で挟持されている。このため、それぞれの被挟持部43aが拡径するように弾性的に復元しようとすることに基づいて、被挟持部43aの先端部付近の外周面が、入力側係合部14の周方向側面19に弾性的に押し付けられる。また、湾曲部56が2つの被挟持部43aを互いに遠ざける方向に弾性的に復元しようとするとともに、それぞれの被挟持部43aが拡径するように弾性的に復元しようとすることに基づいて、それぞれの被挟持部43aの外周面のうち、周方向側面19に当接した部分と被挟持部43aの径方向に関して略反対側に位置する部分が、入力側被係合部34bの周方向側面40に弾性的に押し付けられる。
本例では、板ばね6aを入力側被係合部34bの内側に組み付けた状態で、平板部57の径方向外側面が、入力側被係合部34bの径方向外側面37aのうちの平坦面部55と弾性的に当接する。このため、入力部材3の入力側係合部14を入力側被係合部34bに挿入する以前の状態で、入力側被係合部34bの内側での板ばね6aの位置決めを図ることができる。その他の部分の構成および作用効果は、第1例と同様である。
[第3例]
本開示の実施の形態の第3例について、図15を用いて説明する。
本例では、板ばね6bを構成する2つの被挟持部43bが、入力部材3の入力側係合部14に対し、第2方向に関して互いに向き合う成分のみからなる弾力を付与し、かつ、係合子5に対し、第2方向に関して互いに離れる方向の成分のみからなる弾力を付与するようにしている。
すなわち、2つの被挟持部43bが入力側係合部14に付与する弾力は、第1方向の成分を含んでおらず、かつ、2つの被挟持部43bが係合子5に付与する弾力は、第1方向の成分を含んでいない。
本例によれば、板ばね6bによって、付勢部材49による係合子5の、第1方向に関して押圧面33を被押圧面7に近づける方向への付勢が妨げられることがないため、付勢部材49の弾力を小さく抑えることができる。したがって、逆入力遮断クラッチ1(図1~図4など参照)のロックまたは半ロックを解除するのに、最低限必要なトルクの大きさを小さく抑えることができて、逆入力遮断クラッチ1をロック状態または半ロック状態から非ロック状態に切り換える、ロック解除性能を良好に確保することができる。その他の部分の構成および作用効果は、第1例と同様である。
[第4例]
本開示の実施の形態の第4例について、図16を用いて説明する。
本例では、板ばね6cを構成する2つの被挟持部43cが、入力部材3の入力側係合部14に対し、第2方向に関して互いに向き合う成分と、第1方向に関して押圧面33を被押圧面7から遠ざける方向の成分とを有する弾力を付与し、かつ、係合子5に対し、第2方向に関して互いに離れる方向の成分と、第1方向に関して押圧面33を被押圧面7に近づける方向の成分とを有する弾力を付与するようにしている。
本例によれば、板ばね6cを構成する2つの被挟持部43cにより、係合子5を、第1方向に関して押圧面33を被押圧面7に近づける方向に弾性的に付勢することができる。このため、付勢部材49を省略するか、あるいは、付勢部材49の弾力を小さく抑えることができる。その他の部分の構成および作用効果は、第1例と同様である。