JP7443269B2 - 絶縁診断システムおよび絶縁診断方法 - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は、絶縁診断技術に関する。
回転電機は、銅、鉄などの金属材料、または樹脂を主材料とした絶縁材料で構成される。これらの材料は、回転電機の運転中に、電気的、熱的、機械的、環境的なストレスを受けて劣化する。特に、絶縁材料は、金属材料よりも不安定であるため劣化の進行が早い。そこで、劣化が進行して運転中に絶縁破壊に至らないようにし、回転電機を健全に稼働させるために、その信頼性を定期的に診断する必要がある。従来の診断方法としては、絶縁抵抗試験、耐圧試験、交流電流試験、誘電正接試験、部分放電試験などがある。特に、部分放電試験は、絶縁破壊の前駆現象である部分放電を捉えられるとともに、局所的な劣化を捉えられることから、最弱リンクモデルで考える場合の絶縁診断に向いている。
部分放電試験には、測定対象物から測定装置までをコンデンサで結合して行う接触方式と、空間的に静電容量結合した非接触方式がある。接触方式は、浮遊容量よりも大きな静電容量を意図的に回路に組み込むことができる。しかし、測定装置の設置には、コンデンサの接続または絶縁設計などの事前準備を必要とする。また、既設の回転電機に組み込む場合には、コンデンサの接続に大きな工事を要するため、回転電機の停電期間が大幅に長くなる。一方、非接触方式は、浮遊容量に相当する小さな静電容量を利用するため、正確な静電容量を知るのは困難であるが、接触方式に比べて、どこにでも設置できるという自由度の高さを有する。
回転電機の診断には、停止中に行われるオフライン診断と運転中に行われるオンライン診断がある。オフライン診断は、回転電機に測定装置を直に接触させて診断を行えるため、接触方式または非接触方式のいずれでも適用できる。しかし、オンライン診断は、遮断機の誤作動で回転電機を停止させないために、測定装置から回転電機の系統に逆流するノイズ信号を無くさなければならない。そのため、非接触方式で診断を行うことが好ましい。
近年、多くの回転電機では、その稼働率を向上させることが求められており、運転中に行える非接触のオンライン部分放電診断が注目されている。このような非接触のオンライン部分放電診断において、高電圧導体と距離を置いて設置したセンサで信号を取得し、その信号から得られる情報に基づいて、部分放電の発生の有無を判定する技術が知られている。
特開平8-166421号公報 国際公開第2015/190260号 特開2012-112696号公報
回転電機の絶縁診断技術では、センサで得られる情報から回転電機の余寿命を判定することで、回転電機の稼働率を向上させることが求められている。しかしながら、センサで得られる情報は、放電強度を示す電荷量の相対値であるため、センサの種類ごとに、絶縁診断の指標となる閾値を個別に決定しなければならない。いずれの種類のセンサを用いても、同じ閾値を用いて絶縁診断を行うためには、センサで得られる情報を電荷量そのものに換算する必要がある。
本発明の実施形態は、このような事情を考慮してなされたもので、センサで取得した電圧信号を絶縁診断の指標となる電荷量に換算することができる絶縁診断技術を提供することを目的とする。
本発明の実施形態に係る絶縁診断システムは、回転電機に接続された導体を伝搬する電圧信号を非接触で検知する少なくとも1つのセンサにより得られた前記電圧信号の局所的な放電に相当する区間のスペクトルを取得するスペクトル取得回路と、前記回転電機の停止中に試験用電圧を前記回転電機の測定対象の箇所と前記センサの箇所の2箇所に印加して前記センサが検知した前記電圧信号から得られた前記2箇所のそれぞれに対応する前記スペクトルの比で表される換算係数を取得する係数取得回路と、前記換算係数と前記回転電機の運転中に前記センサが検知した前記電圧信号から得られた前記スペクトルとに基づいて、前記測定対象の箇所で部分放電が発生したときの前記電圧信号の時間波形を復元する波形復元回路と、前記時間波形から前記部分放電に関する電荷量を算出する電荷量算出回路と、を備える。
本発明の実施形態により、センサで取得した電圧信号を絶縁診断の指標となる電荷量に換算することができる絶縁診断技術が提供される。
絶縁診断システムを示す構成図。 第1実施形態の診断装置を示すブロック図。 第1実施形態の絶縁診断方法を示すフローチャート。 センサで検知された電圧信号の波形を示すグラフ。 電荷量と信号のピーク値の関係を示すグラフ。 第2実施形態の診断装置を示すブロック図。 第2実施形態の絶縁診断方法を示すフローチャート。 オフセットされる時間波形を示すグラフ。 復元された時間波形を示すグラフ。 第3実施形態の電荷量と余寿命の関係を示すグラフ。 第4実施形態の余寿命推定方法の第1例を示すフローチャート。 第4実施形態の余寿命推定方法の第2例を示すフローチャート。
(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら、絶縁診断システムおよび絶縁診断方法の実施形態について詳細に説明する。まず、第1実施形態の絶縁診断システムおよび絶縁診断方法について図1から図5を用いて説明する。
図1の符号1は、絶縁診断システムである。この絶縁診断システム1は、回転電機2の非接触のオンライン部分放電診断を行うために用いられる。特に、絶縁診断システム1は、部分放電に関する電荷量を測定することで回転電機2の余寿命を診断する。なお、測定の対象となる回転電機2は、例えば、発電機または電動機などである。
回転電機2は、導体である銅、鉄などの金属材料、樹脂を主材料とした絶縁材料で構成される。例えば、回転電機2は、導体としてのコイル3を備える。また、このコイル3には、導体としての母線4が接続されている。母線4は、例えば、回転電機2の筐体5の内部に設けられている。
絶縁診断システム1は、センサ6と同軸ケーブル7と高周波増幅器8と検出インピーダンス9とADコンバータ10と診断装置11と表示部12とを備える。
センサ6は、母線4(導体)を伝搬する電圧信号を非接触で検知する。このセンサ6の信号は、同軸ケーブル7を介して高周波増幅器8に入力される。そして、電圧信号は、検出インピーダンス9を介してADコンバータ10に入力され、ADコンバータ10でアナログ信号からデジタル信号に変換される。そして、このデジタル信号が診断装置11に入力される。また、診断装置11で導出された診断結果は表示部12に表示される。
部分放電試験は、コイル3などの導体に高電圧が印加されたときに、この導体と接地部との間に発生する放電を検出する試験である。放電は、絶縁材料の剥離またはボイドといった欠陥部で多く発生する。このとき、電子の移動が起こっているため、高周波な電流変化が信号として導体中を伝搬する。部分放電試験では、その電流変化を検知することで、放電量と放電強度を測定する。
部分放電により発生する電流の変化は非常に微弱であり、それを精度よく測定する方法として、ハイパスフィルタを有する高周波増幅器8と検出インピーダンス9を用いた電圧測定方法がある。高周波増幅器8は、微弱な放電信号を増幅させ、診断装置11の感度で測定できるように放電信号を増幅する意図がある。また、ハイパスフィルタは、放電信号と関係のない成分を除外することでSN比を向上させる意図がある。
なお、ハイパスフィルタの遮断周波数は、回転電機2で使用される商用周波数よりも高いことが好ましい。回転電機2が発電機の場合は、60Hzより高いことが好ましい。また、2倍周波数まで遮断するのであれば120Hzより高いことが好ましい。さらに、放電信号と関係のない成分を充分に遮断するのであれば1kHz以上が好ましい。
また、検出インピーダンス9は、測定対象物である回転電機2から診断装置までの信号伝搬中のノイズ侵入を防ぐために使用される同軸ケーブル7の特性インピーダンスと一致させることが好ましい。これはインピーダンスの違いによって信号の反射が起こり、元の波形が歪むことで分析が困難になるのを防ぐためである。また、検出インピーダンス9は、オシロスコープの入力インピーダンスで代用されることが多く、このオシロスコープに多く採用されている50Ωを検出インピーダンス9とすることが一般的である。従って、使用される同軸ケーブル7は、特性インピーダンスが50Ωであることが好ましい。
なお、検出インピーダンス9で検出した信号は、電圧値として得られるが、その電圧値を検出インピーダンス9で割ることで電流値に換算できる。そのため、検出インピーダンス9で検出した信号は、本質的に電流値の意味合いを持つ値となる。その後、データ保存または分析の観点から、ADコンバータ10によりアナログ信号からデジタル信号に変換し、診断装置11において、そのデジタル信号から放電量と放電強度を計算する。
次に、診断装置11のシステム構成を図2に示すブロック図を参照して説明する。診断装置11は、入力部13と出力部14とメイン制御部15と記憶部16とを備える。この診断装置11は、CPU、ROM、RAM、HDDなどのハードウェア資源を有し、CPUが各種プログラムを実行することで、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて実現されるコンピュータで構成される。さらに、本実施形態の絶縁診断方法は、各種プログラムをコンピュータに実行させることで実現される。
入力部13には、センサ6で検知された電圧信号が入力される。例えば、ADコンバータ10で変換されたデジタル信号が入力部13に入力される。なお、入力部13には、センサ6からリアルタイムで電圧信号が入力される態様のみならず、他の態様で入力されても良い。例えば、センサ6で検知された電圧信号を一旦他の記録装置で記録しておき、その後、この記録装置で記録された電圧信号が診断装置11の入力部13に入力されても良い。
また、入力部13には、システムを使用するユーザの操作に応じて所定の情報が入力されても良い。例えば、入力部13には、マウスまたはキーボードなどの入力装置が含まれる。つまり、これら入力装置の操作に応じて所定の情報が入力部13に入力される。
出力部14は、所定の情報の出力を行う。この出力部14は、表示部12(ディスプレイ)に表示される画像の制御を行う。なお、表示部12は、コンピュータ本体と別体であっても良いし、一体であっても良い。さらに、ネットワークを介して接続される他のコンピュータが備える表示部12に表示される画像の制御を出力部14が行っても良い。
なお、本実施形態では、画像の表示を行う装置として表示部12を例示するが、その他の態様であっても良い。例えば、紙媒体に情報を印字するプリンタを表示部12の替りとして用いても良い。つまり、出力部14が制御する対象として、プリンタが含まれても良い。
メイン制御部15は、絶縁診断システム1を統括的に制御する。このメイン制御部15は、ピーク値取得回路17と関数取得回路18と電荷量算出回路19と余寿命算出回路20とを備える。これらは、メモリまたはHDDに記憶されたプログラムがCPUによって実行されることで実現される。
診断装置11の各構成は、必ずしも1つのコンピュータに設ける必要はない。例えば、ネットワークで互いに接続された複数のコンピュータを用いて1つの診断装置11を実現しても良い。例えば、関数取得回路18と電荷量算出回路19と余寿命算出回路20とが、それぞれの個別のコンピュータに搭載されていても良い。
記憶部16は、回転電機2の絶縁診断を行うときに必要な各種情報を記憶する。この記憶部16は、データベース21を備える。なお、このデータベース21は、メモリ、HDDまたはクラウドに記憶され、検索または蓄積ができるよう整理された情報の集まりである。
さらに、記憶部16は、ピーク値取得回路17が取得したピーク値を記憶するピーク値記憶機能22と、関数取得回路18が取得した算出関数を記憶する関数記憶機能23と、電荷量算出回路19が算出した回転電機2の部分放電に関する電荷量を記憶する電荷量記憶機能24とを備える。
データベース21は、回転電機2の部分放電に関する電荷量と回転電機2の余寿命の関係を示す余寿命情報を記憶する。このようにすれば、予めデータベース21に余寿命情報を蓄積し、この蓄積に基づいて余寿命を算出することができる。
次に、第1実施形態の絶縁診断システム1を用いて実行する絶縁診断方法について図3のフローチャートを用いて説明する。なお、図1と図2を適宜参照する。
図3に示すように、まず、ステップS11において、ピーク値取得回路17は、オフライン時信号取得処理を実行する。ここで、作業者は、回転電機2の停止中に、電荷量が既知の模擬放電である試験用電圧を回転電機2に印加する。そして、ピーク値取得回路17は、回転電機2の停止中にセンサ6により得られた電圧信号の局所的な放電に相当する区間のピーク値を取得する。なお、作業者は、試験用電圧の印加を複数回行う。
例えば、試験用電圧は、コイル3の測定対象の箇所P(図1)に入力される。ピーク値取得回路17は、試験用電圧のそれぞれのピーク値を取得する。さらに、記憶部16は、取得されたピーク値を記憶する。
次のステップS12において、関数取得回路18は、関数取得処理を実行する。ここで、関数取得回路18は、回転電機2の停止中にセンサ6が検知した電圧信号から得られた少なくとも2つのピーク値に基づいて、放電に関する電荷量を算出するための算出関数を取得する。さらに、記憶部16は、取得された算出関数を記憶する。
次のステップS13において、ピーク値取得回路17は、オンライン時信号取得処理を実行する。ここで、ピーク値取得回路17は、回転電機2の運転中にセンサ6により得られた電圧信号の局所的な放電に相当する区間のピーク値を取得する。さらに、記憶部16は、取得されたピーク値を記憶する。
次のステップS14において、電荷量算出回路19は、電荷量算出処理を実行する。ここで、電荷量算出回路19は、関数取得回路18が算出した算出関数と、回転電機2の運転中にセンサ6が検知した電圧信号から得られたピーク値とに基づいて、回転電機2の部分放電に関する電荷量を算出する。さらに、記憶部16は、算出された電荷量を記憶する。
次のステップS15において、余寿命算出回路20は、余寿命算出処理を実行する。ここで、余寿命算出回路20は、データベース21に記憶された余寿命情報と部分放電に関する電荷量から回転電機2の余寿命を算出する。そして、絶縁診断方法を終了する。
次に、オンライン時信号取得処理において、ピーク値取得回路17が実行する処理について詳述する。なお、1つのピーク値を取得する際において、ピーク値取得回路17は、主に2段階の処理を実行する。
1つ目の処理は、放電に相当する区間C1(信号範囲)の抽出である。部分放電の電圧信号は、回転電機2の回路構成によって変わるが、例えば、その立ち上がり時間が10~20ナノ秒程度となっている。なお、立ち上がり時間とは、電圧がゼロから最初の極値に到達するまでの時間である。
ピーク値取得回路17が、局所的な放電である部分放電の電圧信号を、充分に検知するためには、10ナノ秒以下の時間分解能を有することが好ましい。さらに、充分に検知するためには、その5分の1である2ナノ秒以下の時間分解能を有することが好ましい。さらに、充分に検知するためには、その10分の1である1ナノ秒以下の時間分解能を有することが好ましい。
従って、例えば、部分放電の電圧信号の1秒間当たりの特性を得るためには、1ギガポイントものデータを取り扱う必要がある。このうち部分放電の電圧信号は、僅かで殆どがノイズである。そのため、ピーク値取得回路17は、時間波形における放電に相当する区間C1(図4)を抽出する。
図4に示すように、放電に相当する区間C1を抽出するときには、まず、部分放電の電圧信号25の大凡の位置を捉える。部分放電の電圧信号25の特徴は、ノイズの電圧信号26よりも明らかに大きな信号強度が発生している点である。そこで、部分放電の電圧信号25の基準となるトリガ電圧VTを事前に設定しておく。そして、ピーク値取得回路17は、このトリガ電圧VTを超える基準電圧TVの位置を基準として、部分放電の電圧信号25が存在する大凡の位置を捉える。
なお、トリガ電圧VTと基準電圧TVは、ほぼ同じであるが、時間波形がデジタルデータの場合には、トリガ電圧VTと基準電圧TVが厳密に同一とならない。なぜならば、デジタルデータは、電圧の変化を離散的な量で表すからである。そのため、デジタルデータの時間波形において、基準電圧TVを検知した時間(時刻、波形の時間軸方向の位置)は、部分放電の電圧信号25がトリガ電圧VTを超えた後に最初に取得された時間となる。
部分放電の電圧信号25は、回転電機2の回路中を伝搬するときに反射を繰り返す。そのため、センサ6で取得される電圧信号25は、ある時間振動したような波形となる。この振動する波形の部分も部分放電の情報を含む。この情報を取り溢さないために、基準電圧TVに関する位置(波形の時間軸方向の位置)の時間的な前後の特定期間に亘って区間C1を広げる必要がある。
区間C1の範囲(特定期間)は、部分放電の電圧信号25の反射の収まりの規定方法により異なり、その規定方法に基づいて事前に設定される。例えば、基準電圧TVの前方の範囲C2は、ノイズの電圧信号26と部分放電の電圧信号25の位置が近くなることが多いので1マイクロ秒以下とするが好ましい。基準電圧TVの後方の範囲C3は、振動波形の取り込みの観点から、充分な時間を設けることが好ましく、例えば、10マクロ秒以下とすることが好ましい。なお、基準電圧TVの後方の範囲C3は、データ量削減の観点から、5マイクロ秒以下とすることが好ましい。
放電に相当する区間C1が決定された後は、時間的な位置が特定できるよう一義的に時間を決定する必要がある。放電に相当する区間C1内であれば、その位置はどこであっても良いが、分かり易さの観点から基準電圧TVを検知した時間(時刻、波形の時間軸方向の位置)とするのが好ましい。そして、基準電圧TVを検知した時間を放電に相当する区間C1の識別番号と定義して以後の処理を行う。
2つ目の処理は、放電に相当する区間C1のピーク値PVの抽出である。部分放電の電圧信号25は、前述の通り回転電機2の回路中で反射を繰り返すため、電荷量とその波形の特徴量との相関を検出するのが難しい。しかし、波形が反射によって歪む際の伝搬定数は、回転電機2の回路構成によって規定されるため、波形の絶対的な最大となる値は、その特徴量を表している。このとき、ピーク値PVとは、放電に相当する区間C1における絶対値としての最大となる値である。このようにすれば、部分放電に関する電荷量の算出精度を向上させることができる。
記憶部16には、ピーク値取得回路17で取得した放電に相当する区間C1の識別番号と、ピーク値PVに関する情報が記憶される。これらの情報を記憶部16に記憶することで、ピーク値PVに関する情報を任意に取り出せるようになる。なお、試験用電圧をコイル3に印加した場合、つまり、既知の電荷量の電圧を回転電機2に入力した場合には、その入力された電荷量も、記憶部16に記憶される情報に含まれる。
関数取得回路18は、記憶部16に記憶されたピーク値の情報と試験用電圧で入力された既知の電荷量に基づいて、その算出関数を取得する。例えば、図5のグラフは、試験データとしての既知の電荷量を回転電機2の回路に投入したときの電圧信号の絶対値のピーク値の変化を示している。
このグラフに示すように、電荷量とピーク値には相関がある。言い換えれば、ピーク値が分かれば、部分放電の電荷量が推定できる。このとき、2つの値の相関は、線形のグラフではなく、2次以上の非線形のグラフで定義される。
算出関数の定義を行う際、つまり、ピーク値による電荷校正を行う際において、非線形グラフが原点(0,0)を含む場合には、電荷量とピーク値の関係を示す少なくとも2つ以上の試験データを取得することが好ましい。また、非線形グラフが原点(0,0)を含まない場合には、電荷量とピーク値の関係を示す少なくとも3つ以上の試験データを取得することが好ましい。
記憶部16は、関数取得回路18で取得した算出関数の近似式から、その次数と係数を保存する。関数f(x)=Σaで定義した場合には、「a,am-1,・・・,a(ただし、m>2)」として次数と係数を保存する。このとき、変数xは、部分放電の電圧信号のピーク値である。
電荷量算出回路19は、ピーク値取得回路17で部分放電の電圧信号として抽出された区間C1の識別番号と、ピーク値の情報を取得し、これらの情報と、関数取得回路18で取得された算出関数に基づいて、電荷量を算出する。また、記憶部16は、部分放電の電圧信号の識別番号と電荷量算出回路19で算出された電荷量の情報を記憶する。
部分放電の電圧信号の識別番号は、部分放電の発生箇所を特定する情報である。そのため、例えば、別途の回転電機2で発生した部分放電の電圧と比較する場合、発生した電圧に対し、どの位相で放電が発生したのかを示す情報となっている。
なお、放電発生条件は、放電の特徴を示すデータであり、例えば、放電発生位置または放電発生原因の特定に必要な情報となる。また、電荷量の情報は、絶対的な放電発生強度を知るために重要な情報である。従って、これの大小を評価することで、回転電機2の劣化状態を判定することができる。さらに、部分放電の電圧信号の識別番号と電荷量の情報を合わせることで、放電強度と放電頻度の関係を診断できる。それらの情報を総合的に判定することで、回転電機2の寿命に関する正確な推定が可能になる。
第1実施形態の関数取得回路18は、試験用電圧を回転電機2に印加したときの既知の電荷量と既知のピーク値の関係を示す試験データを少なくとも2つ取得する。そして、これらの試験データにより得られる近似曲線のグラフから算出関数を取得する。
そして、電荷量算出回路19は、算出関数に基づいて、新たに取得したピーク値から未知の電荷量を算出する。このようにすれば、既知の電荷量とピーク値の関係に基づいて、未知の電荷量を算出することができる。
また、事前に設定されたトリガ電圧VT以上の基準電圧TVがセンサ6で検知されたときに、少なくとも1つの基準電圧TVの時間的な前後の特定期間が区間C1として設定される。このようにすれば、電圧信号における部分放電の情報を含む大凡の位置を捉えることができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の絶縁診断システム1および絶縁診断方法について図6から図9を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。前述の図面を適宜参照する。
第2実施形態の診断装置11Aのシステム構成を図6に示すブロック図を参照して説明する。診断装置11Aは、入力部13と出力部14とメイン制御部15と記憶部16とを備える。
メイン制御部15は、絶縁診断システム1を統括的に制御する。このメイン制御部15は、スペクトル取得回路30と係数取得回路31と波形復元回路32と電荷量算出回路19と余寿命算出回路20とを備える。これらは、メモリまたはHDDに記憶されたプログラムがCPUによって実行されることで実現される。
診断装置11Aの各構成は、必ずしも1つのコンピュータに設ける必要はない。例えば、ネットワークで互いに接続された複数のコンピュータを用いて1つの診断装置11Aを実現しても良い。例えば、メイン制御部15は、絶縁診断システム1を統括的に制御する。このメイン制御部15は、スペクトル取得回路30と係数取得回路31と波形復元回路32と電荷量算出回路19と余寿命算出回路20とが、それぞれの個別のコンピュータに搭載されていても良い。
記憶部16は、回転電機2の絶縁診断を行うときに必要な各種情報を記憶する。この記憶部16は、データベース21を備える。なお、このデータベース21は、メモリ、HDDまたはクラウドに記憶され、検索または蓄積ができるよう整理された情報の集まりである。
さらに、記憶部16は、スペクトル取得回路30が取得したスペクトルの情報を記憶するスペクトル記憶機能33と、係数取得回路31が取得した換算係数を記憶する係数記憶機能34と、波形復元回路32が復元した時間波形を記憶する波形記憶機能35と、電荷量算出回路19が算出した回転電機2の部分放電に関する電荷量を記憶する電荷量記憶機能24とを備える。
次に、第2実施形態の絶縁診断システム1を用いて実行する絶縁診断方法について図7のフローチャートを用いて説明する。なお、図1と図6を適宜参照する。
に示すように、まず、ステップS21において、スペクトル取得回路30は、オフライン時信号取得処理を実行する。ここで、作業者は、回転電機2の停止中に、電荷量が既知の模擬放電である試験用電圧を回転電機2に印加する。そして、スペクトル取得回路30は、回転電機2の停止中にセンサ6により得られた電圧信号の局所的な放電に相当する区間のスペクトルを取得する。なお、作業者は、試験用電圧の印加を複数回行う。
例えば、作業者は、センサ6と高周波増幅器8の間の箇所SP1(図1)と回転電機2の測定対象の近傍の箇所SP2(図1)の2箇所に試験用電圧を印加する。スペクトル取得回路30は、試験用電圧のそれぞれのスペクトルを取得する。さらに、記憶部16は、取得されたスペクトルを記憶する。なお、試験用電圧を印加する箇所SP1は、センサ6から検出インピーダンス9までの間であれば、いずれの箇所でも良い。
次のステップS22において、係数取得回路31は、係数取得処理を実行する。ここで、係数取得回路31は、回転電機2の停止中に試験用電圧を回転電機2の測定対象の箇所SP2(図1)と、センサ6と高周波増幅器8の間の箇所SP1(図1)の2箇所に印加する。そして、係数取得回路31は、診断装置11が検知した電圧信号から得られた2箇所(SP1,SP2)のそれぞれに対応するスペクトルの比で表される換算係数を取得する。さらに、記憶部16は、取得された換算係数を記憶する。
次のステップS23において、スペクトル取得回路30は、オンライン時信号取得処理を実行する。ここで、スペクトル取得回路30は、回転電機2の運転中にセンサ6により得られた電圧信号の局所的な放電に相当する区間のスペクトルを取得する。さらに、記憶部16は、取得されたスペクトルを記憶する。
次のステップS24において、波形復元回路32は、波形復元処理を実行する。ここで、波形復元回路32は、係数取得回路31が取得した換算係数と、回転電機2の運転中にセンサ6が検知した電圧信号から得られたスペクトルとに基づいて、回転電機2の測定対象の箇所SP(図1)で部分放電が発生したときの電圧信号の時間波形を復元する。
次のステップS25において、電荷量算出回路19は、電荷量算出処理を実行する。ここで、電荷量算出回路19は、波形復元回路32が復元した時間波形から回転電機2の部分放電に関する電荷量を算出する。さらに、記憶部16は、算出された電荷量を記憶する。
次のステップS26において、余寿命算出回路20は、余寿命算出処理を実行する。ここで、余寿命算出回路20は、データベース21に記憶された余寿命情報と部分放電に関する電荷量から回転電機2の余寿命を算出する。そして、絶縁診断方法を終了する。
次に、オンライン時信号取得処理において、スペクトル取得回路30が実行する処理について詳述する。なお、1つのスペクトルを取得する際において、スペクトル取得回路30は、主に2段階の処理を実行する。
1つ目の処理は、放電に相当する区間C1(信号範囲)の抽出である。この区間C1の抽出の処理は、前述の第1実施形態のピーク値取得回路17が行う処理と同様のため重複する説明を省略する。スペクトル取得回路30は、時間波形における放電に相当する区間C1(図4)を抽出する。そして、放電に相当する区間C1の識別番号を定義して以後の処理を行う。
2つ目の処理は、放電に相当する区間C1のスペクトル計算である。時間波形のスペクトルは、時間波形が振幅と周波数の異なる信号の集合体であると考え、その集合体を分解した結果を示す。このスペクトル計算は、フーリエ変換によって求めることができる。回転電機2の回路構成が、周波数によってインピーダンスが変化するような回路の場合は、その特徴をスペクトルが表す。
記憶部16には、スペクトル取得回路30で取得した放電に相当する区間C1の識別番号と、スペクトルに関する情報が記憶される。これらの情報を記憶部16に記憶することで、スペクトルに関する情報を任意に取り出せるようになる。なお、試験用電圧をコイル3に印加した場合、つまり、既知の電荷量の電圧を回転電機2に入力した場合には、その入力された電荷量も、記憶部16に記憶される情報に含まれる。
係数取得回路31は、記憶部16に記憶された複数のスペクトル情報の比である換算係数を取得する。例えば、複数のスペクトル情報には、第1スペクトル情報と第2スペクトル情報が含まれる。
第1スペクトル情報とは、センサ6と高周波増幅器8の間の箇所SP1(図1)に試験用電圧を印加したときに取得されたスペクトルである。つまり、信号伝搬による反射または減衰を無くすために、診断装置11Aに直に既知の電荷量を投入したときに得られるスペクトルである。
第2スペクトル情報とは、回転電機2の測定対象の近傍の箇所SP2(図1)に試験用電圧を印加したときに取得されたスペクトルである。つまり、測定したい箇所に既知の電荷量を投入したときに得られるスペクトルである。
第1スペクトルと第2スペクトルの比は、信号伝搬による反射または減衰によって周波数特性が信号に及ぼす影響を示す情報となる。従って、それらの比である換算係数と電圧信号のスペクトルとの積によって、測定したい箇所の元の時間波形36(図9)を復元することができる。つまり、センサ6と高周波増幅器8の間の箇所SP1(図1)に試験用電圧を印加したときに得られた時間波形(図4の電圧信号25の波形を参照)から、回転電機2の測定対象の近傍の箇所SP2(図1)で部分放電が発生した時点の時間波形36(図9)を復元することができる。
記憶部16は、係数取得回路31が取得した換算係数を記憶する。なお、換算係数は、周波数の関数であるため、回転電機2のような回路定数が変化するような場合には、換算係数を複数記憶しても良い。
前述のように、換算係数と電圧信号のスペクトルとの積が求められる。この換算の目的は、部分放電が発生した箇所SP2(図1)の時間波形36(図9)を復元することである。波形復元回路32では、次のプロセスとして、換算係数と電圧信号のスペクトルとの積から時間波形36を復元する。このプロセスには、逆フーリエ変換が有効である。なお、記憶部16では、波形復元回路32が復元した時間波形36と、放電に相当する区間C1の識別番号を互いに対応付けて記憶する。
電荷量算出回路19では、波形復元回路32が復元した時間波形36から電荷量を算出する。例えば、電荷量qの算出は、以下の数式1に基づいて行う。
Figure 0007443269000001
ここで、zは、検出インピーダンス9のインピーダンス値である。νは、時間波形36である。dtは、時間差分である。
なお、前述の手順に基づき積分して電荷量を得るときに、ノイズなどの影響により時間波形36のバックグランドがゼロとならない場合がある。これは誤差であり、この状態で時間波形36の全てを積分すると電荷量が異常に大きくなる場合がある。正しく積分するためには、時間波形36をオフセットすることが有効である。
例えば、図8に示すように、ノイズ波形が含まれる時間波形36’があるとする。ここで、電荷量算出回路19は、時間波形36’に含まれるノイズ波形部分の平均値を取得し、この平均値に基づいて時間波形36’の全体をオフセットする。つまり、時間波形36’の全体をバックグランドの電圧の値がゼロになる方向にシフトさせる。このようにすれば、電荷量を算出するために用いる時間波形36’からノイズ波形部分を除去した時間波形36を得ることができる。
なお、ノイズ波形部分の抽出方法については、電圧信号の時間変化量、即ち微分値がある閾値を超えたところで規定しても良いし、信号強度に閾値を設けてその閾値以下をノイズとして規定して抽出しても良い。
また、積分範囲を規定する方法も有効である。有効な電圧信号の特徴は、ノイズよりも充分に大きな値であることである。
例えば、図9に示すように、時間波形36の絶対値の最大値Mに特定係数K(0<K<1)を掛ける。そして、負の特定値(-MK)以下かつ正の特定値(+MK)以上とすることで、ノイズを含まない有効な積分範囲R1,R2の時間波形36を規定することができる。
つまり、第2実施形態の電荷量算出回路19は、時間波形36の絶対値の最大値(M)に特定係数(K)を掛けて特定値(MK)を算出する。そして、負の特定値(-MK)以下かつ正の特定値(+MK)以上の範囲(R1,R2)の時間波形36から電荷量を算出する。このようにすれば、ノイズを含まない有効な範囲(R1,R2)の時間波形36を用いて電荷量を算出することができる。なお、正の特定値(+MK)から負の特定値(-MK)までの範囲(R3)は、部分放電以外の不要な情報を含むため、この不要な情報を積分の対象から除外することができる。
なお、特定係数Kの範囲としては、大き過ぎると有効な信号の取り溢しが大きく、逆に小さ過ぎるとノイズを含み過ぎて誤差が大きくなる。そのため、特定係数Kの範囲は、0.1≦K≦0.5の範囲が好ましい。さらに精度を高めるのであれば、特定係数Kの範囲は、0.1≦K≦0.2の範囲が好ましい。
また、その他の積分範囲の規定方法として、時間波形36の絶対値を大きい順に並べたときに最大となる値から、事前に設定された特定点(N点)までを抽出する方法がある。
つまり、第2実施形態の電荷量算出回路19は、時間波形36の絶対値を大きい順に並べたときに最大となる値から事前に設定された特定点(N点)まで範囲のデジタルデータを抽出し、これらのデジタルデータから電荷量を算出する。このようにすれば、ノイズを含まない範囲のデジタルデータを用いて積分を行って電荷量の算出精度を向上させることができる。
特定点(N点)については、デジタルデータのサンプリング条件によって変化するため、条件によって適宜設定すれば良い。例えば、時間波形36の絶対値を順に並べたときの傾き(絶対値の変化量S)が最大値Mに対して感度的に大きい箇所で規定できる。また、その感度係数をL(S=LM)としたときには、0<L<0.5である。さらに、感度を上げるときには、0<L<0.2であることが好ましい。
第2実施形態の電荷量算出回路19は、積分範囲を規定した時間波形36に対し、前述の数式1により電荷量を算出する。なお、積分は、時間波形36の絶対値により行う。
これは、元の電圧信号の波形が正負のいずれか一方に凸な形状であるのに対して、得られる時間波形36が完全に再現ができない場合があるからである。この再現できない部分は、反射の影響により正負が逆転して得られるので、それを有効な信号として含むため、前述の積分は、時間波形36の絶対値により行う。
積分後、電流値への換算のため検出インピーダンス9のインピーダンス値で割って電荷量を得る。また、記憶部16は、部分放電の電圧信号の識別番号と電荷量算出回路19で算出された電荷量の情報を記憶する。
このように、第2実施形態の電荷量算出回路19は、時間波形36の絶対値と時間差分の積の合計と検出インピーダンス9のインピーダンス値の商により電荷量を算出する。このようにすれば、部分放電による時間波形36が完全に再現されていない場合に、その再現されていない部分であって、反射の影響によって正負が逆転して得られた部分を電荷量の算出に用いることができる。
さらに、部分放電の電圧信号の識別番号と電荷量の情報を合わせることで、放電強度と放電頻度の関係を診断できる。それらの情報を総合的に判定することで、回転電機2の寿命に関する正確な推定が可能になる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の絶縁診断システム1および絶縁診断方法について図10を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。前述の図面を適宜参照する。
この第3実施形態は、前述の第1および第2実施形態の診断装置11,11Aの余寿命算出回路20(図2および図6)が実行する余寿命算出処理(図3および図7)を詳述する。これらの余寿命算出回路20は、回転電機2の余寿命を算出する。
なお、診断装置11,11Aの記憶部16(図2および図6)に記憶された電荷量に関する情報類は、放電電荷量でも良いし、放電発生条件でも良いし、電荷量情報でも良いし、それら2つの情報を合わせた、放電強度と放電頻度の関係でも良い。
また、データベース21には、回転電機2の余寿命を規定する特性が記憶される。例えば、電気絶縁破壊特性がある。また、データベース21には、それらを関数的に結び付ける情報が記憶されている。このデータベース21には、例えば、余寿命と電荷量の関係を示す第1特性データ37A(図10)が記憶される。
余寿命算出回路20は、前述の算出関数または前述の換算係数と、記憶部16に記憶された電荷量に関する情報類とに基づいて、部分放電に関する電荷量の特性を示す第1特性データ37Aと、現状の回転電機から取得された使用期間(時間)の特性を示す第2特性データ37Bのグラフ(図10)を作成する。そして、第1特性データ37Aと第2特性データ37Bとを紐づけることで、回転電機2の余寿命と使用期間との関係を示す電気絶縁破壊特性(Breakdown Voltage:BDV)を推定する。
図10に示すように、現状の回転電機2の第2特性データ37Bは、その寿命を規定する。そのため、例えば、電気絶縁破壊特性(BDV)を見るのであれば、その特性閾値TSを設けるようにする。そして、継続的に電荷量の測定を行って、そのトレンドを得ることで、電気絶縁破壊特性(BDV)が、特性閾値TSに向かう速度を推定することができる。
この速度は、横軸を回転電機2の使用期間(時間)、縦軸を特性(BDV)としてプロットした場合、それらの傾きに相当する。この速度は、必ずしも線形でなくてよく、2次以上の非線形関数であっても良い。この関数から特性閾値TSに到達するまでの時間RLを算出し、それを余寿命とすることで、現状の回転電機2の余寿命を診断することが可能となる。
前述のトレンドについては、断片的に余寿命を計算するよりも、連続的に計算する方が良い。そして、余寿命算出回路20は、連続的に計算して得た結果を、第1特性データ37Aおよび第2特性データ37Bのグラフ(図10)として可視化して表示部12(図1)に表示する。このようにすれば、回転電機2の管理者は、急なトレンドの変化に対しても即時に気付くことができる。
なお、表示部12(図1)の表示内容は、余寿命算出回路20の計算結果のトレンドを表示しても良いし、横軸を回転電機2の使用期間、縦軸を特性(BDV)としたトレンドプロットとしても良い。好ましくは、特性(BDV)の変化が直感的に捉えられるトレンドグラフ(図10)が良い。
このように、第3実施形態の余寿命算出回路20は、第2特性データ37Bに基づいて、部分放電に関する電荷量が事前に設定された特性閾値TSに到達するまでの時間RLを余寿命として算出する。このようにすれば、現状の回転電機2の第2特性データ37Bは、その余寿命を規定する特性を含んでいるため、余寿命の算出精度を向上させることができる。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態の絶縁診断システム1および絶縁診断方法について図11から図12を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。前述の図面を適宜参照する。
この第4実施形態は、前述の第3実施形態で説明した寿命算出方法の他の例である。前述の第1および第2実施形態の診断装置11,11Aの余寿命算出回路20(図2および図6)が実行する余寿命算出処理(図3および図7)を詳述する。
また、データベース21(図2および図6)には、回転電機2の余寿命を規定する特性が記憶される。例えば、特性として、電気絶縁破壊経路の進展速度がある。なお、電気絶縁破壊経路とは、電気絶縁抵抗が低下した経路である。この経路は、絶縁材料にかかる部分放電により発生または進展する。
電気絶縁破壊経路が時間とともに進展し、接地電極に到達すると絶縁破壊に至る。なお、電荷量に関する情報類と絶縁破壊経路の進展速度の進展関数は、事前に取得しておく。この進展関数に基づいて、電気絶縁破壊経路の進展速度を逐次知ることができる。
第4実施形態のデータベース21(図2および図6)は、電荷量に関する情報類と絶縁破壊経路の進展速度の進展関数を記憶する。
第4実施形態の余寿命算出回路20は、データベース21に記憶された進展関数と電荷量算出回路19で算出された部分放電の電荷量に関する情報類から算出した進展速度を時間積分して電気絶縁破壊経路の第1進展距離d1を算出する第1プロセスを実行する。
さらに、余寿命算出回路20は、電気絶縁破壊経路の進展を数値計算によりモデル化したツールにより絶縁破壊経路の第2進展距離d2を算出する第2プロセスを実行する。そして、回転電機2の余寿命を算出する。このようにすれば、絶縁破壊経路の進展速度の変化を捉えて、高い精度で進展速度を求めることができる。
まず、第1プロセスについて説明する。電気絶縁破壊経路の進展によって、電荷量算出回路19で算出される部分放電の電荷量に関する情報類は、逐次変化する。そのため、進展速度も逐次変化する。この逐次変化する部分放電の電荷量に関する情報類は、データベース21に記憶された進展関数に基づいて進展速度に換算することができる。そして、進展速度の逐次変化を捉えることができる。
さらに、進展速度の逐次変化を時間積分することによって、高い精度で第1進展距離d1を算出できる。ここで求められた第1進展距離d1は、累計すれば、現状の電気絶縁破壊経路の第1進展距離d1として得られる。
次に、第2プロセスについて説明する。第1プロセスで算出した累計進展距離に対し、回転電機2の余寿命を求めるには、電気絶縁破壊経路の進展を数値計算によりモデル化したツールで余寿命を計算する。
電気絶縁破壊経路の進展においては、電気絶縁破壊経路の進展速度が重要なファクターであり、その進展速度は、部分放電の電荷量に関する情報類を要因として求められる。そして、部分放電の電荷量に関する情報類は、絶縁材料にかかる電気ストレスを示している。そこで、絶縁材料の進展速度を電気ストレスで以下の数式2に基づいてテイラー展開することにより近似する。
Figure 0007443269000002
ここで、uは、電気絶縁破壊経路の進展速度である。Eは、電気絶縁破壊経路にかかる電気ストレスに係わる電界である。kは、uとEを関連付けるm次の係数である。ただし、mは、整数である。次数mの最大値Mは、uが一定値ではないことから、1以上が好ましい。非線形性を考慮してさらに高い精度を求める場合には、2以上であることが好ましい。
また、係数kは、電気絶縁破壊経路の進展速度の電界の関数を実験的に求めた値から参照する。ただし、必ずしも固定関数である必要はなく、第1プロセスで得た第1進展距離d1の変化から、その変化に整合するように係数kを更新しても良い。
そして、電界を求めるためには、計算空間の電位分布を知る必要がある。電位分布の計算には、以下の数式3のポアソン方程式を用いる。ここで、Φは、計算空間の電位である。ρは、空間電荷である。εは、誘電率である。
Figure 0007443269000003
電位計算は、計算速度を高速化するため空間を所定の距離差分に分割して計算するオイラー法が望ましい。また、オイラー法で求めた格子点情報から格子点に囲まれた全点の情報を以下の数式4から数式6の補間関数で近似して求める。なお、数式4は、1次元空間の計算に用いる。数式5は、2次元空間の計算に用いる。数式6は、3次元空間の計算に用いる。
Figure 0007443269000004
Figure 0007443269000005

ただし、i+j≦nである。
Figure 0007443269000006

ただし、i+j+k≦nである。
ここで、Fは、空間の任意の点の電位を補完する関数である。X,Y,Zは、任意の点を取り囲む格子点のうち、原点として設定した格子点から座標である。lは、各変数の係数である。nは、関数の次数である。このnは、補間関数の精度に関わり、次数が多い方が補間関数の精度が高まる。一方、計算の複雑化を防ぐために次数を減らす必要性もある。次数は、電位が一定値でないことから少なくとも1以上であることが好ましく、非線形性を考慮してさらに高い精度を求める場合には、2以上であることが好ましい。
この第2プロセスにより、空間の電位から求めた電界と、その電界に応じた電気絶縁破壊経路の第2進展距離d2を求めることができるので、回転電機2の余寿命を数値計算により算出する処理を高精度に行うことができる。
第4実施形態では、現状の進展距離を算出する第1プロセスと、この現状の進展距離を算出するために用いる係数を更新して、計測の対象となる実際の回転電機2の状態に近づける第2プロセスを並列に実行することができる。
さらに、第4実施形態では、第1プロセスによって得られた第1進展距離d1と、第2プロセスの第2進展距離d2の差分の絶対値が、閾値誤差Δ以下となるように収束させることで、求められる値を対象とする回転電機2の絶縁構成に適合させることができる。
第2進展距離d2の収束は、例えば、電気絶縁破壊経路の進展速度のパラメータである係数kを以下の数式7で変化させながら行う。数式7の左辺は、現時点の計算に使用したk から求めた進展速度のパラメータk i+1である。係数kは、進展速度と正の相関があることから、第2プロセスの第2進展距離d2とも正の相関を持つ。従って、この数式7よれば、第2プロセスの第2進展距離d2を第1プロセスの第1進展距離d1に近づけるように係数kを変化できる。
Figure 0007443269000007
第1進展距離d1として求められた値が真値であるとしている。そして、数式7は、計算によって求めた第2進展距離d2を真値に近づける収束方法を表している。なお、閾値誤差Δを表す他の数式8は以下のようになる。
Figure 0007443269000008
なお、閾値誤差Δが小さい程、計算精度が高まる。一方、閾値誤差Δが小さい程、計算時間が大きくなる特徴がある。
例えば、初期寿命30年の回転電機2において、初期寿命の3ヶ月前の更新を想定する。この場合には、0.8%の誤差が許容範囲となる。進展距離の誤差(差分)が余寿命を求めるための誤差に直結するとすれば、その許容範囲となる閾値誤差Δは、第1進展距離d1の100分の0.8とすることが好ましい。
また、初期寿命20年の回転電機2の場合には、第1進展距離d1の100分の1.25を閾値誤差Δとすることが好ましい。また、初期寿命10年の回転電機2の場合には、第1進展距離d1の100分の2.5を閾値誤差Δとすることが好ましい。また、初期寿命5年の回転電機2の場合には、第1進展距離d1の100分の5を閾値誤差Δとすることが好ましい。
この第4実施形態によれば、得られたデータの増加とともに、数式7の係数kが対象とする回転電機2の絶縁の特性に適合させることができるため、より精度の高い余寿命を算出することができる。
なお、収束条件は、計算精度と計算時間を考慮して最も妥当なものを適用する。計算精度を考慮した場合には、第1進展距離d1の100分の5を閾値誤差Δとすることが好ましい。一方、計算時間を考慮した場合には、第1進展距離d1の100分の0.8を閾値誤差Δとすることが好ましい。従って、閾値誤差Δは、100分の0.8から100分の5の範囲(0.8%~5.0%の範囲)とすることが好ましい。
第4実施形態では、第1進展距離d1と第2進展距離d2の差分の絶対値を第1進展距離d1で割った値に基づいて、回転電機2の閾値誤差Δが設定される。このようにすれば、管理者が回転電機2を適切なタイミングで更新することができる。
次に、第4実施形態の絶縁診断システム1を用いて実行する余寿命推定方法の第1例について図11のフローチャートを用いて説明する。なお、前述の図面を適宜参照する。
この第1例では、ステップS31からS34が現状解析プロセスである。この現状解析プロセスは、現状の進展距離を解析するプロセスである。また、ステップS35からS38が将来予想プロセスである。この将来予想プロセスは、将来の進展距離を予測するプロセスである。
まず、ステップS31において、余寿命算出回路20は、電荷量算出回路19が算出した部分放電の電荷量を取得する。
次のステップS32において、余寿命算出回路20は、取得した電荷量を進展関数に基づいて進展速度に換算する。
次のステップS33において、余寿命算出回路20は、換算した進展速度と時間差分の積により電気絶縁破壊経路の進展距離を算出する。
次のステップS34において、余寿命算出回路20は、算出した進展距離を累計して累計進展距離(現状の進展距離)を求める。
次のステップS35において、余寿命算出回路20は、計算空間の初期条件を設定する。
次のステップS36において、余寿命算出回路20は、計算空間の電位分布の計算を行う。
次のステップS37において、余寿命算出回路20は、空間の電位から求めた電界に応じた電気絶縁破壊経路の進展速度の算出を行う。
次のステップS38において、余寿命算出回路20は、求めた進展速度と時間差分の積から進展距離(将来の進展距離)を求め、計算空間における電気絶縁破壊経路に関する情報を更新する。
次のステップS39において、余寿命算出回路20は、求められた電気絶縁破壊経路が接地電極に達したか否かを判定する。ここで、電気絶縁破壊経路が接地電極に達していない場合(ステップS39でNOの場合)は、前述のステップS36に戻る。電気絶縁破壊経路が接地電極に到達する計算結果が導出されるまでステップS36からS39を繰り返す。一方、電気絶縁破壊経路が接地電極に達した場合(ステップS39でYESの場合)は、余寿命推定方法を終了する。この過程で得られた電気絶縁破壊経路が接地電極に達するまでにかかる経過時間に基づいて回転電機2の余寿命を算出する。
次に、第4実施形態の絶縁診断システム1を用いて実行する余寿命推定方法の第2例について図12のフローチャートを用いて説明する。なお、前述の図面を適宜参照する。
この第2例では、ステップS41からS51が現状解析プロセスであり、そのうち、ステップS41からS44が第1プロセスであり、ステップS45からS51が第2プロセスである。また、ステップS52からS55が将来予想プロセスである。
まず、ステップS41において、余寿命算出回路20は、電荷量算出回路19が算出した部分放電の電荷量を取得する。
次のステップS42において、余寿命算出回路20は、取得した電荷量を進展関数に基づいて進展速度に換算する。
次のステップS43において、余寿命算出回路20は、換算した進展速度と時間差分の積により電気絶縁破壊経路の進展距離を算出する。
次のステップS44において、余寿命算出回路20は、算出した進展距離を累計して第1進展距離d1(累計進展距離)を求める。
ここで、ステップS41からS44と並列して、ステップS45からS48を実行する。まず、ステップS45において、余寿命算出回路20は、計算空間の初期条件を設定する。
次のステップS46において、余寿命算出回路20は、計算空間の電位分布の計算を行う。
次のステップS47において、余寿命算出回路20は、空間の電位から求めた電界に応じた電気絶縁破壊経路の進展速度の算出を行う。
次のステップS48において、余寿命算出回路20は、求めた進展速度と時間差分の積から第2進展距離d2を求め、計算空間における電気絶縁破壊経路に関する情報を更新する。
次のステップS49において、余寿命算出回路20は、ステップS46からステップS48までの計算回数と時間差分の積が実時間に到達したか否かを判定する。ここで、実時間に到達した場合(ステップS49でYESの場合)は、ステップS50に進む。一方、実時間に到達していない場合(ステップS49でNOの場合)は、前述のステップS46に戻る。なお、実時間とは、現状の回転電機2の稼働時間を示す。例えば、設置から現在までの期間において、合計10年稼働した回転電機2の場合には、10年経過したときの第2進展距離d2が求められるまでステップS46からステップS48までの計算を繰り返す。
ステップS44およびS49の後に進むステップS50において、余寿命算出回路20は、第1プロセスで得た第1進展距離d1と第2プロセスで得た第2進展距離d2の差分を算出する。そして、この差分が閾値誤差Δ以下であるか否かを判定する。ここで、差分が閾値誤差Δ以下でない場合(ステップS50でNOの場合)は、ステップS51に進む。一方、差分が閾値誤差Δ以下である場合(ステップS50でYESの場合)は、ステップS52に進む。
ステップS50でNOの場合に進むステップS51において、余寿命算出回路20は、第1プロセスで得た第1進展距離d1の変化に整合するように係数kを更新する。そして、前述のステップS46に戻る。
ステップS50でYESの場合に進むステップS52において、余寿命算出回路20は、計算空間の初期条件を設定する。
次のステップS53において、余寿命算出回路20は、計算空間の電位分布の計算を行う。
次のステップS54において、余寿命算出回路20は、空間の電位から求めた電界に応じた電気絶縁破壊経路の進展速度の算出を行う。
次のステップS55において、余寿命算出回路20は、求めた進展速度と時間差分の積から進展距離(将来の進展距離)を求め、計算空間における電気絶縁破壊経路に関する情報を更新する。
次のステップS56において、余寿命算出回路20は、求められた電気絶縁破壊経路が接地電極に達したか否かを判定する。ここで、電気絶縁破壊経路が接地電極に達していない場合(ステップS56でNOの場合)は、前述のステップS53に戻る。電気絶縁破壊経路が接地電極に到達する計算結果が導出されるまでステップS53からS56を繰り返す。一方、電気絶縁破壊経路が接地電極に達した場合(ステップS56でYESの場合)は、余寿命推定方法を終了する。この過程で得られた電気絶縁破壊経路が接地電極に達するまでにかかる経過時間に基づいて回転電機2の余寿命を算出する。
以上、絶縁診断システムおよび絶縁診断方法を第1実施形態から第4実施形態に基づいて説明したが、いずれか1の実施形態において適用された構成を他の実施形態に適用しても良いし、各実施形態において適用された構成を組み合わせても良い。
なお、前述の実施形態において、基準値(特性閾値、閾値誤差、トリガ電圧)を用いた任意の値の判定は、「任意の値が基準値以上か否か」の判定でも良いし、「任意の値が基準値を超えているか否か」の判定でも良い。或いは、「任意の値が基準値以下か否か」の判定でも良いし、「任意の値が基準値未満か否か」の判定でも良い。また、基準値が固定されるものでなく、変化するものであっても良い。従って、基準値の代わりに所定範囲の値を用い、任意の値が所定範囲に収まるか否かの判定を行っても良い。また、予め装置に生じる誤差を解析し、基準値を中心として誤差範囲を含めた所定範囲を判定に用いても良い。
なお、前述の実施形態のフローチャートにおいて、各ステップが直列に実行される形態を例示しているが、必ずしも各ステップの前後関係が固定されるものでなく、一部のステップの前後関係が入れ替わっても良い。また、一部のステップが他のステップと並列に実行されても良い。
前述の実施形態のシステムは、専用のチップ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、またはCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを高集積化させた制御装置と、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスまたはキーボードなどの入力装置と、通信インターフェースとを備える。このシステムは、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現できる。
なお、前述の実施形態のシステムで実行されるプログラムは、ROMなどに予め組み込んで提供される。もしくは、このプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)などのコンピュータで読み取り可能な非一過性の記憶媒体に記憶されて提供するようにしても良い。
また、このシステムで実行されるプログラムは、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせて提供するようにしても良い。また、このシステムは、構成要素の各機能を独立して発揮する別々のモジュールを、ネットワークまたは専用線で相互に接続し、組み合わせて構成することもできる。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、回転電機の部分放電に関する電荷量を算出する電荷量算出回路を備えることにより、センサで取得した電圧信号を絶縁診断の指標となる電荷量に換算することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態またはその変形は、発明の範囲と要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1…絶縁診断システム、2…回転電機、3…コイル、4…母線、5…筐体、6…センサ、7…同軸ケーブル、8…高周波増幅器、9…検出インピーダンス、10…ADコンバータ、11(11A)…診断装置、12…表示部、13…入力部、14…出力部、15…メイン制御部、16…記憶部、17…ピーク値取得回路、18…関数取得回路、19…電荷量算出回路、20…余寿命算出回路、21…データベース、22…ピーク値記憶機能、23…関数記憶機能、24…電荷量記憶機能、25…部分放電の電圧信号、26…ノイズの電圧信号、30…スペクトル取得回路、31…係数取得回路、32…波形復元回路、33…スペクトル記憶機能、34…係数記憶機能、35…波形記憶機能、36(36’)…時間波形、37A,37B…特性データ。

Claims (11)

  1. 回転電機に接続された導体を伝搬する電圧信号を非接触で検知する少なくとも1つのセンサにより得られた前記電圧信号の局所的な放電に相当する区間のスペクトルを取得するスペクトル取得回路と、
    前記回転電機の停止中に試験用電圧を前記回転電機の測定対象の箇所と前記センサの箇所の2箇所に印加して前記センサが検知した前記電圧信号から得られた前記2箇所のそれぞれに対応する前記スペクトルの比で表される換算係数を取得する係数取得回路と、
    前記換算係数と前記回転電機の運転中に前記センサが検知した前記電圧信号から得られた前記スペクトルとに基づいて、前記測定対象の箇所で部分放電が発生したときの前記電圧信号の時間波形を復元する波形復元回路と、
    前記時間波形から前記部分放電に関する電荷量を算出する電荷量算出回路と、
    を備える、
    絶縁診断システム。
  2. 前記電荷量算出回路は、前記時間波形をオフセットする、
    請求項に記載の絶縁診断システム。
  3. 前記電荷量算出回路は、
    前記時間波形の絶対値の最大値(M)に特定係数(K)を掛けて特定値(MK)を算出し、
    負の前記特定値(-MK)以下かつ正の前記特定値(+MK)以上の範囲の前記時間波形から前記電荷量を算出する、
    請求項または請求項に記載の絶縁診断システム。
  4. 前記電荷量算出回路は、
    前記時間波形の絶対値を大きい順に並べたときに最大となる値から事前に設定された特定点まで範囲のデジタルデータを抽出し、
    前記デジタルデータから前記電荷量を算出する、
    請求項から請求項のいずれか1項に記載の絶縁診断システム。
  5. 前記電荷量算出回路は、前記時間波形の絶対値と時間差分の積の合計と検出インピーダンスのインピーダンス値の商により前記電荷量を算出する、
    請求項から請求項のいずれか1項に記載の絶縁診断システム。
  6. 前記電荷量と前記回転電機の余寿命の関係を示す余寿命情報を記憶したデータベースと、
    前記データベースに記憶された前記余寿命情報と前記部分放電に関する前記電荷量から前記回転電機の前記余寿命を算出する余寿命算出回路と、
    を備える、
    請求項1から請求項のいずれか1項に記載の絶縁診断システム。
  7. 前記余寿命算出回路は、
    前記部分放電に関する前記電荷量の特性を示す第1特性データと、現状の前記回転電機から取得された使用期間の特性を示す第2特性データとを紐づけることで、前記回転電機の絶縁破壊特性を推定し、
    前記絶縁破壊特性に基づいて、前記部分放電に関する前記電荷量が事前に設定された特性閾値に到達するまでの時間を前記余寿命として算出する、
    請求項に記載の絶縁診断システム。
  8. 前記データベースは、前記電荷量に関する情報類と絶縁破壊経路の進展速度の進展関数を記憶しており、
    前記余寿命算出回路は、
    前記進展関数と前記情報類から算出した前記進展速度を時間積分して前記絶縁破壊経路の第1進展距離を算出する第1プロセスと、
    前記絶縁破壊経路の進展を数値計算によりモデル化したツールにより前記絶縁破壊経路の第2進展距離を算出する第2プロセスと、
    を実行して前記余寿命を算出する、
    請求項または請求項に記載の絶縁診断システム。
  9. 前記第1進展距離と前記第2進展距離の差分の絶対値を前記第1進展距離で割った値に基づいて、前記余寿命を求めるときに許容される閾値誤差が設定される、
    請求項に記載の絶縁診断システム。
  10. 事前に設定されたトリガ電圧以上の基準電圧が前記センサで検知されたときに、少なくとも1つの前記基準電圧の時間的な前後の特定期間が前記区間として設定される、
    請求項1から請求項のいずれか1項に記載の絶縁診断システム。
  11. 回転電機に接続された導体を伝搬する電圧信号を非接触で検知する少なくとも1つのセンサにより得られた前記電圧信号の局所的な放電に相当する区間のスペクトルを取得するステップと、
    前記回転電機の停止中に試験用電圧を前記回転電機の測定対象の箇所と前記センサの箇所の2箇所に印加して前記センサが検知した前記電圧信号から得られた前記2箇所のそれぞれに対応する前記スペクトルの比で表される換算係数を取得するステップと、
    前記換算係数と前記回転電機の運転中に前記センサが検知した前記電圧信号から得られた前記スペクトルとに基づいて、前記測定対象の箇所で部分放電が発生したときの前記電圧信号の時間波形を復元するステップと、
    前記時間波形から前記部分放電に関する電荷量を算出するステップと、
    を含む、
    絶縁診断方法。
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