JP7141861B2 - 条鋼線材コイルの製造方法 - Google Patents

条鋼線材コイルの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、圧延により得られた条鋼線材を冷却した後、巻き取ってコイルにする方法に関する。
加熱されたビレットやブルーム等の鋼材を連続圧延して条鋼線材を得、この条鋼線材を冷却した後、巻き取ってコイルにする方法は周知である。このような条鋼線材コイルの製造に供されるシステムは、圧延ラインと冷却ラインと巻取り機とが圧延方向に沿って順に配置されている。冷却ラインは互いに離間した複数の冷却装置からなる。
特許文献1に開示されている圧延方法では、圧延ラインの最終仕上げ圧延機から送られてくる約1000℃の条鋼線材を、4段の冷却装置で水を掛けることにより段階的に冷却し、最終的に800℃を超える温度で巻取り機により巻き取るようになっている。
特許文献1は巻き取り装置の具体的な構成および条鋼線材の巻取り方法を開示していない。一般的には、圧延された条鋼線材を疎巻きにする。例えば、特許文献2等に示すように圧延された条鋼線材を支持台上に螺旋を描いて落とし込む。
特開2009-241133号公報 特開2005-246401号公報
上記のような疎巻きの条鋼線材コイルは、嵩張るとともに安定して保管することができず、保管や運搬の効率が悪かった。
本発明者は、保管や運搬の効率を高めるために、圧延された条鋼線材を密巻きコイルにして巻取ることを検討している。すなわち、巻取り機はスプールとスプールの手前の整列機構を備え、整列機構により条鋼線材を整列させながらスプールを回転させることにより、条鋼線材に張力を加えながら、条鋼線材をスプールに幾重にも密に巻き取る。
しかし、特許文献1のように800℃を超える熱間変形抵抗が小さい高温域で条鋼線材に張力を加えて条鋼線材を密巻きにすると、巻取り時の条鋼線材自身による締め付け力により断面変形が生じる。また、条鋼線材は巻取り後の温度低下に伴い[オーステナイト]から[フェライト+パーライト]へと体積膨張を伴う変態が生じるため、密巻きの条鋼線材の断面変形が助長されてしまう。また、冷却ラインの設備長さを抑えつつ、巻取り時の断面変形が生じないような温度にまで強冷すると、条鋼線材の組織がベイナイトやマルテンサイトに変態してしまう。
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、圧延ラインで連続圧延することにより得られた条鋼線材を、上記圧延ラインの最終仕上げ圧延機の下流側に配置された冷却ラインにより冷却した後、上記冷却ラインの下流側に配置された巻取り機で巻き取ることにより、条鋼線材コイルを製造し、上記冷却ラインは、間隔をおいて配置された複数の水冷部を備え、上記複数の水冷部間の区間が複数の水冷部間復熱部として提供され、上記複数の水冷部のうち最も下流側に位置する水冷部と巻取り機との間の区間が、最終段復熱部として提供され、上記条鋼線材の表面温度を、上記冷却部を通過する度に低下させ、上記復熱部を通過する度に上記条鋼線材の内部熱により上昇させる条鋼線材コイルの製造方法において、
上記複数の水冷部における上流から1番目の水冷部で、上記条鋼線材の表面温度をA1変態点より100℃以上低くし、上記複数の水冷部間復熱部における上流から1番目の水冷部間復熱部で、上記条鋼線材の表面温度をA1変態点以上に上昇させ、上記巻き取り時の上記条鋼線材の表面温度をA1変態点以下にし、上記巻取り機はスプールとその手前の整列機構を有し、上記整列機構により整列された上記条鋼線材を上記スプールに密巻きして上記条鋼線材コイルを得ることを特徴とする。
上記方法によれば、巻き取り時に条鋼線材の表面温度がA1変態点以下になっているので、条鋼線材を密巻きにしても条鋼線材の断面変形を抑制することができる。
1番目の水冷部で条鋼線材の表面温度がA1変態点より100℃以上低い温度になるように強冷した後、1番目の復熱部で条鋼線材の表面温度をA1変態点以上に復熱させるので、急冷に伴うベイナイトやマルテンサイトへの変態を回避することができる。
好ましくは、上記巻き取り時の上記条鋼線材の表面温度を700℃以下にする。
上記方法によれば、より一層確実に巻取り後の条鋼線材の断面変形を抑制することができる。
好ましくは、上記巻き取り時の上記条鋼線材の表面温度を620℃以上とする。
上記方法によれば、条鋼線材を必要以上に冷却することによる冷却ラインの長大化を回避することができる。
好ましくは、上記複数の水冷部における2番目の水冷部で、上記条鋼線材の表面温度をA1変態点より150℃以上低くし、上記複数の水冷部間復熱部における2番目の水冷部間復熱部で、上記条鋼線材の表面温度をA1変態点以上に上昇させる。
上記方法によれば、ベイナイトやマルテンサイトへの変態を回避しつつ、冷却ラインの短縮化に寄与することができる。
好ましくは、上記複数の水冷部における3番目の水冷部で、上記条鋼線材の表面温度をA1変態点より200℃以上低くする。
上記方法によれば、より一層冷却ラインの短縮化ができる。
好ましくは、上記複数の水冷部における上流側の水冷部で、上記条鋼線材の表面温度を上記冷却ラインにおける最低温度にする。
上記方法によれば、より一層冷却ラインの短縮化ができる。
好ましくは、上記複数の水冷部の各々において、上記条鋼線材の表面温度をA1変態点より100℃以上低くする。
上記方法によれば、より確実に巻取り後の条鋼線材の断面変形を抑制しつつ、かつ冷却ラインの短縮化ができる。
上記複数の水冷部の各々の条鋼線材の通過時間に比べて、各水冷部の後に続く水冷部間復熱部での上記条鋼線材の通過時間が長く、上記最終段復熱部での上記条鋼線材の通過時間が、上記水冷部間復熱部での上記条鋼線材の通過時間より長い。
上記方法によれば、条鋼線材の表面の復熱が確実にでき、ベイナイトやマルテンサイトへの変態を確実に回避することができる。
好ましくは、上記複数の水冷部において、上流側水冷部での上記条鋼線材の通過時間が、下流側水冷部での条鋼線材の通過時間より長く、上記複数の水冷部間復熱部において、上流側の水冷部間復熱部での上記条鋼線材の通過時間が、下流側の水冷部間復熱部での条鋼線材の通過時間より短い。
上記方法によれば、上流側では条鋼線材の内部温度が高く表面温度の復熱が速いことに着目して水冷部間復熱部を短くしたので、冷却ラインの短縮化に寄与することができる。
上記条鋼線材の直径が9.53~15.9mmであり、上記冷却ラインにおける上記条鋼線材の速度が11~35m/secである。
本発明によれば、巻取り後の条鋼線材の断面変形を抑制できる密巻きの条鋼線材コイルを製造することができ、しかも、ベイナイトやマルテンサイトへの変態を回避し、冷却ラインの長大化を回避することができる。
本発明の一実施形態に係る条鋼線材コイルの製造システムを示す概略図である。 上記製造システムの巻取り機を示す概略図である。 上記巻取り機のスプールに密巻きされた条鋼線材コイルを模式的に示す断面図である。 上記製造システムの冷却ラインにおいて、圧延された呼び名D10(公称直径9.53mm)の条鋼線材の段階的冷却の過程を示すグラフであり、条鋼線材の表面温度を符号A、中心温度を符号B、平均温度を符号Cで示す。 上記製造システムの冷却ラインにおいて、圧延された呼び名D13(公称直径12.7mm)の条鋼線材の段階的冷却の過程を示すグラフであり、条鋼線材の表面温度を符号A、中心温度を符号B、平均温度を符号Cで示す。 上記製造システムの冷却ラインにおいて、圧延された呼び名D16(公称直径15.9mm)の条鋼線材の段階的冷却の過程を示すグラフであり、条鋼線材の表面温度を符号A、中心温度を符号B、平均温度を符号Cで示す。
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1に示すように、条鋼線材コイルを製造する製造システムは、圧延方向に沿って直線状に配置された圧延ライン10と、冷却ライン20と、巻取り機30とを備えている。
圧延ライン10は上流側から下流側に向かって順に配置された加熱炉11、粗列圧延機12、中間列圧延機13、仕上げ圧延機14、最終仕上げ圧延機15を有している。加熱炉11で加熱されたビレットまたはブルームは、粗列圧延機12、中間列圧延機13、仕上げ圧延機14、最終仕上げ圧延機15で連続圧延されて、段階的にその断面が減面され、最終仕上げ圧延機15から所望寸法の条鋼線材1となって出てくる。
圧延ライン10において最終仕上げ圧延機15の入側(上流側)には入側冷却装置16が配置されている。この入側冷却装置16は、仕上げ圧延機14と入側冷却装置16との間、または入側冷却装置16と最終仕上げ圧延機15との間に配置された温度計の計測値の推移に基づいて入側冷却装置16への供給水量を制御することにより、最終仕上げ圧延機15の出口での条鋼線材1の温度が設定温度範囲に入るように調整し、条鋼線材1毎の温度のばらつきを抑制する。
冷却ライン20は、最終仕上げ圧延機15の出側(下流側)に配置された冷却装置群により構成されている。冷却装置群は、冷却ライン20に沿って間隔をおいて配置された7つ(複数)の冷却装置21~27を有している。以下、これら冷却装置21~27を、上流側から下流側に沿って順に1番目~7番目の冷却装置と言う。これら冷却装置21~27により最終仕上げ圧延機15から出てきた条鋼線材1は段階的に冷却され、巻取り機30に送られる。
図2に示すように巻取り機30は、スプール31と、このスプール31の直前に配置された整列機構32とを備えている。整列機構32の手前には、ピンチローラ35が配置されている。条鋼線材1がピンチローラ35に挟まれた状態でスプール31が図示しない駆動モータにより回転され、条鋼線材1にはピンチローラ35とスプール31との間で張力が作用するようにスプール31の回転が制御される。整列機構32はスプール31の回転に伴い、スプール31の軸方向に往復移動し、条鋼線材1を整列させる。これにより、条鋼線材1は図3に示すように層をなして密に巻かれ、条鋼線材コイル2が得られる。
スプール31に巻かれた条鋼線材コイル2は、製造ラインから外される。
次に、冷却ライン20について詳細に説明する。図1では冷却装置21~27の配置を概略的に示したが、実際には、下記のように配置されている。隣り合う冷却装置21~27のそれぞれの間隔は、最も上流側の1番目の冷却装置21と2番目の冷却装置22との間隔D1が最も狭い。2番目の冷却装置22と3番目の冷却装置23との間隔D2は、間隔D1の2倍程度に広い。3番目の冷却装置23から7番目の冷却装置27までの隣接する各冷却装置の間隔は間隔D2の2倍程度に広くなっている。最も下流側の7番目の冷却装置27と巻取り機30のスプール31までの距離はさらにその2倍以上となっている。
本実施形態の冷却装置21~27は、水が噴射される長さを調節できるようになっている。
以下の説明では、冷却装置21~27において実際に水が噴射されて条鋼線材1を冷却する部位を、上流側から順に1番目~7番目の水冷部(No.1水冷~No.7水冷)という。
隣り合う水冷部のそれぞれの間隔は、最も上流側の1番目の水冷部(No.1水冷)と2番目の水冷部(No.2水冷)との間d1が最も狭い。2番目の水冷部(No.2水冷)と3番目の水冷部(No.3水冷)との間d2は、d1の2倍程度に広い。3番目の水冷部(No.3水冷)から7番目の水冷部(No.7水冷)までの隣接する各水冷部の間はd2の2倍程度に広くなっている。最も下流側の7番目の水冷部(No.7水冷)と巻取り機30のスプール31までの距離はさらにその2倍以上となっている。
冷却装置21~27の各水冷部の間の区間では、後述するように条鋼線材1の表面温度が内部の熱により上昇するが、この区間を上流側から順に1番目~6番目の復熱部(水冷部間復熱部、No.1復熱~No.6復熱)と言う。
最も下流側の冷却装置27の水冷部(7番目の水冷部、No.7水冷)と巻取り機30のスプール31(巻き取り部)までの区間を7番目の復熱部(最終段復熱部、No.7復熱)と言う。
冷却ライン20での条鋼線材1の冷却工程を概略的に説明する。図4~6に示すように、条鋼線材1は冷却装置21~27の各水冷部を通過する度に水を浴びて段階的に冷却される。条鋼線材1の表面温度(図中符号Aで示す)は、水に直接接するので低下が激しい。条鋼線材1の表面温度は、上記復熱部を通過する過程では、中心部からの伝熱により急激に温度が上昇する(回復する)。このように、条鋼線材1の表面温度は冷却ライン20において激しく変動しながら低下していく。
条鋼線材1の中心部の温度(図中符号Bで示す)の低下は緩やかである。条鋼線材1の平均温度(図中符号Cで示す断面内の平均温度)は、表面温度の影響を受けて段階的に低下する。
最も下流側の7番目の復熱部では、7番目の水冷部の出口近傍で条鋼線材1の表面温度が急激に上昇した後、緩やかに上昇を続け、中心温度と平均温度は緩やかに低下する。その結果、条鋼線材1がスプール31で巻き取られる際に、中心温度と表面温度は略等しいか、その差が10℃程度以下となっている。
本発明では、巻取り機30のスプール31で巻き取られる際の条鋼線材1の表面温度を、A1変態点(727℃)以下にしている。これにより、巻取り時には少なくとも表面では[オーステナイト]から [フェライト+パーライト]への組織の変態が終了しており、
条鋼線材1に張力を作用させてスプール31に密巻きにしても条鋼線材1の断面変形を抑制することができる。
好ましくは、スプール31で巻き取られる際の条鋼線材1の表面温度を、700℃以下にしている。このように表面温度をA1変態点より十分に低くすることにより、条鋼線材1は巻取り時には略全領域で [フェライト+パーライト]への組織の変態が終了しており
、また条鋼線材1の変形抵抗も大きくなっており、条鋼線材1に張力を作用させてスプール31に密巻きにしても条鋼線材1の断面変形を確実に防ぐことができる。
好ましくは、スプール31で巻き取られる際の条鋼線材1の表面温度を、620℃以上にする。620℃では既に上記組織の変態は完全に終了しており、必要以上の冷却は、冷却ライン20の長大化を招くからである。
さらに好ましくは、巻取り時の条鋼線材1の表面温度を640~680℃にする。
上述したように巻取り時の条鋼線材1の表面温度が従来(800℃以上)より著しく低いため、圧延された条鋼線材1を緩冷却すると冷却ライン20の著しい長大化を招く。冷却ラインの長大化を回避するためには、条鋼線材1を強冷することが求められるが、徒に強冷すると、条鋼線材1内にマルテンサイトやベイナイトの組織が現れてしまい、JIS規格外になってしまう。
本発明では、冷却ライン20において上流側の水冷部で強冷するとともに充分に復熱させて、下流側の水冷部で緩冷却することにより、ベイナイトやマルテンサイトに変態させることなく、冷却ライン20の長大化を回避している。
具体的には、1番目の水冷部で、条鋼線材1の表面温度をA1変態点より100℃以上低くし、1番目の復熱部で、条鋼線材1の表面温度をA1変態点以上に上昇させている。1番目の水冷部入口では条鋼線材1の表面温度が最も高いので、1番目の水冷部で強冷することにより、最も高い冷却効果が得られる。1番目の復熱部で、条鋼線材1の表面温度を直ぐにA1変態点以上に上昇させるので、ベイナイトやマルテンサイトへの変態は生じない。
好ましくは、2番目の水冷部でも条鋼線材1の表面温度をA1変態点より100℃以上、より好ましくは150℃以上低くし、2番目の復熱部で再びA1変態点以上に上昇させる。これにより、ベイナイトやマルテンサイトへの変態を避けつつ冷却ラインの短縮化に寄与することができる。
さらに好ましくは、3番目の水冷部でも、条鋼線材1の表面温度をA1変態点より100℃以上、より好ましくは200℃以上低くする。これにより、一層冷却ラインの短縮化ができる。
上記のような上流側での強冷により、冷却装置21~27の複数の冷却部における上流側の水冷部で条鋼線材1の表面温度は冷却ライン20における最低温度になる。具体的には3番目の水冷部の出口で最低温度となる。これにより一層冷却ラインの短縮化ができる。最低温度は450℃~540℃が好ましい。なお、最低温度は、1番目または2番目の水冷部で実現させてもよい。
好ましくは、全ての水冷部において、条鋼線材1の表面温度をA1変態点より100℃以上低くする。これにより、より確実に巻取り後の条鋼線材1の断面変形を抑制しつつ、かつ冷却ラインの短縮化ができる。
上流側における強冷のために、本実施形態では、水冷部の長さを調整している。水冷部は長いほど水冷部の通過時間が長くなり冷却能力が増大する。具体的には、冷却ライン20の上流側の水冷部(具体的には1番目~2番目の水冷部または1番目~3番目の水冷部)を下流側の水冷部(3番目~7番目の水冷部または4番目~7番目の水冷部)より長くしている。
復熱部も長いほど復熱部の通過時間が長くなり復熱能力が増大する。復熱部は、十分な復熱効果が得られるように、直前の水冷部より長くしている。なお、1番目の復熱部が最も短く、2番目の復熱部は1番目の復熱部の約2倍であり、3番目~6番目の復熱部は2番目の復熱部の約2倍である。条鋼線材1の内部温度は上流側の方が高いので、復熱部が短くても十分な復熱効果が得られるからである。
7番目の復熱部は、最も長く3番目~6番目の復熱部の2倍以上である。7番目の復熱部で、長時間にわたり復熱されるので、表面温度と中心温度が略等しくなる。
[実施例]
条鋼線材1の材料としては、例えばJIS規格のSD295やSD345が用いられる。ちなみに、SD295の成分の例として、下記の成分を含有している。
C: 0.18~0.27%
Si: 0.10~0.55%
Mn: 0.45~1.50%
SD345の成分の例として、下記の成分を含有している。
C: 0.20~0.27%
Si: 0.10~0.55%
Mn: 0.65~1.50%
条鋼線材1の径(公称直径)に特に制限はないが、10~16mm(JIS G3112:2010 呼び名D10~D16、公称直径9.53~15.9mm)に適用する。
最終仕上げ圧延機15の出口の条鋼線材1の速度は、11~35m/secである。
加熱炉で1000℃前後(例えば1030℃)に加熱されたビレットまたはブルームが圧延ライン10で連続圧延され、最終仕上げ圧延機15の出口での条鋼線材1の表面温度は、950~1000℃となる。この表面温度は、前述したように入側冷却装置16でばらつきを抑えられる。
以下、呼び名D10(公称直径9.53mm)、呼び名D13(公称直径12.7mm)、呼び名D16(公称直径15.9mm)の各サイズの条鋼線材1の冷却工程について説明する。
表1は、各サイズでの水冷部(No.1水冷~No.7水冷)と復熱部(No.1復熱~No.7復熱)の長さを示す。
Figure 0007141861000001
実施例1(D10 公称直径9.53mm)
D10の条鋼線材1を冷却する場合、表1に示すように、最終仕上げ圧延機15の出口から5.0m離れた1番目の水冷部(No.1水冷)の長さが2.6m、2番目の水冷部(No.2水冷)が2.0m、3番目の水冷部(No.3水冷)が3.3mであり、4番目~7番目の水冷部(No.4水冷~No.7水冷)が0.6mである。また、1番目の復熱部(No.1復熱)が4.6mで最も短く、2番目の復熱部(No.2復熱)が10.0m、3番目~6番目の復熱部(No.3復熱~No.6復熱)が19.4~22.2m、7番目の復熱部(No.7復熱)が50.0mである。
最終仕上げ圧延機15の出口での条鋼線材1の速度を30.0m/secとし、1番目の水冷部(No.1水冷)に入る直前の表面温度を944℃とした場合、D10の条鋼線材1の温度変化をシミュレーションすると図4に示す結果が得られた。
条鋼線材1の表面温度は、1番目の水冷部(No.1水冷)で急激に低下し、その出口で、A1変態点より120℃以上(100℃以上)低い約600℃となる。表面温度が高く、1番目の水冷部(No.1水冷)が長いため、1番目の水冷部(No.1水冷)での温度低下は最大となる。1番目の復熱部(No.1復熱)は短いが中心温度、平均温度が高いので、内部熱により表面温度は急激に上昇し、A1変態点を超える約780℃まで復帰する。
表面温度は2番目の水冷部(No.2水冷)でも急激に低下し、A1変態点より150℃以上(100℃以上)低い約570℃まで低下し、2番目の復熱部(No.2復熱)でA1変態点を超える約750℃まで上昇する。
3番目の水冷部(No.3水冷)で表面温度は再び急激に低下し、A1変態点より230℃以上(200℃以上)低い489℃となる。この温度が冷却工程における条鋼線材1の表面温度の最低値となる。3番目の長い復熱部(No.3復熱)で、条鋼線材1の表面温度は最低温度から約700℃まで復帰する。
条鋼線材1の表面温度は、4番目~7番目の冷却部(No.4水冷~No.7水冷)でもA1変態点より100℃以上低い温度まで低下し、4番目~7番目の復熱部(No.4復熱~No.7復熱)では温度上昇するもののその復帰温度は徐々に低下していく。最終的に、巻取り時の表面温度は649℃であり、表面温度と中心温度は略等しい。
実施例2(D13 公称直径12.7mm)
D13の条鋼線材1を冷却する場合、表1に示すように、最終仕上げ圧延機15の出口から3.8m離れた1番目の水冷部(No.1水冷)の長さが3.9m、2番目の水冷部(No.2水冷)が2.1m、3番目の水冷部(No.3水冷)が1.9m、4番目の水冷部(No.4水冷)が1.2mであり、5~7番目の水冷部(No.5水冷~No.7水冷)が0.5~0.7mである。また、1番目の復熱部(No.1復熱)が4.5mで最も短く、2番目の復熱部(No.2復熱)が11.2m、3番目~6番目の復熱部(No.3復熱~No.6復熱)が19.6~21.7m、7番目の復熱部(No.7復熱)が50.0mである。
最終仕上げ圧延機15の出口での条鋼線材1の速度を23.2m/secとし、1番目の水冷部(No.1水冷)に入る直前の表面温度を944℃とした場合、D13の条鋼線材1の温度変化をシミュレーションすると図5に示す結果が得られた。
条鋼線材1の表面温度は、1番目の水冷部(No.1水冷)で急激に低下し、その出口で、A1変態点より190℃以上(100℃以上)低い約530℃となる。表面温度が高く、1番目の水冷部(No.1水冷)が長いため、1番目の水冷部(No.1水冷)での温度低下は最大となる。1番目の復熱部(No.1復熱)は短いが中心温度、平均温度が高いので、内部熱により表面温度は急激に上昇し、A1変態点を超える約740℃まで復帰する。
表面温度は2番目の水冷部(No.2水冷)でも急激に低下し、A1変態点より200℃以上(150℃以上)低い約520℃まで低下し、2番目の復熱部(No.2復熱)でA1変態点を超える約740℃まで上昇する。
3番目の水冷部(No.3水冷)は最も長いので、表面温度はここで再び急激に低下し、A1変態点より220℃(200℃)以上低い497℃となる。この温度が冷却工程における条鋼線材1の表面温度の最低値となる。3番目の復熱部(No.3復熱)は長いので、上記最低温度から約720℃まで復帰する。
条鋼線材1の表面温度は、4番目~7番目の冷却部(No.4水冷~No.7水冷)でもA1変態点より100℃以上低い温度まで低下し、4番目~7番目の復熱部(No.4復熱~No.7復熱)では温度上昇するもののその復帰温度は徐々に低下していく。最終的に、巻取り時の表面温度は657℃であり、表面温度と中心温度の差は約3℃である。
実施例3(D16 公称直径15.9mm)
D16の条鋼線材1を冷却する場合、表1に示すように、最終仕上げ圧延機15の出口から5.1m離れた1番目の水冷部(No.1水冷)の長さが2.7m、2番目の水冷部(No.2水冷)が1.4m、3番目の水冷部(No.3水冷)が1.2mであり、4番目の水冷部(No.4水冷)が1.2m、5番目の水冷部(No.5水冷)が0.7m、6番目の水冷部(No.6水冷)が1.3m、7番目の水冷部(No.7水冷)が0.7mである。また、1番目の復熱部(No.1復熱)が5.2mで最も短く、2番目の復熱部(No.2復熱)が11.8m、3番目~6番目の復熱部(No.3復熱~No.6復熱)が19.5~21.6m、7番目の復熱部(No.7復熱)が50.2mである。
最終仕上げ圧延機15の出口での条鋼線材1の速度を14.8m/secとし、1番目の水冷部に入る直前の表面温度を935℃とした場合、D16の条鋼線材1の温度変化をシミュレーションすると図6に示す結果が得られた。
条鋼線材1の表面温度は、1番目の水冷部(No.1水冷)で急激に低下し、その出口で、A1変態点より190℃以上(100℃以上)低い約530℃となる。表面温度が高く、1番目の水冷部(No.1水冷)が長いため、1番目の水冷部(No.1水冷)での温度低下は最大となる。1番目の復熱部(No.1復熱)は短いが中心温度、平均温度が高いので、内部熱により表面温度は急激に上昇し、A1変態点を超える約760℃まで復帰する。
表面温度は2番目の水冷部(No.2水冷)でも急激に低下し、A1変態点より200℃以上(150℃以上)低い約525℃まで低下し、2番目の復熱部(No.2復熱)でA1変態点を超える約750℃まで上昇する。
3番目の水冷部(No.3水冷)は最も長いので、表面温度はここで再び急激に低下し、A1変態点より200℃以上低い508℃となる。この温度が冷却工程における条鋼線材1の表面温度の最低値となる。3番目の復熱部(No.3復熱)は長いので、上記最低温度から約740℃まで復帰する。
条鋼線材1の表面温度は、4番目~7番目の冷却部(No.4水冷~No.7水冷)でもA1変態点より100℃以上低い温度まで低下し、4番目~7番目の復熱部(No.4復熱~No.7復熱)では温度上昇するもののその復帰温度は徐々に低下していく。最終的に、巻取り時の表面温度は669℃であり、表面温度と中心温度の差は約10℃である。
表1から明らかなように、最終仕上げ圧延機15の出口から巻取装置30のスプール31までの冷却ライン20の長さを約165mに抑えることができた。
本発明は上記実施形態に制約されず、種々の形態を採用可能である。
本発明は、熱間圧延された条鋼線材を密巻きする方法に適用することができる。
1 条鋼線材
2 条鋼線材コイル
10 圧延ライン
15 最終仕上げ圧延機
16 入側冷却装置
20 冷却ライン
21~27 冷却装置
30 巻取り機
31 スプール
32 整列機構

Claims (10)

  1. 圧延ラインで連続圧延することにより得られた条鋼線材を、上記圧延ラインの最終仕上げ圧延機の下流側に配置された冷却ラインにより冷却した後、上記冷却ラインの下流側に配置された巻取り機で巻き取ることにより、条鋼線材コイルを製造し、
    上記冷却ラインは、間隔をおいて配置された複数の水冷部を備え、上記複数の水冷部間の区間が複数の水冷部間復熱部として提供され、上記複数の水冷部のうち最も下流側に位置する水冷部と巻取り機との間の区間が、最終段復熱部として提供され、上記条鋼線材の表面温度を、上記冷却部を通過する度に低下させ、上記復熱部を通過する度に上記条鋼線材の内部熱により上昇させる条鋼線材コイルの製造方法において、
    上記複数の水冷部における上流から1番目の水冷部で、上記条鋼線材の表面温度をA1変態点より100℃以上低くし、上記複数の水冷部間復熱部における上流から1番目の水冷部間復熱部で、上記条鋼線材の表面温度をA1変態点以上に上昇させ、
    上記巻き取り時の上記条鋼線材の表面温度をA1変態点以下にし、
    上記巻取り機はスプールとその手前の整列機構とさらにその手前のピンチローラを有し、上記スプールの回転を制御することにより上記ピンチローラと上記スプールとの間で上記条鋼線材に張力を付与し、この張力を付与された条鋼線材を上記整列機構により整列させながら上記スプールに密巻きにすることにより、上記条鋼線材コイルを得ることを特徴とする条鋼線材コイルの製造方法。
  2. 上記巻き取り時の上記条鋼線材の表面温度を700℃以下にすることを特徴とする請求項1に記載の条鋼線材コイルの製造方法。
  3. 上記巻き取り時の上記条鋼線材の表面温度を620℃以上とすることを特徴とする請求項2に記載の条鋼線材コイルの製造方法。
  4. 上記複数の水冷部における2番目の水冷部で、上記条鋼線材の表面温度をA1変態点より150℃以上低くし、上記複数の水冷部間復熱部における2番目の水冷部間復熱部で、上記条鋼線材の表面温度をA1変態点以上に上昇させることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の条鋼線材コイルの製造方法。
  5. 上記複数の水冷部における3番目の水冷部で、上記条鋼線材の表面温度をA1変態点より200℃以上低くすることを特徴とする請求項4に記載の条鋼線材コイルの製造方法。
  6. 上記複数の水冷部における上流側の水冷部で、上記条鋼線材の表面温度を上記冷却ラインにおける最低温度にすることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の条鋼線材コイルの製造方法。
  7. 上記複数の水冷部の各々において、上記条鋼線材の表面温度をA1変態点より100℃以上低くすることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の条鋼線材コイルの製造方法。
  8. 上記複数の水冷部の各々の条鋼線材の通過時間に比べて、各水冷部の後に続く水冷部間復熱部での上記条鋼線材の通過時間が長く、上記最終段復熱部での上記条鋼線材の通関時間が、上記水冷部間復熱部での上記条鋼線材の通過時間より長いことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の条鋼線材コイルの製造方法。
  9. 上記複数の水冷部において、上流側水冷部での上記条鋼線材の通過時間が、下流側水冷部での条鋼線材の通過時間より長く、
    上記複数の水冷部間復熱部において、上流側の水冷部間復熱部での上記条鋼線材の通過時間が、下流側の水冷部間復熱部での条鋼線材の通過時間より短いことを特徴とすることを特徴とする請求項8に記載の条鋼線材コイルの製造方法。
  10. 上記条鋼線材の直径が9.53~15.9mmであり、上記冷却ラインにおける上記条鋼線材の速度が11~35m/secであることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の条鋼線材コイルの製造方法。
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