JP7008532B2 - 冷間圧延方法 - Google Patents

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Description

本発明は、冷間圧延方法に関する。
熱間圧延した熱間圧延鋼板を冷間圧延すると端部(端面)に割れが発生することがある。この端部割れは、特にMn(マンガン)等の焼入れ性を向上させる元素、すなわちγ鉄からα鉄への変態を遅らせる効果をもつ元素を多く含む熱間圧延鋼板において起こりやすい。この端部割れは、この割れを起点として冷間圧延時さらには焼き鈍し工程、メッキ工程等のその後の工程において破断の原因となるおそれがある。
熱間圧延鋼板の巻取工程後の冷却過程においては、熱間圧延鋼板の幅方向両端部の冷却速度が熱間圧延鋼板の幅方向中央に比べて速くなる。そのため、上記焼入れ性を向上させる元素を多く含む熱間圧延鋼板は、熱間圧延鋼板の幅方向両端部がマルテンサイトを比較的多く含む延性の低い組織となり、このため冷間圧延において端部割れが発生しやすいと考えられる。
この端部割れを減少させる手段としては、(1)熱間圧延鋼板そのものの軟質化を図る手段、(2)冷間圧延時の圧下率を低減する手段、(3)延性の低い幅方向両端部を除去する手段等が考えられる。
これらの対策は、上記(1)については、熱間圧延鋼板そのものを軟質化する手段を採用すると、熱間圧延時にスケールが増大するため、スケール除去のために、酸洗時間の増加又は長時間要する熱間圧延工程後のバッチ焼鈍工程が必要となり、生産性が低下するおそれがある。また、上記(2)については、冷間圧延時に圧下率を低減するためには熱間圧延時の圧下率を増加させる必要があるが、その場合熱間圧延で製造可能な鋼板薄さを超えてしまうおそれがある。さらに、(3)については、幅方向両端部を除去する手段を採用すると、除去部分の存在によって歩留まりが低下し、製造コストの増加を招くおそれがある。
従来技術においては、冷間圧延における熱間圧延鋼板の耳割れに起因する破断の発生を抑制するために、熱間圧延鋼板のうちの両エッジ部を加熱する加熱装置と、この加熱装置よりも熱間圧延鋼板の搬送方向の上流側に配置される蛇行修正装置とを備える冷間圧延設備により、熱間圧延鋼板の両エッジ部を安定して加熱しつつ冷間圧延を行う方法が提案されている(特開2015-139810号公報)。
特開2015-139810号公報
しかしながら、上記従来技術のように熱間圧延鋼板のうちの両エッジ部だけが高温のまま圧延を行った場合、熱間圧延鋼板の幅方向の変形抵抗分布が過大となることから冷間圧延後の熱間圧延鋼板形状が乱れ、操業性及び製品の品質が低下するおそれがある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、冷間圧延時の端部割れの抑制効果が優れる冷間圧延方法を提供することを目的とする。
合金元素を多く含む熱間圧延鋼板で熱間圧延工程後の巻取り後の空冷等による冷却過程においては、熱間圧延鋼板の幅方向両端部の冷却速度がコイルの幅中央に比べて速いことにより、冷間圧延において熱間圧延鋼板の端部割れが発生しやすい組織となっている。本発明者らは、熱間圧延後の鋼板のエッジ部に熱処理を行い、熱間圧延鋼板の幅方向両端部の組織を適度に軟質化することで、熱間圧延鋼板の端部割れを抑制できることを見出した。
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様は、コイル状に巻き取られて冷却された帯状の熱間圧延鋼板を冷間圧延する方法であって、上記熱間圧延鋼板をコイルから繰り出す繰出工程と、上記繰り出された熱間圧延鋼板の幅方向両端部を熱間圧延鋼板材料のA1点以下400℃以上の温度に加熱する加熱工程と、上記加熱工程後の熱間圧延鋼板を酸によって洗浄する酸洗工程と、上記酸洗工程後の熱間圧延鋼板を冷間圧延する冷間圧延工程とを備える冷間圧延方法である。
当該冷間圧延方法にあっては、コイル状に巻き取られた熱間圧延鋼板の幅方向両端部を冷間圧延前に加熱することで、冷間圧延時に上記幅方向両端部に割れが発生しない適度な延性を確保できる。その結果、冷間圧延等に際して端部割れを生ずることを的確に抑制することができる。特に、幅方向両端部を熱間圧延鋼板材料のA1点以下400℃以上の温度に加熱するので、上記熱間圧延後に冷却した際に発生した幅方向両端部のミクロ組織内のマルテンサイトを確実に焼戻しマルテンサイトに変性できる。従って、熱間圧延鋼板の幅方向両端部の好適な延性をより確実に確保できるので、冷間圧延時の端部割れの抑制効果が優れる。さらに、当該冷間圧延方法は、冷間圧延における端部割れを、従来と同等以上の圧下率において抑制できるので、端部割れリスクを低減するために行う端部割れが起こりやすい部分の除去による歩留ロスを大幅に低減できる。
上記加熱工程における加熱は、上記熱間圧延鋼板の長手方向両端側領域にのみ行われることが好ましい。これにより、端部割れが発生しやすい長手方向両端側領域のみを部分的に加熱することにより、加熱コストを軽減できる。コイル状の熱間圧延鋼板の端面全体に亘って一斉に加熱する場合に比べて、ランニングコストを低減できる。
上記長手方向両端側領域における長手方向の長さが、上記熱間圧延鋼板の通板方向の先端部から尾端部に向けて全長の50%以下であり、上記尾端部から上記先端部に向けて全長の20%以下であることが好ましい。加熱工程における加熱領域を上記範囲に限定することで、加熱コストの軽減効果を高めることができる。
本発明の冷間圧延方法は、熱間圧延鋼板の端部割れの抑制効果が優れる。
本発明の冷間圧延方法の一実施形態の工程を示す概略図である。 実施例の加熱工程における温度変化を示すグラフである。
以下、本発明に係る冷間圧延方法の実施形態について詳説する。
本発明の一実施形態の冷間圧延方法は、コイル状に巻き取られて冷却された帯状の熱間圧延鋼板を冷間圧延する方法である。当該冷間圧延方法は、上記熱間圧延鋼板をコイルから繰り出す繰出工程と、上記繰り出された熱間圧延鋼板の幅方向両端部を所定の温度に加熱する加熱工程と、上記加熱工程後の熱間圧延鋼板を酸によって洗浄する酸洗工程と、上記酸洗工程後の熱間圧延鋼板を冷間圧延する冷間圧延工程とを備え、各工程を経ることで冷間圧延鋼板が製造される。また、当該冷間圧延方法は、冷間圧延工程後の鋼板をコイル状に巻き取る巻取工程をさらに備えていてもよい。
図1は、本実施形態の冷間圧延方法の工程を示す概略図である。本実施形態の冷間圧延方法においては、例えば、図1に示すような冷間圧延ラインを構築した冷間圧延装置1が挙げられる。この冷間圧延ラインは、一方のリールに巻き取られて冷却された熱間圧延鋼板のコイル3を繰出して、他方のリールに熱間圧延鋼板2の一端を巻き取ることで、熱間圧延鋼板2は両リール間を通板方向Rに走行する。また、冷間圧延装置1は、コイル状に巻き取られて冷却された帯状の熱間圧延鋼板を巻き戻す工程中に加熱装置5と、酸洗槽6と、連続圧延機10とがこの順に配置されている。
[繰出工程]
繰出工程では、コイル状に巻き取られて冷却された帯状の熱間圧延鋼板2を通板方向Rに繰出す。
(熱間圧延鋼板)
熱間圧延鋼板2は、熱間圧延工程が施された帯状の鋼板である。この熱間圧延工程では、スラブを加熱し、圧延することで熱間圧延鋼板2を形成する。具体的には、まず加熱炉を用いてスラブを900℃以上1200℃以下の範囲で加熱し、このとき発生する1次スケールをデスケーラーで除去する。次に、この加熱したスラブを900℃以上1300℃以下の温度範囲で粗圧延した後、表面に発生する2次スケールをデスケーラーで除去する。さらに、粗圧延したスラブを800℃以上1100℃以下で仕上げ圧延を行って熱間圧延鋼板2を得る。
熱間圧延鋼板2の組成としては特に限定されないが、例えば炭素、ケイ素、マンガン、リン、硫黄、クロム、ニッケル、モリブデン及び銅、並びに残部が鉄及び不可避的不純物である組成を有する。また、当該冷間圧延方法は、対象となるコイル状に巻き取られて冷却された熱間圧延鋼板2が、下記式(1)によって示される焼入性倍数Fが20以上であるような冷間圧延時に端部割れが生じやすい組成を有する場合により良好な効果を発揮する。上記焼入性倍数Fが20以上の鋼板は、冷間圧延時にエッジ割れが発生しやすいが、この焼入性倍数Fが20以上の鋼板に対して当該冷間圧延方法を行うことで、かかる鋼板にあってもエッジ割れを的確に抑制することができる。なお、下記式(1)中、C、Si、Mn、P、S、Cr、Ni、Mo及びCuは、それぞれ鋼板における炭素元素、ケイ素元素、マンガン元素、リン元素、硫黄元素、クロム元素、ニッケル元素、モリブデン元素及び銅元素の含有率(質量%)を意味する。
F=(1+1.5×(0.9-C))×(1+0.64×Si)×(1+4.1×Mn)×(1+2.83×P)×(1-0.62×S)×(1+2.33×Cr)×(1+0.52×Ni)×(1+3.14×Mo)×(1+0.27×Cu)・・・(1)
上記熱間圧延工程において、熱間圧延鋼板2の厚み(仕上げ厚み)が所望厚みとなるよう圧延される。具体的には、所定厚(例えば230mm)のスラブを仕上げ厚みが1.2mm以上6.0mm以下となるよう圧延することが好ましい。上記仕上げ厚みの上限としては、4.5mmがより好ましい。また、上記仕上げ厚みの下限としては、2.0mmがより好ましい。上記仕上げ厚みが上記上限を超えると、圧延が不十分となり、熱間圧延鋼板2の強度が十分得られないおそれがある。一方、上記仕上げ厚みが上記下限を満たさないと、熱間圧延工程における加工量が多くなり過ぎ、設備費用が過大となるおそれがある。
熱間圧延工程後の帯状の鋼板は、リールに巻き取られる。熱間圧延鋼板2の巻取り温度は、特に限定されないが、例えば500℃以上であってもよく、650℃以上であってもよい。巻取り後の熱間圧延鋼板のコイル3は、常温まで冷却(空冷)される。
(繰出)
コイル状に巻き取られて冷却された熱間圧延鋼板のコイル3のリールは、その軸方向を中心に回転できるよう図示しない支持装置によって支持されている。具体的には、上記支持装置によって熱間圧延鋼板のコイル3がリールの中心軸を中心に回転されつつ、熱間圧延鋼板2が通板方向Rに繰出される。
[加熱工程]
上記加熱工程は、上記繰り出し工程によりコイルから繰り出された熱間圧延鋼板2の幅方向両端部を、加熱装置5で加熱する工程であり、酸洗工程の前に行われる。当該冷間圧延方法は、熱間圧延鋼板2の幅方向両端部を加熱することで、熱間圧延鋼板2の幅方向両端部が適度な延性を有することになり、その後の冷間圧延工程において端部割れを抑制できる。また、上記加熱工程が酸洗工程後に行われた場合、熱間圧延鋼板2の表面に酸化皮膜が発生したり、加熱工程後の冷却設備が必要となるというデメリットがあるが、当該冷間圧延方法では上記加熱工程が酸洗工程前に行われるので、このようなデメリットが生じるおそれがない。
加熱装置5は、熱間圧延鋼板2の幅方向両端部のみを加熱可能であれば特に限定されず、バーナ、誘導加熱装置等が用いられる。
コイル状に巻き取られて冷却された熱間圧延鋼板2は、再変態によってマルテンサイト組織が存在することで延性が低下しているが、当該冷間圧延方法では、上記加熱工程において上記マルテンサイト組織をA1変態点以下に加熱することで、熱間圧延鋼板2の幅方向両端部の延性を好適に確保でき、端部割れを抑制できる。
上記加熱工程の加熱温度の上限としては、熱間圧延鋼板材料のA1点であり、700℃が好ましく、600℃がより好ましい。上記加熱温度の上限が上記範囲であることで、マルテンサイト変態を確実に抑制でき、熱間圧延鋼板2の幅方向両端部の好適な延性をより確実に確保できる。加熱温度の上限である熱間圧延鋼板材料のA1点とは、加熱した際に体心立方格子からオーステナイトの面心立方格子へ熱間圧延鋼板の結晶格子の変態が開始される温度を意味する。加熱温度が熱間圧延鋼板材料のA1点を超えると、冷却した際にマルテンサイト変態が起こり、冷却速度によっては割れの起点となるおそれがある。
また、上記加熱温度の下限としては、400℃であり、500℃がより好ましい。加熱温度が上記下限未満の場合、幅方向両端部の幅方向両端部の変性が十分行われず、幅方向両端部の延性が低下するおそれがある。
上記加熱工程において加熱される幅方向両端部の幅方向の範囲としては、特に限定されないが、帯状の熱間圧延鋼板2の端面(側端面)から1mm以下の部分(端面も含む)が好ましく、上記端面から5mm以下の部分であることがより好ましく、上記端面から5mm超の部分であることがさらに好ましい。但し、加熱される幅方向両端部の幅方向の範囲を広げると加熱コストが不必要に嵩むおそれがある。
上記加熱工程の上記熱間圧延鋼板の長手方向の加熱範囲としては、必ずしも限定されるものではないが、上記熱間圧延鋼板の長手方向両端側領域にのみ行われることが好ましい。これにより、端部割れが発生しやすい長手方向両端側領域のみを部分的に加熱するので、加熱コストを軽減できる。コイル状の熱間圧延鋼板の端面全体に亘って一斉に加熱する場合に比べて、ランニングコストを低減できる。
また、上記長手方向両端側領域における長手方向の長さとしては、熱間圧延鋼板2の通板方向Rの先端部から尾端部に向けて全長の50%以下が好ましく、20%以下がより好ましい。また、上記長手方向両端側領域における長手方向の長さとしては、上記尾端部から上記先端部に向けて全長の20%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。加熱工程における加熱領域を上記範囲に限定することで、加熱コストの軽減効果を高めることができる。
加熱工程後は、熱間圧延鋼板2の冷却を行う。冷却手段は特に限定されず、空冷、エアブロー等、公知の手段を用いることができる。
[酸洗工程]
酸洗工程は、上記加熱工程後の熱間圧延鋼板2を酸洗槽6の酸によって洗浄する。酸洗工程を行うことで、加熱工程で形成された熱間圧延鋼板2の表面の酸化皮膜が酸洗槽6で溶解し除去される。また、加熱工程で生じた鋼板幅方向に不均一な熱は酸洗槽6で均一化されるため、酸洗工程後の冷間圧延工程における連続圧延機10の圧延ロールが汚染されず、また、冷間圧延工程において鋼板幅方向に不均一な変形抵抗による形状不良が抑制される。
[冷間圧延工程]
上記冷間圧延工程は、上記酸洗工程後の熱間圧延鋼板2を冷間圧延する工程である。連続圧延機10は、熱間圧延鋼板2の通板方向Rに複数対の冷間圧延ロールを配置させた構成とすることができる。熱間圧延鋼板2は、通板中に連続圧延機10の圧延ロールに挟まれることで、冷間圧延が行われる。連続圧延機10としては、公知の圧延機を用いることができ、例えば1基のミルで繰り返し圧延するリバース圧延機を用いることができる。
本冷間圧延工程にあっては、上記酸洗工程後の熱間圧延鋼板2を所定の圧下率で冷間圧延する。この冷間圧延工程における圧下率の下限としては、20%が好ましく、30%がより好ましい。この圧下率が上記下限を満たさないと、鋼板の高強度化及び薄型化が不十分となるおそれがある。一方、この圧下率の上限としては、70%が好ましく、60%がより好ましい。上記圧下率が上記上限を超えると、鋼板の加工限界を超えるおそれがある。また、当該冷間圧延方法は、冷間圧延工程前に上記加熱工程が行われ、熱間圧延鋼板2の幅方向両端部の延性が十分担保されているため、冷間圧延工程における圧下率が上記範囲内であることで鋼板の端部割れが発生し難い。ここで圧下率とは、冷間圧延前の板厚をh0、冷間圧延後(2段階以上の圧下を行う場合には最終段階)の板厚をh1としたとき、(h0-h1)/h0で表される板厚の変化率を意味する。圧下率の数値が大きいほど、冷間圧延による板厚の変化率が大きいことを示している。
また、上記冷間圧延工程における真ひずみの下限としては、0.20が好ましく、0.35がより好ましい。この真ひずみが上記下限を満たさないと、鋼板の高強度化及び薄型化が不十分となるおそれがある。一方、この真ひずみの上限としては、1.20が好ましく、0.90がより好ましい。上記圧下率が上記上限を超えると、鋼板の加工限界を超えるおそれがある。なお、真ひずみとは、ln(H/h)の値である。
[冷間圧延工程後の巻取工程]
冷間圧延工程後の巻取工程では、上記冷間圧延工程後の鋼板がリールに巻き取られて冷間圧延鋼板のコイル11が形成される。
(利点)
当該冷間圧延方法にあっては、上述のようにコイル状に巻き取られた熱間圧延鋼板の幅方向両端部を冷間圧延前に加熱することで、上記幅方向両端部の延性を適度に確保でき、これによって冷間圧延工程において端部割れの抑制効果が優れる。
(その他の実施形態)
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
上記実施形態においては、コイル状に巻き取られて冷却された帯状の熱間圧延鋼板を巻き戻す工程中に加熱工程と、酸洗工程と、冷間圧延工程が行われていたが、酸洗工程後に熱間圧延鋼板を巻き戻し、別工程として冷間圧延工程を実施してもよい。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(試験片の作製)
下記の組成を有する溶鋼を、通常の溶製法によって溶製し、熱間圧延機を用いて熱間圧延を施し、熱間圧延鋼板を製造した。次に650℃で巻取り、熱間圧延鋼板コイルとした。次に、大気中で室温にまで放冷した。その後、コイルから熱間圧延鋼板を繰出し、50mm×500mmの試験番号No.1~No.5の試験片を得た。各試験片の板厚Hを表1に示す。
溶鋼は、下記の主な組成及びその他不可避的に含まれる不純物を有する。また、溶鋼のA1点は723℃である。
C:0.22質量%
Si:1.13質量%
Mn:2.23質量%
(加熱工程)
加熱装置として誘導加熱装置を用いて試験片No.2~No.5について端面から0mmの位置をA1点以下の温度となるように加熱した。加熱の際の試験片の加熱部分の温度は、試験片の側端面中央部に取付けられた熱電対によって計測した。各試験片の到達温度を表1に示す。各試験片が所定の温度に到達した後は、空冷又はエアブローにより冷却した。エアブローの条件としては、500℃から100℃以下まで10秒以内に冷却できる条件とした。空冷及びエアブローによる冷却の温度変化の例として、試験片No.2及びNo.3の加熱工程における温度変化を図2に示す。
(酸洗工程)
酸洗工程では、塩酸を使用し、スケールが除去されるまで酸洗を行った。
(冷間圧延工程)
上記酸洗工程後、試験片No.1~No.5について、表1に示す到達板厚h(mm)になるまで冷間圧延を施した。試験片No.1~No.5の到達板厚h、真ひずみ及び圧下率を表1に示す。
[評価]
(耐端部割れ性)
冷間圧延工程後の試験片No.1~No.5の端部の割れの有無を目視で確認した。これらの評価結果を表1に示す。
Figure 0007008532000001
上記表1に示されるように、冷却された帯状の熱間圧延鋼板をA1点以下400℃以上の温度に加熱した試験片No.2~No.5においては、圧下率が通常の圧下率以上の70%であったにも係わらず、端部割れ(端面の割れ)が検出されなかった。一方、上記加熱工程が行われなかった試験片No.1においては、圧下率が試験片No.2~No.5と比べて小さい50%であったにも係わらず、端部割れが検出された。これらの結果から、当該冷間圧延方法が端部割れを効果的に抑制できることが示された。
本発明の冷間圧延方法は、上述のように端面の割れを的確に抑制できるので、冷間圧延鋼板を製造する際に好適に用いることができる。
1 冷間圧延装置
2 熱間圧延鋼板
3 熱間圧延鋼板のコイル
5 加熱装置
6 酸洗槽
10 連続圧延機
11 冷間圧延鋼板のコイル

Claims (2)

  1. コイル状に巻き取られて冷却された帯状の熱間圧延鋼板を冷間圧延する方法であって、
    上記熱間圧延鋼板をコイルから繰り出す繰出工程と、
    上記繰り出された熱間圧延鋼板の幅方向両端部を熱間圧延鋼板材料のA1点以下400℃以上の温度に加熱する加熱工程と、
    上記加熱工程後の熱間圧延鋼板を酸によって洗浄する酸洗工程と、
    上記酸洗工程後の熱間圧延鋼板を冷間圧延する冷間圧延工程と
    を備え
    上記熱間圧延鋼板の厚みが2.0mm以上4.5mm以下であり、
    上記加熱工程における加熱を、上記熱間圧延鋼板の通板方向の先端部から尾端部に向けて全長の50%以下、かつ上記尾端部から上記先端部に向けて全長の20%以下で行い、
    上記冷間圧延工程における圧下率が20%以上70%以下である冷間圧延方法。
  2. 上記熱間圧延鋼板の組成が、炭素、ケイ素、マンガン、リン、硫黄、クロム、ニッケル、モリブデン及び銅、並びに残部が鉄及び不可避的不純物であり、下記式(1)によって示される焼入性倍数Fが20以上である請求項1に記載の冷間圧延方法。
    F=(1+1.5×(0.9-C))×(1+0.64×Si)×(1+4.1×Mn)×(1+2.83×P)×(1-0.62×S)×(1+2.33×Cr)×(1+0.52×Ni)×(1+3.14×Mo)×(1+0.27×Cu)・・・(1)
    なお、上記式(1)中、C、Si、Mn、P、S、Cr、Ni、Mo及びCuは、それぞれ鋼板における炭素元素、ケイ素元素、マンガン元素、リン元素、硫黄元素、クロム元素、ニッケル元素、モリブデン元素及び銅元素の含有率(質量%)を意味する。
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