JP6589331B2 - 電池用包装材料 - Google Patents

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Description

本発明は、水分による劣化が抑制された電池用包装材料に関する。
従来、様々なタイプの電池が開発されているが、あらゆる電池において、電極や電解質等の電池素子を封止するために包装材料が不可欠な部材になっている。従来、電池用包装として金属製の包装材料が多用されていたが、近年、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、パソコン、カメラ、携帯電話等の高性能化に伴い、電池には、多様な形状が要求されると共に、薄型化や軽量化が求められている。しかしながら、従来多用されていた金属製の電池用包装材料では、形状の多様化に追従することが困難であり、しかも軽量化にも限界があるという欠点がある。
そこで、多様な形状に加工が容易で、薄型化や軽量化を実現し得る電池用包装材料として、基材層/接着層/金属層/シーラント層が順次積層されたフィルム状の積層体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このようなフィルム状の電池用包装材料では、シーラント層同士を対向させて周縁部をヒートシールにて熱溶着させることにより電池素子を封止できるように形成されている。
ところで、電池が使用される環境は多岐に亘り、電池用包装材料が高温多湿環境下に曝されることがある。このため、上記のようなフィルム状の積層体によって形成された電池用包装材料においては、積層体に含まれる金属層によって、外部環境からの電池素子への水分の移行が抑制されている。
特開2008−287971号公報
しかしながら、本発明者等が検討したところ、上記のようなフィルム状の積層体によって形成された電池用包装材料が、高温多湿環境下に長期間に亘って曝されると、基材層と金属層とを接着している接着層が水分によって劣化する場合があることが明らかとなった。接着層が劣化することにより、基材層と金属層とのラミネート強度が低下し、基材層と金属層とが剥離する、所謂デラミネーションと呼ばれる現象が生じるという問題がある。さらに、接着層が劣化すると、接着層が黄変し、電池用包装材料に外観不良が生じるという問題もある。
本発明は、水分による劣化が効果的に抑制された電池用包装材料を提供することを目的とする。
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、少なくとも、基材層、接着層、金属層、及びシーラント層をこの順に有する積層体からなる電池用包装材料において、接着層よりも基材層側に、水分バリア層を積層することにより、電池用包装材料が高温多湿環境下に長期間に亘って曝された場合にも、水分による接着層の劣化が抑制され、基材層と金属層とのデラミネーションや接着層の黄変が効果的に抑制されることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 少なくとも、基材層、接着層、金属層、及びシーラント層をこの順に有する積層体からなり、
前記接着層よりも前記基材層側に、水分バリア層が積層されている、電池用包装材料。
項2. 前記水分バリア層が、前記基材層と前記接着層との間に積層されている、項1に記載の電池用包装材料。
項3. 前記水分バリア層が、前記基材層の外側に積層されている、項1または2に記載の電池用包装材料。
項4. 前記水分バリア層が、金属または金属酸化物の薄膜層を備えている、項1〜3のいずれかに記載の電池用包装材料。
項5. 前記水分バリア層が、前記薄膜層と樹脂層との積層体である、項4に記載の電池用包装材料。
項6. 前記接着層が、ポリウレタン系接着剤により形成されている、項1〜5のいずれかに記載の電池用包装材料。
項7. 前記電池用包装材料を、温度80℃、湿度95%RHの環境下で1900時間保管した後の、前記基材層と前記金属層とのラミネート強度が2.0N/15mm以上であり、かつ、
前記保管前後において、前記基材層側から測定したL***表色系のb*値の差(Δb*)が、1.0以下である、項1〜6のいずれかに記載の電池用包装材料。
項8. 前記基材層と前記水分バリア層との積層体のJIS K7129Bのモコン法に準拠して測定される水分透過量が、8g/m2・day以下である、項1〜7のいずれかに記載の電池用包装材料。
項9. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、項1〜8のいずれかに記載の電池用包装材料内に収容されている、電池。
本発明によれば、少なくとも、基材層、接着層、金属層、及びシーラント層をこの順に有する積層体からなる電池用包装材料において、接着層よりも基材層側に、水分バリア層を積層することにより、電池用包装材料が高温多湿環境下に長期間に亘って曝された場合にも、水分による接着層の劣化が抑制され、基材層と金属層とのデラミネーションや接着層の黄変が効果的に抑制された電池用包装材料を提供することができる。また、本発明によれば、当該電池用包装材料を利用した電池を提供することができる。
本発明の電池用包装材料の略図的断面図である。 本発明の電池用包装材料の略図的断面図である。 本発明の電池用包装材料の略図的断面図である。 本発明の電池用包装材料の略図的断面図である。 本発明の電池用包装材料の略図的断面図である。
1.電池用包装材料
本発明の電池用包装材料は、少なくとも、基材層、接着層、金属層、及びシーラント層をこの順に有する積層体からなり、接着層よりも基材層側に、水分バリア層が積層されていることを特徴とする。以下、本発明の電池用包装材料について詳述する。
電池用包装材料の積層構造及び物性
電池用包装材料は、図1〜5に示すように、少なくとも、基材層1、接着層2、金属層3、及びシーラント層4をこの順に有する積層体からなり、さらに、接着層2よりも基材層1側に、水分バリア層5が積層されている。本発明の電池用包装材料においては、基材層1側が外側層となり、シーラント層4が最内層となる。電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置するシーラント層4同士を接面させて熱溶着することにより電池素子が密封され、電池素子が封止される。図2に示すように、本発明の電池用包装材料は、金属層3とシーラント層4との間に接着層6を有していてもよい。
図1〜2に示されるように、水分バリア層5は、1層により構成されていてもよいし、図3〜5に示されるように複数層により構成されていてもよい。後述の通り、水分バリア層5が1層により構成されている場合には、水分バリア層5は、金属もしくは金属酸化物の薄膜層51により形成されていることが好ましい(図1〜2を参照)。また、水分バリア層5が複数層により構成されている場合には、水分バリア層5は、薄膜層51と樹脂層52との積層体であることが好ましい(図3〜5を参照)。
水分バリア層5が、薄膜層51と樹脂層52との積層体である場合、薄膜層51と樹脂層52の積層順としては、特に制限されない(例えば、図3及び図4を参照)。なお、図5に示されるように、水分バリア層5が最外層に位置する場合には、薄膜層51は最表面に露出していないことが望ましい。
本発明の電池用包装材料は、当該電池用包装材料を、温度80℃、湿度95%RHの環境下で1900時間保管した後の、基材層1と金属層3とのラミネート強度が2.0N/15mm以上であり、かつ、保管前後において、基材層1側から測定したL***表色系のb*値の差(Δb*)が、1.0以下であることが好ましい。本発明の電池用包装材料においては、接着層2よりも基材層1側に、水分バリア層5が積層されていることから、好ましくはこのような物性を奏することが可能となる。
当該ラミネート強度としては、好ましくは2.5N/15mm以上が挙げられる。また、当該Δb*としては、好ましくは0.5以下が挙げられる。
なお、基材層1と金属層3とのラミネート強度は、具体的には、実施例に記載の方法により測定された値である。また、Δb*についても、具体的には、実施例に記載の方法により測定された値である。
電池用包装材料を形成する各層の組成
[基材層1]
本発明の電池用包装材料において、基材層1は金属層3よりも外側に位置する層である。基材層1を形成する素材については、絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されるものではない。基材層1を形成する素材としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ、アクリル、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール、ポリエーテルイミド、ポリイミド、及びこれらの混合物や共重合物等が挙げられる。
ポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。また、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル−ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。また、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてブチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。これらのポリエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。ポリエステルは、耐電解液性に優れ、電解液の付着に対して白化等が発生し難いという利点があり、基材層1の形成素材として好適に使用される。
また、ポリアミドとしては、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体等の脂肪族系ポリアミド;テレフタル酸及び/又はイソフタル酸に由来する構成単位を含むナイロン6I、ナイロン6T、ナイロン6IT、ナイロン6I6T(Iはイソフタル酸、Tはテレフタル酸を表す)等のヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸−テレフタル酸共重合ポリアミド、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等の芳香族を含むポリアミド;ポリアミノメチルシクロヘキシルアジパミド(PACM6)等の脂環系ポリアミド;さらにラクタム成分や、4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート等のイソシアネート成分を共重合させたポリアミド、共重合ポリアミドとポリエステルやポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体であるポリエステルアミド共重合体やポリエーテルエステルアミド共重合体;これらの共重合体等が挙げられる。これらのポリアミドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。延伸ポリアミドフィルムは延伸性に優れており、成形時の基材層1の樹脂割れによる白化の発生を防ぐことができ、基材層1の形成素材として好適に使用される。
基材層1は、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルムで形成されていてもよく、また未延伸の樹脂フィルムで形成してもよい。中でも、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルム、とりわけ2軸延伸された樹脂フィルムは、配向結晶化することにより耐熱性が向上しているので、基材層1として好適に使用される。また、基材層1は、上記の素材を金属層3上にコーティングして形成されていてもよい。
これらの中でも、基材層1を形成する樹脂フィルムとして、好ましくはナイロン、ポリエステル、更に好ましくは2軸延伸ナイロン、2軸延伸ポリエステル、特に好ましくは2軸延伸ナイロンが挙げられる。
基材層1は、耐ピンホール性及び電池の包装体とした時の絶縁性を向上させるために、異なる素材の樹脂フィルム及びコーティングの少なくとも一方を積層化することも可能である。具体的には、ポリエステルフィルムとナイロンフィルムとを積層させた多層構造や、2軸延伸ポリエステルと2軸延伸ナイロンとを積層させた多層構造等が挙げられる。基材層1を多層構造にする場合、各樹脂フィルムは接着剤を介して接着してもよく、また接着剤を介さず直接積層させてもよい。接着剤を介さず接着させる場合には、例えば、共押出し法、サンドラミ法、サーマルラミネート法等の熱溶融状態で接着させる方法が挙げられる。また、接着剤を介して接着させる場合、使用する接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型、UVやEBなどの電子線硬化型等のいずれであってもよい。接着剤の成分としてポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミノ樹脂、ゴム、シリコン系樹脂が挙げられる。
基材層1には、成形性を向上させるために低摩擦化させておいてもよい。基材層1を低摩擦化させる場合、その表面の摩擦係数については特に制限されないが、例えば1.0以下が挙げられる。基材層1を低摩擦化するには、例えば、マット処理、スリップ剤の薄膜層の形成、これらの組み合わせ等が挙げられる。
前記マット処理としては、予め基材層1にマット化剤を添加し表面に凹凸を形成したり、エンボスロールによる加熱や加圧による転写法や、表面を乾式又は湿式ブラスト法やヤスリで機械的に荒らす方法が挙げられる。マット化剤としては、例えば、粒径が0.5nm〜5μm程度の微粒子が挙げられる。マット化剤の材質については、特に制限されないが、例えば、金属、金属酸化物、無機物、有機物等が挙げられる。また、マット化剤の形状についても、特に制限されないが、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状等が挙げられる。マット化剤として、具体的には、はタルク,シリカ,グラファイト、カオリン、モンモリロイド、モンモリロナイト、合成マイカ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛,酸化マグネシウム,酸化アルミニウム,酸化ネオジウム,酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム,硫酸バリウム、炭酸カルシウム,ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、安息香酸カルシウム,シュウ酸カルシウム,ステアリン酸マグネシウム、アルミナ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ類、高融点ナイロン、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン、金、アルミニウム、銅、ニッケル等が挙げられる。これらのマット化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのマット化剤の中でも、分散安定性やコスト等の観点から、好ましくはりシリカ、硫酸バリウム、酸化チタンが挙げられる。また、マット化剤には、表面に絶縁処理、高分散性処理等の各種表面処理を施しておいてもよい。
前記スリップ剤の薄膜層は、基材層1上にスリップ剤をブリードアウトにより表面に析出させて薄層を形成させる方法や、基材層1にスリップ剤を積層することで形成できる。スリップ剤としては、特に制限されないが、例えば、脂肪酸アマイド、金属石鹸、親水性シリコーン、シリコーンをグラフトしたアクリル、シリコーンをグラフトしたエポキシ、シリコーンをグラフトしたポリエーテル、シリコーンをグラフトしたポリエステル、ブロック型シリコーンアクリル共重合体、ポリグリセロール変性シリコーン、パラフィン等が挙げられる。これらのスリップ剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
基材層1の厚さは、例えば、10〜50μm、好ましくは15〜30μmが挙げられる。
[接着層2]
本発明の電池用包装材料において、接着層2は、基材層1と金属層3との接着性を高めることなどを目的として設けられる層である。
接着層2は、基材層1または水分バリア層5と金属層3とを接着可能である接着剤によって形成される。接着層2の形成に使用される接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着層2の形成に使用される接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。
接着層2の形成に使用できる接着剤の樹脂成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステル等のポリエステル系樹脂;ポリエーテル系接着剤;ポリウレタン系接着剤;エポキシ系樹脂;フェノール樹脂系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム;シリコーン系樹脂;フッ化エチレンプロピレン共重合体等が挙げられる。これらの接着剤成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上の接着剤成分の組み合わせ態様については、特に制限されないが、例えば、その接着剤成分として、ポリアミドと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドとポリエステル、ポリエステルと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリエステルと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂等が挙げられる。これらの中でも、展延性、高湿度条件下における耐久性や応変抑制作用、ヒートシール時の熱劣化抑制作用等が優れ、基材層1と金属層2との間のラミネーション強度の低下を抑えてデラミネーションの発生を効果的に抑制するという観点から、好ましくはポリウレタン系接着剤、より好ましくはポリウレタン系2液硬化型接着剤などが挙げられる。
前述の通り、電池用包装材料が、高温多湿環境下に長期間に亘って曝されると、基材層と金属層とを接着している接着層が水分によって劣化する場合がある。特に、接着層を構成する接着剤として好ましいポリウレタン系接着剤などにおいても、このような劣化の問題が生じやすい。これに対して、本発明の電池用包装材料においては、接着層2よりも基材層1側に、前述の水分バリア層5が積層されていることにより、電池用包装材料が高温多湿環境下に長期間に亘って曝され場合にも、水分による接着層2の劣化が抑制される。従って、基材層1と金属層3とのラミネート強度が低下し難く、デラミネーションの発生が効果的に抑制され、さらに、接着層2の黄変も効果的に抑制される。
接着層2は異なる接着剤成分で多層化してもよい。接着層2を異なる接着剤成分で多層化する場合、基材層1と金属層3とのラミネート強度を向上させるという観点から、基材層1側に配される接着剤成分を基材層1または水分バリア層5との接着性に優れる樹脂を選択し、金属層3側に配される接着剤成分を金属層3との接着性に優れる接着剤成分を選択することが好ましい。接着層2は異なる接着剤成分で多層化する場合、具体的には、金属層3側に配置される接着剤成分としては、好ましくは、酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン、ポリエステルと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、共重合ポリエステルを含む樹脂等が挙げられる。
接着層2の厚さについては、例えば、2〜50μm、好ましくは3〜25μmが挙げられる。
[水分バリア層5]
本発明の電池用包装材料において、水分バリア層5は、接着層2よりも基材層1側に積層されており、基材層1側からの水分の透過を抑制するために設けられる層である。
前述の通り、水分バリア層5は、1層により構成されていてもよいし、複数層により構成されていてもよい。水分バリア層5が1層により構成されている場合には、水分バリア層5は、金属もしくは金属酸化物の薄膜層51により形成されていることが好ましい。また、水分バリア層5が複数層により構成されている場合には、水分バリア層5は、薄膜層51と樹脂層52との積層体であることが好ましい。また、水分バリア層5が、薄膜層51と樹脂層52との積層体である場合、電池用包装材料における薄膜層51と樹脂層52の積層順としては、特に制限されない(例えば、図3及び図4を参照)。なお、図5に示されるように、水分バリア層5が最外層に位置する場合には、薄膜層51が電池用包装材料の最表面に位置しないことが望ましい。
前述のように、基材層1が多層構造を有し、各樹脂フィルムが接着剤を介して接着されている場合には、当該接着剤層が水分によって劣化することを抑制する観点から、図5に示されるように、水分バリア層5が基材層1の外側に積層されていることが好ましい。
薄膜層51を構成する金属及び金属酸化物としては、特に制限されないが、水分透過性が低いことから、好ましくは、アルミニウムなどの金属;アルミナ、シリカなどの金属酸化物が挙げられる。薄膜層51は、これらのうち1種の単層であってもよいし、これらの蒸着膜が複数積層されたものであってもよい。
例えば、水分バリア層5が、薄膜層51の単層により形成されている場合、薄膜層51は、例えば、基材層1の表面に金属または金属酸化物を蒸着させることにより積層することができる。また、水分バリア層5が、複層により形成されており、薄膜層51と樹脂層52との積層体である場合には、薄膜層51は、例えば、樹脂層52の表面に金属または金属酸化物を蒸着させることにより積層することができる。なお、薄膜層51と樹脂層52との積層体は、市販品が容易に入手可能である。
樹脂層52を構成する樹脂としては、前述の基材層1で例示した樹脂と同じものが例示できる。
金属または金属酸化物の薄膜層51の厚みとしては、特に制限されないが、水分バリア層5の水分透過量を効果的に低下させる観点からは、好ましくは1nm〜0.5μm程度、より好ましくは5nm〜0.1μm程度が挙げられる。また、樹脂層52の厚みとしては、特に制限されないが、好ましくは3〜30μm程度、より好ましくは10〜25μm程度が挙げられる。
本発明の電池用包装材料においては、基材層1と水分バリア層5との積層体のJIS K7129Bのモコン法に準拠して測定される水分透過量が、8g/m2・day以下であることが好ましく、4.0g/m2・day以下であることがより好ましい。なお、当該水分透過量は、具体的には、実施例に記載の方法により測定された値である。
[金属層3]
本発明の電池用包装材料において、金属層3は、電池用包装材料の強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光等が侵入するのを防止するためのバリア層として機能する層である。金属層3を形成する金属としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタン等の金属箔が挙げられる。これらの中でも、アルミニウムが好適に使用される。包装材料の製造時にしわやピンホールを防止するために、本発明において金属層3として、軟質アルミニウム、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS A8021P−O)又は(JIS A8079P−O)等を用いることが好ましい。
金属層3の厚さについては、例えば、10〜200μm、好ましくは20〜100μmが挙げられる。
また、金属層3は、接着の安定化、溶解や腐食の防止等のために、少なくとも一方の面、好ましくは少なくともシーラント層側の面、更に好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とは、金属層3の表面に耐酸性皮膜を形成する処理である。化成処理は、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロム等のクロム酸化合物を用いたクロム酸クロメート処理;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸等のリン酸化合物を用いたリン酸クロメート処理;下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位からなるアミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理等が挙げられる。なお、当該アミノ化フェノール重合体において、下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上の任意の組み合わせであってもよい。
一般式(1)〜(4)中、Xは水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基又はベンジル基を示す。また、R1及びR2は、同一又は異なって、ヒドロキシル基、アルキル基、又はヒドロキシアルキル基を示す。一般式(1)〜(4)において、X、R1、R2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R1、R2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等のヒドロキシ基が1個置換された炭素数1〜4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が挙げられる。一般式(1)〜(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシル基、及び、ドロキシアルキル基のいずれかであることが好ましい。一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位からなるアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、約500〜約100万、好ましくは約1000〜約2万が挙げられる。
また、金属層3に耐食性を付与する化成処理方法として、リン酸中に、酸化アルミ、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズ等の金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをコーティングし、150℃以上で焼付け処理を行うことにより、金属層の表面に耐食処理層を形成する方法が挙げられる。また、前記耐食処理層の上には、カチオン性ポリマーを架橋剤で架橋させた樹脂層を形成してもよい。ここで、カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフトさせた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノフェノール等が挙げられる。これらのカチオン性ポリマーは1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、及びオキサゾリン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。これらの架橋剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの化成処理は、1種の化成処理を単独で行ってもよく、2種以上の化成処理を組み合わせて行ってもよい。更に、これらの化成処理は、1種の化合物を単独で使用して行ってもよく、また2種以上の化合物を組み合わせて使用して行ってもよい。これらの中でも、好ましくはクロム酸クロメート処理、更に好ましくはクロム酸化合物、リン酸化合物、及び前記アミノ化フェノール重合体を組み合わせたクロメート処理が挙げられる。
化成処理において金属層3の表面に形成させる耐酸性皮膜の量については、特に制限されないが、例えばクロム酸化合物、リン酸化合物、及び前記アミノ化フェノール重合体を組み合わせてクロメート処理を行う場合であれば、金属層の表面1m2当たり、クロム酸化合物がクロム換算で約0.5〜約50mg、好ましくは約1.0〜約40mg、リン化合物がリン換算で約0.5〜約50mg、好ましくは約1.0〜約40mg、及び前記アミノ化フェノール重合体が約1〜約200mg、好ましくは約5.0〜150mgの割合で含有されていることが望ましい。
化成処理は、耐酸性皮膜の形成に使用する化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法等によって、金属層の表面に塗布した後に、金属層の温度が70〜200℃程度になるように加熱することにより行われる。また、金属層3に化成処理を施す前に、予め金属層3を、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法等による脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、金属層3の表面の化成処理を一層効率的に行うことが可能になる。
[シーラント層4]
本発明の電池用包装材料において、シーラント層4は、最内層に該当し、電池の組み立て時にシーラント層同士が熱溶着して電池素子を密封する層である。
シーラント層4に使用される樹脂成分については、熱溶着可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンが挙げられる。
前記ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー;等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
前記環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン、等が挙げられる。また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、更に好ましくはノルボルネンが挙げられる。
前記カルボン酸変性ポリオレフィンとは、前記ポリオレフィンをカルボン酸でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。変性に使用されるカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
前記カルボン酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β―不飽和カルボン酸又はその無水物に代えて共重合することにより、或いは環状ポリオレフィンに対してα,β―不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。カルボン酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、変性に使用されるカルボン酸としては、前記酸変性シクロオレフィンコポリマーの変性に使用されるものと同様である。
これらの樹脂成分の中でも、好ましくはカルボン酸変性ポリオレフィン;更に好ましくはカルボン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
シーラント層4は、1種の樹脂成分単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。更に、シーラント層4は、1層のみで成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂成分によって2層以上で形成されていてもよい。
シーラント層4は、分散相サイズが1nm以上1μm未満で分散する相溶系エラストマーを含んでいることが好ましい。より具体的には、シーラント層4においては、シーラント層4を形成している樹脂組成物中において、当該相溶系エラストマーが、分散相サイズ1nm以上1μm未満で分散していることが好ましい。シーラント層4においては、酸変性ポリオレフィン及び酸変性環状ポリオレフィンの少なくとも一方の中で、当該相溶系エラストマーが、分散相サイズ1nm以上1μm未満で分散していることが好ましい。
このような相溶系エラストマーは、特開2013−258162号公報に開示されたような、所謂ミクロ相分離構造を有する。ミクロ相分離構造とは、具体的には、(1)相溶系エラストマーにおける分散相(柔軟性成分または拘束成分のいずれか)を楕円として近似した際の最大径(d1)が1〜200nmであるか、(2)分散相(柔軟性成分または拘束成分のいずれか)ドメインの最大径(d1)と、この最大径と直交する径の最大値(d2)との比(d1/d2)が20以上の棒状となっており、かつ前記最大値(d2)が1〜200nmであるか、または(3)柔軟性成分と拘束成分のいずれが分散相であるか判別できない層状のラメラ構造となっており、少なくとも一方の層の厚みが1〜200nmである構造である。
相溶系エラストマーにおけるミクロ相分離構造の確認は、特開2013−258162号公報に開示されたような公知の方法により行うことができ、具体的には以下のように行われる。相溶系エラストマーを含む樹脂組成物のプレスシート成形し、0.5mm角の小片とし、ルテニウム酸(RuO4)により染色する。これを、ダイヤモンドナイフを備えたウルトラミクロトーム(REICHERT S、REICHERT TCSなど)を用いて、膜厚が約100nmの超薄切片を作製する。次いで、この超薄切片にカーボンを蒸着させて、透過型電子顕微鏡で観察する。観察箇所は、少なくとも5箇所をランダムに選択し、1万倍、5万倍、15万倍の倍率で観察する。その際、前記(1)の楕円としての近似を行う場合は、透過型電子顕微鏡にて1万倍ないし15万倍で観察される視野の中で、Image−Pro Plusのソフトを用い、Axis−majorを選択することにより、分散相(柔軟性成分または拘束成分のいずれか)を同面積で、かつ一次および二次モーメントが等しい楕円に近似し、その長軸を最大径(d1)とする。
相溶系エラストマーは、酸変性ポリオレフィン樹脂や酸変性環状ポリオレフィン中に存在させると、好適に分散相サイズ1nm以上1μm未満で分散する。相溶系エラストマーの分散相サイズは、絶縁性をより一層高める観点からは、1nm以上200nm以下が好ましい。なお、本発明におけるシーラント層4中のエラストマーの分散相サイズは、分散相が円形と見なせる場合はその直径、楕円として近似できる場合はその最大径、棒状の場合はアスペクト比の長軸の最大径、層状のラメラ構造の場合はその層の厚みである。
相溶系エラストマーとしては、シーラント層4中において、分散相サイズ1nm以上1μm未満で分散するものであれば特に制限されないが、好ましくはプロピレン−αオレフィン共重合体エラストマーが挙げられる。相溶系エラストマーは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。プロピレン−αオレフィン共重合体エラストマーとしては、プロピレンに由来する構造単位と、炭素数2〜20のαオレフィン(プロピレンを除く)から選ばれる1種以上に由来する構造単位とを有し、前記プロピレンに由来する構造単位の割合が51モル%以上の共重合体エラストマーが好ましい。プロピレン−αオレフィン共重合体エラストマーの市販品としては、三井化学製ノティオ(商品名)、住友化学製タフセレン(商品名)、JSR製ダイナロン(商品名)などが挙げられる。また、例えば、特開2003−321582号公報に開示されているプロピレン−αオレフィン共重合体エラストマー以外のエラストマーを使用してもよい。
シーラント層4が 相溶系エラストマーを含む場合、シーラント層4における相溶系エラストマーの含有量としては、好ましくは1〜60質量%程度、より好ましくは10〜50質量%程度、さらに好ましくは15〜45質量%程度が挙げられる。
また、シーラント層4の厚さとしては、適宜選定することができるが、10〜100μm程度、好ましくは15〜50μm程度が挙げられる。
また、シーラント層4は、必要に応じてスリップ剤などを含んでいてもよい。シーラント層4がスリップ剤を含む場合、電池用包装材料の成形性を高め得る。スリップ剤としては、特に制限されず、公知のスリップ剤を用いることができ、例えば、上記の基材層1で例示したものなどが挙げられる。スリップ剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。シーラント層4におけるスリップ剤の含有量としては、特に制限されず、電子包装用材料の成形性及び絶縁性を高める観点からは、好ましくは0.01〜0.2質量%程度、より好ましくは0.05〜0.15質量%程度が挙げられる。
[接着層6]
本発明の電池用包装材料において、接着層6は、金属層3とシーラント層4を強固に接着させために、これらの間に必要に応じて設けられる層である。
接着層6は、金属層3とシーラント層4とを接着可能である接着剤によって形成される。接着層6の形成に使用される接着剤について、その接着機構、接着剤成分の種類等は、前記接着層2の場合と同様である。接着層6に使用される接着剤成分として、好ましくはポリオレフィン系樹脂、更に好ましくはカルボン酸変性ポリオレフィン、特に好ましくはカルボン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
接着層6の厚さについては、例えば、2〜50μm、好ましくは20〜30μmが挙げられる。
2.電池用包装材料の製造方法
本発明の電池用包装材料の製造方法については、所定の組成の各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されないが、例えば、以下の方法が例示される。
まず、基材層1、接着層2、金属層3が順に積層され、さらに、接着層2よりも基材層1側に、水分バリア層5が積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、基材層1上(基材層1と金属層3との間に水分バリア層5が積層される場合には、水分バリア層5上)、または必要に応じて表面が化成処理された金属層3上に、接着層2の形成に使用される接着剤を、グラビアコート法、ロールコート法等の塗布方法で塗布・乾燥した後に、当該金属層3または基材層1(もしくは水分バリア層5)を積層させて接着層2を硬化させるドライラミネーション法によって行うことができる。
このとき、例えば基材層1と金属層3との間に、水分バリア層5として薄膜層51を積層する場合には、薄膜層51が設けられた基材層1と、金属層3とをドライラミネーション法により積層することにより、基材層1/薄膜層51/接着層2/金属層3が順に積層された積層体Aが得られる。
また、基材層1と金属層3との間に、薄膜層51と樹脂層52との積層体(以下、「積層体B」と表記することもある)を積層する場合には、積層体Bと金属層3とをドライラミネーション法により積層した後、積層体Bの外側に基材層1を積層してもよい。また、基材層1と積層体Bとを積層させた後、得られた積層体と金属層3とをドライラミネーション法により積層してもよい。いずれの方法によっても、基材層1/薄膜層51/樹脂層52/接着層2/金属層3が順に積層された積層体A、または基材層1/樹脂層52/薄膜層51/接着層2/金属層3が順に積層された積層体Aが得られる。
基材層1の外側に水分バリア層5を積層する場合、基材層1と金属層3とを積層する前後のいずれの状態で積層してもよい。
次いで、積層体Aの金属層3上に、シーラント層4を積層させる。金属層3上にシーラント層4を直接積層させる場合には、積層体Aの金属層3上に、シーラント層4を構成する樹脂成分をグラビアコート法、ロールコート法等の方法により塗布すればよい。また、金属層3とシーラント層4の間に接着層6を設ける場合には、例えば、(1)積層体Aの金属層3上に、接着層6及びシーラント層4を共押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネーション法)、(2)別途、接着層6とシーラント層4が積層した積層体を形成し、これを積層体Aの金属層3上に熱ラミネーション法により積層する方法、(3)積層体Aの金属層3上に、接着層6を形成させるための接着剤を押出し法や溶液コーティングした高温で乾燥さらには焼き付ける方法等により積層させ、この接着層6上に予めシート状に製膜したシーラント層4をサーマルラミネーション法により積層する方法、(4)積層体Aの金属層3と、予めシート状に製膜したシーラント層4との間に、溶融させた接着層6を流し込みながら、接着層6を介して積層体Aとシーラント層4を貼り合せる方法(サンドラミネーション法)等が挙げられる。
上記のようにして、基材層1/水分バリア層5/接着層2/必要に応じて表面が化成処理された金属層3/必要に応じて設けられる接着層6/シーラント層4からなる積層体、または水分バリア層5/基材層1/接着層2/必要に応じて表面が化成処理された金属層3/必要に応じて設けられる接着層6/シーラント層4からなる積層体が形成されるが、接着層2及び必要に応じて設けられる接着層6の接着性を強固にするために、更に、熱ロール接触式、熱風式、近又は遠赤外線式等の加熱処理に供してもよい。このような加熱処理の条件としては、例えば150〜250℃で1〜5分間が挙げられる。
本発明の電池用包装材料において、積層体を構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性等を向上又は安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理等の表面活性化処理を施していてもよい。
3.電池用包装材料の特性及び用途
本発明の電池用包装材料は、正極、負極、電解質等の電池素子を密封して収容するための包装材料として使用される。
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を、本発明の電池用包装材料で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、電池素子の周縁にフランジ部(シーラント層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部のシーラント層同士をヒートシールして密封させることによって、電池用包装材料を使用した電池が提供される。なお、本発明の電池用包装材料を用いて電池素子を収容する場合、本発明の電池用包装材料のシーラント部分が内側(電池素子と接する面)になるようにして用いられる。
本発明の電池用包装材料は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本発明の電池用包装材料が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛畜電池、ニッケル・水素畜電池、ニッケル・カドミウム畜電池、ニッケル・鉄畜電池、ニッケル・亜鉛畜電池、酸化銀・亜鉛畜電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本発明の電池用包装材料の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
<電池用包装材料の製造>
実施例1
金属層3としてのアルミニウム箔(厚み40μm)の両面に化成処理を施し、一方の化成処理面に、基材層1(PET(ポリエチレンテレフタレート)、厚み12μm)と、水分バリア層としての薄膜層51(アルミニウム蒸着層、厚み0.01μm)との積層体を、接着層2の厚さが約3μmとなるようにポリウレタン系接着剤(ポリエステル系の主剤とイソシアネート系硬化剤の2液型ウレタン2液硬化型接着剤)を介してドライラミネート法により貼り合わせた。このとき、薄膜層51が金属層3側となるようにした。次に、金属層3側から順に酸変性ポリプロピレン(無水マレイン酸変性ポリプロピレン、PPa)、ポリプロピレン(PP)の順となるようにして、シーラント層4を形成する樹脂成分を溶融状態で共押し出しすることにより、金属層3上に酸変性ポリプロピレン層(PPa層、厚み23μm)及びポリプロピレン層(PP層、厚み23μm)の2層からなるシーラント層4を積層させた。シーラント層4の総厚みは表1の通りであり、PPa層とPP層の厚みは1:1とした。
実施例2
実施例2では、基材層1に2軸延伸ナイロンを使用したこと以外は、実施例1と同様にして電池用包装材料を作製した。
実施例3
実施例3では、薄膜層51にアルミナ蒸着層(厚み11nm)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして電池用包装材料を作製した。
比較例1
比較例1では、薄膜層51を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして電池用包装材料を作製した。
比較例2
比較例2では、薄膜層51を設けなかったこと以外は、実施例2と同様にして電池包材を作製した。
[基材層と水分バリア層との積層体の水分透過量の測定法]
MOCON社製「PERMATRAN-W 3/61 」にてJIS K7129Bに準じ測定した。測定環境は、40℃、湿度90%RHの条件下とした。4時間後の測定値を、基材層と薄膜層との積層体の水蒸気透過量とした。
[ラミネート強度の測定]
各実施例及び比較例で得られた電池用包装材料を、TD方向の幅15mmに裁断して試験片を用意した。得られた試験片を、引張り試験機(島津製作所製、AGS−50D(商品名))を用い、温度23℃、湿度50%RHの環境下、50mm/分の速度、チャック間距離30mmの条件で、基材層と金属層とを剥離させ、剥離時の最大強度をラミネート強度とした(強度A)。
次に、測定後の試験片を温度80℃、湿度95%RHの環境下で1900時間保管した。保管後の各試験片について、保管前と同様に引張り試験機を用い、温度23℃、湿度50%RHの環境下、50mm/分の速度、チャック間距離30mmの条件で、基材層と金属層とを剥離させ、剥離時の最大強度をラミネート強度とした(強度B)。結果を表1に示す。
[Δb*の測定]
前記保管前後の各試験片について、それぞれ、色差計(コニカミノルタ社製CM−2500d)を用い、基材層側からL***表色系のb*値を測定し、保管前後の差(Δb*)を算出した。結果を表1に示す。
表1に示される結果から、基材層と金属層との間に配置された接着層よりも基材層側に、水分バリア層を設けた実施例1〜3の電池用包装材料においては、接着層の水分による劣化が効果的に抑制されており、湿熱環境下において保管した後のラミネート強度Bが高い値を示した。また、実施例1〜3の電池用包装材料においては、Δb*の値が小さく、黄変が効果的に抑制されていた。一方、水分バリア層を設けなかった比較例1〜2の電池用包装材料においては、接着層の水分による劣化が生じ、湿熱環境下において保管した後のラミネート強度Bが低かった。また、比較例1〜2の電池用包装材料においては、Δb*の値が非常に大きく、黄変していた。
1 基材層
2 接着層
3 金属層
4 シーラント層
5 水分バリア層
6 接着層

Claims (8)

  1. 少なくとも、基材層、接着層、金属層、及びシーラント層をこの順に有する積層体からなる電池用包装材料であって
    前記基材層と前記接着層との間に、薄膜層を有する水分バリア層が積層されており、
    前記薄膜層は、金属または金属酸化物により構成されており、
    前記薄膜層の厚みは、5nm以上0.5μm以下であり、
    前記電池用包装材料を、温度80℃、湿度95%RHの環境下で1900時間保管した後の、前記基材層と前記金属層とのラミネート強度が2.0N/15mm以上であり、かつ、
    前記保管前後において、前記基材層側から測定したL * * * 表色系のb * 値の差(Δb * )が、1.0以下である、電池用包装材料。
  2. 少なくとも、基材層、接着層、金属層、及びシーラント層をこの順に有する積層体からなる電池用包装材料であって、
    前記基材層と前記接着層との間に、薄膜層を有する水分バリア層が積層されており、
    前記薄膜層は、金属または金属酸化物により構成されており、
    前記薄膜層の厚みは、5nm以上0.5μm以下であり、
    前記基材層と前記水分バリア層との積層体のJIS K7129Bのモコン法に準拠して測定される水分透過量が、8g/m 2 ・day以下である、電池用包装材料。
  3. 少なくとも、基材層、接着層、金属層、及びシーラント層をこの順に有する積層体からなる電池用包装材料であって、
    水分バリア層が、前記基材層の外側に積層されており、
    前記水分バリア層が、薄膜層と樹脂層との積層体であり、
    前記薄膜層は、前記電池用包装材料の最表面に位置しておらず、
    前記薄膜層は、金属または金属酸化物により構成されており、
    前記薄膜層の厚みは、5nm以上0.5μm以下であり、
    前記電池用包装材料を、温度80℃、湿度95%RHの環境下で1900時間保管した後の、前記基材層と前記金属層とのラミネート強度が2.0N/15mm以上であり、かつ、
    前記保管前後において、前記基材層側から測定したL * * * 表色系のb * 値の差(Δb * )が、1.0以下である、電池用包装材料。
  4. 少なくとも、基材層、接着層、金属層、及びシーラント層をこの順に有する積層体からなる電池用包装材料であって、
    水分バリア層が、前記基材層の外側に積層されており、
    前記水分バリア層が、薄膜層と樹脂層との積層体であり、
    前記薄膜層は、前記電池用包装材料の最表面に位置しておらず、
    前記薄膜層は、金属または金属酸化物により構成されており、
    前記薄膜層の厚みは、5nm以上0.5μm以下であり、
    前記基材層と前記水分バリア層との積層体のJIS K7129Bのモコン法に準拠して測定される水分透過量が、8g/m 2 ・day以下である、電池用包装材料。
  5. 前記基材層と前記水分バリア層との積層体のJIS K7129Bのモコン法に準拠して測定される水分透過量が、8g/m 2 ・day以下である、請求項1又は3に記載の電池用包装材料。
  6. 前記電池用包装材料を、温度80℃、湿度95%RHの環境下で1900時間保管した後の、前記基材層と前記金属層とのラミネート強度が2.0N/15mm以上であり、かつ、
    前記保管前後において、前記基材層側から測定したL * * * 表色系のb * 値の差(Δb * )が、1.0以下である、請求項2又は4に記載の電池用包装材料。
  7. 前記接着層が、ポリウレタン系接着剤により形成されている、請求項1〜のいずれかに記載の電池用包装材料。
  8. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、請求項1〜のいずれかに記載の電池用包装材料内に収容されている、電池。
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