1.電池用包装材料
本発明の電池用包装材料は、少なくとも、基材層、金属層、コート層、及びシーラント層をこの順に有する積層体からなり、コート層は、酸変性ポリオレフィンと硬化剤とを含む樹脂組成物により形成されていることを特徴とする。以下、本発明の電池用包装材料について詳述する。
電池用包装材料の積層構造
電池用包装材料は、図1に示すように、少なくとも、基材層1、金属層3、コート層4、及びシーラント層5をこの順に有する積層体からなる。即ち、本発明の電池用包装材料は、基材層1が最外層になり、シーラント層5が最内層になる。電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置するシーラント層5同士を接面させて熱溶着することにより電池素子が密封され、電池素子が封止される。図1に示すように、本発明の電池用包装材料は、基材層1と金属層3との間に接着層2を有していてもよい。
電池用包装材料を形成する各層の組成
[基材層1]
本発明の電池用包装材料において、基材層1は最外層を形成する層である。基材層1を形成する素材については、絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されるものではない。基材層1を形成する素材としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ、アクリル、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール、ポリエーテルイミド、ポリイミド、及びこれらの混合物や共重合物等が挙げられる。
ポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。また、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル−ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。また、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてブチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。これらのポリエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。ポリエステルは、耐電解液性に優れ、電解液の付着に対して白化等が発生し難いという利点があり、基材層1の形成素材として好適に使用される。
また、ポリアミドとしては、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体等の脂肪族系ポリアミド;テレフタル酸及び/又はイソフタル酸に由来する構成単位を含むナイロン6I、ナイロン6T、ナイロン6IT、ナイロン6I6T(Iはイソフタル酸、Tはテレフタル酸を表す)等のヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸−テレフタル酸共重合ポリアミド、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等の芳香族を含むポリアミド;ポリアミノメチルシクロヘキシルアジパミド(PACM6)等の脂環系ポリアミド;さらにラクタム成分や、4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート等のイソシアネート成分を共重合させたポリアミド、共重合ポリアミドとポリエステルやポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体であるポリエステルアミド共重合体やポリエーテルエステルアミド共重合体;これらの共重合体等が挙げられる。これらのポリアミドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。延伸ポリアミドフィルムは延伸性に優れており、成形時の基材層1の樹脂割れによる白化の発生を防ぐことができ、基材層1の形成素材として好適に使用される。
基材層1は、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルムで形成されていてもよく、また未延伸の樹脂フィルムで形成してもよい。中でも、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルム、とりわけ2軸延伸された樹脂フィルムは、配向結晶化することにより耐熱性が向上しているので、基材層1として好適に使用される。また、基材層1は、上記の素材を金属層3上にコーティングして形成されていてもよい。
これらの中でも、基材層1を形成する樹脂フィルムとして、好ましくはナイロン、ポリエステル、更に好ましくは2軸延伸ナイロン、2軸延伸ポリエステル、特に好ましくは2軸延伸ナイロンが挙げられる。
基材層1は、耐ピンホール性及び電池の包装体とした時の絶縁性を向上させるために、異なる素材の樹脂フィルム及びコーティングの少なくとも一方を積層化することも可能である。具体的には、ポリエステルフィルムとナイロンフィルムとを積層させた多層構造や、2軸延伸ポリエステルと2軸延伸ナイロンとを積層させた多層構造等が挙げられる。基材層1を多層構造にする場合、各樹脂フィルムは接着剤を介して接着してもよく、また接着剤を介さず直接積層させてもよい。接着剤を介さず接着させる場合には、例えば、共押出し法、サンドラミ法、サーマルラミネート法等の熱溶融状態で接着させる方法が挙げられる。また、接着剤を介して接着させる場合、使用する接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型、UVやEBなどの電子線硬化型等のいずれであってもよい。接着剤の成分としてポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミノ樹脂、ゴム、シリコン系樹脂が挙げられる。
基材層1には、成形性を向上させるために低摩擦化させておいてもよい。基材層1を低摩擦化させる場合、その表面の摩擦係数については特に制限されないが、例えば1.0以下が挙げられる。基材層1を低摩擦化するには、例えば、マット処理、スリップ剤の薄膜層の形成、これらの組み合わせ等が挙げられる。
前記マット処理としては、予め基材層1にマット化剤を添加し表面に凹凸を形成したり、エンボスロールによる加熱や加圧による転写法や、表面を乾式又は湿式ブラスト法やヤスリで機械的に荒らす方法が挙げられる。マット化剤としては、例えば、粒径が0.5nm〜5μm程度の微粒子が挙げられる。マット化剤の材質については、特に制限されないが、例えば、金属、金属酸化物、無機物、有機物等が挙げられる。また、マット化剤の形状についても、特に制限されないが、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状等が挙げられる。マット化剤として、具体的には、タルク,シリカ,グラファイト、カオリン、モンモリロイド、モンモリロナイト、合成マイカ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛,酸化マグネシウム,酸化アルミニウム,酸化ネオジウム,酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム,硫酸バリウム、炭酸カルシウム,ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、安息香酸カルシウム,シュウ酸カルシウム,ステアリン酸マグネシウム、アルミナ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ類、高融点ナイロン、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン、金、アルミニウム、銅、ニッケル等が挙げられる。これらのマット化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのマット化剤の中でも、分散安定性やコスト等の観点から、好ましくはりシリカ、硫酸バリウム、酸化チタンが挙げられる。また、マット化剤には、表麺に絶縁処理、高分散性処理等の各種表面処理を施しておいてもよい。
前記スリップ剤の薄膜層は、基材層1上にスリップ剤をブリードアウトにより表面に析出させて薄層を形成させる方法や、基材層1にスリップ剤を積層することで形成できる。スリップ剤としては、特に制限されないが、例えば、脂肪酸アマイド、金属石鹸、親水性シリコーン、シリコーンをグラフトしたアクリル、シリコーンをグラフトしたエポキシ、シリコーンをグラフトしたポリエーテル、シリコーンをグラフトしたポリエステル、ブロック型シリコーンアクリル共重合体、ポリグリセロール変性シリコーン、パラフィン等が挙げられる。これらのスリップ剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
基材層1の厚さは、例えば、10〜50μm、好ましくは15〜30μmが挙げられる。
[接着層2]
本発明の電池用包装材料において、接着層2は、基材層1と金属層3との接着性を高めることなどを目的として、必要に応じて設けられる層である。基材層1と金属層3とは直接積層されていてもよい。
接着層2は、基材層1と金属層3とを接着可能である接着剤によって形成される。接着層2の形成に使用される接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着層2の形成に使用される接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。
接着層2の形成に使用できる接着剤の樹脂成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステル等のポリエステル系樹脂;ポリエーテル系接着剤;ポリウレタン系接着剤;エポキシ系樹脂;フェノール樹脂系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム;シリコーン系樹脂;フッ化エチレンプロピレン共重合体等が挙げられる。これらの接着剤成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上の接着剤成分の組み合わせ態様については、特に制限されないが、例えば、その接着剤成分として、ポリアミドと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドとポリエステル、ポリエステルと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリエステルと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂等が挙げられる。これらの中でも、展延性、高湿度条件下における耐久性や応変抑制作用、ヒートシール時の熱劣化抑制作用等が優れ、基材層1と金属層2との間のラミネーション強度の低下を抑えてデラミネーションの発生を効果的に抑制するという観点から、好ましくはポリウレタン系2液硬化型接着剤;ポリアミド、ポリエステル、又はこれらと変性ポリオレフィンとのブレンド樹脂が挙げられる。
また、接着層2は異なる接着剤成分で多層化してもよい。接着層2を異なる接着剤成分で多層化する場合、基材層1と金属層3とのラミネーション強度を向上させるという観点から、基材層1側に配される接着剤成分を基材層1との接着性に優れる樹脂を選択し、金属層3側に配される接着剤成分を金属層3との接着性に優れる接着剤成分を選択することが好ましい。接着層2は異なる接着剤成分で多層化する場合、具体的には、金属層3側に配置される接着剤成分としては、好ましくは、酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン、ポリエステルと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、共重合ポリエステルを含む樹脂等が挙げられる。
接着層2の厚さについては、例えば、2〜50μm、好ましくは3〜25μmが挙げられる。
[金属層3]
本発明の電池用包装材料において、金属層3は、包装材料の強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光等が侵入するのを防止するためのバリア層として機能する層である。金属層3を形成する金属としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタン等の金属箔が挙げられる。これらの中でも、アルミニウムが好適に使用される。包装材料の製造時にしわやピンホールを防止するために、本発明において金属層3として、軟質アルミニウム、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS A8021P−O)又は(JIS A8079P−O)等を用いることが好ましい。
金属層3の厚さについては、例えば、10〜200μm、好ましくは20〜100μmが挙げられる。
また、金属層3は、接着の安定化、溶解や腐食の防止等のために、少なくとも一方の面、好ましくは少なくともシーラント層側の面、更に好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とは、金属層3の表面に耐酸性皮膜を形成する処理である。化成処理は、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロム等のクロム酸化合物を用いたクロム酸クロメート処理;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸等のリン酸化合物を用いたリン酸クロメート処理;下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位からなるアミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理等が挙げられる。なお、当該アミノ化フェノール重合体において、下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上の任意の組み合わせであってもよい。
一般式(1)〜(4)中、Xは水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基又はベンジル基を示す。また、R1及びR2は、同一又は異なって、ヒドロキシル基、アルキル基、又はヒドロキシアルキル基を示す。一般式(1)〜(4)において、X、R1、R2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R1、R2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等のヒドロキシ基が1個置換された炭素数1〜4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が挙げられる。一般式(1)〜(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシル基、及び、ドロキシアルキル基のいずれかであることが好ましい。一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位からなるアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、約500〜約100万、好ましくは約1000〜約2万が挙げられる。
また、金属層3に耐食性を付与する化成処理方法として、リン酸中に、酸化アルミ、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズ等の金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをコーティングし、150℃以上で焼付け処理を行うことにより、金属層の表面に耐食処理層を形成する方法が挙げられる。また、前記耐食処理層の上には、カチオン性ポリマーを架橋剤で架橋させた樹脂層を形成してもよい。ここで、カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフトさせた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノフェノール等が挙げられる。これらのカチオン性ポリマーは1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、及びオキサゾリン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。これらの架橋剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの化成処理は、1種の化成処理を単独で行ってもよく、2種以上の化成処理を組み合わせて行ってもよい。更に、これらの化成処理は、1種の化合物を単独で使用して行ってもよく、また2種以上の化合物を組み合わせて使用して行ってもよい。これらの中でも、好ましくはクロム酸クロメート処理、更に好ましくはクロム酸化合物、リン酸化合物、及び前記アミノ化フェノール重合体を組み合わせたクロメート処理が挙げられる。
化成処理において金属層3の表面に形成させる耐酸性皮膜の量については、特に制限されないが、例えばクロム酸化合物、リン酸化合物、及び前記アミノ化フェノール重合体を組み合わせてクロメート処理を行う場合であれば、金属層の表面1m2当たり、クロム酸化合物がクロム換算で約0.5〜約50mg、好ましくは約1.0〜約40mg、リン化合物がリン換算で約0.5〜約50mg、好ましくは約1.0〜約40mg、及び前記アミノ化フェノール重合体が約1〜約200mg、好ましくは約5.0〜150mgの割合で含有されていることが望ましい。
化成処理は、耐酸性皮膜の形成に使用する化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法等によって、金属層の表面に塗布した後に、金属層の温度が70〜200℃程度になるように加熱することにより行われる。また、金属層3に化成処理を施す前に、予め金属層3を、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法等による脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、金属層3の表面の化成処理を一層効率的に行うことが可能になる。
[コート層4]
本発明の電池用包装材料においては、金属層3とシーラント層5とを強固に接着させ、電池が高温下に曝された場合でも、電池用包装材料が開封することを抑制するために設けられる層である。コート層4は、1層により形成されていてもよいし、複数層により形成されていてもよい。
本発明において、コート層4は、酸変性ポリオレフィンと硬化剤とを含む樹脂組成物により形成されていることを特徴とする。酸変性ポリオレフィンとしては、後述のシーラント層5において例示するものが好適である。酸変性ポリオレフィンは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
コート層4を形成する樹脂組成物中における酸変性ポリオレフィンの含有量としては、好ましくは50〜99.9質量%程度、より好ましくは70〜95質量%程度が挙げられる。
硬化剤としては、上記の酸変性ポリオレフィンを硬化させるものであれば、特に限定されない。硬化剤としては、例えば、多官能イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。
多官能イソシアネート化合物は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されない。多官能イソシアネート化合物の具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、これらをポリマー化やヌレート化したもの、これらの混合物や他ポリマーとの共重合物などが挙げられる。
カルボジイミド化合物は、カルボジイミド基(−N=C=N−)を少なくとも1つ有する化合物であれば、特に限定されない。カルボジイミド化合物としては、カルボジイミド基を少なくとも2つ以上有するポリカルボジイミド化合物が好ましい。特に好ましいカルボジイミド化合物の具体例としては、下記一般式(5):
[一般式(5)において、nは2以上の整数である。]
で表される繰り返し単位を有するポリカルボジイミド化合物、
下記一般式(6):
[一般式(6)において、nは2以上の整数である。]
で表される繰り返し単位を有するポリカルボジイミド化合物、
及び下記一般式(7):
[一般式(7)において、nは2以上の整数である。]
で表されるポリカルボジイミド化合物が挙げられる。一般式(4)〜(7)において、nは、通常30以下の整数であり、好ましくは3〜20の整数である。
エポキシ化合物は、少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物であれば、特に限定されない。エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどのエポキシ樹脂が挙げられる。
オキサゾリン化合物は、オキサゾリン骨格を有する化合物であれば、特に限定されない。オキサゾリン化合物としては、具体的には、日本触媒社製のエポクロスシリーズなどが挙げられる。
コート層4の機械的強度を高めるなどの観点から、硬化剤は、2種類以上の化合物により構成されていてもよい。
コート層4において、硬化剤の含有量は、酸変性ポリオレフィン100質量部に対して、0.1質量部〜50質量部の範囲にあることが好ましく、5質量部〜30質量部の範囲にあることがより好ましい。また、コート層4において、硬化剤の含有量は、酸変性ポリオレフィン中のカルボキシル基1当量に対して、硬化剤中の反応基として1当量〜20当量の範囲にあることが好ましく、1当量〜10当量の範囲にあることがより好ましい。これにより、電池用包装材料が高温下に曝された場合の密封性をより向上させることができる。
コート層4の融点としては、好ましくは100〜165℃程度、より好ましくは120〜160程度℃が挙げられる。また、同様の観点から、コート層4の軟化点としては、好ましくは80〜150℃程度、より好ましくは95〜130℃程度が挙げられる。なお、コート層4の融点及び軟化点の算出方法は、後述のシーラント層5の場合と同様である。
電池用包装材料が高温下に曝された場合の密封性をより向上させる観点からは、コート層4は、温度23℃及び相対湿度70%下におけるマルテンス硬さが、50N/mm2以上であることが好ましく、60〜160N/mm2であることがより好ましく、70〜120N/mm2であることがさらに好ましい。なお、コート層4のマルテンス硬さは、具体的には、実施例に記載の方法により測定した値である。
コート層4の厚みとしては、電池用包装材料が高温下に曝された場合の密封性をより向上させる観点からは、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.5〜5μm程度が挙げられる。
[シーラント層5]
本発明の電池用包装材料において、シーラント層5は、最内層に該当し、電池の組み立て時にシーラント層5同士が熱溶着して電池素子を密封する層である。シーラント層5は、複数の層により形成されていてもよい。
シーラント層5は、コート層4と接着可能であり、さらにシーラント層5同士が熱融着可能な樹脂により形成されている。シーラント層5を形成する樹脂としては、このような特性を有するものであれば、特に制限されないが、例えば、酸変性ポリオレフィン、ポリオレフィン、変性環状ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。シーラント層5を形成する樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
酸変性ポリオレフィンとは、ポリオレフィンを不飽和カルボン酸でグラフト重合すること等により変性したポリマーである。酸変性されるポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等の結晶性又は非晶性のポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、耐熱性の点で、好ましくは、少なくともプロピレンを構成モノマーとして有するポリオレフィン、更に好ましくは、エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー、及びプロピレン−エチレンのランダムコポリマーが挙げられる。変性に使用される不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。これらの不飽和カルボン酸の中でも、好ましくはマレイン酸、無水マレイン酸が挙げられる。これらの酸変性ポリオレフィンは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ポリオレフィンは、非環状又は環状のいずれの構造であってもよい。非環状のポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等の結晶性又は非晶性のポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー等が挙げられる。また、環状のポリオレフィンとは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。また、環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらのポリオレフィンは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらのポリオレフィンの中でも、エラストマーとしての特性を備えるもの(即ち、ポリオレフィン系エラストマー)、とりわけプロピレン系エラストマーは、ヒートシール後の接着強度の向上、ヒートシール後の層間剥離の防止等の観点から、好ましい。プロピレン系エラストマーとしては、プロピレンと、1種又は2種以上の炭素数2〜20のα−オレフィン(プロピレンを除く)を構成モノマーとして含む重合体が挙げられ、プロピレン系エラストマーを構成する炭素数2〜20のα−オレフィン(プロピレンを除く)としては、具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等が挙げられる。これらのエチレン系エラストマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
変性環状ポリオレフィンは、環状ポリオレフィンを不飽和カルボン酸でグラフト重合したものである。酸変性される環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体である。このようなオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。また、環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。変性に使用される不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。これらの不飽和カルボン酸の中でも、好ましくはマレイン酸、無水マレイン酸が挙げられる。これらの変性環状ポリオレフィンは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ポリエステル樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。また、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル−ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。また、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてブチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。これらのポリエステル樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
フッ素系樹脂の具体例としては、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、エチレンテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレンクロロトリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレンーヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ素系ポリオール等が挙げられる。これらのフッ素系樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
電池が高温下に曝された場合にも、電池用包装材料の開封を抑制する観点からは、シーラント層5の融点Tmとしては、好ましくは90〜245℃、より好ましくは100〜220℃が挙げられる。また、同様の観点から、シーラント層5の軟化点Tsとしては、好ましくは70〜180℃、より好ましくは80〜150℃が挙げられる。さらに、同様の観点から、シーラント層5の230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは1.5〜25g/10分、より好ましくは3.0〜18g/10分が挙げられる。
ここで、シーラント層5の融点Tmは、シーラント層5を構成する樹脂成分の融点をJIS K6921−2(ISO1873−2.2:95)に準拠しDSC法により測定される値である。また、シーラント層5が、複数の樹脂成分を含むブレンド樹脂で形成されている場合には、その融点Tmは、それぞれの樹脂の融点を上記のようにして求め、これらを質量比で加重平均して算出することができる。
また、シーラント層5の軟化点Tsは、熱機械的分析法(TMA:Thermo-Mechanical Analyzer)により測定される値である。シーラント層5が、複数の樹脂成分を含むブレンド樹脂で形成されている場合には、その軟化点Tsは、それぞれの樹脂の軟化点を上記のようにして求め、これらを質量比で加重平均して算出することができる。
シーラント層5のメルトフローレートは、JIS K7210に準拠し、メルトフローレート測定器により測定される値である。
シーラント層5の厚みとしては、好ましくは60μm以上、より好ましくは60μm〜100μm、さらに好ましくは70〜90μmが挙げられる。
シーラント層5は、単層であってもよいし、多層であってもよい。シーラント層が多層である場合、コート層4側に位置する層は、酸変性ポリオレフィンにより形成された層(酸変性ポリオレフィン層5a)であることが好ましい。また、最表面側に位置する層は、ポリオレフィンにより形成された層(ポリオレフィン層5b)であることが好ましい。
酸変性ポリオレフィン層5aを形成する酸変性ポリオレフィンとしては、上記で例示したものである。また、ポリオレフィン層5bを形成するポリオレフィンは、上記で例示したものである。なお、酸変性ポリオレフィン層5aには、酸変性ポリオレフィン以外の樹脂(上記で例示したポリオレフィン、変性環状ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂など)が50質量%未満の割合で含まれていてもよい。また、ポリオレフィン層5bには、ポリオレフィン以外の樹脂(上記で例示した酸変性ポリオレフィン、変性環状ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂など)が50質量%未満の割合で含まれていてもよい。
電池が高温下に曝された場合にも、電池用包装材料の開封を抑制する観点からは、酸変性ポリオレフィン層5aの融点Tmaとしては、好ましくは140℃以上、より好ましくは155〜165℃が挙げられる。また、同様の観点から、酸変性ポリオレフィン層5aの軟化点Tsaとしては、好ましくは100℃以上、より好ましくは100〜120℃が挙げられる。さらに、同様の観点から、酸変性ポリオレフィン層5aの230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは6g/10分以下、より好ましくは2〜6g/10分が挙げられる。
電池が高温下に曝された場合にも、電池用包装材料の開封を抑制する観点からは、ポリオレフィン層5bの融点Tmbとしては、好ましくは140℃以上、より好ましくは150〜165℃が挙げられる。また、同様の観点から、ポリオレフィン層5bの軟化点Tsbとしては、好ましくは100℃以上、より好ましくは100〜130℃が挙げられる。さらに、同様の観点から、ポリオレフィン層5bの230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは12g/10分以下、より好ましくは2〜6g/10分が挙げられる。
シーラント層5が、酸変性ポリオレフィン層5aとポリオレフィン層5bの2層により積層されている場合、これらの層の厚みの比(酸変性ポリオレフィン層5a:ポリオレフィン層5b)としては、5:1〜1:5の範囲が挙げられる。
また、シーラント層5は、必要に応じてスリップ剤などを含んでいてもよい。シーラント層5がスリップ剤を含む場合、電池用包装材料の成形性を高め得る。スリップ剤としては、特に制限されず、公知のスリップ剤を用いることができ、例えば、上記の基材層1で例示したものなどが挙げられる。スリップ剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。シーラント層5におけるスリップ剤の含有量としては、特に制限されず、電子包装用材料の成形性及び絶縁性を高める観点からは、好ましくは0.01〜0.2質量%程度、より好ましくは0.05〜0.15質量%程度が挙げられる。
2.電池用包装材料の製造方法
本発明の電池用包装材料の製造方法については、所定の組成の各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されないが、例えば、以下の方法が例示される。
まず、基材層1、接着層2、金属層3が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、基材層1上又は必要に応じて表面が化成処理された金属層3に接着層2の形成に使用される接着剤を、押出し法、グラビアコート法、ロールコート法等の塗布方法で塗布・乾燥した後に、当該金属層3又は基材層1を積層させて接着層2を硬化させるドライラミネーション法によって行うことができる。
次いで、積層体Aの金属層3上に、コート層4を積層させる。コート層4は、金属層3の上に、コート層4を構成する樹脂組成物をグラビアコート法、ロールコート法等の方法により塗布し、乾燥させればよい。次に、コート層4の上に、シーラント層5を積層させる。コート層4上にシーラント層5を直接積層させる場合には、コート層4上に、シーラント層5を構成する樹脂成分をグラビアコート法、ロールコート法等の方法により塗布すればよい。また、(1)積層体Aの金属層3上に、コート層4及びシーラント層5を共押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネーション法)、(2)別途、コート層4とシーラント層5が積層した積層体を形成し、これを積層体Aの金属層3上に熱ラミネーション法により積層する方法、(3)積層体Aの金属層3上に、コート層4を形成させるための樹脂組成物を押出し法や溶液コーティングした高温で乾燥さらには焼き付ける方法等により積層させ、このコート層4上に予めシート状に製膜したシーラント層5をサーマルラミネーション法により積層する方法、(4)積層体Aの金属層3と、予めシート状に製膜したシーラント層5との間に、溶融させたコート層4を流し込みながら、コート層4を介して積層体Aとシーラント層5を貼り合せる方法(サンドラミネーション法)等が挙げられる。
コーティング層を設ける場合には、基材層1の金属層3とは反対側の表面に、コーティング層を積層する。コーティング層は、例えばコーティング層を形成する上記の樹脂を基材層1の表面に塗布することに形成することができる。なお、基材層1の表面に金属層3を積層する工程と、基材層1の表面にコーティング層を積層する工程の順番は、特に制限されない。例えば、基材層1の表面にコーティング層を形成した後、基材層1のコーティング層とは反対側の表面に金属層3を形成してもよい。
上記のようにして、基材層1/接着層2/必要に応じて表面が化成処理された金属層3/コート層4/シーラント層5/必要に応じて設けられるコーティング層からなる積層体が形成されるが、必要に応じて設けられる接着層2の接着性を強固にするために、更に、熱ロール接触式、熱風式、近又は遠赤外線式等の加熱処理に供してもよい。このような加熱処理の条件としては、例えば150〜250℃で1〜5分間が挙げられる。
本発明の電池用包装材料において、積層体を構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性等を向上又は安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理等の表面活性化処理を施していてもよい。
3.電池用包装材料の特性及び用途
本発明の電池用包装材料は、電池が高温下に曝された場合にも、電池用包装材料が開封することが効果的に抑制されている。従って、本発明の電池用包装材料は、電池が昇温された際に、常圧下で例えば120℃、更には130℃という高温に到達するまでは金属層とシーラント層との間で包装材料が開封せず、電池の発火または反応暴走を防止するように設計された電池に好適に使用される。
本発明の電池用包装材料は、具体的には、正極、負極、電解質等の電池素子を密封して収容するために使用され得るものであり、当該電池素子を収容するための空間が設けられる。当該空間は、短形状に裁断された積層シートをプレス成型することにより形成される。
より具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を、本発明の電池用包装材料で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、電池素子の周縁にフランジ部(シーラント層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部のシーラント層同士をヒートシールして密封させることによって、電池用包装材料を使用した電池が提供される。なお、本発明の電池用包装材料を用いて電池素子を収容する場合、本発明の電池用包装材料のシーラント層5が内側(電池素子と接する面)になるようにして用いられる。
本発明の電池用包装材料は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本発明の電池用包装材料が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛畜電池、ニッケル・水素畜電池、ニッケル・カドミウム畜電池、ニッケル・鉄畜電池、ニッケル・亜鉛畜電池、酸化銀・亜鉛畜電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本発明の電池用包装材料の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1−6及び比較例1−4
[電池用包装材料の製造]
二軸延伸ナイロンフィルム(厚さ25μm)からなる基材層1の片面に化成処理を施したアルミニウム箔(厚さ40μm)からなる金属層3をドライラミネーション法により積層させた。具体的には、アルミニウム箔の一方面に、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を塗布し、金属層3上に接着層2(厚さ4μm)を形成した。次いで、金属層3上の接着層2と基材層1を積層した後、40℃で24時間のエージング処理を実施することにより、基材層1/接着層2/金属層3の積層体を調製した。なお、金属層3として使用したアルミニウム箔の化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥重量)となるように、ロールコート法によりアルミニウム箔の両面に塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件で20秒間焼付けすることにより行った。
次いで、前記積層体の金属層3側に、酸変性ポリプロピレン(無水マレイン酸変性ポリプロピレン、85質量部)と硬化剤(ビスフェノールAジグリシジルエーテル、15質量部)とを含む樹脂組成物を金属層の上から塗布した。このときの塗布量は、コート層の厚みが1μmとなるように調整した。次に、金属層側から順に酸変性ポリプロピレン(無水マレイン酸変性ポリプロピレン、PPa)、ポリプロピレン(PP)の順となるようにして、シーラント層を形成する樹脂成分を溶融状態で共押し出しすることにより、金属層3上に酸変性ポリプロピレン層(PPa層)及びポリプロピレン層(PP層)の2層からなるシーラント層を積層させた。シーラント層の総厚みは表1の通りであり、PPa層とPP層の厚みは1:1とした。また、シーラント層のPPa層に使用した各種の酸変性ポリプロピレンの融点、メルトフローレート(MFR)、及び軟化点は、それぞれ、表1に記載の通りである。なお、比較例1及び比較例4では、コート層を設けなかったこと以外は、実施例と同様にして電池用包装材料を作製した。また、比較例2及び比較例3では、コート層を形成する樹脂組成物に硬化剤を配合しなかったこと以外は、実施例と同様にして電池用包装材料を作製した。
[マルテンス硬さの測定]
実施例1〜6及び比較例2,3の電池用包装材料において、電池用包装材料の端部において、コート層に圧子を押し当て、コート層のマルテンス硬さを以下のようにして測定した。結果を表1に示す。マルテンス硬さの測定装置として、Hysitron製のTriboIndenter TI950を用いた。圧子として、Berkovichを用い、測定温度23℃、相対湿度70%、押し込み深さ(設定値)150nm、負荷・除荷速度10nm/sec、荷重保持時間5secの条件で測定した。なお、マルテンス硬さとは、以下の式により算出される値である。
マルテンス硬さ[N/mm2]=荷重[μN]/(24.5×(深さ最大値hmax(μm)2)
[電池用包装材料の密封性の評価]
電池用包装材料の密封性の評価を、JIS C 8714の規定に準拠した方法により行った。実施例1〜3及び比較例1〜4で得られた各電池用包装材料を80mm(TD方向)×160mm(MD方向)に裁断した後、35mm×50mmの口径の成型金型(メス型)とこれに対応した成型金型(オス型)にて、0.4MPaで3.0mmの深さに冷間成型し、その中心部分に凹部を形成した。成型後の電池用包装材料を2つ折りにし、シーラント層同士が重なり合っている縁部をヒートシール(175℃、3秒、面圧1.4MPa)した。この際、ダミーセルとしてアルミニウム板(厚さ3mm)、電解液(エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1の液に1molの6フッ化リン酸リチウムを添加)1gを密封して、内部空間(圧力1atm)を有するケース状にした試験用電池を作製した。次に、ヒートシールした部分を幅3mmとなるようにカットした。次に、図2に示されるようにして、試験用電池を2枚のステンレス鋼板で挟み、固定用スペーサーで固定した。このとき、2枚のステンレス鋼板の間隔wは、3.0mmとした。次に、この状態で、試験用電池を減圧可能なオーブンに入れて、オーブン内の圧力が0atmになるように設定し、5℃±2℃/分の昇温速度で130℃±5℃になるまで昇温した。130℃になっても開封しなかった場合には、130℃の温度をそのまま保持した。130℃に到達してから、電池用包装材料の金属層とシーラント層との間で剥離が生じて開封するまでの時間を目視にて確認した。結果を表1に示す。なお、当該JISの規定では、オーブン温度を基準としているが、本実施例では、より詳細に密封性を評価するために、サンプルの温度を基準とした。また、真空引きを行ったのは、実際の電池の内部ではガスが発生して内圧が上昇することを想定したためである。さらに、ステンレス鋼板と固定用スペーサーを用いて電池を押さえたのは、電池は、通常、ケースなどで固定されているからである。
表1に示される結果から明らかな通り、酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含むコート層を金属層とシーラント層との間に設けることにより、電池が高温下に曝された場合にも、電池の開封を効果的に抑制することができることが分かる。