JP6135634B2 - 車両用トランスファ - Google Patents

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Description

本発明は、入力回転部材と第1の出力回転部材と第2の出力回転部材とハイロー切替機構とクラッチとを備える車両用トランスファに関するものである。
入力回転部材の回転を変速して第1の出力回転部材へ伝達するハイロー切替機構と、第1の出力回転部材から第2の出力回転部材へ伝達する伝達トルクを調整する単板又は多板のクラッチとを備える車両用トランスファが良く知られている。例えば、特許文献1に記載された、ハイロー切替機構と、副駆動輪側へ伝達するトルクを調整する多板のクラッチとを備えたトランスファがそれである。特許文献1に記載されたトランスファでは、ハイロー切替機構の切替作動と、クラッチのトルク調整とを一つのモータで行っている。その為、特許文献1のトランスファでは、モータの回転を直線運動に変換する変換機構は、ハイロー切替機構の切替作動用にはドラムカム式を採用し、クラッチのトルク調整用にはボールカム+レバー式を採用している。
米国特許出願公開第2007/0251345号明細書
ところで、一般的に、ハイロー切替機構は比較的長いストロークが必要とされ、又、クラッチは比較的短いストロークでも良いが大きな推力が必要とされる。一方で、上述したドラムカム式はクラッチのトルク調整用には推力不足であり、又、上述したボールカム+レバー式はハイロー切替機構の切替作動用にはストローク不足である。その為、ハイロー切替機構の切替作動用とクラッチのトルク調整用とで、ドラムカム式かボールカム+レバー式かの何れか一方の同じ方式を採用することは困難である。つまり、ドラムカム式とボールカム+レバー式との何れの方式も、モータの回転を直線運動に変換できるが、長いストロークと大きな推力とを両立できる方式ではないので、ハイロー切替機構の切替作動用とクラッチのトルク調整用とで、各々別の方式を採用せざるを得ない。そうすると、構成部品数が増加し、重量増、コスト増、及び全長や軸間距離増による搭載性悪化等を招くおそれがある。尚、上述したような課題は未公知である。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、部品点数、重量、コスト、及び体格の低減が可能となる車両用トランスファを提供することにある。
前記目的を達成する為の第1の発明の要旨とするところは、(a) 入力回転部材と、第1の左右の車輪へ動力を出力する第1の出力回転部材と、第2の左右の車輪へ動力を出力する第2の出力回転部材と、前記入力回転部材の回転を変速して前記第1の出力回転部材へ伝達するハイロー切替機構と、前記第1の出力回転部材から前記第2の出力回転部材へ伝達する伝達トルクを調整する単板又は多板のクラッチとを備える車両用トランスファであって、(b) モータと、(c) 前記モータの回転運動を直線運動に変換するねじ機構と、(d) 前記ねじ機構の直線運動力を前記ハイロー切替機構及び前記クラッチへそれぞれ伝達する伝達機構とを、更に備えており、(e) 前記ねじ機構は、前記モータに直接的又は間接的に連結された回転部材と、前記回転部材の回転に伴って前記回転部材の軸心と平行な方向に移動可能に前記回転部材に連結された直線運動部材とを有しており、(f) 前記ハイロー切替機構は、回転を出力するハイ側ギヤ歯と、前記ハイ側ギヤ歯よりも低速側の回転を出力するロー側ギヤ歯と、前記第1の出力回転部材にスプライン嵌合されて、前記第1の出力回転部材の軸心と平行な方向への移動によって前記ハイ側ギヤ歯と前記ロー側ギヤ歯とにそれぞれ噛み合うハイロースリーブとを有しており、(g) 前記伝達機構は、前記直線運動部材に連結された、前記クラッチを押し付ける押付部材と、前記回転部材の軸心と平行な別の軸心回りに設けられて、前記直線運動部材に連結されたフォークシャフトと、前記フォークシャフトに固設されて、前記ハイロースリーブに連結されたフォークとを有していることにある。
このようにすれば、ねじ機構が有する高い倍力機能によってクラッチへ高い推力を付与することができる。又、ねじ機構によってハイロー切替機構の作動に必要なストロークを得ることができる。従って、一つのモータとねじ機構と伝達機構とでハイロー切替機構の切替作動とクラッチのトルク調整(すなわち第2の出力回転部材(換言すれば第2の左右の車輪)へ伝達する伝達トルクの調整)とが可能となる。つまり、モータの回転運動を直線運動に変換する変換機構としてねじ機構を用いたことにより、同一の方式でハイロー切替機構の切替作動とクラッチのトルク調整とが可能となる。よって、車両用トランスファにおいて、部品点数、重量、コスト、及び体格の低減が可能となる。
ここで、第の発明は、前記第の発明に記載の車両用トランスファにおいて、前記第2の出力回転部材に設けられたロック歯と、前記第1の出力回転部材にスプライン嵌合されて、前記第1の出力回転部材の軸心と平行な方向への移動によって前記ロック歯に噛み合うロックスリーブとを有するドグクラッチを更に備え、前記伝達機構は、前記ねじ機構の直線運動力を前記ハイロースリーブを介して前記ロックスリーブへ伝達することにある。このようにすれば、ねじ機構を用いた同一の方式で、ドグクラッチの切替作動(すなわち第2の出力回転部材への動力の伝達/遮断)が可能となる。
また、第の発明は、前記第の発明に記載の車両用トランスファにおいて、前記ハイロースリーブは、前記入力回転部材の支持ベアリングに対して前記第2の出力回転部材側の空間に設けられており、前記ロックスリーブは、前記ハイロー切替機構と前記第2の出力回転部材との間の空間に、前記ハイロースリーブと隣接して別体で設けられており、前記伝達機構は、前記ハイロースリーブと前記ロックスリーブとを相互に離間させる側へ付勢する第1のスプリングと、前記ロックスリーブを前記ロック歯から離す側へ付勢する第2のスプリングとを有していることにある。このようにすれば、ロックスリーブの移動の可否に拘わらずハイロースリーブの移動が可能となる。又、ハイロースリーブとロックスリーブとが別体で設けられていても、ハイロースリーブがロックスリーブから離間する側へ移動させられれば、ロックスリーブがロック歯から離れる側へ移動させられる。
また、第の発明は、前記第の発明に記載の車両用トランスファにおいて、前記ハイロースリーブは、前記ロックスリーブから離間する側にて前記ハイ側ギヤ歯に噛み合い、前記ロックスリーブに接近する側にて前記ロー側ギヤ歯に噛み合うものであり、前記ロックスリーブは、前記フォークシャフトが前記ハイロースリーブを前記ロー側ギヤ歯に噛み合わせる位置にて前記ロック歯に噛み合うものであり、前記単板又は多板のクラッチは、前記第1の出力回転部材の軸心方向で、前記第2の出力回転部材に対して前記ハイロー切替機構とは反対側に前記第1の出力回転部材の軸心回りに配置されて、前記第2の出力回転部材側に移動する前記押付部材によって押し付けられるものであり、前記単板又は多板のクラッチは、前記フォークシャフトが前記ハイロースリーブを前記ハイ側ギヤ歯に噛み合わせる位置にて前記押付部材によって押し付けられ、前記フォークシャフトが前記ハイロースリーブを前記ロー側ギヤ歯に噛み合わせる位置にて前記押付部材によって押し付けられないものであり、前記伝達機構は、前記フォークシャフトが前記ハイロースリーブを前記ハイ側ギヤ歯に噛み合わせる位置のままで、前記単板又は多板のクラッチが前記押付部材によって押し付けられる位置と押し付けられない位置との間で前記直線運動部材の移動を許容する、前記直線運動部材と前記フォークシャフトとを連結する連結機構を有していることにある。このようにすれば、ハイロースリーブがハイ側ギヤ歯に噛み合わされて比較的高速側の回転を第1の出力回転部材(換言すれば第1の左右の車輪)へ伝達することができる車両状態では、単板又は多板のクラッチを介して調整されたトルクを第2の出力回転部材(換言すれば第2の左右の車輪)へ伝達することができる。又、この車両状態では、ロックスリーブがロック歯に噛み合わされないことはもちろんのこと、単板又は多板のクラッチが押付部材によって押し付けられないようにすることができるので、第1の左右の車輪のみに動力を伝達することができる。一方で、ハイロースリーブがロー側ギヤ歯に噛み合わされて比較的低速側の回転を第1の出力回転部材へ伝達することができる車両状態では、ロックスリーブがロック歯に噛み合わされてドグクラッチにより第1の出力回転部材と第2の出力回転部材とが直結状態とされる。
また、第の発明は、前記第の発明乃至第の発明の何れか1つに記載の車両用トランスファにおいて、前記回転部材は、ねじ軸部材であり、前記直線運動部材は、ナット部材であり、前記ねじ機構は、前記ねじ軸部材と前記ナット部材がボールを介して作動するボールねじである。このようにすれば、ボールねじが有する高い倍力機能によってクラッチへ高い推力を付与することができる。又、ボールねじによってハイロー切替機構の作動に必要なストロークを得ることができる。又、モータの回転運動を直線運動に変換する変換機構としてすべりねじを用いることと比較して、回転運動を直線運動に変換する機械効率が高くされる。
本発明が適用される車両の概略構成を説明する図であると共に、車両における各種制御の為の制御系統の要部を説明する図である。 トランスファの概略構成を説明する断面図であって、高速側ギヤ段にて4WD走行状態とする為の態様を示す図である。 トランスファの概略構成を説明する骨子図である。 トランスファの概略構成を説明する断面図であって、低速側ギヤ段にてセンターデフロック状態での4WD走行状態とする為の態様を示す図である。
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明が適用される車両10の概略構成を説明する図であると共に、車両10における各種制御の為の制御系統の要部を説明する図である。図1において、車両10は、駆動力源としてのエンジン12、左右の前輪14L,14R(特に区別しない場合には前輪14という)、左右の後輪16L,16R(特に区別しない場合には後輪16という)、エンジン12の動力を前輪14と後輪16とへそれぞれ伝達する動力伝達装置18などを備えている。後輪16は、二輪駆動(2WD)走行中及び四輪駆動(4WD)走行中のときに共に駆動輪となる主駆動輪である。前輪14は、2WD走行中のときに従動輪となり且つ4WD走行中のときに駆動輪となる副駆動輪である。従って、車両10は、前置エンジン後輪駆動(FR)をベースとする四輪駆動車両である。
動力伝達装置18は、エンジン12に連結された変速機20、変速機20に連結された前後輪動力分配装置である車両用トランスファ22(以下、トランスファ22という)、トランスファ22にそれぞれ連結されたフロントプロペラシャフト24及びリヤプロペラシャフト26、フロントプロペラシャフト24に連結された前輪用差動歯車装置28、リヤプロペラシャフト26に連結された後輪用差動歯車装置30、前輪用差動歯車装置28に連結された左右の前輪車軸32L,32R(特に区別しない場合には前輪車軸32という)、後輪用差動歯車装置30に連結された左右の後輪車軸34L,34R(特に区別しない場合には後輪車軸34という)などを備えている。このように構成された動力伝達装置18において、変速機20を介してトランスファ22へ伝達されたエンジン12の動力は、トランスファ22から、リヤプロペラシャフト26、後輪用差動歯車装置30、後輪車軸34等の後輪側の動力伝達経路を順次介して後輪16へ伝達される。又、後輪16側へ伝達されるエンジン12の動力の一部は、トランスファ22にて前輪14側へ分配されて、フロントプロペラシャフト24、前輪用差動歯車装置28、前輪車軸32等の前輪側の動力伝達経路を順次介して前輪14へ伝達される。
前輪用差動歯車装置28は、フロント側クラッチ36を前輪車軸32R側に(すなわち前輪用差動歯車装置28と前輪14Rとの間に)備えている。フロント側クラッチ36は、前輪用差動歯車装置28と前輪14Rとの間の動力伝達経路を選択的に接続又は遮断する、電気的(電磁的)に制御されるドグクラッチ(すなわち噛合式クラッチ)である。尚、フロント側クラッチ36において、更に、同期機構(シンクロ機構)が備えられていても構わない。
図2及び図3は、トランスファ22の概略構成を説明する図であって、図2はトランスファ22の断面図であり、図3はトランスファ22の骨子図である。図2、図3において、トランスファ22は、非回転部材としてのトランスファケース40を備えている。トランスファ22は、トランスファケース40内において、入力回転部材としての入力軸42と、第1の左右の車輪としての後輪16へ動力を出力する第1の出力回転部材としての後輪側出力軸44と、第2の左右の車輪としての前輪14へ動力を出力する第2の出力回転部材としてのドライブギヤ46と、入力軸42の回転を変速して後輪側出力軸44へ伝達する副変速機としてのハイロー切替機構48と、後輪側出力軸44からドライブギヤ46へ伝達する伝達トルクを調整する多板のクラッチとしての前輪駆動用クラッチ50とを共通の軸心C1回りに備えている。又、トランスファ22は、トランスファケース40内において、前輪側出力軸52と、前輪側出力軸52に一体的に設けられたドリブンギヤ54とを共通の軸心C2回りに備え、更に、ドライブギヤ46とドリブンギヤ54との間を連結する前輪駆動用チェーン56と、後輪側出力軸44とドライブギヤ46とを一体的に連結するドグクラッチとしてデフロック機構58とを備えている。
入力軸42は、変速機20の出力回転部材(不図示)にスプライン嵌合継手などを介して連結されており、エンジン12から変速機20を介して入力された駆動力(トルク)によって回転駆動させられる。後輪側出力軸44は、リヤプロペラシャフト26に連結された主駆動軸である。ドライブギヤ46は、後輪側出力軸44回りに相対回転可能に設けられている。前輪側出力軸52は、フロントプロペラシャフト24に連結された副駆動軸である。
このように構成されたトランスファ22は、例えばドライブギヤ46へ伝達するトルクを調整して、変速機20から伝達された動力を後輪16のみへ伝達したり、或いは前輪14及び後輪16のそれぞれに分配する。又、トランスファ22は、例えばリヤプロペラシャフト26とフロントプロペラシャフト24との間の回転差動が制限されない差動状態とそれらの間の回転差動が制限された非差動状態(所謂センターデフロック状態)とを切り替える。又、トランスファ22は、例えば高速側ギヤ段(高速側変速段)H及び低速側ギヤ段(低速側変速段)Lの何れかを成立させて、変速機20からの回転を変速して後段へ伝達する。つまり、トランスファ22は、入力軸42の回転をハイロー切替機構48を介して後輪側出力軸44へ伝達すると共に、前輪駆動用クラッチ50を介した伝達トルクが零とされ且つデフロック機構58が解放された状態では、後輪側出力軸44から前輪側出力軸52への動力伝達は行われない一方で、前輪駆動用クラッチ50を介してトルクが伝達されるか或いはデフロック機構58が係合された状態では、後輪側出力軸44からドライブギヤ46、前輪駆動用チェーン56、及びドリブンギヤ54を介して前輪側出力軸52への動力伝達が行われる。
具体的には、ハイロー切替機構48は、シングルピニオン型の遊星歯車装置60と、ハイロースリーブ62とを備えている。遊星歯車装置60は、入力軸42に対して軸心C1回りの回転不能に連結されたサンギヤSと、そのサンギヤSに対して略同心に配置され、トランスファケース40に軸心C1回りの回転不能に連結されたリングギヤRと、これらサンギヤS及びリングギヤRに噛み合う複数のピニオンギヤPを自転可能且つサンギヤS回りの公転可能に支持するキャリヤCAとを有している。よって、サンギヤSの回転速度は入力軸42に対して等速であり、キャリヤCAの回転速度は入力軸42に対して減速される。このサンギヤSの内周面にはハイ側ギヤ歯64が固設されており、又、キャリヤCAにはハイ側ギヤ歯64と同径のロー側ギヤ歯66が固設されている。ハイ側ギヤ歯64は、入力軸42と等速の回転を出力する、高速側ギヤ段Hの成立に関与するスプライン歯である。ロー側ギヤ歯66は、ハイ側ギヤ歯64よりも低速側の回転を出力する、低速側ギヤ段Lの成立に関与するスプライン歯である。ハイロースリーブ62は、後輪側出力軸44に軸心C1と平行な方向の相対移動可能にスプライン嵌合されており、フォーク連結部62aと、フォーク連結部62aと隣接して一体的に設けられた、後輪側出力軸44の軸心C1と平行な方向への移動によってハイ側ギヤ歯64とロー側ギヤ歯66とにそれぞれ噛み合う外周歯62bとを有している。ハイ側ギヤ歯64と外周歯62bとが噛み合うことで、入力軸42の回転と等速の回転が後輪側出力軸44へ伝達され、ロー側ギヤ歯66と外周歯62bとが噛み合うことで、入力軸42の回転に対して減速された回転が後輪側出力軸44へ伝達される。ハイ側ギヤ歯64とハイロースリーブ62とは、高速側ギヤ段Hを形成する高速側ギヤ段用クラッチとして機能し、ロー側ギヤ歯66とハイロースリーブ62とは、低速側ギヤ段Lを形成する低速側ギヤ段用クラッチとして機能する。ハイロー切替機構48は、ハイロースリーブ62がハイ側ギヤ歯64とロー側ギヤ歯66との何れとも噛み合わないことにより動力伝達遮断状態(ニュートラル状態)になり、高速側ギヤ段Hと低速側ギヤ段Lとの間でギヤ段が切り替えられる際には、この動力伝達可能状態を経てから切り替えられる。
デフロック機構58は、ドライブギヤ46の内周面に固設されたロック歯68と、後輪側出力軸44に軸心C1と平行な方向の相対移動可能にスプライン嵌合されて、軸心C1と平行な方向への移動によってロック歯68に噛み合う外周歯70aが外周面に固設されたロックスリーブ70とを有している。トランスファ22は、ロックスリーブ70の外周歯70aとロック歯68とが噛み合ったデフロック機構58の係合状態では、後輪側出力軸44とドライブギヤ46とが一体的に回転させられて、センターデフロック状態が形成される。
ハイロースリーブ62は、入力軸42の支持ベアリング71に対して(より具体的には遊星歯車装置60に対して)ドライブギヤ46側の空間に設けられている。ロックスリーブ70は、ハイロー切替機構48とドライブギヤ46との間の空間に、ハイロースリーブ62と隣接して別体で設けられている。トランスファ22は、ハイロースリーブ62とロックスリーブ70との間に、それぞれに当接してハイロースリーブ62とロックスリーブ70とを相互に離間させる側へ付勢する第1のスプリング72(以下、第1スプリング72という)を備えている。トランスファ22は、ドライブギヤ46とロックスリーブ70との間に、後輪側出力軸44の凸部44aとロックスリーブ70とに当接してロックスリーブ70をロック歯68から離す側へ付勢する第2のスプリング74(以下、第2スプリング74という)を備えている。凸部44aは、ドライブギヤ46の径方向内側の空間においてロック歯68側に突出して設けられた後輪側出力軸44の鍔部である。ハイ側ギヤ歯64は、軸心C1に平行な方向に見てロー側ギヤ歯66よりもロックスリーブ70から離れた位置に設けられている。ハイロースリーブ62の外周歯62bは、ハイロースリーブ62がロックスリーブ70から離間する側(図2,3において左側)にてハイ側ギヤ歯64に噛み合い、ハイロースリーブ62がロックスリーブ70に接近する側(図2,3において右側)にてロー側ギヤ歯66に噛み合う。ロックスリーブ70の外周歯70aは、ロックスリーブ70がドライブギヤ46に接近する側(図2,3において右側)にてロック歯68に噛み合う。従って、ロックスリーブ70の外周歯70aは、ハイロースリーブ62がロー側ギヤ歯66と噛み合う位置にてロック歯68に噛み合う。
前輪駆動用クラッチ50は、後輪側出力軸44に相対回転不能に連結されたクラッチハブ76と、ドライブギヤ46に相対回転不能に連結されたクラッチドラム78と、クラッチハブ76とクラッチドラム78との間に介挿されこれらを選択的に断接する摩擦係合要素80と、摩擦係合要素80を押圧するピストン82とを備える、多板の摩擦クラッチである。前輪駆動用クラッチ50は、後輪側出力軸44の軸心C1方向で、ドライブギヤ46に対してハイロー切替機構48とは反対側に後輪側出力軸44の軸心C1回りに配置されて、ドライブギヤ46側に移動するピストン82によって摩擦係合要素80が押し付けられる。前輪駆動用クラッチ50は、ピストン82がドライブギヤ46から軸心C1に平行な方向に離れる側である非押圧側(図2,3において右側)に移動させられて摩擦係合要素80に当接しない状態では、解放状態となる。一方で、前輪駆動用クラッチ50は、ピストン82がドライブギヤ46に軸心C1に平行な方向に近づく側である押圧側(図2,3において左側)に移動させられて摩擦係合要素80に当接する状態では、ピストン82の移動量によって伝達トルク(トルク容量)が調整され、解放状態又はスリップ状態又は係合状態となる。
トランスファ22は、前輪駆動用クラッチ50の解放状態且つロックスリーブ70の外周歯70aとロック歯68とが噛み合っていないデフロック機構58の解放状態では、後輪側出力軸44とドライブギヤ46との間の動力伝達経路が遮断されて、変速機20から伝達された動力を後輪16のみへ伝達する。トランスファ22は、前輪駆動用クラッチ50のスリップ状態又係合状態では、変速機20から伝達された動力を前輪14及び後輪16のそれぞれに分配する。トランスファ22は、前輪駆動用クラッチ50のスリップ状態では、後輪側出力軸44とドライブギヤ46との間の回転差動が許容されて、差動状態(非センターデフロック状態)が形成される。トランスファ22は、前輪駆動用クラッチ50の係合状態では、後輪側出力軸44とドライブギヤ46とが一体的に回転させられて、センターデフロック状態が形成される。前輪駆動用クラッチ50は、伝達トルクが制御されることで、前輪14と後輪16とのトルク配分を例えば0:100〜50:50の間で連続的に変更することができる。
トランスファ22は、ハイロー切替機構48、前輪駆動用クラッチ50、及びデフロック機構58を作動させる装置として、モータ84と、モータ84の回転運動を直線運動に変換するねじ機構86と、ねじ機構86の直線運動力をハイロー切替機構48、前輪駆動用クラッチ50、及びデフロック機構58へそれぞれ伝達する伝達機構88とを、更に備えている。
ねじ機構86は、後輪側出力軸44と同じ軸心C1回りに配置されており、トランスファ22に備えられたウォームギヤ90を介してモータ84に間接的に連結された回転部材としてのねじ軸部材92と、ねじ軸部材92の回転に伴って軸心C1と平行な方向に移動可能にねじ軸部材92に連結された直線運動部材としてのナット部材94とを備えている。ねじ機構86は、ねじ軸部材92とナット部材94が多数のボール96を介して作動するボールねじである。ウォームギヤ90は、モータ84のモータシャフトと一体的に形成されたウォーム98と、軸心C1回りに配置されてねじ軸部材92と一体的に形成されたウォームホイール100とを備えた歯車対である。例えばブラシレスモータであるモータ84の回転は、ウォームギヤ90を介してねじ軸部材92へ減速されて伝達される。ねじ機構86は、ねじ軸部材92に伝達されたモータ84の回転を、ナット部材94の直線運動に変換する。
伝達機構88は、ねじ軸部材92の軸心C1と平行な別の軸心C3回りに設けられて、ナット部材94に連結されたフォークシャフト102と、フォークシャフト102に固設されて、ハイロースリーブ62に連結されたフォーク104とを備えている。伝達機構88は、ねじ機構86におけるナット部材94の直線運動力を、フォークシャフト102、及びフォーク104を介してハイロー切替機構48のハイロースリーブ62へ伝達する。ハイロースリーブ62とロックスリーブ70とは第1スプリング72を介して相互に力が付与され、又、ロックスリーブ70は第2スプリング74を介して後輪側出力軸44の凸部44aから力を付与されている。従って、伝達機構88は、ねじ機構86におけるナット部材94の直線運動力を、ハイロースリーブ62を介してデフロック機構58のロックスリーブ70へ伝達する。その為、第1スプリング72及び第2スプリング74は、伝達機構88の一部を構成する部材として機能する。
ねじ機構86は、前輪駆動用クラッチ50に対してドライブギヤ46とは反対側に配置されている。前輪駆動用クラッチ50のピストン82は、ねじ機構86のナット部材94とは軸心C1と平行な方向の相対移動不能且つ軸心C1回りの相対回転可能に連結されている。従って、ねじ機構86におけるナット部材94の直線運動力は、ピストン82を介して前輪駆動用クラッチ50の摩擦係合要素80に伝達される。その為、ピストン82は、ナット部材94に連結された、前輪駆動用クラッチ50の摩擦係合要素80を押し付ける押付部材であり、伝達機構88の一部を構成する部材として機能する。このように、伝達機構88は、ねじ機構86におけるナット部材94の直線運動力を、前輪駆動用クラッチ50の摩擦係合要素80へ伝達する。
伝達機構88は、ナット部材94とフォークシャフト102とを連結する連結機構106を備えている。連結機構106は、軸心C3と平行な方向にフォークシャフト102と摺動可能に軸心C3回りに配置された、一端部に設けられた鍔どうしが相対する2つの鍔付円筒部材108a,108b、2つの鍔付円筒部材108a,108bの間に介在させられた円筒状のスペーサ110、及びスペーサ110の外周側に配置された第3のスプリング112(以下、第3スプリング112という)と、2つの鍔付円筒部材108a,108bを軸心C3と平行な方向に摺動可能に把持する把持部材114と、把持部材114とナット部材94とを連結する連結部材116とを備えている。把持部材114は、鍔付円筒部材108a,108bの鍔に当接することで鍔付円筒部材108a,108bをフォークシャフト102上で摺動させる。鍔付円筒部材108a,108bの鍔が共に把持部材114と当接した状態における鍔間の長さは、スペーサ110の長さよりも長くされている。従って、鍔が共に把持部材114と当接した状態は、第3スプリング112の付勢力によって形成される。
フォークシャフト102は、鍔付円筒部材108a,108bの各々を軸心C3と平行な方向の摺動不能とするストッパ118a,118bを、外周面に備えている。ストッパ118a,118bにより鍔付円筒部材108a,108bが摺動不能とされることで、伝達機構88は、ナット部材94の直線運動力を、フォークシャフト102、及びフォーク104を介してハイロー切替機構48へ伝達することができる。
ロックスリーブ70の外周歯70aは、フォークシャフト102がハイロースリーブ62の外周歯62bをロー側ギヤ歯66に噛み合わせる位置(ローギヤ位置と称す)にてロック歯68に噛み合う。前輪駆動用クラッチ50の摩擦係合要素80は、フォークシャフト102がハイロースリーブ62の外周歯62bをハイ側ギヤ歯64に噛み合わせる位置(ハイギヤ位置と称す)にてピストン82によって押し付けられ、フォークシャフト102のローギヤ位置にてピストン82によって押し付けられない。
フォークシャフト102のハイギヤ位置では、鍔付円筒部材108a,108bの鍔間の長さを、鍔が共に把持部材114と当接した状態での長さと、スペーサ110の長さとの間で変化させることができる。従って、連結機構106は、フォークシャフト102のハイギヤ位置のままで、前輪駆動用クラッチ50の摩擦係合要素80がピストン82によって押し付けられる位置と押し付けられない位置との間で、ナット部材94の軸心C1と平行な方向の移動を許容する。
トランスファ22は、フォークシャフト102のハイギヤ位置を保持し、又、フォークシャフト102のローギヤ位置を保持するギヤ位置保持機構120を備えている。ギヤ位置保持機構120は、フォークシャフト102が摺動するトランスファケース40の内周面に形成された収容孔122と、収容孔122に収容されたロックボール124と、収容孔122に収容されてロックボール124をフォークシャフト102側へ付勢するロック用スプリング126と、フォークシャフト102の外周面に形成された、フォークシャフト102のハイギヤ位置においてロックボール124の一部を受け入れる凹部128h及びフォークシャフト102のローギヤ位置においてロックボール124の一部を受け入れる凹部128lとを備えている。ギヤ位置保持機構120によりフォークシャフト102の各ギヤ位置が保持されることで、その各ギヤ位置においてモータ84からの出力を停止してもフォークシャフト102の各ギヤ位置が保持される。
トランスファ22は、フォークシャフト102のローギヤ位置を検出するローギヤ位置検出スイッチ130を備えている。ローギヤ位置検出スイッチ130は、例えばボール型の接触スイッチである。ローギヤ位置検出スイッチ130は、ローギヤ位置に移動したフォークシャフト102と接触する位置において、トランスファケース40に形成された貫通孔132に固設される。ローギヤ位置検出スイッチ130によってローギヤ位置が検出されると、例えば低速側ギヤ段Lにてセンターデフロック状態であることを運転者に知らせる為のインジケータが点灯される。
図1に戻り、車両10には、例えば2WD状態と4WD状態とを切り替える車両10の制御装置を含む電子制御装置(ECU)200が備えられている。電子制御装置200は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。例えば、電子制御装置200は、エンジン12の出力制御、車両10の駆動状態の切替制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用や駆動状態制御用等に分けて構成される。電子制御装置200には、図1に示すように、車両10に備えられた各種センサ(例えばエンジン回転速度センサ202、モータ回転角度センサ204、各車輪速センサ206、アクセル開度センサ208、運転者の操作によって高速側ギヤ段Hを選択する為のHレンジ選択スイッチ210、運転者の操作によって4WD状態を選択する為の4WD選択スイッチ212、運転者の操作によってセンターデフロック状態を選択する為のデフロック選択スイッチ214など)による検出信号に基づく各種実際値(例えばエンジン回転速度Ne、モータ回転角度θm、前輪14L,14R、及び後輪16L,16Rの各車輪速Nwfl,Nwfr,Nwrl,Nwrr、アクセル開度θacc、Hレンジ選択スイッチ210が操作されたことを示す信号であるHレンジ要求Hon、4WD選択スイッチ212が操作されたことを示す信号である4WD要求4WDon、デフロック選択スイッチ214が操作されたことを示す信号であるLOCKonなど)が、それぞれ供給される。電子制御装置200からは、図1に示すように、例えばエンジン12の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号Se、フロント側クラッチ36の状態を切り替える為の作動指令信号Sd、モータ84の回転量を制御する為のモータ駆動指令信号Smなどが、エンジン12の出力制御装置、フロント側クラッチ36のアクチュエータ、モータ84などへそれぞれ出力される。
以上のように構成された車両10では、モータ84の回転量が制御されることでナット部材94の移動量(ストローク)が制御される。フォークシャフト102のハイギヤ位置において、ピストン82が摩擦係合要素80に当接した位置からモータ84を所定の回転量だけ駆動して非押圧側に所定のストローク分だけナット部材94を移動させることで前輪駆動用クラッチ50を解放状態とした位置が、車両10を高速側ギヤ段Hにて後輪16のみを駆動する2WD走行状態とする為の位置(H2位置と称す)とされる。このH2位置においてフロント側クラッチ36が解放状態とされると、2WD走行中において、ドライブギヤ46から前輪用差動歯車装置28までの動力伝達経路を構成する各回転要素(ドライブギヤ46、前輪駆動用チェーン56、ドリブンギヤ54、前輪側出力軸52、フロントプロペラシャフト24、前輪用差動歯車装置28等)には、エンジン12側からも前輪14側からも回転が伝達されない。従って、2WD走行中において、これらの各回転要素が回転停止し、前記各回転要素の連れ回りが防止され、走行抵抗が低減される。
又、例えば図2に示すように、フォークシャフト102のハイギヤ位置において、ピストン82が摩擦係合要素80に当接した位置からモータ84の回転量を制御して押圧側にナット部材94を移動させることで前輪駆動用クラッチ50をスリップ状態とした位置が、車両10を高速側ギヤ段Hにて前輪14及び後輪16共に動力が伝達される4WD走行状態とする為の位置(H4位置と称す)とされる。このH4位置では、前輪駆動用クラッチ50の伝達トルクが制御されることで、前輪14と後輪16とのトルク配分が必要に応じて調整される。
又、例えば図2に示すように、前記H4位置からモータ84の回転量を制御して押圧側にナット部材94を更に移動させることで前輪駆動用クラッチ50を係合状態とした位置が、車両10を高速側ギヤ段Hにてセンターデフロック状態での4WD走行状態とする為の位置(H4L位置と称す)とされる。
又、フォークシャフト102のローギヤ位置では、図4に示すように、前輪駆動用クラッチ50が解放状態とされ且つデフロック機構58が係合状態とされるので、車両10を低速側ギヤ段Lにてセンターデフロック状態での4WD走行状態とする為の位置(L4位置と称す)とされる。
フォークシャフト102のハイギヤ位置とローギヤ位置との切替えは、例えば車両10の停止時に変速機20のニュートラル状態において行われる。その為、デフロック機構58において、ロックスリーブ70の外周歯70aとロック歯68との位相が合っていないと、係合と解放との間の移行がスムーズにできない可能性がある。このような問題に対して、ハイロースリーブ62はロックスリーブ70とは別体で設けられているので、フォークシャフト102のハイギヤ位置とローギヤ位置との切替え時にロックスリーブ70が移動できない場合でもハイロースリーブ62は移動することが可能である。従って、フォークシャフト102のハイギヤ位置とローギヤ位置との切替え時に、ハイロー切替機構48をニュートラル状態とする位置でハイロースリーブ62の移動が止められるということはなく、少なくとも後輪16側への動力伝達は確保される。
上述のように、本実施例によれば、トランスファ22は、モータ84とねじ機構86と伝達機構88とを備えているので、ねじ機構86が有する高い倍力機能によって前輪駆動用クラッチ50へ高い推力を付与することができる。又、ねじ機構86によってハイロー切替機構48の作動に必要なストロークを得ることができる。従って、一つのモータ84とねじ機構86と伝達機構88とでハイロー切替機構48の切替作動と前輪駆動用クラッチ50のトルク調整(すなわちドライブギヤ46(換言すれば前輪14)へ伝達する伝達トルクの調整)とが可能となる。つまり、モータ84の回転運動を直線運動に変換する変換機構としてねじ機構86を用いたことにより、同一の方式でハイロー切替機構48の切替作動と前輪駆動用クラッチ50のトルク調整とが可能となる。よって、トランスファ22において、部品点数、重量、コスト、及び体格の低減が可能となる。
また、本実施例によれば、伝達機構88は、ねじ機構86の直線運動力をデフロック機構58へ伝達するので、ねじ機構86を用いた同一の方式で、デフロック機構58の切替作動(すなわちドライブギヤ46への動力の伝達/遮断)が可能となる。
また、本実施例によれば、ロックスリーブ70は、ハイロー切替機構48とドライブギヤ46との間の空間に、ハイロースリーブ62と隣接して別体で設けられており、伝達機構88は、第1スプリング72と第2スプリング74とを有しているので、ロックスリーブ70の移動の可否に拘わらずハイロースリーブ62の移動が可能となる。又、ハイロースリーブ62とロックスリーブ70とが別体で設けられていても、ハイロースリーブ62がロックスリーブ70から離間する側へ移動させられれば、ロックスリーブ70がロック歯68から離れる側へ移動させられる。
また、本実施例によれば、伝達機構88は連結機構106を有しているので、ハイロースリーブ62がハイ側ギヤ歯64に噛み合わされて比較的高速側の回転を後輪側出力軸44(換言すれば後輪16)へ伝達することができる車両状態では、前輪駆動用クラッチ50を介して調整されたトルクをドライブギヤ46(換言すれば前輪14)へ伝達することができる。又、この車両状態では、ロックスリーブ70がロック歯68に噛み合わされないことはもちろんのこと、前輪駆動用クラッチ50がピストン82によって押し付けられないようにすることができるので、後輪16のみに動力を伝達することができる。一方で、ハイロースリーブ62がロー側ギヤ歯66に噛み合わされて比較的低速側の回転を後輪側出力軸44へ伝達することができる車両状態では、ロックスリーブ70がロック歯68に噛み合わされてデフロック機構58により後輪側出力軸44とドライブギヤ46とが直結状態とされる。
また、本実施例によれば、ねじ機構86はボールねじであるので、ボールねじが有する高い倍力機能によって前輪駆動用クラッチ50へ高い推力を付与することができる。又、ボールねじによってハイロー切替機構48の作動に必要なストロークを得ることができる。又、モータ84の回転運動を直線運動に変換する変換機構としてすべりねじを用いることと比較して、回転運動を直線運動に変換する機械効率が高くされる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例において、ねじ機構86としてボールねじを例示したが、この態様に限らない。例えば、ねじ機構86は、モータ84の回転運動を直線運動に変換する変換機構であれば良く、単純なボルトの軸とナットとを組み合わせたような機構であっても良い。具体的には、ねじ機構86は、すべりねじなどであっても良い。すべりねじの場合には、ボールねじと比較して回転運動を直線運動に変換する機械効率が低くされるが、前輪駆動用クラッチ50へ高い推力を付与することができたり、ハイロー切替機構48の作動に必要なストロークを得ることができるという、一定の効果は得られる。
また、前述の実施例では、ねじ機構86はウォームギヤ90を介してモータ84に間接的に連結されたが、この態様に限らない。例えば、ねじ機構86のねじ軸部材92とモータ84とは、ウォームギヤ90を介すことなく直接的に連結されても良い。具体的には、ねじ軸部材92とモータ84とは、モータ84のモータシャフトに設けられたピニオンとねじ軸部材92に形成されたギヤ歯とが噛み合うように、直接的に連結されても良い。
また、前述の実施例では、トランスファ22が適用される車両10としてFRをベースとする四輪駆動車両を例示したが、これに限らない。例えば、トランスファ22が適用される車両10は、前置エンジン前輪駆動(FF)をベースとする四輪駆動車両であっても良い。又、前輪駆動用クラッチ50は、多板のクラッチであったが、単板のクラッチであっても本発明は適用され得る。又、トランスファ22は、ギヤ位置保持機構120やローギヤ位置検出スイッチ130を備えなくても良い。
また、前述の実施例において、駆動力源として例示したエンジン12は、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関が用いられる。又、駆動力源としては、例えば電動機等の他の原動機を単独で或いはエンジン12と組み合わせて採用することもできる。又、変速機20は、遊星歯車式多段変速機、無段変速機、同期噛合型平行2軸式変速機(公知のDCT含む)などの種々の自動変速機、又は公知の手動変速機である。又、フロント側クラッチ36は、電磁ドグクラッチであったが、これに限らない。例えば、フロント側クラッチ36は、スリーブを軸方向に移動させるシフトフォークを備え、電気制御可能な或いは油圧制御可能なアクチュエータによって、そのシフトフォークが駆動される形式のドグクラッチ、又は、摩擦クラッチなどであっても良い。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
14(14L,14R):前輪(第2の左右の車輪)
16(16L,16R):後輪(第1の左右の車輪)
22:車両用トランスファ
42:入力軸(入力回転部材)
44:後輪側出力軸(第1の出力回転部材)
46:ドライブギヤ(第2の出力回転部材)
48:ハイロー切替機構
50:前輪駆動用クラッチ(クラッチ)
58:デフロック機構(ドグクラッチ)
62:ハイロースリーブ
64:ハイ側ギヤ歯
66:ロー側ギヤ歯
68:ロック歯
70:ロックスリーブ
71:支持ベアリング
72:第1のスプリング
74:第2のスプリング
82:ピストン(押付部材)
84:モータ
86:ねじ機構(ボールねじ)
88:伝達機構
92:ねじ軸部材(回転部材)
94:ナット部材(直線運動部材)
102:フォークシャフト
104:フォーク
106:連結機構

Claims (5)

  1. 入力回転部材と、第1の左右の車輪へ動力を出力する第1の出力回転部材と、第2の左右の車輪へ動力を出力する第2の出力回転部材と、前記入力回転部材の回転を変速して前記第1の出力回転部材へ伝達するハイロー切替機構と、前記第1の出力回転部材から前記第2の出力回転部材へ伝達する伝達トルクを調整する単板又は多板のクラッチとを備える車両用トランスファであって、
    モータと、
    前記モータの回転運動を直線運動に変換するねじ機構と、
    前記ねじ機構の直線運動力を前記ハイロー切替機構及び前記クラッチへそれぞれ伝達する伝達機構と
    を、更に備えており、
    前記ねじ機構は、前記モータに直接的又は間接的に連結された回転部材と、前記回転部材の回転に伴って前記回転部材の軸心と平行な方向に移動可能に前記回転部材に連結された直線運動部材とを有しており、
    前記ハイロー切替機構は、回転を出力するハイ側ギヤ歯と、前記ハイ側ギヤ歯よりも低速側の回転を出力するロー側ギヤ歯と、前記第1の出力回転部材にスプライン嵌合されて、前記第1の出力回転部材の軸心と平行な方向への移動によって前記ハイ側ギヤ歯と前記ロー側ギヤ歯とにそれぞれ噛み合うハイロースリーブとを有しており、
    前記伝達機構は、前記直線運動部材に連結された、前記クラッチを押し付ける押付部材と、前記回転部材の軸心と平行な別の軸心回りに設けられて、前記直線運動部材に連結されたフォークシャフトと、前記フォークシャフトに固設されて、前記ハイロースリーブに連結されたフォークとを有していることを特徴とする車両用トランスファ。
  2. 前記第2の出力回転部材に設けられたロック歯と、前記第1の出力回転部材にスプライン嵌合されて、前記第1の出力回転部材の軸心と平行な方向への移動によって前記ロック歯に噛み合うロックスリーブとを有するドグクラッチを更に備え、
    前記伝達機構は、前記ねじ機構の直線運動力を前記ハイロースリーブを介して前記ロックスリーブへ伝達することを特徴とする請求項に記載の車両用トランスファ。
  3. 前記ハイロースリーブは、前記入力回転部材の支持ベアリングに対して前記第2の出力回転部材側の空間に設けられており、
    前記ロックスリーブは、前記ハイロー切替機構と前記第2の出力回転部材との間の空間に、前記ハイロースリーブと隣接して別体で設けられており、
    前記伝達機構は、前記ハイロースリーブと前記ロックスリーブとを相互に離間させる側へ付勢する第1のスプリングと、前記ロックスリーブを前記ロック歯から離す側へ付勢する第2のスプリングとを有していることを特徴とする請求項に記載の車両用トランスファ。
  4. 前記ハイロースリーブは、前記ロックスリーブから離間する側にて前記ハイ側ギヤ歯に噛み合い、前記ロックスリーブに接近する側にて前記ロー側ギヤ歯に噛み合うものであり、
    前記ロックスリーブは、前記フォークシャフトが前記ハイロースリーブを前記ロー側ギヤ歯に噛み合わせる位置にて前記ロック歯に噛み合うものであり、
    前記単板又は多板のクラッチは、前記第1の出力回転部材の軸心方向で、前記第2の出力回転部材に対して前記ハイロー切替機構とは反対側に前記第1の出力回転部材の軸心回りに配置されて、前記第2の出力回転部材側に移動する前記押付部材によって押し付けられるものであり、
    前記単板又は多板のクラッチは、前記フォークシャフトが前記ハイロースリーブを前記ハイ側ギヤ歯に噛み合わせる位置にて前記押付部材によって押し付けられ、前記フォークシャフトが前記ハイロースリーブを前記ロー側ギヤ歯に噛み合わせる位置にて前記押付部材によって押し付けられないものであり、
    前記伝達機構は、前記フォークシャフトが前記ハイロースリーブを前記ハイ側ギヤ歯に噛み合わせる位置のままで、前記単板又は多板のクラッチが前記押付部材によって押し付けられる位置と押し付けられない位置との間で前記直線運動部材の移動を許容する、前記直線運動部材と前記フォークシャフトとを連結する連結機構を有していることを特徴とする請求項に記載の車両用トランスファ。
  5. 前記回転部材は、ねじ軸部材であり、
    前記直線運動部材は、ナット部材であり、
    前記ねじ機構は、前記ねじ軸部材と前記ナット部材がボールを介して作動するボールねじであることを特徴とする請求項乃至の何れか1項に記載の車両用トランスファ。
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