JP6070171B2 - Igzo焼結体およびスパッタリングターゲット - Google Patents

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Description

本発明は、薄膜トランジスタ(TFT)に用いられるインジウム、ガリウム、亜鉛及び酸素からなるIn−Ga−Zn−O(IGZO)半導体薄膜等の形成に用いられるスパッタリングターゲットの原料粉末および焼結体およびスパッタリングターゲットに関するものである。
いくつかの金属複合酸化物からなる酸化物半導体膜は、高移動度性と可視光透過性を有し、液晶表示装置、薄膜エレクトロルミネッセンス表示装置などのスイッチング素子や駆動回路素子などの用途に使用されている。特に、酸化インジウム−酸化ガリウム−酸化亜鉛を含む酸化物又はこれらを主成分とする酸化物半導体膜は、アモルファスシリコン膜よりも移動度が大きいという利点があり、高移動度が求められる有機EL用TFT素子用途として応用が進んでいる。
このような酸化物半導体膜の形成には、通常、各原料酸化物、例えば、酸化インジウム−酸化ガリウム−酸化亜鉛の各原料粉末を混合、成形、焼成することによって得られる焼結体を所望の形状に加工することにより得られるIGZOスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法により形成される(特許文献1)。
ここで用いられるIGZO焼結体は、層状の構造を持つホモロガス結晶構造を示し、層状構造による異方性のため焼結体強度が低く焼結時に割れが発生し易い。そのため、大型のIGZO焼結体や、形状が平板形よりも複雑な円筒形のIGZO焼結体を製造することは極めて難しく、焼成工程における歩留りを低下させていた。歩留まりの低下は、ターゲット製造コストの上昇につながるため、今後の実用化、量産化へ向けた大きな問題となっていた。
一般に、IGZO焼結体の焼成において起こる反応は、原料酸化物である酸化インジウム、酸化ガリウム、酸化亜鉛が、焼結温度の上昇に伴いZnGa、InGaZn、InGaZnOおよびInGaZnO等の複数の結晶相に変化するため、反応が複雑であり、その制御が極めて難しい。この結晶相の形成や変化による割れを低減するため、特許文献2では予め原料粉末を1000℃の温度で仮焼する方法が示されている。この方法によれば、仮焼により原料粉末を最終的な結晶相に変化させた後に微粉砕し、その後再度焼結してIGZO焼結体を作製するため、焼結における結晶相の変化が起きず応力が低減することにより、焼結工程における焼結体の割れは発生し難い。しかし、仮焼により結晶粒子が成長するため、高密度、高強度の焼結体を得にくい。また、高密度の焼結体を得ようとすると仮焼後に平均粒径を1μm以下となるまで粉砕する必要があり、プロセスが複雑となり製造コストの上昇を招くばかりでなく、粉砕時に不純物が混入しやすくなるため高品質な焼結体は得られないという問題があった。
仮焼工程を削減する方法として、特許文献3では酸化インジウム、酸化ガリウムおよび酸化亜鉛を混合粉砕してメジアン径0.6〜1μmとすることにより、仮焼工程を行わずに高密度のIGZO焼結体が得られる方法が示されている。しかし、焼結体の割れについては何ら述べられておらず、大型のターゲットが歩留りよく製造できたとの報告も一切ない。
特開2007−73312号公報 特開2000−44236号公報 特開2008−214697号公報
本発明の目的は、焼成工程において割れの発生が少なく、高い製造歩留まりを実現するIGZOスパッタリングターゲット用の高品質の焼結体を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために酸化インジウム−酸化ガリウム−酸化亜鉛複合酸化物の焼結挙動および昇温途中の段階で新たに形成される結晶相について詳細な解析を行い、割れの発生原因について考察した。その結果、酸化インジウム−酸化ガリウム−酸化亜鉛が新たに形成する結晶相の一部は、昇温過程において激しい体積膨張を伴うことを突き止めた。鋭意検討した結果、この体積膨張は酸化亜鉛の粗大粒子の存在比率に依存していることを見出し、かつ、酸化亜鉛粉末の粒度を制御したIGZO原料粉末を用いることにより、焼結体の割れを大幅に低減することができることを見出した。更に、InGaZnOで表されるホモロガス結晶構造のみを有する焼結体においては、ZnGa結晶相が極めて少なくなると同時に、10μm以上の気孔(ポア)が少なくなり、焼成工程での割れの発生を大幅に低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の態様は以下の通りである。
(1)236μm×178μmの視野の中に結晶相の最長部分が2μm以上のZnGa相の数が平均で0.3個以下であり、かつ172μm×125μmの中に最長部分が10μm以上のポアの数が平均で0.3個以下であることを特徴とするIGZO焼結体。
(2)結晶構造がInGaZnOで表されるホモロガス結晶構造のみを有することを特徴とする(1)記載のIGZO焼結体。
(3)(1)又は(2)に記載のIGZO焼結体をターゲット材として用いることを特徴とするスパッタリングターゲット。
(4)酸化インジウム、酸化ガリウムおよび酸化亜鉛粉末を含んでなるIGZO原料粉末において、酸化亜鉛粉末中の95%以上が粒径2μm以下の酸化亜鉛粒子であるIGZO原料粉末を用いることを特徴とする(1)又は(2)に記載のIGZO焼結体の製造方法。
本発明においてIGZO焼結体とはインジウム、ガリウム、亜鉛及び酸素を含んでなり、InGaZnOで表されるホモロガス結晶構造を有する焼結体を指す。本発明で言う「InGaZnOで表されるホモロガス結晶構造のみを有する焼結体」とは、X線回折パターンがInGaZnOの回折パターンと一致し、InGaZnOの回折パターンに帰属されないピークを含まないことを意味する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、酸化インジウム、酸化ガリウム、酸化亜鉛粉末の混合粉末を用い、粉末成形後の成形体の焼成温度途中での相状態について解析を行った。その結果、酸化インジウム、酸化ガリウムおよび酸化亜鉛は焼結温度に伴ってZnGa、InGaZn、InGaZnOおよびInGaZnOの様な結晶相に変化し、その一部は体積膨張を伴い、特に低温で形成したZnGaが1000℃以上の高温で酸化インジウムと反応し、InGaZnOが形成するときに激しい体積膨張を伴うということを突き止めた。
酸化インジウム、酸化ガリウムおよび酸化亜鉛粉末を含んでなるIGZO原料粉末において、2μmより大きい酸化亜鉛の粒子の数が5%より多いと、ZnGaの粗大結晶が形成され、1000℃以上でInGaZnOに相変化するとき、その粒子を中心とした領域の膨張が他の領域よりも大きくなり、焼結体に局所的な応力が発生するため割れが発生しやすくなる。また、酸化亜鉛の粗大粒子が存在すると局所的な組成の分布がおこるため、10μm以上のポアが焼結体に発生しやすく、このポアは焼結体の割れの起点となり焼結体強度が低下する原因となる。
IGZO焼結体は、X線回折ではInGaZnOで表されるホモロガス結晶構造のみを有する焼結体であっても、EPMAにより観察すると局所的に2μm以上のZnGaが存在する場合があるが、酸化亜鉛粉末中の95%以上が粒径2μm以下の酸化亜鉛粒子であることを特徴とするIGZO原料粉末を用いると、2μm以上のZnGaの結晶相が236μm×178μmの中に平均で0.3個以下のIGZO焼結体が得られる。そのような焼結体は、10μm以上のポアが172μm×125μmの中に平均で0.3個以下であり、割れが発生しにくい。ZnGa相はエネルギー分散型X線分析(EDS)を用いて元素マッピングを測定することによりInが存在しない相として確認することができる。また電子線マイクロアナライザ分析(EPMA)で確認することもできる。ポアは電子顕微鏡(SEM)で観察することができる。まず、低倍率の視野で比較的大きなZnGa相またはポアを探した後に高倍率で大きさを確認する。ZnGa相およびポアの数は、場所変えて複数回測定して、その平均値とする。測定箇所は多いほど良いが、少なくとも5か所以上測定し平均値を算出することが好ましい。
本発明は特に、InGaZnOで表されるホモロガス結晶構造のみを有するIGZO焼結体の場合には割れに対する効果が顕著である。
次に本発明の焼結体の製造方法について、工程毎に説明する。
(1)原料混合工程
原料粉末としては、酸化インジウム、酸化ガリウム、酸化亜鉛粉末を用いることができる。各原料粉末の純度は、99.8%以上が好ましく、より好ましくは99.99%以上である。純度が低いと、含有される不純物により、本発明のIGZO焼結体を用いたスパッタリングターゲットで形成された薄膜TFTに、悪影響を及ぼすことがあるからである。
酸化インジウムおよび酸化ガリウムの粉末は特に限定しないが、一般に入手できるBET値が6〜15m/gの粉末を用いれば良い。これらの粉末を粉砕または仮焼しても良い。
酸化亜鉛粉末は酸化亜鉛粉末中の95%以上が粒径2μm以下の酸化亜鉛粒子である粉末を用いる。但し、酸化亜鉛は粉砕し難い材料であり粒径の小さい粉末は高価であるため、一般に入手可能で比較的純度の高いJIS一種または二種の酸化亜鉛を粉砕して使用しても良い。酸化亜鉛を酸化インジウムおよび酸化ガリウムと共に所定重量を秤量した後、粉砕混合装置により粉砕と同時に混合しても良いが、より確実に酸化亜鉛を粉砕するために、酸化亜鉛を直接粉砕した後、酸化インジウムおよび酸化ガリウムと混合・分散処理をする方がより好ましい。各原料粉末の混合と粉砕を同時に行った場合は、酸化亜鉛を含む混合粉末に対して2μm以下の粒子の割合が95%以上となるように管理すれば良い。そうすることにより、酸化亜鉛の粒径を混合粉末においても管理することができる。粒径はレーザー回折/散乱法で測定することができる。
粉末の粉砕混合装置は、特に限定されるものではないが、アルミナ、ナイロン樹脂等のボールやビーズを用いた乾式、湿式のメディア撹拌型ミルやメディアレスの容器回転式混合、機械撹拌式混合等の混合方法が例示される。具体的には、ボールミル、ビーズミル、アトライタ、振動ミル、遊星ミル、ジェットミル、V型混合機、パドル式混合機、二軸遊星撹拌式混合機等が挙げられる。
これらの原料の配合は、InGaZnOで表されるホモロガス結晶構造を生成する組成であれば良いが、金属元素の原子比換算でIn:Ga:Zn=1:1:1の組成は特に強度が低いため、本発明の効果が大きい。
湿式法のボールミルやビーズミル、アトライタ、振動ミル、遊星ミル、ジェットミル等を用いる場合には、粉砕後のスラリーを乾燥する必要がある。この乾燥方法は特に限定されるものではないが、例えば、濾過乾燥、流動層乾燥、噴霧乾燥等が例示できる。
なお、成形処理に際しては、ポリビニルアルコール、アクリル系ポリマー、メチルセルロース、ワックス類、オレイン酸等の成形助剤を原料粉末に添加しても良い。
(2)成形工程
成形方法は、各原料粉末の混合粉末を目的とした形状に成形できる成形方法を適宜選択することが可能であり、特に限定されるものではない。プレス成形法、鋳込み成形法、射出成形法等が例示できる。
成形圧力は成形体にクラック等の発生がなく、取り扱いが可能な成形体であれば特に限定されるものではないが、成形密度は可能な限り高めた方が好ましい。そのために冷間静水圧プレス(CIP)成形等の方法を用いることも可能である。CIP圧力は充分な圧密効果を得るため1ton/cm以上が好ましく、さらに好ましくは2ton/cm以上、とりわけ好ましくは2〜3ton/cmである。
ここで初めの成形を鋳込法により行い、続いてCIPを行った場合には、CIP後の成形体中に残存する水分及びバインダー等の有機物を除去する目的で、脱バインダー処理を施してもよい。また、初めの成形をプレス法により行った場合でも、原料混合工程でバインダー等を添加したときは、同様の脱バインダー処理を行うこともできる。
(3)焼成工程
焼成方法は、原料粉末の焼結挙動に適した焼成方法を適宜選択することが可能であり、特に限定されるものではない。電気炉、ガス炉、HIP(等方熱間プレス)、HP(ホットプレス)およびマイクロ波炉等が例示できる。
被焼成物の焼成温度は特に限定されないが、高密度および高強度の焼結体を得るためには1300℃以上1500℃以下とすることが好ましい。1500℃より高い温度では焼結体の粒子が成長し、焼結体強度が低下する。また、1300℃より低いと焼結体密度が低下する。
被焼成物の保持時間は特に限定されないが、電気炉による焼成では30分以上5時間以下とすることが好ましい。更に好ましくは1時間以上、2時間以下である。30分より短いと十分に焼結が進行せず、高密度な焼結体は得られない。また5時間より長い場合、結晶粒が成長し高強度な焼結体は得られない。
被焼成物の昇温速度については特に限定されないが、焼成時間を極力短くして焼結体の結晶粒子の成長を抑制し高強度の焼結体を得るため、50℃/時間以上が好ましい。より好ましくは100℃/時間以上である。ただし、水分やバインダーを含む成形体の場合、特に大型の成形体では水分やバインダー成分が揮発する際に、急激な体積膨張を伴うと成形体が割れることがある。このため、水分やバインダー成分が揮発している温度領域、例えば100〜400℃の温度域においては昇温速度を20〜100℃/時間とすることが好ましい。好ましくは100〜600℃の温度域においては20〜100℃/時間とすることが好ましい。
降温速度は、焼成温度から1100℃までは150℃/時間以上、好ましくは200℃/時間以上である。この温度域を150℃/時間以上で降温することで焼結体の表面へ取り込まれる酸素を少なくすることができ、焼結体表面の色むらを抑制することが可能である。これ以外の温度域では、降温速度については特に限定されず、焼結炉の容量、焼結体のサイズ及び形状、割れ易さなどを考慮して適宜決定することができる。
焼成時の雰囲気としては特に制限されないが、亜鉛の昇華を抑制するために大気または酸素雰囲気とすることが好ましい。また、焼結体表面の色むらの抑制や焼結体の比抵抗を下げる目的で、焼成温度からの降温時に、窒素等の非酸化性雰囲気とすることも可能である。
(4)ターゲット化工程
得られた焼結体は、平面研削盤、円筒研削盤、旋盤、切断機、マシニングセンター等の機械加工機を用いて、板状、円状、円筒状等の所望の形状に研削加工する。さらに、必要に応じて無酸素銅やチタン等からなるバッキングプレート、バッキングチューブにインジウム半田等を用いて接合することにより、本発明の焼結体をターゲット材としたスパッタリングターゲットを得ることができる。
焼結体のサイズは、特に限定されないが、本発明による焼結体は焼結工程での割れが少ないため大型のターゲットを製造することが可能となる。
また、ターゲットの厚みは特に限定されないが、4mm以上、15mm以下が好ましい。4mmより薄い場合は、ターゲット利用率が低く経済的でない。また、15mmより厚い場合には焼結むらが発生しやすく中心部分まで均一な品質のターゲットが得られにくい。
ターゲットの表面粗さは特に限定されないが、表面粗さを小さくするためには研削時間がかかり経済的で無いため、表面粗さ(Ra)は1μm以上が好ましい。
このように、焼成条件の最適化を図ることにより、焼結体中の割れが改善され、大型ターゲットの焼成においても焼成割れ発生率を劇的に低減させることが可能となる。
酸化亜鉛粉末の粒度を制御したIGZO原料粉末を用いることにより、IGZO焼結体の焼結工程において割れを低減し、歩留まり改善による大きなコスト改善効果が期待できる。
比較例1(e)の焼結体のEDSによる元素マッピング図である。 比較例1(e)の焼結体のSEM写真である。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本実施例における各測定は以下のように行った。
(1)粉末の粒度
島津製作所製レーザー回折およびレーザー散乱法粒度分布測定装置(SALD−7100)を用いて測定した。
原料粉末は、ヘキサメタリン酸ナトリウム(0.2%)溶液に入れ、500Wのボモジナイザイーにより1分間解砕処理をした後に測定した。
(2)X線回折測定
2θ=20〜70°の範囲のX線回折パターンを測定し、InGaZnOの回折パターン((株)リガク社のX線回折解析ソフトJADE7.0のデーターベースNo:01−070−3626)と比較した。
(X線回折試験の測定条件)
走査方法 :ステップスキャン法(FT法)
X線源 :CuKα
パワー :40kV、40mA
ステップ幅:0.02°
(3)焼結体粒子の観察
日本電子製 電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM)JSM−7600Fおよびサーモフィッシャーサイエンティフィック製 エネルギー分散型X線分析装置(EDS)NSS312E+UltraDry30mmを用いて組織観察、元素マッピング測定を行った。
KEYENCE製 電子顕微鏡(SEM)VE−9800を用いてポアの観察を行った。
試料は表面を鏡面研磨したのち電解エッチングしたものを用いた。
実施例1
メジアン径が0.55μmであり、2μm以下の粒子の割合が91%の酸化亜鉛粉末を純水にてスラリー化し、そのスラリー濃度を50wt%とした状態で、0.3mmφのジルコニアビーズを用いて湿式ビーズミルにて粉砕を行った。この時スラリー粘度が1000ps以下となるように適宜分散剤を添加した。粉砕時間を調整し2μm以下の粒子の存在比率が異なる原料粉を(a)〜(d)の4種類作製した。次に、メジアン径が1.00μmであり、2μm以下の粒子の割合が86%の酸化インジウム粉末およびメジアン径が2.11μmであり、2μm以下の粒子の割合が50.2%の酸化ガリウム粉末を金属元素の原子比換算でIn:Ga:Zn=1:1:1となるように秤量し、それぞれのスラリーに投入した。純水にてスラリー濃度を50wt%とし、スラリー粘度が1000ps以下となるように適宜分散剤を追加しで、これら混合粉末を分散させるために短時間の湿式ビーズミルにて分散処理を行った。
次に、これらの粉砕・分散処理を行ったスラリーを噴霧乾燥機により造粒乾燥を行い、これら粉末を用いて、300kg/cmの圧力で金型プレスにより成形体を作製後、2ton/cmの圧力でCIP処理し、平板形の成形体を作製した。また、ウレタンゴム製の枠と蓋、及び金属製の中子(心棒)から構成された円筒形状用の成形型に、この混合粉末をタッピングしながら充填し、成形型を密閉後、2ton/cmの圧力でCIP処理して円筒形の成形体を得た。
次に、この成形体を電気炉により焼成を行った。昇温速度は600℃から1400℃まで100℃/時間で行った。また、焼成温度は1400℃、保持時間は1時間とした。また降温速度は1400℃から1100℃まで200℃/時間とした。焼成後、300mm×300mm×8mmtの平板形焼結体と、内径75mm、外形96mm、長さ280mmの円筒形焼結体を得た。
また、組成分析用、物性測定用の焼結体をそれぞれ同様の方法にて作製した。得られた焼結体の相対密度、X線回折(XRD)による同定種の測定結果を表1に示す。また、焼結体をEDS観察により低倍率の視野で比較的大きなZnGa相を探した後に高倍率で大きさを測定し、236μm×178μm中の2μm以上のZnGa相の個数を数えた。また、同様の方法でSEMの暗視野観察により172μm×125μm中の10μm以上のポアの個数を数えた。場所を変え5か所を測定し、2μm以上のZnGa相の個数およびポア個数の平均値を計算して表1に示す。
実施例2
実施例1において作製した(d)の粉末を用いて平板形の成形体を作製した。次に、この成形体をマイクロ波焼成炉により焼成を行った。昇温速度は600℃から1400℃まで300℃/時間で行った。また、焼成温度は1400℃、保持時間は1時間とした。また降温速度は1400℃から1100℃まで200℃/時間とした。焼成後、300mm×300mm×8mmtの平板形焼結体を得た。
また、実施例1と同様の方法で焼結体の物性測定、2μm以上のZnGa相の個数およびポア個数を測定し表1に示す。
比較例1
実施例1と同様の酸化亜鉛粉末を用い、同様の湿式ビーズミルにて粉砕を行い、粉砕時間を調整して2μm以下の粒子の存在比率が異なる原料粉を(e)〜(g)の3種類作製した。次に、実施例1と同様の酸化インジウムおよび酸化ガリウムを用い、同様の方法で原料粉末を作製し、成形および焼成を実施した。いずれの焼結体にも割れが観察された。
また、実施例1と同様の方法で焼結体の物性測定、2μm以上のZnGa相の個数およびポア個数を測定し表1に示す。また、一例として粉末(e)により得られた焼結体のZnGa相をEDSにより観察した結果を図1に、SEMによりポアを観察した結果を図2に示す。
Figure 0006070171

Claims (1)

  1. 酸化インジウム、酸化ガリウムおよび酸化亜鉛粉末を含んでなるIGZO原料粉末において、酸化亜鉛粉末のメジアン径が0.47μm以下であり、粒径2μm以下の酸化亜鉛粒子の割合が99.9%以上であるIGZO原料粉末を用いることを特徴とする、36μm×178μmの視野の中に結晶相の最長部分が2μm以上のZnGa相の数が平均で0.3個以下であり、かつ172μm×125μmの中に最長部分が10μm以上のポアの数が平均で0.3個以下であり、結晶構造がInGaZnOで表されるホモロガス結晶構造のみを有するIGZO焼結体の製造方法。
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