JP2010202451A - In−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】インジウム(In)、ガリウム(Ga)および亜鉛(Zn)の各酸化物の粉末を1:1:1のモル比で混合、粉砕して原料粉末とする混合工程と、原料粉末を、所定の温度で仮焼して仮焼粉末とする仮焼工程と、仮焼粉末を、所定の寸法の成形体とする成形工程と、成形体を、所定の雰囲気中、1500〜1600℃で4時間以上焼成して焼結体とする焼成工程とを有するIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法。
【選択図】なし
Description
インジウム(In)、ガリウム(Ga)および亜鉛(Zn)の各酸化物の粉末を1:1:1のモル比で混合、粉砕して原料粉末とする混合工程と、
前記原料粉末を、所定の温度で仮焼して仮焼粉体とする仮焼工程と、
前記仮焼粉体を、所定の寸法の成形体とする成形工程と、
前記成形体を、所定の雰囲気中、1500〜1600℃で4時間以上焼成して焼結体とする焼成工程と
を有することを特徴とするIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法である。
前記焼結体を、不活性ガス雰囲気中、1450〜1550℃の温度、98MPa以上の圧力でHIP処理するHIP工程を有することを特徴とする請求項1に記載のIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法である。
前記仮焼粉体、成形体または焼結体を、不活性ガス雰囲気中、還元性材料からなる型に接触させることなく、1450〜1550℃の温度、19.6MPa以上の圧力でホットプレス処理することを特徴とする請求項1に記載のIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法である。
前記混合工程において、インジウム(In)およびガリウム(Ga)の各酸化物に対して、亜鉛の酸化物(ZnO)を1〜10mol%多く混合することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法である。
前記焼成工程におけるZnOの減少率が10mol%以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法である。
1.原料粉末
前記したように、本発明の焼結体は、Cd、Cu、Na等の不純物含有量が少ないことが好ましい。このため、原料粉末には純度99.99%以上の高純度のIn2O3、Ga2O3、ZnOの粉末が好ましく用いられる。
イ.混合比率
前記したように、In2O3、Ga2O3、ZnOのうちZnOは蒸気圧が高く焼成時に蒸発し易い。このため、In:Ga:Zn:Oの比率が、より2:2:1:7に近い組成の焼結体を得るためには、混合粉体のIn2O3:Ga2O3:ZnOの比率が1:1:1よりもZnOの比率を1〜10モル%高い比率にすることが有効である。
原料粉末の混合には乾式、湿式の何れの混合方式を用いてもよい。具体的には、通常のボールミルや遊星ボールミルを用いて混合される。また、湿式の混合方式により混合を行った場合の乾燥には自然乾燥やスプレードライヤ等の乾燥方法が好ましく用いられる。
焼結体の作製は、仮焼と焼成の2段階で行う。
イ.仮焼
前記したように、焼成前に混合粉体を仮焼して予めZnGa2O4を生成させ、フリーのZnOを含まないようにしておくことによって不均一相の生成を抑制し、In2Ga2ZnO7の単相の生成を促進することができる。また、焼結体の密度を高め、焼結体にクラックが発生することを抑制することができる。
a.焼成時間、焼成温度
焼成は焼成温度1500〜1600℃、焼成時間4時間以上の条件で行う。In2Ga2ZnO7の生成には1500℃以上の高温焼成が必要である。焼成温度が1500℃未満の場合は95%以上の密度比を有する焼結体が得られない。一方1600℃を超える場合は、ZnOの蒸発により、焼結体の組成が変動したり、焼結体中に気泡が発生したり、焼結体の変形が大きくなったりする恐れがある。また、焼成時間が4時間未満では、InGaZnO4等、In2Ga2ZnO7以外の結晶の含有率が高くなる恐れがある。12〜24時間焼成するとInGaZnO4等の含有率を5wt%以下にできるため好ましい。
焼成に際して、蒸気圧の高いZnOの蒸発を抑制しつつ高密度の焼結体を得る必要があるため、大気中焼成や不活性ガス焼成の他に、高圧のArガスを用いるHIP処理やArガス雰囲気中におけるホットプレス処理が好ましく用いられる。
(実施例1)
本実施例は、材料としてIn2O3粉末、Ga2O3粉末、ZnO粉末の混合粉末を用い、前記混合粉末を仮焼後、仮焼粉体を一軸加圧成形により成形した後、焼成してターゲットとなる焼結体を作製した例である。
In2O3(純度99.99%、平均粒子径約3μm)、Ga2O3(純度99.99%、平均粒子径約2μm)、ZnO(純度99.99%、平均粒子径約1μm)の各粉末を、モル比で1:1:1.05の比率となるように秤量し、ボールミル装置を用いて10時間粉砕混合した。なお、分散媒にはエチルアルコールを用いた。粉砕混合後自然乾燥した。
次に、得られた混合粉末を解砕、粉砕してアルミナ製ルツボに入れ、大気雰囲気中、1000℃で5時間仮焼を行ない、仮焼粉体を得た。得られた仮焼粉体のX線回折測定を行なった結果、ZnGa2O4とIn2O3の回折ピークが認められ、フリーのZnOのピークは認められなかった。
次に、得られた仮焼粉体を一軸加圧成形により加圧成形し、直径100mm、厚さ約9mmの円板状の成形体を得た。得られた成形体を大気雰囲気中、1525℃で18時間焼成して焼結体を得た。得られた焼結体は、直径が80mmに収縮(厚さは約7mm)しており、外観は黒灰色であった。また、焼結体には大きな変形やクラックの発生が認められなかった。このように大きな変形が認められなかったのは、1525℃、即ち1600℃以下の温度で焼成したためであり、クラックの発生が認められなかったのは、仮焼を行ったためである。
次に、得られた焼結体を直径76.2mm、厚さ5.0mmに加工してターゲットとした。
ターゲットとなる焼結体のX線回折測定、ICP発光分析による組成分析、SEMによる破断面の観察、密度および導電性(体積抵抗)の測定を行なった。
X線回折測定により測定された焼結体のX線回折図を図1に示す。図1には2θが30.3°、35°、57°付近等にIn2Ga2ZnO7に固有の回折ピークが認められ、焼結体には主としてIn2Ga2ZnO7が生成していることが確認された。また、ほぼ単相であることが分かった。このように、ほぼIn2Ga2ZnO7の単相からなる焼結体が得られたのは、主として1525℃、即ち1500℃以上の温度で、18時間、即ち4時間以上加熱して焼成したことと、焼成の前に仮焼を行ったためである。
ICP法による組成分析の結果、焼結体に含まれるIn、Ga、Znのwt%は、それぞれIn:41.9%、Ga:25.6%、Zn:11.7%であった。この結果をIn2O3、Ga2O3、ZnOのモル比に換算するとIn2O3:Ga2O3:ZnO=1.02:1.02:1.00となり、モル比が1:1:1からのズレが0.02、すなわち2%であることが確認できた。
焼結体の破断面の観察により得られたSEM写真を図2に示す。図2より、焼結体の結晶粒径はおよそ20〜30μmであり、気孔については0.5〜3μmの気孔がわずかに散見されるのみであることが分かった。
アルキメデス法(水中法)により得られた焼結体の密度を測定した。また、焼結体のX線回折データの格子定数から計算される理論密度は6.494g/cm3であり、測定された密度の、理論密度に対する比(密度比)を算定した。また、抵抗率計(三菱油化社製、ロレスタ)を使用して四探針法により焼結体の体積抵抗を測定した。密度と体積抵抗の測定結果および密度比の算定結果を後記する実施例2、実施例3の結果と併せて表1に示す。
本実施例は、実施例1と同様にして作製した仮焼粉体をCIP(冷間静水圧)成形により成形した後、焼成を行なって焼結体を作製し、さらにHIP処理を行なってターゲットとなる焼結体を作製した例である。
実施例1と同様にして、仮焼粉体を作製した。
得られた仮焼粉体を解砕、粉砕後、CIP成形により加圧成形し、直径約95mm、厚さ約9mmの円板状の成形体を得た。得られた成形体を大気雰囲気中、1520℃で12時間焼成して焼結体を得た。得られた焼結体は、直径が80mmに収縮(厚さは約7.5mm)しており、外観は黒灰色であった。実施例1と同様にして焼結体の密度を測定した結果、吸水は認められず、密度は6.2g/cm3であり、理論密度6.494g/cm3に対する密度比は95%であった。また、得られた焼結体のX線回折測定を行なった。
測定により得られたX線回折図を図3に示す。図3には主としてIn2Ga2ZnO7に固有の回折ピークが認められ、また、2θが20.5°付近にInGaZnO4に固有の回折ピークがわずかに認められた。このようにX線回折測定結果から焼結体には主としてIn2Ga2ZnO7が生成していることが確認された。また、約数mol%程度のInGaZnO4が混在していることが分かった。また、ICP発光分析による組成分析の結果、In2O3、Ga2O3、ZnOのモル比の1:1:1からのズレが5%以内であることが確認された。
得られた焼結体をArガス雰囲気中、1500℃、152MPa、1時間でHIP処理を行なった後、直径76.2mm、厚さ5mmに加工してターゲットとした。
実施例1と同様にして作製した焼結体の密度を測定し、密度比を算定した。また、体積抵抗を測定した。密度と体積抵抗の測定結果および密度比の算定結果を実施例1および後記する実施例3の結果と併せて表1に示す。
本実施例は、実施例1と同様にして作製した仮焼粉体をArガス雰囲気中でホットプレス処理を行なった後、Arガス雰囲気中でアニール処理してターゲットとなる焼結体を作製した例である。
実施例1と同様にして、仮焼粉体を作製した。
得られた仮焼粉体を実施例1で用いた一軸加圧成形により直径約60mm、厚さ15mmの円板状に成形した後、得られた成形体をアルミナ系酸化物セラミックス製の型を用いてArガス雰囲気中、1500℃、24.5MPaで1時間ホットプレス処理して焼結体を得た。焼結体の厚さは成形体に対して約50%収縮した。ホットプレス処理後の焼結体の密度比は98%であった。さらに、得られた焼結体をArガス雰囲気中、1550℃で8時間アニール処理した。
アニール処理をした焼結体を直径50.8mm、厚さ6mmに加工してターゲットとした。
実施例1と同様にして作製したターゲットとなる焼結体のX線回折測定、ICP発光分析による組成分析を行った。また、密度を測定し、密度比を算定した。さらに、体積抵抗を測定した。図4にX線回折図を示す。図4より、焼結体には主としてIn2Ga2ZnO7が生成していることが確認された。また、2θが20.5°付近にInGaZnO4に固有の回折ピークがわずかに認められ、InGaZnO4も存在していることが確認された。また、ICP発光分析による組成分析の結果、In2O3、Ga2O3、ZnOのモル比の1:1:1からのズレが5%以内であることが確認された。密度と体積抵抗の測定結果および密度比の算定結果を実施例1、実施例2の結果と併せて表1に示す。
Claims (5)
- インジウム(In)、ガリウム(Ga)および亜鉛(Zn)の各酸化物の粉末を1:1:1のモル比で混合、粉砕して原料粉末とする混合工程と、
前記原料粉末を、所定の温度で仮焼して仮焼粉末とする仮焼工程と、
前記仮焼粉末を、所定の寸法の成形体とする成形工程と、
前記成形体を、所定の雰囲気中、1500〜1600℃で4時間以上焼成して焼結体とする焼成工程と
を有することを特徴とするIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法。 - 前記焼結体を、不活性ガス雰囲気中、1450〜1550℃の温度、98MPa以上の圧力でHIP処理するHIP工程を有することを特徴とする請求項1に記載のIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法。
- 前記仮焼粉末、成形体または焼結体を、不活性ガス雰囲気中、還元性材料からなる型に接触させることなく、1450〜1550℃の温度、19.6MPa以上の圧力でホットプレス処理することを特徴とする請求項1に記載のIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法。
- 前記混合工程において、インジウム(In)およびガリウム(Ga)の各酸化物に対して、亜鉛の酸化物(ZnO)を1〜10mol%多く混合することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法。
- 前記焼成工程におけるZnOの減少率が10mol%以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法。
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