JP2010202451A - In−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法 - Google Patents

In−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】IGZO焼結体として、InGaZnOで表される化合物の結晶が主体である複合酸化物焼結体を得ることができるIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法を提供する。
【解決手段】インジウム(In)、ガリウム(Ga)および亜鉛(Zn)の各酸化物の粉末を1:1:1のモル比で混合、粉砕して原料粉末とする混合工程と、原料粉末を、所定の温度で仮焼して仮焼粉末とする仮焼工程と、仮焼粉末を、所定の寸法の成形体とする成形工程と、成形体を、所定の雰囲気中、1500〜1600℃で4時間以上焼成して焼結体とする焼成工程とを有するIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、TFTや透明電極等に好適な透明薄膜形成用のIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法に関し、詳しくは、InGaZnOで表される化合物の結晶が主体であるIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法に関する。
液晶表示装置や、有機EL等の薄膜エレクトロルミネッセンス表示装置等において、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)のチャネル層や透明電極用の透明薄膜として、従来、主として、アモルファスシリコン膜が使用されてきた。
しかし、近年、この透明薄膜として、In−Ga−Zn系複合酸化物(IGZO)を主成分とするアモルファス半導体膜が、前記アモルファスシリコン膜よりもキャリヤの移動度が大きいという利点から注目されている(例えば、特許文献1、2)。
このIGZOを主成分とするアモルファス半導体膜として、従来は、主として、InGaZnOを主体とするIGZO焼結体から作製されたスパッタリングターゲット等の透明薄膜形成用材料を用いて、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、スパッタリング法等様々の方法により、InGaZnOを主組成とするアモルファス半導体膜が形成されていた。
特開2008−214697号公報 特開2008−163441号公報
しかし、近年、キャリヤの移動度や薄膜トランジスタ等の作製工程における耐エッチング性等がより優れたアモルファス半導体膜として、よりZnO含有率の小さなIGZOアモルファス半導体膜が求められており、特に、このような優れたアモルファス半導体膜を形成するためのスパッタリングターゲット等の透明薄膜形成用材料(IGZO焼結体)が求められている。
このようなIGZO焼結体として、InGaZnOで表される複合酸化物焼結体を用いてInGaZnOを主組成とするアモルファス半導体膜を形成することにより、キャリヤの移動度や薄膜トランジスタ等の作製工程における耐エッチング性等が従来以上に優れたIGZOアモルファス半導体膜を形成することができることが最近見出されている。
このような複合酸化物焼結体は、一般に、モル比が1:1:1のIn、Ga、ZnOを出発原料として作製されるが、反応が不充分な混合物や化合物状態であると、膜の形成時、蒸気圧が高いZnOのみが先に蒸発し易いため、膜の組成にズレが生じ、安定して均一なInGaZnOを主組成とするアモルファス半導体膜を得ることが困難になる。このため、本発明における複合酸化物焼結体のInGaZnO化合物は、できるだけ単一な結晶相である必要があるが、モル比が1:1:1のIn、Ga、ZnOを出発原料としても、InGaZnOで表される化合物の結晶が主体の単一な結晶相の複合酸化物焼結体を容易に得ることはできなかった。
また、最も一般的なアモルファス半導体膜を得る方法であるDCスパッタリング用ターゲットの製造においては、できるだけ緻密で比抵抗の小さいターゲット材質が要求されるが、密度比で60〜80%程度のものしか得られておらず、また比抵抗の小さなDCスパッタリングに適したターゲットも得られていなかった。
そこで、本発明は、優れたIGZOアモルファス半導体膜を形成することができる透明薄膜形成用材料、即ち、IGZO焼結体として、InGaZnOで表される化合物の結晶が主体であり、緻密で且つ比抵抗の小さい複合酸化物焼結体を得ることができるIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、従来の技術において、モル比1:1:1付近のIn、Ga、ZnOを出発物質としながらも、何故、InGaZnOで表される化合物の結晶が主体であり、緻密で且つ比抵抗の小さい複合酸化物焼結体を得ることができなかったのか、その理由につき鋭意検討した。その結果、以下に示す各請求項の発明により上記の課題を解決することができることを見出し、本発明に至った。
請求項1に記載の発明は、
インジウム(In)、ガリウム(Ga)および亜鉛(Zn)の各酸化物の粉末を1:1:1のモル比で混合、粉砕して原料粉末とする混合工程と、
前記原料粉末を、所定の温度で仮焼して仮焼粉体とする仮焼工程と、
前記仮焼粉体を、所定の寸法の成形体とする成形工程と、
前記成形体を、所定の雰囲気中、1500〜1600℃で4時間以上焼成して焼結体とする焼成工程と
を有することを特徴とするIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法である。
本発明者は、従来のように、原料粉末をそのまま混合成形して焼成するのではなく、原料粉末を一旦仮焼し、さらに、従来焼成温度の上限と考えられていた1450℃を超える1500〜1600℃という高温で焼成することにより、InGaZnOで表される化合物の結晶が主体であり、緻密で且つ比抵抗の小さい複合酸化物焼結体が得られることを見出した。
仮焼を省略した場合には、結晶の不均一相が生成されやすく、InGaZnOで表される化合物の結晶が主体である複合酸化物焼結体を得ることが難しい。また、95%以上の密度比(焼結体の密度の理論密度に対する比)を有する焼結体を得ることができず、焼結体にクラック等が生じる恐れがある。また、比抵抗も大きな材質しか得られない。
仮焼を行うことにより、ZnGaが生成され、成形工程の前に混合粉体から、高温焼成時に蒸発しやすく組成変動を起こしやすいフリーのZnOを除去して、結晶の不均一相が生成されることを抑制することができる。
焼成温度が1500℃未満であると、InGaZnO結晶が主体である複合酸化物焼結体、即ち、InGaZnO単相構造に近い複合酸化物焼結体を得ることができず、InGaZnO等、InGaZnO以外の結晶の含有率が高くなる恐れがあり、95%以上の密度比を有する焼結体を得ることができない。また、比抵抗も10−2Ωcm以上となる。
一方、焼成温度が1500℃以上であると、InGaZnO結晶が生成される。しかし、焼成温度が1600℃を超えると、ZnOの蒸発、減少率が大きくなり過ぎ、組成の変動、気泡の発生、焼結体の変形の増大等を招く恐れがある。焼成温度が1500〜1600℃であれば、ZnOの蒸発、減少率を1〜10mol%程度に抑制することができ、InGaZnO単相構造に近い高密度(95%以上の密度比)の複合酸化物焼結体を得ることができる。
焼成時間は、4時間以上であることが好ましい。4時間未満では、InGaZnO結晶が充分に生成されず、InGaZnO等、InGaZnO以外の結晶の含有率が高くなり、不均一性の高い焼結体となる。12〜24時間であると、InGaZnO以外の結晶の含有率を5wt%以下とすることができるためより好ましい。なお、焼成は、大気雰囲気又は不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。酸素気流中等、過剰な酸素雰囲気中で焼成すると、DCスパッタリングに適した10−2Ωcm以下の比抵抗が得られない場合がある。
請求項2に記載の発明は、
前記焼結体を、不活性ガス雰囲気中、1450〜1550℃の温度、98MPa以上の圧力でHIP処理するHIP工程を有することを特徴とする請求項1に記載のIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法である。
高温、高圧のArガス等の不活性ガス雰囲気中でHIP処理(熱間静水圧処理)を施すことにより、ZnOの蒸発を抑制しつつ、高密度のInGaZnO結晶が主体である複合酸化物焼結体を得ることができる。
請求項3に記載の発明は、
前記仮焼粉体、成形体または焼結体を、不活性ガス雰囲気中、還元性材料からなる型に接触させることなく、1450〜1550℃の温度、19.6MPa以上の圧力でホットプレス処理することを特徴とする請求項1に記載のIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法である。
仮焼粉体、成形体あるいは焼結体を、高温、高圧のArガス等の不活性ガス雰囲気中で、カーボン等の還元性材料からなる型に接触させることなく、ホットプレスを行うことにより、ZnOの蒸発を抑制しつつ、高密度のInGaZnO結晶が主体である複合酸化物焼結体を得ることができる。
請求項4に記載の発明は、
前記混合工程において、インジウム(In)およびガリウム(Ga)の各酸化物に対して、亜鉛の酸化物(ZnO)を1〜10mol%多く混合することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法である。
前記したように、高温焼成においてはZnOが蒸発し易い。ZnOを1〜10mol%多く混合しておくことにより、InGaZnO化合物の結晶を形成するために必要なZnOを確実に確保することができるため、In、Ga、ZnO換算したときのモル比がより1:1:1に近い焼結体を得ることができる。
請求項5に記載の発明は、
前記焼成工程におけるZnOの減少率が10mol%以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法である。
焼成工程におけるZnOの減少率(蒸発率)を10%以下とすることにより、InGaZnO単相構造に近い高密度の且つ、低比抵抗の複合酸化物焼結体を安定して得ることができる。
本発明によれば、IGZO焼結体として、モル比が1:1:1のIn、Ga及びZnOを出発原料として、InGaZnOで表される化合物の結晶が主体である複合酸化物焼結体を得るIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法を容易に提供することができる。
実施例1のIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体のX線回折図である。 実施例1のIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の破断面のSEM写真である。 実施例2のIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体のX線回折図である。 実施例3のIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体のX線回折図である。
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
はじめに本発明に用いる原料粉末とその混合方法および焼成について概要を説明する。
1.原料粉末
前記したように、本発明の焼結体は、Cd、Cu、Na等の不純物含有量が少ないことが好ましい。このため、原料粉末には純度99.99%以上の高純度のIn、Ga、ZnOの粉末が好ましく用いられる。
2.原料粉末の混合
イ.混合比率
前記したように、In、Ga、ZnOのうちZnOは蒸気圧が高く焼成時に蒸発し易い。このため、In:Ga:Zn:Oの比率が、より2:2:1:7に近い組成の焼結体を得るためには、混合粉体のIn:Ga:ZnOの比率が1:1:1よりもZnOの比率を1〜10モル%高い比率にすることが有効である。
ロ.混合方法
原料粉末の混合には乾式、湿式の何れの混合方式を用いてもよい。具体的には、通常のボールミルや遊星ボールミルを用いて混合される。また、湿式の混合方式により混合を行った場合の乾燥には自然乾燥やスプレードライヤ等の乾燥方法が好ましく用いられる。
3.焼結体の作製
焼結体の作製は、仮焼と焼成の2段階で行う。
イ.仮焼
前記したように、焼成前に混合粉体を仮焼して予めZnGaを生成させ、フリーのZnOを含まないようにしておくことによって不均一相の生成を抑制し、InGaZnOの単相の生成を促進することができる。また、焼結体の密度を高め、焼結体にクラックが発生することを抑制することができる。
ロ.焼成
a.焼成時間、焼成温度
焼成は焼成温度1500〜1600℃、焼成時間4時間以上の条件で行う。InGaZnOの生成には1500℃以上の高温焼成が必要である。焼成温度が1500℃未満の場合は95%以上の密度比を有する焼結体が得られない。一方1600℃を超える場合は、ZnOの蒸発により、焼結体の組成が変動したり、焼結体中に気泡が発生したり、焼結体の変形が大きくなったりする恐れがある。また、焼成時間が4時間未満では、InGaZnO等、InGaZnO以外の結晶の含有率が高くなる恐れがある。12〜24時間焼成するとInGaZnO等の含有率を5wt%以下にできるため好ましい。
b.焼成の方式
焼成に際して、蒸気圧の高いZnOの蒸発を抑制しつつ高密度の焼結体を得る必要があるため、大気中焼成や不活性ガス焼成の他に、高圧のArガスを用いるHIP処理やArガス雰囲気中におけるホットプレス処理が好ましく用いられる。
次に実施例により、本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
本実施例は、材料としてIn粉末、Ga粉末、ZnO粉末の混合粉末を用い、前記混合粉末を仮焼後、仮焼粉体を一軸加圧成形により成形した後、焼成してターゲットとなる焼結体を作製した例である。
1.材料粉末の粉砕混合
In(純度99.99%、平均粒子径約3μm)、Ga(純度99.99%、平均粒子径約2μm)、ZnO(純度99.99%、平均粒子径約1μm)の各粉末を、モル比で1:1:1.05の比率となるように秤量し、ボールミル装置を用いて10時間粉砕混合した。なお、分散媒にはエチルアルコールを用いた。粉砕混合後自然乾燥した。
2.仮焼
次に、得られた混合粉末を解砕、粉砕してアルミナ製ルツボに入れ、大気雰囲気中、1000℃で5時間仮焼を行ない、仮焼粉体を得た。得られた仮焼粉体のX線回折測定を行なった結果、ZnGaとInの回折ピークが認められ、フリーのZnOのピークは認められなかった。
3.成形および焼成
次に、得られた仮焼粉体を一軸加圧成形により加圧成形し、直径100mm、厚さ約9mmの円板状の成形体を得た。得られた成形体を大気雰囲気中、1525℃で18時間焼成して焼結体を得た。得られた焼結体は、直径が80mmに収縮(厚さは約7mm)しており、外観は黒灰色であった。また、焼結体には大きな変形やクラックの発生が認められなかった。このように大きな変形が認められなかったのは、1525℃、即ち1600℃以下の温度で焼成したためであり、クラックの発生が認められなかったのは、仮焼を行ったためである。
4.ターゲットの作製
次に、得られた焼結体を直径76.2mm、厚さ5.0mmに加工してターゲットとした。
5.特性評価
ターゲットとなる焼結体のX線回折測定、ICP発光分析による組成分析、SEMによる破断面の観察、密度および導電性(体積抵抗)の測定を行なった。
(1)X線回折測定
X線回折測定により測定された焼結体のX線回折図を図1に示す。図1には2θが30.3°、35°、57°付近等にInGaZnOに固有の回折ピークが認められ、焼結体には主としてInGaZnOが生成していることが確認された。また、ほぼ単相であることが分かった。このように、ほぼInGaZnOの単相からなる焼結体が得られたのは、主として1525℃、即ち1500℃以上の温度で、18時間、即ち4時間以上加熱して焼成したことと、焼成の前に仮焼を行ったためである。
(2)組成分析
ICP法による組成分析の結果、焼結体に含まれるIn、Ga、Znのwt%は、それぞれIn:41.9%、Ga:25.6%、Zn:11.7%であった。この結果をIn、Ga、ZnOのモル比に換算するとIn:Ga:ZnO=1.02:1.02:1.00となり、モル比が1:1:1からのズレが0.02、すなわち2%であることが確認できた。
(3)SEMによる破断面の観察
焼結体の破断面の観察により得られたSEM写真を図2に示す。図2より、焼結体の結晶粒径はおよそ20〜30μmであり、気孔については0.5〜3μmの気孔がわずかに散見されるのみであることが分かった。
(4)密度および体積抵抗の測定
アルキメデス法(水中法)により得られた焼結体の密度を測定した。また、焼結体のX線回折データの格子定数から計算される理論密度は6.494g/cmであり、測定された密度の、理論密度に対する比(密度比)を算定した。また、抵抗率計(三菱油化社製、ロレスタ)を使用して四探針法により焼結体の体積抵抗を測定した。密度と体積抵抗の測定結果および密度比の算定結果を後記する実施例2、実施例3の結果と併せて表1に示す。
(実施例2)
本実施例は、実施例1と同様にして作製した仮焼粉体をCIP(冷間静水圧)成形により成形した後、焼成を行なって焼結体を作製し、さらにHIP処理を行なってターゲットとなる焼結体を作製した例である。
1.仮焼粉体の作製
実施例1と同様にして、仮焼粉体を作製した。
2.成形および焼成
得られた仮焼粉体を解砕、粉砕後、CIP成形により加圧成形し、直径約95mm、厚さ約9mmの円板状の成形体を得た。得られた成形体を大気雰囲気中、1520℃で12時間焼成して焼結体を得た。得られた焼結体は、直径が80mmに収縮(厚さは約7.5mm)しており、外観は黒灰色であった。実施例1と同様にして焼結体の密度を測定した結果、吸水は認められず、密度は6.2g/cmであり、理論密度6.494g/cmに対する密度比は95%であった。また、得られた焼結体のX線回折測定を行なった。
3.X線回折測定と組成分析
測定により得られたX線回折図を図3に示す。図3には主としてInGaZnOに固有の回折ピークが認められ、また、2θが20.5°付近にInGaZnOに固有の回折ピークがわずかに認められた。このようにX線回折測定結果から焼結体には主としてInGaZnOが生成していることが確認された。また、約数mol%程度のInGaZnOが混在していることが分かった。また、ICP発光分析による組成分析の結果、In、Ga、ZnOのモル比の1:1:1からのズレが5%以内であることが確認された。
4.ターゲットの作製
得られた焼結体をArガス雰囲気中、1500℃、152MPa、1時間でHIP処理を行なった後、直径76.2mm、厚さ5mmに加工してターゲットとした。
5.密度および体積抵抗の測定
実施例1と同様にして作製した焼結体の密度を測定し、密度比を算定した。また、体積抵抗を測定した。密度と体積抵抗の測定結果および密度比の算定結果を実施例1および後記する実施例3の結果と併せて表1に示す。
(実施例3)
本実施例は、実施例1と同様にして作製した仮焼粉体をArガス雰囲気中でホットプレス処理を行なった後、Arガス雰囲気中でアニール処理してターゲットとなる焼結体を作製した例である。
1.仮焼粉体の作製
実施例1と同様にして、仮焼粉体を作製した。
2.成形および焼成
得られた仮焼粉体を実施例1で用いた一軸加圧成形により直径約60mm、厚さ15mmの円板状に成形した後、得られた成形体をアルミナ系酸化物セラミックス製の型を用いてArガス雰囲気中、1500℃、24.5MPaで1時間ホットプレス処理して焼結体を得た。焼結体の厚さは成形体に対して約50%収縮した。ホットプレス処理後の焼結体の密度比は98%であった。さらに、得られた焼結体をArガス雰囲気中、1550℃で8時間アニール処理した。
3.ターゲットの作製
アニール処理をした焼結体を直径50.8mm、厚さ6mmに加工してターゲットとした。
4.X線回折、密度および体積抵抗の測定
実施例1と同様にして作製したターゲットとなる焼結体のX線回折測定、ICP発光分析による組成分析を行った。また、密度を測定し、密度比を算定した。さらに、体積抵抗を測定した。図4にX線回折図を示す。図4より、焼結体には主としてInGaZnOが生成していることが確認された。また、2θが20.5°付近にInGaZnOに固有の回折ピークがわずかに認められ、InGaZnOも存在していることが確認された。また、ICP発光分析による組成分析の結果、In、Ga、ZnOのモル比の1:1:1からのズレが5%以内であることが確認された。密度と体積抵抗の測定結果および密度比の算定結果を実施例1、実施例2の結果と併せて表1に示す。
表1より、実施例1〜3において作製された焼結体は、密度比が99%以上であることが分かる。特に、HIP処理を用いて焼成した実施例2の場合には、100%という高い密度比が得られている。また、体積抵抗が10−2Ωcmを下回っていることが分かる。このように、95%以上の高い密度比が得られたのは、仮焼を行ったことによる効果が大きい。
なお、実施例1〜3において作製された焼結体について、ICP発光分析によりCd、Cu、Fe、K、Ni、Pbの含有量を調査した結果、何れのターゲットについてもこれらの個々の不純物元素の含有量は10ppm以下であり、またこれらの不純物元素の総含有量は100ppm以下であることが確認された。また、同様にICP発光分析によりNaの含有量を調査した結果、2〜20ppmであることが確認された。
以上詳述したように、実施例1〜3において作製された焼結体は、InGaZnOを主体とする焼結体であるため、これらの焼結体をターゲットに用いてInGaZnOを主体とする膜をスパッタ等で成膜した時の膜組成のズレが起きにくく、キャリアの移動度が大きく、安定したアモルファス半導体膜を作製することができる。
また、密度比が95%以上(気孔率が5%以下)と高密度な焼結体であるため、ターゲットとして欠陥が少なく、放電などの安定したスパッタ等が行われ、パーティクルなどの欠陥が少なく均一性の高いアモルファス半導体膜を作製することができる。
また、体積抵抗が10−2Ωcmを下回っているため、特にDCスパッターリング用のターゲットとして好適である。
さらに、不純物量が少ないため、本実施例の焼結体をターゲットに用いて成膜することにより、しきい値電圧の変動が抑制され、TFTや有機EL用として安定した作動状態を有するアモルファス半導体膜を作製することができる。

Claims (5)

  1. インジウム(In)、ガリウム(Ga)および亜鉛(Zn)の各酸化物の粉末を1:1:1のモル比で混合、粉砕して原料粉末とする混合工程と、
    前記原料粉末を、所定の温度で仮焼して仮焼粉末とする仮焼工程と、
    前記仮焼粉末を、所定の寸法の成形体とする成形工程と、
    前記成形体を、所定の雰囲気中、1500〜1600℃で4時間以上焼成して焼結体とする焼成工程と
    を有することを特徴とするIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法。
  2. 前記焼結体を、不活性ガス雰囲気中、1450〜1550℃の温度、98MPa以上の圧力でHIP処理するHIP工程を有することを特徴とする請求項1に記載のIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法。
  3. 前記仮焼粉末、成形体または焼結体を、不活性ガス雰囲気中、還元性材料からなる型に接触させることなく、1450〜1550℃の温度、19.6MPa以上の圧力でホットプレス処理することを特徴とする請求項1に記載のIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法。
  4. 前記混合工程において、インジウム(In)およびガリウム(Ga)の各酸化物に対して、亜鉛の酸化物(ZnO)を1〜10mol%多く混合することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法。
  5. 前記焼成工程におけるZnOの減少率が10mol%以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のIn−Ga−Zn系複合酸化物焼結体の製造方法。
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