JP5966350B2 - 転がり軸受 - Google Patents

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Description

本発明は、転がり軸受に関する。
一般に、転がり軸受では、荷重が負荷されて長時間使用されることによって金属疲労が生じ、軌道面表面に剥離が生じる場合がある。剥離が生じるメカニズムとしては、従来から内部起点型剥離と表面起点型剥離がよく知られている。内部起点型剥離は、材料内部の非金属介在物周辺に応力集中が生じ、それを起点として疲労亀裂が生じて剥離に至る現象である。一方、表面起点型剥離は、潤滑油中に異物が混入することにより軌道面に生じた圧痕の圧痕ふちで応力集中が生じ、それを起点として疲労亀裂が生じて剥離に至る現象である。
また、一部の用途においては、潤滑油の分解によって水素が発生し、その水素が鋼中に侵入し、金属組織の変化を引き起こす場合がある。金属組織に変化が生じると組織変化部と正常部の界面から疲労亀裂が生じて剥離を生じさせるため、転動疲労寿命が著しく低下する。この金属組織の変化は、軸受鋼の基地組織であるマルテンサイトが、水素によって微細なフェライト粒に変化する現象である。エッチングを行って金属組織を観察すると、組織変化部は白く見えることから、白色組織などと呼ばれている。以下、このタイプの剥離形態を白色組織剥離と呼ぶ。この剥離形態は、前述の内部起点型剥離及び表面起点型剥離とは異なるメカニズムで生じるため、転動疲労寿命を向上させる対策も内部起点型剥離及び表面起点型剥離とは全く異なる。
特許文献1及び2には、白色組織剥離の対策として、Crを多量に添加した鋼を用いて転がり軸受を作製することにより、金属組織の変化の発生を遅延させる方法が記載されている。
特開2005−147352号公報 特許第4273609号公報
しかしながら、軸受鋼にCrを多量に添加すると鋼材の製造工程において割れやすくなるため、生産性が低下する恐れがある。また、軸受の製造工程においても、Crが多量に添加された軸受鋼は必要な硬さを得るために焼入れ温度を高くしなければならず、生産性が低下する恐れがある。
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、生産性が良好であることに加えて、白色組織剥離が生じにくく長寿命な転がり軸受を提供することを目的とする。
以上の課題を解決するため、本発明の一態様に係る転がり軸受は、内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備える転がり軸受において、前記内輪,前記外輪,及び前記転動体のうち少なくとも1つが、下記の4つの条件を満たすことを特徴とする。
条件1:濃度0.90質量%以上1.10質量%以下の炭素、濃度0.45質量%以上0.70質量%以下のケイ素、濃度0.30質量%以上1.20質量%以下のマンガン、濃度1.80質量%以上2.30質量%以下のクロム、濃度0.14質量%以上0.36質量%以下のモリブデン、濃度0.20質量%以下のニッケル、濃度0.20質量%以下の銅、濃度0.010質量%以下のイオウ、濃度0.020質量%以下のリン、濃度10質量ppm以下の酸素を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物である鋼で構成されている。
条件2:前記鋼に含まれるケイ素、マンガン、クロム及びモリブデンの各濃度(質量%)を、それぞれ[Si]、[Mn]、[Cr]、[Mo]とした時、0.5×[Si]+0.2×[Mn]+0.2×[Cr]+0.7×[Mo]≧1.00とする。
条件3:前記鋼に含まれる介在物平均径が10μm以上である酸化物系非金属介在物の個数を、320mm2 あたり10個以下とする。
条件4:焼入れ及び焼戻しが施されており、焼入れ焼戻し後の鋼の残留オーステナイト量が11体積%以上20体積%以下であるとともに、硬さがHv697以上800以下である。
このような転がり軸受においては、前記内輪,前記外輪,及び前記転動体のうち少なくとも1つが、下記の条件5をさらに満たすことが好ましい。
条件5:軌道面又は転動面の表面から前記転動体の直径の3%の深さ位置までの表層部分に存在する介在物平均径10μm以上の酸化物系非金属介在物の個数が、面積320mm2 の断面あたり5個以下であり、且つ、前記表層部分に存在する炭化物の最大長さが10μm以下である。
また、前記内輪の軌道面、前記外輪の軌道面、及び前記転動体の転動面のうち少なくとも1つの表面粗さが、粗さ曲線の最大山高さRpで1.0μm以下であることがより好ましい。
さらに、前記転動体の直径を30mm以上としてもよい。
さらに、上記転がり軸受は、ベルトと、前記ベルトが巻回されたプーリーとを介して回転が伝達されるシャフトの支持に用いられることが好ましい。
さらに、上記転がり軸受は、自動車の電装補機に用いられることが好ましい。
さらに、上記転がり軸受は、電気モータに用いられることが好ましい。
さらに、上記転がり軸受は、変速機に用いられることが好ましい。
さらに、上記転がり軸受は、風力発電設備に用いられることが好ましい。
さらに、上記転がり軸受は、建設機械に用いられることが好ましい。
本発明は、クロムだけでなく、ケイ素、マンガン、モリブデン等を最適な量添加し、且つ、鋼に含まれる酸化物系非金属介在物の大きさ及び個数、鋼の硬さ、並びに、基地組織の残留オーステナイト量を規定することによって、生産性が良好であることに加えて、白色組織剥離が生じにくく長寿命な転がり軸受を提供することができる。
本発明の一実施形態である深溝玉軸受の構造を示す部分縦断面図である。 鋼材に含まれるSi量と、切削バイトの逃げ面摩耗量が0.2mmになるまでの時間の関係を示した図である。 鋼材に含まれるCr量と焼入れ焼戻し後の硬さの関係を示した図である。 鋼材に含まれるMn量と、焼入れ焼戻し後の残留オーステナイト量の関係を示した図である。 鋼材に含まれるMo量と、円周方向のRaの関係を示した図である。 0.5×[Si]+0.2×[Mn]+0.2×[Cr]+0.7×[Mo]の値と、転動疲労寿命比の関係を示した図である。 図6の縦軸を、対数軸から通常の軸に変えて表した図である。 実施例12の試験軸受の棒状炭化物を示す図である。 比較例15の試験軸受の棒状炭化物を示す図である。
本発明に係る転がり軸受の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明に係る転がり軸受の一実施形態である深溝玉軸受の構造を示す部分縦断面図である。
図1の深溝玉軸受は、外周面に軌道面1aを有する内輪1と、内輪1の軌道面1aに対向する軌道面2aを内周面に有する外輪2と、両軌道面1a,2a間に転動自在に配された複数の転動体3と、両軌道面1a,2a間に転動体3を保持する保持器4と、ゴムシール等の密封装置5,5と、を備えている。なお、保持器4及び密封装置5は、備えていなくてもよい。
また、本実施形態の転がり軸受は、内輪1、外輪2、及び、転動体3のうち少なくとも1つが下記の成分組成を有する鋼で構成されている。
[炭素の含有量について]
炭素(C)は、焼入れによって基地に固溶し、転がり軸受として要求される硬さを得るための元素である。また、他の合金元素と結合して鋼中に硬い炭化物を形成し、耐摩耗性を向上させる効果も有する。こうした効果を得るためには、炭素の含有量は0.90質量%以上1.10質量%以下であることが好ましい。炭素の含有量が0.90質量%未満であると、焼入れ後の硬さが低下して、転動疲労寿命と耐摩耗性が不十分となる恐れがある。良好な転動疲労寿命や耐摩耗性を安定的に得るためには、炭素の含有量は0.95質量%以上であることがより好ましい。一方、炭素の含有量が1.10質量%を超えると、鋼中に共晶炭化物が生成されやすくなって、転動疲労寿命が低下する恐れがある。また、冷間加工性、研削性、及び破壊靭性値も低下する恐れがある。
[ケイ素の含有量について]
ケイ素(Si)は、基地に固溶して、焼入れ性を向上させるとともに焼戻し軟化抵抗性を向上させる元素である。また、基地組織のマルテンサイトを安定化させるため、本発明において重要な、水素による組織変化を遅延させて転動疲労寿命を延長する効果がある。さらに、基地組織を強化し、転動疲労寿命と耐摩耗性を向上させる効果も有する。こうした効果を得るためには、ケイ素の含有量は0.45質量%以上0.70質量%以下であることが好ましい。ケイ素の含有量が0.45質量%未満であると、これらの効果が十分に得られない恐れがある。一方、ケイ素の含有量が0.70質量%を超えると、冷間加工性、破壊靭性、及び旋削性が不十分となる恐れがある。
[マンガンの含有量について]
マンガン(Mn)は、基地に固溶して、焼入れ性を向上させる元素である。また、基地組織のマルテンサイトを安定化させるため、本発明において重要な水素による組織変化を遅延させて転動疲労寿命を延長する効果がある。さらに、本発明において重要な、鋼の表面の残留オーステナイトの形成を助け、安定化させる効果も有する。また、生成された残留オーステナイトは、鋼中の水素の拡散・集積を遅延させるので、組織変化が局所的に生じるのを遅延させ、転動疲労寿命を延長する効果がある。
こうした効果を得るためには、マンガンの含有量は0.30質量%以上1.20質量%以下であることが好ましく、0.70質量%以上1.20質量%以下とすることがより好ましい。マンガンの含有量が0.30質量%未満であると、上記の効果が不十分となる恐れがある。一方、マンガンの含有量が1.20質量%を超えると、焼入後の残留オーステナイト量が多くなり過ぎて、寸法安定性が不十分となる恐れがある。
[クロムの含有量について]
クロム(Cr)は、基地に固溶して、焼入れ性、耐食性等を向上させるとともに、炭素と結合して鋼中に硬い炭化物を形成し、耐摩耗性を向上させる元素である。また、炭化物と基地組織のマルテンサイトを安定化させるため、本発明において重要な水素による組織変化に対する抵抗力を向上させる効果も有する。具体的には、クロムは、水素が鋼中に侵入する速度を低下させる効果を有する。さらに、水素が侵入しても基地組織を安定化させることによって、水素による転動疲労寿命の低下を抑制する効果を有する。
こうした効果を得るためには、クロムの含有量は1.80質量%以上2.30質量%以下であることが好ましい。クロムの含有量が1.80質量%未満であると、上記の効果が不十分となる恐れがある。一方、クロムの含有量が2.30質量%を超えると鋼材のコストアップが生じる。また、必要な硬さを得るために焼入れ温度を高くしなければならず、生産性が低下する恐れがある。さらに、冷間加工性及び被削性が不十分となるとともに、鋼中に共晶炭化物が生成されやすくなって転動疲労寿命が低下する恐れがある。
[モリブデンの含有量について]
モリブデン(Mo)は、焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗性を向上させ、基地に固溶して、焼入れ性、耐食性等を向上させるとともに、炭素と結合して鋼中に硬い炭化物を形成し、耐摩耗性及び転動疲労寿命を向上させる元素である。また、基地組織のマルテンサイトを安定化させるため、本発明において重要な水素による組織変化を遅延させて寿命を延長する効果がある。こうした効果を得るためには、モリブデンの含有量は0.14質量%以上0.36質量%以下であることが好ましい。モリブデンの含有量が0.14質量%未満であると、上記の効果が不十分となる恐れがある。一方、モリブデンの含有量が0.36質量%を超えると研削性の低下が生じる。また、非常に高価な元素であるため鋼材のコストアップが生じる。さらに、安定的に良好な研削性を得るためには、モリブデンの含有量は0.27質量%以下であることがより好ましい。
[ニッケルの含有量について]
ニッケル(Ni)は、焼入れ性を向上させるとともに、オーステナイトを安定化させるのに有効な元素であり、鋼材の靭性を向上させる。しかし、非常に高価な元素であるため鋼材のコストアップが生じる。そのため、本実施形態では、添加されるニッケルの含有量は0.2質量%以下とする。
[銅の含有量について]
銅(Cu)は、焼入れ性を向上させるとともに、粒界強度を向上させる効果がある。しかし、含有量が多くなると熱間鍛造性を低下させる。そのため、本実施形態では、添加される銅の含有量を0.20質量%以下とする。
[イオウの含有量について]
イオウ(S)は、凝固時、熱処理時にMnと結合してMnSを形成し介在物として作用するため、鋼中のイオウの含有量は少ないほうが好ましい。そのため、本実施形態では、添加されるイオウの量を0.010質量%以下とする。
[リンの含有量について]
リン(P)は、結晶粒界に偏析して、粒界強度や破壊靭性値、ならびに転動疲労寿命を低下させることから、鋼中のリンの含有量は少ないほうが好ましい。そのため、本実施形態では、添加されるリンの量を0.020質量%以下とする。
[酸素の含有量について]
酸素(O)は、酸化アルミニウム(Al2 3 )等の硬質の酸化物系非金属介在物を生成して剥離の起点となり、転動疲労寿命を低下させることから、鋼中の酸素の含有量は少ないほうが好ましい。そのため、本実施形態では、添加される酸素の量を10質量ppm以下とする。
[0.5×[Si]+0.2×[Mn]+0.2×[Cr]+0.7×[Mo]≧1.00について]
前述したように、Si、Mn、Cr、Moには、それぞれ組織変化を遅延させ、白色組織剥離に対する寿命(以下、白色組織剥離寿命と称する。)を向上させる効果がある。Si及びMnは置換型元素として基地組織のマルテンサイトに固溶する。また、Cr及びMoは一部が置換型元素として基地組織のマルテンサイトに固溶し、残りはCと結合して炭化物となる。水素による組織変化が生じる際には、マルテンサイトに固溶した炭素が拡散して、微細なフェライト粒になる。また、同時に炭化物も溶解して微細なフェライト粒の粒界に析出する。上記の置換型元素は、基地組織のマルテンサイトを安定化させ、固溶した炭素の拡散を遅らせるため、水素による組織変化の進行を遅らせる効果がある。またCr及びMoを含む炭化物は化学的に安定であるため、溶解が生じにくくなり、組織変化の進行を遅らせる効果がある。
本発明者らは、種々の合金組成の鋼材を用いて、後述する白色組織剥離寿命評価試験を行い、各合金元素と白色組織剥離寿命の関係を回帰分析することにより、白色組織剥離寿命に及ぼす各合金元素の効果を定量化した。すなわち、Si、Mn、Cr、Moの各合金元素の白色組織剥離寿命を向上させる効果を添加量の比で表わすと、Si:Mn:Cr:Mo=5:2:2:7となることがわかった。
さらに、Si、Mn、Cr、Moの各濃度(質量%)を、それぞれ[Si]、[Mn]、[Cr]、[Mo]とした時、下記の関係式を満たすことにより、標準的な軸受鋼であるJIS規格のSUJ2と比較して、白色組織剥離寿命を3倍以上とすることができる。0.5×[Si]+0.2×[Mn]+0.2×[Cr]+0.7×[Mo]≧1.00 前述した合金元素の効果は、物理的には複雑であり、上式のような一次式で表せるものではないが、本発明者らは、白色組織剥離寿命と各合金元素の添加量の関係が、近似的に上記の一次式で表すことが可能であることを見出した。
0.5×[Si]+0.2×[Mn]+0.2×[Cr]+0.7×[Mo]の値が1.00未満であると、白色組織剥離寿命は、SUJ2と比較して3倍以上にはならず、明確な長寿命効果が得られない恐れがある。白色組織剥離寿命を安定的に向上させるためには、上記式の値を、1.06以上とすることが好ましい。0.5×[Si]+0.2×[Mn]+0.2×[Cr]+0.7×[Mo]の値に上限はなく、この値が大きいほど、白色組織剥離寿命は向上する。しかし、前述したように、生産性や寸法安定性により、Si、Mn、Cr、Moの各元素の上限の添加量が制限される。
[鋼に含まれる介在物平均径が10μm以上である酸化物系非金属介在物の個数について]
前述したように潤滑油の分解等によって水素が発生し、その水素が鋼中に侵入した場合に、鋼中の金属組織が変化し、組織変化部から亀裂が生じて剥離に至る。しかし、大きな非金属介在物が存在する場合には、非金属介在物のまわりに応力集中が生じ、そこから剥離に至る内部起点型剥離が生じる。この場合に、破壊起点になる可能性が高い非金属介在物の種類は、Al2 3 、MgO、CaO等の酸化物系介在物であり、有害となる大きさは直径10μm以上である。また、一定面積中に含まれる非金属介在物の個数が多くなると寿命が低下する確率が高くなる。
一方、非金属介在物の種類が酸化物系介在物ではない場合、あるいは非金属介在物の大きさが小さい場合には、水素による組織変化により亀裂が生じる時間よりも、該非金属介在物から亀裂が生じるまでに要する時間のほうが長くなるため、非金属介在物は実質的に有害にならない。そのため、本発明では実質的に有害になる非金属介在物の種類、大きさ、鋼中における存在率を規定した。すなわち、介在物平均径が10μm以上である酸化物系非金属介在物が鋼に含まれている個数を、320mm2 あたり10個以下とした。酸化物系非金属介在物が10個を超えると、該介在物から亀裂が発生する確率が高くなり、転動疲労寿命が低下する恐れがある。
酸化物系非金属介在物の測定は、軸受の一部を切断して切断面を鏡面に研磨し、光学顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡を用いて切断面を観察して、面積320mm2 の切断面あたりの酸化物系非金属介在物の個数を算出することにより行うことができる。
なお、介在物平均径とは、酸化物系非金属介在物の長径と短径の平均値を意味する。ただし、本発明においては、介在物平均径を直径と記すこともある。
[軌道面又は転動面の表面から転動体の直径の3%の深さ位置までの表層部分に存在する介在物平均径10μm以上の酸化物系非金属介在物の個数について]
さらに、より厳しい条件下で転がり軸受が使用される場合には、前述した酸化物系非金属介在物をより厳密に管理することが好ましい。通常、転がり軸受においては、軌道輪の軌道面、転動体の転動面等の転がり面の表面から転動体の直径の1%内側の深さ位置(以下「1%D」と記すこともある)の周辺で、軌道輪と転動体との接触部の材料内部に生じる剪断応力が最大となる。そのため、その深さ位置に存在する非金属介在物を起点とした剥離が生じやすい。
ところが、水素が材料内部に侵入しやすい使用条件下では、1%Dよりも内側の深さ位置である、転がり面の表面から転動体の直径の3%内側の深さ位置(以下「3%D」と記すこともある)まで水素による組織変化が生じて、転がり面の表面から3%Dまでの部分である表層部分に存在する比較的大きな非金属介在物を起点として白色組織剥離が生じる場合がある。その理由は、鋼に侵入した水素は、応力集中部に集積しやすい性質を有するため、大きな非金属介在物が存在すると、その周りに応力集中が生じて水素が集積するためである。
よって、水素が材料内部に侵入しやすいという、より厳しい使用条件下で転がり軸受が使用される場合には、転がり面の表面から3%Dまでの表層部分に存在する酸化物系非金属介在物の分布を管理することがより好ましい。すなわち、前記表層部分に存在する介在物平均径10μm以上の酸化物系非金属介在物の個数を、面積320mm2 の断面あたり5個以下とすれば、白色組織剥離寿命をより長寿命とすることができる。
内輪及び外輪の軌道面に関して、前記表層部分に存在する介在物平均径10μm以上の酸化物系非金属介在物の個数を、面積320mm2 の断面あたり5個以下とする方法としては、例えば、以下の方法があげられる。酸化物系非金属介在物は円柱状の鋼製素材の中心部付近と表面近傍部分とに多く分布しているため、円柱状の鋼製素材から内輪及び外輪を製造する際に行う熱間鍛造工程又は熱間ローリング工程において、円柱状の鋼製素材の中心部付近と表面近傍部分とが、軌道面の表面から3%Dまでの表層部分にならないように、円柱状の鋼製素材を加工して内輪及び外輪を製造する。あるいは、内輪及び外輪の旋削加工において、円柱状の鋼製素材の中心部付近と表面近傍部分とに対応する部分を除去する方法もあげられる。
[軌道面又は転動面の表面から転動体の直径の3%の深さ位置までの表層部分に存在する炭化物の最大長さについて]
さらに、前述のような、より厳しい条件下で転がり軸受が使用される場合には、金属組織中の炭化物の形状を管理することが好ましい。鋼中の炭素の一部は炭化物を形成し、熱間圧延後又は熱間鍛造後に球状化焼鈍しを行うことによって、炭化物は球状化する。ただし、CrやMoなどの炭化物形成元素を増加させると、球状化せず細長い棒状の炭化物が残存する場合がある。
棒状の炭化物が大きい場合は、前述の非金属介在物の場合と同様に、その周辺に応力集中が生じ、水素による組織変化が生じやすくなる恐れがある。したがって、内輪、外輪、又は転動体を構成する鋼の金属組織中の炭化物の形状については、軌道面又は転動面の表面から3%Dまでの表層部分に存在する全ての棒状の炭化物の最大長さが10μm以下であることが好ましい。棒状の炭化物の長さは、球状化焼鈍し時の保持温度と冷却速度を制御することによって変化させることが可能である。
[焼入れ焼戻し後の硬さについて]
本発明者らは、水素による組織変化は、局所的な塑性変形が生じることによって引き起こされることを見出した。そのため、組織変化が生じるのを遅延させるためには、硬さを向上させることにより、塑性変形に対する抵抗値を向上させる必要がある。こうした効果を得るためには、焼入れ焼戻し後の硬さがHv697以上800以下であることが好ましい。硬さがHv697未満であると硬さが不足し、水素による組織変化が生じやすくなるため転動疲労寿命が低下する恐れがある。一方、Hv800を超えると破壊靭性値が低下する恐れがある。
[焼入れ焼戻し後の鋼の残留オーステナイト量について]
水素は原子半径が小さいため、鋼中に侵入し拡散する。また、応力が高い部位に集積しやすいことが知られている。転がり軸受では、軌道面直下に大きなせん断応力が作用するため、そこに水素が局所的に集積し組織変化を生じさせる。
一方、基地組織の残留オーステナイトは、基地組織であるマルテンサイトとは結晶構造が異なるため、水素の拡散係数を低下させる効果がある。そのため、残留オーステナイトは、水素が局所的に集積するのを遅延させ、組織変化の発生を遅延させる効果がある。こうした効果を得るためには、焼入れ焼戻し後の鋼の残留オーステナイト量が11体積%以上20体積%以下であることが好ましい。残留オーステナイト量が11体積%未満であると組織変化を遅延させる効果が不十分となる恐れがある。一方、残留オーステナイト量が20体積%を超えると寸法安定性が低下する恐れがある。
残留オーステナイト量の測定は、軸受の軌道面の一部を切り出した後、軌道面表面を電解研磨して、X線回折装置を用いて行なうことができる。
[好適な熱処理条件について]
本実施形態の転がり軸受を製造する際には、熱間加工及び旋削加工で内輪、外輪、転動体の形状を完成形状に近づけた後、焼き入れ焼戻し処理を行う。その後、研削加工を行い完成形状に仕上げる。
前述した硬さと残留オーステナイト量は、本実施形態で規定する合金成分からなる鋼材を使用し、さらに、焼入れ焼戻し条件を好適にすることによって得られる。
焼入れは、生産性をJIS規格のSUJ2と同等にするため、JIS規格のSUJ2と同条件で行うことが好ましい。すなわち、焼入れは830℃以上850℃以下で所定の時間保持した後、油冷することが好ましい。
また、焼戻しも、JIS規格のSUJ2と同条件で行なうことが好ましい。すなわち、焼戻しは160℃以上200℃以下で所定の時間保持した後、空冷あるいは炉冷することが好ましい。160℃未満であると、残留オーステナイト量が過多になり寸法安定性が低下する恐れがある。一方、焼戻し温度が200℃を超えると、残留オーステナイト量が低下し、前述した組織変化を遅延させる効果が不十分となる恐れがある。
[内輪の軌道面、外輪の軌道面、及び転動体の転動面の表面粗さについて]
前述のような、より厳しい条件下で転がり軸受が使用される場合には、内輪の軌道面、外輪の軌道面、及び転動体の転動面のうち少なくとも1つの表面粗さを、粗さ曲線の最大山高さRpで1.0μm以下とすることがより好ましい。転がり面の表面粗さが粗いと油膜が切れやすくなり、油膜切れが生じた部分で軌道輪と転動体とが金属接触し、組織変化の原因となる潤滑油の分解や水素の侵入が生じやすくなる。
通常、転がり軸受の転がり面の表面粗さは、算術平均粗さRaで管理されている。これは、算術平均粗さRaが摩耗に対しての指標として適していることが主な理由である。一方、水素の発生及び侵入の指標としては、粗さ曲線の最大山高さRpの方が適している。そして、転がり面の表面粗さが粗さ曲線の最大山高さRpで1.0μmを超えると、油膜が切れて部分的な金属接触が生じ、水素の発生及び侵入が生じやすくなるため、1.0μm以下とすることが好ましい。
転がり面の粗さ曲線の最大山高さRpを1.0μm以下とすることは、研削加工において、砥石の種類、研削速度等の加工条件を最適化することによって達成することができる。粗さ曲線の最大山高さRpの測定は、以下のように行うことが好ましい。すなわち、転がり面の5〜10箇所(転動体が玉の場合は円周方向の5〜10箇所、転動体がころの場合及び軌道面はその軸方向の5〜10箇所)について粗さ曲線を得て、その中で最大山高さを測定する。
[転がり軸受の好適な用途について]
本実施形態の転がり軸受は、水素による白色組織の発生が遅延されて、水素による寿命低下が抑制されるので、潤滑剤の分解によって水素が発生しやすい環境で好適に使用できる。
水素の発生のしやすさは潤滑剤の種類により異なり、トラクション係数を向上させる目的、及び摩耗を防止する目的等のために添加剤を多く含む潤滑剤には水素を発生しやすいものがある。例えば、自動車や産業機械の変速機に使用される潤滑油は添加物を多く含み、水素が発生しやすいので、本実施形態の転がり軸受を好適に使用できる。
また、軸受内部に微量の電流が流れると、潤滑油の分解が促進され、水素が発生しやすくなる。ゴムベルトとプーリーを介して回転を伝達する構造の場合、ゴムベルトとプーリー間の摩擦により静電気が発生する。静電気による電位差は、プーリーに嵌合するシャフトを伝わり、このシャフトを回転自在に支持する軸受の外輪及び内輪と転動体間の電位差となる。軸受の外輪及び内輪と転動体間には油膜が形成され絶縁されているが、回転速度の変動や振動によって軸受の外輪及び内輪と転動体間で金属接触が生じると電流が流れる。電流が流れると金属表面が局所的に溶解され、化学的に活性な新生面が露出することによって潤滑油の分解が加速され、水素が発生しやすくなる。したがって、ゴムベルトとプーリーを介して回転を伝達する構造で使用される転がり軸受は水素が発生しやすく、本実施形態の転がり軸受を好適に使用できる。特に、自動車のオルタネータなどの電装補機用の転がり軸受は、エンジンからの回転をゴムベルトとプーリーを介して伝達しているので、静電気が発生し、水素が発生しやすいため、本実施形態の転がり軸受を好適に使用できる。
また、軸受内部に微量の電流が流れる用途としては電気モータ用軸受がある。電気モータからの微量の電流がシャフトを通って軸受内部に流れると、上記の静電気の場合と同様に、潤滑油の分解が加速され、水素が発生しやすくなる。したがって、本実施形態の転がり軸受を好適に使用できる。
さらに、軌道輪と転動体との間に大きな滑りが生じると、軌道輪と転動体との間に膜状に存在する潤滑剤(油膜)が切れやすくなり、切れた部分で金属接触が生じる。金属接触が生じると、一時的に金属の新生面が形成され、化学的に活性な状態となるため、潤滑油が分解して水素が発生しやすくなり、発生した水素が軌道輪及び転動体をなす鋼に侵入しやすくなる。したがって、軌道輪と転動体との間に滑りが生じやすい場合には、本実施形態の転がり軸受が好適である。
さらに、転動体の直径が30mm以上の比較的大形の転がり軸受においては、軌道輪と転動体との接触面積が大きいために、油膜が安定して形成されにくく、局所的に金属接触が生じやすい。よって、これに起因して、潤滑油の分解により水素が発生しやすくなり、発生した水素が軌道輪及び転動体をなす鋼に侵入しやすくなる。したがって、転動体の直径が30mm以上である場合には、本実施形態の転がり軸受が好適である。
例えば、風車は、風によってプロペラと軸が回転し、風力の変動に応じてプロペラと軸の回転速度が変化するので、前記軸を支持する風車用転がり軸受は回転速度が変化しやすい。回転速度が変化すると、軌道輪と転動体との間に滑りが生じて油膜が切れやすくなるため、前述したように潤滑油の分解により水素が発生しやすくなり、発生した水素が軌道輪及び転動体をなす鋼に侵入しやすくなる。
さらに、風車用転がり軸受では、転動体の直径が30mm以上の大形の転がり軸受が適用される場合が多いため、軌道輪と転動体との接触面積が大きい。よって、前述したように金属接触が生じやすく、水素の発生及び鋼への侵入が生じやすい。したがって、本実施形態の転がり軸受は、風力発電設備に好適に使用することができる。例えば、風力発電設備の風車の回転軸を支持する用途に好適であり、また、風力発電設備の変速機に用いる軸受として好適である。
また、建設機械は前進と後進を繰り返しながら使用される場合が多いため、建設機械の車軸や変速機の入出力軸を支持する転がり軸受の回転方向も、その都度逆転する。回転方向が頻繁に逆転すると、軌道輪と転動体との間に滑りが生じて油膜が切れやすくなり、切れた部分で金属接触が生じるため、前述したように潤滑油の分解により水素が発生しやすくなり、発生した水素が軌道輪及び転動体をなす鋼に侵入しやすくなる。
さらに、建設機械用の転がり軸受でも、転動体の直径が30mm以上の大形の転がり軸受が適用される場合が多いため、軌道輪と転動体との接触面積が大きい。よって、前述したように金属接触が生じやすく、水素の発生及び鋼への侵入が生じやすい。したがって、本実施形態の転がり軸受は、建設機械に好適に使用することができる。例えば、建設機械の車軸(回転軸)や変速機の入出力軸を支持する用途に好適である。
さらに、本実施形態においては、転がり軸受として深溝玉軸受を用いて説明したが、アンギュラ玉軸受などのその他の玉軸受、円箇ころ軸受、円錐ころ軸受、自動調心ころ軸受等のころ軸受、ポールねじ、リニアガイド等、その他の転動部材に対しても本発明を適用可能であり、同様の効果を得ることができる。
以下に、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
表1に示す合金成分の鋼材から試験片を作製し、軸受生産を想定した生産性評価試験及び白色組織剥離寿命評価試験を行なった。表1には、本実施例及び比較例の合金成分の含有量、0.5×[Si]+0.2×[Mn]+0.2×[Cr]+0.7×[Mo]の値、及び、鋼材の単位面積(320mm2 )中に存在する介在物平均径10μm以上の酸化物系非金属介在物の個数を記載している。また、表2に、表1の鋼種を用いた参考例及び比較例の各種生産性評価試験及び白色組織剥離寿命評価試験の結果を示す。なお、表1において、「平均径が10μm以上である介在物の個数」とは、「鋼に含まれる介在物平均径が10μm以上である酸化物系非金属介在物の個数」を表したものである。さらに、表中数値に下線があるものは、実施形態に記載した好適な範囲から外れる数値を示したものである。
Figure 0005966350
Figure 0005966350
[1. 生産性評価試験]
軸受の製造工程は、(1)鋼材切断、(2)熱間鍛造、(3)球状化焼鈍、(4)旋削、(5)熱処理、(6)研削、(7)組立て、の順で行なわれる。その中でも合金成分の影響を受けやすい旋削、熱処理、及び研削に関する各試験を行い、各鋼材の生産性を評価した。
[1−1. 旋削試験]
球状化焼鈍後の硬さはSiの添加によって上昇するので、旋削性には鋼材に含まれるSi量が大きく影響する。したがって、鋼材に含まれるSi量が旋削性に及ぼす影響を調べるため、表1に示す鋼材のうち、鋼種A〜G、J、N、Sを用いて旋削試験を行なった。旋削試験は、軸受の外径面を旋削加工することを想定して、球状化焼鈍後の直径65mmの棒材の外周面を旋削し、その際の切削バイトの逃げ面摩耗量が0.2mmになるまでの旋削時間を測定した。切削バイトには超硬バイトを用い、切削速度は120m/minで行った。
図2に、鋼材に含まれるSi量と、切削バイトの逃げ面摩耗量が0.2mmになるまでの時間の関係を示す。鋼材に含まれるSi量が0.70質量%を超えると、切削バイトの逃げ面摩耗量が0.2mmになるまでの時間が急激に短くなり、旋削性が低下することがわかる。したがって、生産性の観点から、鋼材のSi量は0.70質量%以下が好適である。
[1−2. 熱処理試験]
焼入れ焼戻し後の硬さは、金属組織の基地に固溶するC量の影響が大きい。しかし、鋼材に含まれるC量が十分で、且つ、焼入れ温度が一定である場合には、焼入れ焼戻し後の硬さは鋼材に含まれるCr量の影響が大きい。これは、鋼材に含まれるCr量が多いほど炭化物が化学的に安定になり、焼入れ時に炭化物中のCが、基地に溶け込みにくくなるためである。
また、焼入れ焼戻し後の残留オーステナイト量は、鋼材に含まれるC量が十分で、且つ、焼入れ温度が一定である場合には、オーステナイトを安定化させる効果を有する元素であるMn量の影響が大きい。
したがって、鋼材に含まれるCr量とMn量が、焼入れ焼戻し後の熱処理品質に及ぼす影響を調べるため、表1に示す鋼材を用いて熱処理試験を行なった。試験は、直径60mm、厚さ6mmの円板試験片を用いて、JIS規格のSUJ2と同様の熱処理条件、すなわち、焼入れ温度840℃、焼戻し温度180℃で熱処理を行なった。焼入れ焼戻し後に円板試験片の断面の硬さ、及び、表面直下の残留オーステナイト量を測定した。残留オーステナイト量の測定は、円板試験片の表面を200μm電解研磨した後、X線回折装置を用いて行なった。
図3に、鋼材に含まれるCr量と焼入れ焼戻し後の硬さの関係を示す。鋼材に含まれるCr量が2.3質量%を超えると焼入れ焼戻し後の硬さが急激に低下することがわかる。硬さが低下すると疲労強度が低下するので転動疲労寿命が低下する。鋼材に含まれるCr量が高い場合には、焼入れ温度を高くすることによって、基地の固溶C量を増加させ、硬さを向上させることが可能である。しかし、焼入れ温度を変更すると、JIS規格のSUJ2製の軸受と同時に熱処理ができなくなるため、生産性が著しく低下する。したがって、生産性の観点から、鋼材に含まれるCr量は2.3質量%以下が好適である。
次に、図4に、鋼材に含まれるMn量と、焼入れ焼戻し後の残留オーステナイト量の関係を示す。鋼材に含まれるMn量が1.2質量%を超えると、焼入れ焼戻し後の残留オーステナイト量が20体積%を超えることがわかる。基地組織の残留オーステナイトは、転がり軸受の使用温度が高くなると時間の経過とともに徐々に分解するため、残留オーステナイト量が高すぎる場合には寸法安定性が低下する恐れがある。これに対し、焼戻し温度を高くすることによって、残留オーステナイト量を減らすことは可能であるが、焼戻し温度を変更するとJIS規格のSUJ2製の軸受と同時に熱処理ができなくなるため、生産性が著しく低下する。さらに、焼戻し温度を高くすると、同時に硬さが低下するので、疲労強度が低下し、転動疲労寿命が低下する。したがって、生産性と転動疲労寿命の観点から、鋼材のMn量は1.20質量%以下が好適である。
[1−3.研削試験]
Moは焼入れ焼戻し後に鋼中に硬い炭化物を形成する。そのため、研削性には鋼材のMo量の影響が大きい。したがって、鋼材に含まれるMo量が研削に及ぼす影響を調べるため、表1に示す鋼材のうち、鋼種A〜G、M、P、Sを用いて研削試験を行なった。研削試験は、軸受の外径面を研削することを想定して、外径62.4mm、厚さ4mmの焼入れ焼戻し後の円筒リング10個の外周面を、外径62.0mmになるまで研削を行い、研削後の円周方向の算術平均粗さ(Ra)を測定した。Raは、軌道面及び転動体の転動面の軸方向の5〜10箇所について測定を行うことにより求めた。なお、研削はアルミナ砥石を用いて行った。
図5に、鋼材に含まれるMo量と、円周方向のRaの関係を示す。鋼材に含まれるMo量が0.36質量%を超えると粗さが急激に上昇し、研削性が低下することがわかる。Raは、送り速度を小さくするなどの研削条件を変えることにより向上させることは可能であるが、その分生産性が低下する。したがって、生産性の観点から、鋼材のMo量は0.36質量%以下であることが好ましく、0.27質量%以下であることがより好ましい。
[2.白色組織剥離寿命評価試験]
[2−1.転動疲労試験]
上記の生産性評価試験において、生産性が低下する鋼種J〜Mの鋼材を除き、残りの鋼材で転動疲労試験を行なった。すなわち、表1の鋼材のうち、鋼種A〜I及びN〜Sを用いて試験を行った。該鋼から、直径65mm、厚さ6mmの円板を旋削加工により作製し、その後、焼入れ焼戻し及び平面の研削加工を行い、転動疲労試験の試験片とした。なお、焼入れ焼戻しの条件は、前述の熱処理試験と同条件である。
転動疲労試験を開始する前に、試験片を50℃の20質量%チオシアン酸アンモニウム水溶液に24時間浸漬することによって、水素を鋼中に侵入させた。該水素を侵入させた試験片をスラスト型転動疲労試験機にセットし、1鋼種につき各4〜7回の転動疲労試験を下記の条件で行い、累積破損確率が50%となる寿命(L50寿命)を求め、鋼種S(JIS規格のSUJ2)の寿命を1.0とした場合の相対値である転動疲労寿命比を算出した。この転動疲労寿命比は、白色組織剥離に対する寿命である。
「試験条件」
最大面圧:3.8GPa
回転速度:1000min-1
潤滑油:ISO粘度グレードがISO VG68である一般鉱油
この様な条件で求めた転動疲労寿命比を表2に示す。
また、図6に、0.5×[Si]+0.2×[Mn]+0.2×[Cr]+0.7×[Mo]の値と、転動疲労寿命比の関係を示す。縦軸は、転動疲労寿命比を対数軸で表している。鋼種Iの0.5×[Si]+0.2×[Mn]+0.2×[Cr]+0.7×[Mo]の値は本実施形態に記載された好適な数値の範囲内であるが、一定面積に含まれる10μm以上の酸化物系介在物の個数が、本実施形態に記載された好適な数値の範囲より多いため、白色組織剥離が起こるよりも、酸化物系介在物を起点とする剥離が生じやすく寿命が短いことがわかる。鋼種N〜Pの0.5×[Si]+0.2×[Mn]+0.2×[Cr]+0.7×[Mo]の値は本実施形態に記載された好適な数値の範囲内であるが、それぞれ鋼材に含まれるSi量、Mn量、Mo量が本実施形態に記載された好適な範囲より低いため、白色組織の発生を抑制する効果が十分に得られず寿命が短いことがわかる。それ以外の、鋼種の寿命は、0.5×[Si]+0.2×[Mn]+0.2×[Cr]+0.7×[Mo]と良い相関がある。
図7は、図6のグラフの縦軸を対数軸ではなく、通常の軸に変えて表したものである。ここで、0.5×[Si]+0.2×[Mn]+0.2×[Cr]+0.7×[Mo]の値が1.00以上であると、鋼種S(JIS規格のSUJ2)と比較して3倍以上の寿命が得られることがわかる。また、上記の値が1.06以上であると、4倍以上の寿命が得られる。したがって、本発明の鋼材に含まれる合金元素の0.5×[Si]+0.2×[Mn]+0.2×[Cr]+0.7×[Mo]の値は1.00以上とすることが好ましく、1.06以上とすることがより好ましい。
[2−2. 軸受寿命試験]
前述の転動疲労試験で、特に寿命が長かった表1の鋼材のうち、鋼種A〜EとJIS規格のSUJ2に相当する鋼種Sを用いて、呼び番号が6303である深溝玉軸受(外径=47mm,内径=17mm,幅=14mm)用の内輪及び外輪を製作した。球状化焼鈍された鋼材を旋削して内輪及び外輪の形状に作製し、その後、焼入れ焼戻し及び研削を行なった。なお、焼入れ焼戻しの条件は前述した熱処理試験と同条件である。また、ボールにはSUJ2に浸炭窒化処理を施したものを用いた。上記の鋼種A〜E及びSを用いて作製した内外輪、ボール及びナイロン製保持器を組み立てた上、グリースを充填し、参考例1〜5及び比較例12の試験軸受とした。
試験機としては、NSK Technical Journal No.679,p.28に開示されているオルタネータシミュレート試験機を用いた。本試験機は、プーリーとゴムベルトを介してシャフトに回転を伝達しているため、軸受寿命試験中にプーリーとゴムベルト間に静電気が生じ、グリースの分解による水素の発生が生じやすい条件となっている。参考例1〜5は各3個、比較例12は7個の軸受を用いて軸受寿命試験を行ない、累積破損確率が50%となる寿命を求めた。結果を表2に示す。
参考例1〜5を用いて軸受寿命試験を行なったところ、1000時間経過しても剥離が生じなかったため試験を打ち切った。軸受寿命試験後の軸受断面を観察したところ、少量の白色組織が発生していたものの、剥離には至っていなかった。一方、比較例12を用いて軸受寿命試験を行ったところ、7個の試験軸受全てに白色組織が発生しており、剥離が生じていた。参考例1〜5と比較例12の軸受寿命の差は4倍以上と見なせるものであった。
[2−3. 大形軸受寿命試験]
さらに、前述のような、より厳しい条件下での軸受寿命試験を、呼び番号が6317の深溝玉軸受(外径=180mm,内径=85mm,幅=41mm,転動体直径30.16mm)を用いて行った。
外輪及び転動体はSUJ2を用いて製作し、内輪は、表1の鋼材のうち鋼種B,D,E及びJIS規格のSUJ2に相当する鋼種Sを用いて製作した。内輪のみを本発明に係る鋼材で製作したのは、本試験においては内輪に剥離が生じやすいからである。
内輪の製作においては、球状化焼鈍された鋼材を旋削して内輪の形状に作製し、その後、焼入れ焼戻し及び研削を行なった。この球状化焼鈍工程においては、球状化せずに残存する棒状の炭化物の長さが小さくなるように、すなわち、炭化物ができる限り球状になるように、保持温度を780〜820℃とし、冷却速度を5〜15℃/hに調整した。また、旋削工程においては、非金属介在物の量が比較的多い円柱状の鋼製素材の中心部付近と表面近傍部分が、内輪の軌道面の表面から3%Dまでの表層部分にならないように加工を行った。その他の工程については、2−2の軸受寿命試験の場合と同様である。
このようにして得られた内輪と、外輪及び転動体とを組み立てて、実施例11〜14及び比較例13、15、16の試験軸受とした。そして、下記のような試験条件で各試験軸受の大形軸受寿命試験を行った。
「試験条件」
ラジアル荷重:66.5kN
回転速度 :2000min-1
潤滑油 :高トラクション油(分解して水素が生じやすい潤滑油)
大形軸受寿命試験は、1種の試験軸受についてそれぞれ3個ずつ行って、3個の試験軸受の試験結果の平均値をその種の試験軸受の寿命とした。結果を表3に示す。
Figure 0005966350
なお、内輪の軌道面の表面粗さを測定した結果を、表3に併せて示す。この表面粗さは、軌道面の軸方向の8箇所において軸方向に4mmの長さの粗さ曲線を得て、それらの粗さ曲線から最大山高さRpを得ることにより測定した。また、内輪の軌道面の表面から3%Dまでの表層部分に存在する介在物平均径10μm以上の酸化物系非金属介在物の面積320mm2 の断面あたりの個数、及び、前記表層部分に存在する棒状の炭化物の最大長さを、表3に併せて示す。さらに、実施例12,比較例15の内輪の前記表層部分に存在する棒状の炭化物を、図8,9に示す。
実施例11〜14及び比較例15、16の試験軸受は、内輪の合金成分、残留オーステナイト量、及び硬さが本発明の要件を満たしており、さらに、内輪の軌道面の表面から3%Dまでの表層部分に存在する介在物平均径10μm以上の酸化物系非金属介在物の個数が、面積320mm2 の断面あたり5個以下であるため、比較的大形の軸受であり且つ水素が発生しやすい厳しい条件下で使用されたにもかかわらず、白色組織の発生が遅延され長寿命であった。
特に、実施例11〜14の試験軸受は、内輪の前記表層部分に存在する棒状の炭化物の最大長さが10μm以下であるため、比較例15,16の試験軸受よりも長寿命であった。さらに、実施例11〜13の試験軸受は、内輪の軌道面の表面粗さRpが1.0μm以下であるため、極めて長寿命であり、比較例13の試験軸受の5倍の寿命を超えても剥離が生じなかったので、寿命試験を打ち切った。
以上より、本発明の転がり軸受は白色組織の発生が遅延されるため、水素が発生しやすい環境下においても好適に使用できる。
1 内輪
1a 軌道面
2 外輪
2a 軌道面
3 転動体

Claims (10)

  1. 内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備える転がり軸受において、
    前記内輪,前記外輪,及び前記転動体のうち少なくとも1つが、下記の5つの条件を満たすことを特徴とする転がり軸受。
    条件1:濃度0.90質量%以上1.10質量%以下の炭素、濃度0.45質量%以上0.70質量%以下のケイ素、濃度0.30質量%以上1.20質量%以下のマンガン、濃度1.80質量%以上2.30質量%以下のクロム、濃度0.14質量%以上0.36質量%以下のモリブデン、濃度0.20質量%以下のニッケル、濃度0.20質量%以下の銅、濃度0.010質量%以下のイオウ、濃度0.020質量%以下のリン、濃度10質量ppm以下の酸素を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物である鋼で構成されている。
    条件2:前記鋼に含まれるケイ素、マンガン、クロム及びモリブデンの各濃度(質量%)を、それぞれ[Si]、[Mn]、[Cr]、[Mo]とした時、0.5×[Si]+0.2×[Mn]+0.2×[Cr]+0.7×[Mo]≧1.00とする。
    条件3:前記鋼に含まれる介在物平均径が10μm以上である酸化物系非金属介在物の個数を、320mm2 あたり10個以下とする。
    条件4:焼入れ及び焼戻しが施されており、焼入れ焼戻し後の鋼の残留オーステナイト量が11体積%以上20体積%以下であるとともに、硬さがHv697以上800以下である。
    条件5:軌道面又は転動面の表面から前記転動体の直径の3%の深さ位置までの表層部分に存在する介在物平均径10μm以上の酸化物系非金属介在物の個数が、面積320mm2 の断面あたり5個以下であり、且つ、前記表層部分に存在する炭化物の最大長さが10μm以下である。
  2. 前記炭化物は、球状化していない棒状の炭化物であることを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
  3. 前記内輪の軌道面、前記外輪の軌道面、及び前記転動体の転動面のうち少なくとも1つの表面粗さが、粗さ曲線の最大山高さRpで1.0μm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の転がり軸受。
  4. 前記転動体の直径が30mm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の転がり軸受。
  5. ベルトと、前記ベルトが巻回されたプーリーとを介して回転が伝達されるシャフトの支持に用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の転がり軸受。
  6. 自動車の電装補機に用いられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の転がり軸受。
  7. 電気モータに用いられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の転がり軸受。
  8. 変速機に用いられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の転がり軸受。
  9. 風力発電設備に用いられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の転がり軸受。
  10. 建設機械に用いられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の転がり軸受。
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