以下、本発明の一実施形態である車両用前照灯について、図面を参照しながら説明する。
本願の発明者らは、人間の眼の視覚特性を考慮し検討を重ねた結果、夜間運転時の暗い環境下では短波長側のエネルギー成分(青系の色の光)を高めれば、桿体細胞を効率良く刺激することとなり、周辺視での気づきを速めることが可能になると考えた。
そして、各種の実験を行い検討を重ねた結果、夜間運転時の暗い環境下では短波長側のエネルギー成分(青系の色の光)が増加するにつれ周辺視での気づきが速くなること(反応速度が短くなり、見逃し率が低下する)を見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。
まず、本願の発明者らが行った実験1〜5について説明する。
以下の実験では、短波長側のエネルギー成分(青系の色の光)の割合を表す指標としてS/P比を用いた。S/P比は、次の式で表される。ただし、S(λ)は光源のスペクトル、V(λ)は明所視での比視感度、V´(λ)は暗所視での比視感度である。
S/P比は、公知の測定装置(例えば、分光放射輝度計)を用いて測定対象の光源から放射される光のスペクトルを測定し、上記式を用いて演算することで求められる。
従来、車両用前照灯においては、S/P比2.0以上の光源は用いられておらず、夜間運転時の暗い環境下でS/P比2.0以上の光源からの光が周辺視(=桿体=暗所視感度)での気づきにどのような影響を及ぼすかについては全く知られていなかった。
次の表1に、本願の発明者らが測定した一般的な車両用前照灯の光源のS/P比を示す。S/P比が高い光源ほど、短波長側のエネルギー成分(青系の色の光)が多いことを表す。
表1の各光源は、市販の車両に実際に搭載されている車両用前照灯の光源として用いられている光源である。表1を参照すると、一般的な車両用前照灯の光源のS/P比は、1.5〜1.8程度であることが分かる。
ハロゲン電球、HID電球はその構造上S/P比を変化させることが難しく、S/P比はほぼ表1に示した1.46、1.75となる。
表1の各LEDは、青色LED素子とYAG等の黄色蛍光体とを組み合わせた構造の白色LEDである。この構造の白色LEDは、発光色が、法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たし、かつ、運転者の眼に自然な色に見えるように、黄色蛍光体の濃度が調整されている。なお、法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲は、座標値(0.31,0.28),(0.44,0.38),(0.50,0.38),(0.50,0.44),(0.455,0.44),(0.31,0.35)を結ぶ直線で囲まれた範囲である。
上記構造の白色LEDは、S/P比が1.5より小さいと、法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たすことが難しくなる。従って、S/P比の下限は1.5近傍となる。一方、S/P比が2程度(1.95程度)までであれば法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たすことが可能であるが、S/P比が1.8を超えて2に近づくと黄色光が減って青っぽい光となり、運転者の眼に不自然な色に見える。また、S/P比が1.8を超えて2に近づくと効率が低下し(光束が減少し)、車両用前照灯の光源に求められる明るさを確保できなくなる。従って、運転者の目に自然な色に見え、かつ、高効率の車両用前照灯を構成する観点から、上記構造の白色LEDのS/P比の上限は1.8近傍となる。
以上のように、従来、一般的な車両用前照灯の光源のS/P比は、1.5〜1.8程度で、S/P比2.0以上の光源は用いられておらず、夜間運転時の暗い環境下でS/P比2.0以上の光源からの光が周辺視(=桿体=暗所視感度)での気づきにどのような影響を及ぼすかについては全く知られていなかった。
[実験1]
本願の発明者らは、夜間運転時の暗い環境下でS/P比(特にS/P比2.0以上)が周辺視(=桿体=暗所視感度)での気づきにどのような影響を及ぼすかを確認すべく、以下の実験を行った。
図1は実験1に用いた装置の構成図、図2は実験1に用いた光源のS/P比を示すグラフである。
実験には、図1に示す構成の装置を用い、呈示光の光源として、次の表2及び図2に示す相関色温度及びS/P比が異なる合計7つの光源を用いた。
図3は、実験1に用いた各光源の分光分布である。なお、THはハロゲン電球、HIDはHID電球を表している。LEDの横に付した数字(例えば、4500K)は相関色温度を表している。
LED4500K、LED5500K、LED6500Kは、青色LED素子及び黄色蛍光体を組み合わせた構造の白色LEDで、黄色蛍光体の濃度を調整することで、相関色温度及びS/P比を表2に示すように調整した。
図4(a)はS/P比が2.0以上の光源(LED5500K(new1)、LED5500K(new2))の構造例である。
図4(a)に示すように、LED5500K(new1)、LED5500K(new2)は、青色LED素子B、赤色LED素子R及び緑色蛍光体Gを組み合わせた構造の白色LEDで、緑色蛍光体Gの濃度を調整し緑色光を増やすことで、S/P比を表2に示すように調整した。緑色蛍光体Gは、青色LED素子B、赤色LED素子Rを覆っており、青色LED素子Bから放射される青色光により励起されて緑色光を発光する。緑色光が増えると、発光色がブルーグリーンとなり、法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を逸脱する。そこで、赤色LED素子Rを加えその出力を調整することで、発光色が法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲内となるように調整した。
LED5500K(new1)及びLED5500K(new2)は、分光分布が周辺視での気づきが高いと予測される光源の分光分布に近い形状となるように調整した。
図5はLED5500K(new1)の分光分布、図6はLED5500K(new2)の分光分布である。図7は、視感度の形状から予測される周辺視での気づきの高い光源の分光分布の例である。図7に示した光源によれば、青色LED素子からの青色光(図7中丸数字の1参照)、青色LED素子からの青色光(図7中丸数字の1参照)によって励起される緑色蛍光体からの緑色光(図7中丸数字の2参照)、赤色LED素子からの赤色光(図7中丸数字の3参照)により、白色光が実現される。図7に示した分光分布によれば、図7中の丸数字の2の山が視感度曲線に合致しているため、効率良く明るさを感じさせることが可能となる。
図5、図6を参照すると、LED5500K(new1)及びLED5500K(new2)の分光分布が、図7に示した周辺視での気づきが高いと予測される光源の分光分布に近い形状であることが分かる。
実験は、次の手順で行った。まず、図1に示すように、正面2mの位置に設置されたディスプレイ(平仮名が表示されている)を被験者が注視して表示された文字を読んでいる間、正面に対し左(又は右)30°、45°、60°、75°の位置に一定輝度(1、0.1、0.01[cd/m2])に調整した光源が照射しているグレーの色材をランダムに呈示した。
そして、光源を点灯してから(白色光を呈示してから)、呈示光(グレーの色材からの反射光)に気づいた被験者が、手元にあるボタンを押すまでの時間(反応時間RT)を測定した。以上を、光源ごとに測定した。
なお、実験に用いた光源の輝度設定値は1、0.1、0.01[cd/m2]の3段階、背景輝度は1[cd/m2]である。被験者は45歳未満4名、45歳以上4名である。
本願の発明者らは、その測定結果を分析した結果、45歳以上では、S/P比が増加するにつれ反応速度が短くなり、見逃し率が低下すること、すなわち、45歳以上では、S/P比が増加するにつれ周辺視での気づきが速くなること、を見出した。
図8、図9に測定結果を示す。図8は、横軸がS/P比、縦軸が反応時間RT及び見逃し率の座標系に、測定結果(平均値)をプロットしたグラフである。なお、見逃し率とは、光源を点灯してから被験者が呈示光に気づくのに2秒以上経過した割合のことである。図8中の数字は各データ群の決定係数である。図9は、横軸がS/P比、縦軸が反応時間RT及び見逃し率の座標系に、測定結果(反応時間RTの平均値、見逃し率の平均値)を描いたグラフである。
図8を参照すると、45歳以上では、S/P比が2.0以上に増加するにつれ反応速度が短くなり、見逃し率が低下すること、すなわち、45歳以上では、S/P比が2.0以上に増加するにつれ周辺視での気づきが速くなること、が分かる。
この知見に基づけば、S/P比が2.0以上の光源から放射される光を車両前方の周辺領域に照射することで、夜間運転時の暗い環境下で周辺視での気づきが速くなる(反応速度RTが短くなり、見逃し率が低下する)車両用前照灯を構成することが可能となる。なお、45歳未満では、S/P比が増加しても反応時間及び見逃し率はほぼ横ばいで、両者の間に相関は見られない。
また、図8を参照すると、S/P比と見逃し率との相関関係から、S/P比が2.5(又は2.5以上)で、年齢による気づきの差がなくなることが分かる。
この知見に基づけば、S/P比が2.5(又は2.5以上)の光源から放射される光を車両前方の周辺領域に照射することで、夜間運転時の暗い環境下で年齢による気づきの差がない車両用前照灯を構成することが可能となる。
また、図9中のLED5500K(new1)及びLED5500K(new2)と他の光源とを比べると、LED5500K(new1)及びLED5500K(new2)は、45歳未満の反応時間RTと45歳以上の反応時間RTとの差(及び45歳未満の見逃し率と45歳以上の見逃し率との差)が小さいことが分かる。
また、図9中のLED5500K(new1)及びLED5500K(new2)と他の光源とを比べると、LED5500K(new1)及びLED5500K(new2)は、45歳以上の反応時間RTが短く、見逃し率が低いことが分かる。
[実験2]
本願の発明者らは、実際の夜間運転時の暗い環境下でS/P比(特にS/P比2.0以上)が周辺視(=桿体=暗所視感度)での気づきにどのような影響を及ぼすかを確認すべく、以下の実験を行った。
図10は、実験2を行った環境を説明するための図である。
実験では、図10に示すように、交差点を右折する車両を想定して、交差点内に車両Vを停車させた。そして、交差点を右折する車両Vの進行方向の横断歩道の手前(運転者Dの死角位置)に歩行者Mを位置させた。車両用前照灯の光源として、S/P比が異なる合計3つの光源(S/P比:1.5、2.0、2.5)を用いた。
S/P比が1.5、2.0の光源は、青色LED素子及び黄色蛍光体を組み合わせた構造の白色LEDで、黄色蛍光体の濃度を調整することで、S/P比を1.5、2.0に調整した。
S/P比が2.5の光源は、青色LED素子、赤色LED素子及び緑色蛍光体を組み合わせた構造の白色LEDで、緑色蛍光体の濃度を調整することで、S/P比を2.5に調整した。
実験は、次の手順で行った。歩行者Mが横断歩道の手前から反対側に向かって歩き始めてから、運転者Dが歩行者Mに気づくまでの時間を測定した。以上を、光源ごとに測定した。被験者は、45歳未満4名、45歳以上4名である。
次の表3に測定結果を示す。
表3を参照すると、45歳未満、45歳以上のいずれでも、S/P比が増加するにつれ歩行者に気づくまでの歩行距離が短くなること、が分かる。
例えば、45歳未満について、S/P比が1.5の光源とS/P比が2.5の光源とを比べると、S/P比2.5の光源の方が26cm速く気づくことが分かる。歩行速度が秒速50cmと仮定すると、S/P比2.5の光源の方が26/50=0.52秒速く気づくことになる。また、車速が秒速1mと仮定すると、S/P比2.5の光源の方が歩行者の52cm手前で止まれることになる。
同様に、45歳未満について、S/P比が1.5の光源とS/P比が2.0の光源とを比べると、S/P比2.0の光源の方が13cm速く気づくことが分かる。歩行速度が秒速50cmと仮定すると、S/P比2.0の光源の方が13/50=0.26秒速く気づくことになる。また、車速が秒速1mと仮定すると、S/P比2.0光源の方が歩行者の26cm手前で止まれることになる。
一方、45歳以上について、S/P比が1.5の光源とS/P比が2.5の光源とを比べると、S/P比2.5の光源の方が30cm速く気づくことが分かる。歩行速度が秒速50cmと仮定すると、S/P比2.5の光源の方が30/50=0.6秒速く気づくことになる。また、車速が秒速1mと仮定すると、S/P比2.5の光源の方が歩行者の60cm手前で止まれることになる。
同様に、45歳以上について、S/P比が1.5の光源とS/P比が2.0の光源とを比べると、S/P比2.0の光源の方が14cm速く気づくことが分かる。歩行速度が秒速50cmと仮定すると、S/P比2.0の光源の方が14/50=0.28秒速く気づくことになる。また、車速が秒速1mと仮定すると、S/P比2.0光源の方が歩行者の28cm手前で止まれることになる。
以上のように、実際の夜間運転時の暗い環境下では、45歳未満、45歳以上のいずれでも、S/P比が増加するにつれ歩行者に気づくまでの歩行距離(歩行者に気づくまでの秒数)が短くなり、歩行者の手前で停車できること、すなわち、S/P比が増加するにつれ周辺視での気づきが速くなること、を確認した。
次の表4は、ハロゲン電球、HID電球、白色LEDの45歳以上の反応時間RT、見逃し率をまとめた表である。S/P比が2.5の光源は、青色LED素子、赤色LED素子及び緑色蛍光体を組み合わせた構造の白色LEDで、緑色蛍光体の濃度を調整することで、S/P比を2.5に調整した。被験者は45歳未満4名、45歳以上4名である。
ハロゲン電球とS/P比2.5の光源とを比べると、45歳以上では、S/P比2.5の光源は、反応時間RTが0.12秒短くなり、見逃し率が8%低下することが分かる。また、表4を参照すると、S/P比が2.5の光源の反応時間RTは0.79秒で、これは一般的に知られている車両運転時の反応時間(危険と判断してからブレーキが効き始めるまで時間)0.7〜0.9秒を十分に満たしていることが分かる。
[実験3]
従来、S/P比が標識色の見え方にどのような影響を及ぼすかについては全く知られていなかった。
本願の発明者らは、夜間運転時の暗い環境下でS/P比が標識色の見え方にどのように影響するかを確認すべく、以下の実験を行った。
図11は、実験3を行った環境を説明するための図である。
実験では、図11に示すように、停車させた車両Vの50m前方に5色色票S(標識に用いられる代表的な5色、すなわち、白、赤、緑、青、黄を含む色票)を配置した。車両用前照灯の光源として、次の表5に示すS/P比が異なる合計5つの光源を用いた。
LED4500K、LED5500K、LED6500Kは、青色LED素子及び黄色蛍光体を組み合わせた構造の白色LEDで、黄色蛍光体の濃度を調整することで、相関色温度及びS/P比を表5に示すように調整した。
実験は、次の手順で行った。5色色票(白、赤、緑、青、黄)を照射し(照度:約10[lx])、主観的評価スケール(3:HID電球で照射した時の見え方、これに対して、1:ぼけたさえない見え方、2:1と3の間の見え方、5:はっきりくっきりした見え方、4:3と5の間の見え方)を用いて、5色色票の見え方を評価した。以上を、光源ごとに評価した。被験者は日本人が16名、米国人が43名である。
本願の発明者らは、その評価結果を分析した結果、S/P比が高い光源は、人種によらずはっきりくっきり見えること、及び、S/P比が高い光源(特にS/P比が1.8以上の光源)は、白、青、緑を明瞭にすること、を見出した。
図12(a)、図12(b)に評価結果を示す。図12(a)は横軸がS/P比、縦軸が評価スケールの座標系に、日本人の評価値(平均値)をプロットしたグラフ、図12(b)は横軸がS/P比、縦軸が評価スケールの座標系に、米国人の評価値(平均値)をプロットしたグラフである。
図12(a)、図12(b)を参照すると、S/P比が高い光源に対する評価値は基準の3より高く、S/P比が高い光源は人種によらずはっきりくっきり見えること、及び、S/P比が高い光源(特にS/P比が1.8以上の光源)は、白、青、緑を明瞭にすること、が分かる。
この知見に基づけば、S/P比が1.8以上の光源から放射される光を標識に照射することで、夜間運転時の暗い環境下で標識を明瞭に見せることが可能な車両用前照灯を構成することが可能となる。
[実験4]
従来、S/P比が明るさ感(参照光源とテスト光源との輝度差)にどのように影響するかについては全く知られていなかった。
本願の発明者らは、夜間運転時の暗い環境下でS/P比が明るさ感にどのように影響するかを確認すべく、以下の実験を行った。
図13は実験4に用いた装置の構成図である。
実験には、図13に示す構成の装置を用い、テスト光源として、次の表6に示す相関色温度及びS/P比が異なる合計3つの白色LEDを用いた。
LED3800K、LED5300K、LED5800Kは、青色LED素子及び黄色蛍光体を組み合わせた構造の白色LEDで、黄色蛍光体の濃度を調整することで、相関色温度及びS/P比を表6に示すように調整した。
実験は、次の手順で行った。一方の眼でテスト光源を、他方の眼で参照光源を見て、テスト光源が参照光源と同じ明るさになるように被験者自身にテスト光源の電流値を調整してもらい、その調整後のテスト光源の分光放射輝度を測定し、参照光源とテスト光源との輝度差を計算した。以上を、テスト光源、参照光源ごとに測定した。被験者は16名である。
本願の発明者らは、その測定結果を分析した結果、白色LEDはS/P比が増加するにつれ明るさ感が増加すること、を見出した。
図14は、横軸がS/P比、縦軸が参照光源とテスト光源の明るさが同じと感じた時の輝度差の座標系に、測定結果である参照光源とテスト光源との輝度差(平均値)をプロットしたグラフである。
図14を参照すると、輝度差がマイナスとなっている。これは、テスト光源の方が、参照光源より少ない輝度値で同じ明るさを得ていることを示している。よって、図14に示すように、S/P比が高くなるに従い、右下がりのグラフになる。白色LEDはS/P比が高くなるに従い、明るさ感(参照光源とテスト光源との輝度差)が増すこと、及び、白色LEDはハロゲン電球に対し約13〜26%、HID電球に対し約3〜17%明るさ感(参照光源とテスト光源との輝度差)が増すことが分かる。
[実験5]
本願の発明者らは、実際の夜間運転時の暗い環境下でS/P比が明るさ感にどのように影響するかを確認すべく、以下の実験を行った。
実験では、車両用前照灯の光源として、次の表8に示す相関色温度及びS/P比が異なる合計3つの光源を用いた。
LED4500K、LED5500Kは、青色LED素子と黄色蛍光体とを組み合わせた構造のLEDであり、黄色蛍光体の濃度を調整することで、相関色温度及びS/P比を表8に示すように調整した。
実験は、次の手順で行った。車両前方手前領域(自車線の車両前方手前路面上の領域)を同じ配光パターンで照射し、運転者(被験者)が最も明るく感じる範囲を申告してもらい、その範囲までの距離と照度とを測定した。以上を、光源ごとに測定した。被験者は5名である。
本願の発明者らは、その測定結果を分析した結果、照度が増加しても明るいと感じる範囲は広がらず、S/P比が増加するにつれ明るいと感じる範囲が広がること、すなわち、車両前方手前領域の明るさ感は照度ではなくS/P比と相関しており、照度ではなくS/P比を上げることで車両前方手前領域の明るさ感を高めることが可能となることを見出した。
図15、図16に測定結果を示す。図15は、横軸が車両中心からの左右方向距離、縦軸が車両前面からの前方距離の座標系に、測定結果(平均値)をプロットしたグラフである。図16は、横軸が車両中心からの左右方向距離、縦軸が照度の座標系に、測定結果(平均値)をプロットしたグラフである。
図15、図16を参照すると、S/P比が高いLED5500Kは他の光源と比べて明るいと感じる範囲が広く、その照度は同等もしくはそれ以下であること、及び、照度が同じ場合、S/P比が高いLED5500Kで照らした範囲は、他の光源と比較して、明るいと感じる範囲が広くなること、が分かる。すなわち、車両前方手前領域の明るさ感は照度ではなくS/P比と相関しており、照度ではなくS/P比を上げることで車両前方手前領域の明るさ感を高めることが可能となること、が分かる。
この知見に基づけば、S/P比が2.0以上の光源から放射される光を、車両前方手前領域に照射することで、夜間運転時の暗い環境下で、照度を上げることなく、車両前方手前領域(自車線の車両前方手前路面上の領域)の明るさ感を高めることが可能となる。
[周辺視での気づきが速くなる配光パターン例1]
本出願の発明者らは、上記各実験1〜5から得た知見に基づき、周辺視での気づきが速くなる配光パターンを検討した。
以下、発明者らが検討した周辺視での気づきが速くなる配光パターン例1について説明する。
図17は周辺視での気づきが速くなる配光パターン(スクリーン配光)の例、図18は周辺視での気づきが速くなる配光パターン(路面配光)の例、図19は周辺視での気づきが速くなる配光パターン(運転者の視点)の例である。
図17に示した配光パターンPは、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に形成された配光パターンで、中心領域A1、周辺領域A2、中間領域A3、手前領域A4を含んでいる。各領域A1〜A4は、路面上では図18に示す位置に配置され、運転者の視点では図19に示す位置に配置される。
中心領域A1は、遠方(例えば消失点)を注視している運転者の中心視野(錐体)に対応する領域である。
本実施形態では、中心領域A1として、図17に示すように、仮想鉛直スクリーン上の水平線と鉛直線との交点を含む高光度領域(ホットゾーンと称される)、例えば、仮想鉛直スクリーン上の左5°上2°の位置、左5°下2°の位置、右5°下2°の位置、右5°上2°の位置、左5°上2°の位置を結ぶ直線で囲まれた領域を選定した。
中心領域A1を左右5°にした理由は、運転者の視線位置(アイポイント)が左右5°の範囲に集中するためである。図20は、運転者の視線位置(アイポイント)を測定した図で、図20中の各黒点が運転中の運転者の視線位置を表している。図20を参照すると、各黒点が左右5°の範囲に集中しており、運転者の視線位置(アイポイント)が左右5°の範囲に集中することが分かる。
中心領域A1を上下2°にした理由は、主に法規が求める明るさを満たし、かつ、遠方視認性の高い配光を形成するためである。
なお、中心領域A1は、遠方(例えば消失点)を注視している運転者の中心視野(錐体
)に対応する領域であればよく、法規が求める明るさを満たす限り、左右5°、上下2°の領域に限定されない。
中心領域A1を照射する光源は、周辺領域A2を照射する光源(本実施形態では、S/P比が2.0の光源を例示)よりS/P比が低い光源である(本実施形態では、S/P比が1.5の光源を例示)。その理由は、周辺領域A2を照射する光源と同じS/P比の光源(例えば、S/P比が2.0の光源)から放射される光を中心領域A1に照射すると、対向車に眩しさ感(グレア)を与えることとなるため、これを抑えるためである。
なお、中心領域A1は、路面上では図18に示すように車両前後方向に延びる基準軸AXに対して左右5°の領域に配置され、運転者の視点では図19に示す位置に配置される。
以上のように、周辺領域A2を照射する光源(本実施形態では、S/P比が2.0の光源を例示)よりS/P比が低い光源(本実施形態では、S/P比が1.5の光源を例示)から放射される光を車両前方の中心領域A1に照射することで、対向車に眩しさ感(グレア)を与えるのを抑えることが可能となる。
周辺領域A2は、遠方(例えば消失点)を注視している運転者の周辺視野(桿体)に対応する領域である。
本実施形態では、周辺領域A2として、図17に示すように、仮想鉛直スクリーン上の中心領域A1の左右両側、例えば、仮想鉛直スクリーン上の右15°上6°の位置、右80°上6°の位置、右80°下14°の位置、右15°下14°、右15°上6°の位置を結ぶ直線で囲まれた右領域A2R、及び、仮想鉛直スクリーン上の左15°上6°の位置、左80°上6°の位置、左80°下14°の位置、左15°下14°、左15°上6°の位置を結ぶ直線で囲まれた左領域A2Lを選定した。
右領域A2Rを右15°〜右80°にした理由は、左右15°以上の範囲には桿体が多く分布しており、これを刺激するためである。左領域A2Lを左15°〜左80°にした理由も同様である。図21を参照すると、桿体が左右15°以上の範囲に広く分布していることが分かる。図21は、中心視、周辺視、錐体、桿体等の関係を説明するための図である。
右領域A2Rを上6°〜下14°の範囲にした理由は、主に交差点での右折時に歩行者等の対象物を照明するためである。左領域A2Lを上6°〜下14°の範囲にした理由も同様である。
なお、周辺領域A2は、遠方(例えば消失点)を注視している運転者の周辺視野(桿体
)に対応する領域であればよく、法規が求める明るさを満たす限り、右15°〜右80°(左15°〜左80°)、上6°〜下14°の領域に限定されない。
周辺領域A2を照射する光源は、S/P比が2.0以上の光源である(本実施形態では、S/P比が2.0の光源を例示)である。S/P比が2.0以上の光源にした理由は、S/P比が2.0以上に増加するにつれ周辺視での気づきが速くなる(反応速度が短くなり、見逃し率が低下する)との知見(実験1、実験2参照)に基づき、夜間運転時の暗い環境下で周辺視での気づきを速める(反応速度を短くし、見逃し率を低下させる)ためである。
なお、周辺領域A2は、路面上では図18に示すように車両前後方向に延びる基準軸AXに対して右15°〜右80°、左15°〜左80°の領域に配置され、運転者の視点では図19に示す位置に配置される。
以上のように、S/P比が2.0以上の光源から放射される光を車両前方の周辺領域A2(A2R、A2L)に照射することで、夜間運転時の暗い環境下、例えば、図22に示すように、交差点での右折時(又は左折時)に、周辺視野に存在する歩行者M等の対象物に対する気づきを速めることが可能となる。
中間領域A3は、走行中に相対的に移動する標識が通過する領域をカバーする領域である。
本実施形態では、中間領域A3として、図17に示すように、中心領域A1と周辺領域A2との間、例えば、仮想鉛直スクリーン上の右5°上0.5°の位置、右5°下1°の位置、右15°下2°の位置、右15°上3°の位置、右5°上0.5°の位置を結ぶ直線で囲まれた右領域A3R、及び、仮想鉛直スクリーン上の左15°上3°の位置、左15°下2°の位置、左5°下1°の位置、左5°上0.5°の位置、左15°上3°の位置を結ぶ直線で囲まれた左領域A3Lを選定した。
右領域A3R及び左領域A3Lの2つの領域を配置した理由は、路上の両側に設置された標識を照明するためである。
右領域A3Rを中心から外側に向かうにつれ(右5°から右15°に向かうにつれ)その縦幅が拡がる台形形状にした理由は、走行中に見かけ上の高さが低から高へと変化する標識のみを照明するためである。左領域A3Lを中心から外側に向かうにつれ(左5°から左15°に向かうにつれ)その縦幅が拡がる台形形状にした理由も同様である。
なお、中間領域A3は、運転者の視点から見て、走行中に相対的に移動する標識が通過する領域をカバーする領域であればよく、上記台形形状に限定されない。例えば、中間領域A3は、上記台形形状を含む矩形形状であってもよい。
中間領域A3を照射する光源は、S/P比が1.8以上の光源である(本実施形態では、S/P比が1.8の光源を例示)。S/P比が1.8以上の光源にした理由は、S/P比が高い光源(特にS/P比が1.8以上の光源)は、白、青、緑を明瞭にするとの知見(実験3参照)に基づき、夜間運転時の暗い環境下で標識(特に、白、青、緑)を明瞭に見せるためである。
なお、中間領域A3は、路面上では図18に示すように車両前後方向に延びる基準軸AXに対して右5°〜右15°、左5°〜左15°の領域に配置され、運転者の視点では図19に示す位置に配置される。
以上のように、S/P比が1.8以上の光源から放射される光を車両前方の中間領域A3(A3R、A3L)に照射することで、夜間運転時の暗い環境下で、標識(特に白、青、緑)を明瞭に見せることが可能となる。
手前領域A4は、車両前方手前領域(自車線の車両前方手前路面上の領域)をカバーする領域である。
本実施形態では、手前領域A4として、図17に示すように、仮想鉛直スクリーン上の水平線より下(運転者の視点で自車線の手前)、例えば、仮想鉛直スクリーン上の左9.4°下3°の位置、左17°下8°の位置、右16.7°下8°の位置、右8.3°下3°の位置を結ぶ直線で囲まれた領域を選定した。
手前領域A4を仮想鉛直スクリーン上において鉛直下方に向かうにつれ(下3°から下8°に向かうにつれ)その横幅が拡がる台形形状にした理由は、自車線の車両前方手前路面上の領域のみを照明するためである(図19参照)。
なお、手前領域A4は、車両前方手前領域(自車線の車両前方手前路面上の領域)をカバーする領域であればよく、上記台形形状に限定されない。例えば、手前領域A4は、上記台形形状を含む矩形形状であってもよい。
手前領域A4を照射する光源は、周辺領域A3と同じS/P比が2.0以上の光源である(本実施形態では、S/P比が2.0の光源を例示)。S/P比が2.0以上の光源にした理由は、車両前方手前領域の明るさ感は照度ではなくS/P比と相関しており、照度ではなくS/P比を上げることで車両前方手前領域の明るさ感を高めることが可能となるとの知見(実験4、5参照)に基づき、夜間運転時の暗い環境下で、照度ではなくS/P比を上げることで車両前方手前領域の明るさ感を高めるためである。
なお、手前領域A4は、路面上では図18に示すように車両前方5〜15m、幅3.5mの領域に配置され、運転者の視点では図19に示す位置に配置される。
以上のように、S/P比が2.0以上の光源から放射される光を車両前方の手前領域A4に照射することで、夜間運転時の暗い環境下で、照度を上げることなく、車両前方手前領域(自車線の車両前方手前路面上の領域)の明るさ感を高めることが可能となる。
[周辺視での気づきが速くなる配光パターン例2]
以下、発明者らが検討した周辺視での気づきが速くなる配光パターン例2について説明する。
図23(a)は車両前部の「左側」に配置された後述の車両用灯具ユニット44L等から前方に照射される光により形成される、周辺視での気づきが速くなる所定配光パターンPL(スクリーン配光)の部分拡大図の例である。図24(a)は車両前部の「右側」に配置された後述の車両用灯具ユニット44R等から前方に照射される光により形成される、周辺視での気づきが速くなる所定配光パターンPR(スクリーン配光)の部分拡大図の例である。
所定配光パターンPLと所定配光パターンPRとは左右対称で実質的に同一の形状である。このため、以下、所定配光パターンPLを中心に説明し、所定配光パターンPRの説明は省略する。
図23(a)に示した所定配光パターンPLは、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に形成された配光パターンで、中心領域A5L、周辺領域A6Lを含んでいる。
中心領域A5Lは、遠方(例えば消失点)を注視している運転者の中心視野(錐体)に対応する領域で、例えば、図17に示した中心領域A1及び中間領域A3(又はこれらに相当する領域)である。
中心領域A5Lを照射する光源は、周辺領域A6Lを照射する光源(S/P比が2.0以上)よりS/P比が低い光源(S/P比が2.0未満)である。その理由は、周辺領域A6Lを照射する光源と同じS/P比の光源(S/P比が2.0以上)から放射される光を中心領域A5Lに照射すると、対向車に眩しさ感(グレア)を与えることとなるため、これを抑えるためである。
以上のように、周辺領域A6Lを照射する光源(S/P比が2.0以上)よりS/P比が低い光源(S/P比が2.0未満)から放射される光を車両前方の中心領域A5Lに照射することで、対向車に眩しさ感(グレア)を与えるのを抑えることが可能となる。
周辺領域A6Lは、遠方(例えば消失点)を注視している運転者の周辺視野(桿体)に対応する領域で、例えば、図17に示した周辺領域A2L(又はこれに相当する領域)である。
周辺領域A6Lを照射する光源は、S/P比が2.0以上の光源である。S/P比が2.0以上の光源にした理由は、S/P比が2.0以上に増加するにつれ周辺視での気づきが速くなる(反応速度が短くなり、見逃し率が低下する)との知見(実験1、実験2参照)に基づき、夜間運転時の暗い環境下で周辺視での気づきを速める(反応速度を短くし、見逃し率を低下させる)ためである。
以上のように、S/P比が2.0以上の光源から放射される光を車両前方の周辺領域A6Lに照射することで、夜間運転時の暗い環境下、例えば、図22に示すように、交差点での右折時(又は左折時)に、周辺視野に存在する歩行者M等の対象物に対する気づきを速めることが可能となる。
[白色光源の構成例1]
次に、周辺視での気づきが速くなる所定配光パターンPL、PR(図23(a)及び図24(a)参照)を形成するために用いられる白色光源の構成例1について説明する。
図25(a)は周辺視での気づきが速くなる所定配光パターンPL、PR(図23(a)及び図24(a)参照)を形成するために用いられる白色光源の正面図、図25(b)は図25(a)のA−A断面図である。
図25(a)、図25(b)に示すように、白色光源10は、半導体発光素子18aを用いた第1発光部24aと、半導体発光素子18bを用いた第2発光部24bと、を含んでいる。
白色光源10は、セラミック基板12(例えば、co-fired ceramic)、セラミック基板12上の縁を取り囲む外枠14、セラミック基板12と外枠14とで囲まれた凹部16、少なくとも2つの半導体発光素子18a、18b等を含んでいる。
半導体発光素子18a、18bは、例えば、窒化ガリウム系半導体からなる発光ダイオードで、凹部16内(セラミック基板12上面)に配置されている。
半導体発光素子18aと半導体発光素子18bとの間には、分離壁20が配置されている。凹部16は、分離壁20により二つの凹部16a、16bに区画されている。半導体発光素子18aは一方の凹部16a内(セラミック基板12上面)に配置され、半導体発光素子18bは他方の凹部16b内(セラミック基板12上面)に配置されている。半導体発光素子18aと半導体発光素子18bとは、分離壁20を間に挟んで隣接している。分離壁20の高さは、漏光を防止するために、セラ層数を外枠14より多くすることで、外枠14より高くなっている。分離壁20を外枠14より高くした理由は、凹部16aに流動状態のモールド樹脂、例えば、波長変換部材22aを充填したときであっても、表面張力によりモールド樹脂が外枠14より上部に盛り上がっても、他方の凹部16b側へ漏れる光を低減することが可能となるからである。また、同一のセラミック基板12上に分離壁20を挟んで設けているので、白色光源10及び車両用灯具ユニットの小型化を図ることができ好適である。
半導体発光素子18a(例えば、青色LED素子)は、凹部16a内に充填された波長変換部材22a(例えば、蛍光体含有層(黄色蛍光体))で覆われて第1発光部24a(白色LED光源)を構成している。
波長変換部材22aは、半導体発光素子18aからの光により励起される光(例えば、黄色光)と当該波長変換部材22aを透過する半導体発光素子18aからの光(例えば、青色光)との混色による白色光を発する。
第1発光部24aは、波長変換部材22a(例えば、黄色蛍光体)の濃度を調整することで、発光色が法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たし、かつ、S/P比が2.0未満(例えば、1.5)に調整されている。
中心領域A5Lを照射する第1発光部24aは、周辺領域A6Lを照射する第2発光部24b(S/P比が2.0以上)よりS/P比が低い(S/P比が2.0未満)。その理由は、周辺領域A6Lを照射する第2発光部24bと同じS/P比の光を中心領域A5Lに照射すると、対向車に眩しさ感(グレア)を与えることとなるため、これを抑えるためである。
なお、第1発光部24aのS/P比は1.5以上が望ましい。その理由は、S/P比が1.5より小さいと、法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たすことが難しくなるためである。
第1発光部24aは、発光色が法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たし、かつ、S/P比が2.0未満の光源であればよく、青色LED素子と蛍光体含有層(黄色蛍光体)とを組み合わせた構造の白色LED光源に限定されない。
例えば、第1発光部24aは、図4(b)に示すように、青色LED素子Bと蛍光体含有層(緑及び赤色蛍光体GR)とを組み合わせた構造の白色LED光源であってもよい。
また、第1発光部24aは、赤色LED素子、緑色LED素子及び青色LED素子を組み合わせた構造の白色LED光源であってもよいし、紫外若しくは近紫外LED素子と蛍光体含有層(RGB蛍光体)とを組み合わせた構造の白色LED光源であってもよい。これらの構造の白色LED光源であっても、波長変換部材22a(例えば、蛍光体)の濃度等を調整することで、発光色が法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たし、かつ、S/P比が2.0未満の光源を構成することが可能である。
第1発光部24aは、発光色が法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たし、かつ、S/P比が2.0未満の光源であればよく、白色LED光源に限定されない。
例えば、第1発光部24aは、レーザ光源(例えば、レーザーダイオード(青色レーザーダイオード))と波長変換部材22a(例えば、レーザー光源からのレーザー光を吸収し、波長変換して所定の波長域の光を放出する黄色蛍光体等の波長変換部材)とを組み合わせた構造の白色レーザー光源であってもよい。半導体発光素子18aとしてレーザ光源を用いることで、半導体発光素子18aとして発光ダイオードを用いる場合と比べ、発光面積が小さく(点光源により近く)かつ高輝度の第1発光部24aを構成することが可能となる。
図26(a)、図26(b)は、半導体発光素子18aとしてレーザ光源を用いた第1発光部24aの例である。
図26(a)は、波長変換部材22aから離間した位置に半導体発光素子18a(レーザ光源)を配置し、その前方に、集光レンズ11、波長変換部材22aを配置した構造の第1発光部24a(白色レーザー光源)の例である。図26(b)は、波長変換部材22aから離間した位置に半導体発光素子18a(レーザ光源)を配置し、その前方に、集光レンズ13、ライトガイド15(例えば、コアとクラッドを含む光ファイバ)の入光面15aを配置し、ライトガイド15の出光面15bに波長変換部材22aを配置した構造の第1発光部24a(白色レーザー光源)の例である。
半導体発光素子18bは、凹部16b内に充填された波長変換部材22bで覆われて第2発光部24b(白色LED光源)を構成している。
例えば、半導体発光素子18bは図4(a)に示す青色LED素子B、赤色LED素子Rで、波長変換部材22bは図4(a)に示す緑色蛍光体Gである。緑色蛍光体Gは、青色LED素子Bから放射される青色光により励起されて緑色光を発光する。緑色光が増えると、発光色がブルーグリーンとなり、法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を逸脱する。そこで、赤色LED素子Rを加えその出力を調整することで、発光色が法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲内となるように調整する。
第2発光部24bは、波長変換部材22a(例えば、緑色蛍光体)の濃度を調整することで、発光色が法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たし、かつ、S/P比が2.0以上(例えば、2.0)に調整されている。
周辺領域A6Lを照射する第2発光部24bは、S/P比が2.0以上の光源である。その理由は、S/P比が2.0以上に増加するにつれ周辺視での気づきが速くなる(反応速度が短くなり、見逃し率が低下する)との知見(実験1、実験2参照)に基づき、夜間運転時の暗い環境下で周辺視での気づきを速める(反応速度を短くし、見逃し率を低下させる)ためである。
なお、第2発光部のS/P比は3.0以下が望ましい。その理由は、S/P比が3.0を超えると、法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たすことが難しくなるためである。
S/P比と見逃し率との相関関係から、S/P比が2.5(又は2.5以上)で、年齢による気づきの差が無くなるという知見(実験1参照)に基づけば、S/P比が2.5又は2.5〜3.0の範囲の光源から放射される光を周辺領域に照射することで、夜間運転時の暗い環境下で年齢による気づきの差が無い車両用前照灯を構成することが可能となる。
第2発光部24bは、発光色が法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たし、かつ、S/P比が2.0以上の光源であればよく、青色LED素子B、赤色LED素子Rと蛍光体含有層(緑色蛍光体G)とを組み合わせた構造の白色LED光源に限定されない。
例えば、第2発光部24bは、図4(b)に示すように、青色LED素子Bと波長変換部材22b(緑及び赤色蛍光体GR)とを組み合わせた構造の白色LED光源であってもよい。
また、第2発光部24bは、赤色LED素子、緑色LED素子及び青色LED素子を組み合わせた構造の白色LED光源であってもよいし、紫外若しくは近紫外LED素子と蛍光体含有層(RGB蛍光体)とを組み合わせた構造の白色LED光源であってもよい。これらの構造の白色LED光源であっても、波長変換部材22b(例えば、蛍光体)の濃度等を調整することで、発光色が法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たし、かつ、S/P比が2.0以上の光源を構成することが可能である。
第2発光部24bは、発光色が法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たし、かつ、S/P比が2.0以上の光源であればよく、白色LED光源に限定されない。
例えば、第2発光部24bは、レーザ光源(例えば、レーザーダイオード(青色レーザーダイオード))と波長変換部材22b(例えば、レーザー光源からのレーザー光を吸収し、波長変換して所定の波長域の光を放出する黄色蛍光体等の波長変換部材)とを組み合わせた構造の白色レーザー光源であってもよい。半導体発光素子18bとしてレーザ光源を用いることで、半導体発光素子18bとして発光ダイオードを用いる場合と比べ、発光面積が小さく(点光源により近く)かつ高輝度の第2発光部24bを構成することが可能となる。
図26(a)、図26(b)は、半導体発光素子18bとしてレーザ光源を用いた第2発光部24bの例である。
図26(a)は、波長変換部材22bから離間した位置に半導体発光素子18b(レーザ光源)を配置し、その前方に、集光レンズ13、波長変換部材22bを配置した構造の第2発光部24b(白色レーザー光源)の例である。図26(b)は、波長変換部材22bから離間した位置に半導体発光素子18b(レーザ光源)を配置し、その前方に、集光レンズ13、ライトガイド15(例えば、コアとクラッドを含む光ファイバ)の入光面15aを配置し、ライトガイド15の出光面15bに波長変換部材22bを配置した構造の第2発光部24b(白色レーザー光源)の例である。
[車両用前照灯の構成例1]
次に、上記構成の白色光源10を用いた車両用灯具ユニットの構成例として、リフレクタ型(反射型)の灯具ユニットを説明する。
図23(b)は車両前部の「左側」に配置された車両用灯具ユニット44Lを、その光軸を含む水平面で切断した断面図である。図24(b)は車両前部の「右側」に配置された車両用灯具ユニット44Rを、その光軸を含む水平面で切断した断面図である。
図23(b)、図24(b)に示すように、本実施形態の車両用灯具ユニット44L、44Rは、自動車等の車両の前面の左右両側に配置されて車両用前照灯を構成している。車両用灯具ユニット44L、44Rには、その光軸調整が可能なように公知のエイミング機構(図示せず)が連結されている。
車両前部の左側に配置された車両用灯具ユニット44Lと車両前部の右側に配置された車両用灯具ユニット44Rとは、左右対称で実質的に同一の構成である。このため、以下、車両前部の左側に配置された車両用灯具ユニット44Lを中心に説明し、車両前部の右側に配置された車両用灯具ユニット44Rの説明は省略する。
図23(b)に示すように、車両用灯具ユニット44Lは、リフレクタ型(反射型)の灯具ユニットであり、回転放物面系(回転放物面又はこれに類する自由曲面等の放物面系の反射面)の反射面46L、白色光源10等を備えている。
反射面46Lが単一反射面の場合、第1発光部24aは、反射面46Lの焦点F46L(本発明の光学系の焦点に相当)又はその近傍に配置される。一方、反射面46Lが複数の反射面の場合、第1発光部24aは、各反射面の焦点又はその近傍に配置される。
ここで焦点とは、回転放物面の焦点のように焦点が明確な場合の焦点のみでなく、自由曲面のように明確な焦点を有さないものであっても、回転放物面の焦点と同様に焦点とみなせる点を焦点という(光学設計上の基準点(光学的中心)ともいえる)。例えば、反射面46Lに平行光を反射面46L正面から照射したときに、最も光が集光する中心位置を焦点とする(本実施形態において同じ)。
第2発光部24bは、第2配光パターンPLbの一方の端部側(左側)の明暗境界が第1配光パターンPLaの水平方向の一方の端部側(左側)の明暗境界より外側に位置するように、反射面46Lの焦点F46L(本発明の光学系の焦点に相当)から離間した位置に配置される。
すなわち、第1発光部24aの中心点と反射面46Lの焦点F46L(本発明の光学系の焦点に相当)との距離をDlとし、第2発光部24bの中心点と反射面46Lの焦点F46L(本発明の光学系の焦点に相当)との距離をD2とした場合に、Dl<D2の関係がある。
上記構成の車両用灯具ユニット44L(車両用灯具ユニット44Rも同様)においては、第1発光部24aから放射された光は、反射面46Lで反射されて前方に照射される。これにより、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に、中心領域A5Lを照射する第1配光パターンPLaが形成される(図23(a)参照)。
一方、第2発光部24bから放射された光は、反射面46Lで反射されて反射面46Lの光軸AX46Lに対して水平方向の一方の側(前方左側方)に拡がる光として前方に照射される。第2発光部24bから放射された光が反射面46Lの光軸AX46Lに対して水平方向の一方の側(前方左側方)に拡がる光として前方に照射される理由は、第2発光部24bが反射面46Lの焦点F46Lから離間した位置に配置されている(Dl<D2)ためである。
これにより、仮想鉛直スクリーン上に、第1配光パターンPLaに重畳された状態で第2配光パターンPLbが形成される。
第2発光部24bが反射面46Lの焦点F46Lから離間した位置に配置されている(Dl<D2)ため、第2配光パターンPLbの水平方向の一方の端部側(左側)の明暗境界は、第1配光パターンPLaの水平方向の一方の端部側(左側)の明暗境界より外側に位置する。すなわち、第2配光パターンPLbは、第1配光パターンPLaの左側縁(左側の明暗境界)から左側方へ延び、かつ、第1配光パターンPLaの左側縁(左側の明暗境界)の上下へ拡がって周辺領域A6Lを照射する配光パターンとなる(図23(a)参照)。
上記のように、半導体発光素子18aと半導体発光素子18bとは、分離壁20を間に挟んで隣接しているため(図25(a)、図25(b)参照)、その発光面10aには、色ムラが発生する。例えば、青色の半導体発光素子18a、18b近くは青色が強く、青色の半導体発光素子18a、18bから離れると青色の補色を含む光成分である黄色が強い。また、外枠14近傍では外枠14の側壁が反射面となるので、青色の半導体発光素子18a、18bから出射する青色光成分が増加し、外枠14近傍のみ青色が強くなり、色ムラとなりやすい。しかしながら、色ムラ側が焦点F46Lから離れるのでボケた配光パターン(色ムラの影響が改善された配光パターン)となる。
なお、車両用灯具ユニット44L(車両用灯具ユニット44Rも同様)は、中央領域A5L及び周辺領域A6Lを照射するように公知のエイミング機構(図示せず)により光軸調整されている。
以上説明したように、本実施形態の車両用灯具ユニット44L(車両用灯具ユニット44Rも同様)によれば、反射面46Lの焦点F46L(本発明の光学系の焦点に相当)と各発光部24a、24bとの一致度合の差を用いて、第1発光部24aよりS/P比が高い第2発光部24b(S/P比が2.0以上)からの光をぼけさせ、第1発光部24aからの光よりも照射エリアを広くすることで、第1発光部24aからの光により形成される第1配光パターンPLaの水平方向の一方の端部側(左側)の明暗境界より外側(車両前方の周辺領域A6L)を、第1発光部24aよりS/P比が高い第2発光部24b(S/P比が2.0以上)からの光で照射することが可能となる(図23(a)参照)。これにより、夜間運転時の暗い環境下で周辺視での気づきを速めることが可能となる。
第1発光部24aよりS/P比が高い第2発光部24b(S/P比が2.0以上)と同じS/P比の光源から放射される光を中心領域A5に照射すると、対向車に眩しさ感(グレア)を与えることとなる。
本実施形態の車両用灯具ユニット44L(車両用灯具ユニット44Rも同様)によれば、第2発光部24bよりS/P比が低い第1発光部24a(S/P比が2.0未満)から放射される光を中心領域A5Lに照射する構成であるため、第2発光部24bと同じS/P比の光源から放射される光を中心領域A5Lに照射する場合と比べ、対向車に眩しさ感(グレア)を与えるのを抑えることが可能となる。
以上のように、本実施形態の車両用灯具ユニット44L(車両用灯具ユニット44Rも同様)によれば、対向車に眩しさ感(グレア)を与えるのを抑えることが可能で、なおかつ、夜間運転時の暗い環境下で周辺視での気づきを速めることが可能となる。
[車両用前照灯の構成例2]
次に、上記構成の白色光源10を用いた車両用灯具ユニットの構成例として、プロジェクタ型の灯具ユニットを説明する。
図27(a)は車両前部の左側(又は右側)に配置された車両用灯具ユニット48L(又は48R)を、その光軸を含む鉛直面で切断した断面図である。
本実施形態の車両用灯具ユニット48は、自動車等の車両の前面の左右両側に配置されて車両用前照灯を構成している。車両用灯具ユニット48には、その光軸調整が可能なように公知のエイミング機構(図示せず)が連結されている。
車両前部の左側に配置された車両用灯具ユニット48Lと車両前部の右側に配置された車両用灯具ユニット48Rとは、実質的に同一の構成である。このため、以下、車両前部の左側に配置された車両用灯具ユニット48Lを中心に説明し、車両前部の右側に配置された車両用灯具ユニット48Rの説明は省略する。
図27(a)に示すように、車両用灯具ユニット48Lは、プロジェクタ型の灯具ユニットであり、投影レンズ50、白色光源10、回転楕円系の反射面52等を備えている。
投影レンズ50は、レンズホルダ(図示せず)等に保持されて、車両前後方向に延びる光軸AX48上に配置されている。
投影レンズ50は、例えば、車両前方側表面が凸面で車両後方側表面が平面の平凸非球面の投影レンズである。
白色光源10は、その発光面10aを上向きとした状態で、投影レンズ50の後側焦点F50より後方側かつ光軸AX48近傍に配置されている。
第1発光部24aは、反射面52の第1焦点F152又はその近傍に配置される。
第2発光部24bは、第2配光パターンPLbの一方の端部側(左側)の明暗境界が第1配光パターンPLaの水平方向の一方の端部側(左側)の明暗境界より外側に位置するように、反射面52の第1焦点F152から離間した位置に配置される。
反射面52は、第1焦点F152が白色光源10の第1発光部24a近傍に設定され、第2焦点F252が投影レンズ50の後側焦点F50近傍に設定された回転楕円系の反射面(回転楕円面又はこれに類する自由曲面等)である。
反射面52は、白色光源10から上向きに放射される光が入射するように、白色光源10の側方(図27(a)中、車両後方側の側方)から投影レンズ50に向かって延びて、白色光源10の上方を覆っている。
以上のように、第1発光部24aが第1焦点F152に略一致して配置されているため、反射面52で反射された第1発光部24aからの光は、投影レンズ50の後側焦点F50(本発明の光学系の焦点に相当)に集光する。
また、第2発光部24bが第1焦点F152から離間した位置に配置されているため、反射面52で反射された第2発光部24bからの光は、投影レンズ50の後側焦点F50(本発明の光学系の焦点に相当)から離間した位置(本発明の第2発光部の集光点に相当)に集光する。
すなわち、第1発光部24aからの照射光の集光点(本発明の第1集光点に相当)と投影レンズ50の後側焦点F50(本発明の光学系の焦点に相当)との距離をDlとし、第2発光部24bからの照射光の集光点(本発明の第2集光点に相当)と投影レンズ50の後側焦点F50(本発明の光学系の焦点に相当)との距離をD2とした場合に、Dl<D2の関係がある。
上記構成の車両用灯具ユニット48L(車両用灯具ユニット48Rも同様)においては、第1発光部24aから放射された光は、反射面52で反射されて投影レンズ50の後側焦点F50(本発明の光学系の焦点に相当)に集光した後、投影レンズ50を透過して前方に照射される。これにより、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に、中心領域A5を照射する第1配光パターンPLaが形成される(図23(a)参照)。
一方、第2発光部24bから放射された光は、反射面52で反射されて投影レンズ50の後側焦点F50(本発明の光学系の焦点に相当)から離間した位置(本発明の第2発光部の集光点に相当)に集光した後、投影レンズ50を透過し、光軸AX48に対して水平方向の一方の側(前方左側方)に拡がる光として前方に照射される。第2発光部24bから放射された光が光軸AX48に対して水平方向の一方の側(前方左側方)に拡がる光として前方に照射される理由は、第2発光部24bが投影レンズ50の後側焦点F50(本発明の光学系の焦点に相当)から離間した位置に配置されている(Dl<D2)ためである。
これにより、仮想鉛直スクリーン上に、第1配光パターンPLaに重畳された状態で第2配光パターンPLbが形成される。
第2発光部24bが投影レンズ50の焦点F50(本発明の光学系の焦点に相当)から離間した位置に配置されている(Dl<D2)ため、第2配光パターンPLbの水平方向の一方の端部側(左側)の明暗境界は、第1配光パターンPLaの水平方向の一方の端部側(左側)の明暗境界より外側に位置する。すなわち、第2配光パターンPLbは、第1配光パターンPLaの左側縁(左側の明暗境界)から左側方へ延び、かつ、第1配光パターンPLaの左側縁(左側の明暗境界)の上下へ拡がって周辺領域A6Lを照射する配光パターンとなる(図23(a)参照)。
上記のように、半導体発光素子18aと半導体発光素子18bとは、分離壁20を間に挟んで隣接しているため(図25(a)、図25(b)参照)、その発光面10aには、色ムラが発生する(半導体発光素子18a、18b近くは青色が強く、半導体発光素子18a、18bから離れると黄色が強い)。しかしながら、色ムラ側が反射面52の焦点F52(投影レンズ50の後側焦点F50)から離れるのでボケた配光パターンとなる。
なお、車両用灯具ユニット48L(車両用灯具ユニット48Rも同様)は、中央領域A5L及び周辺領域A6Lを照射するように公知のエイミング機構(図示せず)により光軸調整されている。
以上説明したように、本実施形態の車両用灯具ユニット48L(車両用灯具ユニット48Rも同様)によれば、投影レンズ50の焦点F50(本発明の光学系の焦点に相当)と各発光部24a、24bからの光の集光点との一致度合の差を用いて、第1発光部24aよりS/P比が高い第2発光部24b(S/P比が2.0以上)からの光をぼけさせ、第1発光部24aからの光よりも照射エリアを広くすることで、第1発光部24aからの光により形成される第1配光パターンPLaの水平方向の一方の端部側(左側)の明暗境界より外側(車両前方の周辺領域A6L)を、第1発光部24aよりS/P比が高い第2発光部24b(S/P比が2.0以上)からの光で照射することが可能となる(図23(a)参照)。これにより、夜間運転時の暗い環境下で周辺視での気づきを速めることが可能となる。
第1発光部24aよりS/P比が高い第2発光部24b(S/P比が2.0以上)と同じS/P比の光源から放射される光を中心領域A5に照射すると、対向車に眩しさ感(グレア)を与えることとなる。
本実施形態の車両用灯具ユニット48L(車両用灯具ユニット48Rも同様)によれば、第2発光部24bよりS/P比が低い第1発光部24a(S/P比が2.0未満)から放射される光を中心領域A5Lに照射する構成であるため、第2発光部24bと同じS/P比の光源から放射される光を中心領域A5Lに照射する場合と比べ、対向車に眩しさ感(グレア)を与えるのを抑えることが可能となる。
以上のように、本実施形態の車両用灯具ユニット48L(車両用灯具ユニット48Rも同様)によれば、対向車に眩しさ感(グレア)を与えるのを抑えることが可能で、なおかつ、夜間運転時の暗い環境下で周辺視での気づきを速めることが可能となる。
[車両用前照灯の構成例3]
次に、上記構成の白色光源10を用いた車両用灯具ユニットの構成例として、ダイレクトプロジェクション型(直射型)の灯具ユニットを説明する。
図27(b)は車両前部の左側(又は右側)に配置された車両用灯具ユニット54L(又は54R)を、その光軸を含む鉛直面で切断した断面図である。
本実施形態の車両用灯具ユニット54は、自動車等の車両の前面の左右両側に配置されて車両用前照灯を構成している。車両用灯具ユニット54には、その光軸調整が可能なように公知のエイミング機構(図示せず)が連結されている。
車両前部の左側に配置された車両用灯具ユニット54Lと車両前部の右側に配置された車両用灯具ユニット54Rとは、実質的に同一の構成である。このため、以下、車両前部の左側に配置された車両用灯具ユニット54Lを中心に説明し、車両前部の右側に配置された車両用灯具ユニット54Rの説明は省略する。
図27(b)に示すように、車両灯具用ユニット54Lは、ダイレクトプロジェクション型(直射型)の灯具ユニットであり、投影レンズ56、白色光源10等を備えている。
投影レンズ56は、レンズホルダ(図示せず)等に保持されて、車両前後方向に延びる光軸AX54上に配置されている。
投影レンズ56は、例えば、車両前方側表面が凸面で車両後方側表面が平面の平凸非球面の投影レンズである。
白色光源10は、その発光面10aを投影レンズ56に向けた状態で光軸AX54上に配置されている。
第1発光部24aは、投影レンズ56の焦点F56(本発明の光学系の焦点に相当)又はその近傍に配置される。
第2発光部24bは、第2配光パターンPLbの一方の端部側(左側)の明暗境界が第1配光パターンPLaの水平方向の一方の端部側(左側)の明暗境界より外側に位置するように、投影レンズ56の焦点F56(本発明の光学系の焦点に相当)から離間した位置に配置される。
すなわち、第1発光部24aの中心点と投影レンズ56の焦点F56(本発明の光学系の焦点に相当)との距離をDlとし、第2発光部24bの中心点と投影レンズ56の焦点F56(本発明の光学系の焦点に相当)との距離をD2とした場合に、Dl<D2の関係がある。
上記構成の車両用灯具ユニット54L(車両用灯具ユニット54Rも同様)においては、第1発光部24aから放射された光は、投影レンズ56を透過して前方に照射される。これにより、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に、中心領域A5Lを照射する第1配光パターンPLaが形成される(図23(a)参照)。
一方、第2発光部24bから放射された光は、投影レンズ56を透過し、光軸AX54に対して水平方向の一方の側(前方左側方)に拡がる光として前方に照射される。第2発光部24bから放射された光が光軸AX54に対して水平方向の一方の側(前方左側方)に拡がる光として前方に照射される理由は、第2発光部24bが投影レンズ56の後側焦点F56(本発明の光学系の焦点に相当)から離間した位置に配置されている(Dl<D2)ためである。
これにより、仮想鉛直スクリーン上に、第1配光パターンPLaに重畳された状態で第2配光パターンPLbが形成される。
第2発光部24bが投影レンズ56の後側焦点F56(本発明の光学系の焦点に相当)から離間した位置に配置されている(Dl<D2)ため、第2配光パターンPLbの水平方向の一方の端部側(左側)の明暗境界は、第1配光パターンPLaの水平方向の一方の端部側(左側)の明暗境界より外側に位置する。すなわち、第2配光パターンPLbは、第1配光パターンPLaの左側縁(左側の明暗境界)から左側方へ延び、かつ、第1配光パターンPLaの左側縁(左側の明暗境界)の上下へ拡がって周辺領域A6Lを照射する配光パターンとなる(図23(a)参照)。
上記のように、半導体発光素子18aと半導体発光素子18bとは、分離壁20を間に挟んで隣接しているため(図25(a)、図25(b)参照)、その発光面10aには、色ムラが発生する(半導体発光素子18a、18b近くは青色が強く、半導体発光素子18a、18bから離れると黄色が強い)。しかしながら、色ムラ側が投影レンズ56の後側焦点F56から離れるのでボケた配光パターンとなる。
なお、車両用灯具ユニット54L(車両用灯具ユニット54Rも同様)は、中央領域A5L及び周辺領域A6Lを照射するように公知のエイミング機構(図示せず)により光軸調整されている。
以上説明したように、本実施形態の車両用灯具ユニット54L(車両用灯具ユニット54Rも同様)によれば、投影レンズ56の後側焦点F56(本発明の光学系の焦点に相当)と各発光部24a、24bとの一致度合の差を用いて、第1発光部24aよりS/P比が高い第2発光部24b(S/P比が2.0以上)からの光をぼけさせ、第1発光部24aからの光よりも照射エリアを広くすることで、第1発光部24aからの光により形成される第1配光パターンPLaの水平方向の一方の端部側(左側)の明暗境界より外側(車両前方の周辺領域A6L)を、第1発光部24aよりS/P比が高い第2発光部24b(S/P比が2.0以上)からの光で照射することが可能となる(図23(a)参照)。これにより、夜間運転時の暗い環境下で周辺視での気づきを速めることが可能となる。
第1発光部24aよりS/P比が高い第2発光部24b(S/P比が2.0以上)と同じS/P比の光源から放射される光を中心領域A5に照射すると、対向車に眩しさ感(グレア)を与えることとなる。
本実施形態の車両用灯具ユニット54L(車両用灯具ユニット54Rも同様)によれば、第2発光部24bよりS/P比が低い第1発光部24a(S/P比が2.0未満)から放射される光を中心領域A5Lに照射する構成であるため、第2発光部24bと同じS/P比の光源から放射される光を中心領域A5Lに照射する場合と比べ、対向車に眩しさ感(グレア)を与えるのを抑えることが可能となる。
以上のように、本実施形態の車両用灯具ユニット54L(車両用灯具ユニット54Rも同様)によれば、対向車に眩しさ感(グレア)を与えるのを抑えることが可能で、なおかつ、夜間運転時の暗い環境下で周辺視での気づきを速めることが可能となる。
[白色光源の構成例2]
次に、周辺視での気づきが速くなる配光パターンPL、PR(図23(a)及び図24(a)参照)を形成するために用いられる白色光源の構成例2について説明する。
図28(a)は周辺視での気づきが速くなる配光パターンPL、PR(図23(a)及び図24(a)参照)を形成するために用いられる白色光源の正面図、図28(b)は図28(a)のA−A断面図、図28(c)は図28(a)のB−B断面図である。
図28(a)〜図28(c)に示すように、白色光源26は、半導体発光素子38aを用いた第1発光部42aと、半導体発光素子38b〜38eを用いた第2発光部42b〜42eと、を含んでいる。
白色光源26は、セラミック基板28(例えば、co-fired ceramic)、セラミック基板28上の縁を取り囲む外枠30、外枠30の内側に配置された分離壁としての内枠32、セラミック基板28、外枠30及び内枠32で囲まれた矩形環状凹部34、セラミック基板28及び内枠32で囲まれた中央凹部36、少なくとも5つの半導体発光素子38a〜38e等を含んでいる。
半導体発光素子38aは、例えば、窒化ガリウム系半導体からなる発光ダイオードで、中央凹部36内(セラミック基板28上面)に配置されて、中央凹部36により取り囲まれている。
残り4つの半導体発光素子38b〜38eは、例えば、窒化ガリウム系半導体からなる発光ダイオードで、矩形環状凹部34内(セラミック基板28上面)に配置されて、半導体発光素子38aを取り囲んでいる。分離壁としての内枠32の高さは、漏光を防止するために、セラ層数を外枠30より多くすることで、外枠30より高くなっている。
半導体発光素子38a(例えば、青色LED素子)は、中央凹部36内に充填された波長変換部材40a(例えば、蛍光体含有層(黄色蛍光体))で覆われて第1発光部42a(白色LED光源)を構成している。
波長変換部材40aは、半導体発光素子38aからの光により励起される光(例えば、黄色光)と当該波長変換部材40aを透過する半導体発光素子38aからの光(例えば、青色光)との混色による白色光を発する。
第1発光部42aは、波長変換部材40a(例えば、黄色蛍光体)の濃度を調整することで、発光色が法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たし、かつ、S/P比が2.0未満(例えば、1.5)に調整されている。
中心領域A5Lを照射する第1発光部42aは、周辺領域A6Lを照射する第2発光部42b(S/P比が2.0以上)よりS/P比が低い(S/P比が2.0未満)。その理由は、周辺領域A6Lを照射する第2発光部42bと同じS/P比の光を中心領域A5Lに照射すると、対向車に眩しさ感(グレア)を与えることとなるため、これを抑えるためである。
なお、第1発光部42aのS/P比は1.5以上が望ましい。その理由は、S/P比が1.5より小さいと、法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たすことが難しくなるためである。
第1発光部42aは、発光色が法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たし、かつ、S/P比が2.0未満の光源であればよく、青色LED素子と蛍光体含有層(黄色蛍光体)とを組み合わせた構造の白色LED光源に限定されない。
例えば、第1発光部42aは、図4(b)に示すように、青色LED素子Bと蛍光体含有層(緑及び赤色蛍光体GR)とを組み合わせた構造の白色LED光源であってもよい。
また、第1発光部42aは、赤色LED素子、緑色LED素子及び青色LED素子を組み合わせた構造の白色LED光源であってもよいし、紫外若しくは近紫外LED素子と蛍光体含有層(RGB蛍光体)とを組み合わせた構造の白色LED光源であってもよい。これらの構造の白色LED光源であっても、波長変換部材40a(例えば、蛍光体)の濃度等を調整することで、発光色が法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たし、かつ、S/P比が2.0未満の光源を構成することが可能である。
第1発光部42aは、発光色が法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たし、かつ、S/P比が2.0未満の光源であればよく、白色LED光源に限定されない。
例えば、第1発光部42aは、レーザ光源(例えば、レーザーダイオード(青色レーザーダイオード))と波長変換部材40a(例えば、レーザー光源からのレーザー光を吸収し、波長変換して所定の波長域の光を放出する黄色蛍光体等の波長変換部材)とを組み合わせた構造の白色レーザー光源であってもよい(図26(a)、図26(b)参照)。半導体発光素子38aとしてレーザ光源を用いることで、半導体発光素子38aとして発光ダイオードを用いる場合と比べ、発光面積が小さく(点光源により近く)かつ高輝度の第1発光部42aを構成することが可能となる。
残り4つの半導体発光素子38b〜38eは、矩形環状凹部34内に充填された波長変換部材40bで覆われて第2発光部42b〜42e(白色LED光源)を構成している。
例えば、半導体発光素子38b〜38eは図4(a)に示す青色LED素子B、赤色LED素子Rで、波長変換部材40bは図4(a)に示す緑色蛍光体Gである。緑色蛍光体Gは、青色LED素子Bから放射される青色光により励起されて緑色光を発光する。緑色光が増えると、発光色がブルーグリーンとなり、法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を逸脱する。そこで、赤色LED素子Rを加えその出力を調整することで、発光色が法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲内となるように調整する。
第2発光部42b〜42eは、波長変換部材40b(例えば、緑色蛍光体)の濃度を調整することで、発光色が法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たし、かつ、S/P比が2.0以上(例えば、2.0)に調整されている。
周辺領域A6Lを照射する第2発光部(例えば、第2発光部42b)は、S/P比が2.0以上の光源である。その理由は、S/P比が2.0以上に増加するにつれ周辺視での気づきが速くなる(反応速度が短くなり、見逃し率が低下する)との知見(実験1、実験2参照)に基づき、夜間運転時の暗い環境下で周辺視での気づきを速める(反応速度を短くし、見逃し率を低下させる)ためである。
なお、第2発光部のS/P比は3.0以下が望ましい。その理由は、S/P比が3.0を超えると、法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たすことが難しくなるためである。
S/P比と見逃し率との相関関係から、S/P比が2.5(又は2.5以上)で、年齢による気づきの差が無くなるという知見(実験1参照)に基づけば、S/P比が2.5又は2.5〜3.0の範囲の光源から放射される光を周辺領域に照射することで、夜間運転時の暗い環境下で年齢による気づきの差が無い車両用前照灯を構成することが可能となる。
第2発光部42b〜42eは、発光色が法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たし、かつ、S/P比が2.0以上の光源であればよく、青色LED素子B、赤色LED素子Rと蛍光体含有層(緑色蛍光体G)とを組み合わせた構造の白色LED光源に限定されない。
例えば、第2発光部42b〜42eは、図4(b)に示すように、青色LED素子Bと蛍光体含有層22b(緑及び赤色蛍光体GR)とを組み合わせた構造の白色LED光源であってもよい。
また、第2発光部42b〜42eは、赤色LED素子、緑色LED素子及び青色LED素子を組み合わせた構造の白色LED光源であってもよいし、紫外若しくは近紫外LED素子と蛍光体含有層(RGB蛍光体)とを組み合わせた構造の白色LED光源であってもよい。これらの構造の白色LED光源であっても、波長変換部材40b(例えば、蛍光体)の濃度等を調整することで、発光色が法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たし、かつ、S/P比が2.0以上の光源を構成することが可能である。
第2発光部42b〜42eは、発光色が法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たし、かつ、S/P比が2.0以上の光源であればよく、白色LED光源に限定されない。
例えば、第2発光部42b〜42eは、レーザ光源(例えば、レーザーダイオード(青色レーザーダイオード))と波長変換部材40b(例えば、レーザー光源からのレーザー光を吸収し、波長変換して所定の波長域の光を放出する黄色蛍光体等の波長変換部材)とを組み合わせた構造の白色レーザー光源であってもよい(図26(a)、図26(b)参照)。半導体発光素子38b〜38eとしてレーザ光源を用いることで、半導体発光素子38b〜38eとして発光ダイオードを用いる場合と比べ、発光面積が小さく(点光源により近く)かつ高輝度の第2発光部42b〜42eを構成することが可能となる。
[車両用前照灯の構成例4]
次に、上記構成の白色光源26を用いた車両用灯具ユニットの構成例として、リフレクタ型(反射型)の車両用灯具ユニット44L´、44R´を説明する。
本構成例4の車両用灯具ユニット44L´、44R´は、上記構成例1の車両用灯具ユニット44Lと比べ、白色光源10に代えて白色光源26を用いている点が相違する。それ以外、上記構成例1の車両用灯具ユニット44L、44Rと同様の構成である。以下、上記構成例1の車両用灯具ユニット44Lとの相違点を中心に説明し、上記構成例1の車両用灯具ユニット44L、44Rと同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
図23(b)は車両前部の「左側」に配置された車両用灯具ユニット44L´を、その光軸を含む水平面で切断した断面図である。
図23(b)に示すように、反射面46Lが単一反射面の場合、第1発光部42aは、反射面46Lの焦点F46L(本発明の光学系の焦点に相当)又はその近傍に配置される。一方、反射面46Lが複数の反射面の場合、第1発光部42aは、各反射面の焦点又はその近傍に配置される。
第2発光部42bは、第2配光パターンPLbの一方の端部側(左側)の明暗境界が第1配光パターンPLaの水平方向の一方の端部側(左側)の明暗境界より外側に位置するように、反射面46Lの焦点F46L(本発明の光学系の焦点に相当)から離間した位置に配置される。
すなわち、第1発光部24aの中心点と反射面46Lの焦点F46L(本発明の光学系の焦点に相当)との距離をDlとし、第2発光部24bの中心点と反射面46Lの焦点F46L(本発明の光学系の焦点に相当)との距離をD2とした場合に、Dl<D2の関係がある。
上記構成の車両用灯具ユニット44Lにおいては、第1発光部42aから放射された光は、反射面46Lで反射されて前方に照射される。これにより、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に、中心領域A5Lを照射する第1配光パターンPLaが形成される(図23(a)参照)。
一方、第2発光部42bから放射された光は、反射面46Lで反射されて反射面46Lの光軸AX46Lに対して水平方向の一方の側(前方左側方)に拡がる光として前方に照射される。第2発光部42bから放射された光が反射面46Lの光軸AX46Lに対して水平方向の一方の側(前方左側方)に拡がる光として前方に照射される理由は、第2発光部42bが反射面46Lの焦点F46L(本発明の光学系の焦点に相当)から離間した位置に配置されている(Dl<D2)ためである。
これにより、仮想鉛直スクリーン上に、第1配光パターンPLaに重畳された状態で第2配光パターンPLbが形成される。
第2発光部24bが反射面46Lの焦点F46L(本発明の光学系の焦点に相当)から離間した位置に配置されている(Dl<D2)ため、第2配光パターンPLbの水平方向の一方の端部側(左側)の明暗境界は、第1配光パターンPLaの水平方向の一方の端部側(左側)の明暗境界より外側に位置する。すなわち、第2配光パターンPLbは、第1配光パターンPLaの左側縁(左側の明暗境界)から左側方へ延び、かつ、第1配光パターンPLaの左側縁(左側の明暗境界)の上下へ拡がって周辺領域A6Lを照射する配光パターンとなる(図23(a)参照)。
なお、車両用灯具ユニット44L´は、中央領域A5L及び周辺領域A6Lを照射するように公知のエイミング機構(図示せず)により光軸調整されている。
図24(b)は車両前部の「右側」に配置された車両用灯具ユニット44R´を、その光軸を含む水平面で切断した断面図である。
図24(b)に示すように、反射面46Rが単一反射面の場合、第1発光部42aは、反射面46Rの焦点F46R(本発明の光学系の焦点に相当)又はその近傍に配置される。一方、反射面46Rが複数の反射面の場合、第1発光部42aは、各反射面の焦点又はその近傍に配置される。
第2発光部42cは、第2配光パターンPLbの一方の端部側(右側)の明暗境界が第1配光パターンPLaの水平方向の一方の端部側(右側)の明暗境界より外側に位置するように、反射面46Rの焦点F46R(本発明の光学系の焦点に相当)から離間した位置に配置される。
すなわち、第1発光部42aの中心点と反射面46Rの焦点F46R(本発明の光学系の焦点に相当)との距離をDlとし、第2発光部42cの中心点と反射面46Rの焦点F46R(本発明の光学系の焦点に相当)との距離をD2とした場合に、Dl<D2の関係がある。
上記構成の車両用灯具ユニット44Rにおいては、第1発光部42aから放射された光は、反射面46Rで反射されて前方に照射される。これにより、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に、中心領域A5Rを照射する第1配光パターンPRaが形成される(図24(a)参照)。
一方、第2発光部42cから放射された光は、反射面46Rで反射されて反射面46Rの光軸AX46Rに対して水平方向の一方の側(前方右側方)に拡がる光として前方に照射される。第2発光部42cから放射された光が反射面46Rの光軸AX46Rに対して水平方向の一方の側(前方右側方)に拡がる光として前方に照射される理由は、第2発光部42cが反射面46Rの焦点F46R(本発明の光学系の焦点に相当)から離間した位置に配置されている(Dl<D2)ためである。
これにより、仮想鉛直スクリーン上に、第1配光パターンPRaに重畳された状態で第2配光パターンPRbが形成される。
第2発光部42bが反射面46Rの焦点F46R(本発明の光学系の焦点に相当)から離間した位置に配置されている(Dl<D2)ため、第2配光パターンPRbの水平方向の一方の端部側(右側)の明暗境界は、第1配光パターンPRaの水平方向の一方の端部側(右側)の明暗境界より外側に位置する。すなわち、第2配光パターンPRbは、第1配光パターンPRaの右側縁(右側の明暗境界)から右側方へ延び、かつ、第1配光パターンPRaの右側縁(右側の明暗境界)の上下へ拡がって周辺領域A6Rを照射する配光パターンとなる(図23(b)参照)。
なお、車両用灯具ユニット44R´は、中央領域A5R及び周辺領域A6Rを照射するように公知のエイミング機構(図示せず)により光軸調整されている。
以上説明したように、本実施形態の車両用灯具ユニット44L´(車両用灯具ユニット44R´も同様)によれば、反射面46Lの焦点F46L(本発明の光学系の焦点に相当)と各発光部42a、42b等との一致度合の差を用いて、第1発光部42aよりS/P比が高い第2発光部42b(S/P比が2.0以上)からの光をぼけさせ、第1発光部42aからの光よりも照射エリアを広くすることで、第1発光部42aからの光により形成される第1配光パターンPLaの水平方向の一方の端部側(左側)の明暗境界より外側(車両前方の周辺領域A6L)を、第1発光部42aよりS/P比が高い第2発光部42b(S/P比が2.0以上)からの光で照射することが可能となる(図23(a)参照)。これにより、夜間運転時の暗い環境下で周辺視での気づきを速めることが可能となる。
第1発光部42aよりS/P比が高い第2発光部42b(S/P比が2.0以上)と同じS/P比の光源から放射される光を中心領域A5に照射すると、対向車に眩しさ感(グレア)を与えることとなる。
本実施形態の車両用灯具ユニット44L´(車両用灯具ユニット44R´も同様)によれば、第2発光部42bよりS/P比が低い第1発光部42a(S/P比が2.0未満)から放射される光を中心領域A5Lに照射する構成であるため、第2発光部42bと同じS/P比の光源から放射される光を中心領域A5Lに照射する場合と比べ、対向車に眩しさ感(グレア)を与えるのを抑えることが可能となる。
以上のように、本実施形態の車両用灯具ユニット44L´(車両用灯具ユニット44R´も同様)によれば、対向車に眩しさ感(グレア)を与えるのを抑えることが可能で、なおかつ、夜間運転時の暗い環境下で周辺視での気づきを速めることが可能となる。
以上、リフレクタ型(反射型)の車両用灯具ユニット44L、44Rにおいて、白色光源10に代えて白色光源26を用いることで、リフレクタ型(反射型)の車両用灯具ユニット44L´、44R´を構成する例について説明したが、プロジェクタ型の車両用灯具ユニット48L、48R、ダイレクトプロジェクション型(直射型)の車両用灯具ユニット54L、54Rにおいても、白色光源10に代えて白色光源26を用いることで、プロジェクタ型の車両用灯具ユニット48L´、48R´、ダイレクトプロジェクション型(直射型)の車両用灯具ユニット54L´、54R´を構成することが可能となる。
これらプロジェクタ型の車両用灯具ユニット48L´、48R´、ダイレクトプロジェクション型(直射型)の車両用灯具ユニット54L´、54R´においても、対向車に眩しさ感(グレア)を与えるのを抑えることが可能で、なおかつ、夜間運転時の暗い環境下で周辺視での気づきを速めることが可能となる。
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。