JP2013101881A - 車両用前照灯 - Google Patents

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Abstract

【課題】夜間運転時の暗い環境下で周辺視での気づきを速めることが可能な車両用前照灯を提供する。
【解決手段】光源と、前記光源から放射される光を車両前方の周辺領域に照射する光学系と、を備えており、前記光源のS/P比が2.0以上とされていることを特徴とする。
【選択図】図24

Description

本発明は、車両用前照灯に係り、特に、夜間運転時の暗い環境下で周辺視での気づきを速めることが可能な車両用前照灯に関する。
従来、車両用前照灯の分野においては、夜間でも昼間と同様に走行できるように明るさの向上が求められており、この要求に応えるためにハロゲンランプやHIDランプ等の高光束光源を採用し光学系を改良する等、明るさ(輝度、光束、発光効率等)の向上を指向して様々なヘッドランプが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、夜間運転時の暗い環境下では赤色光よりも青色光に対する感度が高くなる人間の眼の特性を考慮し、図28(a)、図28(b)に示すように、夜間運転時の視認性を高める観点から赤色成分光よりも青色成分光が多い光を前方の領域A1へ照射するとともに、色味や形状の認識性を高める観点から赤色成分光が多い光を領域A1のうち中心付近の領域A2(及び水平面に対して所定角度上方の領域A3)へ照射するヘッドランプも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2007−59162号公報 特開2008−204727号公報
しかしながら、従来、夜間運転時の暗い環境下で青色光が周辺視での気づきにどのような影響を及ぼすかについては全く知られていなかった。
図29(a)は運転者の中心視及び周辺視の説明図、図29(b)は運転者の中心視、周辺視、錐体、桿体等の関係を説明するための図、図30は運転者が周辺視野に存在する対象物(歩行者や障害物等)を認識するまでの流れを説明するためのフローチャートである。
遠方(例えば、図29(a)中の3つの丸円及び図29(b)中矢印参照)を注視している運転者が周辺視野に存在する対象物(歩行者や障害物等)を認識するまでの流れを詳細に検討すると、図30に示すように、運転者はまず、周辺視(桿体)で対象物に気づき(ステップS1:Yes)、次にその方向に眼を向け(ステップS2)、その後中心視(錐体)で対象物(色や形状等)を認識する(ステップS3)。周辺視(桿体)で気づかない場合(ステップS1:No)、見逃しとなる(ステップS4)。すなわち、周辺視野に存在する対象物を認識するにはまず、気づくことが重要で、気づかなければ、周辺視野に存在する対象物を認識することはできない。
特に、夜間運転時の暗い環境では、周辺視(=桿体=暗所視感度)での気づきを要するシチュエーション(例えば、交差点における右左折、分岐、車線変更、レーンキープ)が多く存在するため、周辺視での気づきを速めることが重要となる。例えば、運転者から見て車両前方手前は、車両用前照灯からの光が十分に照射されないため、周辺視野に存在する対象物の気づきが悪くなる。また、道路幅が広くなるほど、車両前方手前の気づきが悪くなる。
人間の眼の網膜上には錐体及び桿体が分布している。図31は、周辺視及び中心視の特徴を対比してまとめた表である。図31に示すように、錐体と桿体は、分布している場所、数、機能、役割、活動環境が大きく異なる。桿体細胞は、動くものなど視線を向けるべき対象物の検出を行うための細胞で、視野の周辺に分布している(周辺視)。桿体細胞は、暗い環境で働く(暗所視)。一方、錐体細胞は、細かな情報を判断し対象物の識別と認知を行うため細胞で、視野の中心に分布している(中心視)。錐体細胞は、明るい環境で働く(明所視)。つまり、人間の眼は、双方の視細胞(錐体、桿体)が互いに補い合うことで、明るいところから暗いところまで光を感じている。
夜間運転時の環境は、昼間のように明るくない(明所視でない)。また、ヘッドランプで前方を照射しているので真っ暗でもない(暗所視でもない)。つまり、夜間運転時の環境は、明所視と暗所視の間の薄明視の状態(錐体と桿体の両方が活性化している状態)である。順応照度は約1[lx]である。
図32は、明所視での比視感度V(λ)、暗所視での比視感度V´(λ)であり、明所視から薄明視を経て暗所視に移行するにつれ視感度曲線のピークが短波長側にシフトすることを表している。このピークのシフトは、錐体及び桿体の分光感度の違いに起因して起こる。
本願の発明者らは、上記人間の眼の視覚特性を考慮し検討を重ねた結果、夜間運転時の暗い環境下では短波長側のエネルギー成分(青系の色の光)を高めれば、桿体細胞を効率良く刺激することとなり、周辺視での気づきを速めることが可能になると考えた。
そして、各種の実験を行い検討を重ねた結果、夜間運転時の暗い環境下では短波長側のエネルギー成分(青系の色の光)が増加するにつれ周辺視での気づきが速くなること(反応速度が短くなり、見逃し率が低下する)を見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、夜間運転時の暗い環境下で周辺視での気づきを速めることが可能な車両用前照灯を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、光源と、前記光源から放射される光を車両前方の周辺領域に照射する光学系と、を備えており、前記光源のS/P比が2.0以上とされていることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、S/P比が2.0以上の光源から放射される光を車両前方の周辺領域に照射することで、夜間運転時の暗い環境下で周辺視での気づきを速めることが可能となる。
請求項2に記載の発明は、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン上に所定配光パターンを形成する車両用前照灯において、第1光源と、第2光源と、第1光学系と、第2光学系と、を備えており、前記所定配光パターンは、少なくとも、前記仮想鉛直スクリーン上の水平線と鉛直線との交点を含む中心領域と、前記仮想鉛直スクリーン上の前記中心領域の両側に配置された周辺領域と、を含んでおり、前記第1光学系は、前記第1光源から放射される光を前記中心領域に照射するように構成されており、前記第2光学系は、前記第2光源から放射される光を前記中心領域の両側にそれぞれ配置された前記周辺領域に照射するように構成されており、前記第1光源は、前記第2光源よりS/P比が低い光源であることを特徴とする。
第2光源と同じS/P比の光源から放射される光を中心領域に照射すると、対向車に眩しさ感(グレア)を与えることとなる。
請求項2に記載の発明によれば、第2光源よりS/P比が低い第1光源から放射される光を中心領域に照射する構成であるため、第2光源と同じS/P比の光源から放射される光を中心領域に照射する場合と比べ、対向車に眩しさ感(グレア)を与えるのを抑えることが可能となる。
また、請求項2に記載の発明によれば、第1光源よりS/P比が高い第2光源から放射される光を周辺領域に照射する構成であるため、第1光源と同じS/P比の光源から放射される光を周辺領域に照射する場合と比べ、夜間運転時の暗い環境下で周辺視での気づきを速めることが可能となる。
以上のように、請求項2に記載の発明によれば、対向車に眩しさ感(グレア)を与えるのを抑えることが可能で、なおかつ、夜間運転時の暗い環境下で周辺視での気づきを速めることが可能となる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記第2光源のS/P比が2.0以上とされていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、S/P比が2.0以上の第2光源から放射される光を周辺領域に照射することで、夜間運転時の暗い環境下で周辺視での気づきを速めることが可能となる。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記第1光源のS/P比が1.5以上とされていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、第2光源(S/P比2.0以上)よりS/P比が低い第1光源(S/P比1.5以上)から放射される光を中心領域に照射する構成であるため、第2光源と同じS/P比の光源(S/P比2.0以上)から放射される光を中心領域に照射する場合と比べ、対向車に眩しさ感(グレア)を与えるのを抑えることが可能となる。
請求項5に記載の発明は、請求項2から4のいずれかに記載の発明において、第3光源と第3光学系とをさらに備えており、前記所定配光パターンは、前記仮想鉛直スクリーン上の前記中心領域と前記周辺領域との間に配置され、走行中に相対的に移動する標識が通過する中間領域をさらに含んでおり、前記第3光学系は、前記第3光源から放射される光を前記中間領域に照射するように構成されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明によれば、走行中に相対的に移動する標識が通過する中間領域を第1光源及び第2光源とは異なるS/P比の第3光源で照射することが可能となる。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記第3光源のS/P比が1.8以上とされていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明によれば、S/P比が1.8以上の第3光源から放射される光を、走行中に相対的に移動する標識が通過する中間領域に照射することで、夜間運転時の暗い環境下で、標識(特に白、青、緑)を明瞭に見せることが可能となる。
請求項7に記載の発明は、請求項2から6のいずれかに記載の発明において、前記所定配光パターンは、前記仮想鉛直スクリーン上の水平線以下に配置された手前領域をさらに含んでおり、前記第2光学系は、前記第2光源から放射される光を前記周辺領域及び前記手前領域に照射するように構成されていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明によれば、第2光源(例えば、S/P比が2.0以上の第2光源)から放射される光を、仮想鉛直スクリーン上の水平線以下に配置された手前領域に照射することで、照度を上げることなく、車両前方手前領域の明るさ感を高めることが可能となる。
以上説明したように、本発明によれば、夜間運転時の暗い環境下で周辺視での気づきを速めることが可能な車両用前照灯を提供することが可能となる。
実験1に用いた装置の構成図である。 実験1に用いた光源のS/P比を示すグラフである。 実験1に用いた各光源の分光分布である。 (a)S/P比が2.0以上の光源の構成例、(b)S/P比が2.0以上の光源の構成例(変形例)である。 実験1に用いたLED5500K(new1)の分光分布である。 実験1に用いたLED5500K(new2)の分光分布である。 視感度の形状から予測される周辺視での気づきの高い光源の分光分布の例である。 横軸がS/P比、縦軸が反応時間RT及び見逃し率の座標系に、実験2の測定結果(平均値)をプロットしたグラフである。 横軸がS/P比、縦軸が反応時間RT及び見逃し率の座標系に、実験2の測定結果(反応時間RTの平均値、見逃し率の平均値)を描いたグラフである。 実験2を行った環境を説明するための図である。 実験3を行った環境を説明するための図である。 (a)横軸がS/P比、縦軸が評価スケールの座標系に、実験3の日本人の評価値(平均値)をプロットしたグラフ、(b)横軸がS/P比、縦軸が評価スケールの座標系に、実験3の米国人の評価値(平均値)をプロットしたグラフである。 実験4に用いた装置の構成図である。 横軸がS/P比、縦軸が明るさ感の座標系に、実験4の測定結果(平均値)をプロットしたグラフである。 横軸が車両中心からの左右方向距離、縦軸が車両前面からの前方距離の座標系に、実験5の測定結果(平均値)をプロットしたグラフである。 横軸が車両中心からの左右方向距離、縦軸が照度の座標系に、実験5の測定結果(平均値)をプロットしたグラフである。 周辺視での気づきが速くなる配光パターン(スクリーン配光)の例である。 周辺視での気づきが速くなる配光パターン(路面配光)の例である。 周辺視での気づきが速くなる配光パターン(運転者の視点)の例である。 運転者の視線位置(アイポイント)を測定した図である。 中心視、周辺視、錐体、桿体等の関係を説明するための図である。 夜間運転時の暗い環境下、交差点での右折時(又は左折時)に、周辺視野に存在する歩行者等の対象物に対する気づきを速めることが可能となることを説明するための図である。 図17〜図19に示した周辺視での気づきが速くなる配光パターンを形成するための車両用前照灯100を搭載した車両Vの正面図である。 (a)灯具ユニット10を、その光軸を含む鉛直面で切断した断面図、(b)灯具ユニット20を、その光軸を含む鉛直面で切断した断面図、(c)灯具ユニット30を、その光軸を含む鉛直面で切断した断面図である。 (a)灯具ユニット10のシェード14の正面図、(b)灯具ユニット20のシェード24の正面図、(c)灯具ユニット30のシェード34の正面図である。 (a)リフレクタ型の灯具ユニット40の断面図、(b)ダイレクトプロジェクション型の灯具ユニットの断面図である。 S/P比が異なる複数の白色LEDをマトリックス状に配置した光源52の例である。 (a)従来の車両用前照灯の配光パターン(スクリーン配光)、(b)従来の車両用前照灯の配光パターン(路面配光)の例である。 (a)運転者の中心視及び周辺視の説明図、(b)運転者の中心視、周辺視、錐体、桿体等の関係を説明するための図である。 運転者が周辺視野に存在する対象物(歩行者や障害物等)を認識するまでの流れを説明するためのフローチャートである。 周辺視及び中心視の特徴を対比してまとめた表である。 明所視での比視感度V(λ)、暗所視での比視感度V´(λ)である。
以下、本発明の一実施形態である車両用前照灯について、図面を参照しながら説明する。
本願の発明者らは、人間の眼の視覚特性を考慮し検討を重ねた結果、夜間運転時の暗い環境下では短波長側のエネルギー成分(青系の色の光)を高めれば、桿体細胞を効率良く刺激することとなり、周辺視での気づきを速めることが可能になると考えた。
そして、各種の実験を行い検討を重ねた結果、夜間運転時の暗い環境下では短波長側のエネルギー成分(青系の色の光)が増加するにつれ周辺視での気づきが速くなること(反応速度が短くなり、見逃し率が低下する)を見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。
まず、本願の発明者らが行った実験1〜5について説明する。
以下の実験では、短波長側のエネルギー成分(青系の色の光)の割合を表す指標としてS/P比を用いた。S/P比は、次の式で表される。ただし、S(λ)は光源のスペクトル、V(λ)は明所視での比視感度、V´(λ)は暗所視での比視感度である。
S/P比は、公知の測定装置(例えば、分光放射輝度計)を用いて測定対象の光源から放射される光のスペクトルを測定し、上記式を用いて演算することで求められる。
従来、車両用前照灯においては、S/P比2.0以上の光源は用いられておらず、夜間運転時の暗い環境下でS/P比2.0以上の光源からの光が周辺視(=桿体=暗所視感度)での気づきにどのような影響を及ぼすかについては全く知られていなかった。
次の表1に、本願の発明者らが測定した一般的な車両用前照灯の光源のS/P比を示す。S/P比が高い光源ほど、短波長側のエネルギー成分(青系の色の光)が多いことを表す。
表1の各光源は、市販の車両に実際に搭載されている車両用前照灯の光源として用いられている光源である。表1を参照すると、一般的な車両用前照灯の光源のS/P比は、1.5〜1.8程度であることが分かる。
ハロゲン電球、HID電球はその構造上S/P比を変化させることが難しく、S/P比はほぼ表1に示した1.46、1.75となる。
表1の各LEDは、青色LED素子とYAG等の黄色蛍光体とを組み合わせた構造の白色LEDである。この構造の白色LEDは、発光色が、法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たし、かつ、運転者の眼に自然な色に見えるように、黄色蛍光体の濃度が調整されている。なお、法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲は、座標値(0.31,0.28),(0.44,0.38),(0.50,0.38),(0.50,0.44),(0.455,0.44),(0.31,0.35)を結ぶ直線で囲まれた範囲である。
上記構造の白色LEDは、S/P比が1.5より小さいと、法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たすことが難しくなる。従って、S/P比の下限は1.5近傍となる。一方、S/P比が2程度(1.95程度)までであれば法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たすことが可能であるが、S/P比が1.8を超えて2に近づくと黄色光が減って青っぽい光となり、運転者の眼に不自然な色に見える。また、S/P比が1.8を超えて2に近づくと効率が低下し(光束が減少し)、車両用前照灯の光源に求められる明るさを確保できなくなる。従って、運転者の目に自然な色に見え、かつ、高効率の車両用前照灯を構成する観点から、上記構造の白色LEDのS/P比の上限は1.8近傍となる。
以上のように、従来、一般的な車両用前照灯の光源のS/P比は、1.5〜1.8程度で、S/P比2.0以上の光源は用いられておらず、夜間運転時の暗い環境下でS/P比2.0以上の光源からの光が周辺視(=桿体=暗所視感度)での気づきにどのような影響を及ぼすかについては全く知られていなかった。
[実験1]
本願の発明者らは、夜間運転時の暗い環境下でS/P比(特にS/P比2.0以上)が周辺視(=桿体=暗所視感度)での気づきにどのような影響を及ぼすかを確認すべく、以下の実験を行った。
図1は実験1に用いた装置の構成図、図2は実験1に用いた光源のS/P比を示すグラフである。
実験には、図1に示す構成の装置を用い、呈示光の光源として、次の表2及び図2に示す相関色温度及びS/P比が異なる合計7つの光源を用いた。
図3は、実験1に用いた各光源の分光分布である。なお、THはハロゲン電球、HIDはHID電球を表している。LEDの横に付した数字(例えば、4500K)は相関色温度を表している。
LED4500K、LED5500K、LED6500Kは、青色LED素子及び黄色蛍光体を組み合わせた構造の白色LEDで、黄色蛍光体の濃度を調整することで、相関色温度及びS/P比を表2に示すように調整した。
図4(a)はS/P比が2.0以上の光源(LED5500K(new1)、LED5500K(new2))の構造例である。
図4(a)に示すように、LED5500K(new1)、LED5500K(new2)は、青色LED素子B、赤色LED素子R及び緑色蛍光体Gを組み合わせた構造の白色LEDで、緑色蛍光体Gの濃度を調整し緑色光を増やすことで、S/P比を表2に示すように調整した。緑色蛍光体Gは、青色LED素子B、赤色LED素子Rを覆っており、青色LED素子Bから放射される青色光により励起されて緑色光を発光する。緑色光が増えると、発光色がブルーグリーンとなり、法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を逸脱する。そこで、赤色LED素子Rを加えその出力を調整することで、発光色が法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲内となるように調整した。
LED5500K(new1)及びLED5500K(new2)は、分光分布が周辺視での気づきが高いと予測される光源の分光分布に近い形状となるように調整した。
図5はLED5500K(new1)の分光分布、図6はLED5500K(new2)の分光分布である。図7は、視感度の形状から予測される周辺視での気づきの高い光源の分光分布の例である。図7に示した光源によれば、青色LED素子からの青色光(図7中丸数字の1参照)、青色LED素子からの青色光(図7中丸数字の1参照)によって励起される緑色蛍光体からの緑色光(図7中丸数字の2参照)、赤色LED素子からの赤色光(図7中丸数字の3参照)により、白色光が実現される。図7に示した分光分布によれば、図7中の丸数字の2の山が視感度曲線に合致しているため、効率良く明るさを感じさせることが可能となる。
図5、図6を参照すると、LED5500K(new1)及びLED5500K(new2)の分光分布が、図7に示した周辺視での気づきが高いと予測される光源の分光分布に近い形状であることが分かる。
実験は、次の手順で行った。まず、図1に示すように、正面2mの位置に設置されたディスプレイ(平仮名が表示されている)を被験者が注視して表示された文字を読んでいる間、正面に対し左(又は右)30°、45°、60°、75°の位置に一定輝度(1、0.1、0.01[cd/m])に調整した光源が照射しているグレーの色材をランダムに呈示した。
そして、光源を点灯してから(白色光を呈示してから)、呈示光(グレーの色材からの反射光)に気づいた被験者が、手元にあるボタンを押すまでの時間(反応時間RT)を測定した。以上を、光源ごとに測定した。
なお、実験に用いた光源の輝度設定値は1、0.1、0.01[cd/m]の3段階、背景輝度は1[cd/m]である。被験者は45歳未満4名、45歳以上4名である。
本願の発明者らは、その測定結果を分析した結果、45歳以上では、S/P比が増加するにつれ反応速度が短くなり、見逃し率が低下すること、すなわち、45歳以上では、S/P比が増加するにつれ周辺視での気づきが速くなること、を見出した。
図8、図9に測定結果を示す。図8は、横軸がS/P比、縦軸が反応時間RT及び見逃し率の座標系に、測定結果(平均値)をプロットしたグラフである。なお、見逃し率とは、光源を点灯してから被験者が呈示光に気づくのに2秒以上経過した割合のことである。図8中の数字は各データ群の決定係数である。図9は、横軸がS/P比、縦軸が反応時間RT及び見逃し率の座標系に、測定結果(反応時間RTの平均値、見逃し率の平均値)を描いたグラフである。
図8を参照すると、45歳以上では、S/P比が2.0以上に増加するにつれ反応速度が短くなり、見逃し率が低下すること、すなわち、45歳以上では、S/P比が2.0以上に増加するにつれ周辺視での気づきが速くなること、が分かる。
この知見に基づけば、S/P比が2.0以上の光源から放射される光を車両前方の周辺領域に照射することで、夜間運転時の暗い環境下で周辺視での気づきが速くなる(反応速度RTが短くなり、見逃し率が低下する)車両用前照灯を構成することが可能となる。なお、45歳未満では、S/P比が増加しても反応時間及び見逃し率はほぼ横ばいで、両者の間に相関は見られない。
また、図8を参照すると、S/P比と見逃し率との相関関係から、S/P比が2.5(又は2.5以上)で、年齢による気づきの差がなくなることが分かる。
この知見に基づけば、S/P比が2.5(又は2.5以上)の光源から放射される光を車両前方の周辺領域に照射することで、夜間運転時の暗い環境下で年齢による気づきの差がない車両用前照灯を構成することが可能となる。
また、図9中のLED5500K(new1)及びLED5500K(new2)と他の光源とを比べると、LED5500K(new1)及びLED5500K(new2)は、45歳未満の反応時間RTと45歳以上の反応時間RTとの差(及び45歳未満の見逃し率と45歳以上の見逃し率との差)が小さいことが分かる。
また、図9中のLED5500K(new1)及びLED5500K(new2)と他の光源とを比べると、LED5500K(new1)及びLED5500K(new2)は、45歳以上の反応時間RTが短く、見逃し率が低いことが分かる。
[実験2]
本願の発明者らは、実際の夜間運転時の暗い環境下でS/P比(特にS/P比2.0以上)が周辺視(=桿体=暗所視感度)での気づきにどのような影響を及ぼすかを確認すべく、以下の実験を行った。
図10は、実験2を行った環境を説明するための図である。
実験では、図10に示すように、交差点を右折する車両を想定して、交差点内に車両Vを停車させた。そして、交差点を右折する車両Vの進行方向の横断歩道の手前(運転者Dの死角位置)に歩行者Mを位置させた。車両用前照灯の光源として、S/P比が異なる合計3つの光源(S/P比:1.5、2.0、2.5)を用いた。
S/P比が1.5、2.0の光源は、青色LED素子及び黄色蛍光体を組み合わせた構造の白色LEDで、黄色蛍光体の濃度を調整することで、S/P比を1.5、2.0に調整した。
S/P比が2.5の光源は、青色LED素子、赤色LED素子及び緑色蛍光体を組み合わせた構造の白色LEDで、緑色蛍光体の濃度を調整することで、S/P比を2.5に調整した。
実験は、次の手順で行った。歩行者Mが横断歩道の手前から反対側に向かって歩き始めてから、運転者Dが歩行者Mに気づくまでの時間を測定した。以上を、光源ごとに測定した。被験者は、45歳未満4名、45歳以上4名である。
次の表3に測定結果を示す。
表3を参照すると、45歳未満、45歳以上のいずれでも、S/P比が増加するにつれ歩行者に気づくまでの歩行距離が短くなること、が分かる。
例えば、45歳未満について、S/P比が1.5の光源とS/P比が2.5の光源とを比べると、S/P比2.5の光源の方が26cm速く気づくことが分かる。歩行速度が秒速50cmと仮定すると、S/P比2.5の光源の方が26/50=0.52秒速く気づくことになる。また、車速が秒速1mと仮定すると、S/P比2.5の光源の方が歩行者の52cm手前で止まれることになる。
同様に、45歳未満について、S/P比が1.5の光源とS/P比が2.0の光源とを比べると、S/P比2.0の光源の方が13cm速く気づくことが分かる。歩行速度が秒速50cmと仮定すると、S/P比2.0の光源の方が13/50=0.26秒速く気づくことになる。また、車速が秒速1mと仮定すると、S/P比2.0光源の方が歩行者の26cm手前で止まれることになる。
一方、45歳以上について、S/P比が1.5の光源とS/P比が2.5の光源とを比べると、S/P比2.5の光源の方が30cm速く気づくことが分かる。歩行速度が秒速50cmと仮定すると、S/P比2.5の光源の方が30/50=0.6秒速く気づくことになる。また、車速が秒速1mと仮定すると、S/P比2.5の光源の方が歩行者の60cm手前で止まれることになる。
同様に、45歳以上について、S/P比が1.5の光源とS/P比が2.0の光源とを比べると、S/P比2.0の光源の方が14cm速く気づくことが分かる。歩行速度が秒速50cmと仮定すると、S/P比2.0の光源の方が14/50=0.28秒速く気づくことになる。また、車速が秒速1mと仮定すると、S/P比2.0光源の方が歩行者の28cm手前で止まれることになる。
以上のように、実際の夜間運転時の暗い環境下では、45歳未満、45歳以上のいずれでも、S/P比が増加するにつれ歩行者に気づくまでの歩行距離(歩行者に気づくまでの秒数)が短くなり、歩行者の手前で停車できること、すなわち、S/P比が増加するにつれ周辺視での気づきが速くなること、を確認した。
次の表4は、ハロゲン電球、HID電球、白色LEDの45歳以上の反応時間RT、見逃し率をまとめた表である。S/P比が2.5の光源は、青色LED素子、赤色LED素子及び緑色蛍光体を組み合わせた構造の白色LEDで、緑色蛍光体の濃度を調整することで、S/P比を2.5に調整した。被験者は45歳未満4名、45歳以上4名である。
ハロゲン電球とS/P比2.5の光源とを比べると、45歳以上では、S/P比2.5の光源は、反応時間RTが0.12秒短くなり、見逃し率が8%低下することが分かる。また、表4を参照すると、S/P比が2.5の光源の反応時間RTは0.79秒で、これは一般的に知られている車両運転時の反応時間(危険と判断してからブレーキが効き始めるまで時間)0.7〜0.9秒を十分に満たしていることが分かる。
[実験3]
従来、S/P比が標識色の見え方にどのような影響を及ぼすかについては全く知られていなかった。
本願の発明者らは、夜間運転時の暗い環境下でS/P比が標識色の見え方にどのように影響するかを確認すべく、以下の実験を行った。
図11は、実験3を行った環境を説明するための図である。
実験では、図11に示すように、停車させた車両Vの50m前方に5色色票S(標識に用いられる代表的な5色、すなわち、白、赤、緑、青、黄を含む色票)を配置した。車両用前照灯の光源として、次の表5に示すS/P比が異なる合計5つの光源を用いた。
LED4500K、LED5500K、LED6500Kは、青色LED素子及び黄色蛍光体を組み合わせた構造の白色LEDで、黄色蛍光体の濃度を調整することで、相関色温度及びS/P比を表5に示すように調整した。
実験は、次の手順で行った。5色色票(白、赤、緑、青、黄)を照射し(照度:約10[lx])、主観的評価スケール(3:HID電球で照射した時の見え方、これに対して、1:ぼけたさえない見え方、2:1と3の間の見え方、5:はっきりくっきりした見え方、4:3と5の間の見え方)を用いて、5色色票の見え方を評価した。以上を、光源ごとに評価した。被験者は日本人が16名、米国人が43名である。
本願の発明者らは、その評価結果を分析した結果、S/P比が高い光源は、人種によらずはっきりくっきり見えること、及び、S/P比が高い光源(特にS/P比が1.8以上の光源)は、白、青、緑を明瞭にすること、を見出した。
図12(a)、図12(b)に評価結果を示す。図12(a)は横軸がS/P比、縦軸が評価スケールの座標系に、日本人の評価値(平均値)をプロットしたグラフ、図12(b)は横軸がS/P比、縦軸が評価スケールの座標系に、米国人の評価値(平均値)をプロットしたグラフである。
図12(a)、図12(b)を参照すると、S/P比が高い光源に対する評価値は基準の3より高く、S/P比が高い光源は人種によらずはっきりくっきり見えること、及び、S/P比が高い光源(特にS/P比が1.8以上の光源)は、白、青、緑を明瞭にすること、が分かる。
この知見に基づけば、S/P比が1.8以上の光源から放射される光を標識に照射することで、夜間運転時の暗い環境下で標識を明瞭に見せることが可能な車両用前照灯を構成することが可能となる。
[実験4]
従来、S/P比が明るさ感(参照光源とテスト光源との輝度差)にどのように影響するかについては全く知られていなかった。
本願の発明者らは、夜間運転時の暗い環境下でS/P比が明るさ感にどのように影響するかを確認すべく、以下の実験を行った。
図13は実験4に用いた装置の構成図である。
実験には、図13に示す構成の装置を用い、テスト光源として、次の表6に示す相関色温度及びS/P比が異なる合計3つの白色LEDを用いた。
参照光源として、次の表7に示すS/P比が異なる合計2つの光源を用いた。
LED3800K、LED5300K、LED5800Kは、青色LED素子及び黄色蛍光体を組み合わせた構造の白色LEDで、黄色蛍光体の濃度を調整することで、相関色温度及びS/P比を表6に示すように調整した。
実験は、次の手順で行った。一方の眼でテスト光源を、他方の眼で参照光源を見て、テスト光源が参照光源と同じ明るさになるように被験者自身にテスト光源の電流値を調整してもらい、その調整後のテスト光源の分光放射輝度を測定し、参照光源とテスト光源との輝度差を計算した。以上を、テスト光源、参照光源ごとに測定した。被験者は16名である。
本願の発明者らは、その測定結果を分析した結果、白色LEDはS/P比が増加するにつれ明るさ感が増加すること、を見出した。
図14は、横軸がS/P比、縦軸が参照光源とテスト光源の明るさが同じと感じた時の輝度差の座標系に、測定結果である参照光源とテスト光源との輝度差(平均値)をプロットしたグラフである。
図14を参照すると、輝度差がマイナスとなっている。これは、テスト光源の方が、参照光源より少ない輝度値で同じ明るさを得ていることを示している。よって、図14に示すように、S/P比が高くなるに従い、右下がりのグラフになる。白色LEDはS/P比が高くなるに従い、明るさ感(参照光源とテスト光源との輝度差)が増すこと、及び、白色LEDはハロゲン電球に対し約13〜26%、HID電球に対し約3〜17%明るさ感(参照光源とテスト光源との輝度差)が増すことが分かる。
[実験5]
本願の発明者らは、実際の夜間運転時の暗い環境下でS/P比が明るさ感にどのように影響するかを確認すべく、以下の実験を行った。
実験では、車両用前照灯の光源として、次の表8に示す相関色温度及びS/P比が異なる合計3つの光源を用いた。
LED4500K、LED5500Kは、青色LED素子と黄色蛍光体とを組み合わせた構造のLEDであり、黄色蛍光体の濃度を調整することで、相関色温度及びS/P比を表8に示すように調整した。
実験は、次の手順で行った。車両前方手前領域(自車線の車両前方手前路面上の領域)を同じ配光パターンで照射し、運転者(被験者)が最も明るく感じる範囲を申告してもらい、その範囲までの距離と照度とを測定した。以上を、光源ごとに測定した。被験者は5名である。
本願の発明者らは、その測定結果を分析した結果、照度が増加しても明るいと感じる範囲は広がらず、S/P比が増加するにつれ明るいと感じる範囲が広がること、すなわち、車両前方手前領域の明るさ感は照度ではなくS/P比と相関しており、照度ではなくS/P比を上げることで車両前方手前領域の明るさ感を高めることが可能となることを見出した。
図15、図16に測定結果を示す。図15は、横軸が車両中心からの左右方向距離、縦軸が車両前面からの前方距離の座標系に、測定結果(平均値)をプロットしたグラフである。図16は、横軸が車両中心からの左右方向距離、縦軸が照度の座標系に、測定結果(平均値)をプロットしたグラフである。
図15、図16を参照すると、S/P比が高いLED5500Kは他の光源と比べて明るいと感じる範囲が広く、その照度は同等もしくはそれ以下であること、及び、照度が同じ場合、S/P比が高いLED5500Kで照らした範囲は、他の光源と比較して、明るいと感じる範囲が広くなること、が分かる。すなわち、車両前方手前領域の明るさ感は照度ではなくS/P比と相関しており、照度ではなくS/P比を上げることで車両前方手前領域の明るさ感を高めることが可能となること、が分かる。
この知見に基づけば、S/P比が2.0以上の光源から放射される光を、車両前方手前領域に照射することで、夜間運転時の暗い環境下で、照度を上げることなく、車両前方手前領域(自車線の車両前方手前路面上の領域)の明るさ感を高めることが可能となる。
[周辺視での気づきが速くなる配光パターン例]
本出願の発明者らは、上記各実験1〜5から得た知見に基づき、周辺視での気づきが速くなる配光パターンを検討した。
以下、発明者らが検討した周辺視での気づきが速くなる配光パターン例について説明する。
図17は周辺視での気づきが速くなる配光パターン(スクリーン配光)の例、図18は周辺視での気づきが速くなる配光パターン(路面配光)の例、図19は周辺視での気づきが速くなる配光パターン(運転者の視点)の例である。
図17に示した配光パターンPは、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に形成された配光パターンで、中心領域A1、周辺領域A2、中間領域A3、手前領域A4を含んでいる。各領域A1〜A4は、路面上では図18に示す位置に配置され、運転者の視点では図19に示す位置に配置される。
中心領域A1は、遠方(例えば消失点)を注視している運転者の中心視野(錐体)に対応する領域である。
本実施形態では、中心領域A1として、図17に示すように、仮想鉛直スクリーン上の水平線と鉛直線との交点を含む高光度領域(ホットゾーンと称される)、例えば、仮想鉛直スクリーン上の左5°上2°の位置、左5°下2°の位置、右5°下2°の位置、右5°上2°の位置、左5°上2°の位置を結ぶ直線で囲まれた領域を選定した。
中心領域A1を左右5°にした理由は、運転者の視線位置(アイポイント)が左右5°の範囲に集中するためである。図20は、運転者の視線位置(アイポイント)を測定した図で、図20中の各黒点が運転中の運転者の視線位置を表している。図20を参照すると、各黒点が左右5°の範囲に集中しており、運転者の視線位置(アイポイント)が左右5°の範囲に集中することが分かる。
中心領域A1を上下2°にした理由は、主に法規が求める明るさを満たし、かつ、遠方視認性の高い配光を形成するためである。
なお、中心領域A1は、遠方(例えば消失点)を注視している運転者の中心視野(錐体)に対応する領域であればよく、法規が求める明るさを満たす限り、左右5°、上下2°の領域に限定されない。
中心領域A1を照射する光源は、周辺領域A2を照射する光源(本実施形態では、S/P比が2.0の光源を例示)よりS/P比が低い光源である(本実施形態では、S/P比が1.5の光源を例示)。その理由は、周辺領域A2を照射する光源と同じS/P比の光源(例えば、S/P比が2.0の光源)から放射される光を中心領域A1に照射すると、対向車に眩しさ感(グレア)を与えることとなるため、これを抑えるためである。
なお、中心領域A1は、路面上では図18に示すように車両前後方向に延びる基準軸AXに対して左右5°の領域に配置され、運転者の視点では図19に示す位置に配置される。
以上のように、周辺領域A2を照射する光源(本実施形態では、S/P比が2.0の光源を例示)よりS/P比が低い光源(本実施形態では、S/P比が1.5の光源を例示)から放射される光を車両前方の中心領域A1に照射することで、対向車に眩しさ感(グレア)を与えるのを抑えることが可能となる。
周辺領域A2は、遠方(例えば消失点)を注視している運転者の周辺視野(桿体)に対応する領域である。
本実施形態では、周辺領域A2として、図17に示すように、仮想鉛直スクリーン上の中心領域A1の左右両側、例えば、仮想鉛直スクリーン上の右15°上6°の位置、右80°上6°の位置、右80°下14°の位置、右15°下14°、右15°上6°の位置を結ぶ直線で囲まれた右領域A2R、及び、仮想鉛直スクリーン上の左15°上6°の位置、左80°上6°の位置、左80°下14°の位置、左15°下14°、左15°上6°の位置を結ぶ直線で囲まれた左領域A2Lを選定した。
右領域A2Rを右15°〜右80°にした理由は、左右15°以上の範囲には桿体が多く分布しており、これを刺激するためである。左領域A2Lを左15°〜左80°にした理由も同様である。図21を参照すると、桿体が左右15°以上の範囲に広く分布していることが分かる。図21は、中心視、周辺視、錐体、桿体等の関係を説明するための図である。
右領域A2Rを上6°〜下14°の範囲にした理由は、主に交差点での右折時に歩行者等の対象物を照明するためである。左領域A2Lを上6°〜下14°の範囲にした理由も同様である。
なお、周辺領域A2は、遠方(例えば消失点)を注視している運転者の周辺視野(桿体)に対応する領域であればよく、法規が求める明るさを満たす限り、右15°〜右80°(左15°〜左80°)、上6°〜下14°の領域に限定されない。
周辺領域A2を照射する光源は、S/P比が2.0以上の光源である(本実施形態では、S/P比が2.0の光源を例示)である。S/P比が2.0以上の光源にした理由は、S/P比が2.0以上に増加するにつれ周辺視での気づきが速くなる(反応速度が短くなり、見逃し率が低下する)との知見(実験1、実験2参照)に基づき、夜間運転時の暗い環境下で周辺視での気づきを速める(反応速度を短くし、見逃し率を低下させる)ためである。
なお、周辺領域A2は、路面上では図18に示すように車両前後方向に延びる基準軸AXに対して右15°〜右80°、左15°〜左80°の領域に配置され、運転者の視点では図19に示す位置に配置される。
以上のように、S/P比が2.0以上の光源から放射される光を車両前方の周辺領域A2(A2R、A2L)に照射することで、夜間運転時の暗い環境下、例えば、図22に示すように、交差点での右折時(又は左折時)に、周辺視野に存在する歩行者M等の対象物に対する気づきを速めることが可能となる。
中間領域A3は、走行中に相対的に移動する標識が通過する領域をカバーする領域である。
本実施形態では、中間領域A3として、図17に示すように、中心領域A1と周辺領域A2との間、例えば、仮想鉛直スクリーン上の右5°上0.5°の位置、右5°下1°の位置、右15°下2°の位置、右15°上3°の位置、右5°上0.5°の位置を結ぶ直線で囲まれた右領域A3R、及び、仮想鉛直スクリーン上の左15°上3°の位置、左15°下2°の位置、左5°下1°の位置、左5°上0.5°の位置、左15°上3°の位置を結ぶ直線で囲まれた左領域A3Lを選定した。
右領域A3R及び左領域A3Lの2つの領域を配置した理由は、路上の両側に設置された標識を照明するためである。
右領域A3Rを中心から外側に向かうにつれ(右5°から右15°に向かうにつれ)その縦幅が拡がる台形形状にした理由は、走行中に見かけ上の高さが低から高へと変化する標識のみを照明するためである。左領域A3Lを中心から外側に向かうにつれ(左5°から左15°に向かうにつれ)その縦幅が拡がる台形形状にした理由も同様である。
なお、中間領域A3は、運転者の視点から見て、走行中に相対的に移動する標識が通過する領域をカバーする領域であればよく、上記台形形状に限定されない。例えば、中間領域A3は、上記台形形状を含む矩形形状であってもよい。
中間領域A3を照射する光源は、S/P比が1.8以上の光源である(本実施形態では、S/P比が1.8の光源を例示)。S/P比が1.8以上の光源にした理由は、S/P比が高い光源(特にS/P比が1.8以上の光源)は、白、青、緑を明瞭にするとの知見(実験3参照)に基づき、夜間運転時の暗い環境下で標識(特に、白、青、緑)を明瞭に見せるためである。
なお、中間領域A3は、路面上では図18に示すように車両前後方向に延びる基準軸AXに対して右5°〜右15°、左5°〜左15°の領域に配置され、運転者の視点では図19に示す位置に配置される。
以上のように、S/P比が1.8以上の光源から放射される光を車両前方の中間領域A3(A3R、A3L)に照射することで、夜間運転時の暗い環境下で、標識(特に白、青、緑)を明瞭に見せることが可能となる。
手前領域A4は、車両前方手前領域(自車線の車両前方手前路面上の領域)をカバーする領域である。
本実施形態では、手前領域A4として、図17に示すように、仮想鉛直スクリーン上の水平線より下(運転者の視点で自車線の手前)、例えば、仮想鉛直スクリーン上の左9.4°下3°の位置、左17°下8°の位置、右16.7°下8°の位置、右8.3°下3°の位置を結ぶ直線で囲まれた領域を選定した。
手前領域A4を仮想鉛直スクリーン上において鉛直下方に向かうにつれ(下3°から下8°に向かうにつれ)その横幅が拡がる台形形状にした理由は、自車線の車両前方手前路面上の領域のみを照明するためである(図19参照)。
なお、手前領域A4は、車両前方手前領域(自車線の車両前方手前路面上の領域)をカバーする領域であればよく、上記台形形状に限定されない。例えば、手前領域A4は、上記台形形状を含む矩形形状であってもよい。
手前領域A4を照射する光源は、周辺領域A3と同じS/P比が2.0以上の光源である(本実施形態では、S/P比が2.0の光源を例示)。S/P比が2.0以上の光源にした理由は、車両前方手前領域の明るさ感は照度ではなくS/P比と相関しており、照度ではなくS/P比を上げることで車両前方手前領域の明るさ感を高めることが可能となるとの知見(実験4、5参照)に基づき、夜間運転時の暗い環境下で、照度ではなくS/P比を上げることで車両前方手前領域の明るさ感を高めるためである。
なお、手前領域A4は、路面上では図18に示すように車両前方5〜15m、幅3.5mの領域に配置され、運転者の視点では図19に示す位置に配置される。
以上のように、S/P比が2.0以上の光源から放射される光を車両前方の手前領域A4に照射することで、夜間運転時の暗い環境下で、照度を上げることなく、車両前方手前領域(自車線の車両前方手前路面上の領域)の明るさ感を高めることが可能となる。
[車両用前照灯の構成例]
次に、図17〜図19に示した周辺視での気づきが速くなる配光パターンPを形成するための車両用前照灯の構成例について説明する。
図23は図17〜図19に示した周辺視での気づきが速くなる配光パターンを形成するための車両用前照灯100を搭載した車両Vの正面図、図24(a)〜図24(c)は車両用前照灯100を構成する灯具ユニット10〜30を、その光軸を含む鉛直面で切断した断面図である。
図23に示すように、本実施形態の車両用前照灯100は、自動車等の車両Vの前面の左右両側に配置されており、片側3つの灯具ユニット10、20、30を備えている。各灯具ユニット10〜30には、その光軸調整が可能なように公知のエイミング機構(図示せず)が連結されている。
[灯具ユニット10]
灯具ユニット10は、中心領域A1を照射するプロジェクタ型の灯具ユニットであり、図24(a)に示すように、車両前後方向に延びる光軸AX10上に配置された投影レンズ11、投影レンズ11の後側焦点F11より後方側かつ光軸AX10近傍に配置された光源12、光源12の上方に配置された反射面13、光源12からの光の一部を遮光するように、投影レンズ11と光源12との間に配置されたシェード14等を備えている。
投影レンズ11は、レンズホルダー等(図示せず)に保持されて車両前後方向に延びる光軸AX10上に配置されている。投影レンズ11は、例えば、車両前方側表面が凸面で車両後方側表面が平面の平凸非球面の投影レンズである。
光源12は、例えば、青色LED素子及び黄色蛍光体を組み合わせた構造の白色LED(例えば1ミリ角の発光面×4)である。青色LED素子及び黄色蛍光体としては、公知のものを用いることが可能である。
光源12は、黄色蛍光体の濃度を調整することで、発光色が法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たし、かつ、S/P比が1.5に調整されている。
なお、光源12のS/P比は1.5に限定されない。光源12は、発光色が法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たし、かつ、周辺領域A2を照射する後述の光源22(本実施形態では、S/P比が2.0の光源を例示)よりS/P比が低い光源(S/P比1.5以上)であればよい。
光源12として、周辺領域A2を照射する後述の光源22(本実施形態では、S/P比が2.0の光源を例示)よりS/P比が低い光源を用いる理由は、周辺領域A2を照射する光源22と同じS/P比の光源(例えば、S/P比が2.0の光源)から放射される光を中心領域A1に照射すると、対向車に眩しさ感(グレア)を与えることとなるため、これを抑えるためである。
光源12として、S/P比が1.5以上の光源を用いる理由は、S/P比が1.5より小さいと、法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たすことが難しくなるためである。
光源12は、上記条件を満たす限り、白色LEDに限定されない。例えば、光源12はS/P比が1.46程度のハロゲン電球であってもよい。
光源12(白色LED)は、その発光面を上に向けた状態で基板K上に実装されて、投影レンズ11の車両後方側焦点F11より後方側かつ光軸AX10近傍に配置されている。白色LED12は、その一辺を光軸AX10に直交する水平線に沿わせて所定間隔で一列(図24(a)中紙面に直交する方向)に複数個(例えば4個)かつ光軸AX10に対して対称に配置されている。
反射面13は、第1焦点F1が光源12近傍に設定され、第2焦点F2が投影レンズ11の後側焦点F11近傍に設定された回転楕円系の反射面(回転楕円面又はこれに類する自由曲面等)である。
反射面13は、光源12から略上向きに放射される光が入射するように、光源12の側方(図24(a)中、車両後方側の側方)から投影レンズ11に向かって延びて、光源12の上方を覆っている。
図25(a)は、シェード14の正面図である。
図25(a)に示すように、シェード14には、中心領域A1に対応する形状の開口14aが形成されている。投影レンズ11の後側焦点F11はこの開口14a近傍に位置している。
上記構成の灯具ユニット10によれば、光源12から放射された光は、反射面13で反射されて投影レンズ14の後側焦点F11近傍で収束し、シェード14の開口14aを通過し、さらに投影レンズ14を透過して前方に照射される。すなわち、シェード14の開口14aを通過する光源12からの光により形成される照度分布が、投影レンズ11の作用で前方に反転投影される形となる。これにより、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上の中心領域A1が照射される。
なお、灯具ユニット10は、中心領域A1を照射するように公知のエイミング機構(図示せず)により光軸調整されている。
[灯具ユニット20]
灯具ユニット20は、周辺領域A2及び手前領域A4を照射するプロジェクタ型の灯具ユニットであり、図24(b)に示すように、車両前後方向に延びる光軸AX20上に配置された投影レンズ21、投影レンズ21の後側焦点F21より後方側かつ光軸AX20近傍に配置された光源22、光源22の上方に配置された反射面23、光源22からの光の一部を遮光するように、投影レンズ21と光源22との間に配置されたシェード24等を備えている。
投影レンズ21は、レンズホルダー等(図示せず)に保持されて車両前後方向に延びる光軸AX20上に配置されている。投影レンズ21は、例えば、車両前方側表面が凸面で車両後方側表面が平面の平凸非球面の投影レンズである。
光源22は、例えば、図4(a)に示すように、青色LED素子B、赤色LED素子R及び緑色蛍光体Gを組み合わせた構造の白色LED(例えば1ミリ角の発光面×4)である。緑色蛍光体Gは、青色LED素子B、赤色LED素子Rを覆っており、青色LED素子Bから放射される青色光により励起されて緑色光を発光する。緑色光が増えると、発光色がブルーグリーンとなり、法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を逸脱する。そこで、赤色LED素子Rを加えその出力を調整することで、発光色が法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲内となるように調整した。青色LED素子、赤色LED素子及び緑色蛍光体としては、公知のものを用いることが可能である。
光源22は、緑色蛍光体の濃度等を調整することで、発光色が法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たし、かつ、S/P比が2.0に調整されている。
なお、光源22のS/P比は2.0に限定されない。S/P比が2.0以上の光源から放射される光を車両前方の周辺領域に照射することで、夜間運転時の暗い環境下で周辺視での気づきが速くなる(反応速度RTが短くなり、見逃し率が低下する)という知見(実験1、実験2参照)に基づけば、光源22は、S/P比が2.0〜3.0の範囲の光源であればよい。S/P比3.0を上限とした理由は、S/P比が3.0を超えると、法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たすことが難しくなるためである。
S/P比と見逃し率との相関関係から、S/P比が2.5(又は2.5以上)で、年齢による気づきの差がなくなるという知見(実験1参照)に基づけば、S/P比が2.5又は2.5〜3.0の範囲の光源から放射される光を周辺領域に照射することで、夜間運転時の暗い環境下で年齢による気づきの差がない車両用前照灯を構成することが可能となる。
光源22は、発光色が法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たし、かつ、S/P比が2.0以上の光源であればよく、青色LED素子、赤色LED素子及び緑色蛍光体を組み合わせた構造の白色LEDに限定されない。
例えば、光源22は、図4(b)に示すように、青色LED素子Bと緑及び赤色蛍光体GRとを組み合わせた構造の白色LEDであってもよい。緑及び赤色蛍光体GRは、青色LED素子Bを覆っており、青色LED素子Bから放射される青色光により励起されて緑及び赤色光を発光する。また、光源22は、赤色LED素子、緑色LED素子及び青色LED素子を組み合わせた構造の白色LEDであってもよいし、紫外もしくは近紫外LED素子とRGB蛍光体とを組み合わせた構造の白色LEDであってもよい。これらの構造の白色LEDであっても、蛍光体の濃度等を調整することで、発光色が法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たし、かつ、S/P比が2.0以上の光源を構成することが可能である。
光源22(白色LED)は、その発光面を上に向けた状態で基板K上に実装されて、投影レンズ21の車両後方側焦点F21より後方側かつ光軸AX20近傍に配置されている。白色LED22は、その一辺を光軸AX20に直交する水平線に沿わせて所定間隔で一列(図24(b)中紙面に直交する方向)に複数個(例えば4個)かつ光軸AX20に対して対称に配置されている。
反射面23は、第1焦点F1が光源22近傍に設定され、第2焦点F2が投影レンズ21の後側焦点F21近傍に設定された回転楕円系の反射面(回転楕円面又はこれに類する自由曲面等)である。
反射面23は、光源22から略上向きに放射される光が入射するように、光源22の側方(図24(b)中、車両後方側の側方)から投影レンズ21に向かって延びて、光源22の上方を覆っている。
図25(b)は、シェード24の正面図である。
図25(b)に示すように、シェード24には、周辺領域A2及び手前領域A4に対応する形状の開口24aが形成されている。投影レンズ21の後側焦点F21はこの開口24a近傍に位置している。
上記構成の灯具ユニット20によれば、光源22から放射された光は、反射面23で反射されて投影レンズ24の後側焦点F21近傍で収束し、シェード24の開口24aを通過し、さらに投影レンズ21を透過して前方に照射される。すなわち、シェード24の開口24aを通過する光源22からの光により形成される照度分布が、投影レンズ21の作用で前方に反転投影される形となる。これにより、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上の周辺領域A2及び手前領域A4が照射される。
なお、灯具ユニット20は、周辺領域A2及び手前領域A4を照射するように公知のエイミング機構(図示せず)により光軸調整されている。
[灯具ユニット30]
灯具ユニット30は、中間領域A3を照射するプロジェクタ型の灯具ユニットであり、図24(c)に示すように、車両前後方向に延びる光軸AX30上に配置された投影レンズ31、投影レンズ31の後側焦点F31より後方側かつ光軸AX30近傍に配置された光源32、光源32の上方に配置された反射面33、光源32からの光の一部を遮光するように、投影レンズ31と光源32との間に配置されたシェード34等を備えている。
投影レンズ31は、レンズホルダー等(図示せず)に保持されて車両前後方向に延びる光軸AX30上に配置されている。投影レンズ31は、例えば、車両前方側表面が凸面で車両後方側表面が平面の平凸非球面の投影レンズである。
光源32は、例えば、青色LED素子及び黄色蛍光体を組み合わせた構造の白色LED(例えば1ミリ角の発光面×4)である。青色LED素子及び黄色蛍光体としては、公知のものを用いることが可能である。
光源32は、黄色蛍光体の濃度を調整することで、発光色が法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たし、かつ、S/P比が1.8に調整されている。
なお、光源32のS/P比は1.8に限定されない。S/P比が高い光源(特にS/P比が1.8以上の光源)は白、青、緑を明瞭にするという知見(実験3参照)に基づけば、光源32は、S/P比が1.8〜3.0の範囲の光源であればよい。S/P比3.0を上限とした理由は、S/P比が3.0を超えると、法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たすことが難しくなるためである。
光源32は、発光色が法規で規定されたCIE色度図上の白色範囲を満たし、かつ、S/P比が1.8以上の光源であればよく、青色LED素子及び黄色蛍光体を組み合わせた構造の白色LEDに限定されない。例えば、光源32は、他の構造の白色LEDであってもよい。
光源32(白色LED)は、その発光面を上に向けた状態で基板K上に実装されて、投影レンズ31の車両後方側焦点F31より後方側かつ光軸AX30近傍に配置されている。白色LED32は、その一辺を光軸AX30に直交する水平線に沿わせて所定間隔で一列(図24(c)中紙面に直交する方向)に複数個(例えば4個)かつ光軸AX30に対して対称に配置されている。
反射面33は、第1焦点F1が光源32近傍に設定され、第2焦点F2が投影レンズ31の後側焦点F31近傍に設定された回転楕円系の反射面(回転楕円面又はこれに類する自由曲面等)である。
反射面33は、光源32から略上向きに放射される光が入射するように、光源32の側方(図24(c)中、車両後方側の側方)から投影レンズ31に向かって延びて、光源32の上方を覆っている。
図25(c)は、シェード34の正面図である。
図25(c)に示すように、シェード34には、中間領域A3に対応する形状の開口34aが形成されている。投影レンズ31の後側焦点F31はこの右の開口34aと左の開口34aとの間(略中間)に位置している。
上記構成の灯具ユニット30によれば、光源32から放射された光は、反射面33で反射されて投影レンズ31の後側焦点F31近傍で収束し、シェード34の開口34aを通過し、さらに投影レンズ31を透過して前方に照射される。すなわち、シェード34の開口34aを通過する光源32からの光により形成される照度分布が、投影レンズ31の作用で前方に反転投影される形となる。これにより、仮想鉛直スクリーン上の中間領域A3が照射される。
なお、灯具ユニット30は、中間領域A3を照射するように公知のエイミング機構(図示せず)により光軸調整されている。
以上説明したように、上記構成の車両用前照灯100によれば、S/P比が2.0以上の光源22から放射される光を車両前方の周辺領域A2(A2R、A2L)に照射することで、夜間運転時の暗い環境下で周辺視での気づきを速めることが可能となる。
また、上記構成の車両用前照灯100によれば、光源22(S/P比2.0以上)よりS/P比が低い光源12(S/P比1.5以上)から放射される光を中心領域A1に照射する構成であるため、光源22と同じS/P比の光源(S/P比2.0以上)から放射される光を中心領域A1に照射する場合と比べ、対向車に眩しさ感(グレア)を与えるのを抑えることが可能となる。
また、上記構成の車両用前照灯100によれば、光源12(S/P比1.5以上)よりS/P比が高い光源22(S/P比2.0以上)から放射される光を周辺領域A2(A2R、A2L)に照射する構成であるため、光源12と同じS/P比の光源(S/P比1.5以上)から放射される光を周辺領域A2(A2R、A2L)に照射する場合と比べ、夜間運転時の暗い環境下で周辺視での気づきを速めることが可能となる。
以上のように、上記構成の車両用前照灯100によれば、対向車に眩しさ感(グレア)を与えるのを抑えることが可能で、なおかつ、夜間運転時の暗い環境下で周辺視での気づきを速めることが可能となる。
また、上記構成の車両用前照灯100によれば、走行中に相対的に移動する標識が通過する中間領域A3を光源12(S/P比1.5以上)及び光源22(S/P比2.0以上)とは異なるS/P比の光源33(S/P比1.8以上)で照射することが可能となる。
また、上記構成の車両用前照灯100によれば、S/P比が1.8以上の光源33から放射される光を、走行中に相対的に移動する標識が通過する中間領域A3に照射することで、夜間運転時の暗い環境下で、標識(特に白、青、緑)を明瞭に見せることが可能となる。
また、上記構成の車両用前照灯100によれば、S/P比が2.0以上の光源22から放射される光を、仮想鉛直スクリーン上の水平線以下に配置された手前領域A4に照射することで、夜間運転時の暗い環境下で、照度を上げることなく、車両前方手前領域(自車線の車両前方手前路面上の領域)の明るさ感を高めることが可能となる。
次に、変形例について説明する。
上記実施形態では、周辺視での気づきが速くなる配光パターンとして、中心領域A1、周辺領域A2、中間領域A3、手前領域A4を含む配光パターン(図17参照)を説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、周辺視での気づきが速くなる配光パターンは、少なくとも周辺領域A2を含む配光パターンであればよく、他の領域A1、A3、A4は適宜省略することが可能である。例えば、周辺視での気づきが速くなる配光パターンは、領域A3を省略し(灯具ユニット30を省略し)領域A1、A2、A4を含む配光パターンとしてもよい。この場合、シェード24の開口24aのサイズを拡大し、光源22からの光を領域A3に照射してもよい。
また、上記実施形態では、S/P比が異なる各光源12、22、32から放射された光を各領域A1〜A4に照射する光学系として、プロジェクタ型の灯具ユニット10、20、30を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、S/P比が異なる各光源12、22、32から放射された光を各領域A1〜A4に照射する光学系は、リフレクタ型の灯具ユニットであってもよいし、あるいは、いわゆるダイレクトプロジェクション型(直射型とも称される)の灯具ユニットであってもよい。
図26(a)はリフレクタ型の灯具ユニット40の断面図である。
図26(a)に示すように、リフレクタ型の灯具ユニット40は、例えば、複数の小区画反射面を含む放物面系の反射面41(回転放物面又はこれに類する自由曲面等)と、反射面41の焦点F41に配置された光源12と、を備えている。
リフレクタ型灯具ユニット40においては、例えば、光源12(S/P比1.5以上)から入射する光を予め定められた方向へ反射(配分)して、中心領域A1を照射するように反射面41(個々の小区画反射面)を設計することで、光源12から放射される光を車両前方の中心領域A1に照射するリフレクタ型の灯具ユニットを構成することが可能である。
同様にして、光源22(S/P比2.0以上)から放射される光を車両前方の周辺領域A2及び手前領域A4に照射するリフレクタ型の灯具ユニット、光源32(S/P比1.8以上)から放射される光を車両前方の中間領域A3に照射するリフレクタ型の灯具ユニットを構成することが可能である。
図26(b)はダイレクトプロジェクション型の灯具ユニット50の断面図である。
図26(b)に示すように、ダイレクトプロジェクション型の灯具ユニット50は、例えば、投影レンズ51と、投影レンズ51の後側焦点F51に配置された光源12と、を備えている。
ダイレクトプロジェクション型の灯具ユニット50においては、例えば、投影レンズ51の出射面51aから出射する光源12からの光を予め定められた方向へ屈折させて、中心領域A1を照射するように投影レンズ51の出射面51aを設計することで、光源12(S/P比1.5以上)から放射される光を車両前方の中心領域A1に照射するダイレクトプロジェクション型の灯具ユニットを構成することが可能である。
同様にして、光源22(S/P比2.0以上)から放射される光を車両前方の周辺領域A2及び手前領域A4に照射するダイレクトプロジェクション型の灯具ユニット、光源32(S/P比1.8以上)から放射される光を車両前方の中間領域A3に照射するダイレクトプロジェクション型の灯具ユニットを構成することが可能である。
図27は、S/P比が異なる複数の白色LEDをマトリックス状に配置した光源52の例である。
ダイレクトプロジェクション型の灯具ユニット50においては、図26(b)に示した光源12に代えて、図27に示すように、S/P比が異なる複数の白色LEDをマトリックス状に配置した光源52を用いてもよい。
図27中の□はS/P比が1.5以上の光源12、△はS/P比が1.8以上の光源32、×はS/P比が2.0以上の光源22で、各光源12〜32は図17に示した各領域A1〜A4に対応する位置に配置されている。
本変形例によれば、マトリックス状の光源52から放射された光は、投影レンズ51を透過して前方に照射される。すなわち、マトリックスを構成する各光源12〜32の像が、投影レンズ51の作用で前方に反転投影される形となる。これにより、仮想鉛直スクリーン上の各領域A1〜A4(又は各領域A1〜A4に対応する領域)が照射される。
本変形例によっても、上記実施形態と同様の効果を奏することが可能となる。
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
100…車両用前照灯、10〜30…灯具ユニット、11、21、22…投影レンズ、12、22、32…光源、13、23、33…反射面、40…リフレクタ型の灯具ユニット、50…ダイレクトプロジェクション型の灯具ユニット、52…マトリックス型の光源

Claims (7)

  1. 光源と、前記光源から放射される光を車両前方の周辺領域に照射する光学系と、を備えており、
    前記光源のS/P比が2.0以上とされていることを特徴とする車両用前照灯。
  2. 車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン上に所定配光パターンを形成する車両用前照灯において、
    第1光源と、第2光源と、第1光学系と、第2光学系と、を備えており、
    前記所定配光パターンは、少なくとも、前記仮想鉛直スクリーン上の水平線と鉛直線との交点を含む中心領域と、前記仮想鉛直スクリーン上の前記中心領域の両側に配置された周辺領域と、を含んでおり、
    前記第1光学系は、前記第1光源から放射される光を前記中心領域に照射するように構成されており、
    前記第2光学系は、前記第2光源から放射される光を前記中心領域の両側にそれぞれ配置された前記周辺領域に照射するように構成されており、
    前記第1光源は、前記第2光源よりS/P比が低い光源であることを特徴とする車両用前照灯。
  3. 前記第2光源のS/P比が2.0以上とされていることを特徴とする請求項2に記載の車両用前照灯。
  4. 前記第1光源のS/P比が1.5以上とされていることを特徴とする請求項3に記載の車両用前照灯。
  5. 第3光源と第3光学系とをさらに備えており、
    前記所定配光パターンは、前記仮想鉛直スクリーン上の前記中心領域と前記周辺領域との間に配置され、走行中に相対的に移動する標識が通過する中間領域をさらに含んでおり、
    前記第3光学系は、前記第3光源から放射される光を前記中間領域に照射するように構成されていることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の車両用前照灯。
  6. 前記第3光源のS/P比が1.8以上とされていることを特徴とする請求項5に記載の車両用前照灯。
  7. 前記所定配光パターンは、前記仮想鉛直スクリーン上の水平線以下に配置された手前領域をさらに含んでおり、
    前記第2光学系は、前記第2光源から放射される光を前記周辺領域及び前記手前領域に照射するように構成されていることを特徴とする請求項2から6のいずれかに記載の車両用前照灯。
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