JP5650751B2 - 相分離されたソーダ石灰シリカガラス - Google Patents

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Description

本発明の分野は、ソーダ石灰シリカ系のガラス材料の分野である。より詳細には、本発明は、良好な機械的強度、特にスクラッチ伝播に対する良好な耐性を有し、かつ改良された焼入れを可能にするソーダ石灰シリカガラスに関する。本発明によるガラスは、これらの特性を心地良い美的外観と組み合わせて有する。
ガラスは、その最も広い定義では、非晶質であり、結晶秩序を持たず、等方性である材料である。結晶化可能な化合物の成分を含むかかるタイプの非晶質材料の製造時に、失透として知られる結晶化現象が起こりうる。結晶化が偶然に又は制御されない態様で起こるとき、それは、結晶の形成に導き、それは、相対的に大きく、極めて種々のサイズを有し、かつしばしば表面で針状結晶の形でガラスマトリックスに不均一に分散されている。かかる結晶の存在は、得られたガラスの光学的欠陥(透明性の低下)及び/又は機械的欠陥(機械的応力に対する抵抗力の低下)をもたらす。
さらに、別の望ましくない現象もガラスの製造時に起こりうる。これは、液体/液体の相分離、又は偏析であり、それは異なる組成の非晶質相の生長に相当する。多くの溶融されたケイ酸塩では、異なる組成の二つの液体相を観察することができることが良く知られており、それは次いで非混和性として言及される。多くの溶融された液体の相図は、液相線温度より上で安定である非混和性又は混和性ギャップの領域を示す:これは、シリカ富含組成物の場合において、アルカリ土類金属ケイ酸塩に対して特に当てはまる。他の場合において、例えばアルカリ金属ケイ酸塩では、この非混和性は液相線温度以下で観察される(準安定非混和性)。それゆえ、相分離が起こる温度に加熱される均質ガラスは、異なる組成を有する二つのガラスに分離するだろう。異なる形態を有する非晶質相間に界面を生成する二つのタイプの相分離がある。これらの二つのタイプの界面は図1に示されている:(a)分離は核生成/生長機構によって起こり、この場合において、分離はガラス状マトリックスに分散される「小滴(droplets)」として言及される分離された含有物を発生する、又は(b)分離はスピノーダル分解(自発的分離)によって起こり、この場合において、それは「バーミキュライト」としてしばしば記載される含有物の外観を形態的にもたらし、二つの非晶質相間により拡散した境界を有する結び付けられた構造を発生する。相分離は、それがガラス中に偶然に起こると、このガラスのテキスチャーを改変し、望ましくない光学的及び機械的な異質性に導く。NaO−CaO−SiO系に属するガラスの特定の場合において、相分離現象はBurnettらによって調査された(Physics and Chemistry of Glasses,Vol.11,No.5,1970年10月発行)。
数十年間にわたって、ソーダ石灰シリカガラスの組成はさらに、これらの望ましくない失透及び相分離現象を制限し、従って完全に非晶質のガラス状材料を得るために最適化された。
それでもなお、無機ガラスの透明性にかかわらず、微小構造界面の不存在は材料の脆性に導く。この固有の機械的脆性は機械的衝撃に対する抵抗性の低下をもたらす。特に、ガラスの美的外観は、その使用及び/又はその輸送時にスクラッチ又は摩耗の形成によって大きく劣化されることが多い。さらに、たとえガラスが硬くても、それは脆く、あまり強靭ではない。即ち、切れ目及び粒子境界の不存在に続いてスクラッチ又はクラックの伝播に対する抵抗性がない。
同様に、あまり良好に熱を伝導しないソーダ石灰シリカガラスは、それが加熱される場所で高い膨張率を示す。膨張されたガラスは周囲部分に圧力を及ぼし、それはガラス物体の破裂に導き、いわゆる「熱破壊(thermal breakage)」に導く。
今日、ソーダ石灰シリカガラス産業に極めて広く使用されるガラスの熱的な「焼入れ」は、機械的強度及び耐熱性を改良することを可能にする。
不幸にも、この熱処理は、いったん実施されたら、例えばそれがシートの形であるなら、製品の続く切断を可能にしない。この場合において、機械的加工及び最終的な縁取りを焼入れの前に実施することが重要である。後者のポイントは、タイル張りの床又はカウンターのような改良された機械的強度を要求するガラス製品に対して大きな欠点を示す。なぜなら、それはその設置のために切断を要求することが多いからである。さらに、ソーダ石灰シリカガラスの焼入れは扱いにくく、「薄板ガラス(thin glass)」として知られるガラス、即ち約2.5mm未満の厚さを有するシートの形のガラスに対しては不可能である。実際、焼入れによって誘導される100MPaのオーダの表面の圧縮応力はかかるガラスシートに対して不可能である。この制限は、90×10−7/℃のオーダのソーダ石灰シリカガラスの熱膨張率(CTE)の値に由来する。ガラス材料の世界では、CTEが増加するときに焼入れが促進されることが良く知られている。従って、ソーダ石灰シリカガラスに対する高いCTE値は改良された焼入れを可能にし、例えば焼入れされた薄板ガラスへのアクセスを提供するだろう。
ガラスの機械的強度、特にそのスクラッチ伝播に対する耐性を改良する一つの既知の方法は、ガラス上に付着された表面層の適用である。この技術は、外部の機械的応力に対して前記層の特別な機械的強度から恩恵を受けることを目的とする。それでもなお、保護層の厚さは制限され、肉眼で見えるスクラッチは、保護されていないガラスを外部の環境に露出し、ガラスの砕けやすい領域にクラック開始の創成に導く。さらに、かかる層の付着は、ガラスのスクラッチ耐性を改良するだけであり、その熱膨張率をいかなる方法でも改変しない。
ガラス材料の分野では、非晶質ガラス相及び結晶質相を含むガラスは従来周知である。これらのガラスは、ガラスの制御された均一な失透から生じる。ガラス結晶材料としても知られ、一般にガラスセラミック材料として知られる半結晶セラミックへの変換は、制御された熱処理によってガラスから得られ、その熱処理は、材料の体積に均一に分散された高密度の小結晶を生成することを可能にする。制御されない失透とは異なって、結晶のこの均一な分布は、製品の機械的特性を改良することを可能にする。実際、あるガラスセラミックは高いスクラッチ耐性及び高い引張強度を有し、さらに高温での膨張の不存在を有し、それはそれらを熱衝撃に対して実際に攻撃されにくくする。様々な結晶の割合及び性質を制御することによって、ガラスセラミックのCTEは調整されることができ、極めて低い値がしばしば達成される。
これらの特性に基づいて、かかるタイプのガラスに対して多数の用途が開発されている。ガラスセラミックは例えば暖炉内の横棚又は煙突壁の製造のために使用されている。
数十年間にわたって、そして1950年代の中頃に市場へのガラスセラミックの出現以来、幾つかの会社が、ガラスの部分結晶化に基づいてガラスセラミックを開発している。既知の組成は、例えばLiO−SiO(ケイ酸塩)系又はLiO−Al−SiO(アルミノケイ酸塩)系に基づく。さらに、それらは、TiO、ZrO又はPのような一種以上の核形成剤を持つことが多い。他方、従来技術は、NaO−CaO−SiOソーダ石灰シリカ系においていかなるガラスセラミックも提案しない。さらに、この系に属するガラスの体積において均質な結晶を生成することは不可能であること、及び制御されない不均質な結晶だけがこの場合において得られうることが科学文献において、特にPhysics and Chemistry of Glasses(Vol.14,No.2,1973年4月)発行のStrnadらによる論文において主張されている。
多くの既知のガラスセラミック材料は、非晶質ソーダ石灰シリカガラスよりずっと高い機械的強度及び耐熱性を有するが、それらは、それでもなお製造するにはずっと費用が高く、従って経済的な理由のために標準的な用途に置き換えることができない。その製造の容易性及び原材料の低コスト価格のため、ソーダ石灰シリカガラスは、ガラス産業において、特に建造物、自動車及び装飾市場に対して優位な地位を維持している。
従って、増大した機械的特性、特にスクラッチ伝播に対する良好な耐性を有し、かつ改良された焼入れを可能にするソーダ石灰シリカガラスを製造することに明らかな経済的な利点がある。
さらに、ガラス相及び結晶質相を含む「乳白ガラス」として知られるガラスもまた、従来良く知られており、結晶の意図的な又は制御された結晶化によって乳白剤(通常はフッ化物)をケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、又はホウケイ酸塩中に導入することによって得られる(フッ化物の添加の場合、結晶は通常はCaF又はNaFである)。毎日の生活に多く存在する乳白ガラスは、不透明であり、光を拡散する。それゆえ、主に装飾用途において、そして食卓用食器類または照明器具のような消費者製品の製造において多く使用されている。商標Arcopal(登録商標)の下で販売される従来の乳白ガラスは、主に白色であり、フルオロケイ酸塩である。それでもなお、ガラス組成物中へのフッ化物のような従来の乳白剤の導入は、二つの主要な欠点:即ち(i)環境に対する否定しようがない負の影響、及び(ii)溶融炉の耐火材料の腐食現象の増加を与える。
従って、乳白ガラスに匹敵する心地良い美的外観を有するが、フッ素を含有しないソーダ石灰シリカガラスを得ることに関心がある。
本発明の一つの目的は、特に技術的課題を解決することによって従来技術の欠点を克服すること、即ち、増大した機械的特性、特にスクラッチ伝播に対する良好な耐性を有し、かつ改良された焼入れを可能にするソーダ石灰シリカガラス、即ちNaO−CaO−SiO系に属するガラスを得ることである。
本発明の別の目的は、所望の機械的強度、及び改良された焼入れを可能にすることに加えて、意図される用途の機能として望ましい美観を有するソーダ石灰シリカガラスを提供することである。本発明は、この文脈において、透明であるか、又は乳白ガラスに匹敵しうる心地良い乳白色の外観を有するソーダ石灰シリカガラスを提供することを提案する。
最後に、本発明の一つの目的は、簡単で、経済的で、かつ環境への影響が少ない、従来技術の欠点に対する解決策を提供することである。
一つの特別な実施形態によれば、本発明は、主成分としてSiO、NaO、及びCaOを有するガラスであって、それが異なる組成を有する二つの非晶質相を含み、それらの二つの相の一方が他方の相の体積に分散された含有物の形態であるガラスに関する。
本発明によれば、前記含有物は結晶粒子を含む。
従って、本発明によるガラスは、従来技術からの材料の欠点を克服し、上述の技術的課題を解決することを可能にする。特に、本発明者は、非晶質/非晶質の界面で及び/又は相分離によって作られた含有物の体積内での結晶化と組み合わされた相分離現象を発生することによって、改良された機械特性、特にスクラッチ伝播に対する良好な耐性を有し、かつ美観的に許容可能又は心地良い外観を有するソーダ石灰シリカ系のガラスを得ることが可能であることを示した。この結果は、ソーダ石灰シリカガラスの一般的な用途(建造物、自動車など)に必要な透明性及び均質性が当業者を常に非晶質材料だけを考えることに導き、当業者を常にガラスの組成及びその製造方法を最適化して望ましくない失透及び相分離現象を防止又は少なくとも制限することに促していたことを考えれば驚くべきことである。
さらに、本発明者は、極めて驚くべきことに、結晶化と相分離を組み合わせたソーダ石灰シリカガラスが、対応する完全に非晶質のガラスより高いCTE値を達成できることを証明した。
従って、本発明による相分離されたソーダ石灰シリカガラスは、増大した機械的強度、特にスクラッチ伝播に対する良好な耐性を有し、それはまた、改良された焼入れを可能にする。このガラスはさらに、経済的であり、建築産業または自動車産業における標準的な用途に対して美観的に受け入れ可能である。
本発明はまた、前述のようなガラスから構成されたシート、及びかかるシートを少なくとも一枚含む物品に関する。
本発明は、より詳細にかつ限定されない態様で記載されるだろう。
図1は、従来技術からの相分離されたガラスの電子顕微鏡写真によって得られた画像を表わす。
図2は、本発明による結晶粒子の位置を表わす。
本発明によるガラスは、ソーダ石灰シリカ材料、即ちNaO−CaO−SiO系に属するガラスである。従って、本発明のガラスは、主成分としてSiO、NaO及びCaOを有する。特に、本発明のガラスは、全重量による百分率として60〜85%のSiO、1〜25%のNaO、及び1〜25%のCaOを含む。さらに、それはKaO、MgO、Al、BaO、様々な染料、又はレドックスを改変する添加剤から生じる残余のような少量の他の成分(NaNO、NaSO、コークスなど)を含んでもよい。好ましくは、これらの成分は、もしそれらが本発明のガラスに存在するなら、合計でガラスの15重量%を越えないだろう。
本発明の一つの特別な実施形態によれば、ガラスはフッ素元素を含有しない。従って、かかるソーダ石灰シリカガラスは、特に乳白ガラスと比較して環境への影響が低い。なぜなら、その乳白剤は従来これらの成分の一つに基づいているからである。本明細書において、「フッ素元素を含まない」という表現は、ガラスが微量のフッ素元素しか含まないこと意味する。好ましくは、ガラスは500ppm(重量による)未満の量のフッ素元素しか含有しない。
本発明の一つの特別な実施形態によれば、ガラスはリチウム元素も含有しない。酸化リチウムはNaO及びCaOのような酸化物より高価であるので、ソーダ石灰シリカタイプのかかるガラスは、通常、酸化リチウムを含む従来技術から知られたガラスセラミック材料と特に比較すると、否定できない経済的な利点を持つ。「リチウム元素を含まない」という表現は、本発明のガラスがこの元素を微量しか含まないことを意味する。好ましくは、ガラスは500ppm(重量による)未満の量のリチウム元素しか含有しない。
あるいは、本発明の別の特別な実施形態によれば、ガラスは、酸化物の形態で表わすと3重量%付近までの範囲の量でリチウムを含むことができる。これらの量でのリチウムの存在は、溶融状態のガラスの粘度を低下し、従って結晶化を有利にすることを可能にする。
別の好ましい実施形態によれば、本発明のガラスは鉛元素を含まない。「鉛元素を含まない」という表現は、本発明のガラスがこの元素を微量しか含まないことを意味する。
別の好ましい実施形態によれば、本発明のガラスはホウ素元素を含まない。「ホウ素元素を含まない」という表現は、本発明のガラスがこの元素を微量しか含まないことを意味する。
本発明によるガラスは、異なる組成を有する二つの非晶質相を含み、二つの相の一方は、マトリックス相として知られる他方の相の体積に分散された含有物の形態である。
本発明によれば、本発明のソーダ石灰シリカガラスは、異なる組成を有する二つのガラス質相を含む。特に、本発明のガラスは、含有物の形態でガラス質相を含み、それはSiOに富み、ナトリウム及びカルシウムのような、ネットワーク改変元素に富む他のマトリックスガラス質相に分散される。
本発明の一つの特別な実施形態によれば、含有物は小滴の形態またはバーミキュライトの形態である。
本発明によれば、含有物は結晶粒子を含む。
本発明のガラスは、幾つかの粒子の集合体の形で又は分離された形で結晶粒子を含むことができる。
一つの特別な実施形態によれば、結晶粒子は5nm〜500μmのサイズを有する。好ましくは、透明なガラスを得るためには、結晶粒子は5nmから500nmのサイズを有する。好ましくは、乳白ガラスに匹敵しうる乳白色の外観を有するガラスを得るためには、結晶粒子は500nm〜500μmのサイズを有する。
本発明によれば、結晶粒子は以下で見い出される:
(i)含有物の表面で、又は
(ii)含有物の体積内で、又は
(iii)含有物の表面で、及び含有物の体積内での両方で。
表現「含有物の表面での結晶粒子」は、非晶質/非晶質の界面で結晶化された粒子を意味するものとして理解される。
結晶粒子の位置は、小滴型の相分離の場合には図2に示される:
(i)含有物の表面で(位置1)、又は
(ii)含有物の体積内で(位置2)、又は
(iii)含有物の表面で、及び含有物の体積内での両方で(位置1及び2)。
有利には、含有物の表面での結晶粒子の存在は、機械的特性、特にクラック伝播に対するガラスの耐性をさらに改良することを可能にする。含有物の表面での結晶粒子の存在はまた、含有物の体積における過剰な結晶化を制限し、従って前記含有物の体積内の生長を防止することを可能にする。
本発明の別の特別な実施形態によれば、結晶粒子が含有物の表面で見い出されるとき、それらは、透輝石(CaMgSi)、デビトライト(devitrite)又は珪灰石(CaSiO)のようなガラスの組成全体から結晶化しうる化合物から構成されることができる。同様に、それらは、BaO、TiO、ZrO、Nbなどのガラスの組成全体に少量添加された化合物から構成されることができる。
本発明のさらに別の特別な実施形態によれば、結晶粒子が含有物の体積内に見い出されるとき、それらは本質的にSiOから構成される。ガラスの組成から生じる成分やマトリックス相に本質的にある不純物はそこに少量存在させてもよい。もしかかる不純物が結晶粒子に存在するなら、それらは全体で5重量%未満の量で存在させることが好ましい。より好ましくは、それらは全体で2重量%未満の量で存在させる。
本発明のこの特別な実施形態によれば、結晶SiO粒子はこの成分の単一多形の形態であることができる。あるいは、結晶SiO粒子は複数のSiO多形の形態であることができる。本発明によるガラスはまた、単一のSiO多形の形態の粒子と、複数のSiO多形の形態の粒子を同時に含んでもよい。
SiO多形の例は石英(α又はβ)、クリストバライト(α又はβ)又はトリジマイト(α又はβ)である。
本発明の一つの特別な実施形態によれば、SiOの結晶粒子は本質的にクリストバライトの形態である。
本発明によるガラスは、対応する完全に非晶質のガラスと比較して高い機械的強度、特にスクラッチ伝播に対する良好な耐性を有する。
材料の機械的強度は、硬度及び強靱性に関して表現されることが多い。硬度は、引っ掻き(スクラッチ)又は摩耗される材料の能力を特徴づける(MPa又はGPaで表示)。強靱性は、存在するクラックの伝播に耐える材料の能力である。脆性(B)はこれらのパラメータを補足し、硬度(H)と強靭性(Kc)の間の比(H/Kc)(μm−0.5で表示)に相当する。本発明では、硬度と脆性はビッカース圧子によって測定される。
好ましくは、本発明によるガラスは6.5μm−0.5未満の脆性を有する。比較すると、この値は、特別な処理なしの完全に非晶質のソーダ石灰シリカガラスについては約7μm−0.5である。
さらに、ガラスは、対応する完全に非晶質のガラスより高いCTEを有する。
材料の部分的加熱又は部分的冷却は、もしそれが低い熱伝導性を持つなら、完全に非晶質のソーダ石灰シリカガラスに対する場合と同様に熱破壊を起こしうる応力に導きうる。
部分的加熱又は部分的冷却のそれぞれの時の材料のこの膨張又は収縮現象の大きさは通常、線形熱膨張率によって規定される。この熱膨張率(CTE)は1℃の変動に対する単位長さあたりの伸長に相当する(℃−1として表示)。
好ましくは、本発明によるガラスは、25〜300℃の範囲の温度変化に対して測定すると、100×10−7/℃より大きいCTEを有する。比較すると、特別な処理のない完全に非晶質のソーダ石灰シリカガラスの同じ温度範囲のCTEは90×10−7/℃のオーダである。
この高いCTE値のため、本発明のガラスは改良された焼入れを可能にする。改良された焼入れを可能にするガラスは、対応する完全に非晶質のガラスに等価な表面での圧縮応力を得るために低温でかつ/又は短かい時間で焼入れを要求するガラスであるものとして理解される。従って、この利点はエネルギーの節約を可能にし、それは環境及び経済の見地から本発明の追加のプラスの効果をもたらす。同様に、改良された焼入れを可能にするガラスはまた、等価な熱処理に対して、対応する完全に非晶質のガラスより大きい表面での圧縮応力を有するガラスを意味するものとして理解される。最後に、改良された焼入れを可能にするガラスはまた、このガラスから作られた「薄板」シートの焼入れを可能にするガラスを意味するものとして理解される。
本発明によるソーダ石灰シリカガラスは、非晶質/非晶質の界面で及び/又は相分離によって作られた含有物の体積内での結晶化と結合された相分離現象を発生することができるいかなる方法によっても得られることができる。
特に、本発明によるガラスは、二つの手段:(i)溶融状態のガラスの制御された熱処理(セラミック化(ceramization))、又は(ii)同じ全体組成を有するが完全に非晶質の状態で前もって凝固されたガラスの制御されたアニーリングによって得られることができる。
両場合において、セラミック化として知られる熱処理が実施される。セラミック化は一般に、公知の方法で以下の工程を含み、それは数回繰り返されることができる。
a)温度を、核形成範囲を越えて位置される温度T(セラミック化プラトー)まで上昇させる;
b)温度Tを時間tの間、維持する;
c)周囲温度まで急冷する。
本発明によるガラスは、異なる形状及びサイズの物品を製造するために使用されることができる。それは、例えば瓶、照明設備の球形のガラス器及び装飾物体を製造するために使用されることができる。
特に、本発明のガラスは、前記ガラスのシートを製造するために使用されることができる。この実施形態によれば、そのスクラッチ伝播に対する耐性の増加によって、それは例えば台所又は実験室のカウンター、テーブル及び棚のために、又は床(敷石、通路)として使用されることができる。さらに、この実施形態によれば、ガラスが改良された焼入れを可能にすることによって、それはまた、太陽電池パネル又は自動車窓ガラスユニットを製造するために使用されることができる。
前記ガラスを一枚より多く含む本発明による物品の一例は、安全面を改良するために「積層」された、即ち一枚以上のプラスチック中間層フィルムによって合わせられた二枚のシートを含む壁である。

Claims (7)

  1. 主成分としてSiO、NaO、及びCaOを有するガラスであって、それが異なる組成を有する二つの非晶質相を含み、それらの二つの相の一方が他方の相の体積に分散された含有物の形態であり、前記含有物が結晶粒子を含み、ガラスがフッ素元素を含まないことを特徴とするガラス。
  2. 全重量の百分率割合として60〜85%のSiO2、1〜25%のNaO、及び1〜25%のCaOを含むことを特徴とする請求項1に記載のガラス。
  3. 含有物が小滴またはバーミキュライトの形態であることを特徴とする請求項1または2に記載のガラス。
  4. 結晶粒子が含有物の表面に及び/又は含有物の体積内にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガラス。
  5. 鉛元素を含まないことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のガラス。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載のガラスから構成されることを特徴とするシート。
  7. 請求項に記載のシートを少なくとも一枚含むことを特徴とする物品。
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