JP5418917B2 - 皮膜密着性に優れた表面被覆部品の製造方法 - Google Patents

皮膜密着性に優れた表面被覆部品の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5418917B2
JP5418917B2 JP2010505491A JP2010505491A JP5418917B2 JP 5418917 B2 JP5418917 B2 JP 5418917B2 JP 2010505491 A JP2010505491 A JP 2010505491A JP 2010505491 A JP2010505491 A JP 2010505491A JP 5418917 B2 JP5418917 B2 JP 5418917B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
base material
coating
carbon
metal
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2010505491A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2009119269A1 (ja
Inventor
史明 本多
謙一 井上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Proterial Ltd
Original Assignee
Hitachi Metals Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Metals Ltd filed Critical Hitachi Metals Ltd
Priority to JP2010505491A priority Critical patent/JP5418917B2/ja
Publication of JPWO2009119269A1 publication Critical patent/JPWO2009119269A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5418917B2 publication Critical patent/JP5418917B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C23COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
    • C23CCOATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
    • C23C14/00Coating by vacuum evaporation, by sputtering or by ion implantation of the coating forming material
    • C23C14/02Pretreatment of the material to be coated
    • C23C14/024Deposition of sublayers, e.g. to promote adhesion of the coating
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C23COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
    • C23CCOATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
    • C23C14/00Coating by vacuum evaporation, by sputtering or by ion implantation of the coating forming material
    • C23C14/02Pretreatment of the material to be coated
    • C23C14/027Graded interfaces
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C23COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
    • C23CCOATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
    • C23C14/00Coating by vacuum evaporation, by sputtering or by ion implantation of the coating forming material
    • C23C14/06Coating by vacuum evaporation, by sputtering or by ion implantation of the coating forming material characterised by the coating material
    • C23C14/0605Carbon
    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16JPISTONS; CYLINDERS; SEALINGS
    • F16J1/00Pistons; Trunk pistons; Plungers
    • F16J1/02Bearing surfaces
    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16JPISTONS; CYLINDERS; SEALINGS
    • F16J9/00Piston-rings, e.g. non-metallic piston-rings, seats therefor; Ring sealings of similar construction
    • F16J9/26Piston-rings, e.g. non-metallic piston-rings, seats therefor; Ring sealings of similar construction characterised by the use of particular materials

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Metallurgy (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Combustion & Propulsion (AREA)
  • Physical Vapour Deposition (AREA)
  • Other Surface Treatments For Metallic Materials (AREA)

Description

本発明は、摺動部品や金型に適用される皮膜密着性に優れた表面被覆部品の製造方法に関するものである。
現在、摺動部品や金型に表面処理される硬質皮膜としては、従来のCrN膜やTiN膜などから、摺動特性と耐摩耗特性に優れているダイヤモンドライクカーボンの適用が図られている。
なかでも、硬さが2000HVから3000HV以上にも及ぶダイヤモンドライクカーボンの場合、その成膜方法には、ターゲット材を蒸発源とする点と、さらには面粗さ値が低い皮膜が得られるという点から、取扱いが容易なスパッタリング法の適用が多い。そして、これについては、皮膜と基体の密着性を向上させるために、基体表面をアルゴンガスによりボンバード処理した後、スパッタリング法にてダイヤモンドライクカーボンを被覆する手法が提案されている(特許文献1)。
特開2005―068499号公報
上記、スパッタリング法を用いて被覆したダイヤモンドライクカーボンは、優れた摺動特性と耐摩耗特性を兼ね備えており、アルゴンガスボンバード処理の適用により密着性を向上させている。しかし従来の、硬さが2000HV前後にあるCrN膜やTiN膜に比べると、その高硬度にも起因して密着性は乏しいのが現状である。よって、ダイヤモンドライクカーボンの優れた皮膜特性を有しながら、CrN膜やTiN膜と同等以上の密着性を付与することが大きな課題となっている。
そこで本発明は、例えばダイヤモンドライクカーボンに代表される、上記硬質の物理蒸着皮膜を被覆するにおいては、現状よりも、その皮膜密着性に優れた表面被覆部品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、現状よりも皮膜密着性の優れた表面被覆部品を製造するために、詳細な検討を重ねた。その結果、物理蒸着皮膜を被覆する前には、母材へのボンバード処理と、それに続く中間皮膜の被覆方法に、特別かつ有効な組合せ条件があり、その成膜前処理条件を特定したことで、特に硬質皮膜の密着性が飛躍的に改善されることを突きとめた。
すなわち本発明は、母材の表面にダイヤモンドライクカーボン皮膜を被覆する表面被覆部品の製造方法において、アークイオンプレーティング法を用いて、チタンイオンボンバード処理を行う工程と、次いで、非平衡マグネトロンスパッタリング法を用いて、母材に−40〜−150Vのバイアス電圧を印加して、表面のダイヤモンドライクカーボン皮膜に向かってチタンの含有率が漸減するようなチタンと炭素の混合傾斜皮膜を被覆する工程と、次いで、非平衡マグネトロンスパッタリング法を用いて、母材に−40〜−150Vのバイアス電圧を印加して、表面層となるダイヤモンドライクカーボン皮膜を被覆する工程とを有する皮膜密着性に優れた表面被覆部品の製造方法。
そして、前記の金属イオンボンバード処理を行う工程の前の母材にはアルゴンガスボンバード処理を行うことが望ましい。
本発明によれば、従来よりも硬質皮膜の密着性に優れた、摺動部品や金型に適用される表面被覆部品の製造方法を提供することが可能となる。
本発明における、その母材と皮膜との界面付近の一例を示す透過型電子顕微鏡写真である。 本発明における、その皮膜密着性の評価試験結果(ロックウェル圧痕周辺の状態)の一例を示した顕微鏡写真である。 比較例における、その母材と皮膜との界面付近の一例を示す透過型電子顕微鏡写真である。 比較例における、その皮膜密着性の評価試験結果(ロックウェル圧痕周辺の状態)の一例を示した顕微鏡写真である。 実施例で用いた、ロックウェル硬さ試験機を応用した密着性評価試験の、剥離発生状況の評価基準を示す図である。
本発明の最大の特徴は、硬質の物理蒸着皮膜(以下、単に物理蒸着皮膜とも記す)の被覆前処理としては、その母材へのボンバード処理と、それに続く中間皮膜の被覆に特別かつ有効な組合せ条件があることから、それを実施することで表面被覆部品の皮膜密着性を飛躍的に向上できた点にある。つまり、表面被覆部品の表面層となる物理蒸着皮膜を被覆する前には、その母材にアークイオンプレーティング法を用いた金属イオンボンバード処理を行い、その上にスパッタリング法にて中間金属皮膜を被覆することである。以下、その理由について、好ましい条件と共に、説明する。
(1)物理蒸着皮膜を被覆する前の母材には、アークイオンプレーティング法による金属イオンボンバード処理を行う。
物理蒸着皮膜を被覆する前の母材においては、従来のアルゴンガスボンバード処理のみで前処理をおこなった場合、皮膜と母材との界面に酸素が多く存在してしまい密着性が劣ってしまう。この界面に存在する酸素は、専ら母材表面に最初から形成されている酸化膜に起因するものであり、アルゴンガスボンバード処理では除去しきれていない残存元素である。
これに対し、本発明の金属イオンボンバード処理であれば、アルゴンガスボンバード処理よりもそのイオン元素の比重が大きいため、衝突エネルギーが高く、母材表面の酸化膜の除去が容易である。そして、これがアークイオンプレーティング法によるものであることから、スパッタリング法に比しては、母材に衝突するイオン発生量も、勿論、遥かに多い。なお、金属イオンボンバード処理の際、母材に印加するBias電圧は−400〜−1000V程度の高い負圧域とすることが、上記の効果を得る上で望ましい。
さらには、この金属イオンボンバード処理に用いる金属種は、チタンであることが望ましい。チタンは酸素との反応性が高いことから、上記の物理的作用に加えては、化学的作用からも、更なる酸化膜の除去が可能である。そして、本発明の金属イオンボンバード処理を行う前には、従来のアルゴンガスボンバード処理を行ってもよく、この併用が好ましい。アルゴンガスボンバード処理を行う場合、その際の母材に印加するBias電圧は−100〜−600V程度とすることが望ましい。
(2)金属イオンボンバード処理を行った後には、スパッタリング法による中間金属皮膜を被覆する。
従来、母材上に物理蒸着皮膜を被覆する手段としては、スパッタ源の磁場を意図的に非平衡にすることで、母材へのプラズマ照射を強化して、緻密で密着性の高い皮膜の形成に有利な非平衡マグネトロンスパッタリング法が適用されている。よって、本発明においても、その物理蒸着皮膜の形成には、後述の通りの、非平衡マグネトロンスパッタリング法の適用を好ましいとする。しかしながら、ここで本発明の特徴となるのが、上記の金属イオンボンバード処理を行った後の母材には、直ぐに、この物理蒸着皮膜を形成するのではなくて、更なる密着性を達成するための中間皮膜を形成するところである。
つまり、母材の表面層に適用される硬質の物理蒸着皮膜は、例えば炭化物や窒化物、硫化物といった化合物から、後述の炭素皮膜に代表されるところ、それらの硬さは概ね1000HV以上、更には1500HV以上、2000HV以上の高硬度である。よって、この母材と物理蒸着皮膜との間には、皮膜の内部応力に起因する密着強度の劣化が生じやすい。そこで、これらの間には、本発明の中間金属皮膜を挟むことで、この金属皮膜は上記の物理蒸着皮膜よりも硬さが低いことから、母材と前記皮膜間に生じる応力差を緩衝する作用を有する。そして、この中間金属皮膜の硬さを低下させることについては、それを金属の単体で構成することが望ましい。
ここで、上記の作用効果に斯かっては、中間金属皮膜の硬さは、物理蒸着皮膜に対しては配慮する一方では、母材に対しては、必ずしもその必要はない。つまりこれは、中間皮膜を被覆する前の母材には、既に上記の金属イオンボンバード処理を行うことで、母材と中間金属皮膜との密着性が確保できているからである。ただし、母材が、例えば57HRC(=約633HV)を超える程の高硬度であれば、上記の中間金属皮膜の硬さは、物理蒸着皮膜に対してだけではなく、上記の母材より低くすることも望ましい。
また、上記応力差の緩和に更なる効果を発揮する、後述の混合傾斜皮膜を設けることが望ましい。この場合、この中間金属皮膜の金属種が傾斜構成金属種となるから、トータルとしての皮膜構成の設定および調整も容易となる。
本発明の中間金属皮膜は、上記の応力緩衝効果と、そして皮膜構成の管理の容易性の上でも、金属単層からなることが好ましい。そして特には、200〜300HV程度の適度な硬さを有し、かつ酸素補足作用の大きいチタンが好ましい。あるいはさらに、上記金属イオンボンバード処理で使用した金属元素と同種の金属を適用することで、母材と中間金属皮膜の密着性が更に向上する。これは、金属イオンボンバード処理にアークイオンプレーティング法を用いる本発明にとっては、その処理後の母材上には微量の上記金属元素が残存する可能性があるため、その上に被覆する中間金属皮膜も同種の金属からなる層で形成することは、異種金属層を適用するよりも、母材と中間金属皮膜の親和性を高める要素となるからである。よって、金属イオンボンバード処理にてチタンを用いた場合、中間金属皮膜においてもチタン皮膜を被覆することが、望ましい組み合わせである。
中間金属皮膜は、非平衡マグネトロンスパッタリング法で被覆することが好ましい。中間金属皮膜をアークイオンプレーティング法で被覆した場合、皮膜の蒸発源となる金属ターゲットから、溶融粒(ドロップレット)が発生しやすく、これが皮膜内部に含有されると、皮膜の面粗度が粗くなる欠点がある。これに対して、非平衡マグネトロンスパッタリング法は、溶融粒の発生を皆無にできるため、平滑な皮膜が得られる。
よって、物理蒸着皮膜を被覆する前の母材には、アークイオンプレーティング法による金属イオンボンバード処理を行った後に、スパッタリング法による中間金属皮膜を被覆する本発明にとっては、その一連の被覆処理にはスパッタリング法を適用するところ、金属イオンボンバード処理のみにはアークイオンプレーティング法を用いるところにも特徴を有する。
(3)好ましくは、アークイオンプレーティング法による金属イオンボンバード処理を行った後には、該処理後の母材を処理チャンバ内に維持した状態で、スパッタリング法による被覆処理を連続して行う。
被処理物(母材)をチャンバ内に設置して被覆処理を行う物理蒸着装置においては、その金属イオンボンバード処理後の母材を処理チャンバから取り出してしまうと、母材上に再び酸化膜や汚れが形成されてしまう。よって、前記金属イオンボンバード処理と、それに続くスパッタリング法による被覆処理は、母材を処理チャンバ内に維持した状態で連続して行うことが望ましい。加えては、最後の物理蒸着皮膜の被覆処理までを一連のチャンバ内で行うことが最善である。このため、本物理蒸着装置は、適用する一連の物理蒸着処理に必要な、アークイオンプレーティング用蒸発源、スパッタリングターゲット等の設備を有している。
(4)好ましくは、物理蒸着皮膜は炭素皮膜であり、かつ該炭素皮膜と前記中間金属皮膜との間には、炭素皮膜側に向かって前記金属の含有率が漸減する金属と炭素の混合傾斜皮膜を被覆する。
本発明の表面被覆部品は、その中間金属皮膜の上に被覆する物理蒸着皮膜の種類は問わない。しかしながら、例えば摺動部品や金型を想定すれば、その物理蒸着皮膜にはダイヤモンドやグラファイト、またはダイヤモンドライクカーボン(DLC)に代表される炭素皮膜が好ましい。特に、spおよびspの両炭素同士の結合からなるダイヤモンドライクカーボンは、高硬度かつ摺動特性に優れる皮膜であるため、適用が望ましい。
また、上記の炭素皮膜、特にDLCは、皮膜の内部応力が大きいため密着強度が低いという欠点がある。そこで、本発明においては、上記の通り、その応力問題を緩和するための中間金属皮膜を導入している。そして、これに加えては、この炭素皮膜と前記中間金属皮膜との間には、炭素皮膜側に向かって前記金属の含有率が漸減する金属と炭素の混合傾斜皮膜を被覆することが望ましい。これにより、更なる応力緩和作用が得られ、母材−物理蒸着皮膜間のトータルの密着性が向上する。
なお、上記の炭素皮膜、特にDLCを被覆するにおいては、その際の母材に印加するBias電圧を調整することも望ましい。つまり、これらの炭素皮膜は、その被覆時の上記Bias電圧(負圧)を低めに設定すれば、硬度が下がる(すなわち、軟化する)につれて、密着性が向上する。しかしながら、上述の手法によって、既に十分な皮膜密着性を達成している本発明にとっては、このBias電圧を高めに設定し、炭素皮膜の硬度を高めても、それは十分な皮膜密着性を維持できる。
また、一方では、上記のBias電圧を低め過ぎると、炭素皮膜自体の形成が困難となる。そして、逆に高め過ぎると、被覆操業中の装置温度が過度に上昇して、装置の不良や皮膜自身の劣化、そして母材の軟化などが懸念される。これらの事項を踏まえて、本発明の炭素皮膜を被覆する際の該Bias電圧は、−40〜−150V程度が好ましい。そして、この炭素皮膜を被覆する前の、中間金属皮膜や混合傾斜皮膜を被覆する際のBias電圧は、この炭素皮膜を被覆時のBias電圧を踏襲しても差し支えない。
本発明の表面被覆部品に使用する母材は、上記の作用効果を得るにおいては、その材質を問わない。しかし、摺動部品や金型などの工具にも適用され得ることを考慮すれば、母材は各種の工具鋼に代表される鋼などの、合金設計のされた金属材質とすることが望ましい。そして、本発明の物理蒸着皮膜の厚さは、金属イオンボンバード処理後に被覆した中間金属皮膜からの総皮膜厚さにて、約0.5〜3μmに制御することが、皮膜の機能と密着性の両立の上で望ましい。
[試料作製]
表面処理を行う母材として、硬さ64HRCに調整したJIS高速度工具鋼SKH51の円盤状試験片(直径20mm×厚み5mm)を準備した。これらの試験片平面を鏡面機械研磨した後、アルカリ超音波洗浄を行った。
(1)本発明試料No.1〜4
上記作製した母材を、チャンバ容積が1.4m(処理品の挿入空間は0.3m)の非平衡マグネトロンスパッタリング装置内に設置して、温度773K、圧力1×10−3Paの真空中で加熱脱ガスを十分行った後、723Kの温度において、2.0Paの圧力でアルゴンガスプラズマによるボンバード処理を、Bias電圧:−200V〜−500Vにて5分間行った。次に、温度723K、Bias電圧:−500V〜−800Vで2分間の、金属にチタンを用いたアークイオンプレーティング法による金属イオンボンバード処理を行った。
そして、上記に続けては、母材を同チャンバ内に維持した状態のままで、最後の物理蒸着皮膜までのコーティングを行った。コーティングは、チタンターゲットとグラファイトターゲットを用い、所定のBias電圧に設定した非平衡マグネトロンスパッタリング法により、523Kの温度にて行った。まず、中間金属皮膜にチタン層を形成した。その上に、チタン含有率が漸減する一方では、炭素の含有率は漸増する、チタンと炭素の混合傾斜皮膜、そして最表層に炭素皮膜(DLC皮膜)の順で、総皮膜厚さの目標が1.5μmの被覆処理を行った。なお、DLC皮膜の硬さは、その被覆処理時のBias電圧が−50Vのもが2000HV程度、同−100Vのものが3000HV程度である。
(2)比較例試料No.5〜7
本発明試料No.1〜4に対しては、そのボンバード処理において、アークイオンプレーティング法による金属イオンボンバード処理は行わず、アルゴンガスボンバード処理のみを行った。
試料No.1〜7の、上記ボンバード処理およびコーティング処理時のバイアス電圧条件について、表1に纏めておく。
Figure 0005418917
[試料No.1〜7の評価]
(1)界面酸素量の測定
本発明の表面被覆部品である試料No.1〜4と、その比較例である試料No.5〜7から、母材とコーティング皮膜との界面の透過型電子顕微鏡(TEM)観察用試料を作製した。詳細には、各試料から一部を切り出して、それをエポキシ樹脂を用いてダミー基板および補強リングと接着し、それを研磨し、ディンプリングを行い、アルゴンイオンミリング法にてTEM観察用試料に整えた。
そして、上記で作製したTEM観察用試料について、その母材とコーティング皮膜との界面を、電界放射型透過顕微鏡(FE−TEM:日本電子製JEM−2010F型)を用いて、加速電圧200kV、40万倍の条件で観察を行った。そして、このTEM観察を行った界面について、ビーム径1nmのエネルギー分散型X線分光(EDS:ノーラン製UTW型Si(Li)半導体検出器)による酸素量の分析を行った。測定部位は、界面から皮膜側10nmに位置する部位(中間チタン皮膜内部である)と、母材−皮膜界面、および界面から母材側10nmに位置する母材内部の、3ヶ所とした。
(2)皮膜密着性の評価
試料No.1〜7の皮膜表面(DLCコーティング皮膜)に対し、ロックウェル硬さ試験機(ミツトヨ製AR−10)にてCスケールで圧痕を付けた。そして、その圧痕部位を光学顕微鏡にて観察することで、図5に示す基準で圧痕の周辺に発生する剥離状況を評価し、皮膜密着性の優劣を調べた(つまり、圧痕の全周長に対する、剥離の発生した周長で評価するもである。剥離の発生がないものをA(密着性に優れる)、微視的な剥離が発生したものをBとして、順次、(剥離の発生した周長/圧痕の全周長)の比が1/2未満のものをC、1/2以上3/4未満のものをD、3/4以上1(全周)未満のものをE、そして全周に著しく発生したものをF(密着性に劣る)とした)。
試料No.1〜7のコーティング皮膜について、その界面付近に存在する酸素量と、密着性の評価結果を、表2に示す。
Figure 0005418917
母材に対し、金属イオンボンバード処理を行った本発明の試料No.1〜4は、母材と皮膜界面に存在する酸素量が母材内部とほぼ同等量である。図1は、試料No.1について、その母材と皮膜との界面付近を示したTEM像である。そして、中間チタン皮膜の形成に加えては、チタンと炭素の傾斜皮膜を介して、被覆したDLC皮膜は、その密着性に優れる。図2は、試料No.1について、その密着性評価試験の結果(ロックウェル圧痕周辺の状態)を示した顕微鏡写真である。
それに対し、上記の金属イオンボンバード処理を行わなかった試料No.5〜7は、母材内部に存在する酸素量に比べて、界面の酸素量が非常に高くなっている。図3は、試料No.5の界面付近を示したTEM像であるが、そこには酸素を含む厚み約5nmの層が白く確認できる。そして、その結果、試料No.5〜7のDLC皮膜は、中間チタン皮膜と、チタンと炭素の傾斜皮膜をも導入したにも関わらず、密着性評価結果では圧痕周辺に剥離が発生し、十分な密着性が得られなかった。図4は、試料No.5の密着性評価試験の結果(ロックウェル圧痕周辺の状態)を示した顕微鏡写真である。
本発明は、摺動部品や金型に適用できるところ、具体的には、バルブリフターやニードル、またはプランジャーといった自動車部品製品への適用も考えられる。

Claims (2)

  1. 母材の表面にダイヤモンドライクカーボン皮膜を被覆する表面被覆部品の製造方法において、
    アークイオンプレーティング法を用いて、チタンイオンボンバード処理を行う工程と、
    次いで、非平衡マグネトロンスパッタリング法を用いて、母材に−40〜−150Vのバイアス電圧を印加して、表面のダイヤモンドライクカーボン皮膜に向かってチタンの含有率が漸減するようなチタンと炭素の混合傾斜皮膜を被覆する工程と、
    次いで、非平衡マグネトロンスパッタリング法を用いて、母材に−40〜−150Vのバイアス電圧を印加して、表面層となるダイヤモンドライクカーボン皮膜を被覆する工程とを有することを特徴とする皮膜密着性に優れた表面被覆部品の製造方法。
  2. 前記のチタンイオンボンバード処理を行う工程の前の母材には、アルゴンガスボンバード処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の皮膜密着性に優れた表面被覆部品の製造方法。
JP2010505491A 2008-03-28 2009-03-04 皮膜密着性に優れた表面被覆部品の製造方法 Active JP5418917B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010505491A JP5418917B2 (ja) 2008-03-28 2009-03-04 皮膜密着性に優れた表面被覆部品の製造方法

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008085938 2008-03-28
JP2008085938 2008-03-28
PCT/JP2009/054075 WO2009119269A1 (ja) 2008-03-28 2009-03-04 皮膜密着性に優れた表面被覆部品の製造方法
JP2010505491A JP5418917B2 (ja) 2008-03-28 2009-03-04 皮膜密着性に優れた表面被覆部品の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2009119269A1 JPWO2009119269A1 (ja) 2011-07-21
JP5418917B2 true JP5418917B2 (ja) 2014-02-19

Family

ID=41113474

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010505491A Active JP5418917B2 (ja) 2008-03-28 2009-03-04 皮膜密着性に優れた表面被覆部品の製造方法

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP5418917B2 (ja)
WO (1) WO2009119269A1 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN107338414A (zh) * 2016-05-03 2017-11-10 大连金泰表面工程科技有限公司 导电,抗腐蚀,耐磨损,高硬度类金刚石涂层的制备方法

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5412402B2 (ja) * 2010-11-02 2014-02-12 株式会社日立製作所 摺動部品およびそれを用いた機械装置
GB2565320A (en) * 2017-08-10 2019-02-13 Yang Shicai Gradient method to deposit hard and lubricant coatings
US11976350B2 (en) 2018-02-27 2024-05-07 Proterial, Ltd. Covering member and method for manufacturing the same
CN112135372B (zh) * 2020-09-08 2022-03-25 大连理工大学 一种具有结构色梯度的彩色碳纤维热管理器件及制备方法

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS63286334A (ja) * 1987-05-19 1988-11-24 Idemitsu Petrochem Co Ltd 積層体およびその製造法
JP2003082458A (ja) * 2001-09-10 2003-03-19 Sumitomo Electric Ind Ltd 非晶質炭素被膜の形成装置及び形成方法
JP2007070667A (ja) * 2005-09-05 2007-03-22 Kobe Steel Ltd ダイヤモンドライクカーボン硬質多層膜成形体およびその製造方法
JP2007136597A (ja) * 2005-11-17 2007-06-07 Tungaloy Corp 被覆部材

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS63286334A (ja) * 1987-05-19 1988-11-24 Idemitsu Petrochem Co Ltd 積層体およびその製造法
JP2003082458A (ja) * 2001-09-10 2003-03-19 Sumitomo Electric Ind Ltd 非晶質炭素被膜の形成装置及び形成方法
JP2007070667A (ja) * 2005-09-05 2007-03-22 Kobe Steel Ltd ダイヤモンドライクカーボン硬質多層膜成形体およびその製造方法
JP2007136597A (ja) * 2005-11-17 2007-06-07 Tungaloy Corp 被覆部材

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN107338414A (zh) * 2016-05-03 2017-11-10 大连金泰表面工程科技有限公司 导电,抗腐蚀,耐磨损,高硬度类金刚石涂层的制备方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPWO2009119269A1 (ja) 2011-07-21
WO2009119269A1 (ja) 2009-10-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4560964B2 (ja) 非晶質炭素被覆部材
WO2004076710A1 (ja) 非晶質炭素膜、その製造方法および非晶質炭素膜被覆部材
JP2007070667A (ja) ダイヤモンドライクカーボン硬質多層膜成形体およびその製造方法
JP6525310B2 (ja) 被覆工具
JP5418917B2 (ja) 皮膜密着性に優れた表面被覆部品の製造方法
KR101750171B1 (ko) 경질 미끄럼 이동 부재의 제조 방법
JP6337944B2 (ja) 被覆工具
WO2018235750A1 (ja) 摺動部材及び被覆膜
JP4300762B2 (ja) 炭素膜被覆物品及びその製造方法
JP5682560B2 (ja) 皮膜密着性に優れた表面被覆摺動部品およびその製造方法
CN108754406A (zh) 一种模具表面复合处理方法
JP2009035584A (ja) 摺動部材
JP5226826B2 (ja) ダイヤモンドライクカーボン硬質多層膜成形体の製造方法
JP5720996B2 (ja) 皮膜密着性に優れた被覆部材およびその製造方法
JP6308298B2 (ja) 被覆工具の製造方法
WO2016111288A1 (ja) ダイヤモンドライクカーボン層積層体およびその製造方法
JP2004137541A (ja) Dlc傾斜構造硬質被膜及びその製造方法
JP2016124086A (ja) 被覆工具
JP5212416B2 (ja) 非晶質炭素被覆部材
JP2004131820A (ja) 高機能ハイス工具製造方法
JP6805320B1 (ja) 多層皮膜、その製造方法、及び多層皮膜が被覆された機械部材
JP5924908B2 (ja) 硬質皮膜被覆部材の製造方法
JP2010229552A (ja) 非晶質炭素被覆部材の製造方法
JP2006169614A (ja) 金属複合ダイヤモンドライクカーボン(dlc)皮膜、その形成方法、及び摺動部材
KR20150118665A (ko) 저마찰 및 기계적 특성이 향상된 자동차 습동 부품용 코팅재 및 이를 이용한 표면 코팅방법

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120213

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130819

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130925

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20131025

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20131107

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5418917

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350