JP5409382B2 - 口腔内崩壊錠 - Google Patents

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Description

本発明は、少量の水又は水なしで服用しても口腔内で速やかに崩壊する口腔内崩壊錠であって、特に加湿条件下でも錠剤の硬度低下が少なく、かつ良好な崩壊性を維持する口腔内崩壊錠に関する。
口腔内崩壊錠は、水なしで服用しても口腔内で速やかに崩壊する錠剤であり、嚥下能の低下した高齢者にも服用しやすい製剤である。
近年、病院や調剤薬局では患者が複数の薬を服用する場合には、患者が薬を呑み忘れたり、呑み間違えたりするのを防ぐために、服用する時間帯ごとに複数の薬を一つのパッケージに納めた一包化による服薬コンプライアンス改善の取り組みが盛んとなっている。このため、患者が薬を服用する以前に薬剤がパッケージやPTPシートから取り出され加湿条件下に曝露されることがある。特に口腔内崩壊錠は、一般に錠剤硬度が低いため、加湿条件下に曝露され錠剤の硬度が低下すると、服用前に錠剤が破損したり、崩壊時間が遅延する恐れがある。このため医療現場では、加湿条件下で保存しても錠剤の硬度低下が小さく、また崩壊性が維持されるような口腔内崩壊錠の創出が望まれている。
また、口腔内崩壊錠は、崩壊性を確保するために賦形剤として糖アルコールを用いることが多い。しかし、口腔内崩壊錠に含まれる錠剤成分に糖アルコールと反応し、不純物を生じさせるような物質が含まれる場合には、錠剤成分は糖アルコールを実質的に含まないことが望ましい。
このような中、糖アルコールを必須成分とせず、賦形剤として結晶セルロース及び無水リン酸水素カルシウムを含有する口腔内崩壊錠に関して後記特許文献1〜5及び非特許文献1が知られている。
特許文献1に記載の口腔内崩壊錠は、実質的に、活性成分、結晶セルロース及び無水リン酸水素カルシウムなどの無機賦形剤からなり、崩壊剤を含まないことを特徴としている。さらに特許文献1の口腔内崩壊錠は、クロスポビドンやクロスカルメロースナトリウムなどの崩壊剤を含む口腔内崩壊錠に比べ、加湿条件下において硬度低下や崩壊時間の遅延が生じないことが記載されている(実施例5及び比較例5〜9)。また「崩壊剤は吸湿によって錠剤硬度の低下や錠剤表面の荒れを引き起こしたり、唾液を吸収してぱさつき感を与えて口当たりを悪くするなど錠剤の品質を悪化させる側面があるため、崩壊剤を含まない本発明は優位である。」との記載がある。
特許文献2には、活性成分、結晶セルロース、無水リン酸水素カルシウムなどの無機賦形剤、カルメロース及び0.8重量%以下の滑沢剤を含有する口腔内崩壊錠が記載されている。該口腔内崩壊錠は崩壊剤にカルメロースを用いることが必須であり、崩壊剤として天然デンプン類のような崩壊剤を使用することについては一切記載されていない。
特許文献3は、水に不溶な無機賦形剤、崩壊剤、実質的に水に可溶な賦形剤を含有する急速崩壊錠剤に関するものであり、無水リン酸水素カルシウム、トウモロコシデンプン、結晶セルロース及びステアリン酸マグネシウムを含有する口腔内崩壊錠が開示されている。しかしながら、該口腔内崩壊錠の無水リン酸水素カルシウムの配合割合及びステアリン酸マグネシウムの配合割合が、後記本発明の口腔内崩壊錠のリン酸水素カルシウム類の配合割合及び滑沢剤の配合割合と相違する。ちなみに特許文献3に記載の口腔内崩壊錠の絶対硬度(直径方向の押潰しにより測定された引っ張り強度)は0.7N/mm2以下である。
特許文献4には、結晶セルロース、リン酸水素カルシウム、トウモロコシデンプン、ステアリン酸マグネシウムを含有する錠剤が開示されているが、リン酸水素カルシウムの配合割合及びステアリン酸マグネシウムの配合割合が、後記本発明の口腔内崩壊錠のリン酸水素カルシウム類の配合割合及び滑沢剤の配合割合と相違する。
特許文献5は、苦味抑制製剤に関するものであり、その実施例34には、薬効成分、トウモロコシデンプン及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを攪拌造粒することにより得られる顆粒、結晶セルロース、リン酸水素カルシウム及びステアリン酸マグネシウムを含有する製剤が開示されている。
非特許文献1には、結晶セルロース、無水リン酸水素カルシウム、及び崩壊剤としてクロスカルメロースナトリウム又はカルメロースを含有する口腔内崩壊錠が記載されている。しかしながら、後記本発明に用いられている天然デンプン類を崩壊剤として用いることは一切記載されていない。また後記本発明が課題としている加湿条件下において、硬度低下や崩壊時間の遅延を抑制することについては何ら記載されていない。
また、特許文献6には、リン酸水素カルシウムとエリスリトールの噴霧乾燥組成物、うま味成分を含有する苦みマスキング用組成物、及び該組成物を含有する口腔内崩壊錠が記載されている。明細書中の実施例には、結晶セルロース、リン酸水素カルシウム、トウモロコシデンプン、1重量%以下の滑沢剤を含有する口腔内崩壊錠が開示されているが、該口腔内崩壊錠は、リン酸水素カルシウムとエリスリトールの懸濁液を噴霧乾燥することが必須であるのに対し、後記本発明はエリスリトールを必須成分としない点において相違する。さらに特許文献6に記載の発明は苦味成分の苦味をマスキングすることを課題としており、後記本発明が課題としている加湿条件下において、硬度低下や崩壊時間の遅延を抑制することについては何ら記載されていない。
国際公開第2005/123040号パンフレット 国際公開第2007/018192号パンフレット 特表2002−505269号公報 特開平5−32627号公報 国際公開第2007/018190号パンフレット 特開2001−69961号公報 協和化学工業株式会社パンフレット(無水リン酸水素カルシウム GSリポート)
適度な硬度と口腔内での速やかな崩壊性を兼ね備え、かつ加湿による硬度低下が小さく、良好な口腔内崩壊性が維持される口腔内崩壊錠を提供する。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、結晶セルロース、リン酸水素カルシウム類に加え、崩壊剤として天然デンプン類、及び1.8重量%以下の滑沢剤を含有する口腔内崩壊錠が、従来より知られていた口腔内崩壊錠に比して、適度な硬度を有し、加湿による硬度低下が小さく、良好な口腔内崩壊性を維持することを見出した。
すなわち、本発明は、以下のものに関する。
項1:(a)結晶セルロース、(b)リン酸水素カルシウム類、(c)天然デンプン類及び(d)滑沢剤を含有する口腔内崩壊錠であって、該崩壊錠100重量%に対する配合割合が(a) 9〜60重量%、(b) 16〜60重量%、(c) 3〜40重量%及び(d) 0.01〜1.8重量%である口腔内崩壊錠。
項2:結晶セルロース(a)の配合割合が9〜53重量%であり、天然デンプン類(c)の配合割合が3〜30重量%である項1に記載の口腔内崩壊錠。
項3:さらに、薬効成分(e)を0.01〜60重量%の配合割合で含有する項1又は2に記載の口腔内崩壊錠。
項4:さらに、賦形剤、結合剤、甘味剤、矯味剤・嬌臭剤、香料、流動化剤、帯電防止剤、着色剤及びコーティング剤からなる群から選択される1以上の添加剤を含有する項1〜3のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠。
項5:実質的に結晶セルロース(a)、リン酸水素カルシウム類(b)、天然デンプン類(c)、滑沢剤(d)及び薬効成分(e)からなる項3又は4に記載の口腔内崩壊錠。
項6:粉末状又は粒状の、結晶セルロース(a)、リン酸水素カルシウム類(b)及び天然デンプン類(c)、並びに薬効成分(e)を混合して得られる組成物に、滑沢剤(d)を添加して圧縮成形することにより得られる項3に記載の口腔内崩壊錠。
項7:直接打錠で圧縮成形することにより製造される項1〜5のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠。
項8:結晶セルロース(a)の配合割合が20〜53重量%である項1〜7のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠。
項9:リン酸水素カルシウム類(b)の配合割合が30〜60重量%である項1〜8のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠。
項10:天然デンプン類(c)の配合割合が9〜30重量%である項1〜9のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠。
項11:滑沢剤(d)の配合割合が0.01〜1.0重量%である項1〜10のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠。
項12:上記添加剤の配合割合が0.01〜40重量%である項4に記載の口腔内崩壊錠。
項13:天然デンプン類(c)がトウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン及びバレイショデンプンからなる群から選択される少なくとも1種である項1〜12のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠。
項14:天然デンプン類(c)がトウモロコシデンプンである項13に記載の口腔内崩壊錠。
項15:滑沢剤(d)がステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、軽質無水ケイ酸及びステアリン酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種である項1〜14のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠。
項16:滑沢剤(d)がステアリン酸マグネシウムである項15に記載の口腔内崩壊錠。
本発明によれば、適度な硬度と口腔内での速やかな崩壊性を兼ね備え、かつ加湿条件下でも硬度低下が小さく、良好な口腔内崩壊性が維持される口腔内崩壊錠が得られる。
このため医療現場や流通過程において加湿条件下に錠剤が曝露された場合でも、十分な錠剤硬度と口腔内における良好な崩壊性を具備する口腔内崩壊錠を提供することができる。
以下、本発明につき、さらに詳しく説明する。
(a)結晶セルロース
本発明に使用される結晶セルロースとしては、経口投与が可能なものであれば特に限定されない。結晶セルロースの平均粒子径が大きいと口腔内で崩壊した後に、ザラツキを感じるため、服用感の観点において原料とする結晶セルロースの平均粒子径は150μm以下が好ましく、より好ましくは130μm以下であり、さらに好ましくは120μm以下である。また、原料とする結晶セルロースのかさ密度が小さいと、加湿後の口腔内崩壊時間が延長する傾向があることから、結晶セルロースのかさ密度は、好ましくは0.1〜0.5 g/cmであり、より好ましくは0.25〜0.5 g/cmである。かさ密度は、Scott Volumeterを用いたゆるめ見掛け密度により測定される。
本発明に使用される結晶セルロースの配合割合は、硬度及び崩壊時間の観点から、錠剤全重量に対し9〜60重量%であり、好ましくは9〜59重量%であり、より好ましくは9〜53重量%であり、さらに好ましくは20〜53重量%である。
本明細書において、配合割合とは、錠剤全重量を100重量%としたときの錠剤全重量に対する各成分の割合を表す。
本発明に使用される結晶セルロースとしては、例えば、セオラス(CEOLUS、登録商標、PH-101、PH-102、PH-301、PH-302、PH-F20J、KG-800、KG-1000、ST-02:旭化成ケミカルズ社製)、アビセル(AVICEL、登録商標、PH-101、PH-102、PH-301、PH-302、FD-101、FD-301、FD-F20:FMC BioPolymer社製)、セルフィアSCP(旭化成ケミカルズ)、ファーマセル(ファーマセル101, 102:五協産業)が挙げられる。
これらの結晶セルロースは単独で用いてもよいが、二種以上を併用することもできる。
(b)リン酸水素カルシウム類
本発明に使用されるリン酸水素カルシウム類には、リン酸水素カルシウム(第二リン酸カルシウム)、無水リン酸水素カルシウム(無水第二リン酸カルシウム)、及びリン酸二水素カルシウム(第一リン酸カルシウム)が含まれる。これらリン酸水素カルシウム類は経口投与が可能であれば特に限定されることはない。本発明に使用されるリン酸水素カルシウム類の配合割合は、硬度及び崩壊時間の観点から、錠剤全重量に対し16〜60重量%であり、好ましくは30〜60重量%である。
本発明に使用されるリン酸水素カルシウムとしては、例えば、リン酸水素カルシウム(標準、FF:協和化学工業社製)が挙げられる。本発明に使用される無水リン酸水素カルシウムとしては、例えば、無水リン酸水素カルシウム(GS、GSH、重質、標準、軽質:協和化学工業社製)、フジカリン(FUJICARIN、登録商標、富士化学工業社製)が挙げられる。
原薬が水に不安定な場合には無水リン酸水素カルシウムを用いるのが好ましい。また、原料の混合末を直接打錠して錠剤を製造する場合には、直接打錠用のリン酸水素カルシウムや無水リン酸水素カルシウムが有効である。直接打錠用のリン酸水素カルシウムとしては、例えば、リン酸水素カルシウム(FF:協和化学工業社製)が挙げられる。また直接打錠用の無水リン酸水素カルシウムとしては、例えば、無水リン酸水素カルシウム(GS、GSH:協和化学工業社製)が挙げられる。
本発明に使用されるリン酸二水素カルシウムとしては、例えば、第一リン酸カルシウム(東北化学工業社製)、リン酸二水素カルシウム(国産化学社製、純正化学社製、太平化学産業社製、林純薬工業社製、米山化学工業社製)が挙げられる。
上記リン酸水素カルシウム類は、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム及びリン酸二水素カルシウムからなる群より選択される一又は二以上のものを用いることができる。
(c)天然デンプン類
本発明に使用される天然デンプン類としては、トウモロコシデンプン(コーンスターチ)、バレイショデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、甘藷デンプン、緑豆デンプン、タピオカデンプンなどの天然デンプン類が挙げられる。これらの天然デンプン類は単独で用いてもよいが、二種以上併用することもできる。これらのうち、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプンは、加湿後の崩壊遅延の抑制効果が高いことから好ましい。トウモロコシデンプンが、加湿後の硬度と崩壊性の観点からより好ましい。
天然デンプン類の配合割合は、硬度及び崩壊時間の観点から、錠剤全重量に対し3〜40重量%であり、好ましくは3〜30重量%であり、さらに好ましくは9〜30重量%である。
上記天然デンプン類の例としては、トウモロコシデンプン(コーンスターチ(XX16)W:日本食品化工社製、トウモロコシデンプン:三栄源エフ・エフ・アイ社製、純正化学社製、日澱化学社製、松谷化学工業社製)、コムギデンプン(松谷菊:松谷化学工業社製)、コメデンプン(うるち米でん粉(ミクロパール)、もち粉でん粉(モチールB):島田化学工業社製)、バレイショデンプン(松谷ひまわり:松谷化学工業社製、純正化学社製、日澱化学社製)、甘藷デンプン(松谷化学工業社製)、緑豆デンプン(松谷化学工業社製)、タピオカデンプン(松谷桜:松谷化学工業社製)が挙げられる。
(d)滑沢剤
本発明に使用される滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、軽質無水ケイ酸、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールが挙げられ、好ましくは、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、軽質無水ケイ酸であり、より好ましくは、ステアリン酸マグネシウムである。これらの滑沢剤は単独で用いてもよいが、二種以上併用することもできる。
本発明において該滑沢剤は、外部滑沢法及び内部滑沢法のいずれの方法を用いて配合しても良い。
滑沢剤の配合割合としては、錠剤全重量に対して0.01〜1.8重量%であり、好ましくは0.01〜1.0重量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.8重量%であり、特に好ましくは0.1〜0.5重量%である。滑沢剤が少ないほど、加湿後に低湿度環境に戻したときには硬度が回復し易く、硬度維持率が高くなる傾向が見られた。滑沢剤が多いと、加湿後の崩壊時間は遅延する傾向にあり、特に、滑沢剤の配合割合が2重量%を超えると、加湿後の崩壊時間は30秒以上となった。一方滑沢剤が0.01%より少なくなると打錠障害が生じ易い。上記滑沢剤は、0.25〜0.95重量%の配合割合で用いることもできる。
(e)薬効成分
本発明の口腔内崩壊錠において使用される薬効成分は、いかなる薬効成分も使用することができる。経口投与可能な薬効成分であれば特に限定されない。例えば、滋養強壮保健薬;解熱鎮痛消炎薬;抗精神病薬;催眠鎮静薬;鎮痙薬;中枢神経作用薬;脳代謝改善薬;脳循環改善薬;抗てんかん薬;交感神経興奮剤;健胃消化剤;抗潰瘍剤;消化管運動機能改善剤;制酸剤;鎮咳去痰剤;腸運動抑制薬;鎮吐剤;呼吸促進剤;気管支拡張剤;アレルギー用薬;抗ヒスタミン剤;強心剤;不整脈用剤;利尿剤;ACE阻害剤;Ca拮抗剤;AII拮抗薬;血管収縮剤;冠血管拡張剤;血管拡張薬;末梢血管拡張薬;高脂血症用剤;利胆剤;セフェム系抗生物質;経口抗菌薬;化学治療剤;スルフォニル尿素薬;αグルコシダーゼ阻害薬;インスリン抵抗性改善薬;速効性インスリン分泌促進剤;DPPIV阻害薬;糖尿病合併症治療薬;骨粗しょう症剤;抗リウマチ剤;骨格筋弛緩剤;アルカロイド系麻薬;サルファ剤;痛風治療剤;血液凝固阻止剤;抗悪性腫瘍剤などが挙げられる。
具体的には、本発明における薬効成分としては、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸、生薬、乳酸菌などの滋養強壮保健薬;アスピリン、アセトアミノフェン、エテンザミド、イブプロフェン、カフェイン、インドメタシンなどの解熱鎮痛消炎薬;ブロナンセリン、ルラシドン塩酸塩、クエン酸タンドスピロン、塩酸ペロスピロン、レセルピン、ジアゼパム、フルジアゼパム、ハロペリドール、アリピプラゾール、塩酸ノルトリプチリンなどの抗精神病薬;ニトラゼパム、ジアゼパム、トリアゾラム、ブロチゾラム、ゾルピデム、ニメタゼパムなどの催眠鎮静薬;臭化水素酸スコポラミンなどの鎮痙薬;ゾニサミド、ドロキシドパ、シチコリン、塩酸ビペリデン、塩酸ドネペジルなどの中枢神経作用薬;塩酸メクロフェートなどの脳代謝改善薬;ビンポセチンなどの脳循環改善薬;ゾニサミド、フェニトイン、クロナゼパム、プリミドン、バルプロ酸ナトリウム、カルバマゼピン、ジアゼパム、エイトトイン、アセチルフェネトライドなどの抗てんかん薬;塩酸イソプロテレノールなどの交感神経興奮剤;ジアスターゼ、ロートエキス、パンクレアチンなどの健胃消化剤;シメチジン、ランソプラゾール、ファモチジン、スルピリド、ゲファルナートなどの抗潰瘍剤;クエン酸モサプリドなどの消化管運動機能改善剤;メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどの制酸剤;塩酸クロペラスチン、塩酸エフェドリン、クエン酸ペントキシベリンなどの鎮咳去痰剤;塩酸ロペラミドなどの腸運動抑制薬;塩酸ジフェニドールなどの鎮吐剤;酒石酸レバロルファンなどの呼吸促進剤;テオフィリンなどの気管支拡張剤;エバスチンなどのアレルギー用薬;塩酸ジフェンヒドラミンなどの抗ヒスタミン剤;カフェイン、ジゴキシンなどの強心剤;塩酸プロカインアミド、塩酸アロチノロールなどの不整脈用剤;イソソルビドなどの利尿剤;塩酸デラプリル、カプトプリル、アラセプリルなどのACE阻害剤;ニフェジピン、塩酸ジルチアゼム、塩酸マニジピン、ベシル酸アムロジピンなどのCa拮抗剤;カンデサルタン、オルメサルタン、バルサルタンなどのAII拮抗薬;塩酸フェニレフリンなどの血管収縮剤;塩酸カルボクロメンなどの冠血管拡張剤;リマプロストアルファデクスなどの血管拡張薬;シンナリジンなどの末梢血管拡張薬;シンバスタチン、プラバスタチンナトリウムなどの高脂血症用剤;デヒドロコール酸などの利胆剤;セフェレキシン、セファクロルなどのセフェム系抗生物質;ガチフロキサシン、スパルフロキサシンなどの経口抗菌薬;スルファメチゾール、ピペミド酸三水和物などの化学治療剤;グリクラジド、グリベンクラミド、グリメピリドなどのスルフォニル尿素薬;アカルボース、ボグリボース、ミグリトールなどのαグルコシダーゼ阻害薬;塩酸ピオグリタゾン、ロシグリタゾンなどのインスリン抵抗性改善薬;メトホルミン、ブホルミン、フェンホルミンなどのビグアナイド薬;ナテグリニド、ミチグリニドカルシウム水和物などの速効性インスリン分泌促進剤;シタグリプチンなどのDPPIV阻害薬;ラニレスタット、エパルレスタットなどの糖尿病合併症治療薬;エチドロン酸二ナトリウムなどの骨粗しょう症剤;メトトレキセートなどの抗リウマチ剤;メトカルバモールなどの骨格筋弛緩剤;塩酸メクリジンなどの鎮うん剤(鎮暈剤);塩酸モルヒネ、アヘンなどのアルカロイド系麻薬;スルフィソミジンなどのサルファ剤;アロプリノールなどの痛風治療剤;ジクマロールなどの血液凝固阻止剤;5-フルオロウラシル、マイトマイシンなどの抗悪性腫瘍剤などが挙げられる。
本発明における薬効成分として、インドメタシン、ブロナンセリン、ルラシドン塩酸塩、クエン酸タンドスピロン、塩酸ペロスピロン、フルジアゼパム、ハロペリドール、塩酸ノルトリプチリン、ニメタゼパム、ゾニサミド、ドロキシドパ、塩酸ビペリデン、フェニトイン、クロナゼパム、プリミドン、バルプロ酸ナトリウム、エイトトイン、アセチルフェネトライド、パンクレアチン、シメチジン、スルピリド、ゲファルナート、クエン酸モサプリド、塩酸エフェドリン、クエン酸ペントキシベリン、塩酸アロチノロール、アラセプリル、ベシル酸アムロジピン、ガチフロキサシン、スパルフロキサシン、ピペミド酸三水和物、グリクラジド、ミグリトール、ラニレスタット、エチドロン酸二ナトリウム、アロプリノールなどから選んでもよい。
以上に挙げた薬効成分は、薬学上許容される限り、上記に記載した以外の塩又はフリー体の形であってもよい。また、アルコール和物などの溶媒和物、又は水和物などの形であってもよい。本明細書における薬効成分の配合割合には、上記薬効成分に含まれる塩、溶媒和物の溶媒、及び/又は水和物の水分も含まれるものとする。さらに、以上に挙げた薬効成分は、単独で用いても、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、薬効成分の苦味などの不快な味をマスキング処理したものを用いてもよい。マスキングの例としては、薬効成分の被覆が挙げられる。
本明細書において被覆とは、薬効成分の表面の全部又は一部を被覆成分で覆うことである。被覆するための装置としては、一般的な流動層造粒機(転動流動層造粒機、ワースター型流動層造粒機などを含む)が挙げられるが、工程中の粒子の粗大化を抑えるために、側面からの強制循環装置を備えるワースター法を改良した流動層造粒機(例えばパウレック社製 SPCなど)や整粒解砕機構(スクリーン・インペラ方式やブレード・ステータ方式、クロススクリュー、ランプブレーカなど)付き複合型流動層造粒機(例えば、パウレック社製 微粒子コーティング・造粒装置SFP-01など)、回転流動層造粒機(例えば、奈良機械製作所製 オムニテックスなど)が好ましい。噴霧乾燥するための装置としては、一般的なスプレードライヤー(大川原製作所製、大川原化工機製、ヤマト社製、ニロ社製など)を用いることができる。
糖アルコールと配合変化が生じる物質を口腔内崩壊錠に用いる場合、錠剤内において不純物が生じることが懸念されるが、糖アルコールを必須としない本発明の口腔内崩壊錠は、このような配合変化が生じるおそれがなく該物質でも薬効成分や添加剤として有効に用いることができる。例えば、カルボキシル基を有する薬物は、糖アルコールと脱水反応を起こし不純物を生じさせることが懸念されるが、本発明の口腔内崩壊錠の場合、糖アルコールを必須としないためこのような脱水反応が生じるおそれがない。また本発明の口腔内崩壊錠は、従前の糖アルコールを主体とした口腔内崩壊錠に比べて、低打圧で打錠しても適度な硬度が得られることから、打錠時の圧力で被膜が破壊されやすい被覆薬物を薬効成分として用いる場合にも有効である。
薬効成分の配合割合としては、硬度及び崩壊時間の観点から錠剤全重量に対して通常0.01〜60重量%であり、好ましくは0.01〜50重量%であり、さらに好ましくは0.01〜25重量%であり、特に好ましくは0.01〜10重量%である。
添加剤
本発明の錠剤は、さらに必要であれば錠剤の製造に一般に用いられる種々の添加剤を含んでいてもよい。本発明の口腔内崩壊錠の崩壊性や成形性を損なわない範囲で該添加剤を使用することができるが、添加剤の配合割合としては、通常0.01〜40重量%であり、好ましくは0.01〜20重量%であり、さらに好ましくは0.01〜10重量%である。
添加剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、甘味剤、矯味剤・嬌臭剤、香料、流動化剤、帯電防止剤、着色剤、コーティング剤が挙げられる。また天然デンプン類に加えて、本発明の効果に影響しない崩壊剤を添加剤として加えてもよい。上記添加剤は、単独で、又は2種以上を任意の割合で混合して使用してもよい。
上記賦形剤としては、例えば、キシリトール、ソルビトール、トレハロース、ブドウ糖、白糖、乳糖水和物、硫酸カルシウム、炭酸カルシウムが挙げられる。
上記結合剤としては、例えば、アラビアゴム、アラビアゴム末、部分アルファー化デンプン、ゼラチン、カンテン、デキストリン、プルラン、ポビドン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルメロース、カルメロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。
上記甘味剤としては、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、果糖、還元麦芽糖水アメ、グリチルリチン酸二カリウム、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビア、ソーマチンが挙げられる。
上記矯味剤・嬌臭剤としては、例えば、アスパラギン酸ナトリウム、アラニン、アルギニン、グリシン、グルタミン、グルタミン酸アルギニン、グルタミン酸塩酸塩、グルタミン酸ナトリウムなどのアミノ酸及びその塩、アジピン酸、アスコルビン酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸などの有機酸、カンゾウ、クエン酸トリエチル、タウリン、タンニン酸が挙げられる。
上記香料としては、例えば、オレンジエッセンス、オレンジ油、カラメル、カンフル、ケイヒ油、スペアミント油、ストロベリーエッセンス、チョコレートエッセンス、チェリーフレーバー、トウヒ油、パインオイル、ハッカ油、バニラフレーバー、ビターエッセンス、フルーツフレーバー、ペパーミントエッセンス、ミックスフレーバー、ミントフレーバー、メントール、レモンパウダー、レモン油、ローズ油が挙げられる。
上記流動化剤としては、例えば、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、重質無水ケイ酸、酸化チタンが挙げられる。
上記帯電防止剤としては、例えば、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、タルクが挙げられる。
上記着色剤としては、例えば、食用赤色3号、食用黄色5号、食用青色1号などの食用色素、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、褐色酸化鉄、黒酸化鉄、銅クロロフィル、銅クロロフィルナトリウム、リボフラビン、抹茶末が挙げられる。
上記コーティング剤としては、例えば、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アラビアゴム末、エチルセルロース、オパドライ、カルナウバロウ、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルエチルセルロース、カルメロースナトリウム、乾燥メタクリル酸コポリマー、ステアリルアルコール、セタノール、セラック、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プルラン、ポビドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ポリビニルアルコールコポリマー、ジメチルアミノエチルメタアクリレート・メチルメタアクリレートコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、フマル酸・ステアリン酸・ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート・ヒドロキシプロピルメチルセルロース混合物、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、メタクリル酸コポリマー、2−メチル−5−ビニルピリジンメチルアクリレート・メタクリル酸コポリマーが挙げられる。
口腔内崩壊錠
本発明において口腔内崩壊錠とは、水なしで服用しても口腔内で速やかに崩壊する錠剤を意味し、通常口腔内の唾液のみで30秒以内(好ましくは28秒以内、さらに好ましくは25秒以内)に崩壊する錠剤を意味する。また、口腔内崩壊錠としては、PTP取出し時において、割れ・欠けを生じない程度の錠剤硬度を有するものがよい。本発明の口腔内崩壊錠は、具体的には、絶対硬度が1.0N/mm2以上、好ましくは1.5N/mm2以上、さらに好ましくは2.0N/mm2以上である。なお絶対硬度とは、錠剤硬度計で計測した押し割り硬度と錠剤断面積(=直径×厚み)により、以下のとおり計算される値である。
絶対硬度[N/mm2]=硬度[N]÷(錠剤径[mm]×錠剤厚み[mm])
さらに本発明の口腔内崩壊錠は、加湿条件下で保存しても、硬度低下が小さい口腔内崩壊錠である。例えば、40℃相対湿度75%の条件下で3日間保存しても、絶対硬度が1.0N/mm2以上、好ましくは1.5N/mm2以上、さらに好ましくは2.0N/mm2以上である。
なお本明細書において、加湿前の硬度が維持される度合いを表す指標(加湿後の硬度低下抑制の度合いを表す指標)として下記式により示される硬度維持率を使用した。
硬度維持率(%)=加湿後の絶対硬度÷加湿前の絶対硬度×100
本発明において硬度維持率は、例えば、加湿条件が、40℃相対湿度75%の条件下で3日間保存である場合、通常50%以上、好ましくは53%以上、さらに好ましくは55%以上、最も好ましくは60%以上である。
本発明において、「実質的に(a)結晶セルロース、(b)リン酸水素カルシウム類、(c)天然デンプン類、(d)滑沢剤及び(e)薬効成分からなる口腔内崩壊錠」とは、(a)結晶セルロース、(b)リン酸水素カルシウム類、(c)天然デンプン類、(d)滑沢剤及び(e)薬効成分の他に本発明の効果に影響しない範囲で上記添加剤を含んでいても良い口腔内崩壊錠を意味する。具体的には、該添加剤の配合割合は通常0.01〜40重量%であり、好ましくは0.01〜20重量%であり、さらに好ましくは0.01〜10重量%である。ただし、該添加剤が天然デンプン類以外の崩壊剤を含む場合は、天然デンプン類以外の崩壊剤の配合割合は0.01〜5重量%である。
本発明において、「粉末状又は粒状の、結晶セルロース(a)、リン酸水素カルシウム類(b)及び天然デンプン類(c)」とは、結晶セルロース(a)、リン酸水素カルシウム類(b)、天然デンプン類(c)の各成分が、他の成分と造粒することなく単一の成分からなる粉末状又は粒状である結晶セルロース(a)、リン酸水素カルシウム類(b)及び天然デンプン類(c)を意味する。
また調剤薬局などの医療現場においては、室内環境の変化が想定される。特に、湿度に関しては、空調が作動していない時間帯に、天候の影響により加湿環境下に薬剤が曝露される可能性がある。
このような状況下の医療現場においてはPTP包装や薬剤パッケージから取り出された後も、錠剤物性が維持される口腔内崩壊錠の創出が望まれるが、そのためには、「加湿後硬度」が一定の基準を満たすだけではなく、加湿による変化が少ない、すなわち「硬度維持率」が高いことが望ましい。「硬度維持率」が低いということは、加湿時に錠剤内部環境の変化が大きいことを意味し、錠剤の割れ・欠けが生じる原因になりやすい。
また医療現場の業務時間外に加湿環境下に曝露されたとしても、業務時間内に湿度が低く制御された状態により、硬度が回復すれば、錠剤分包機による一包化作業中に割れ・欠けが生じにくく、実質上、問題とならない。
本発明において、例えば、加湿条件が、加湿と乾燥を繰り返すサイクル保存(25℃相対湿度75%の条件下で3日間、25℃相対湿度11%の条件下で1日間、25℃相対湿度75%の条件下で3日間、25℃相対湿度11%の条件下で1日間)である場合の硬度維持率は、好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは75%以上であり、最も好ましくは80%以上である。
本発明の特徴は、加湿前のみならず加湿後であっても高い錠剤硬度と適度な崩壊時間を有し、かつ加湿前と加湿後の錠剤硬度の差が小さいこと、すなわち硬度維持率が高いことにある。具体的に本発明の口腔内崩壊錠は、加湿前及び加湿後の絶対硬度が1.0N/mm2以上、加湿前及び加湿後の口腔内崩壊時間が30秒以内であり、硬度維持率が50%以上の基準を満たすものである。より好ましくは、加湿前及び加湿後の絶対硬度が1.5N/mm2以上、加湿前及び加湿後の口腔内崩壊時間が30秒以内であり、硬度維持率が55%以上の基準を満たすものである。さらに好ましくは加湿前及び加湿後の絶対硬度が2.0N/mm2以上、加湿前及び加湿後の口腔内崩壊時間が28秒以内であり、硬度維持率が60%以上の基準を満たすものである。最も好ましくは加湿前及び加湿後の絶対硬度が2.0N/mm2以上、加湿前及び加湿後の口腔内崩壊時間が25秒以内であり、硬度維持率が60%以上の基準を満たすものである。上記加湿条件としては、例えば、40℃相対湿度75%の条件下で3日間保存が挙げられる。
本発明の口腔内崩壊錠を製造する方法については特に限定することなく任意のものであってよい。例えば、結晶セルロース、リン酸水素カルシウム類、天然デンプン類、任意の薬効成分、滑沢剤、及び必要に応じて添加剤を混合し、その後、直接圧縮成形すること(即ち、直接打錠)で錠剤を得ることができる。具体的には、粉末状又は粒状の、結晶セルロース(a)、リン酸水素カルシウム類(b)及び天然デンプン類(c)、並びに薬効成分(e)を混合して得られる組成物に、滑沢剤(d)を添加して圧縮成形する方法が挙げられる。薬効成分(e)は苦味マスキング、徐放化などの薬物の放出制御、薬物の安定化、及び製造性の改善(例えば、流動性の改善、混合性の改善、打錠障害の防止)などを目的として自体公知の方法によって被覆して用いても良い。使用する各成分が凝集性であったり、結晶が大きなものであるなど、薬効成分の含量均一性が阻害される場合は、各錠剤成分を混合前又は混合後に粉砕などの手法を利用して、含量均一性を保証できる粒子径に整えても良い。また、必要に応じて、混合物を結合剤にて造粒した後、圧縮成形しても良い。
一般に、錠剤を作製する際、薬物の安定性を考慮し、錠剤の水分値が低くなるように製造することが多い。本発明では、打錠直後の錠剤の水分値を高くすると、錠剤の硬度維持率が高く維持できる傾向がみられた。打錠後の錠剤の水分値は、特に限定されないが水分活性値として0.3〜0.9awが好ましく、より好ましくは0.6〜0.8awである。ここで言う水分活性値とは、組成物を入れた密閉容器の水蒸気圧(P)とその温度における純水の蒸気圧(P0)の比から、次式のように表される。
水分活性値=P÷P0
水分活性値は、例えばポータブル水分活性計(デカゴン製、Pawkit)などの装置で測定できる。打錠直後の錠剤の水分値を調整するために、圧縮成形する工程以前に組成物を加湿する工程を加えてもよい。
錠剤の成形方法については、特に限定されないが、ロータリー式打錠機、単発打錠機又は油圧プレス機などを用いた圧縮成形法が用いられる。圧縮成形圧力は、錠剤に十分な強度を与える程度であれば特に限定されない。
本発明で得られる錠剤の形状は、特に限定されず、円形錠、円形R錠、円形すみ角錠や各種異形錠などいずれの形状でもよく、また分割錠としても良い。
本発明の口腔内崩壊錠は、原料を混合した後に直接打錠したり、造粒などの簡便な方法により製造することが可能であり、噴霧乾燥などの特殊な工程を必須としないことから、製造の操作面において簡便であり、製造コストの面において経済的である。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本実施例において、無水リン酸水素カルシウム、トウモロコシデンプン、ステアリン酸マグネシウム、カルメロースは、特に明示しない限り以下のものを使用した。
無水リン酸水素カルシウム(GS:協和化学社製)、ステアリン酸マグネシウム(軽質、植物性:太平化学産業社製)、トウモロコシデンプン(コーンスターチ(XX16)W:日本食品化工社製)、カルメロース(NS-300:五徳薬品社製)。
結晶セルロースは、以下のような種々の標準かさ密度のものを使用し、以下の実施例においてはその商品名を記載した。セオラスPH-101(0.29g/cm)、セオラスPH-102(0.30g/cm)、セオラスPH-301(0.41g/cm)、セオラスPH-302(0.43g/cm)、セオラスKG-802(0.21g/cm)、セオラスPH-F20J(0.23g/cm)(いずれも旭化成ケミカルズ社製である。括弧内の数字は標準かさ密度を表す。)。
また錠剤を打錠する際に用いる油圧プレス機は、簡易成形機TB-20H(エヌピーエーシステム社製)を使用した。
実施例及び比較例で得られた錠剤の錠剤硬度及び口腔内崩壊時間は、下記の試験法にて測定した。
錠剤硬度:錠剤硬度計(TH-203MP:富山産業製)を用いて、直径方向に押し潰すために必要な力を測定した。錠剤硬度計で計測した押し割り硬度の値を用いて、絶対硬度を以下の式により計算した。
絶対硬度[N/mm2]=硬度[N]÷(錠剤径[mm]×錠剤厚み[mm])
口腔内崩壊時間:口腔内に錠剤を含み、錠剤が完全に崩壊するまでの時間を測定した。試験後は内容物を吐き出し、清浄な水で口腔内を洗浄した。
比較例1
<崩壊剤を含まない処方>
表1に示す割合で、結晶セルロース(セオラスPH-101)、無水リン酸水素カルシウム及びステアリン酸マグネシウムを混合した。得られた混合物を油圧プレス機を用いて錠剤を作製した(打錠条件:打錠圧6kN、120mg/錠、直径7mm、円形すみ角錠)。
Figure 0005409382
得られた錠剤を用いて、加湿前及び40℃相対湿度75%の条件下で3日間加湿後に、錠剤硬度及び口腔内崩壊時間を測定し、得られた結果を表2に示す。加湿前の錠剤は硬度1.0N/mm2以上、崩壊時間30秒以内と良好であったのに対し、加湿後の錠剤は口腔内崩壊時間が100秒を超え、良好な崩壊性を維持できなかった。
Figure 0005409382
実施例1及び比較例2
<崩壊剤の種類(1)>
表3に示す割合で、結晶セルロース(セオラスPH-101)、無水リン酸水素カルシウム及び各崩壊剤を混合し、混合末にステアリン酸マグネシウムを加えさらに混合した。得られた混合物を油圧プレス機を用いて錠剤を作製した(打錠条件:打錠圧6kN、120mg/錠、直径7mm、円形すみ角錠)。
崩壊剤としては、トウモロコシデンプン、クロスポビドン(コリドンCL:BASFジャパン社製)、カルメロース、カルボキシメチルスターチナトリウム(EXPLOTAB:木村産業社製)、クロスカルメロースナトリウム(アクジゾル:五協産業社製)、カルメロースカルシウム(ECG-505:五徳薬品社製)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(LH-11:信越化学工業社製)を使用した。
Figure 0005409382
得られた錠剤を用いて、加湿前及び40℃相対湿度75%の条件下で3日間加湿後に、錠剤硬度及び口腔内崩壊時間を測定し、得られた結果を表4に示す。
崩壊剤としてトウモロコシデンプンを添加した場合、加湿前及び加湿後において、絶対硬度が1.0N/mm2以上、かつ、口腔内崩壊時間が30秒以内を維持し、硬度維持率が50%以上と高く維持することができた(実施例1)。
一方、他の崩壊剤を用いた場合、加湿前及び加湿後の絶対硬度が1.0N/mm2以上、加湿前及び加湿後の口腔内崩壊時間が30秒以内、硬度維持率が50%以上の全ての基準を満たすものはなかった。
Figure 0005409382
実施例2及び比較例3
<崩壊剤の種類(2)>
表5に示す割合で、結晶セルロース(セオラスPH-101)、無水リン酸水素カルシウム及び各崩壊剤を混合し、混合末にステアリン酸マグネシウムを加えさらに混合した。得られた混合物を油圧プレス機を用いて錠剤を作製した(打錠条件:打錠圧6kN、120mg/錠、直径7mm、円形すみ角錠)。
崩壊剤としては、トウモロコシデンプン又はカルメロースを使用した。比較のため崩壊剤を使用しない場合についても同様にして錠剤を作製した。
Figure 0005409382
得られた錠剤を用いて、加湿前及び40℃相対湿度75%の条件下で所定の期間加湿後に、錠剤硬度及び口腔内崩壊時間を測定し、得られた結果を表6に示す。
トウモロコシデンプンを添加した場合、14日間加湿後にも、絶対硬度が1.0N/mm2以上、口腔内崩壊時間が30秒以内を維持し、硬度維持率が50%以上と良好であった。
一方、カルメロースを添加した場合、3日間加湿後にはすでに硬度維持率が50%を下回り、加湿による錠剤物性の変化が大きかった。加湿保存を14日まで延長すると、硬度維持率は40%に低下した。その際、錠剤表面に僅かではあるが凹凸が認められた。また、崩壊剤を添加しない場合、加湿期間の延長に伴い、口腔内崩壊時間が遅延し、14日間加湿後には、口腔内崩壊時間が115秒と著しく遅かった。
崩壊剤が天然デンプン類である本発明の口腔内崩壊錠は、崩壊剤がカルメロースである口腔内崩壊錠に比べ、加湿条件下で保存後の硬度が維持される点において優れている。
Figure 0005409382
調剤薬局などにおいては、業務時間内外の湿度変化が想定される。そこで、実施例2及び比較例3−1で作製した錠剤を、25℃においてサイクル保存(相対湿度75%に3日間、その後相対湿度11%に1日間のサイクルを2回繰り返し)した。保存前及び保存後の錠剤硬度及び口腔内崩壊時間を測定し、得られた結果を表7に示す。
トウモロコシデンプンを添加した場合、硬度維持率は95%であり、ほとんど硬度が低下していなかった。一方、カルメロースを添加した場合は、硬度が30%以上低下していた。
Figure 0005409382
以上の結果から、トウモロコシデンプンを添加した場合は、医療現場において加湿環境に曝露されても、その後低湿度環境になれば、加湿前に近い硬度に戻ることがわかった。
実施例3及び比較例4
<天然デンプン類の種類>
表8に示す割合で、結晶セルロース(セオラスPH-101)、無水リン酸水素カルシウム及び各デンプン類を混合し、混合末にステアリン酸マグネシウムを加えさらに混合した。得られた混合物を油圧プレス機を用いて錠剤を作製した(打錠条件:打錠圧 バレイショデンプン(4kN)、バレイショデンプン以外(6kN)、120mg/錠、直径7mm、円形すみ角錠)。
デンプン類には、トウモロコシデンプン、コムギデンプン(松谷菊:松谷化学工業社製)、コメデンプン(うるち米でん粉:島田化学工業社製)、バレイショデンプン(松谷ひまわり:松谷化学工業社製)、アルファー化デンプン(アミコールC:日澱化学社製)、部分アルファー化デンプン(スターチ1500:日本カラコン社製)を使用した。
Figure 0005409382
得られた錠剤を用いて、加湿前及び40℃相対湿度75%の条件下で3日間加湿後に、錠剤硬度及び口腔内崩壊時間を測定し、得られた結果を表9に示す。崩壊剤としてコムギデンプン、コメデンプン、バレイショデンプンを添加した場合、加湿前及び加湿後の絶対硬度が1.0N/mm2以上、口腔内崩壊時間が30秒以内、硬度維持率が50%以上の基準を満たしていることから、トウモロコシデンプンと同様の効果を発揮した。
一方、アミコールCやスターチ1500の加工デンプンを添加した場合、加湿後の崩壊遅延を抑制できず、口腔内崩壊時間が30秒を超えた。
Figure 0005409382
実施例4
<結晶セルロースの種類>
表10に示す割合で、各種結晶セルロース、無水リン酸水素カルシウム及びトウモロコシデンプンを混合し、混合末にステアリン酸マグネシウムを加えさらに混合した。得られた混合物を油圧プレス機を用いて錠剤を作製した(打錠条件:打錠圧 セオラスKG-802及びPH-F20J (4kN)、セオラスKG-802及びPH-F20J 以外(6kN)、120mg/錠、直径7mm、円形すみ角錠)。
Figure 0005409382
得られた錠剤を用いて、加湿前及び40℃相対湿度75%の条件下で3日間加湿後に、錠剤硬度及び口腔内崩壊時間を測定し、得られた結果を表11に示す。いずれの結晶セルロースを用いた場合も、加湿前及び加湿後の絶対硬度が1.0N/mm2以上、口腔内崩壊時間が30秒以内、及び硬度維持率が50%以上の条件を満たした。
加湿後の口腔内崩壊時間の観点から、セオラスPH-101(0.29g/cm)、セオラスPH-102(0.30g/cm)、セオラスPH-301(0.41g/cm)、セオラスPH-302(0.43g/cm)が好ましく、これらの結晶セルロースのかさ密度は0.29〜0.43 g/cmであった。
Figure 0005409382
実施例5
<滑沢剤の種類>
表12に示す割合で、結晶セルロース(セオラスPH-101)、無水リン酸水素カルシウム及びトウモロコシデンプンを混合し、混合末に滑沢剤を加えさらに混合した。得られた混合物を油圧プレス機を用いて、打錠圧6kNにて、1錠あたり120mg、直径7mm、円形すみ角錠を作製した。滑沢剤には、ステアリン酸(ステアリン酸A:日本精化社製)、ステアリン酸カルシウム(太平化学産業社製)、フマル酸ステアリルナトリウム(プルーブ:木村産業社製)、タルク(林化成社製)、軽質無水ケイ酸(アエロジル200:日本アエロジル社製)を使用した。
Figure 0005409382
得られた錠剤を用いて、加湿前及び40℃相対湿度75%の条件下で3日間加湿後に、錠剤硬度及び口腔内崩壊時間を測定し、得られた結果を表13に示す。いずれの滑沢剤を用いた場合も、加湿前及び加湿後の絶対硬度、口腔内崩壊時間、及び硬度維持率のすべての基準を満たしており、滑沢剤の種類によらず、同様の効果を発揮した。
Figure 0005409382
実施例6及び比較例5
<無水リン酸水素カルシウムの配合割合>
表14に示す割合で、結晶セルロース(セオラスPH-101)、無水リン酸水素カルシウム及びトウモロコシデンプンを混合し、混合末にステアリン酸マグネシウムを加えさらに混合した。得られた混合物を油圧プレス機を用いて、打錠圧6kNにて、1錠あたり120mg、直径7mm、円形すみ角錠を作製した。
Figure 0005409382
得られた錠剤を用いて、加湿前及び40℃相対湿度75%の条件下で3日間加湿後に、錠剤硬度及び口腔内崩壊時間を測定し、得られた結果を表15に示す。
無水リン酸水素カルシウムの配合割合が30〜60重量%のとき、加湿前及び加湿後の絶対硬度が1.0N/mm2以上、口腔内崩壊時間が30秒以内、硬度維持率が50%以上の基準を満たしており、良好な錠剤が得られた。無水リン酸水素カルシウムの配合割合が20重量%のとき、及び70重量%以上のとき、加湿後の絶対硬度及び硬度維持率は基準を満たしていたが、加湿後の口腔内崩壊時間が30秒を超え基準を満たさなかった。
Figure 0005409382
実施例7及び比較例6
<トウモロコシデンプンの配合割合>
表16に示す割合で、薬効成分としてエテンザミド、結晶セルロース(セオラスPH-101)、無水リン酸水素カルシウム及びトウモロコシデンプンを混合し、混合末にステアリン酸マグネシウムを加えさらに混合した。得られた混合物を油圧プレス機を用いて、1錠あたり120mg、直径7mm、円形すみ角錠を作製した。打錠圧は、トウモロコシデンプンの配合割合が1〜3重量%のとき4kN、トウモロコシデンプンの配合割合が5〜20重量%のとき6kN、トウモロコシデンプンの配合割合が25〜40重量%のとき10kNとした。
Figure 0005409382
得られた錠剤を用いて、加湿前及び40℃相対湿度75%の条件下で3日間加湿後に、錠剤硬度及び口腔内崩壊時間を測定し、得られた結果を表17に示す。
トウモロコシデンプンの配合割合が錠剤中、3〜40重量%の範囲において、加湿前及び加湿後の絶対硬度が1.0N/mm2以上、口腔内崩壊時間が30秒以内、硬度維持率が50%以上の基準を満たしており、良好な錠剤が得られた。トウモロコシデンプンの配合割合が2重量%以下のとき、加湿後の口腔内崩壊時間が30秒を超え、基準を満たさなかった。
Figure 0005409382
実施例8及び比較例7
<滑沢剤の量>
表18に示す割合で、結晶セルロース(セオラスPH-101)、無水リン酸水素カルシウム及びトウモロコシデンプンを混合し、混合末にステアリン酸マグネシウムを加えさらに混合した。得られた混合物を油圧プレス機を用いて、打錠圧6kNにて、1錠あたり120mg〜122mg、直径7mm、円形すみ角錠を作製した。
Figure 0005409382
得られた錠剤を用いて、加湿前及び40℃相対湿度75%の条件下で3日間加湿後に、錠剤硬度及び口腔内崩壊時間を測定し、得られた結果を表19に示す。
ステアリン酸マグネシウムの配合割合の増加に伴い、特に加湿後の崩壊時間が遅延した。ステアリン酸マグネシウムの配合割合が0.01〜1.8重量%の範囲において、加湿前及び加湿後の絶対硬度が1.0N/mm2以上、口腔内崩壊時間が30秒以内、硬度維持率が50%以上の基準を満たしており、良好な錠剤が得られた。ステアリン酸マグネシウムの配合割合が2重量%以上のとき、加湿後の硬度低下は小さかったが、加湿後の崩壊時間が遅延し、口腔内崩壊時間が30秒を超えた。
Figure 0005409382
実施例9及び比較例8
<薬効成分の配合割合(1)>
表20に示す割合で、エテンザミド、結晶セルロース(セオラスPH-101)、無水リン酸水素カルシウム及びトウモロコシデンプンを混合し、混合末にステアリン酸マグネシウムを加えさらに混合した。得られた混合物を油圧プレス機を用いて、1錠あたり120mg、直径7mm、円形すみ角錠を作製した。打錠圧は、エテンザミドの配合割合が0.01〜50重量%のとき6kN、エテンザミドの配合割合が60重量%以上のとき4kNとした。
薬効成分を除く成分の処方比率を一定とし、薬効成分を0.01〜70重量%まで変動させた。
Figure 0005409382
得られた錠剤を用いて、加湿前及び40℃相対湿度75%の条件下で3日間加湿後に、錠剤硬度及び口腔内崩壊時間を測定し、得られた結果を表21に示す。
エテンザミドの配合割合が0.01〜60重量%の範囲において、加湿前及び加湿後の絶対硬度が1.0N/mm2以上、口腔内崩壊時間が30秒以内、硬度維持率が50%以上の基準を満たしており、良好な錠剤が得られた。エテンザミドの配合割合が70重量%以上のとき、加湿後の口腔内崩壊時間が30秒を超え、基準を満たさなかった。
以上の結果から、薬効成分のエテンザミドを錠剤全重量に対して60重量%加えても、本発明の効果を発揮することが確認できた。
Figure 0005409382
実施例10及び比較例9
<薬効成分の配合割合(2)>
表22に示す割合で、エテンザミド、結晶セルロース(セオラスPH-101)、無水リン酸水素カルシウム及びトウモロコシデンプンを混合し、混合末にステアリン酸マグネシウムを加えさらに混合した。得られた混合物を油圧プレス機を用いて、打錠圧6kNにて、1錠あたり120mg、直径7mm、円形すみ角錠を作製した。
無水リン酸水素カルシウムの配合割合は、薬効成分を除いた錠剤成分の合計量の40%とした。
Figure 0005409382
得られた錠剤を用いて、加湿前及び40℃相対湿度75%の条件下で3日間加湿後に、錠剤硬度及び口腔内崩壊時間を測定し、得られた結果を表23に示す。
エテンザミドの配合割合が0〜50重量%の範囲において、加湿前及び加湿後の絶対硬度が1.0N/mm2以上、口腔内崩壊時間が30秒以内、硬度維持率が50%以上の基準を満たしており、良好な錠剤が得られた。エテンザミドの配合割合が70重量%以上のとき、加湿後の口腔内崩壊時間が30秒を超え、基準を満たさなかった。
以上の結果から、薬効成分のエテンザミドを錠剤全重量の50重量%加えても、本発明の効果を発揮することが確認できた。
また、実施例10−1〜10−5の加湿前及び加湿後の錠剤において、ザラツキやぱさつきは感じられず、良好な服用性であった。さらに、加湿による錠剤表面の凹凸などの性状変化は認められなかった。
Figure 0005409382
実施例11
<薬効成分の種類>
表24に示す割合で、薬効成分、結晶セルロース、無水リン酸水素カルシウム及びトウモロコシデンプンを混合し、混合末にステアリン酸マグネシウムを加えさらに混合した。得られた混合物を油圧プレス機を用いて、1錠あたり120mg、直径7mm、円形すみ角錠を作製した。打錠圧は、アセトアミノフェンは15kN、アセトアミノフェン以外は6kNとした。薬効成分には、クエン酸モサプリド・2水和物(大日本住友製薬社製)、アスコルビン酸(ナカライテスク社製)、インドメタシン粉砕品(大日本住友製薬社製)、アセトアミノフェン粉砕品(山本工業社製:平均粒子径17.7μm)を使用した。
Figure 0005409382
得られた錠剤を用いて、加湿前及び40℃相対湿度75%の条件下で3日間加湿後に、錠剤硬度及び口腔内崩壊時間を測定し、得られた結果を表25に示す。
薬効成分として、クエン酸モサプリド・2水和物、アスコルビン酸、インドメタシン、アセトアミノフェンを含有する場合も、加湿前及び加湿後の絶対硬度が1.0N/mm2以上、口腔内崩壊時間が30秒以内、硬度維持率が50%以上の基準を満たしており、良好な錠剤が得られた。
以上の結果から、薬効成分の種類によらず、本発明における口腔内崩壊錠の効果が発揮されることが確認できた。
Figure 0005409382
実施例12
薬効成分含有粒子の製造
1)アセトアミノフェン含有粒子
アセトアミノフェンに被膜量10%となるように、コーティングを施し、アセトアミノフェン含有粒子とした。被膜成分は、アクアコート(旭化成ケミカルズ社製)、トリアセチン、及びマンニトールが100:25:50重量%のものを使用した。
2)クエン酸モサプリド含有粒子
精製水567gにポリソルベート80(日局ポリソルベート80(HX):日本油脂株式会社製)31.5gを加え、十分に混和させた後、タルク(林化成株式会社製)73.5g、クロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol:FMC BioPolymer社製)52.5gを加え、十分に攪拌した(第1液)。これとは別に、水酸化ナトリウムを精製水67.65gに溶解させた溶液を、メタクリル酸コポリマーLD(ポリキッドPA-30S:三洋化成工業株式会社製)705gに徐々に加え、攪拌した(第2液)。第1液に第2液を加え懸濁させ、177μm開口径のメッシュ網で篩過し、被覆コーティング分散液とした。
クエン酸モサプリド・2水和物346.5gと軽質無水ケイ酸(アエロジール200:日本アエロジル株式会社製)3.5gを500μm開口径のメッシュ網で篩過してポリエチレン袋内で十分に混合し、薬物含有組成物を調製後、強制循環装置付ワースター型流動層造粒機(改良ワースター型流動層造粒機、MP-01 SPC、株式会社パウレック製)に入れ、上記の被覆コーティング分散液を噴霧した。噴霧時は給気温度を約80〜90℃、排気温度を約26〜30℃に保ち、ボトムスプレーで噴霧液流量10〜12g/分、スプレーエア流量80L/分、スプレーエアー圧力0.2〜0.3MPa、サイドエアー圧力0.2〜0.25MPa、給気風量約0.30〜0.55m/分で製造を行った。被覆コーティング分散液の噴霧量が約1306gの時点でコーティングを終了し、排気温度が42℃になるまで乾燥した。得られた粒子を32メッシュ(目開き500μm)の篩で篩過し、平均粒子径が約98μmの薬物含有粒子を得た。
表26に示す割合で、上記の方法で製造した薬効成分含有粒子、結晶セルロース(セオラスPH-101)、無水リン酸水素カルシウム及びトウモロコシデンプンを混合し、混合末にステアリン酸マグネシウムを加えさらに混合した。得られた混合物を油圧プレス機を用いて、打錠圧6kNにて、1錠あたり120mg、直径7mm、円形すみ角錠を作製した。
Figure 0005409382
得られた錠剤を用いて、加湿前及び40℃相対湿度75%の条件下で3日間加湿後に、錠剤硬度及び口腔内崩壊時間を測定し、得られた結果を表27に示す。
薬効成分が、クエン酸モサプリド含有粒子、及びアセトアミノフェン含有粒子の場合も、加湿前及び加湿後の絶対硬度が1.0N/mm2以上、口腔内崩壊時間が30秒以内、硬度維持率が50%以上の基準を満たしており、良好な錠剤が得られた。
以上の結果から、薬効成分を含有する粒子を用いても、本発明における口腔内崩壊錠用組成物の効果が発揮されることが確認できた。
Figure 0005409382
本発明により、加湿前のみならず加湿後であっても高い錠剤硬度と適度な崩壊時間を合わせもつ口腔内崩壊錠が提供される。
この出願は、日本で出願された特願2007−302284を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含されるものである。

Claims (16)

  1. (a)結晶セルロース、(b)リン酸水素カルシウム類、(c)天然デンプン類及び(d)滑沢剤を含有する口腔内崩壊錠であって、該崩壊錠100重量%に対する配合割合が(a) 9〜60重量%、(b) 30〜60重量%、(c) 3〜40重量%及び(d) 0.01〜1.8重量%でり、前記(b)は他の成分と造粒することなく単一の成分からなる粉末状又は粒状のものを用いる、口腔内崩壊錠。
  2. 40℃相対湿度75%の条件下で3日間保存後の絶対硬度が1.0N/mm 2 以上であり、40℃相対湿度75%の条件下で3日間保存後の口腔内崩壊時間が30秒以内である請求項1に記載の口腔内崩壊錠。
  3. 結晶セルロース(a)のかさ密度が0.1〜0.5g/cm3である請求項1又は2に記載の口腔内崩壊錠。
  4. 結晶セルロース(a)の配合割合が9〜53重量%であり、天然デンプン類(c)の配合割合が3〜30重量%である請求項1〜3のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠。
  5. さらに、薬効成分(e)を0.01〜50重量%の配合割合で含有する請求項1〜のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠。
  6. さらに、賦形剤、結合剤、甘味剤、矯味剤・嬌臭剤、香料、流動化剤、帯電防止剤、着色剤及びコーティング剤からなる群から選択される1以上の添加剤を含有する請求項1〜のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠。
  7. 実質的に結晶セルロース(a)、リン酸水素カルシウム類(b)、天然デンプン類(c)、滑沢剤(d)及び薬効成分(e)からなる請求項5に記載の口腔内崩壊錠。
  8. 粉末状又は粒状の、結晶セルロース(a)、リン酸水素カルシウム類(b)及び天然デンプン類(c)、並びに薬効成分(e)を混合して得られる組成物に、滑沢剤(d)を添加して圧縮成形することにより得られる請求項に記載の口腔内崩壊錠。
  9. 直接打錠で圧縮成形することにより製造される請求項1〜のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠。
  10. 天然デンプン類(c)の配合割合が9〜30重量%である請求項1〜のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠。
  11. 滑沢剤(d)の配合割合が0.01〜1.0重量%である請求項1〜10のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠。
  12. 上記添加剤の配合割合が0.01〜40重量%である請求項に記載の口腔内崩壊錠。
  13. 天然デンプン類(c)がトウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン及びバレイショデンプンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜12のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠。
  14. 天然デンプン類(c)がトウモロコシデンプンである請求項13に記載の口腔内崩壊錠。
  15. 滑沢剤(d)がステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、軽質無水ケイ酸及びステアリン酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜14のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠。
  16. 滑沢剤(d)がステアリン酸マグネシウムである請求項15に記載の口腔内崩壊錠。
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