JP5342976B2 - 粒状物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、CNTは凝集し易いため、単に樹脂等の材料に投入して混練したのみでは分散配合することは至難のことである。
一方、下記非特許文献1には、図9に示すCNTと金属とから成り、CNTの端部がウニ状に突出した粒状物を、CNTを特殊な分散剤により分散した金属イオンを含有するめっき液に電流を流すことによって得ることができ、かかる粒状物を熱圧着して部品材料を形成することが提案されている。
しかし、図9に示す粒状物は、CNTの端部が金属層に覆われることなく露出状態でウニ状に突出しているものであり、粒状物自体の分散性が劣る。更に、ウニ状に突出したCNTが露出状態であるため、樹脂との濡れ性が劣るものと考えられる。
このため、図9に示す粒状物を樹脂に均一分散しようとすると、粒状物の分散性が劣るものと考えられる。
そこで、本発明の課題は、粒状物自体の分散性が改善されたカーボンナノチューブから成る粒状物及びその製造方法を提案することにある。
しかしながら、CNTの全周面を薄層のめっき金属層で覆うための時間は長時間かかり、形成された薄層のめっき金属層は均一層であって、その表面は平滑面であるため、樹脂に配合した薄層CNTは樹脂から剥離し易い。
次に、本発明者は、電解めっきによってCNTにめっき金属を形成せんと試みたところ、CNTの端部が露出状態でウニ状に突出することなく粒状物を形成できること、電解めっき条件を変更することによって粒状物の形状を変更できることを見出し、本発明に到達した。
このように、カーボンナノチューブの全表面を電解めっき金属層によって被覆することによって、粒状物と樹脂との親和性を向上でき、樹脂に対する耐剥離性を向上できる。このカーボンナノチューブを覆う電解めっき金属層の表面を凹凸状に形成すること、或いはカーボンナノチューブを端部の少なくとも一方を被覆する電解めっき金属層を、他の部分を被覆する電解めっき金属層よりも厚く形成することが好ましい。
かかる電解めっき金属層を、磁性を有する金属とすることによって、粒状物を磁石によって容易に回収できる。
尚、複数本のカーボンナノチューブを、電解めっき金属層によって相互に固着することによって、粒状物の粒径を大きくできる。
かかる本発明において、分散剤として、アルキンジオール分子中にオキシエチレン側鎖を有するアルキンジオール化合物又はカチオン活性剤を好適に用いることができる。
更に、電解めっきを電解めっき液中に浸漬した陽極と陰極とに電流を流して施し、その際に、前記陰極の表面にカーボンナノチューブを付着して、前記カーボンナノチューブの表面に電解めっき金属を析出させることによって、カーボンナノチューブの表面に電解めっきによる金属層の被覆を形成できる。
また、複数本のカーボンナノチューブ同士を、電解めっきによる金属層によって相互に固着して粒状物とすることによって、得られた粒状物の粒径を大きくできる。
かかるカーボンナノチューブ(CNT)から成る本発明に係る粒状物の一例を図1に示す。図1は、複数本のCNTから成る塊状の粒状物の電子顕微鏡写真である。図1において、線状物がCNTであって、CNTの所々に形成された白い球状物がめっき金属層としてのニッケル層である。
図1から明らかな様に、図1に示す粒状物は、金属層で覆われていないCNTの端部が粒状物の外方にウニ状に突出することなく形成されており、CNTの各表面に間欠的に形成された球状のニッケル層によってCNT同士が相互に固着されていると共に、CNT間には隙間が形成されている。
更に、かかる図2に示す粒状物の外周面を観察すると、外周面近傍のCNTは、その実質的全面が凹凸状表面のニッケル層によって覆われており、このCNTの端部の少なくとも一方を覆うニッケル層がCNTの側面を覆うニッケル層よりも厚く形成されている。
この様に、図1及び図2に示す粒状物は、CNTの端部が粒状物の外方に露出状態でウニ状に突出することなく形成されているため、粒状物自体の分散性は良好である。
また、かかる粒状物を樹脂に含浸させることによって、剛性に優れたCNTを樹脂中に分散して配設できるため、樹脂の剛性や電気特性を改善できる。
更に、図1に示す粒状物は、CNT間に隙間が形成されているため、樹脂に含浸する際に、かかる隙間に樹脂が入り込みアンカー効果を奏することも期待できる。
一方、図2に示す粒状物は、その全面がニッケル層によって覆われているため、樹脂との濡れ性が、部分的にニッケル層が形成されている図1に示す粒状物に比較して良好であり、樹脂への分散性を向上できる。
尚、図1及び図2に示す粒状物の大きさは、10〜30μmである。
かかる粒状物の一例を、図3(a)(b)に示す、図3(b)は、図3(a)に示す線状粒状物の拡大顕微鏡写真である。図3(a)に示す粒状物には、図3(b)に示す複数本のCNTが線状に繋がって形成された線状体を含有しており、CNTの長手方向に球状のめっき金属層としてのニッケル層が間欠的に形成されていると共に、電解めっき金属間にCNTの表面が露出している。
図3(a)(b)に示す粒状物は、CNT同士がニッケル層を介することなく直接接触する部分が存在するため、電気伝導性及び伝熱性がニッケルよりも優れたにCNT同士が直接接触し、その電気伝導性及び伝熱性が良好である。
他方、CNT10の端部を覆う部分は、図5(a)に示す様に、単一のCNT10の端部の一方が、CNT10の側面を覆うニッケル層12よりも厚く形成されているものと、図5(b)に示す様に、単一のCNT10の両端部が、共にCNT10の側面を覆うニッケル層12よりも厚く形成されているものとが存在する。
この様に、CNT10の実質的全面がニッケル層12によって覆われている図4及び図5(a)(b)に示す粒状物は、樹脂との濡れ性が、部分的にニッケル層が形成されている図3(a)(b)に示す粒状物に比較して良好であり、樹脂への分散性を向上できる。
更に、CNT10を覆うニッケル層12は、その表面が凹凸状面に形成されているため、ニッケル層12の凹凸状表面による樹脂とのアンカー効果も期待できる。
尚、CNTの表面にめっき金属層が形成された図1〜図5に示す粒状物を樹脂に配合することによって、樹脂に優れた電磁波の遮断性を付与できる。
かかる電解めっき液16にCNT10が分散されており、めっき金属が析出したCNT10から成る粒状物は、陰極22の表面に析出すると共に、電解めっき液16中に浮遊し、電解めっき槽14の底面にも沈殿する。
或いは、分散として、カチオン活性剤から成る分散剤、特に炭化水素系のカチオン活性剤とフッ素化水素系のカチオン活性剤とから成る分散剤も用いることができる。
この様な分散剤を用いることのできる電解めっき液であれば、CNTの表面に所望の金属を析出し得る公知の電解めっき液を用いることができ、例えばニッケルをCNTの表面に析出し得る電解めっき液としては、ワット浴を用いることができる。
尚、界面活性剤としても、公知の界面活性剤を用いることができる。
この電解めっきによって生成した粒状物は、陰極22の表面に析出すると共に、電解めっき液16中に浮遊し、電解めっき槽14の底面にも沈殿するため、電解めっき液16を電解めっき槽14の底面に沈殿した粒状物と共にスポイト等によって吸引し、粒状物を沈殿させることによって得ることができる。粒状物は、CNTの表面にめっき金属が形成されており、その比重は電解めっき液16よりも大きく容易に沈殿するからである。
この様に、粒状物の比重が電解めっき液16よりも大きいため、電解めっきを所定時間継続して終了した後、攪拌機24による攪拌を停止することによって、電解めっき液16に浮遊している粒状物は電解めっき槽14の底面に容易に沈殿し、生成した粒状物を容易に回収できる。
また、陰極22に析出する粒状物は、陰極22の表面をフッ素樹脂製のヘラ等によって削ぎ落として回収できる。かかる削ぎ落としを、電解めっき中に定期的に行なうことによって、陰極表面に付着した粒状物が形成されることを防止できる。
尚、めっき金属として、ニッケル等の磁性を有する金属を用いた場合には、電解めっき槽14の底面に沈殿した粒状物を磁石によって容易に回収できる。
すなわち、陽極20と陰極22との間に存在するCNT10が分極化され、分極化されたCNT10の一端部が、図7(a)に示す様に、陰極22の陰極面に引き寄せられて付着する。陰極22に一端部が付着したCNT10は、その他端部の電流密度が他の部分よりも高くなるため、めっき金属が集中的に析出し、図7(b)に示す様に、CNT10の先端部に厚いめっき金属層12が形成される。
形成されためっき金属層12の先端部には、図7(c)に示す様に、分極化されたCNT10が付着する。この様に、新たなCNT10が付着すると、新たに付着したCNT10の先端部が最も電流密度が高くなるため、図7(d)に示す様に、新たに付着したCNT10にめっき金属が集中的に析出する。
他方、陰極22の陰極面に付着するCNT10の密度が比較的低い場合には、隣接するCNT10のめっき金属12と接合され難くなり、線状体を含む粒状物が形成され易い。
また、電流密度が高く、陰極面に付着したCNT10にめっき金属12が析出し易い場合には、陰極面に付着したCNT10の全面がめっき金属層12によって覆われた後、新たなCNT10が付着するため、全面がめっき金属層12で覆われたCNT10から成る粒状物が形成され易くなる。
他方、電流密度が低い場合には、陰極面に付着したCNT10の全面がめっき金属層12によって覆われる前に、CNT10の先端部を覆うめっき金属層12に新たなCNT10が付着し、新たなCNT10の先端部にめっき金属が析出する。このため、CNT10に間欠的にめっき金属層12が形成された粒状物が形成され易くなる。
他方、図8に示す様に、陰極22の陰極面に湾曲したCNT10の側面が付着した場合、全面がめっき金属層12によって覆われたCNT10は、図5(b)に示す様に、その両端部が側面を覆うニッケル層12よりも厚く形成され易くなる。
次いで、電解めっき液を攪拌機で攪拌しつつ、電解めっきを施した。この際の電流密度は5A/dm2であった。
回収した粒状物を電子顕微鏡で観察したところ、図1に示す様に、塊状の粒状物であって、ニッケル層で覆われていないMWCNTの端部が粒状物の外方にウニ状に突出することなく形成されており、MWCNTの各表面に間欠的に形成された球状のニッケル層によってCNT同士が相互に固着されていると共に、MWCNT間には隙間が形成されているものであった。
回収した粒状物を電子顕微鏡で観察したところ、図2に示す様に、塊状の粒状物であって、ニッケル層で覆われていないMWCNTの端部が粒状物の外方にウニ状に突出することなく形成されおり、塊状の粒状物の外周面は、ニッケル層によって覆われている。
更に、外周面近傍のMWCNTは、その全面が凹凸状表面のニッケル層によって覆われており、このCNTの端部を覆うニッケル層がMWCNTの他の部分を覆うニッケル層よりも厚く形成されている。
回収した粒状物を電子顕微鏡で観察したところ、図3(a)に示す粒状物には、図3(b)に示す複数本のMWCNTが線状に繋がって形成された線状体が含まれており、MWCNTの長手方向に球状のニッケル層が間欠的に形成されていた。
また、MWCNT10の端部の一方を覆うニッケル層12の部分が、MWCNT10の側面を覆うニッケル層12よりも厚く形成されているものと、MWCNT10の両端部を覆うニッケル層12の部分が、MWCNT10の側面を覆うニッケル層12よりも厚く形成されているものとが混在されていた。
しかし、電解めっきを終了しても、粒状物は形成されず、陰極22の陰極面にMWCNTとニッケル層との複合めっき皮膜層が形成されていた。
したがって、剛性、電磁波の遮断性及び伝熱性に劣る樹脂に対し、優れた剛性、電磁波の遮断性及び伝熱性を付与でき、従来の樹脂では用いることができなかった用途、例えば電子機器用の筐体に適用できる。
12 ニッケル層(めっき金属層)
14 電解めっき槽
16 電解めっき液
18 直流電源
20 陽極
22 陰極
24 攪拌機
Claims (10)
- 全表面が電解めっき金属層によって被覆された一本又は複数本のカーボンナノチューブによって形成されていることを特徴とする粒状物。
- カーボンナノチューブを覆う電解めっき金属層の表面が凹凸状に形成されている請求項1記載の粒状物。
- カーボンナノチューブの端部の少なくとも一方を被覆する電解めっき金属層が、他の部分を被覆する電解めっき金属層よりも厚く形成されている請求項1又は2記載の粒状物。
- 電解めっき金属層が、磁性を有する金属である請求項1〜3のいずれか一項記載の粒状物。
- 複数本のカーボンナノチューブが、電解めっき金属層によって相互に固着されている請求項1記載の粒状物。
- 分散剤を添加した電解めっき液中に複数本のカーボンナノチューブを分散させた後、前記カーボンナノチューブに電解めっきを施し、全表面が電解めっき金属層によって被覆された一本又は複数本のカーボンナノチューブから成る粒状物を得ることを特徴とする粒状物の製造方法。
- 分散剤として、アルキンジオール分子中にオキシエチレン側鎖を有するアルキンジオール化合物を用いる請求項6記載の粒状物の製造方法。
- 分散剤として、カチオン活性剤を用いる請求項6記載の粒状物の製造方法。
- 電解めっきを電解めっき液中に浸漬した陽極と陰極とに電流を流して施し、その際に、前記陰極の表面にカーボンナノチューブを付着して、前記カーボンナノチューブの表面に電解めっき金属を析出させる請求項6〜8のいずれか一項記載の粒状物の製造方法。
- 複数本のカーボンナノチューブ同士を、電解めっき金属層によって相互に固着した粒状物を得る請求項6〜9のいずれか一項記載の粒状物の製造方法。
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