JP5293101B2 - 電動歯ブラシ - Google Patents

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Description

本発明は、電動歯ブラシに関する。
高速に運動するブラシを歯にあてることによって歯磨き(食物残渣や歯垢の除去)を行うタイプの電動歯ブラシが知られている。このタイプの電動歯ブラシでは、歯垢除去力の向上や施療感の向上をねらって様々な駆動機構や駆動方法が提案されている。
たとえば特許文献1、2には、モータの回転方向の切り替えにより回転往復運動(ローリング運動)と直線往復運動(バス運動)の切り替えが可能な電動歯ブラシが開示されている。
また、特許文献3には、歯ブラシ本体の軸周りの向きを4段階または8段階に検出し、その検出結果からブラッシング部位を推定するというアイデアが開示されている。具体的には、本体内部に複数の扇状の区画が周方向に設けられており、導電性の球がどの区画に入っているかを電気抵抗の変化から検知することで、歯ブラシ本体の向きを推定している。ただしこのような機構は小型化が難しく、また歯ブラシの運動により球の位置が安定しないため高い検知精度を得るのが難しい。なお特許文献3では、部位ごとにブラッシングの回数や時間を記録し、ブラッシングが適正に行われたかどうかの評価を出力している。
実開平4−15426号公報 特開平5−123221号公報 特開2005−152217号公報
本発明の目的は、電動歯ブラシの歯垢除去力および施療感のさらなる向上を図るための技術を提供することである。
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用する。
本発明の電動歯ブラシは、ブラシと、前記ブラシを運動させる駆動手段と、前記ブラシの姿勢を検出する姿勢検出手段と、検出された姿勢に基づいてブラッシング部位を推定する部位推定手段と、推定されたブラッシング部位に応じて前記駆動手段の動作モードを切り替える制御手段と、を備える。
ここで、「ブラッシング部位」とは、口腔内の歯列表面を区分することで定義される複数の部位のうち、ブラシによってブラッシングされている(ブラシが当たっている)部位をいう。歯の種類(上顎/下顎、臼歯/切歯など)や部分(舌側/頬側、歯面/噛み合わせ面、歯周ポケットなど)によって、食物残渣や歯垢の付き方が異なる。よって、たとえばブラシの当て方、動かし方、スピードなどのように、部位ごとに効果的なブラッシング動作に違いがある。また、同じ種類の歯であっても歯列の右と左ではブラシの当て方が反対になる。
そこで本発明の電動歯ブラシは、ブラッシング部位を自動的に推定するとともに、その推定されたブラッシング部位に応じて動作モードを自動的に切り替える構成を採用する。これにより、それぞれのブラッシング部位に応じた適切なブラッシング動作を実現でき、
歯垢除去力や施療感のさらなる向上が期待できる。
前記駆動手段は、回転モータを含み、前記制御手段は、ブラッシング部位に応じて前記回転モータの回転方向を切り替えることが好ましい。
これにより、ブラッシング部位にあわせてブラシの運動方向(ブラシの毛先の動き)を変えることができる。たとえば、歯周ポケットから歯垢を掻き出す方向にブラシの毛先を動かす、などの制御が可能である。
前記制御手段は、ブラッシング部位に応じて前記ブラシの運動周波数を切り替えることが好ましい。
たとえば、過敏な部位(強いブラッシングは好ましくない部位)では運動周波数を低くしたり、高い刷掃効果が望まれる部位では運動周波数を高くする、などの制御が可能である。
前記姿勢検出手段は、加速度センサを有し、前記加速度センサの出力に基づき前記ブラシの三次元姿勢を検出するものであることが好ましい。
これにより、高精度にブラシの姿勢を判定でき、従来よりも高精度かつ高分解能なブラッシング部位の同定が可能となる。また加速度センサは小型ゆえ、電動歯ブラシ本体への組み込みも容易である。1軸の加速度センサを用いることもできるし、好ましくは、多軸(2軸、3軸、それ以上)の加速度センサを用いることもできる。
前記姿勢検出手段は、ジャイロスコープを有し、前記加速度センサの出力と前記ジャイロスコープの出力とに基づき、前記ブラシの三次元姿勢を検出するものであることが好ましい。
加速度センサの出力には、重力加速度成分と動加速度成分とが含まれる。このうちブラシの三次元姿勢を示すのは重力加速度成分であり、動加速度成分は不要な信号成分となる。そこでジャイロスコープの出力を参照し、動加速度成分をキャンセルすることによって、より高精度にブラシの三次元姿勢を算出できる。
検出された姿勢に基づいて、歯軸に対する前記ブラシの角度であるブラシ角を推定するブラシ角推定手段をさらに備え、前記制御手段は、推定されたブラッシング部位とブラシ角に応じて前記駆動手段の動作モードを切り替えることが好ましい。
ブラシ角度も考慮することによって、より適切なブラッシング動作を実現することができる。
前記ブラシに作用する荷重を検知する荷重検知手段をさらに備え、前記制御手段は、前記ブラシに荷重が作用していない間は前記動作モードの切り替えを禁止することが好ましい。
たとえば歯列の右側から左側へとブラシを移動させるとき、ブラシの姿勢が大きく変わるため、移動のあいだに動作モードが頻繁に切り替わる可能性がある。このような現象は、制御を不安定にするとともに無駄な電力消費を生むため好ましくない。そこで、本発明のように、ブラシに荷重が作用していない間の動作モード切替を禁止することにより、ブラシ移動中における上記現象の発生を抑制することができる。
なお、上記手段および処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
本発明は、電動歯ブラシの歯垢除去力および施療感のさらなる向上を図ることができる。
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
(第1実施形態)
<電動歯ブラシの構成>
図1、図2、図3を参照して、電動歯ブラシの構成を説明する。図1は第1実施形態の電動歯ブラシのブロック図であり、図2は第1実施形態の電動歯ブラシの内部構成を示す断面図であり、図3は電動歯ブラシの外観を示す斜視図である。
電動歯ブラシは、駆動源であるモータ10を内蔵する電動歯ブラシ本体1(以下、単に「本体1」ともいう。)と、ブラシ210を有する振動部材2とを備えている。本体1は、概ね円筒形状を呈しており、歯を磨く際に使用者が手で握るためのハンドル部を兼ねている。
本体1には、電源のオン/オフを行うためのスイッチSが設けられている。また本体1の内部には、駆動源であるモータ10、駆動回路12、2.4V電源である充電池13、充電用のコイル14などが設けられている。充電池13を充電する際には、充電器100に本体1を載置するだけで、電磁誘導により非接触で充電可能である。駆動回路12は、各種演算・制御を実行するCPU(入出力処理部)120、プログラムや各種設定値を記憶するメモリ121、タイマ122などを有している。
さらに本体1の内部には、多軸(ここではx,y,zの三軸)の加速度センサ15が設けられる。加速度センサ15は、図3に示すように、x軸がブラシ面に対して平行になり、y軸が本体1の長手方向に一致し、z軸がブラシ面に対して垂直になるように設置される。つまり、本体1を充電器100に載置したときに、重力加速度ベクトルがy軸に平行になり、ブラシ面を上に向けたときに、重力加速度ベクトルがz軸に平行になり、本体1を水平にしてブラシ面を横に向けたときに、重力加速度ベクトルがx軸に平行になる。加速度センサ15の各軸の出力はCPU120に入力され、ブラシの三次元姿勢を検出するために利用される。
加速度センサ15としては、ピエゾ抵抗タイプ、静電容量タイプ、もしくは熱検知タイプのMEMSセンサを好ましく利用できる。MEMSセンサは非常に小型であるため、本体1の内部への組み込みが容易だからである。ただし、加速度センサ15の形式はこれに限らず、動電式、歪みゲージ式、圧電式などのセンサを利用しても構わない。また特に図示しないが、各軸のセンサの感度のバランス、感度の温度特性、温度ドリフトなどを補正するための補正回路を設けるとよい。また、動加速度成分やノイズを除去するためのバンドパスフィルタ(ローパスフィルタ)を設けてもよい。また、加速度センサの出力波形を平滑化することによりノイズを低減してもよい。図27は、前後数100msecのデータを平均化することで、出力波形の高周波ノイズを低減した例である。
振動部材2は、本体1側に固定されているステム部20と、このステム部20に装着されるブラシ部品21とを備える。ブラシ部品21の先端にはブラシ210が植毛されている。ブラシ部品21は消耗部品ゆえ、新品に交換できるよう、ステム部20に対して着脱
自在な構成となっている。
ステム部20は、樹脂材からなる。ステム部20は、エラストマからなる弾性部材202を介して本体1に取り付けられている。ステム部20は、先端(ブラシ側の端部)が閉じた筒状の部材であり、筒の内部の先端に軸受203を有している。モータ10の回転軸11に連結された偏心軸30の先端が、ステム部20の軸受203に挿入される。この偏心軸30は、軸受203の近傍に重り300を有しており、偏心軸30の重心はその回転中心からずれている。なお、偏心軸30の先端と軸受203の間には微小なクリアランスが設けられている。
<電動歯ブラシの駆動原理>
CPU120が動作モードに応じた駆動信号(たとえばパルス幅変調信号)をモータ10に供給し、モータ10の回転軸11を回転させる。回転軸11の回転に伴って偏心軸30も回転するが、偏心軸30は重心がずれているために回転中心の回りに旋回するような運動を行う。よって、偏心軸30の先端が軸受203の内壁に対して衝突を繰り返し、ステム部20とそれに装着されたブラシ部品21とを高速に振動(運動)させることとなる。つまり、モータ10が、ブラシを振動(運動)させる駆動手段の役割を担い、偏心軸30が、モータ10の出力(回転)を振動部材2の振動に変換する運動伝達機構(運動変換機構)の役割を担っている。
使用者は、本体1を手で持ち、高速に振動するブラシ210を歯に当てることで、ブラッシングを行うことができる。なお、CPU120はタイマ122を用いて継続動作時間を監視しており、所定時間(たとえば2分間)が経過したら自動的にブラシの振動を停止させる。
本実施形態の電動歯ブラシでは、運動伝達機構である偏心軸30が振動部材2に内包され、特に重り300がブラシ210の近傍に配置されている。よって、ブラシ210の部分を効率的に振動させることができる。その一方で、振動部材2(ステム部20)が弾性部材202を介して本体1に取り付けられているので、振動部材2の振動が本体1に伝わり難くなっている。よって、歯を磨く際の本体1および手の振動を低減でき、使用感の向上を図ることができる。
<電動歯ブラシの動作>
歯の種類(上顎/下顎、臼歯/切歯など)や部分(舌側/頬側、歯面/噛み合わせ面など)によって、食物残渣や歯垢の付き方が異なる。よって、たとえばブラシの当て方(ブラシ角やブラシ圧)、動かし方、スピード、ブラッシング時間など、歯列の部位ごとに効果的なブラッシング動作に違いがある。また、同じ種類の歯であっても歯列の右と左ではブラシの当て方が反対になる。
そこで、本実施形態の電動歯ブラシは、加速度センサ15で検出されたブラシの姿勢に基づいてブラッシング部位を推定し、ブラッシング部位に応じてモータ10の動作モード(回転方向、回転数など)を自動的に切り替える。
本実施形態では、図4に示すように、上下の歯列を、「上顎前頬側」、「上顎前舌側」、「上顎左頬側」、「上顎左舌側」、「上顎左噛み合わせ面」、「上顎右頬側」、「上顎右舌側」、「上顎右噛み合わせ面」、「下顎前頬側」、「下顎前舌側」、「下顎左頬側」、「下顎左舌側」、「下顎左噛み合わせ面」、「下顎右頬側」、「下顎右舌側」、「下顎右噛み合わせ面」、の16箇所の部位に区分する。ただし、歯列の区分はこれに限らず、もっと大まかな区分でもよいし、より細かい区分でもよい。
図5〜図9のフローチャートを参照して、動作モードの自動制御のフローを具体的に説明する。図5はメインルーチンのフローチャートであり、図6〜図9はメインルーチンの各処理の詳細を示すフローチャートである。なお、以下に説明する処理は、特にことわりのない限り、CPU120がプログラムに従って実行する処理である。
電動歯ブラシの電源がONになると、CPU120は、加速度センサ15の出力に基づきブラシの姿勢(傾き)を検出する(S10)。次に、CPU120は、S10で検出された姿勢に基づいてブラッシング部位を推定する(S20)。次に、CPU120は、S20で推定したブラッシング部位に応じて動作モードを切り替える制御を実行する(S30)。このS10〜S30の処理は一定時間ごとに繰り返し実行され、ブラッシング部位が変わるたびに動作モードが適宜変更される。電源がOFFになるか、継続動作時間が所定時間(たとえば2分間)に達するか、手動による動作モード切替が行われると、図5のメインルーチンは終了する。以下、S10〜S30の処理を詳しく説明する。
<姿勢の検出>
図6は姿勢検出処理(S10)のフローチャートである。
CPU120は、加速度センサ15からx、y、zそれぞれの出力Ax、Ay、Azを取得する(S100)。Axはx方向の加速度成分、Ayはy方向の加速度成分、Azはz方向の加速度成分を表す。歯ブラシが静止状態にあるとき(加速度センサ15に動加速度が作用していないとき)は、Ax、Ay、Azの合成ベクトルAが重力加速度に相当する。ここでは、A=(Ax、Ay、Az)を姿勢ベクトルとよぶ。
ここで、姿勢ベクトルA=(Ax、Ay、Az)の大きさが1.2g(gは重力加速度)より大きい場合は(S101;YES)、エラーを返す(S102)。加速度センサ出力に動加速度成分が多く含まれていると、重力加速度の方向(つまりブラシの三次元姿勢)を正確に特定するのが難しくなるからである。なお、S102のようにエラーを返すのではなく、合成ベクトルの大きさが1.2g以下となる加速度センサ出力Ax、Ay、Azが得られるまでS100とS101の処理を繰り返すようにしてもよい。なお、エラー判定のしきい値は1.2gに限らず、他の値でもよい。
<ブラッシング部位の推定>
図7、図8はブラッシング部位推定処理(S20)のフローチャートである。また図10、図11は、ブラッシング部位ごとの加速度センサ出力Ax、Ay、Azの一例を示す図である。
まずCPU120は、z方向の加速度センサの出力Azに基づき、上顎か下顎かを判定する(S700)。上顎の歯列をブラッシングするときはブラシ面が少なからず上向きになり、下顎の歯列をブラッシングするときはブラシ面が少なからず下向きになることに着目した判定である。Az>0の場合は下顎(S801)、Az≦0の場合は上顎(S701)と判定される。
(1)上顎の場合
CPU120は、y方向の加速度センサの出力Ayに基づいて前歯か否かを判定する(S702)。前歯をブラッシングするときは歯ブラシ本体1が比較的水平になるが、臼歯をブラッシングするときは唇との干渉があるため歯ブラシ本体1が斜めにならざるをえないことに着目した判定である。Ay≦閾値aの場合は上顎前歯と判定される(S703)。
上顎前歯と判定した場合、CPU120は、x方向の加速度センサの出力Axに基づい
て頬側か舌側かを判定する(S704)。頬側と舌側とではブラシの向きが反転することに着目した判定である。Ax>0の場合は「上顎前頬側」と判定され(S705)、Ax≦0の場合は「上顎前舌側」と判定される(S706)。
一方、S702で上顎前歯でないと判定した場合、CPU120は、x方向の加速度センサの出力Axに基づいて噛み合わせ面か否かを判定する(S707)。噛み合わせ面をブラッシングするときはブラシ面がほぼ水平になり、Axの出力が非常に小さくなることに着目した判定である。閾値b>Ax>閾値cの場合は「上顎左噛み合わせ面または上顎右噛み合わせ面」と判定される(S708)。なお、第1実施形態では、上顎左噛み合わせ面と上顎右噛み合わせ面とをとくに区別していない。噛み合わせ面の場合、左右でブラッシング動作を変える必要性が小さいからである。
Ax≧閾値bまたはAx≦閾値cの場合、CPU120は、Axが0より大きいか否かで、頬側か舌側かを判定する(S709)。頬側と舌側とではブラシの向きが反転することに着目した判定である。Ax>0の場合は「上顎右頬側または上顎左舌側」と判定され(S710)、Ax≦0の場合は「上顎左頬側または上顎右舌側」と判定される(S711)。なお、第1実施形態では、上顎右頬側と上顎左舌側とをとくに区別していない。両部位のあいだでブラッシング動作を変える必要性が小さいからである。上顎左頬側と上顎右舌側についても同様である。
(2)下顎の場合
CPU120は、y方向の加速度センサの出力Ayに基づいて前歯か否かを判定する(S802)。前歯をブラッシングするときは歯ブラシ本体1が比較的水平になるが、臼歯をブラッシングするときは唇との干渉があるため歯ブラシ本体1が斜めにならざるをえないことに着目した判定である。Ay≦閾値dの場合は下顎前歯と判定される(S803)。
下顎前歯と判定した場合、CPU120は、x方向の加速度センサの出力Axに基づいて頬側か舌側かを判定する(S804)。頬側と舌側とではブラシの向きが反転することに着目した判定である。Ax<0の場合は「下顎前頬側」と判定され(S805)、Ax≧0の場合は「下顎前舌側」と判定される(S806)。
一方、S802で下顎前歯でないと判定した場合、CPU120は、x方向の加速度センサの出力Axに基づいて噛み合わせ面か否かを判定する(S807)。噛み合わせ面をブラッシングするときはブラシ面がほぼ水平になり、Axの出力が非常に小さくなることに着目した判定である。閾値e>Ax>閾値fの場合は「下顎左噛み合わせ面または下顎右噛み合わせ面」と判定される(S808)。なお、第1実施形態では、下顎左噛み合わせ面と下顎右噛み合わせ面とをとくに区別していない。噛み合わせ面の場合、左右でブラッシング動作を変える必要性が小さいからである。
Ax≧閾値eまたはAx≦閾値fの場合、CPU120は、Axが0より大きいか否かで、頬側か舌側かを判定する(S809)。頬側と舌側とではブラシの向きが反転することに着目した判定である。Ax>0の場合は「下顎右頬側または下顎左舌側」と判定され(S810)、Ax≦0の場合は「下顎左頬側または下顎右舌側」と判定される(S811)。なお、第1実施形態では、下顎右頬側と下顎左舌側とをとくに区別していない。両部位のあいだでブラッシング動作を変える必要性が小さいからである。下顎左頬側または下顎右舌側についても同様である。
以上の処理によって、現在のブラッシング部位が、「上顎前頬側」(S705)、「上顎前舌側」(S706)、「上顎噛み合わせ面」(S708)、「上顎右頬側または上顎
左舌側」(S710)、「上顎左頬側または上顎右舌側」(S711)、「下顎前頬側」(S805)、「下顎前舌側」(S806)、「下顎噛み合わせ面」(S808)、「下顎右頬側または下顎左舌側」(S810)、「下顎左頬側または下顎右舌側」(S811)のいずれかに特定される。
なお、上記判定アルゴリズムはあくまでも一例を示したものにすぎず、加速度センサの出力Ax、Ay、Azからブラッシング部位を特定できるのであればどのような判定アルゴリズムでも構わない。たとえばAx、Ay、Azの値をそのまま判定の変数として用いるのでなく、Ax、Ay、Azを適宜組み合わせることで得られる2次変数を判定に用いてもよい。2次変数は、たとえば、Ay/Az、Ax・Ax+Ay・Ay、Az−Axなど、任意に設定できる。あるいは、各軸の加速度情報Ax、Ay、Azを、図28に示すように角度情報(姿勢角)α、β、γに変換した後で、ブラッシング部位を判定してもよい。図28の例では、重力加速度方向に対するx軸の角度をロール角α、重力加速度方向に対するy軸の角度をピッチ角β、重力加速度方向に対するz軸の角度をヨー角γのように定義している。判定に用いる閾値は臨床実験等の結果から決定することができる。
<動作モードの切替>
本実施形態の電動歯ブラシでは、上述のように、偏心軸の旋回運動を利用してブラシの振動を発生させている。このような駆動原理の場合、ブラシはモータの回転軸に垂直な面内(zx平面内)を楕円状の軌道を描いて振動する。そして歯ブラシの振動機構はyz平面に関して対称であるため、モータの回転方向を逆転すると、ブラシはyz平面に関して対称な軌道を描く。
図12はモータの回転方向とブラシの動きを模式的に示している。モータを正転させた場合、下顎右舌側においては歯周ポケットから歯垢を掻き出すようにブラシの毛先が動くが、下顎右頬側においては歯垢を歯周ポケットに押し込むようにブラシの毛先が動く。よって、下顎右舌側をブラッシングする際は、モータを正転させたほうがよいことがわかる。また、下顎右頬側をブラッシングする際は、モータを反転させたほうが、ブラシの毛先が歯垢を掻き出すように動くことがわかる。このような知見に基づき、本実施形態では、ブラッシング部位に応じて回転モータの回転方向(正転/反転)を切り替える。
図9は動作モード切替処理(S30)のフローチャートである。CPU120は、S20で特定されたブラッシング部位を、前回の処理(1クロック前の処理)の時のブラッシング部位と比較することで、ブラッシング部位が変化したか否かをチェックする(S900)。なお前回の処理の時のブラッシング部位はメモリに記憶されている。
ブラッシング部位が変化した場合(S900;YES)、CPU120は、現在のブラッシング部位が「下顎左頬側、下顎右舌側、上顎左舌側、上顎右頬側」の第1グループと、「下顎右頬側、下顎左舌側、上顎右舌側、上顎左頬側」の第2グループのいずれに該当するかを判定する(S901)。そして、第1グループの場合、CPU120は、モータの回転方向を正転にする(S902)。第2グループの場合、CPU120は、モータの回転方向を反転にする(S903)。
このようにモータの回転方向を制御してブラッシング部位にあった適切かつ効果的なブラシ毛先の動きを実現することにより、歯垢除去力の向上を図ることができる。
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態に係る電動歯ブラシについて説明する。第1実施形態では、ブラッシング部位に応じてモータの回転方向を制御したが、第2実施形態では、ブラッシング部位に応じてブラシの振動数(運動周波数であり、具体的にはモータの回転数)を制
御する。その他の構成については第1実施形態のものと同様であるため、以下、本実施形態に特有の構成を中心に説明を行う。
図13は第2実施形態の動作モード切替処理(図5のS30)のフローチャートである。CPU120は、S20で特定されたブラッシング部位を、前回の処理(1クロック前の処理)の時のブラッシング部位と比較することで、ブラッシング部位が変化したか否かをチェックする(S900)。なお前回の処理の時のブラッシング部位はメモリに記憶されている。
ブラッシング部位が変化した場合(S900;YES)、CPU120は、現在のブラッシング部位が「下顎前頬側、下顎前舌側、上顎前頬側、上顎前舌側」の第1グループ、「下顎左頬側、下顎左舌側、下顎右頬側、下顎右舌側、上顎左頬側、上顎左舌側、上顎右頬側、上顎右舌側」の第2グループ、「下顎左噛み合わせ面、下顎右噛み合わせ面、上顎左噛み合わせ面、上顎右噛み合わせ面」の第3グループのいずれに該当するかを判定する(S1301)。第1グループは、歯肉が過敏な部位であり、あまり強くブラッシングしないほうが好ましい部位である。また第3グループは、ブラシが歯肉に当たらず、高い刷掃効果が望まれる部位である。
第1グループの場合、CPU120は、現在の設定値よりも一段階低い振動数でブラシが振動するように、モータの回転数を制御する(S1302)。第2グループの場合、CPU120は、現在の設定値の振動数でブラシが振動するように、モータの回転数を制御する(S1303)。第3グループの場合、CPU120は、現在の設定値よりも一段階高い振動数でブラシが振動するように、モータの回転数を制御する(S1304)。たとえば、振動数を5段階に切り替え可能な歯ブラシにおいて、現在の設定値が「3」であった場合、第1グループのブラッシングは「2」の振動数、第2グループのブラッシングは「3」の振動数、第3グループのブラッシングは「4」の振動数で行われることになる。
これにより、歯肉が過敏な部位については、ブラッシング強度を弱めにし、逆に高い刷掃効果が望まれる部位については、ブラッシング強度を強めにすることができる。したがって、刷掃効果と施療感の向上を図ることができる。
なお本実施形態では、ブラッシング部位ごとの歯肉の刺激に着目してブラシの振動数を制御したが、他の目的でブラシの振動数を制御することも可能である。たとえば、ブラッシング部位ごとにブラシと歯の接触面積が違うことに着目し、接触面積が大きい部位(たとえば上顎前頬側、噛み合わせ面など)では振動数を増加して刷掃効果を高め、接触面積が小さい部位(たとえば下顎左舌側、上顎右頬側など)では振動数を減少するような制御を行ってもよい。また本実施形態では振動数を3段階に制御したが、2段階あるいは4段階以上に振動数を変更してもよい。
なお、ブラシの駆動速度(振動数や回転数など)を変更する場合、図29上段のように駆動速度を急変させてもよいが、ブラッシング中に駆動速度が急激に変わったり頻繁に変わったりすると使用者に違和感を与えたり、制御を不安定にしたりするおそれがある。そこで、図29下段のように、駆動速度が緩やかに(あるいは段階的に)変化するような制御を行うことも好ましい。たとえば、速度変化率がある設定値以上にならないように、モータの回転数などを制御すればよい。
(第3実施形態)
次に本発明の第3実施形態に係る電動歯ブラシについて説明する。本実施形態では、CPU120が、ブラシの姿勢に基づいてブラシ角を推定し、ブラッシング部位とブラシ角に応じて動作モードを切り替える。その他の構成については上述した実施形態のものと同
様であるため、以下、本実施形態に特有の構成を中心に説明を行う。
<振動特性>
この電動歯ブラシでは、上述のように、偏心軸の旋回運動を利用してブラシの振動を発生させており、ブラシはモータの回転軸に垂直な面内を楕円状の軌道を描いて振動する。本発明者らは、振動数(モータ回転数)を変化させながらブラシの振動を観察し分析することによって、この電動歯ブラシが次のような振動特性を有することを見出した。
(1)ブラシ部分が少なくとも2つの共振点(共振振動数)を有している。
(2)各共振点における共振の方向が異なる。具体的には、図14に示すように、振動数が低い側の共振点(第1共振:約12500spm)ではブラシ面に平行なx軸方向の振幅が増大する。振動数が高い側の共振点(第2共振:約38000spm)ではブラシ面に垂直なz軸方向の振幅が増大する。共振外(たとえば約26500spm)では、ブラシはx軸(z軸)に対して斜め(約45度)の軌道を描く。なお、「spm」は一分間あたりのスイング回数を表す単位である。
方向の異なる複数の共振が出現する理由は、電動歯ブラシの構造やその駆動原理に依るところが大きいと考えられる。本発明者らは、偏心軸やブラシの構成を変更しながら実験を繰り返すことで、第1共振点が主に運動伝達機構に依存する特性であり、第2共振点が主にブラシに依存する特性であるとの知見を得ている。言い換えれば、運動伝達機構の構造や形状(簡単には偏心軸の重りの位置、大きさ、重量など)を変更することで第1共振点の振動数や振幅を調整でき、また、ブラシの構造や形状を変更することで第2共振点の振動数や振幅を調整できることが分かった。
<ブラシ角>
ブラシ角とは、歯軸(歯の頭と根に沿った軸)に対するブラシの当たり角である。図15の上段がブラシ角=45度の状態を示し、図15の下段がブラシ角=90度の状態を示している。また図15の左側はモータが正転の状態、右側はモータが反転の状態を示している。そして、それぞれの矢印はブラシの動き(振幅が最も大きい方向)を表している。概略、第1共振ではブラシが横(x軸方向)に動き、第2共振ではブラシが縦(z軸方向)に動き、共振外ではブラシが斜めに動く。
歯周ポケットや歯間から食物残渣や歯垢を効果的に掻き出すには、ブラシの毛先が歯周ポケットや歯間に入り込むようにブラシを動かすとよい。すなわち、ブラシの動く方向が歯軸に対して斜め(たとえば45度)になることが好ましい。したがって、図15の例では、ブラシ角が45度の場合は、第2共振の動きが最適であることがわかる。一方、ブラシ角が90度の場合、下顎右舌側ではモータ正転の共振外の動きが最適であり、下顎右頬側ではモータ逆転の共振外の動きが最適であることがわかる。なお、同様の考え方に従って、ブラッシング部位とブラシ角の組み合わせのそれぞれに対する最適な動作モード(モータ回転方向とブラシ振動数)を決定することができる。
<ブラシ角の推定>
ブラシ角は、たとえば、z方向の加速度成分Azから推定可能である。図16に示すように、ブラシ角が約90度の場合はAzはほとんど0を示し、ブラシ角が小さくなるほどAzの値が大きくなる、というようにブラシ角に応じてAzの値が有意に変化するからである。なお、ブラシ角に応じてx方向の加速度成分Axも変化するため、Azの代わりにAxからブラシ角を推定したり、AxとAzの両方(AxとAzの合成ベクトルの方向)からブラシ角を推定することも好ましい。ブラシ角を連続量で算出することも可能であるが、本実施形態の動作モード切替では「約45度か約90度か」というレベルの精度で十分なため、以下に述べる処理ではAzと閾値との比較という簡易な処理でブラシ角を決定
している。
図17は第3実施形態のメインルーチンのフローチャートである。第1実施形態との違いは、ブラシ角推定処理(S25)が追加されている点である。S25において、CPU120は、S10で得られたAzの絶対値が所定の閾値より小さい場合(0に近い場合)は、ブラシ角が90度であるとみなし、Azの絶対値が閾値以上の場合は、ブラシ角が45度であるとみなす。CPU120のこの機能が、本発明のブラシ角推定手段に対応する。
<動作モード切替処理>
図18は動作モード切替処理(図17のS30)のフローチャートである。
CPU120は、S20で特定されたブラッシング部位とS25で特定されたブラシ角を、前回の処理の時のブラッシング部位およびブラシ角と比較することで、ブラッシング部位もしくはブラシ角が変化したか否かをチェックする(S1800)。なお前回の処理の時のブラッシング部位とブラシ角はメモリに記憶されている。
ブラッシング部位もしくはブラシ角が変化した場合(S1800;YES)、CPU120は、現在のブラッシング部位が「下顎左頬側、下顎右舌側、上顎左舌側、上顎右頬側」の第1グループと、「下顎右頬側、下顎左舌側、上顎右舌側、上顎左頬側」の第2グループのいずれに該当するかを判定する(S1801)。そして第1グループの場合は、CPU120は、モータの回転方向を正転にする(S1802)。第2グループの場合、CPU120は、モータの回転方向を反転にする(S1803)。さらにCPU12は、ブラシ角が45度の場合にブラシの振動数を第2共振(高速)に制御し(S1804、S1805)、ブラシ角が90度の場合にブラシの振動数を共振外(中速)に制御する(S1806)。
以上述べた本実施形態の制御によれば、ブラッシング部位とブラシ角の情報に基づき、歯間や歯周ポケットのブラッシングに最適なブラシ毛先の動きを実現でき、より一層の歯垢除去力の向上を図ることができる。この場合、歯周ポケット内の歯周病菌を殺傷するために超音波振動素子を併用するとより効果的である。なお、ここでは45度と90度の二段階でブラシ角を推定したが、三段階以上もしくは連続量でブラシ角を推定するとともに、ブラシの振動数も三段階以上もしくは連続的に変化させるようにしてもよい。
(第4実施形態)
図19は第4実施形態の電動歯ブラシのブロック図である。本実施形態の電動歯ブラシは、本体1の内部に多軸(ここでは3軸)のジャイロスコープ16を備えている。
ジャイロスコープ16は、z軸周りの角速度、x軸周りの角速度、y軸周りの角速度を検出可能なように設置されている。ジャイロスコープ16としては、振動式、光学式、機械式などどのようなタイプのものも利用可能であるが、小型で本体1への組み込みが容易であるという理由からMEMSセンサを好適に用いることができる。なお、角速度を出力するレートジャイロではなく、角度を出力するレート積分ジャイロや姿勢ジャイロを利用しても構わない。またブラシの振動によるノイズ(たとえばブラシの駆動周波数である100Hz〜300Hz程度の周波数成分)を除去するために、ジャイロスコープの出力にバンドパスフィルタをかけてもよい。
歯ブラシ本体1が静止状態にあるとき(たとえば、一つのブラッシング部位にブラシを当て続けている状態のとき)は、加速度センサ15の出力には実質的に重力加速度成分しか含まれない。この場合は、ブラシの三次元姿勢を正確に検出できるため、ブラッシング
部位やブラシ角を精度よく推定することが可能である。しかし、歯ブラシ本体1が移動状態にあるとき(たとえば、あるブラッシング部位から他のブラッシング部位へとブラシが移動するとき)は、加速度センサ15の出力に、重力加速度成分だけでなく動加速度成分が含まれ得る。動加速度成分は三次元姿勢を算出する上では不要な信号成分(ノイズ)となる。一方、ジャイロスコープ16の出力は、歯ブラシ本体1が静止状態にあるときは観測されず、歯ブラシ本体1が移動しているときのみ有意な信号が出力される。このようなセンサ特性の差を利用し、本実施形態では、加速度センサ15とジャイロスコープ16の両方の出力に基づいて、歯ブラシの三次元姿勢の検出を行う。
具体的には、姿勢検出処理(図5のS10)において、CPU120はまず加速度センサ15の出力とジャイロスコープ16の出力を得る。ジャイロスコープ16の出力の絶対値が所定の閾値より小さいときには、CPU120は、歯ブラシ本体1が静止しているものとみなし、加速度センサ15の出力Ax、Ay、Azから三次元姿勢を求める。いずれかの軸のジャイロスコープ16の出力の絶対値が所定の閾値以上となったときには、CPU120は、ジャイロスコープ16の出力からx、y、z各方向の動加速度成分を推定し、Ax、Ay、Azの値を補正する。これにより、Ax、Ay、Azに含まれる動加速度成分がキャンセルされ、ブラシの三次元姿勢を精度良く算出することができる。
なお、ジャイロスコープの出力を用いて加速度センサの出力を補正するのではなく、ジャイロスコープの出力が得られた場合にブラシの姿勢検出を行わない、という処理でも構わない。つまり、ジャイロスコープの出力が所定の閾値より小さいときのみ、姿勢検出、ブラッシング部位推定、ブラシ角推定、動作モード切替などの処理を行うのである。これにより、加速度センサの出力から推定した姿勢がある程度の信頼性を有しているときのみ、動作モード切替が実行されるようになる。
また、ジャイロスコープの出力から、x軸周りの角度変化量Δθyz、y軸周りの角度変化量Δθzx、z軸周りの角度変化量Δθxyを算出し、1クロック前の姿勢検出処理で得られた姿勢ベクトルA´=(Ax´、Ay´、Az´)を角度(Δθyz、Δθzx、Δθxy)だけ回転することにより、現在の姿勢ベクトルA=(Ax、Ay、Az)を算出してもよい。また、加速度情報Ax、Ay、Azではなく、ロール角α、ピッチ角β、ヨー角γの角度情報(図28参照)により、電動歯ブラシの姿勢を算出・評価してもよい。
以上述べた本実施形態の構成によれば、加速度センサとジャイロスコープの出力を組み合わせること(条件に応じて加速度センサとジャイロスコープの出力のいずれかを選択することを含む)により、電動歯ブラシの三次元姿勢をより高精度に求めることができる。なお、並進運動が多いバス方式の電動歯ブラシの場合は、加速度センサとバンドパスフィルタの組み合わせでも十分な精度の姿勢情報が得られる。しかし、ローリング方式の場合は、歯ブラシ本体の三次元的なうねりが発生するため、加速度情報だけでは誤差因子が大きく、姿勢検出の精度が低下するおそれがある。そのような場合には、ジャイロスコープの角速度情報を利用する本実施形態の手法が有効である。
(第5実施形態)
図20は第5実施形態の電動歯ブラシのブロック図である。本実施形態の電動歯ブラシは、ブラシに作用する荷重を検知する荷重センサ(荷重検知手段)17を備えている。荷重センサ17としては、ストレインゲージ、ロードセル、圧力センサなどどのようなタイプのものも利用可能であるが、小型で本体1への組み込みが容易であるという理由からMEMSセンサを好適に用いることができる。
図21は第5実施形態のメインルーチンのフローチャートである。第1実施形態との違
いは、荷重検知処理(S5)が追加されている点である。
S5において、CPU120は、荷重センサ17から得られる荷重情報に基づき、ブラシに荷重が作用しているか否かを判定する。たとえば、荷重センサ17の出力値が所定の閾値を超えたときに「ブラシに荷重が作用した」とみなせばよい。ブラシに荷重が作用するまで、次ステップ以降の処理は待ち状態となる(S5;NO)。これにより、ブラシに荷重が作用していない間は、姿勢検出、ブラッシング部位推定、ブラシ角推定、動作モード切替などの処理が禁止される。
たとえば歯列の右側から左側へとブラシを移動させるとき、ブラシの姿勢が大きく変わるため、移動のあいだに動作モードが頻繁に切り替わる可能性がある。このような現象は、制御を不安定にするとともに無駄な電力消費を生むため好ましくない。そこで、本実施形態のように、ブラシに作用する荷重をモニタし、姿勢検出や動作モード切替等の処理を適宜禁止することにより、ブラシ移動中における上記現象の発生を抑制することができる。
なお、荷重情報を動作モードの制御に利用してもよい。たとえば、ブラシに作用する荷重が変わると、ブラシの振動特性および共振点が変わり、第3実施形態で述べた第1共振や第2共振がうまく出現しない可能性がある。そこで、ブラシに作用する荷重に応じてブラシの振動数(モータの回転数)を適宜調整することで、共振点のズレをカバーし共振現象を正確に再現できるようになる。荷重の大きさと共振点との対応は実験により求めることができる。
ここでは荷重センサ17を利用したが、他の手段で荷重を検知することも可能である。たとえば、ブラシに作用する荷重が大きくなるほど、モータの負荷が増大し、モータに流れる電流値が増大する。それゆえ、モータに流れる電流値をモニタし、その電流値からブラシに作用する荷重を推定することができる。
あるいは、加速度センサ15の出力をモニタすることにより、ブラシに荷重が作用したかどうかを検知することも可能である。図22に示すように、使用者が歯ブラシ本体1を把持してブラシの毛先を歯に押し当てると、歯ブラシ本体1と振動部材2の間の弾性部材が変形し、歯ブラシ本体1の姿勢が若干変化する。この姿勢変化は、たとえば図23のような加速度センサ出力の波形変化として観測できる。すなわち、姿勢が変化した瞬間に、少なくとも1つのセンサ出力のレベルが若干シフトし、ブラシを歯に押し付けている間はシフト後のレベルが維持されるのである。このような波形変化を捉えることで、ブラシに荷重が作用したかどうかの判定が可能である。もちろんこの方法では高精度な荷重推定は困難であるが、第5実施形態のS5のように「荷重が作用しているか否か」というレベルの判定であれば十分実用に足りる。このように加速度センサ15を荷重検知手段として流用できれば、部品点数の削減による歯ブラシの小型化とコスト低減が可能となり好ましい。
(第6実施形態)
図24は第6実施形態の電動歯ブラシのブラシ部分を示している。本実施形態の電動歯ブラシは、ブラシ部分の温度を検出する温度センサ18を備えている。温度センサ18はブラシの背面に設置されている。温度センサ18としては、赤外線センサ、サーミスタなどどのようなタイプのものも利用可能である。
図25、図26はブラッシング部位推定処理(S20)のフローチャートである。第1実施形態のブラッシング部位推定処理(図7、図8)との違いは、温度センサ18の出力に基づいて頬側と舌側の判別を行っている点である。
図25の上顎の処理において、加速度センサ15の出力に基づき「上顎左頬側または上顎右舌側」まで絞り込んだら(S710)、CPU120は、温度センサ18の出力値が所定の範囲内にあるか否か判定する(S2500)。ブラシが頬側にあるときは、温度センサ18が頬の裏側に接触または近接するため、体温に近い出力値が得られる。それに対し、ブラシが舌側にあるときは、温度センサ18が外気に触れるため、体温よりも低い出力値が得られる。したがって、CPU120は、たとえば、温度センサ18の出力値が36度〜38度の範囲内の場合に「上顎右頬側」と判定し(S2501)、それ以外の場合に「上顎左舌側」と判定する(S2502)。同様に、温度センサ18の出力値に基づいて、「上顎左頬側」と「上顎右舌側」も判別可能である(S2503〜S2505)。下顎の処理においても同様に、温度センサ18の出力値に基づいて、「下顎左舌側」と「下顎右頬側」の判別(S2600〜S2602)、ならびに、「下顎右舌側」と「下顎左頬側」の判別(S2603〜S2605)が可能である。
以上述べたように、本実施形態では、第1実施形態よりもブラッシング部位を細かく判別することができ、より柔軟な動作モード制御を実現可能となる。
(第7実施形態)
図30は第7実施形態の電動歯ブラシのブラシ部分を示している。第6実施形態では、ブラッシング部位の同定(頬側と舌側の判別)のために温度センサ18による温度情報を利用したが、この第7実施形態では、画像情報を利用する。
図30に示すように、ブラシヘッドのy軸方向の先端に、カメラ19が設けられている。カメラ19としては、可視光カメラや赤外線カメラなど、口腔内の画像情報を取得できればどのようなカメラを利用してもよい。赤外線カメラは放射熱をモニタするもの(サーモグラフィともいう)である。ブラッシング中の口腔内は暗い可能性があるので、可視光カメラよりも赤外線カメラのほうが好ましいといえる。本実施形態では、以下に述べるように口蓋垂の輪郭がわかればよいので、カメラの分解能はそれほど高くなくてもよい。
CPU120は、第6実施形態と同様、加速度センサ15の出力に基づき「上顎左頬側または上顎右舌側」まで絞り込む(図25のS710参照)。次に、CPU120は、カメラ19から画像を取得し、その画像から口蓋垂を検出する。口蓋垂の検出には公知の画像解析技術を利用可能である。たとえば、エッジ抽出やハフ変換による口蓋垂の輪郭検出とか、パターンマッチングによる口蓋垂の検出などが考えられる。ブラシが舌側にあるときは、ブラシヘッドの先端が喉のほうに向くため、画像中に口蓋垂が写る蓋然性が高い。一方、ブラシが頬側にあるときは、画像には口蓋垂は写らない。したがって、CPU120は、口蓋垂が検出できた場合は「上顎右舌側」と判定し、口蓋垂が検出できなかった場合は「上顎左頬側」と判定する。同じようにして、「上顎左頬側」と「上顎右舌側」、「下顎左舌側」と「下顎右頬側」、「下顎右舌側」と「下顎左頬側」の判別も可能である。
以上述べたように、本実施形態では、第1実施形態よりもブラッシング部位を細かく判別することができ、より柔軟な動作モード制御を実現可能となる。
なお本実施形態では、頬側/舌側の判別だけに画像情報を利用したが、上顎/下顎の判別や、前側/右側/左側の判別などに画像情報を利用することも可能である。さらには、画像情報によりすべてのブラッシング部位を同定することも好ましい。ただし、口腔内は狭く、全体の位置関係がわかりづらいため、画像情報のみですべてのブラッシング部位を同定するよりも、加速度センサ(加速度センサおよびジャイロスコープ)による姿勢情報と併用するほうがよい。また本実施形態では、口蓋垂を検出対象としたが、口腔内の他の部位(たとえば、舌、喉、歯、歯肉など)を認識することでブラシの位置や姿勢を判定し
てもよい。たとえば画像に舌や喉が写っていたらブラシが舌側にあると判定することができる。
カメラの代わりに、ブラシ部分に光センサを設けることも好ましい。頬側は真っ暗であるのに対し、舌側では光が検出されるため、光センサの出力を解析することにより両者の判別が可能である。
(第8実施形態)
第8実施形態は、1軸の加速度センサにより姿勢検出とブラッシング部位同定を行う構成を採用する。
図31上段は、頬側または舌側の歯面をブラッシングしている状態を示している。このとき、ブラシ角(ヨー角γ)は約90度になり、重力加速度のx軸方向成分は約1gもしくは−1gとなり(正負は歯列の左右に対応する)、重力加速度のz軸方向成分はほぼ0となる。一方、図31下段は、噛み合わせ面をブラッシングしている状態を示している。このとき、ブラシ角(ヨー角γ)はほぼ0度になり、重力加速度のx軸方向成分はほぼ0となり、重力加速度のz軸方向成分は約1gもしくは−1gとなる(正負は歯列の上下に対応する)。
このような特性を利用すれば、x軸の加速度センサまたはz軸の加速度センサのみでも、「頬側または舌側の歯面」か「噛み合わせ面」かの判別や、さらには左右上下の判別も可能である。動作モードの制御としては、たとえば、「頬側または舌側の歯面」をブラッシングする際は歯肉に刺激をあたえないようブラシの駆動速度を遅くし、「噛み合わせ面」をブラッシングする際はブラシの駆動速度を速くする、などの制御が例示できる。
(第9実施形態)
第9実施形態は、加速度センサの出力とジャイロスコープの出力を相互補完することにより、姿勢情報であるブラッシング部位及びブラシ角を推定する手法である。本実施形態では、まず歯ブラシの基準位置(初期位置ともよぶ)における姿勢情報(t=0の時点のブラッシング部位とブラシ角)を求めた後、1クロックごとに加速度センサ及びジャイロスコープの出力を取り込み、1クロック前からの相対移動量や相対回転角を求めて累積加算していくことで、t=n(n>0)の時点のブラッシング部位とブラシ角を算出していく。
基準位置については、電源ONの時点の姿勢を基準位置に設定してもよいし、あるいは、使用者に基準位置(磨き始めの位置)を入力させるような仕組み(たとえば、歯ブラシ本体を水平に構えブラシを上顎前頬側に当てた状態でスイッチを押させる)を設けてもよい。
図32は、第9実施形態における姿勢情報更新処理のフローチャートである。このフローチャートは、t=nの姿勢情報(ブラッシング部位とブラシ角)と加速度センサ及びジャイロスコープの出力とから、t=n+1の姿勢情報を算出する処理を示している。以下、フローチャートに沿ってCPUの処理を説明する。
CPUは、まず加速度センサとジャイロスコープの出力を取得し(S3200)、バンドパスフィルタを用いて加速度センサの出力を静加速度成分と動加速度成分に分離する(S3201)。そして、動加速度成分の有無(S3202)とジャイロスコープ出力の有無(S3203、S3204)に従って以下のように処理を異ならせる。なお「動加速度成分あり」とは、動加速度成分の絶対値が所定の閾値よりも大きいということであり、同じく「ジャイロスコープの出力あり」とは、ジャイロスコープの出力の絶対値が所定の閾
値よりも大きいということである。
(1)動加速度成分なし、ジャイロスコープの出力なしの場合
この場合は歯ブラシの位置及び角度に変化がないため、CPUは、t=nの姿勢情報をt=n+1の姿勢情報として出力する(S3205)。なお、t=nの姿勢情報をそのまま出力するのではなく、加速度センサの静加速度成分から歯ブラシの三次元姿勢を求め、t=n+1のブラッシング部位及びブラシ角を算出してもよい。
(2)動加速度成分なし、ジャイロスコープの出力ありの場合
加速度センサのいずれかの軸が重力加速度の方向と一致した状態で、歯ブラシ本体が重力加速度方向を軸として回転した場合、加速度センサの出力は全く変化しない(静加速度成分のみ観測される)。したがって、加速度センサの出力のみで姿勢情報を算出した場合に、軸周りの回転運動を検出できず、誤差が生じる可能性がある。このような現象は、たとえば屈んだ姿勢でのブラッシングなど、歯ブラシ本体が垂直な姿勢(つまりy軸が重力加速度の方向と一致した姿勢)に陥りやすい状況で発生し得る。
そこで、加速度センサの出力に変化はないがジャイロスコープの出力に変化がある場合には、CPUは、ジャイロスコープの出力のみを用いて姿勢情報を更新する。ここで、ジャイロスコープの出力のうち有意な変化が現れるのは、重力加速度の方向と一致する軸回りの回転のみである。実際のブラッシング動作においてx軸周りの回転運動とz軸周りの回転運動が生じることはほとんどないため、本実施形態ではy軸周りの回転のみ考慮する。y軸周りの回転運動は主にブラシ角の変化を生じさせるので、CPUは、ジャイロスコープの出力からy軸周りの角度変化量Δθzxを算出し、Δθzxをt=nの時点のブラシ角に加算し、t=n+1の時点のブラシ角を求める(S3206)。
このようにジャイロスコープの情報を活用することにより、加速度センサのみでは検出できない軸周りの回転運動によるブラシ角の変化を精度よく算出することが可能となる。
なお、y軸周りの回転運動だけでなく、x軸周りやz軸周りの回転運動を考慮することも可能である。たとえばx軸周りの回転運動は主にブラシ位置の移動を生じさせる。そこで、x軸周りの角度変化量と回転中心からブラシまでの距離とからブラシ自体の移動量を算出し、それをt=nの時点のブラシ位置に加算することで、t=n+1の時点のブラシ位置を求めることができる。
(3)動加速度成分あり、ジャイロスコープの出力ありの場合
この場合、CPUは、加速度センサ出力から得られるx軸方向、y軸方向、z軸方向それぞれの動加速度成分を用いてt=n+1の時点のブラッシング部位を求める(S3207)。具体的には、CPUは、動加速度成分を二階積分することにより1クロックあたりのx軸方向、y軸方向、z軸方向それぞれの移動量を算出し、算出した移動量をt=nの時点のブラシ位置に加算することによって、t=n+1の時点のブラシ位置を求める。ブラシ位置(基準位置に対する相対位置)が分かればブラッシング部位の推定が可能となる。また、加速度センサの静加速度成分からブラッシング部位を推定し、静加速度成分からの推定結果と動加速度成分からの推定結果とを照合することにより、推定精度を向上させることも好ましい。
さらに、移動量及び移動方向の情報をブラッシング部位の絞り込みに利用することもできる。たとえば、まず、第1実施形態のブラッシング部位推定処理(図7、図8参照)と同様に、CPUが、加速度センサの静加速度成分を用いて、ブラッシング部位を「上顎前頬側」、「上顎前舌側」、「上顎噛み合わせ面」、「上顎右頬側または上顎左舌側」、「上顎左頬側または上顎右舌側」、「下顎前頬側」、「下顎前舌側」、「下顎噛み合わせ面
」、「下顎右頬側または下顎左舌側」、「下顎左頬側または下顎右舌側」のいずれかに特定する。この段階では、「上顎右頬側」と「上顎左舌側」の間の識別は困難である。同様に、「上顎左頬側」と「上顎右舌側」、「下顎右頬側」と「下顎左舌側」、「下顎左頬側」と「下顎右舌側」の識別も難しい。そこでCPUは、動加速度成分から算出した単位時間あたりのブラシの移動量(移動距離)を所定の閾値と比較することにより、ブラシの移動量を評価する。移動量が閾値を超えていた場合には、CPUは、移動の前後でブラッシング部位に変化ありと判定し、それ以外の場合はブラッシング部位に変化なしと判定する。そして、ブラッシング部位に変化ありと判定した場合、CPUは、移動前(t=nの時点)のブラッシング部位と、今回の移動量及び移動方向とから、移動後のブラッシング部位を絞り込む。たとえば、t=nの時点のブラッシング部位が右側の歯列であり、移動方向が左方向であったら、移動後のブラッシング部位は左側の歯列と特定できる。この情報により、「上顎右頬側」と「上顎左舌側」の区別等が可能となるため、ブラッシング部位のより詳細な絞り込みが可能となる。
また、ブラシ角については、加速度センサの静加速度成分から角度を算出する手法と、ジャイロスコープの出力から求めたy軸周りの角度変化量を1クロック前のブラシ角に加算することにより角度を算出する手法の2通りがある。前者の手法は、ブラシの絶対角度を算出できるという利点がある。しかし、本発明者らの検討によれば、歯ブラシ本体が水平な姿勢の場合はブラシ角の算出誤差はほとんど無いが、歯ブラシ本体の傾きが増すほどブラシ角の算出誤差が増大する、という不利がある。一方、後者の手法は、y軸周りの角度変化量を直接算出できるという利点があるが、相対角度しか算出できないために累積誤差が発生するという不利がある。
そこで、歯ブラシ本体の姿勢に応じて、前者の手法と後者の手法を切り替えることが好ましい。具体的には、y方向の加速度センサの静加速度成分の絶対値|y|を用いて、歯ブラシ本体の水平度を評価する。|y|が0Gに近づくほど、歯ブラシ本体が水平であるとみなす。CPUは、クロック毎に|y|の値を監視し、|y|が所定の閾値以上の場合(つまり水平度が小さい場合)は、ジャイロスコープの出力に基づき算出したブラシ角を出力する(S3208)。たとえば、ジャイロスコープの基準角度(1クロック前のブラシ角に等しい)が45度であり、現在のクロックのジャイロスコープの出力から算出したy軸周りの角度変化量が−15度であった場合は、ブラシ角は30度と算出される。一方、|y|が閾値より小さい場合(つまり水平度が大きい場合)は、加速度センサの出力に基づいてブラシ角を算出する(S3208)。歯ブラシ本体の水平度が高い場合、x方向の加速度センサとz方向の加速度センサの静加速度成分の絶対値は概ね以下の値をとる。
ブラシ角≒ 0度: |x|≒0、|z|≒1
ブラシ角≒45度: |x|≒|z|≒0.707
ブラシ角≒90度: |x|≒1、|z|≒0
したがって、|x|若しくは|z|、又はその両方を評価することにより、ブラシ角を算出することができる。ここでたとえば加速度センサの出力からブラシ角が30度と算出された場合には、その値を用いてジャイロスコープの基準角度が30度に校正される。これにより、累積加算による誤差を可及的に小さくすることができる。なお、ここでは|y|の値を用いて歯ブラシ本体の水平度を評価したが、|x|や|z|の値も考慮して歯ブラシ本体の水平度を評価することも好ましい。
(4)動加速度成分あり、ジャイロスコープの出力なしの場合
歯ブラシ本体が直進(並進)運動を行った場合が該当する。ただし、口腔内は狭いため、ブラッシング中の動作では(4)の状態になることは稀である。なお、(4)の場合についても、(3)の場合と同様、動加速度成分からブラッシング部位を算出することができる(S3209)。
以上述べた本実施形態の手法によれば、加速度センサの出力とジャイロスコープの出力の相互補完によって、ブラッシング部位およびブラシ角をより精度良く算出することが可能である。
(その他)
上述した実施形態の構成は本発明の一具体例を例示したものにすぎない。本発明の範囲は上記実施形態に限られるものではなく、その技術思想の範囲内で種々の変形が可能である。たとえば、上述した各実施形態の構成を互いに組み合わせることも好ましい。また、上記実施形態では、偏心分銅による振動方式の電動歯ブラシを例示したが、本発明は他の運動方式の電動歯ブラシにも適用可能である。例えば、回転往復運動や直線往復運動やブラシ毛回転運動やそれらを切り替えて組み合わせた電動歯ブラシにおいても適用可能である。その場合、ブラッシング部位に応じて運動周波数を切り替えたり、回転往復運動と直線往復運動とを切り替えることで、動作モードを切り替えることができる。また、ブラシ部に超音波振動素子を有し、ブラシの振動と超音波の両方でブラッシングを行うタイプの電動歯ブラシにも本発明を好ましく適用できる。
さらに、磁気センサなどから得られる方位情報を利用してブラシの位置を算出することも好ましい。なお、加速度センサ出力から動加速度成分を抽出するには、ハイパスフィルタなどのバンドパスフィルタを用いることができる。このとき、ブラシの振動によるノイズを除去するために、ブラシの駆動周波数に相当する100Hz〜300Hz程度の周波数成分をカットすることも好ましい。さらに、前歯に関しては、左右どちらの手で歯ブラシ本体を持つかによってブラシの姿勢が180度変わるため、使用者に利き手(歯ブラシを持つほうの手)を登録させ、登録された利き手に応じてブラッシング部位の判定アルゴリズムを変更したり、動作モード(モータ回転方向、ブラシの動き)を変更したりしてもよい。
歯ブラシ本体に、把持位置をガイド(もしくは規定)するための凹凸形状を設けるとよい。例えば、歯ブラシ本体の先端部分(使用者が歯ブラシ本体を把持した際に親指や人差し指の指先若しくは関節が触れる位置)に突起や凹みが存在すると、使用者は意識的又は無意識に指を突起や凹みに合わせるように歯ブラシを持つ。これを利用して、所定の把持状態に使用者を誘導することができる。典型的には、図3のy軸周りの角度においてブラシの向き(z軸のマイナス方向)を0度とした場合に、±約45度の位置に2つの突起(もしくは凹み)を設け、±約135度の位置に2つの凹み(もしくは突起)を設けるとよい。この凹凸に指を合わせて歯ブラシを把持すると、ブラシ角を45度に保ちやすくなる。
上記実施形態では、ブラッシング部位の同定(頬側と舌側の判別)のために温度センサ、カメラ、光センサを利用する構成を例示したが、他にも、超音波センサなどの距離センサを利用することも可能である。たとえば、図24の温度センサと同様、ブラシの背面に距離センサを設置する。頬側をブラッシングしている場合は、距離センサが頬に近接または接触するため、距離センサの測定値は非常に小さい値となる。一方、舌側をブラッシングしている場合は、距離センサが口腔内を向くため、距離センサの測定値が相対的に大きくなる。したがって、距離センサの測定値を閾値(たとえば5mm)と比較することにより、頬側か舌側かの判別が可能となる。
図1は第1実施形態の電動歯ブラシのブロック図である。 図2は第1実施形態の電動歯ブラシの内部構成を示す断面図である。 図3は電動歯ブラシの外観を示す斜視図である。 図4はブラッシング部位の区分を示す図である。 図5は第1実施形態の動作モード自動制御のメインルーチンを示すフローチャートである。 図6は第1実施形態の姿勢検出処理のフローチャートである。 図7は第1実施形態のブラッシング部位推定処理(上顎)のフローチャートである。 図8は第1実施形態のブラッシング部位推定処理(下顎)のフローチャートである。 図9は第1実施形態の動作モード切替処理のフローチャートである。 図10は上顎のブラッシング部位ごとの加速度センサ出力Ax、Ay、Azの一例を示す図である。 図11は下顎のブラッシング部位ごとの加速度センサ出力Ax、Ay、Azの一例を示す図である。 図12はモータの回転方向とブラシの動きを模式的に示す図である。 図13は第2実施形態の動作モード切替処理のフローチャートである。 図14はブラシの軌道を説明する図である。 図15はブラシ角とブラシの動きの関係を示す図である。 図16はブラシ角の変化にともなうセンサ出力の波形変化を示す図である。 図17は第3実施形態の動作モード自動制御のメインルーチンを示すフローチャートである。 図18は第3実施形態の動作モード切替処理のフローチャートである。 図19は第4実施形態の電動歯ブラシのブロック図である。 図20は第5実施形態の電動歯ブラシのブロック図である。 図21は第5実施形態の動作モード自動制御のメインルーチンを示すフローチャートである。 図22はブラシを歯に押し当てたときの歯ブラシ本体の姿勢変化を示す図である。 図23は図22の姿勢変化にともなうセンサ出力の波形変化を示す図である。 図24は第6実施形態の電動歯ブラシのブラシ部分を示す斜視図である。 図25は第6実施形態のブラッシング部位推定処理(上顎)のフローチャートである。 図26は第6実施形態のブラッシング部位推定処理(下顎)のフローチャートである。 図27は加速度センサ出力のノイズ低減について説明する図である。 図28は電動歯ブラシの姿勢角の定義を示す図である。 図29は駆動速度の変更制御について説明する図である。 図30は第7実施形態の電動歯ブラシのブラシ部分を示す斜視図である。 図31は第8実施形態の姿勢検出を説明する図である。 図32は第9実施形態の姿勢情報更新処理のフローチャートである。
符号の説明
1 電動歯ブラシ本体
2 振動部材
10 モータ
11 回転軸
12 駆動回路
13 充電池
14 コイル
15 加速度センサ
16 ジャイロスコープ
17 荷重センサ
18 温度センサ
19 カメラ
20 ステム部
21 ブラシ部品
30 偏心軸
100 充電器
120 CPU
121 メモリ
122 タイマ
202 弾性部材
203 軸受
210 ブラシ
300 重り
S スイッチ

Claims (7)

  1. ブラシと、
    前記ブラシを運動させる駆動手段と、
    前記ブラシの姿勢を検出する姿勢検出手段と、
    検出された姿勢に基づいてブラッシング部位を推定する部位推定手段と、
    推定されたブラッシング部位に応じて前記駆動手段の動作モードを切り替える制御手段と、を備えることを特徴とする電動歯ブラシ。
  2. 前記駆動手段は、回転モータを含み、
    前記制御手段は、ブラッシング部位に応じて前記回転モータの回転方向を切り替えることを特徴とする請求項1に記載の電動歯ブラシ。
  3. 前記制御手段は、ブラッシング部位に応じて前記ブラシの運動周波数を切り替えることを特徴とする請求項1または2に記載の電動歯ブラシ。
  4. 前記姿勢検出手段は、加速度センサを有し、前記加速度センサの出力に基づき前記ブラシの三次元姿勢を検出するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電動歯ブラシ。
  5. 前記姿勢検出手段は、加速度センサとジャイロスコープを有し、前記加速度センサの出力と前記ジャイロスコープの出力とに基づき、前記ブラシの三次元姿勢を検出するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電動歯ブラシ。
  6. 検出された姿勢に基づいて、歯軸に対する前記ブラシの角度であるブラシ角を推定するブラシ角推定手段をさらに備え、
    前記制御手段は、推定されたブラッシング部位とブラシ角に応じて前記駆動手段の動作モードを切り替えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電動歯ブラシ。
  7. 前記ブラシに作用する荷重を検知する荷重検知手段をさらに備え、
    前記制御手段は、前記ブラシに荷重が作用していない間は前記動作モードの切り替えを禁止することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電動歯ブラシ。
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