JP5101346B2 - 排ガス浄化触媒及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、内燃機関から排出される排ガス中に含まれるHC、CO、及びNOxを浄化するために用いられる排ガス浄化触媒及びその製造方法に関し、特に、優れた排ガス浄化性能を有する排ガス浄化触媒及びその製造方法に関する。
従来より、内燃機関から排出される排ガス中に含まれるHC(炭化水素)、CO(一酸化炭素)、及びNOx(窒素酸化物)を同時に浄化できる排ガス浄化触媒として、Pt(白金)、Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)等の貴金属が、触媒活性成分として広く用いられている。
例えば、Pdを必須成分とするペロブスカイト型構造の複合酸化物を含むように調製された排ガス浄化触媒が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この排ガス浄化触媒によれば、Pdが有する高い触媒活性を長期に亘って維持でき、優れた排ガス浄化性能を実現できるとされている。
特開2004−41866号公報
しかしながら、近年の排ガス規制の強化に対応するためには、従来の排ガス浄化触媒が有する浄化性能では十分とは言えず、さらなる浄化性能の向上が望まれている。また、Pt、Rh、Pd等の貴金属は、非常に高価な材料であることから、少ない使用量で高い浄化活性が得られるような優れた浄化性能を有する排ガス浄化触媒が求められている。
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来の排ガス浄化触媒に比して優れた排ガス浄化性能を有する排ガス浄化触媒、及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、担体としての複合酸化物粒子に対して、その中心部から表面方向に貴金属元素の含有量が漸次増加するように貴金属を傾斜担持させることにより、従来の排ガス浄化触媒に比して優れた排ガス浄化性能を有する排ガス浄化触媒が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
請求項1記載の発明は、内燃機関から排出される排ガス中に含まれるHC、CO、及びNOxを浄化するために用いられる排ガス浄化触媒であって、貴金属元素と、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及び遷移金属元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、を含む複合酸化物粒子で構成され、前記複合酸化物粒子は、中心部から表面方向に前記貴金属元素の含有量が漸次増加する傾斜構造を有することを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の排ガス浄化触媒において、前記複合酸化物粒子は、フルオライト型、ペロブスカイト型、スピネル型、ルチル型、デラフォサイト型、マグネトプランバイト型、及びイルメナイト型よりなる群から選ばれる少なくとも1種の結晶構造を有することを特徴とする。
請求項3記載の発明は、内燃機関から排出される排ガス中に含まれるHC、CO、及びNOxを浄化するために用いられる排ガス浄化触媒の製造方法であって、Bサイト欠損型複合酸化物と貴金属酸化物とを混合し、ボールミルを用いたメカノケミカル反応を行う工程を有することを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項3記載の排ガス浄化触媒の製造方法において、前記Bサイト欠損型複合酸化物として、フルオライト型、ペロブスカイト型、スピネル型、ルチル型、デラフォサイト型、マグネトプランバイト型、及びイルメナイト型よりなる群から選ばれる少なくとも1種の結晶構造を有する複合酸化物を用いることを特徴とする。
本発明によれば、従来の排ガス浄化触媒に比して優れた排ガス浄化性能を有する排ガス浄化触媒、及びその製造方法を提供できる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<排ガス浄化触媒>
本実施形態に係る排ガス浄化触媒は、内燃機関から排出される排ガス中に含まれるHC、CO、及びNOxを浄化するために用いられ、貴金属元素と、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及び遷移金属元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、を含む複合酸化物粒子から構成される。
本実施形態に係る排ガス浄化触媒を構成する複合酸化物粒子は、中心部から表面方向に貴金属元素の含有量が漸次増加する傾斜構造を有することを特徴とする。即ち、複合酸化物粒子の表面に貴金属を固溶させたものであり、複合酸化物粒子の内部よりも表面に多く貴金属が傾斜担持されている。このため、本実施形態に係る排ガス浄化触媒は、貴金属の活性点が複合酸化物粒子の内部に取り込まれて触媒活性の発揮が妨げられるということが無く、少ない貴金属量で高い活性を発揮できる。
貴金属としては特に限定されず、Pt、Rh、Pd等の貴金属が用いられる。また、複合酸化物粒子としては、フルオライト型、ペロブスカイト型、スピネル型、ルチル型、デラフォサイト型、マグネトプランバイト型、及びイルメナイト型よりなる群から選ばれる少なくとも1種の結晶構造を有するものであることが好ましい。これらの結晶構造を有する複合酸化物は、耐熱性が良好であることから、高温雰囲気下に晒された場合であっても、排ガス浄化性能に変化が生じることがほとんどない。
また、これらの結晶構造を有する複合酸化物には、Bサイト欠損型複合酸化物が含まれることから、欠損したBサイトに貴金属元素をドープすることにより、貴金属を複合酸化物に担持させることができる。さらには、後述するメカノケミカル合成法によれば、複合酸化物全体ではなく、複合酸化物粒子の表面に多くの貴金属元素をドープでき、本実施形態に係る排ガス浄化触媒を容易に得ることができる。なお、上述した通り、貴金属は複合酸化物粒子の表面に固溶された状態であることから、複合酸化物の結晶構造が変化することはなく、上記列挙した結晶構造が維持される。
<製造方法>
本実施形態に係る排ガス浄化触媒の製造方法は、Bサイト欠損型複合酸化物と貴金属酸化物とを混合し、ボールミルを用いたメカノケミカル反応を行う工程を有することを特徴とする。本実施形態に係る排ガス浄化触媒の製造方法によれば、複合酸化物粒子の中心部から表面方向に貴金属元素の含有量が漸次増加する傾斜構造を有する排ガス浄化触媒が得られる。
メカノケミカル反応とは、固体粒子を粉砕して微粒子化する過程において、微粒子化した固体粒子に、衝撃、せん断、ずり応力、摩擦等の機械的エネルギーを付与することにより生ずる反応をいう。メカノケミカル反応では、固体粒子に付与した機械的エネルギーの一部が固体粒子内に蓄積され、固体粒子の活性・反応性が高まる結果、周囲の物質と化学反応が行われる。
ボールミルは、セラミック等の硬質のボールとともに、固体粒子を容器に入れて回転させることにより、固体粒子をすり潰して微細な粉末を得る装置である。本実施形態では、従来公知のボールミルが用いられる。
本実施形態に係る排ガス浄化触媒の製造方法の一例を説明する。先ず、蒸発乾固法により複合酸化物を調製する。蒸発乾固法としては特に限定されず、従来公知の蒸発乾固法が採用される。例えば、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、遷移金属元素等の金属塩を水に溶解させた後、蒸発乾固してから予備焼成、本焼成を順次行うことにより、複合酸化物が調製される。なお、予備焼成、本焼成の焼成条件も特に限定されない。
次いで、調製した複合酸化物に、貴金属酸化物を添加して乳鉢で混合した後、ボールミルで攪拌する。攪拌時間は、30分以上であることが好ましい。攪拌後、得られた粉末を焼成することにより、本実施形態に係る排ガス浄化触媒が得られる。
本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<実施例1>
La、Sr、Mnの金属酢酸塩を水に溶解させ、蒸発乾固(La:40mol%、Sr:10mo1%、Mn:49.5mol%)させた後、350℃×2hrの予備焼成を行った。次いで、850℃×10hrの焼成を行い、La0.8Sr0.2Mn0.99のペロブスカイト型複合酸化物を調製した。
上記のようにして調製した、La0.8Sr0.2Mn0.99のペロブスカイト型複合酸化物に対し、Rh元素換算で0.5mol%となるようにRhを加えて乳鉢で混合した。次いで、遊星型ボールミルで700rpm×5hr処理した後、さらに700℃×1hrの焼成を行い、排ガス浄化触媒を得た。
<比較例1>
La、Sr、Mnの金属酢酸塩と、Rhとを水に溶解させ、蒸発乾固(La:40mol%、Sr:10mol%、Mn:49.5mol%、Rh:0.5mol%)させた後、350℃×2hrの予備焼成を行った。次いで、850℃×10hrの焼成を行い、排ガス浄化触媒を得た。
<比較例2>
比較例1で調製した複合酸化物を乳鉢で混合し、遊星型ボールミルで700rpm×5hr処理した。その後、さらに700℃×lhrの焼成を行い、排ガス浄化触媒を得た。
<比較例3>
実施例1と同様にして、La0.8Sr0.2Mn0.99のペロブスカイト型複合酸化物を調製した。このペロブスカイト型複合酸化物に対して、Rh元素換算で0.5mol%となるようにRhを加えて乳鉢で混合した後、実施例1と異なりボールミル処理することなく、700℃×1hrの焼成を行い、排ガス浄化触媒を得た。
<TPR測定評価>
実施例及び比較例で調製した各排ガス浄化触媒について、TPR(昇温還元法)測定を実施した。測定は、下記に示す手順に従って行った。測定の結果、得られたスペクトルを図1に示した。
[測定手順]
(1)He中で昇温させ、600℃×30分間保持した。
(2)Air中で600℃×30分間保持した後、35℃まで降温させた。
(3)He中で5分間保持した。
(4)5%H/N中で、5℃/分で600℃まで昇温させた。
図1に示されるように、ボールミル処理を施していない比較例3の場合には、水素消費量からRhが還元されて還元ピークが200℃以下に見られるが、実施例1のスペクトルにおいてRhの還元ピークは認められず、Rhはペロブスカイト型複合酸化物中に固溶していると考えられた。また、Mnの還元ピークが比較例では400℃前後に見られたところ、実施例1では300℃以下の低温側にシフトしていた。これは、RhによりMnイオンの還元が促進されたためであると考えられた(スピルオーバー効果)。即ち、実施例1では、ペロブスカイト型複合酸化物の粒子にRhがドープされ、且つ複合酸化物粒子の表面近傍にRhが濃縮されていると考えられた。
<X線回折測定評価>
実施例及び比較例で調製した各排ガス浄化触媒について、下記に示す測定条件に従ってX線回折測定を実施した。測定の結果、得られたスペクトルを図2に示した。
[測定条件]
装置:Rigaku社製「RINT2000」
X線:Cu−Kα
2θ:10°〜80°
スキャン速度:2°/分
図2に示されるように、ベースとなる複合酸化物(La0.8Sr0.2MnO)のX線回折スペクトルでは、La0.8Sr0.2MnOのピークのみ見られ、Rhのピークが見られないことから、実施例1、比較例1及び2いずれも、Rhがペロブスカイト型複合酸化物中にドープされていることが示唆された。
<BET比表面積測定評価>
実施例及び比較例で調製した各排ガス浄化触媒について、下記に示す測定条件に従ってBET比表面積測定を実施した。測定の結果、得られた結晶子径、比表面積を表1に示した。
[測定条件]
装置:ユアサアイオニクス(株)製「NOVA2000」
吸着ガス:N
Figure 0005101346
表1に示されるように、結晶子径及び比表面積いずれにおいても、比較例に比して実施例1が優れている因子は認められなかった。このことから、浄化性能の向上は、複合酸化物粒子の内部から表面方向にRhの含有量が増加するように傾斜担持されたことによる効果であると考えられた。
<浄化性能評価>
実施例及び比較例で調製された各排ガス浄化触媒について、図3に示すような浄化性能評価装置10を作製し、これを用いて浄化性能の評価を行った。
具体的には、以下のような条件によるCO−O反応及びNO−CO反応により、CO及びNOに対する浄化性能を評価した。
[CO−O反応]
CO(0.49質量%)−O(0.255質量%)−He(バランスガス)の反応ガスを、実施例及び比較例で調製された各排ガス浄化触媒(0.04g)に流通(W/F=0.012g・s/mL)させた。
[NO−CO反応]
NO(0.52質量%)−CO(0.49質量%)−He(バランスガス)の反応ガスを、実施例及び比較例で調製された各排ガス浄化触媒(0.04g)に流通(W/F=0.012g・s/mL)させた。
ボールミル合成法(実施例1)と、従来手法である蒸発乾固法(比較例1)、蒸発乾固法を行った後ボールミルで混合しさらに熱処理を行った場合(比較例2)とについて、昇温テストによるCO転化率(図4参照)及びNO転化率(図5参照)の比較を行った。蒸発乾固法(比較例1)と蒸発乾固+ボールミル(比較例2)とでは、浄化特性にほとんど差異が見られなかったのに対し、ボールミル合成法(実施例1)では大幅な浄化特性の向上が確認された。
実施例及び比較例のTPR測定結果を示す図である。 実施例及び比較例のX線回折スペクトル図である。 浄化性能評価装置の概略構成図である。 実施例及び比較例のCO転化率を示す図である。 実施例及び比較例のNO転化率を示す図である。
符号の説明
1 圧力調整弁
2 停止弁
3 流量調整弁
4 流量計
5 改質器
6 電気炉
7 ガスサンプラー
8 ガスクロマトグラフィー
10 浄化性能評価装置

Claims (1)

  1. 内燃機関から排出される排ガス中に含まれるHC、CO、及びNOxを浄化するために用いられる排ガス浄化触媒であって、
    貴金属元素と、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及び遷移金属元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、を含む複合酸化物粒子で構成され、
    前記複合酸化物粒子は、フルオライト型、ペロブスカイト型、スピネル型、ルチル型、デラフォサイト型、マグネトプランバイト型、及びイルメナイト型よりなる群から選ばれる少なくとも1種の結晶構造を有し且つBサイト欠損型複合酸化物を含むものであるとともに、ボールミルを用いたメカノケミカル合成法により調製されることで、表面近傍に前記貴金属元素が固溶された状態で濃縮され、中心部から表面方向に前記貴金属元素の含有量が漸次増加する傾斜構造を有することを特徴とする排ガス浄化触媒。
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