JP4716348B2 - 電波吸収材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は電波吸収材、特に、マイクロ波、ミリ波帯の電波吸収材に関し、さらに詳しくは、電波暗室の内壁に貼り付けたり、船舶航空機等の移動体に装着したり、橋梁等の構造物の外壁に貼り付けたりするほか、近年急速に拡大している無線LAN、高速道路のETCをはじめとするDSRC(狭帯路車間通信)やITS(高度交通情報システム)に関わる装置内外部に設置したり、システム周辺の構造物、例えば外壁や壁や天井や床などに使用したりして、電波障害を防止するのに使用する電波吸収体に関する。
【0002】
【従来の技術】
電波吸収体は、到来した電波を反射することなく体内に取り入れ、その体内において速やかに減衰させるものであり、そのため整合効果と吸収効果を同時に満足するよう構成されている。すなわち表面から見た規格化インピーダンスを1または可能な限り1に近くして到来電波の反射を防止し、電波を体内に取り込んで自身の電気的損失や磁気的損失を利用して吸収するのである。
【0003】
そのような電波吸収体としては、従来、フェライトや金属片などの磁性、導電粉末を混用しその混用比によって所定の電波吸収性を得るものや(例えば、特許文献1、2参照)、磁気的損失層と電気的損失層の2層効果を持つもの(例えば、特許文献3参照)など、いろいろなものが知られている。しかしながら、これら従来の電磁波吸収体は、電気的損失材や磁気的損失材を基材の中に均一になるように混合するのが非常に面倒であるため製造コストが高く、また、耐候性や強度に劣るなどの欠点がある。
【0004】
これらの問題を解決する方法として、ポリアクロニトリル繊維やピッチ系不融化繊維等を通常の炭素繊維を得る場合よりも低い500〜1,000℃で焼成してなる、いわゆる低温炭化糸や、1,300〜2,000℃で焼成したシリコンカーバイド繊維など、電気伝導率が10-6から103S/cmの半導体領域にあるような繊維を使用することで、マイクロ波帯において高い吸収効果を示し、周波数帯域が広く、耐候性や強度に優れた電波吸収体が提案されてきた(例えば、特許文献4参照)。これらは、あらかじめ前駆体のポリアクリロニトリル繊維やピッチ系不融化繊維あるいは、シリコンカーバイド繊維を織物形状などシート化しておき、それを焼成して上記半導体繊維を得るため、わざわざ損失材を混ぜる手間がいらない。しかもはじめから繊維シートの形態で作ることができ、軽量で、フレキシブルであるため曲面に巻き付けて使用したり、また樹脂に含浸して、平板状や円筒状のコンポジット形態にしたりと、非常に使いやすく、アプリケーションの幅が広い。しかしながらこれらの繊維の製造については、高度な焼成温度の制御技術が必要であり、高度な設備でのみの製造に限られている。
【0005】
【特許文献1】
特開昭51−58046号公報
【0006】
【特許文献2】
特開昭58−71698号公報
【0007】
【特許文献3】
特公昭50−4423号公報
【0008】
【特許文献4】
特開昭62−183599号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、低温炭化糸やシリコンカーバイド繊維シートに匹敵する高い吸収効果と、幅広いアプリケーションに対応する使いやすさを有する、電波吸収材を、より簡単にに安価に提供せんとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の電波吸収材は、導電性繊維の短繊維と非導電性の短繊維のみからなる繊維シートを含んで構成され、前記導電性繊維が長さ0.1〜20mm、アスペクト比(繊維長/繊維直径)5以上の炭素繊維であって、繊維シートが不織布の形態をしてなり、かつ、周波数1〜20GHzの範囲内における複素比誘電率の少なくとも1点が、その複素比誘電率の実部をεR、虚部をεJとしたとき、下記(1)〜(4)式で囲まれる領域内にあることを特徴とするものである。
(1)εR=2
(2)εR=50
(3)εJ=0.7εR 1/2
(4)εJ=6.5εR 1/2
【0011】
(1)εR=2
(2)εR=50
(3)εJ=0.7εR 1/2
(4)εJ=6.5εR 1/2
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の電波吸収材は、導電性繊維の短繊維を有する含繊維シートを含んで構成され、かつ、周波数1〜20GHzの範囲内における複素比誘電率の少なくとも1点が、その複素比誘電率の実部をεR、虚部をεJとしたとき、下記(1)〜(4)式で囲まれる領域内にあるものである。
【0013】
(1)εR=2
(2)εR=50
(3)εJ=0.7εR 1/2
(4)εJ=6.5εR 1/2
導電性繊維の短繊維としては炭素繊維、あるいは金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、鉄などの金属繊維のような繊維の1種または2種以上が用いられる。ガラス繊維やシリコンカーバイド繊維、ボロン繊維、有機高弾性繊維、ポリエステル繊維やポリアミド繊維などの合成繊維のようにそれ自身は導電性を全く有していないかあるいはほとんど有していなくてもこれらに上記のような金属をメッキ、蒸着、溶射するなどして導電性を付与した繊維を用いても良い。アクリル繊維に金属銅を染色吸塵させた日本蚕毛染色(株)のサンダーロン(R)も好ましく使用できる。
【0014】
本発明は、上記のような導電性繊維の短繊維が含まれるを有する繊維シートを、複数枚層状に積層したり、樹脂に含浸して複合化したり、ハニカム状、波板状等の嵩高い形状にしたりして、電波吸収材を構成し、周波数1〜20GHzの範囲内における複素誘電率を上記範囲内にコントロールすることを特徴とする。
【0015】
周波数が1〜20GHzの範囲内で、複素誘電率が上記範囲にコントロールされたものであると、良好な電波吸収特性を有しているといえるが、特に、対象周波数を10GHzとした複素誘電率を規定するとよい。なぜなら、10GHzの電波は波長が3cmと短すぎず長すぎないため、複素比誘電率を測定しやすく、測定精度が高い。さらに、本発明の具体的な実施態様の構成では、1〜20GHzで複素比誘電率の実数部、虚数部の値はほぼ一定であることが多く、10GHzの値を1〜20GHzの周波数の代表値として扱うこともできるためである。
【0016】
複素誘電率の実数部分εRは、通常の比誘電率に相当する項で、あまり小さいと電波を吸収材内部へ取り込んだ波長の圧縮が小さいため電波を効率よく減衰させることができない。かといって大きいと電波を表面反射してしまうので、効率的に内部へ取り込み、吸収するためには、2〜50の範囲にあることが必要である。
【0017】
複素誘電率の虚数部分εJは、電気的損失に起因する項であり、この項によって電波エネルギーが熱エネルギーに変換され電波は減衰を受ける。εJは、εRの平方根に0.7〜6.5の係数を掛けた範囲にあることが必要である。あまり小さいと電波の減衰が小さく、大きすぎると表面反射が大きくなり、それを避けるため、電波吸収材を非常に薄くしなければならず、かえって厚みのコントロールを難しくしてしまう。
【0018】
導電性繊維は、特別な処理を施さなくてもそれ自身で導電性を有し、かつ高強度、高弾性、しかも比重が小さいという優れた特長を有する炭素繊維が好ましく用いられる。さらに、炭素繊維は、炭素繊維の長繊維織物の製造工程で排出され、従来は産業廃棄物として処理されてきた不要な長繊維を切断し、短繊維としたものを利用することもできる。上記のような炭素繊維の短繊維は、長さ0.1〜20mm、アスペクト比(繊維長/繊維直径)5以上を有しているのが好ましい。繊維長があまり短かすぎたり、アスペクト比が小さすぎたりすると、繊維同士が重なりにくくなって接点の数が減少するようになり、接点の減少を補おうとして使用量を増やすと製造コストが高くなる。また、平均繊維長が長くなると、一見、繊維同士の重なり合いが多くなって使用量が少なくてすむように思えるが、逆に折れやすくなるのでそれほど少量化できるわけでもない
導電繊維の短繊維を含んでいれば、非導電性の短繊維を含んでいても良い。その割合は、導電性短繊維が非導電性の短繊維100重量部に対して0.1〜10重量部であるのが好ましい。非導電性繊維も導電性繊維と類似の形状であれば、導電性繊維を均一に配位しやすくするばかりか、両者の割合により電気的損失をコントロールすることもできる。その場合、導電性繊維があまり少なすぎたり多すぎたりするとどちらかの均一性が低下し、電波吸収性にばらつきを生じやすくなる。このような構成にすることで、本発明の範囲の複素誘電率をもつ良好な電波吸収体を得やすくなる。また、混合する繊維材料の剛性や強度などの諸特性も反映させることができる。
【0019】
非導電性繊維は、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、およびポリパラフェニレンベンゾビスオキザゾール繊維から選ばれる少なくとも1種の短繊維であることが好ましい。これらの繊維は強度や難燃性に優れている。特に、繊維が樹脂と併用して使用される場合、芳香族ポリアミド繊維の1種であり、パラ系アラミド繊維である「ケブラー(R)」は高強度、高弾性であるために樹脂の補強効果が大きく特に好ましく使用される。またポリ乳酸繊維などの生分解繊維も、環境負荷を軽減させるために好ましく使用される。
【0020】
導電性繊維の短繊維を有する繊維シートの形態としては、導電性繊維の短繊維と非導電性短繊維を混合した紡績糸を織物や編物とすることや、両繊維を混合して不織布とすることが挙げられる。しかし、より安価に製造するためには、不織布の形態をしているものが特に好ましい。不織布は短繊維が均一にシート状に分散されてなる形態のものであれば特に制約はされないが、導電性繊維ができるだけランダムに、均一に分散されているのが好ましい。また、ここでいう不織布には紙も含まれる。不織布の製造方法としては、短繊維を混合しシート状に並べた後、ニードルパンチで繊維同士を交絡させたりする方法や、短繊維を水中で混合し、抄紙する方法などいずれの方法も好ましく使用される。必要に応じて、水酸化アルミニウム等の無機結合材や、澱粉、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、パラフィン、アクリル繊維等の有機結合材を添加してもよい。
【0021】
また、電波吸収材は電子部品周辺用途として使用される場合も多いため、好ましくは 不織布は、機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験UL−94安全規格に定める難燃規格V−0,1またはVTM−0,1を満足しているものが好ましい。
【0022】
上記難燃規格を満足するためには、導電性繊維以外の繊維成分が、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維などの難燃性繊維であるのが好ましい。しかし、導電性繊維以外の繊維成分が非難燃性のポリエステル繊維などの場合であっても、難燃剤を含む樹脂混合物を、不織布に含浸などして付与しても良い。難燃剤は環境負荷の大きいハロゲン元素を含まないものであるのが好ましく、縮合燐酸エステル、燐酸エステル、芳香族ジフォスフェート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムおよび赤リンから選ばれる少なくとも一種であるのが、添加量が少なくても高い効果が得られるため好ましい。
【0023】
不織布の製造方法の中でも、湿式抄紙は一度に大量の不織布が安価に製造できる有効な方法の1つである。この際、きれいに巻き取るためには、繊維同士を絡みやすくする「つなぎ」の役割をするパルプ成分を添加するのが好ましい。パルプ成分はセルロース系や合成繊維系などいずれも使用することができる。難燃性が必要な場合は、難燃性パルプであるのが好ましい。なかでも芳香族ポリアミド繊維である、パラ系アラミド繊維の「ケブラー(R)」やメタ系アラミド繊維の「ノーメックス(R)」のパルプは、パルプ形態を有しながらそれぞれの繊維の特性も併せ持つ優れた材料である。
【0024】
難燃性パルプは10〜30%の範囲内で含んでいると、不織布の仕上がりが良く好ましい。
【0025】
また、不織布の電気伝導率は1S/cm以下であるのが好ましい。不織布の電気伝導率は導電性繊維の分散状態により若干変動することがあるが、この範囲の電気伝導率を持つものが吸収量が飛躍的に大きくなる傾向がある。
【0026】
不織布の目付は50〜200g/m2の範囲内にあるのが好ましい。また、厚みは50μm〜300μmの範囲内にあるのが望ましい。電波の吸収にはある程度厚みを要するため、不織布を複数枚、層状に配置するなどして使用しても良い。しかし、1枚当たりの目付が小さすぎると何枚も大量に積層しなければならず手間がかかり、逆に目付が大きすぎると重くなり、取り扱いが難しくなるため、使いやすさの面から、この範囲にあることが好ましい。
【0027】
既に述べたように不織布に樹脂が複合され、成形されていることも好ましい。繊維による樹脂の補強効果が期待できるためである。樹脂は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビスマレイミド樹脂等の熱硬化性樹脂やポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリ乳酸樹脂等の熱可塑性樹脂など好ましく使用することができる。耐熱性を必要とする用途には、ポリイミド樹脂やポリビスマレイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂を用いるのが好ましい。
【0028】
電波吸収材の厚みは好ましくは厚みが1〜30mmの範囲内にあるのがマイクロ波帯域で吸収をもつためには好ましい。
【0029】
一方、電波吸収材の外観が平面でなくても良い使用場所、たとえば、電波暗室やOA室の内装のような所では、上述の不織布をフィルターユニットに使用されるようなハニカム状や、波板状、ピラミッド状の立体形状にすることによって、内部反射によって電波が吸収されるような構造にし、少ない不織布の使用量で高い電波吸収効果を得ることができる。立体形状にする方法には特に制約はなく、立体形状に組み立てやすくするため、不織布にエンボス加工を施し折り目を付ける方法などもこれに含まれる。
【0030】
本発明による電波吸収材は、1層型電波吸収体としてのみでなく、電波が入射する方向に整合層を設け2層型電波吸収体の吸収層としても好ましく使用される。
【0031】
整合層は対象周波数として1〜20GHzの範囲内、特に10GHzにおける複素比誘電率が、その複素比誘電率の実部をεR、虚部をεJとしたときεR=3〜5εJ≦0.2の範囲内であるのが好ましい。このような整合層を設け2層型電波吸収体とすることで、1層型電波吸収体に比べ、特にマイクロ波帯における吸収帯域幅がさらに広く、かつ、その吸収帯域における吸収が比較的広い電波吸収体を提供することができる。
【0032】
整合層は、織物、編物および不織布から選ばれる少なくとも1種の布帛を含んでいるのが好ましい。布帛そのものを吸収層と積層しても良いし、樹脂中に布帛を含んだものを積層しても吸収効果には差し支えない。
【0033】
布帛は、難燃性が必要とされる場合等には、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維から選ばれる少なくとも1種の繊維を含んでいるのがより好ましい。また、環境負荷を軽減させるためにポリ乳酸繊維を使用するのも好ましい。
【0034】
整合層の厚みはマイクロ波帯域で広い吸収幅をもつためには、厚みが1〜20mmの範囲内にあるのが好ましい。
【0035】
上記の電波吸収材または電波吸収体は、それぞれ単独でも好ましく使用されるが、導電性を有する基材の少なくとも一面に電波吸収材または電波吸収体を有することによって、吸収性能のみならず遮蔽性能を併せ持つさらに優れた電波遮蔽構造体を作ることができる。
【0036】
電波吸収材または電波吸収体を基材の片面に有する場合、一方向からの電波吸収、遮蔽が可能となるが、両面に有する場合は両方向からの電波吸収、遮蔽が可能となり、両側の干渉を減少させることができるので、病院やオフィスの衝立などの用途に特に好ましく使用できる。
【0037】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例および比較例に示す性能値は次の方法で測定した。
<複素誘電率>
方形導波管を用い、Sパラメータ法により複素誘電率を求めた。Sパラメータ法とは、伝送線路の途中に挿入した試料の反射(S11)と透過(S21)をネットワークアナライザで測定して複素誘電率を求める方法である。
【0038】
方形導波管は、(株)関東電子応用開発製 Sパラメータ法による誘電率測定用サンプルホルダを、ネットワークアナライザはアジレント・テクノロジー(株)製を用いた。
【0039】
<反射損失>
大きさ30cm×30cmで1mm厚さのアルミ板に垂直に電波を当てた時の反射レベルを測定した後、同面積のサンプルに電波を当て、両者の差から反射損失(dB)を測定した。反射損失の測定は、上記ネットワークアナライザの透過(S21)で測定した。
【0040】
実施例1
ポリアクリロニトリル系を原料とする繊維長が12mm、繊維直径が7μmの炭素繊維の短繊維、繊維長が13mm、直径が7μmのガラスチョップ糸および平均繊維長が0.7mmのノーメックス(R)パルプを、それぞれの重量比が1重量%、79重量%、20重量%になるよう混合し、湿式抄紙した。得られた混抄紙の電気伝導率は3.3×10-3S/cm以下、厚さは0.5mm、目付は100g/m2、また、この混抄紙は難燃規格V−0を満足していた。
【0041】
上記混抄紙に常温硬化型エポキシ樹脂を含浸して3層を積層し、周波数10GHzにおける複素誘電率が18−4jである複合材料板を得た。得られた複合材料板の厚みは1.8mmであった。この複合材料板の1、5、15、20GHzにおける複素比誘電率も測定し、表1に示した。
【0042】
次に、この板を吸収層とし、裏面に反射層として1mm厚のアルミ板を貼り付けて電波吸収体とした。上記吸収体について7〜13GHzにおける反射損失を測定した。結果を図1に示す。
【0043】
実施例2
実施例1と同様の炭素繊維の短繊維、ガラスチョップ糸およびノーメックス(R)パルプ(デュポン社製)を、それぞれの重量比が3重量%、77重量%、20重量%になるように混合し、湿式抄紙した。得られた混抄紙の電気伝導率は3.3×10-3S/cm以下、厚さは0.5mm、目付は100g/m2であった。また、この混抄紙は難燃規格V−0を満足していた。
【0044】
上記混抄紙に常温硬化型エポキシ樹脂を含浸して2層を積層し、周波数10GHzにおける複素誘電率が19−24jである複合材料板(A)を得た。得られた複合材料板(A)の厚みは1.2mmであった。また、この複合材料板(A)の1、5、15、20GHzにおける複素比誘電率も測定し、表1に示した。
【0045】
次にアラミド繊維ケブラー(R)織物(平織り、目付460g/m2)に常温硬化型エポキシ樹脂を含浸して6層を積層し、周波数10GHzにおける複素誘電率が4−0.1jである複合材料板(B)を得た。得られた複合材料板(B)の厚みは2.6mmであった。
【0046】
次に反射層となる厚み1mmのアルミ板の上に電波吸収層となる複合材料板(A)、さらにその上に整合層となる複合材料板(B)を接着剤で接合し、電波吸収体とした。上記吸収体について7〜13GHzにおける反射損失を測定した。結果を図2に示す。
【0047】
実施例3
実施例1と同様の炭素繊維の短繊維、繊維長6mmのケブラー(R)チョップ糸(東レデュポン社製)および平均繊維長0.7mmのノーメックスパルプ(R)(デュポン社製)をそれぞれの重量比が0.4重量%、79.6重量%、20重量%になるように混合し、湿式抄紙した。得られた混抄紙の電気伝導率は3.3×10-3S/cm以下、厚さは0.5mm、目付は100g/m2であった。上記シートを6枚を接着剤で接合し、10GHzにおける複素比誘電率が25−28jである繊維シート板(C)を得た。また、この繊維シート板(C)の1、5、15、20GHzにおける複素比誘電率も測定し、表1に示した。得られた繊維シート板の厚みは1mmであった。
【0048】
次にガラス繊維織物(平織り、目付430g/m2)に常温硬化型エポキシ樹脂を含浸して周波数10GHzにおける複素誘電率が5−0.1jである複合材料板(D)を得た。
【0049】
次に反射層となる厚み1mmのアルミ板の上に電波吸収層となる繊維シート板(C)、さらにその上に整合層となる複合材料板(D)を接着剤で接合し、電波吸収体とした。上記吸収体について7〜13GHzにおける反射損失を測定した。結果を図3に示す。
【0050】
比較例1
実施例1の炭素繊維の短繊維100%で不織布を得た。この不織布の電気伝導率は102S/cm厚さは0.5mm、目付は100g/m2であった。上記不織布に常温硬化型エポキシ樹脂を含浸して3層を積層し、周波数10GHzにおける複素誘電率が90−70jである複合材料板を得た。また、この複合材料板の1、5、15、20GHzにおける複素比誘電率も測定し、表1に示した。得られた複合材料板の厚みは1.8mmである。次にこの板を吸収層とし、裏面に反射層として1mm厚のアルミ板を貼り付けて電波吸収体とした。上記吸収体について7〜13GHzにおける反射損失を測定した。結果を図4に示す。
【0051】
比較例2
実施例1のガラスチョップ糸、ノーメックス(R)パルプを、それぞれの重量比が80重量%、20重量%になるよう混合し、湿式抄紙した。得られた混抄紙の電気伝導率は10-3S/cm以下、厚さは0.5mm、目付は100g/m2、10GHzにおける透過減衰量は0dBであった。上記混抄紙にエポキシ樹脂を含浸して3層を積層し、周波数10GHzにおける複素誘電率が5−0.01jである複合材料板を得た。また、この複合材料板の1、5、15、20GHzにおける複素比誘電率も測定し、表1に示した。得られた複合材料板の厚みは1.8mmである。
【0052】
次にこの板を吸収層とし、裏面に反射層として1mm厚のアルミ板を貼り付けて電波吸収体とした。上記吸収体について7〜13GHzにおける反射損失を測定した。結果を図5に示す。
【0053】
【表1】
Figure 0004716348
【0054】
これらの結果、実施例は比較例に対し、マイクロ波領域において高い電波吸収効果が得られ、しかもその帯域幅は広いといえる。
【0055】
【発明の効果】
本発明によると、導電性繊維の短繊維を有する繊維シートを含んで構成され、電波吸収に適切な複素誘電率にコントロールでき、繊維シートであるため使いやすく、アプリケーションの幅が広い電波吸収材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1に係る電波吸収体の反射損失の測定結果である。
【図2】実施例2に係る電波吸収体の反射損失の測定結果である。
【図3】実施例3に係る電波吸収体の反射損失の測定結果である。
【図4】比較例1に係る電波吸収体の反射損失の測定結果である。
【図5】比較例2に係る電波吸収体の反射損失の測定結果である。

Claims (20)

  1. 導電性繊維の短繊維と非導電性の短繊維のみからなる繊維シートを含んで構成され、前記導電性繊維が長さ0.1〜20mm、アスペクト比(繊維長/繊維直径)5以上の炭素繊維であって、繊維シートが不織布の形態をしてなり、かつ、周波数1〜20GHzの範囲内における複素比誘電率の少なくとも1点が、その複素比誘電率の実部をεR、虚部をεJとしたとき、下記(1)〜(4)式で囲まれる領域内にある電波吸収材。
    (1)εR=2
    (2)εR=50
    (3)εJ=0.7εR 1/2
    (4)εJ=6.5εR 1/2
  2. 周波数10GHzにおける複素比誘電率が、その複素比誘電率の実部をεR、虚部をεJとしたとき、下記(1)〜(4)式で囲まれる領域内にある請求項1に記載の電波吸収材。
    (1)εR=2
    (2)εR=50
    (3)εJ=0.7εR 1/2
    (4)εJ=6.5εR 1/2
  3. 導電性繊維と非導電性の短繊維を含み、かつ導電性繊維が非導電性繊維100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲内で含まれる、請求項1または2のいずれかに記載の電波吸収材。
  4. 非導電性の短繊維が、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、およびポリパラフェニレンベンゾビスオキザゾール繊維、ポリ乳酸繊維から選ばれる少なくとも1種の短繊維である、請求項3に記載の電波吸収材。
  5. 繊維シートが不織布からなるものであって、前記不織布は、機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験UL−94安全規格に定める難燃規格V−0,1またはVTM−0,1を満足している、請求項に記載の電波吸収材。
  6. 繊維シートが不織布からなるものであって、非導電性の短繊維として難燃性パルプを含んでいる、請求項に記載の電波吸収材。
  7. 難燃性パルプは、芳香族ポリアミドパルプから選ばれる少なくとも1種のパルプである、請求項6に記載の電波吸収材。
  8. 不織布が、難燃性パルプを10〜30重量%の範囲内で含んでいる、請求項6または7に記載の電波吸収材。
  9. 不織布は、電気伝導率が1S/cm以下である、請求項5〜8のいずれかに記載の電波吸収材。
  10. 不織布は、目付が50〜200g/m2の範囲内にある、請求項5〜9のいずれかに記載の電波吸収材。
  11. 不織布は、その不織布の複数枚が層状に配置されている、請求項5〜10のいずれかに記載の電波吸収材。
  12. 樹脂が複合され、成形されている、請求項1〜11のいずれかに記載の電波吸収材。
  13. 厚みが1〜30mmの範囲内にある、請求項1〜12のいずれかに記載の電波吸収材。
  14. ハニカム状、波板状、ピラミッド状等の立体形状から選ばれる形状をしている、請求項1〜13のいずれかに記載の電波吸収材。
  15. 請求項1〜14のいずれかに記載の電波吸収材を有する電波吸収体。
  16. 電波吸収材の少なくとも一面に、対象周波数における複素比誘電率が、その複素比誘電率の実部をεR、虚部をεJとしたときεR=3〜5εJ≦0.2の範囲内にある整合層を有している、請求項15に記載の電波吸収体。
  17. 整合層は、織物、編物および不織布から選ばれる少なくとも1種の布帛を含んでいる、請求項16に記載の電波吸収体。
  18. 布帛は、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維、およびポリフェニレンサルファイド繊維、ポリ乳酸繊維から選ばれる少なくとも1種の繊維を含んでいる、請求項17に記載の電波吸収体。
  19. 整合層は、厚みが1〜20mmの範囲内にある、請求項16〜18のいずれかに記載の電波吸収体。
  20. 導電性を有する基材の少なくとも一面に、請求項1〜14のいずれかに記載の電波吸収材または請求項15〜19のいずれかに記載の電波吸収体を有する電波遮蔽構造体。
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