JP4671941B2 - レーザー印字用積層体 - Google Patents

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Description

本発明はレーザー光によって印字を行うレーザー印字用積層体に関し、詳しくは、基材に貼付後、高温条件下での長時間の使用に耐え、貼り作業性も良好で、かつ剥離後再利用が不可能なラベルに使用されるレーザー印字用積層体に関するものである。
製品の管理や品質保証の目的で、製造番号や賞味期限等の個別情報を印字したラベルやシート等を個々の製品に貼り付けることは広く行われている。
該ラベル・シートへの印字方法としては、例えば液状のインクを版により印刷する方法、インクリボンを用いて熱転写によりインクを印刷する方法、インクジェットプリンターを用いてインクを印刷する方法などが利用されているが、多数の製品にそれぞれ個別に異なった情報を印刷するのは、前述の方法では煩雑で困難なものであった。
そこで、基材の表面層と下地層に、レーザー光を吸収し、発熱・破壊されて除かれる得る隠蔽層とを容易に視認できる明度差を有する異なる色の組み合わせとして設け、表面からレーザー光を出力調整して照射し、文字などのパターンに隠蔽層を除くように照射することにより下地層の色彩の所望の印字を行うことができるレーザー印字用積層体が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
一方、シリアル番号等を入れたレーザー印字ラベルは、機械、自動車部品等の認証ラベル、許認可ラベル等にも利用されるが、ラベルが使用される場所がエンジンルーム内などであると使用温度が50℃以上にも上昇することもある。
また、熱帯地方や砂漠地帯などで乗用される自動車等においても、車内外の各所に貼着される認証ラベル等は、強烈な直射日光にさらされたり、過酷な温度環境におかれたりするものが多い。
通常のレーザー印字ラベルをそのような過酷な温度条件で使用するとクラックが発生したり、カールが起こったりして、自動車等の耐用期間を待たずして破壊するというトラブルが発生している。
一般のラベルをレーザー印字積層体として積層体として使用することも試みられたが、印字性やハンドリング性が不十分で実用に供することができなかった。
また、一般に使用されているポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂 等の耐熱性樹脂を着色樹脂層としてレーザー印字用積層ラベルを構成する1つの層として設ける方法も考えられるが、従来知られている耐熱性樹脂の多くは、固く脆い樹脂層であって、たとえば自動車・二輪車の車体や機械部品の表面の凹凸ある曲面に貼り付けるラベルとして使用する場合に可撓性が不足しており、端部が浮き上がるといった不具合が発生した。
本発明者らは特願2005−204898号(特許文献4:未公開)において着色樹脂層、グリコール化合物を含む架橋アクリル系樹脂からなる着色破壊層、接着剤層からなるレーザー印字可能な積層体であって曲面に貼り付け可能でかつ脆質性を有する積層体を提案した。しかしながら該積層体は、柔らかく適度のコシがないために、ラベル化して基材へ貼り付ける際に作業性が悪いという問題が発生した。
特開平09−123606号公報 特開平09−123607号公報 特願2005−204898号公報
本発明が解決しようとする課題は、明瞭な印字が可能なレーザー印字用積層体であって、砂漠や熱帯地方等の過酷な温度条件に長時間さらされてもクラック等の外観不良が発生せず、貼付け作業性も良いレーザー印字用積層体を提供することにある。
本発明者らは、
(A)厚さ10−30μmであって、アクリル系樹脂からなり、引張破断伸度が5%未満であって、積層体を基材に接着したとき最外層となる着色層、
(B)厚さ30−60μmであって、前記着色層に積層され、着色層と視認可能な色差を有し、アクリル系樹脂からなり引張破断伸度が15%以上である支持層、
(C)厚さ20−150μmであって、前記支持層に積層され、アクリル系樹脂からなり、引張破断伸度が10%未満である破壊層、
を有した積層体であって、厚さ100μm−200μmであるアクリル系積層体により、前記課題を解決した。
本発明の積層体は、着色層をレーザー光照射により所望の形に破壊して除去することにより、除去部分では支持層の色が視認され、所望の印字や画像を発現することができる。
本発明の積層体は、過酷な温度条件に長時間さらされてもクラック等の外観不良が発生せず、剥がれ落ちず、曲面等に追随して貼付可能であり、特にラベル化した時の貼付作業性が良好でかつ剥離後再利用が不可能なレーザー印字用積層体である。
以下に本発明の積層体を詳細に説明する。
本発明の積層体は、レーザー光の吸収能を有する着色層に、レーザー光を出力調整して集光し、文字などのパターン状に照射することにより、照射された部分を発熱・溶融・ミスト化、或いは、発熱・分解・灰化し、パターン状に除去し、除去部分に支持層または破壊層の色を発現させるものであり、色の異なる層を有する積層体である。
本発明の積層体は、積層体表面にレーザー光照射により除かれ得る着色層が存在する。着色層はアクリル系樹脂に着色剤を加えた着色樹脂を公知の方法で、所定厚みで支持層の上に積層または、塗工すること等により形成される。
本発明で用いられる着色層を構成する樹脂は、アミノ樹脂系架橋剤で架橋された架橋アクリル系樹脂が好ましい。ここで言う架橋アクリル系樹脂とは官能基を有するアクリル系樹脂を架橋剤等により架橋した樹脂である。アクリル系樹脂とは、アクリルモノマーまたはメタクリルモノマーの重合によって製造される樹脂を主成分とする樹脂であり、主成分とするとは、アクリル系樹脂を樹脂成分の50%以上含有する樹脂を意味する。
アクリルモノマーとしては例えば、アクリル酸エステル、アクリル酸メチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどをモノマーとして共重合した樹脂を挙げることができ、また、上記メタクリル酸モノマーとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコ−ルジメタクリレ−ト などを挙げることができ、官能基としては、水酸基、メルカプト基、エポキシ基、アミド基、メチロール化アクリルアミド基等が挙げられる。
前記樹脂の中でも、架橋剤との混合後のポットライフ、架橋後の引張破断伸度の制御の点から、官能基として水酸基を持つモノマーを共重合させた樹脂が好ましく、架橋後の樹脂の硬さを考慮するとメタクリル酸メチル(MMA)をモノマーとして共重合した樹脂も好適である。
本願発明の着色層の架橋剤として、アミノ樹脂系架橋剤が使用される。アミノ樹脂系架橋剤としてはメラミン系、グアナミン系、尿素系架橋剤等があるが、耐熱性、架橋後の引張破断伸度の制御等の物性を考慮してメラミン系架橋剤が好適に使用できる。
架橋剤は、樹脂の反応性官能基に対して 0.5〜1.5当量、好ましくは 0.8〜1.2当量使用される。
、着色層の厚さは10〜30μm、好ましくは10〜20μmである。 厚さが10μm以上あれば、十分な隠蔽性をもつことができ、30μm未満であれば、レーザー光照射により、照射部分を完全に取り除くことができる。
また、上記着色層の顔料含有率は、1〜300重量%、好ましくは5〜250重量%、より好ましくは8〜200重量%の着色剤を含有しているのが良い。顔料含有率が1重量%未満であれば、一般的に隠蔽性が低く背面とのコントラストが付き難く、また、300重量%以上であれば着色剤層が脆くなりすぎて、曲面に貼り付けると着色剤層にクラックが発生することがある。
本発明の着色層及び後述する支持層、破壊層に用いられる着色剤は、特に制限されるものではないが、レーザー光照射によって除去可能かつ長期間使用可能な耐候性、耐久性のある着色剤が好ましく、具体的には、The Society of Dyers and Colourists社出版による、Colour Index 3rd
Edition(1971)及びSupplements(1975)に掲載されている着色剤から選ぶことができる。以下に示す着色剤名は同書規定のColour Index
Generic Nameによる。例えば、Bk-1はC.I.Pigment Black1を意味し、Bkは黒色(Black)、Wは白
色(White)を表している。
上記着色剤の色としては、黄色、橙色、赤色、紫色、青色、緑色、茶色、黒色及び白色等いずれの色調のものでも用いることができるが。通常黒色または白色が使用される。好ましい着色剤を具体的に例示する。
上記黒色系の好ましい顔料としては、有機系顔料、無機系顔料があり、有機系の好ましい顔料としては、例えば、アニリンブラック(Bk-1)、ペリレンブラック(Bk-31)等を挙げることができ、
また、無機系の好ましい顔料としては、例えば、カ−ボンブラック(Bk-31)、 カ−ボンブラック(Bk-7)、カ−ボンブラック(Bk-9)、鉄黒(Bk-11)、コバルト酸 化物系顔料(Bk-13)等を挙げることができる。
中でも、好ましい顔料は非晶質又はグラファイトの形態のカーボンブラック(黒色)等である。カーボンブラックの好ましい平均粒径は10〜500nmの範囲であり、特に好ましくは15〜120nmの範囲であって、微細な平均粒径の種々の市販の型のカーボンブラックを用いることができる。
また、白色系の好ましい顔料としては、無機系の顔料が好ましく、例えば、亜鉛華(W-4)、硫化亜鉛(W-7)、二酸化チタン(W-6)、炭酸カルシウム(W-18)、クレ −(W-19)、硫酸バリウム(W-21)、アルミナホワイト(W-24)、シリカ(W-27)、白雲母(W-20)、タンク(W-26)等を挙げることができる。
中でも、好ましい顔料はルチル型酸化チタン(白色)である。酸化チタンの好ましい平均粒径は10〜500nmの範囲であり、特に好ましくは20〜100nmの範囲であって、微細な平均粒径の種々の市販の型の酸化チタンを用いることができる。
また、上記着色層は、上記顔料の他、その着色性、耐候性に影響のない範囲で、マイカ、アルミ粉を含有させることができる。
カーボンブラックや酸化チタンが用いられる場合は、着色剤はそれ自身レーザー光を熱に変換する化合物となりうる。しかし、着色剤がレーザー光に関して吸収性でない場合、レーザー光を熱に変換するための化合物が必要な場合もあり、そのような場合は、顔料の混合物、あるいは1種又はそれ以上の顔料とレーザー光を熱に変換することができる1種又はそれ以上の化合物との混合物を用いることもできる。
レーザー光を熱に変換するための化合物としては、カーボンブラックやシアニン系、フタロシアニン系、無機系などの赤外線吸収剤等があげられる。
本発明の積層体は、前記着色層に積層され、着色層と視認可能な色差を有し、アクリル系樹脂からなる支持層を有する。支持層は架橋アクリル系樹脂からなることが好ましく、アクリル系樹脂としては前述した着色層に用いられる樹脂と同様の樹脂が用いられるが、引張破断伸度が15%以上の可撓性が必要であり、架橋剤や添加剤は着色層と異なる。
支持層のアクリル系樹脂の架橋に使用される架橋剤としては、架橋後の柔軟性を考慮すると、イソシアネート系架橋剤が特に好ましく、脂肪族系イソシアネート又は脂環式系イソシアネートが特に好ましい。
具体的には、例えば、トランスシクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、4,4'-ジシクロヘキシルブタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11-ウンデカトリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリメチルヘキシサメチレンジイソシアネート等である。
架橋剤は、支持層樹脂の官能基当量に対して0.1〜1.3当量、好ましくは0.2〜1.0当量使用される。架橋剤量が多すぎると可撓性が損なわれ、少なすぎると耐熱性、耐久性が損なわれる。
上記支持層は着色層と視認可能な色に着色されるが、前述した着色層に使用可能な顔料が同様に使用できる。支持層の顔料含有率は、10〜500重量%、好ましくは30〜300重量%、より好ましくは40〜250重量%の着色剤を含有しているのが良い。顔料含有率が10重量%未満であれば隠蔽性を確保することが不可能であり、また、500重量%以上であればフィルムとして保持することが不可能である。
支持層にはその可撓性を保持するため、柔軟性付与剤としてグリコール化合物を使用するこができる。グリコール化合物とはジオールの縮合化合物のことであり、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール等、ポリマーとしては、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチルグリコール(PTMG)、THF−ネオペンチルグリコール共重合体(旭化成(株)製PTXG)等が挙げられ、グリコール自身の揮発性、添加量あたりの柔軟性の付与度、耐水性の点からポリマータイプのグリコール化合物が好ましく入手のし易さ、価格を考慮すればポリテトラメチルグリコールが特に好ましい。
グリコール化合物は樹脂組成物に対して1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%、特に好ましくは3〜6重量%含有してもよい。
グリコール化合物が1重量%以下であれば貼付作業時に曲げただけでフィルムにクラックが入る可能性があり、10重量%以上であればフィルムが破断せず、一旦貼り付けたラベル等の剥離が可能となる。
支持層の厚さは30〜60μm、好ましくは40〜50μmである。 厚さが30μm以上あれば、積層体に十分な可撓性を付与することができ、60μm以下であれば、十分な剥離時の破壊性を付与できる。
本発明の積層体は、前記支持層に積層され、アクリル系樹脂からなる破壊層を有する。破壊層は架橋アクリル系樹脂からなることが好ましく、アクリル系樹脂としては前述した着色層に用いられる樹脂と同様の樹脂が用いられる。
該破壊層は架橋により、あるいは後述する脆性付与成分の添加により脆性が付与された樹脂によって形成され、その引張破断伸度が10%未満であることが必要である。
破壊層のアクリル系樹脂の架橋に使用される架橋剤としては、メラミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、ポリアミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤等が挙げられ、耐熱性、架橋後の硬さの制御等の物性を考慮すると、前記引引張破断伸度を満足する範囲で、メラミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤が好ましく使用できる。
着色層に使用される前記メラミン系架橋剤、支持層に使用される前記イソシアネート系架橋剤を前記引張破断伸度を満足する範囲で、適宜使用することができる。
架橋剤は、破壊層樹脂の官能基当量に対して0.1〜1.5当量、好ましくは0.2〜1.3当量、特に好ましくは0.3〜1.2当量使用される。架橋剤が多すぎると脆くなりすぎて作業性が損なわれ、少なすぎると破壊しにくくなる。
破壊層には、脆性を付与する成分を添加することも好ましい。
脆性を付与する成分としては、ガラスビーズ、シリカ、炭酸カルシウム等の無機粒子;アクリルビーズ、スチレンビーズ、シリコーンビーズ等の有機粒子;等が使用可能であるが、粒径の分布の狭さの点からガラスビーズ、アクリルビーズ、スチレンビーズ、シリコーンビーズが好ましく、耐熱性を考慮すればガラスビーズ、アクリルビーズが最も好ましい。
脆性付与成分として無機粒子あるいは有機粒子を使用する場合の平均粒子径は脆質層の厚み以下である必要があり1〜150μm、好ましくは5〜100μm、特に好ましくは10〜80μmである。
粒子径が1μm以下であれば脆性を付与することが不可能であり、150μm以上であれば貼り付け作業時にクラックが入りやすくなる。
前記脆性付与成分の含有率は、樹脂に対して10〜280体積%、好ましくは10〜200体積%、特に好ましくは30〜100体積%である。
脆性付与成分が10体積%以下であれば脆質付与効果が見られなく、280体積%以上であれば粒子間に空隙を生じ、貼り付け作業時にクラックが入るおそれがある。
また、上記破壊層は着色されていても、透明であっても良いが、着色する場合は支持層と同一の色相に着色することが好ましく、前述した着色層に使用可能な顔料が同様に使用できる。破壊層の顔料含有率は、10〜500重量%、好ましくは30〜300重量%、より好ましくは50〜250重量%の着色剤を含有しているのが良い。顔料含有率が10重量%未満であれば隠蔽性を確保することが不可能であり、また、500重量%以上であればフィルムとして保持することが不可能である。
本発明の積層体は積層体としての引張破断伸度が5%〜30%であることが必要であり、好ましくは10〜25%であるのがよい。
引張破断伸度が5%以上であれば作業性を確保でき、30%未満であれば再利用不可性を確保できる。
本発明の積層体のJIS K 7172に基づき測定した引張強度は20N/10mm以上、好ましくは25N/10mm以上である。引張強度が20N/10mm未満であるとラベル化して貼り付ける際にラベルにコシがなくなるため貼り作業性が悪くなる。
本発明の積層体からなるラベルは、基体に貼り付けた後に手や器具で剥がそうとした時にフィルムが破壊する。破壊の機構は様々であるが、引張破断強度が小さい着色層が剥離に伴う応力歪によりひび割れ、復元できなくなることが多い。公知の脆質積層体は、剥離時に破壊する組成では、固く脆くなるため、ラベル化して貼り付ける際の作業性や基体への追随性に問題があったが、本願の積層体は支持層に引張破断強度の大きな樹脂層を配し、三層の厚さを選択することにより作業性と破壊性を兼ね備えたものである。
本件特許発明の積層体には基体に積層体を接着する接着剤層がさらに積層される。
前記接着剤層は、その膜厚が15〜100μm、好ましくは20〜70μm、より好ましくは25〜45μmである。上記膜厚が15μ以上であれば、被着体への接着性が確保できるので好ましく、膜厚が100μ未満であれば、貼着適性が良好で、コスト的にも有利である。
また、上記接着剤層の接着強度は、被着体に25.4mm幅のテープとして貼り合わせ、24時間放置した後に引張試験機を用いた180°折り返し剥離試験の測定値が5N/25.4mm以上であるものが好ましい。上記接着強度が5N/25.4mm未満になると凹凸ある曲面に貼り付けた場合に、端部が浮き上がるといった不具合が発生しやすい。
該接着剤層を構成する樹脂は、特に制限されないが、耐候性、透明性及び耐黄変性等の点からアクリル系接着剤が好ましく、前記アクリル系接着剤には、必要に応じて粘着付与剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等の添加剤を添加することができる。
本発明の積層体は、工程フィルム上にコーティング、あるいはグラビアなどで着色層樹脂を印刷して乾燥させて着色層を形成し、さらに着色層上に同様に着色剤を分散させた支持層形成樹脂をコーティング、あるいはグラビアなどで印刷して乾燥させ、さらに支持層上に同様に破壊層形成樹脂をコーティング、あるいはグラビアなどで印刷して乾燥させることにより製造されるが、着色したフィルム状の各層を熱圧着や接着剤による接着で積層する方法、あるいはこれらの方法を組み合わせることなどの公知の積層フィルムの製造法により製造することもできる。
本発明の積層体1は、図1に示すように、接着剤層4上に、剥離によって破壊する破壊層3、支持層2、及び剥離によって破壊し、レーザー光照射により除かれ得る着色層1、がこの順で積層されている。積層体にレーザー光を照射すると、着色層1がレーザー照射の形状に除去され、支持層2が露出し、着色層1と支持層2との色の対比によって所望の印字画像等を形成するものである。
照射可能なレーザーとしては、CO2レーザー、Nd:YAGレーザー、エキシマレーザー、半導体レーザー、半導体励起固体レーザー、Arレーザー、N2/Dyeレーザー、HeCdレーザー等があるが、一般的に設備が安価でその取り扱いも比較的容易なCO2レーザー、Nd:YAGレーザー等が使用される。
本発明の積層体は、レーザー印字装置によって、目的に応じて個別に異なった印字をすることが可能であり、製品の管理や品質保証の目的でシリアルナンバーや日付を印字し、製造時期や使用期限等の個別情報を表示するための印字したラベルやシート等として高温に長時間さらされる環境において有効に用いられ、いったん貼り付けたラベル等を剥離すると破壊してしまうため、貼り替え再利用による不正を防止することができる。
参考例1
アクリル系樹脂KP−1876(ニッカポリマ(株)製)50重量部、アクリル樹脂2100U5(日本カーバイド工業(株)製)50重量部、CAB(MIBK20%溶液)5重量部、メラミン系架橋剤MS−11(三和ケミカル(株)製)18重量部、硬化触媒CT−5(三和ケミカル(株)製)4.5重量部、着色剤UTCO−591B(大日精化工業(株)製)15重量部、MIBK15重量部、トルエン30重量部を混合して、着色層用黒色樹脂溶液を調整した。
参考例2
アクリル系樹脂2100U5(日本カーバイド工業(株)製)50重量部、着色剤UTCO−501ホワイト(大日精化工業(株)製)100重量部、イソシアネート系架橋剤コロネートHK(日本ポリウレタン工業(株)製)7重量部(樹脂の反応性官能基に対して1.1当量)、グリコール系化合物PTMG−1000M(三洋化成工業(株)製)10重量部、ソルベッソ100(エクソンモービル社製)10重量部を混合して、支持層用白色樹脂溶液を調整した。
参考例3
アクリル系樹脂SZ6226(日本カーバイド工業(株)製)50重量部、着色剤UTCO−501ホワイト(大日精化工業(株)製)100重量部、イソシアネート系架橋剤コロネートHK(日本ポリウレタン工業(株)製)7重量部(樹脂の反応性官能基に対して1.0当量)、ソルベッソ100(エクソンモービル社製)25重量部を混合して、破壊層用白色樹脂溶液を調整した。
参考例4
アクリル系粘着剤PE−121(日本カ−バイド工業(株)製)100重量部、架橋剤CK−401(日本カ−バイド工業(株)製)1.8重量部を混合して粘着剤溶液Aを調製した。
実施例1
参考例1で得られた着色層用黒色樹脂溶液をPETフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製 S75)に塗布し、90℃で2分間、続けて140℃で3分間乾燥させ、厚み15μmの着色層を形成した。
この着色層の上に参考例2で得られた支持層用白色樹脂溶液を、乾燥後の厚みが50μmになるように塗布し、着色層と同条件で乾燥させ、着色層と支持層を積層したフィルムを作製した。
次に、着色層と支持層が積層されたフィルムの支持層側に参考例3で得られた破壊層用白色樹脂溶液を、乾燥後の厚みが50μmになるように塗布し、着色層、支持層、破壊層の積層体を得た。
さらに、参考例4で得られた粘着剤溶液AをPETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製 商品名MRG50)に塗布し、100℃にて2分間乾燥させ、厚み30μmの接着剤層を形成した。これに上記積層体を破壊層の面が接着剤層と接するように貼り合わせ、両PETフィルムから剥離させることにより、脆質レーザー印字用積層体を作成した。
得られた積層体の配合、引張測定結果、試験結果を表1、表2に示した。
実施例2
支持層用白色樹脂溶液のコロネートの配合量およびPTMG−1000Mの配合量をそれぞれ5重量部(コロネートは樹脂の反応性官能基に対して0.8当量)に変更し、実施例1と同様な方法で、着色層と支持層を積層したフィルムを作製した。
次に、破壊層用白色樹脂溶液のアクリル系樹脂をSZ6227(日本カーバイド工業(株)製)に、イソシアネート系架橋剤コロネートHKの添加量を10重量部(樹脂の反応性官能基に対して1.4当量)に、さらに、PTMG−1000Mを5重量部添加した配合液を用い、着色層、支持層、破壊層の積層体を得た。
さらに、実施例1と同様に、粘着剤層を形成し、脆質レーザー印字用積層体を形成した。
得られた積層体の配合、引張測定結果、試験結果を表1、表2に示した。
実施例3
支持層用白色樹脂溶液のイソシアネート系架橋剤コロネートHKの配合量を7重量部(樹脂の反応性官能基に対して1.1当量)、PTMG−1000Mの配合量を5重量部とし、実施例1と同様な方法で、着色層と支持層を積層したフィルムを作製した。
次に、実施例1の破壊層用白色樹脂溶液に、PTMG−1000Mを5重量部添加した配合液を用い、着色層、支持層、破壊層の積層体を得た。
さらに、実施例1と同様に、粘着剤層を形成し、脆質レーザー印字用積層体を形成した。
得られた積層体の配合、引張測定結果、試験結果を表1、表2に示した。
実施例4
支持層の乾燥後の厚みを60μm、破壊層の乾燥後の厚みを40μmにした以外は全て実施例3と同様な方法で、脆質レーザー印字用積層体を形成した。
得られた積層体の配合、引張測定結果、試験結果を表1、表2に示した。
実施例5
支持層の乾燥後の厚みを30μm、破壊層の乾燥後の厚みを70μmにした以外は全て実施例3と同様な方法で、脆質レーザー印字用積層体を形成した。
得られた積層体の配合、引張測定結果、試験結果を表1、表2に示した。
実施例6
支持層用白色樹脂溶液のPTMG−1000Mの配合量を5重量部に変更し、実施例1と同様な方法で、着色層と支持層を積層したフィルムを作製した。
次に、破壊層用白色樹脂溶液のアクリル系樹脂を2100U5に変更し、PTMG−1000Mを5重量部添加し、ポリマービーズであるアートパールGR−300(根上工業(株)製)を16重量部添加した配合液(コロネートHKは樹脂中の官能基に対して1.1等量となる)を用い、着色層、支持層、破壊層の積層体を得た。さらに、実施例1と同様に、粘着剤層を形成し、脆質レーザー印字用積層体を形成した。
得られた積層体の配合、引張測定結果、試験結果を表1、表2に示した。
実施例7
支持層用白色樹脂溶液のPTMG−1000Mの配合量を5重量部に変更し、実施例1と同様な方法で、着色層と支持層を積層したフィルムを作製した。
次に、破壊層用白色樹脂溶液にPTMG−1000Mを5重量部添加し、アートパールGR−300(根上工業(株)製)を30重量部添加した配合液を用い、着色層、支持層、破壊層の積層体を得た。
さらに、実施例1と同様に、粘着剤層を形成し、脆質レーザー印字用積層体を形成した。
比較例1
支持層のみの構成とし、該支持層の乾燥後の厚みを100μmとした以外は全て実施例1と同様な方法で、脆質レーザー印字用積層体を形成した。
得られた積層体の配合、引張測定結果、試験結果を表1、表2に示した。
比較例2
破壊層のみの構成とし、該破壊層の乾燥後の厚みを100μmとした以外は全て実施例1と同様な方法で、脆質レーザー印字用積層体を形成した。
得られた積層体の配合、引張測定結果、試験結果を表1、表2に示した。
比較例3
着色剤用黒色樹脂溶液からアクリル系樹脂2100U5、およびCABを抜き、さらにメラミン系架橋剤MS−11の添加量を9重量部に、硬化触媒CT−5の添加量を2重量部にそれぞれ変更した。
次に、支持層用白色樹脂溶液のPTMG−1000Mの添加量を10重量部に変更し、さらに破壊層用白色樹脂溶液にPTMG−1000Mを5重量部添加した配合液を用い、実施例1と同様な方法で着色層、支持層、破壊層の積層体を得た。
さらに、実施例1と同様に、粘着剤層を形成し、脆質レーザー印字用積層体を形成した。
得られた積層体の配合、引張測定結果、試験結果を表1、表2に示した。
比較例4
支持層用白色樹脂溶液のイソシアネート系架橋剤コロネートHKの添加量を10重量部(樹脂の反応性官能基に対して1.6当量)に変更し、PTMG−1000Mを抜いた配合に変更し、実施例1と同様な方法で、着色層と支持層を積層したフィルムを作製した。
次に、破壊層用白色樹脂溶液のイソシアネート系架橋剤コロネートHKの添加量を10重量部(樹脂の反応性官能基に対して1.4当量)に変更し、PTMG−1000Mを抜いた配合に変更し、着色層、支持層、破壊層の積層体を得た。
さらに、実施例1と同様に、粘着剤層を形成し、脆質レーザー印字用積層体を形成した。
得られた積層体の配合、引張測定結果、試験結果を表1、表2に示した。
比較例5
着色層、破壊層、支持層の厚さを40μm、35μm、40μmとした以外は実施例6と同様にして着色層、支持層、破壊層の積層体を得た。
さらに、実施例1と同様に、粘着剤層を形成し、脆質レーザー印字用積層体を形成した。
得られた積層体の配合、引張測定結果、試験結果を表1、表2に示した。
なお、各物性は以下の条件で測定した。
(1)引張破断伸度 (JIS K 7172)
引張試験機=テンシロンTM−100(東洋ボールドウィン社製)
試験片幅=10mm つかみ間隔=100mm 引張速度=200mm/分
5回測定し、その平均値を求めた。
(2)引張破断強度(JIS K 7172)
引張破断伸度と同じ
(3)再利用性
1.5cm×5cmの積層体を白色塗装板に貼付し、23℃雰囲気に72時間放置した。
その後、カッターナイフを用いて積層品を塗装板より剥がした。その時に、積層品の破壊等により再貼付できない場合を「再利用性 不可」、再利用できる場合を「再利用性 可」と評価した。
上記試験を各資料について10回行い下記の基準で評価した
○ : 不可 9
回以上
△ : 不可 7〜8回
× : 不可 6回以下
(4)貼り付け作業性
粘着剤層、剥離紙のついた1.5cm×5cmの積層体ラベルを作成し、剥離紙から剥がして、白色塗装板に貼り付ける作業をおこない。貼り付け作業時に着色層に破壊(ひび割れ)が生じるかを確認した。
50枚のラベルを貼り付け、貼り付け作業時に破壊したラベルの数により、以下の基準で評価した。


50枚中破壊が 1枚以下
△ : 50枚中破壊が 2〜5枚
× : 50枚中破壊が 6枚以上
(4)文字抜け性
SUN株式会社製 LP−430を用い、出力10W、スキャンスピード500mm/sでアルファベットの“A”を130μm、250μm、400μmの太さでそれぞれ印字した。剥離紙を剥離し、各文字を粘着剤層側から透過光で観察し、レーザーにより積層体が焼き切られていない場合を○、粘着剤層まで焼き切れている場合を×とした。
(5)文字のシャープさ
文字抜け性を評価したサンプルの表面から、印字した文字の端部を光学顕微鏡(オリンパス株式会社製 BX51)を用いて観察し、次の基準によって判定を行った。
文字端部がシャープできれいである:○
文字端部の一部にバリが見られる :△
文字端部全体にバリが発生している:×
(6)バーコード読み取り性
文字抜け性と同じ条件で、EAN128パターンのバーコードを印字した。このバーコードをバーコードリーダーで10回読み取りさせ、10回とも読み取りできた場合を○、1回でも読み取りできなかった場合を×とした。
(7)耐熱性
バーコード読み取り性試験と同じ要領でEAN128パターンのバーコードを印字したサンプルを、150℃の環境下で1000時間放置した後に、バーコードリーダーで10回読み取りさせ、10回とも読み取り出来た場合を○、1回でも読み取りできなかった場合を×とした。
図1は本発明の代表的な脆質レーザー印字用積層体の断面図である。 図2は破壊層にビーズを含む本発明の脆質レーザー印字用積層体の断面図である。
符号の説明
1.着色層
2.支持層
3.破壊層
4.接着剤層
5.ビーズ

Claims (7)

  1. 下記(A)〜(C)の樹脂層を有し、厚さ100μm−200μmであるアクリル系レーザー印字用積層体。
    (A)厚さ10−30μmであって、アクリル系樹脂からなり、引張破断伸度が5%未満であって、積層体を基材に接着したとき最外層となる着色層、
    (B)厚さ30−60μmであって、前記着色層に積層され、着色層と視認可能な色差を有し、アクリル系樹脂からなり引張破断伸度が15%以上である支持層、
    (C)厚さ20−150μmであって、前記支持層に積層され、アクリル系樹脂からなり、引張破断伸度が10%未満である破壊層。
  2. 積層体の引張破断伸度が5〜30%であるアクリル系レーザー印字用積層体。
  3. 引っ張り強度が20N/10mm以上である請求項1〜2いずれかに記載のアクリル系レーザー印字用積層体。
  4. アクリル系樹脂が架橋されたアクリル系樹脂である請求項1〜3いずれかに記載のアクリル系レーザー印字用積層体。
  5. 着色層が白色または黒色である請求項1〜4いずれかに記載するアクリル系レーザー印字用積層体。
  6. 請求項1〜5いずれかに記載するレーザー印字用積層体の着色層と反対側に接着剤層を積層したレーザー印字ラベル。
  7. レーザー光照射により、着色樹脂層にレーザー印字画像を形成し、被着体に接着後、剥離すると着色層が破壊することにより再利用が不可能となる請求項1〜6いずれかに記載するレーザー印字ラベル。

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