JP4608852B2 - 液晶性ビニルケトン誘導体およびその重合体 - Google Patents

液晶性ビニルケトン誘導体およびその重合体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶性のα,β−不飽和カルボニル(プロペノイル)を有する化合物、その重合体、重合体の用途、および前記化合物の製造方法に関する。この重合体は光学異方性を有する成形体、液晶表示素子などに利用できる。
【0002】
【従来の技術】
近年、偏光板、位相差板などの光学異方性を有する成形体に重合性の液晶性化合物が利用されている。この化合物が液晶状態において光学異方性を有し、重合によりこの化合物の配列が固定化されるためである。光学異方性を有する成形体に必要な光学的特性は目的によって異なるので、目的にあった特性を有する化合物が必要である。この化合物は重合して重合体とし、それを成形して利用することが一般的である。このような目的に使用される化合物は、前記の異方性に加えて重合体に関する特性も重要である。この特性は、化合物の重合速度、重合体の透明性、機械的強度、塗布性、溶解度、結晶化度、収縮性、透水度、吸水度、融点、ガラス転移点、透明点、耐薬品性などである。
【0003】
アクリレートは重合反応性が大きく、得られる重合体が高い透明性を有するので、このような目的に用いられる(例えば、特許文献1、特許文献2および特許文献3参照。)。しかし、これらのアクリレートは、液晶性、その他の化合物との相溶性、光学異方性などの特性を充分に満たすとは言い難い。また、これらアクリレートの重合体が好適な透明性、機械的強度、塗布性、溶解度、結晶化度、収縮性、透水度、吸水度、融点、ガラス転移点、透明点、耐薬品性などを有するとは限らない。そこで、液晶相の上限温度が高く、または液晶相の温度範囲が広く、相溶性に優れた化合物、およびそれらを用いて得られる機械的強度、塗布性、溶解度、収縮性、透水度、吸水度、融点、ガラス転移点、透明点、耐薬品性などに優れた重合体の開発が緊急の課題である。
【0004】
α,β−不飽和カルボニルを有する液晶性化合物に関する従来の技術は、例えば、特許文献4および特許文献5などである。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−17910号公報
【特許文献2】
特開平8−3111号公報(US5863457A)
【特許文献3】
特開平9−316032号公報
【特許文献4】
独国特許出願公開第19919153号明細書(US6440328B1)
【特許文献5】
国際公開第97/23580号パンフレット(US5798057A)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第一の目的は、液晶相の上限温度が高く、他の化合物との優れた相溶性を有し、さらに、光学異方性などの必要な特性を有する重合性の液晶性化合物、およびこの化合物を含有する液晶組成物を提供することである。第二の目的は、透明性、機械的強度、塗布性、溶解度、結晶化度、収縮性、透水度、吸水度、融点、ガラス転移点、透明点、耐薬品性などの特性の多くに優れた重合体、およびこの重合体から製造した光学異方性を有する成形体を提供することである。第三の目的は、この重合体を含有する液晶表示素子を提供することである。第四の目的は、前記液晶性化合物の製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための手段は次の項のとおりである。
【0008】
1.式(1)で表される化合物。
Figure 0004608852
式(1)において、R1は水素、ハロゲン、−CN、−CF、−CFH、−CFH、−OCF、−OCFH、−N=C=O、−N=C=S、または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH2−は−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンまたは−CNで置き換えられてもよい。隣接する2つの−CH2−が−O−O−、−O−S−または−S−S−のように置き換えられない方が好ましい。
【0009】
「アルキルにおいて任意の−CH−は−O−、−CH=CH−などで置き換えられてもよい」の句の意味を一例で示す。C−において任意の−CH−を−O−または−CH=CH−で置き換えた基の一部は、CO−、CH−O−(CH−、CH−O−CH−O−、HC=CH−(CH−、CH−CH=CH−(CH−、およびCH−CH=CH−CH−O−である。このように「任意の」語は、「区別なく選択された少なくとも1つの」を意味する。化合物の安定性を考慮して、酸素と酸素とが隣接したCH−O−O−CH−よりも、酸素と酸素とが隣接しないCH−O−CH−O−の方が好ましい。
【0010】
好ましいRは、水素、ハロゲン、−CN、−CF、−CFH、−CFH、−OCF、−OCFH、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、炭素数2〜10のアルコキシアルキル、および炭素数2〜10のアルケニルである。これらの基において、アルキルおよびアルケニルは分岐よりも直鎖の方が好ましい。特に好ましいRは、水素、フッ素、塩素、−CN、−CF、−CFH、−CFH、−OCF、−OCFH、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、メトキシメチル、エトキシメチル、プロポキシメチル、ブトキシメチル、メトキシエチル、エトキシエチル、プロポキシエチル、メトキシプロピル、エトキシプロピル、プロポキシプロピル、2−フルオロエチル、3−フルオロプロピル、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、アリル、3−ブテニル、および3−ペンテニルである。
【0011】
、RおよびRは独立して、水素または炭素数1〜3のアルキルである。好ましいR、RおよびRは、水素である。
【0012】
1、A2、A3、およびA4は独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、またはビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3,6−ジイルであり、これらの環において任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく、任意の−CH=は−N=で置き換えられてもよく、これらの環において任意の水素はハロゲンまたは炭素数1〜5のアルキルで置き換えられてもよい。後者の「これらの環」は、任意の−CH−が−O−で置き換えられた環、および任意の−CH=が−N=で置き換えられ環をも含む。化合物の安定性を考慮して、酸素と酸素とが隣接した−CH−O−O−CH−よりも、酸素と酸素とが隣接しない−CH−O−CH−O−の方が好ましい。
【0013】
好ましいA1、A2、A3、またはA4は、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2、3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、6−フルオロピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、テトロヒドロナフタレン−2,6−ジイル、およびフルオレン−2,7−ジイルである。特に好ましいA1、A2、A3、またはA4は、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2、3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、および2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンである。1,4−シクロヘキシレンおよび1,3−ジオキサン−2,5−ジイルの立体配置はシスよりもトランスの方が好ましい。
【0014】
大きな光学異方性を有する化合物は、A1、A2、A3、またはA4がハロゲンで置換されてもよい1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、テトロヒドロナフタレン−2,6−ジイル、またはフルオレン−2,7−ジイルであることが好ましい。小さな光学異方性を有する化合物は、A1、A2、A3、またはA4がシクロヘキサン−1,4−ジイル、シクロヘキセン−1,4−ジイルまたは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであることが好ましい。これらの化合物において、R1から数えて2番目の環が1,4−フェニレンであると相溶性の点で好ましい。R1から数えて2番目の環が、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンであると大きな誘電率異方性の点で好ましい。
【0015】
1、Z2およびZ3は独立して、単結合、−(CH2−、−O(CH2−、−(CH2O−、−O(CH2O−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−(CF22−、−C≡C−COO−、−OCO−C≡C−、−CH=CH−(CH22−、−(CH22−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−HC=CH−、−CH=CH−C≡C−、−OCF−、または−CFO−であり、aは1〜20の整数である。
【0016】
好ましいZ1、Z2またはZ3は、単結合、−(CH22−、−(CH24−、−OCH2−、−O(CH23−、−CH2O−、−(CH23O−、−O(CH22O−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−(CF22−、−CF=CF−、−OCF−、または−CFO−である。特に好ましいZ1、Z2またはZ3は、単結合、−(CH22−、−OCH2−、−CH2O−、−O(CH22O−、−CH=CH−、−(CH24−、−CF=CF−、−OCF−、または−CFO−である。小さな粘性を有する化合物は、Z1、Z2またはZ3が単結合、−(CH22−、−CH=CH−、−CF=CF−、−OCF−、または−CFO−であることが好ましい。これらの結合基において、二重結合はシスよりもトランスの方が好ましい。
【0017】
は単結合または炭素数1〜4のα,ω−アルキレンであり、このアルキレンにおいて任意の−CH2−は−O−、−S−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよい。α,ω−アルキレンにおいて好ましい炭素数は2〜4であり、特に好ましい炭素数は3〜4である。α,ω−アルキレンの好ましい例は、(Z−1)〜(Z−7)である。
【0018】
Figure 0004608852
【0019】
(Z−1)〜(Z−7)において、rは1〜4の整数であり、sおよびtは独立して、1または2の整数である。製造の容易さ、特性を考慮したとき、Zが単結合である化合物が最も好適である。
【0020】
m、nおよびqは独立して、0、1または2である。m、nおよびqの和が1のときは、六員環などの環を2つ有する二環の化合物である。m、nおよびqの和が2と3のときは、それぞれ三環と四環の化合物である。mが2であるとき、2つのA(または2つのZ)は同一であってもよいし、または異なってもよい。nが2であるときおよびqが2であるときについても同様である。液晶相の温度範囲を低温側に設定したいときは二環を、比較的高温側に設定したいときは三環または四環化合物を選択すればよい。より高温側に液晶相の温度範囲を設定したいときは、m、nおよびqの和が4、5または6である化合物を選択すればよい。
【0021】
2.式(1)においてRが水素である1項に記載の化合物。
3.1項に記載の式(1)においてRおよびRが水素である2項に記載の化合物。
4.1項に記載の式(1)においてA1、A2、A3、およびA4が独立して、1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり、これらの環において任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよい3項に記載の化合物。
【0022】
5.1項に記載の式(1)においてA1、A2、A3、およびA4が独立して、1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり、これらの環において任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよく;Z1、Z2およびZ3が独立して、単結合、−(CH2−、−O(CH2−、−(CH2O−、−O(CH2O−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−OCF−、または−CFO−である3項に記載の化合物。
【0023】
6.1項に記載の式(1)においてZが単結合である5項に記載の化合物。
【0024】
7.式(a)〜(d)で表されるいずれか1つの化合物。
Figure 0004608852
式中、R1は水素、ハロゲン、−CN、−CF、−CFH、−CFH、−OCF、−OCFH、−N=C=O、−N=C=S、または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH2−は−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンまたは−CNで置き換えられてもよく;A1、A2、A3、およびA4は独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、またはビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3,6−ジイルであり、これらの環において任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく、任意の−CH=は−N=で置き換えられてもよく、これらの環において任意の水素はハロゲンまたは炭素数1〜5のアルキルで置き換えられてもよく;Z1、Z2およびZ3は独立して、単結合、−(CH2−、−O(CH2−、−(CH2O−、−O(CH2O−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−(CF22−、−C≡C−COO−、−OCO−C≡C−、−CH=CH−(CH22−、−(CH22−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−HC=CH−、−CH=CH−C≡C−、−OCF−、または−CFO−であり、aは1〜20の整数であり;Zは単結合または炭素数1〜4のα,ω−アルキレンであり、このアルキレンにおいて任意の−CH2−は−O−、−S−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよい。
【0025】
8.式(a)〜(d)においてRが水素、ハロゲン、−CN、−CF、−CFH、−CFH、−OCF、−OCFH、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、炭素数1〜10のアルコキシアルキル、または炭素数2〜10のアルケニルであり;A1、A2、A3、およびA4が独立して、1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり、これらの環において任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよく;Z1、Z2およびZ3が独立して、単結合、−(CH22−、−(CH24−、−OCH2−、−O(CH23−、−CH2O−、−(CH23O−、−O(CH22O−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−(CF22−、−CF=CF−、−OCF−、または−CFO−であり;Zが単結合である7項に記載の化合物。
【0026】
9.少なくとも2つの重合性化合物を含有し、少なくとも1つの重合性化合物が1〜8項のいずれか1項に記載の化合物である液晶組成物。
10.重合性化合物のすべてが1〜8項のいずれか1項に記載の化合物である、8項に記載の液晶組成物。
11.1〜8項のいずれか1項に記載の化合物の少なくとも1つと、該化合物以外の重合性化合物の少なくとも1つとを含有する、9項に記載の液晶組成物。
12.液晶組成物が、さらに光学活性化合物を含有する9〜11項のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0027】
13.式(2)で表される構成単位を有する重合体。
Figure 0004608852
式中、R1は水素、ハロゲン、−CN、−CF、−CFH、−CFH、−OCF、−OCFH、−N=C=O、−または−N=C=S、または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH2−は−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンまたは−CNで置き換えられてもよく;R、RおよびRは独立して、水素または炭素数1〜3のアルキルであり;A1、A2、A3、およびA4は独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、またはビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3,6−ジイルであり、これらの環において任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく、任意の−CH=は−N=で置き換えられてもよく、これらの環において任意の水素はハロゲンまたは炭素数1〜5のアルキルで置き換えられてもよく;Z1、Z2およびZ3は独立して、単結合、−(CH2−、−O(CH2−、−(CH2O−、−O(CH2O−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−(CF22−、−C≡C−COO−、−OCO−C≡C−、−CH=CH−(CH22−、−(CH22−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−HC=CH−、−CH=CH−C≡C−、−OCF−、または−CFO−であり、aは1〜20の整数であり;Zは単結合または炭素数1〜4のα,ω−アルキレンであり、このアルキレンにおいて任意の−CH2−は−O−、−S−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよく;m、nおよびqは独立して、0、1または2である。
【0028】
14.式(2)においてRが水素である13項に記載の化合物。
15.13項に記載の式(2)においてRおよびRが水素である14項に記載の重合体。
16.13項に記載の式(2)においてA1、A2、A3、およびA4が独立して、1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり、これらの環において任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよい15項に記載の重合体。
【0029】
17.13項に記載の式(2)においてA1、A2、A3、およびA4が独立して、1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり、これらの環において任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよく;Z1、Z2およびZ3が独立して、単結合、−(CH2−、−O(CH2−、−(CH2O−、−O(CH2O−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−OCF−、または−CFO−である15項に記載の重合体。
18.13項に記載の式(2)においてZが単結合である17項に記載の重合体。
【0030】
19.式(2)においてRが水素、ハロゲン、−CN、−CF、−CFH、−CFH、−OCF、−OCFH、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、炭素数1〜10のアルコキシアルキル、または炭素数2〜10のアルケニルであり;R、RおよびRが水素であり;A1、A2、A3、およびA4が独立して、1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり、これらの環において任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよく;Z1、Z2およびZ3が独立して、単結合、−(CH22−、−(CH24−、−OCH2−、−O(CH23−、−CH2O−、−(CH23O−、−O(CH22O−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−(CF22−、−CF=CF−、−OCF−、または−CFO−であり;Zが単結合である13項に記載の重合体。
【0031】
20.1〜8項のいずれか1項に記載の化合物の1つを単独重合させて得られる、13項に記載の重合体。
21.9〜12項のいずれか1項に記載の液晶組成物から得られる、13項に記載の重合体。
22.13〜21項のいずれか1項に記載の重合体からなる光学異方性を有する成形体。
23.13〜21項のいずれか1項に記載の重合体を含有する液晶表示素子。
24.22項に記載の光学異方性を有する成形体を含有する液晶表示素子。
25.
Figure 0004608852
(式(1a)および(1b)中、Rは水素、ハロゲン、−OH、−CN、−CF、−CFH、−CFH、−OCF、−OCFH、−N=C=O、−N=C=S、または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH2−は−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンまたは−CNで置き換えられてもよく;R、RおよびRは独立して、水素または炭素数1〜3のアルキルであり;A1、A2、A3、およびA4は独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、またはビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3,6−ジイルであり、これらの環において任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく、任意の−CH=は−N=で置き換えられてもよく、これらの環において任意の水素はハロゲンまたは炭素数1〜5のアルキルで置き換えられてもよく;Z1、Z2およびZ3は独立して、単結合、−(CH2−、−O(CH2−、−(CH2O−、−O(CH2O−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−(CF22−、−C≡C−COO−、−OCO−C≡C−、−CH=CH−(CH22−、−(CH22−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−HC=CH−、−CH=CH−C≡C−、−OCF−、または−CFO−であり、aは1〜20の整数であり;Zは単結合または炭素数1〜4のα,ω−アルキレンであり、このアルキレンにおいて任意の−CH2−は−O−、−S−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよく;m、nおよびqは独立して、0、1または2であり、Halは塩素、臭素またはヨウ素である。)で表される式(1a)の化合物1モル当量に、1〜10モル当量の割合のルイス酸を−70℃〜200℃で作用させ、脱ハロゲン化水素反応を行うことを特徴とする、式(1b)で表されるビニルケトン化合物の製造方法。
【0032】
【発明の実施の形態】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。「液晶性化合物」の用語は、液晶相を有する化合物、および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称として用いる。「重合性」の用語は、この技術分野において光、熱、触媒などの方法により重合し、重合体を与える能力を意味する。液晶性化合物と液晶組成物の用語は、それぞれ化合物と組成物とで表記することがある。式(1)で表される化合物を、化合物(1)と表記することがある。化合物(1)から得られる重合体を、重合体(2)と表記することがある。アクリレートとメタアクリレートとを(メタ)アクリレートと表記することがある。
【0033】
化合物(1)および重合体(2)は次の特徴を有する。
(1)化合物(1)は二環〜七環を有し、α,β−不飽和カルボニルを重合部位として有する。
(2)化合物(1)は、重合前の取扱い条件および合成時においては十分な化学的安定性を持つため目的とする重合が起こらず、他の化合物との相溶性がよい。
(3)化合物(1)を構成する末端基、環または結合基を適切に選ぶことによって、大きい誘電率異方性、小さい誘電率異方性、大きい光学異方性、小さい光学異方性、小さい粘度などの物性値を調整することができる。
(4)化合物(1)の構造を適切に選択することで、得られる重合体(2)は透明性、機械的強度、塗布性、溶解度、結晶化度、収縮性、透水度、吸水度、融点、ガラス転移点、透明点、耐薬品性などの特性の多くに優れる。これらの特性はJISなどに定義された測定方法に従って求めることができる。
【0034】
化合物(1)の物性は次のとおりである。
二環および三環の化合物(1)は小さな粘度を有する。三環以上の化合物(1)は高い透明点(液晶相−等方性液体の相転移温度)を有する。化合物(1)は三環以上を有する化合物であっても、溶媒に溶解したとき、濡れ性が良好なので、組成物の調製、基板上への塗布およびより薄い膜の調製において有利である。三環以上を有する化合物(1)は液晶相の非常に広い温度範囲に液晶相を有する。これらの化合物(1)は、透明点がより高いので、二環を有する化合物(1)と混合することで、高い透明点と液晶相の低い下限温度とを有する液晶組成物を調製できる。
【0035】
少なくとも2つのシクロヘキサン環を有する化合物(1)は、高い透明点、小さな光学異方性および小さな粘度を有する。少なくとも1つのベンゼン環を有する化合物(1)は、比較的大きな光学異方性および大きな液晶配向秩序度(orientational order parameter)を有する。少なくとも2つのベンゼン環を有する化合物(1)は、特に大きな光学異方性および液晶相の広い温度範囲を有する。
【0036】
1,4−フェニレンに結合したRがフッ素、−CN、−CF、−OCF、または−OCFHであり、Rの一方のオルト位、または両方のオルト位がフッ素である化合物(1)は、誘電率異方性が特に大きい。Rがアルキルまたはアルコキシであり、A1、A2、A3、およびA4の少なくとも1つが2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンである化合物(1)は、誘電率異方性が負である。
【0037】
がα,β−不飽和カルボニルを有する化合物(1)は、重合して主鎖型重合体(架橋型)を与える。主鎖型重合体は機械的強度においてより有利である。
【0038】
、Z、Z、およびZのすべてが単結合である化合物(1)は、特に高い透明点を有する。結合基が二重結合を有する化合物(1)は、液晶相の広い温度範囲を有する。結合基が三重結合を有する化合物(1)は、特に大きな光学異方性を有する。
【0039】
これらのことから末端基、環または結合基を適切に選択することにより、目的の特性を有する化合物(1)を得ることができる。化合物(1)はH(重水素)、13Cなどの同位体を天然存在比の量よりも多く含んでいても同様の特性を有するので好ましく用いることができる。
【0040】
化合物(1)の好ましい例は、化合物(1−1)〜(1−59)である。これらの化合物において、R1、R、R、R、Z、Z、Z、およびZの意味は式(1)と同一である。化合物(1−1)〜(1−59)において、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレン、ピリジン−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、およびフルオレン−2,7−ジイルは、下記式で示すようにフッ素またはメチルで置換されてもよい。
【0041】
Figure 0004608852
【0042】
Figure 0004608852
【0043】
Figure 0004608852
【0044】
Figure 0004608852
【0045】
Figure 0004608852
【0046】
Figure 0004608852
【0047】
Figure 0004608852
【0048】
Figure 0004608852
【0049】
Figure 0004608852
【0050】
Figure 0004608852
Figure 0004608852
化合物(1)のさらに好ましい例は、化合物(1−1)〜(1−5)、化合物(1−11)〜(1−16)、化合物(1−20)〜(1−29)、化合物(1−33)、化合物(1−49)、化合物(1−50)、化合物(1−55)、および化合物(1−59)である。
【0051】
次に、化合物(1)の製造方法について説明する。
化合物(1)は、ホーベン・ワイル(Houben Wyle, Methoden der Organischen Chemie, Georg Thieme Verlag, Stuttgart)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wily & Sons Inc.)、オーガニック・シンセシーズ(Organic Syntheses, John Wily & Sons, Inc.)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などに記載された有機化学における合成方法を適切に組み合わせることにより製造できる。
【0052】
α,β−不飽和カルボニルは次の方法で生成できる。グリニヤール試薬(3)に、β−クロロ酸クロリドを作用し化合物(4)とする。そののち、塩基性条件下で脱HCl反応を行うことによって化合物(1)を製造できる。例えば、かかる反応はDMSOなどの極性溶媒中、t−BuOKを作用することで好適に実施できる(文献:Org. Synth. 2000, 78, 142151)。グリニヤール試薬(3)とβ−クロロプロピオン酸クロリド誘導体の反応は、Tetrahedron Lett., 1987, 28(18), 2053の方法に従い好適に実施できる。Zが単結合、Aがベンゼン環、ナフタレン環、テトラヒドロナフタレン環、またはフルオレン環であるとき、化合物(4)は、無水塩化アルミニウムなどを用いたフリーデル・クラフツ反応でも簡便に合成できる。Zが単結合、Aがベンゼン環、ナフタレン環、テトラヒドロナフタレン環、またはフルオレン環であるとき、化合物(4)は前述の塩基性条件下、円滑に脱HCl反応が進行しない。生成物の分解、副反応、重合などを伴い、非常に複雑な混合物が得られる。しかし、ルイス酸を用いることでこの問題は解決できる。すなわち、化合物(4)または前記化合物(1a)1モル当量に、1〜10モル当量、好ましくは1〜5モル当量の割合のルイス酸を−70℃〜200℃で作用させ、脱ハロゲン化水素反応を行うことで化合物(1)を製造できる。好適なルイス酸は無水塩化アルミニウムである。
【0053】
Figure 0004608852
【0054】
Figure 0004608852
【0055】
結合基Z、Z、Z、またはZを生成する方法の一例に関して、最初にスキームを示し、次にスキームの製造方法を説明する。このスキームにおいて、MSGまたはMSGは少なくとも1つの環を有する1価の有機基である。スキームで用いた複数のMSG(またはMSG)は、同一であってもよいし、異なってもよい。化合物(1A)〜(1K)は化合物(1)に相当する。
【0056】
Figure 0004608852
【0057】
Figure 0004608852
【0058】
Figure 0004608852
【0059】
Figure 0004608852
【0060】
Figure 0004608852
【0061】
Figure 0004608852
【0062】
(I)単結合の生成
ホウ酸誘導体(5)と公知の方法で合成されるハライド(6)とを、炭酸塩水溶液とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で反応させて化合物(1A)を合成する。この化合物(1A)は、公知の方法で合成される化合物(7)にn−ブチルリチウムを、次いで塩化亜鉛を反応させ、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で化合物(6)を反応させることによっても合成される。ホウ酸誘導体(5)は化合物(7)をグリニヤール試薬またはリチウム試薬に誘導し、トリアルキルホウ酸エステルを作用することで製造できる。
【0063】
(II)−COO−と−OCO−の生成
化合物(7)にn−ブチルリチウムを、続いて二酸化炭素を反応させてカルボン酸(8)を得る。カルボン酸(8)と、公知の方法で合成されるフェノール(10)とをDDC(1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド)とDMAP(4−ジメチルアミノピリジン)の存在下で脱水させて−COO−を有する化合物(1B)を合成する。この方法によって−OCO−を有する化合物も合成できる。
【0064】
(III)−CFO−と−OCF−の生成
化合物(1B)をローソン試薬のような硫黄化剤で処理して化合物(10)を得る。化合物(10)をフッ化水素ピリジン錯体とNBS(N−ブロモスクシンイミド)でフッ素化し、−CFO−を有する化合物(1C)を合成する。M. Kuroboshi et al., Chem. Lett., 1992,827.を参照。化合物(1C)は化合物(10)を(ジエチルアミノ)サルファ トリフルオリドでフッ素化しても合成される。William H. Bunnelle et al., J. Org. Chem. 1990, 55, 768.を参照。この方法によって−OCF−を有する化合物も合成できる。
【0065】
(IV)−CH=CH−の生成
化合物(6)をn−ブチルリチウムで処理したのち、N,N−ジメチルホルムアミドなどのホルムアミドと反応させてアルデヒド(11)を得る。公知の方法で合成されるホスホニウム塩(12)をカリウムt−ブトキシドのような塩基で処理して発生させたリンイリドを、アルデヒド(11)に反応させて化合物(1D)を合成する。反応条件によってはシス体が生成するので、必要に応じて公知の方法によりシス体をトランス体に異性化する。
【0066】
(V)−(CH−の生成
化合物(1D)をパラジウム炭素のような触媒の存在下で水素化することにより、化合物(1E)を合成する。
【0067】
(VI)−(CH−の生成
ホスホニウム塩(12)の代わりにホスホニウム塩(13)を用い、項(IV)の方法に従って−(CH−CH=CH−を有する化合物を得る。これを接触水素化して化合物(1F)を合成する。
【0068】
(VII)−C≡C−の生成
ジクロロパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下で、化合物(7)に2−メチル−3−ブチン−2−オールを反応させたのち、塩基性条件下で脱保護して化合物(14)を得る。ジクロロパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下、化合物(14)を化合物(6)と反応させて、化合物(1G)を合成する。
【0069】
(VIII)−CF=CF−の生成
化合物(7)をn−ブチルリチウムで処理したあと、テトラフルオロエチレンを反応させて化合物(15)を得る。化合物(15)をn−ブチルリチウムで処理したあと、化合物(6)と反応させて化合物(1H)を合成する。
【0070】
(IX)−CHO−または−OCH−の生成
化合物(11)を水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤で還元して化合物(16)を得る。これを臭化水素酸などでハロゲン化して化合物(17)を得る。炭酸カリウムなどの存在下で、化合物(17)を化合物(9)と反応させて化合物(1J)を合成する。
【0071】
(X)−(CH23O−または−O(CH23−の生成
化合物(11)の代わりに化合物(18)を用いて、項(IX)の方法に従って化合物(1K)を合成する。
【0072】
(XI)−(CF22−の生成
J. Am. Chem. Soc., 2001, 123, 5414.に記載された方法に従い、ジケトン(21)をフッ化水素触媒の存在下、四フッ化硫黄でフッ素化して−(CF22−を有する化合物(1L)を得る。
【0073】
次に液晶組成物について説明する。
この組成物は化合物(1)の少なくとも1つを含有する。この組成物は化合物(1)の少なくとも2つを成分としてもよい。この組成物は化合物(1)とその他の成分を含有してもよい。化合物(1)の1つであっても液晶組成物として取り扱う。その他の成分の例は、富士通九州エンジニアリング社が販売する液晶化合物データベース、LiqCryst(登録商標)などに記載された液晶性化合物、特開平8−3111号公報などに記載された重合性化合物である。その他の成分の含有量は、組成物がその液晶性を損なわない程度が好ましい。組成物の成分を構成する原子がその同位体を天然存在比より多く含んでいても、同様の特性を有するので好ましい。この組成物には、重合反応を行うに際し、必要に応じて溶媒や重合開始剤、触媒などを加えることができる。組成物は、各成分から公知の方法によって調製される。例えば、成分である化合物を混合し、必要に応じて加熱によって互いに溶解させる。
【0074】
液晶組成物はその他の成分として、光学活性化合物や二色性色素などの添加物を含有してもよい。光学活性化合物を添加した組成物は螺旋構造を示すので、これを重合することで螺旋構造を有する位相差フィルム(retardation film)を製造できる。螺旋のピッチが光の波長の1/2程度〜同程度であれば、その波長を有する光をブラッグの法則に従い選択的に反射することができる。これは、例えば、円偏光分離機能素子として使用できる。光学活性化合物は螺旋構造を誘起できれば重合性であっても非重合性であっても構わない。螺旋の向きは光学活性化合物の立体配置に依存する。光学活性化合物の立体配置を適時選択することで目的とする螺旋方向を誘起できる。非重合性の光学活性化合物の好適な例は、化合物(OP−1)〜(OP−12)である。重合性の光学活性化合物の好適な例は化合物(OP−13)〜(OP−20)である。
【0075】
Figure 0004608852
【0076】
Figure 0004608852
【0077】
Figure 0004608852
【0078】
次に、重合体について説明する。
化合物(1)は重合可能なα,β−不飽和カルボニルを有する。化合物(1)を重合することで重合体(2)を製造できる。重合体(2)は、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位重合、リビング重合などの反応によって得られる。化合物(1)の1つのみを重合させると、単独重合体が得られる。この重合体は1つの構成単位からなる。少なくとも2つの化合物(1)を含有する組成物を重合させると、共重合体が得られる。この共重合体は少なくとも2つの構成単位を有する。共重合体における構成単位の配列は、ランダム、ブロック、交互などのいずれであってもよい。
【0079】
α,β−不飽和カルボニルの重合性はR、RおよびRに支配される。R、RおよびRが水素であるとき、化合物(1)は最も高い重合性を有し、最適な波長の光によって重合できる。
【0080】
化合物(1)の少なくとも1つと化合物(1)ではない重合性化合物の少なくとも1つとを含有する組成物を共重合してもよい。化合物(1)以外の重合性化合物は重合性があればいずれでもよい。重合性化合物は、皮膜形成性、機械的強度などを低下させなければ液晶性であっても、液晶性でなくてもよい。好ましい重合性化合物の例は、(メタ)アクリレート化合物、ビニル化合物、スチレン化合物、およびビニルエーテル化合物である。
【0081】
好ましい非液晶性の重合性化合物は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、塩化ビニル、フッ化ビニル、酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2,2−ジメチルブタン酸ビニル、2,2−ジメチルペンタン酸ビニル、2−メチル−2−ブタン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、2−エチル−2−メチルブタン酸ビニル、N−ビニルアセトアミド、p−t−ブチル安息香酸ビニル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸ビニル、安息香酸ビニル、スチレン、o−、m−またはp−クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、エチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルモノビニルエーテル、t−アミルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールメチルビニルエーテル、テトラフルオロエチレン、およびヘキサフルオロプロペンである。
【0082】
重合体の被膜形成能をより高めるために、多官能アクリレートを組成物に添加することもできる。好ましい多官能アクリレートは、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールEO付加トリアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、トリスアクリロキシエチルフォスフェート、ビスフェノールA EO付加ジアクリレート、ビスフェノールAグリシジルジアクリレート(大阪有機化学株式会社製、商品名:ビスコート700)、およびポリエチレングリコールジアクリレートである。
【0083】
液晶相の温度範囲を制御する目的で液晶性の重合性化合物を用いてもよい。液晶性を有する好ましい重合性化合物を示す。
【0084】
Figure 0004608852
上式において、Wは水素、フッ素、塩素、または−CHであり、yは1〜20の整数である。
【0085】
化合物(1)を使用して熱可塑性樹脂である重合体(2)を製造できる。熱可塑性樹脂の好ましい重量平均分子量は500〜100,000であり、より好ましくは1,000〜50,000、さらに好ましくは2,000〜10,000である。熱可塑性樹脂を製造するとき、重合度を大きくしない、または重量平均分子量を前述の範囲に調整する必要がある。
【0086】
化合物(1)を使用して熱硬化性樹脂である重合体(2)を製造できる。熱硬化性を有する重合体(2)は、三次元の架橋構造を有し、不溶不融となり、分子量の測定が不可能である。化合物(1)は多官能アクリレートのような多官能モノマーと共重合させると、熱硬化性樹脂を容易に製造できる。
【0087】
重合体(2)を製造するには、用途によって重合法を選択することが好ましい。例えば、位相差フィルムや偏光素子(polarizing element)などの光学異方性膜を製造するには、液晶状態を保持したまま重合させたいので、紫外線、電子線などのエネルギーを照射する方法が好ましい。重合体(2)が液晶性を有するときには、重合体(2)を薄膜に成形しても同様な用途に活用できる。
【0088】
熱重合法や光重合法によって得られた重合体(2)は、各種の保護膜、液晶配向膜(alignment film)、視野角補償膜(viewing angle compensator)などに利用できる。偏光させた紫外線は重合性化合物の分子配向を偏光の方向に揃えて重合させるので、ラビングを必要としない配向膜などへの応用も可能である。配向膜はスピンコート法、ラングミュアー・ブロージェット法、印刷法などを用いて形成できる。得られる配向膜の膜厚は、液晶の配向制御の点で1〜100nmが好ましい。
【0089】
化合物(1)は光による重合性が極めて高く、そのままの状態で光重合により重合体(2)を製造できる。反応時間を短縮するために開始剤を使用してもよい。光によるラジカル重合の好ましい開始剤は、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(商品名:ダロキュアー1173)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュアー184)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名:イルガキュアー651)、イルガキュアー500、イルガキュアー2959、イルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー1300、イルガキュアー819、イルガキュアー1700、イルガキュアー1800、イルガキュアー1850、ダロキュアー4265、イルガキュアー784、p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、および2,4−ジエチルキサントン/p−ジメチルアミノ安息香酸メチルとの混合物である。
【0090】
熱によるラジカル重合の好ましい開始剤は、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルパーオキシジイソブチレート、過酸化ラウロイル、2,2´−アゾビスイソ酪酸ジメチル、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリルなどである。熱重合は一般的に0〜150℃の反応温度で、1〜100時間で行う。通常、熱重合は開始剤を使用して行う。
【0091】
アニオン重合法、カチオン重合法、配位重合法、またはリビング重合法の好ましい触媒は、n−CLi、t−CLi−RAlなどのアルカリ金属アルキル、アルミニウム化合物、遷移金属化合物などである。
【0092】
重合反応には溶媒を用いてもよい。溶媒の好ましい例は、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、およびこれらの混合溶媒である。配向膜、反射防止膜(anti-reflection film)、視野角補償膜などを光重合によって製造するときには、溶媒を含有する組成物を基板上にスピンコート法で塗布し、溶媒を除去したのち光を照射して重合させてもよい。
【0093】
重合体(2)は、溶媒に溶解してフィルムなどの各種成形品に成形することができる。好ましい溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドジメチルアセタール、テトラヒドロフラン、クロロホルム、1,4−ジオキサン、ビス(メトキシエチル)エーテル、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、トリフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸エチル、およびヘキサフルオロ−2−プロパノールである。しかし、溶媒はこれらに制限されることはなく、アセトン、ベンゼン、トルエン、ヘプタン、塩化メチレンなど一般的な有機溶媒との混合物であってもよい。
【0094】
光学異方性を有する成形体は、例えば以下の方法によって得られる。重合体(2)を有機溶媒に溶解した溶液を、予め配向処理した透明基板に塗布する。これを重合体(2)のガラス転移点以上の温度に加熱する。次いで放冷することにより、均一に配向した重合体の薄膜を形成させて光学異方性を有する成形体を製造する。透明基板は、ガラス板または高分子フィルムである。高分子フィルムの例は、トリアセチルセルロース、JSR(株)製の「アートン」(商品名)、日本ゼオン(株)製の「ゼオネックス」(商品名)および「ゼオノア」(商品名)、三井化学(株)製の「アペル」(商品名)などである。均一な膜厚を得る好ましい塗布方法は、スピンコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、ワイヤーバーコード法、デップコート法、スプレーコート法、メニスカスコート法などである。
【0095】
光学異方性を有する成形体の厚さは、目的とする素子に応じたレタデーションや液晶フィルムの複屈折率によって最適な厚さが異なる。従って、その範囲を厳密に決定することはできないが、好ましい液晶フィルムの厚さは、一応0.05〜50μmである。そして、より好ましい範囲は0.1〜20μmであり、さらに好ましい範囲は0.1〜10μmである。光学異方性を有する成形体のヘーズ値は、1.5%以下であり、より好ましくは1.0%以下である。ヘーズ値と相関する透過率は80%以上であり、より好ましくは85%以上である。可視光領域で透過率がこれらの割合を満たすことが好ましい。ヘーズ値の範囲1.5%以下は、偏光性能に問題を生じさせないために好ましい条件である。透過率の範囲80%以上は、この光学異方性を有する成形体を液晶表示素子に用いるとき、明るさを維持するために好ましい条件である。
【0096】
重合体(2)は、光学異方性を有するので、単独で位相差フィルム(retardation film)に使用できる。この重合体を他の位相差フィルムと組み合わせることにより、偏光膜(polarizing film)、円偏光膜(circular polarizing film)、楕円偏光膜(elliptical polarizing film)、反射防止膜(anti-reflection film)、色補償板(color compensator)、視野角補償板(viewing angle compensator)などに利用できる。
【0097】
また、化合物(1)は、強誘電性液晶または反強誘電性液晶と混合して重合することで、高分子化によって安定化された強誘電性液晶表示素子または反強誘電性液晶表示素子を形成することができる。表示素子自体の具体的な構築方法は文献などで公知である(J. of Photopoly. Sci. Technol., 2000, 13(2), 295-300)。
【0098】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されない。化合物の構造は核磁気共鳴スペクトル、質量スペクトルなどで確認した。相転移温度の単位は℃であり、Cは結晶を、SmXまたはSmはスメクチック相を、Nemはネマチック相を、Iは等方性液体相を、かっこ内はモノトロピックの液晶相を表す。例えば、「C 100.0 Nem」の表示は、結晶からネマチック相への相転移温度が100.0℃であることを表す。相転移温度はDSCおよび偏光顕微鏡を用いて観察した。容量の単位であるリットルは記号Lで表記する。
【0099】
重量平均分子量と数平均分子量の測定には、(株)島津製作所製の島津LC−9A型ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)および昭和電工(株)製のカラムShodex GF−7M HQ(展開溶媒はDMFまたはTHF)を用いた。鉛筆硬度はJIS規格「JIS−K−5400 8.4 鉛筆引掻試験」の方法に従って求めた。
【0100】
実施例1
4−(4−ペンチルベンゾイルオキシ)フェニル ビニル ケトンの製造
下記の経路により化合物(1−5−11)を製造した。
Figure 0004608852
【0101】
第1段 2−クロロエチル 4−メトキシフェニル ケトン(b)の製造
アニソ−ル(a)(230.8g)、塩化アルミニウム(298.8g)および塩化メチレン(500mL)の混合物を氷浴で冷却した。ここへ3−クロロプロピオニルクロリド(271g)および塩化メチレン(200mL)の混合物を内温10℃以下に保ちながら滴下した。冷浴を除きマントルヒ−タ−で加熱し30分間還流した後、反応液を氷と塩酸の混合物に注ぎ込んだ。分液ロ−トに移し分離した有機相を水洗した。減圧下で溶媒を留去し残留物をソルミックスで再結晶し、結晶をろ別乾燥して76.2gの2−クロロエチル 4−メトキシフェニル ケトン(b)を無色結晶として得た。
融点:59−64℃。
【0102】
第2段 4−ヒドロキシフェニル ビニル ケトン(c)の製造
2−クロロエチル 4−メトキシフェニル ケトン(b)(69.4g)を塩化メチレン(200mL)に溶解し、塩化アルミニウム(130.8g)を少量づつ投入した。この混合物をマントルヒ−タ−で加熱し2時間還流した。反応終了後、冷却した反応液を氷の中に注ぎ、有機相を酢酸エチル(200mL)で抽出し分液ロ−トに移した。有機相を水洗した後、2M−NaOH水溶液で目的物を抽出した。このアルカリ水溶液を6M−塩酸で酸性としたのち、再度酢酸エチルで抽出した。減圧下で溶媒を留去し残留物をトルエンから再結晶し37.9gの4−ヒドロキシフェニル ビニル ケトン(c)を無色結晶として得た。
融点:99−102.6℃。
【0103】
第3段 4−(4−ペンチルベンゾイルオキシ)フェニル ビニル ケトン(1−5−11)の製造
4−ヒドロキシフェニル ビニル ケトン(c)(1.0g)、4−ペンチル安息香酸(1.2g)、DCC(1.9g)、DMAP(0.1g)、および塩化メチレン(30mL)の混合物を室温で12時間攪拌した。析出した白色固体をろ別し、ろ液から溶媒を留去した。残留物を酢酸エチルに溶解し、2M−NaOH水溶液、次いで水で洗浄した。残留物をカラムクロマトグラフィー(溶出液:トルエン)、次いで再結晶(エタノール)で精製し、0.4gの化合物(1−5−11)を無色結晶として得た。NMRおよびMSスペクトルはよくその構造を支持した。
相転移点:C 59.8 Nem 74.3 I。
【0104】
実施例2
4−(4´−ヘプチル−1,1´−ビフェニル−4−カルボニルオキシ)フェニル ビニル ケトン(1−13−8)の製造。
下記の経路で化合物(1−13−8)を製造した。
Figure 0004608852
【0105】
4−ヒドロキシフェニル ビニル ケトン(c)(1g)、4´−ヘプチル−1,1´−ビフェニル−4−カルボン酸(1.8g)、DCC(1.9g)、DMAP(0.1g)、および塩化メチレン(30mL)の混合物を室温で12時間攪拌した。析出した白色固体をろ別し、ろ液から溶媒を留去した。残留物を酢酸エチルに溶解し、2M−NaOH水溶液、次いで水で洗浄した。溶媒を留去し残留物をカラムクロマトグラフィー(溶出液:トルエン)、次いで再結晶(エタノール)で精製し、0.5gの化合物(1−13−8)を無色結晶として得た。
NMRおよびMSスペクトルはよくその構造を支持した。
相転移点:C 118.8 Nem。
化合物(1−13−8)は120℃以上で重合する。故に透明点の測定は不可能であった。
【0106】
実施例3
4−(4−プロピルベンゾイルオキシ)フェニル ビニル ケトン(1−5−10)の製造
4−ペンチル安息香酸の代わりに4−プロピル安息香酸を用い、実施例1の方法に従い化合物(1−5−10)を得た。
相転移点:C 71.0 (Nem 69) I。
【0107】
実施例4
4−[4−(2−メチルブチル)ベンゾイルオキシ]フェニル ビニル ケトン(1−5−12)の製造
4−ペンチル安息香酸の代わりに4−(2−メチルブチル)安息香酸を用い、実施例1の方法に従い4−[4−(2−メチルブチル)ベンゾイルオキシ]フェニル ビニル ケトン(1−5−12)を得た。
相転移点:C 52.7 (Nem 29) I。
【0108】
実施例5
4−(4−シアノベンゾイルオキシ)フェニル ビニル ケトン(1−5−13)の製造
4−ペンチル安息香酸の代わりに4−シアノ安息香酸を用い、実施例1の方法に従い化合物(1−5−13)を得た。
融点122℃。
【0109】
実施例6
4−(4−ヘキシルオキシベンゾイルオキシ)フェニル ビニル ケトン(1−5−14)の製造
4−ペンチル安息香酸の代わりに4−ヘキシルオキシ安息香酸を用い、実施例1の方法に従い化合物(1−5−14)を得た。
相点移転:C 80 SmX 94 Nem 107 I。
【0110】
実施例7
実施例1〜6の方法に準じて、化合物(1−1−1)〜(1−59−3)を製造する。
【0111】
Figure 0004608852
【0112】
Figure 0004608852
【0113】
Figure 0004608852
【0114】
Figure 0004608852
【0115】
Figure 0004608852
【0116】
Figure 0004608852
【0117】
Figure 0004608852
【0118】
Figure 0004608852
【0119】
Figure 0004608852
【0120】
Figure 0004608852
【0121】
Figure 0004608852
【0122】
Figure 0004608852
【0123】
Figure 0004608852
【0124】
Figure 0004608852
【0125】
Figure 0004608852
【0126】
Figure 0004608852
【0127】
Figure 0004608852
【0128】
Figure 0004608852
【0129】
Figure 0004608852
【0130】
Figure 0004608852
【0131】
Figure 0004608852
【0132】
Figure 0004608852
【0133】
Figure 0004608852
【0134】
Figure 0004608852
【0135】
Figure 0004608852
【0136】
Figure 0004608852
【0137】
Figure 0004608852
【0138】
Figure 0004608852
【0139】
Figure 0004608852
【0140】
Figure 0004608852
【0141】
Figure 0004608852
【0142】
Figure 0004608852
【0143】
Figure 0004608852
【0144】
Figure 0004608852
【0145】
Figure 0004608852
【0146】
実施例8
化合物(1−5−11)100重量部に光重合開始剤イルガキュアー907(商品名:チバスペシャリティー・ケミカルズ製)3重量部を添加した。この光重合開始剤を含む重合性化合物をシクロペンタノン412重量部中に溶解し、20重量%濃度の溶液を調整した。この溶液をウエット膜厚として約12 μmが得られるバーコーダーを用いてラビング配向処理を施したポリイミド配向膜付きガラス基板に塗布した。これを65 ℃に加熱したホットプレート上に120秒間置き、溶媒乾燥と液晶配向を行った。さらに、ホットプレートで65 ℃に加熱した状態で、250 W/cmの超高圧水銀灯を用いて、30 mW/cm(中心波長365 nm)の強度の光を20秒間照射して窒素雰囲気中にて重合させた。こうして得られた光学薄膜を偏光顕微鏡にて観察したところ配向欠陥のない均一な液晶配向が得られていることを確認した。ベレックコンペンセーターを用いてレタデーションを求めたところ、60nmの値を得た。
【0147】
実施例9
化合物(1−5−11)30重量部、化合物(1−13−8)30重量部、化合物(OP−15)40重量部からなる重合性組成物に光重合開始剤イルガキュアー907(商品名:チバスペシャリティー・ケミカルズ製)3重量部を添加した。この光重合開始剤を含む重合性組成物をシクロペンタノン412重量部中に溶解し、20重量%濃度の溶液を調整した。この溶液をウエット膜厚として約12 μmが得られるバーコーターを用いてラビング配向処理を施したポリイミド配向膜付きガラス基板に塗布した。これを70 ℃に加熱したホットプレート上に120秒間置き、溶媒乾燥と液晶配向を行った。さらに、ホットプレートで70 ℃に加熱した状態で、250 W/cmの超高圧水銀灯を用いて、30 mW/cm(中心波長365 nm)の強度の光を20秒間照射して窒素雰囲気中にて重合させた。その結果、赤色の選択反射を呈する光学薄膜を得た。
【0148】
実施例10
実施例1で製造した化合物(1−5−11)80重量部、4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)シアノベンゼン5重量部、4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)シアノベンゼン5重量部、4−(トランス−4−ヘプチルシクロヘキシル)シアノベンゼン5重量部、および4'−(トランス−4−ヘプチルシクロヘキシル)シアノビフェニル5重量部からなる組成物に光重合開始剤イルガキュアー907(商品名:チバスペシャリティー・ケミカルズ製)3重量部を添加した。この光重合開始剤を含む組成物をシクロペンタノン412重量部中に溶解し、20重量%濃度の溶液を調整した。この溶液をウエット膜厚として12 μmが得られるバーコーダーを用いてラビング配向処理を施したポリイミド配向膜付きガラス基板に塗布した。これを60 ℃に加熱したホットプレート上に120秒間置き、溶媒乾燥と液晶配向を行った。さらに、ホットプレートで60 ℃に加熱した状態で、250 W/cmの超高圧水銀灯を用いて、30 mW/cm(中心波長365 nm)の強度の光を20秒間照射して窒素雰囲気中にて重合させた。こうして得られた光学薄膜を偏光顕微鏡にて観察したところ配向欠陥のない均一な液晶配向が得られていることを確認した。ベレックコンペンセーターを用いてレタデーションを求めたところ、55nmの値を得た。
【0149】
実施例11
実施例1で製造した化合物(1−5−11)(10mg)、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル(0.1mg)およびベンゼン(100μL)をガラスのアンプルに入れた。これを−60℃に冷却して、真空ポンプで十分脱気したのちに封管した。このアンプルを70℃の水浴で24時間加熱した。得られた反応混合物を、メタノール(15mL)から3回再沈殿して重合体(8.1mg)を得た。GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は29,000、多分散度(Mw/Mn)は1.99であった。重合体(1.025mg)を純水(1mL)に浸し10日間50℃で放置した。重合体を取り出しよく乾燥し重量を測定したところ1.028mgであった。本重合体の吸水率が小さいことがわかる。
【0150】
実施例12
実施例10で製造した重合体(5mg)をNMP(N−メチルピロリドン、1.0ml)に溶解させ、十分に洗浄した2枚のガラス板に塗布し、スピンコート法により均一な厚さにした。これらのガラス板を150℃で3時間加熱し、溶媒を除去した。ラビング布を装着したローラーで、2枚のガラス板の表面を一方向にこすった。2枚のガラス板をラビング方向が同一になるように組み合わせ、間隔が10μmであるセルを作成した。このセルにメルク社製の液晶組成物ZLI−1132(商品名)を室温で注入した。液晶セル中の液晶組成物は均一なホモジニアス配向を示した。
【0151】
比較例1
水素化カルシウム上で蒸留し完全に乾燥したDMSO(100mL)にt−BuOK(5.7g)を加え10分間攪拌し、白色の懸濁液を得た。ここへ、5℃を保ちながら、実施例1(第1段)で製造した2−クロロエチル 4−メトキシフェニル ケトン(9.9g)をゆっくりと滴下した。反応混合物は速やかに黒色を呈した。同温度で5時間攪拌したのち、反応混合物を水(500mL)に投入しジエチルエーテルで抽出した。減圧下で溶媒を除去し残留物をNMRおよびGCで分析した。目的の4−メトキシフェニル ビニル ケトンに由来するスペクトルは一切観測されず、複雑な混合物のみが得られた。
【0152】
【発明の効果】
本発明の化合物は、液晶相の広い温度範囲を有し、他の化合物との優れた相溶性を有し、さらに、光学異方性などの必要な特性を有する液晶性化合物およびこの化合物を含有する液晶組成物に使用できる。本発明の重合体は、透明性、機械的強度、塗布性、溶解度、結晶化度、収縮性、透水度、吸水度、融点、ガラス転移点、透明点、耐薬品性などの特性の多くに優れ、この重合体から光学異方性を有する成形体を製造できる。

Claims (16)

  1. 式(1)で表される化合物。
    Figure 0004608852
    式中、R1は−CN、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数1〜19のアルコキシであり;R、RおよびRは水素であり;A1、A2、A3、およびA4は独立して、1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり;Z1、Z2およびZ3は独立して、単結合または−COO−であり;Zは単結合であり;m、nおよびqは独立して、0、1または2であり、m、nおよびqの和は1または2である。ただし、A4が1,4−フェニレンのとき、R1-(A1-Z1)m-(A2-Z2)n-(A3-Z3)q-がアルキルシクロヘキシルまたはアルキルフェニルであることはない。
  2. (1)においてm、nおよびqの和が1である請求項に記載の化合物。
  3. 請求項1に記載の式(1)においてR1が炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数1〜10のアルコキシである請求項1または2に記載の化合物。
  4. 少なくとも2つの重合性化合物を含有し、重合性化合物のすべてが請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物である液晶組成物。
  5. 少なくとも2つの重合性化合物を含有し、請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物の少なくとも1つと、該化合物以外の重合性化合物の少なくとも1つとを含有する液晶組成物であり、該化合物以外の重合性化合物が下記で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物である、液晶組成物。
    メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、塩化ビニル、フッ化ビニル、酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2,2−ジメチルブタン酸ビニル、2,2−ジメチルペンタン酸ビニル、2−メチル−2−ブタン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、2−エチル−2−メチルブタン酸ビニル、N−ビニルアセトアミド、p−t−ブチル安息香酸ビニル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸ビニル、安息香酸ビニル、スチレン、o−、m−またはp−クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、エチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルモノビニルエーテル、t−アミルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールメチルビニルエーテル、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールEO付加トリアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、トリスアクリロキシエチルフォスフェート、ビスフェノールA EO付加ジアクリレート、ビスフェノールAグリシジルジアクリレート、およびポリエチレングリコールジアクリレート。
  6. 少なくとも2つの重合性化合物を含有し、請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物の少なくとも1つと、該化合物以外の重合性化合物の少なくとも1つとを含有する液晶組成物であり、該化合物以外の重合性化合物が下記で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物である、液晶組成物。
    Figure 0004608852
    上式において、Wは水素、フッ素、塩素、または−CHであり、yは1〜20の整数である。
  7. 液晶組成物が、さらに下記で表される化合物から選択された少なくとも1つの光学活性化合物を含有する請求項のいずれか1項に記載の液晶組成物。
    Figure 0004608852
    Figure 0004608852
    Figure 0004608852
  8. 式(2)で表される構成単位を有する重合体。
    Figure 0004608852
    式中、R1は−CN、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数1〜19のアルコキシであり;R、RおよびRは水素であり;A1、A2、A3、およびA4は独立して、1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり;Z1、Z2およびZ3は独立して、単結合または−COO−であり;Zは単結合であり;m、nおよびqは独立して、0、1または2であり、m、nおよびqの和は1または2である。ただし、A4が1,4−フェニレンのとき、R1-(A1-Z1)m-(A2-Z2)n-(A3-Z3)q-がアルキルシクロヘキシルまたはアルキルフェニルであることはない。
  9. (2)においてm、nおよびqの和が1である請求項に記載の重合体。
  10. 式(2)においてR1が炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数1〜10のアルコキシである請求項に記載の重合体。
  11. 請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物の1つを単独重合させて得られる、請求項に記載の重合体。
  12. 請求項4〜のいずれか1項に記載の液晶組成物から得られる、請求項に記載の重合体。
  13. 請求項12のいずれか1項に記載の重合体からなる光学異方性を有するフィルム。
  14. 請求項12のいずれか1項に記載の重合体を含有する液晶表示素子。
  15. 請求項13に記載の光学異方性を有するフィルムを含有する液晶表示素子。
  16. Figure 0004608852
    (式(1a)および(1b)中、Rは−CN、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数1〜19のアルコキシであり;R、RおよびRは水素であり;A1、A2、A3、およびA4は独立して、1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり;Z1、Z2およびZ3は独立して、単結合または−COO−であり;Zは単結合であり;m、nおよびqは独立して、0、1または2であり、m、nおよびqの和は1または2であり、Halは塩素、臭素またはヨウ素である。ただし、A4が1,4−フェニレンのとき、R1-(A1-Z1)m-(A2-Z2)n-(A3-Z3)q-がアルキルシクロヘキシルまたはアルキルフェニルであることはない。)で表される式(1a)の化合物1モル当量に、1〜10モル当量の割合の無水塩化アルミニウムを−70℃〜200℃で作用させ、脱ハロゲン化水素反応を行うことを特徴とする、式(1b)で表されるビニルケトン化合物の製造方法
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