以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本発明の機上現像型平版印刷版原版および平版印刷方法は、支持体上に、一般式(1)で表される官能基(但し、nは2以上80以下の整数)を有する変色剤を含有する層を設けてなることを特徴とするものであるが、本明細書には、参考のためその他の事項についても記載した。
〔機上現像型平版印刷版原版〕
本発明の機上現像型平版印刷版原版は、支持体上に、下記一般式(1)で表される官能基を有する変色剤(以下、「変色剤(A)」ともいう)を含有する層を有する。
−(CHR1CH2O)n−R2 (1)
一般式(1)中、
R1は、水素原子又はメチル基を表す。
R2は、水素原子、アルキル基、アリール基又はアシル基を表す。
nは、1以上の整数を表す。
一般式(1)に於ける、R2のアルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル等を挙げることができる。
R2のアリール基は、炭素数6〜15のアリール基が好ましく、例えば、フェニル、ナフチル、アントラニル等を挙げることができる。
R2のアシル基は、炭素数1〜5のアシル基が好ましく、例えば、アセチル、プロピオニル、ブタノイル等を挙げることができる。
nは、1以上100以下が好ましく、2以上80以下がより好ましい。
本発明に用いられる変色剤(A)は、熱及び/又は光によって自身が変化して変色する化合物や、熱及び/又は光によって分解する化合物から形成される分解物との相互作用によって変色する化合物であって、一般式(1)で表される官能基を有する化合物である限り、いずれの変色剤も好適に使用することができる。
変色剤(A)の具体例としては、例えば、ロイコクリスタルバイオレット、ロイコオパールブルー、ロイコベルベリンブルーI、ロイコマラカイトグリーン、ロイコローザニリン等のロイコトリアリールメタン化合物、3,6−ビス(ジメチルアミノ)−9−(p−ジメチルアミノフェニル)キサンテン等のロイコキサンテン化合物、3,6−ビス(ジメチルアミノ)−9−(p−ジメチルアミノフェニル)チオキサンテン等のロイコチオキサンテン化合物、クリスタルバイオレットラクトン、フェノールフタレイン、o−クレゾールフタレイン等のトリアリールメタンラクトン(フタリド)化合物、ブロモフェノールブルー、ブロモクレゾールパープル、クロロフェノールレッド、ブロモクレゾールグリーン、ブロモチモールブルー、フェノールレッド、クレゾールレッド、キシレノールブルー、チモールブルー等のトリアリールメタンサルトン化合物、アルカリブルー6B、ペンタメトキシレッド、マラカイトグリーンカルビノール塩酸塩等のトリアリールカルビノール化合物、オーラミンベース等のビスアリールメタン化合物、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン、エチルバイオレット、ビクトリアピュアブルー、ブリリアントグリーン等のトリアリールメタン化合物、フルオレセイン、エオシンB、ローズベンガルラクトン、ローダミンBベース、ピロガロールレッド、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等のフルオラン化合物、メチレンバイオレット、メチレンブルー、トルイジンブルーO等のチアジン化合物、1,3,3−トリメチルインドリノベンゾピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−8'−メトキシベンゾピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−6'−ニトロベンゾピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノナフトスピロオキサジン、1,3,3−トリメチルインドリノ−8'−ピペリジノナフトスピロオキサジン等のスピロ化合物、メチルイエロー、メチルオレンジ、コンゴーレッド、メチルレッド、アリザリンイエロー等のアゾ化合物、ニュートラルレッド、インドシアニンB、アニリンブラック等のアジン化合物、ナイルブルー等のオキサジン化合物、ステインズ−オール(STAINS−ALL)、スルホプロピルスルフォプロピル−ナフトチアゾイリデンメチルブチニルナフトチアゾール、3,3'−ジエチルオキサカルボシアニンアイオダイド、2−{4−(ジメチルアミノ)スチリル}−1−メチルキナリニウムアイオダイド、キナリジンレッド、チアゾールオレンジ、ニューインドシアニングリーン、3,3'−ジエチルチオカルボシアニンアイオダイド等のシアニン色素、エチリデンコハク酸誘導体(フルギド系化合物)、ジアリールエテン化合物、オキソノール系化合物等であって、一般式(1)で表される官能基を有する化合物を挙げることができる。
変色剤(A)は、例えば、ロイコトリアリールメタン化合物、ロイコキサンテン化合物、ロイコチオキサンテン化合物、トリアリールメタンラクトン(フタリド)化合物、トリアリールメタンサルトン化合物、トリアリールカルビノール化合物、ビスアリールメタン化合物、トリアリールメタン化合物、フルオラン化合物、チアジン化合物、スピロ化合物、アゾ化合物、アジン化合物、オキサジン化合物、シアニン色素、エチリデンコハク酸誘導体(フルギド系化合物)、ジアリールエテン化合物、オキソノール系化合物等の市販の化合物に一般式(1)で表される官能基を導入することによって製造することができるし、上記化合物の合成原料に一般式(1)で表される官能基を導入した後、変色剤へと変換することによって製造することもできる。
本発明に用いられる変色剤(A)の具体例を以下に記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
変色剤(A)は、熱及び/又は光によって自身が変化して変色する化合物でもよいし、熱及び/又は光によって分解する化合物(例えば、ラジカル発生剤、酸発生剤、塩基発生剤等)が発生する分解物(例えば、ラジカル、酸、塩基等)との相互作用によって変色する化合物でもよい。
ラジカルとの相互作用によって変色する変色剤(A)としては、例えば、トリアルールメタン化合物、ビスアリールメタン化合物等であって、一般式(1)で表される官能基を有する化合物を挙げることができる。
酸との相互作用によって変色する変色剤(A)としては、例えば、キサンテン化合物、フルオラン化合物、チアジン化合物、スピロピラン化合物、スピロオサジン化合物、トリアリールメタン化合物、ビスフェニルメタン化合物等であって、一般式(1)で表される官能基を有する化合物を挙げることができる。酸との相互作用によって変色する変色剤(
A)は、通常、酸発生剤、酸増殖剤とともに使用される。
塩基との相互作用によって変色する変色剤(A)としては、例えば、シアニン色素等のポリメチン色素であって、一般式(1)で表される官能基を有する化合物を挙げることができる。塩基との相互作用によって変色する変色剤(A)は、通常、塩基発生剤、塩基増殖剤とともに使用される。
[酸発生剤]
本発明において用いられる酸発生剤は、光または熱により酸を発生する化合物であり、たとえば特開平10−282644号公報の〔0039〕〜〔0063〕に記載されている化合物などを挙げることができる。
具体的には、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、 T.S.Bal et al,Polymer, 21,423(1980)等に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、同4,069,056号明細書、特開平3−140,140号公報等に記載のアンモニウム塩、D.C.Necker et al, Macromolecules, 17,2468(1984)、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct.(1988)、米国特許第4,069,055号明細書、同4,069,056号明細書等に記載のホスホニウム塩、J.V.Crivello et al, Macromolecules,10(6),1307(1977)、Chem.& Eng.News, Nov.28,p31(1988)、欧州特許第104,143号明細書、米国特許第339,049号明細書、同第410,201号明細書、特開平2−150,848号、特開平2−296,514号等に記載の ヨードニウム塩、J.V.Crivello et al,Polymer J.17,73(1985)、J.V.Crivelloet al.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Wattet al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed., 22, 1789(1984)、 J.V.Crivello et al, Polymer Bull., 14,279 (1985)、 J.V.Crivello et al, Macromolecules, 14 (5), 1141(1981)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,PolymerChem.Ed.,17,2877(1979)、欧州特許第370,693号明細書、米国特許3,902,114号明細書、欧州特許第233,567号明細書、同297,443号明細書、同297,442号明細書、米国特許第4, 933,377号明細書、同410,201号明細書、同339,049号明細書、同4,760,013号明細書、同4,734,444号明細書、同2,833,827号明細書、獨国特許第2, 904,626号明細書、同3,604,580号明細書、同3,604,581号明細書等に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al, Macromolecules, 10 (6), 1307 (1977)、 J.V.Crivello et al, J. Polymer Sci., Polymer Chem. Ed., 17, 1047 (1979)等に記載のセレノニウム塩、 C.S.Wen et al, Teh, Proc. Conf. Rad. Curing ASIA, p478 Tokyo, Oct.(1988)等に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩、米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46−4605号公報、特開昭48−36281号公報、特開昭55−32070号公報、特開昭60−239736号公報、特開昭61−169835号公報、特開昭61−169837号公報、特開昭62−58241号公報、特開昭62−212401号公報、特 開昭63−70243号公報、特開昭63−298339号公報等に記載の有機ハロゲン化合物、K.Meier et al, J. Rad. Curing, 13 (4), 26 (1986)、 T.P.Gill et al, Inorg. Chem., 19, 3007 (1980)、 D.Astruc, Acc. Chem. Res., 19 (12),377 (1896)、 特開平2−161445号公報等に記載の有機金属/有機ハロゲン化物、S. Hayase et al, J. Polymer Sci., 25, 753 (1987)、 E. Reichmanis et al, J. Pholymer Sci., Polymer Chem. Ed.,23, 1 (1985)、 Q. Q. Zhu et al, J. Photochem., 36, 85, 39, 317 (1987)、 B. Amit et al, Tetrahedron Lett., (24) 2205 (1973)、 D. H. R. Barton et al, J. Chem Soc., 3571 (1965)、 P. M. Collins et al, J. Chem. Soc., Perkin I, 1695 (1975)、 M. Rudinstein et al, Tetrahedron Lett., (17), 1445 (1975)、 J. W. Walker et al, J. Am. Chem. Soc., 110, 7170 (1988)、 S. C. Busman et al, J. Imaging Technol., 11(4), 191 (1985)、 H. M. Houlihan et al, Macormolecules, 21, 2001 (1988)、 P.M.Collins et al, J. Chem. Soc., Chem. Commun., 532 (1972)、 S. Hayaseetal, Macromolecules, 18, 1799 (1985)、 E. Reichmanis et al, J. Electrochem. Soc., Solid State Sci. Technol., 130 (6)、 F. M. Houlihan et al, Macromolcules, 21,2001 (1988)、 欧州特許第0290,750号明細書、同046,083号明細書、同156,535号明細書、同271,851号明細書、同0,388,343号明細書、米国特許第3,901,710 号明細書、同4,181,531号明細書、特開昭60−198538号公報、特開昭53−133022号公報等に記載のo−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、 M. TUNOOKA et al, Polymer Preprints Japan, 35 (8)、 G. Berneret al, J. Rad. Curing, 13 (4)、 W. J. Mijs et al, Coating Technol., 55 (697), 45 (1983), Akzo、 H. Adachi et al, Polymer Preprints, Japan, 37 (3)、欧州特許第0199,672号明細書、同84515号明細書、同199,672号明細書、同044,115号明細書、同0101,122号明細書、米国特許第4,618,564号明細書、同4, 371,605号明細書、同4,431,774号明細書、特開昭64−18143号公報、特開平2−245756号公報、特開平4−365048号公報等に記載のイミノスルフォネート等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、特開昭61−166544号公報等に記載のジスルホン化合物、特開昭50−36209号公報(米国特許第3969118号明細書)記載のo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハライド、特開昭55−62444号公報(英国特許第2038801号明細書)記載あるいは特公平1−11935号公報記載のo−ナフトキノンジアジド化合物を挙げることができる。
その他の酸発生剤としては、シクロヘキシルシトレート、p−アセトアミノベンゼンスルホン酸シクロヘキシルエステル、p−ブロモベンゼンスルホン酸シクロヘキシルエステル等のスルホン酸アルキルエステル、下記構造式で表されるアルキルスルホン酸エステル等を用いることができる。
上記光、熱または放射線の照射により分解して酸を発生する化合物の中で、特に有効に用いられるものについて以下に例示する。
(1)トリハロメチル基が置換した下記一般式(PAG1)で表されるオキサゾール誘導体または一般式(PAG2)で表されるS−トリアジン誘導体。
式中、R1 は置換もしくは未置換のアリール基、アルケニル基、R2 は置換もしくは未置換のアリール基、アルケニル基、アルキル基、−CY3 を示す。Yは塩素原子または臭素原子を示す。具体的には以下の化合物を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
(2)下記の一般式(PAG3)で表されるヨードニウム塩、または一般式(PAG4)で表されるスルホニウム塩、もしくはジアソニウム塩。
ここで式Ar1 、Ar2 は各々独立に置換もしくは未置換のアリール基を示す。好ましい置換基としては、アルキル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、メルカプト基およびハロゲン原子が挙げられる。
R3 、R4 、R5 は 各々独立に、置換もしくは未置換のアルキル基、アリール基を示す。好ましくは炭素数6〜14のアリール基、炭素数1〜8のアルキル基およびそれらの置換誘導体である。好ましい置換基としては、アリール基に対しては炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルキル基、ニトロ基、カルボキシル基、ヒドロキ シ基およびハロゲン原子であり、アルキル基に対しては炭素数1〜8のアルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基である。
またR3 、R4 、R5 のうちの2つおよびAr1 、Ar2 はそれぞれの単結合または置換基を介して結合してもよい。
Z- は対アニオンを示し、例えば BF4 - 、AsF6 - 、PF6 - 、SbF6 - 、SiF6 2-、ClO4 - 、CF3 SO3 -,C4F9 SO3 - 等 のパーフルオロアルカンスルホン酸アニオン、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸アニオン、ナフタレン−1−スルホン酸アニオン等の結合多核芳香族スルホン 酸アニオン、アントラキノンスルホン酸アニオン、スルホン酸基含有染料等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
具体例としては以下に示す化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
一般式(PAG3)、(PAG4)で示される上記オニウム塩は公知であり、たとえばJ.W.Knapczyk etal, J. Am. Chem. Soc., 91, 145(1969)、 A.L.Maycok etal, J. Org. Chem., 35, 2532,(1970)、 B.Goethas etal, Bull. Soc.Chem. Belg., 73, 546,(1964)、H.M. Leicester, J. Ame. Chem. Soc., 51,3587(1929)、J.V.Crivello etal, J.Polym. Chem. Ed., 18, 2677(1980)、米国特許第2,807,648号および同4,247,473号明細書、特開昭53−101331号公報等に記載の方法により合成することができる。
(3)下記一般式(PAG5)で表されるジスルホン誘導体または一般式(PAG6)で表されるイミノスルホネート誘導体。
式中Ar3 、Ar4 は各々独立に置換もしくは未置換のアリール基を示す。R6 は置換もしくは未置換のアルキル基、アリール基を示す。Aは置換もしくは未置換のアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基を示す。
具体例としては以下に示す化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記酸発生剤の使用量は、変色剤(A)を含有する層の全固形分に対して通常0.1〜50質量%、より好ましくは1〜40質量%である。上記範囲内において、感度および画像強度が良好となる。
[酸増殖剤]
本発明において用いる酸増殖剤は、酸触媒反応によって更に酸を発生して反応系内の酸濃度を上昇させることができる化合物であり、酸が存在しない状態では安定に存在する化合物である。このような化合物は、1回の反応で1つ以上の酸が増えるため、反応の進行に伴って加速的に反応が進むが、発生した酸自体が自己分解を誘起するため、ここで発生する酸の強度は、酸解離定数、pKaとして3以下であるのが好ましく、特に2以下であるのが好ましい。
酸増殖剤の具体例としては、特開平10−1508号公報〔0203〕〜〔0223〕、特開平10−282642号公報〔0016〕〜〔0055〕及び特表平9−512498号公報第39頁12行目〜第47頁2行目に記載の化合物を挙げることができる。更に具体的には、以下の通りである。
本発明で用いることができる酸増殖剤としては、酸発生剤から発生した酸によって分解し、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フェニルホスホン酸などのpKaが3以下の酸を発生させる化合物を挙げることができる。具体的には以下の低分子化合物を例示することができる。第一に、一般式(2)で表される有機酸エステル化合物を挙げることができる。
(式中、A1 は炭素原子数1〜6までのアルキル基または芳香環炭素原子数6〜20のアリール基を示し、A2 は炭素原子数1〜6までのアルキル基を示し、A3 はビス(p−アルコキシフェニル)メチル基、2−アルキル−2−プロピル基、2−アリール−2−プロピル基、シクロヘキシル基またはテトラヒドロピラニル基から選択される基を示し、Z'は酸解離定数(pKa)が3以下であるZ'OHで示される酸の残基を示す。)
この化合物に酸が作用すると、エステル基が分解してカルボン酸となり、これがさらに脱カルボン酸を起こしてから(Z'OH)が容易に脱離する。具体的な例を以下に示す。
第二に、一般式(3)で表されるアセタールまたはケタール基を持つ有機酸エステルを挙げることができる。
(式中、Z'は前記と同じ意味を持ち、B1 は水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基または芳香環炭素原子数6〜20のアリール基であり、B2 、B3 はメチルあるいはエチル基または両者でエチレンまたはプロピレン基を形成し、B4は水素原子またはメチル基を示す。)
この化合物は酸の作用でアセタールあるいはケタールが分解してβ−アルデヒドあるいはケトンとなり、これからZ'OHが容易に脱離する。具体的な例を以下に示す。
第三に、一般式(4)で表される有機酸エステルを挙げることができる。
(式中、Z'は前記と同じ意味を持ち、D1 、D2 は水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基または芳香環炭素原子数6〜20のアリール基を示し、D3は炭素原子数1〜6のアルキル基を示し、D2 とD3 で脂環状構造を形成するアルキレンあるいは置換アルキレン基を示す。)
この化合物は、酸触媒によって水酸基が脱離してカルボカチオンを形成し、水素移動してからZ'OHが発生するものと推定される。具体的な例を以下に示す。
第四に、一般式(5)で表されるエポキシ基を有する有機酸エステルを挙げることができる。
(式中、Z'は前記と同じ意味を持ち、Eは炭素原子数1〜6までのアルキル基またはフェニル基を示す。)
この化合物に酸が作用すると、エポキシ環の開環の生成に伴ってβ−炭素にカチオンが形成され、水素移動の結果として有機酸が発生するものと推定される。具体的な例を以下に示す。
これらの化合物は酸が作用しない限り室温で安定に存在する。これらの化合物の酸触媒分解が引き起こされるためには一定以上の酸強度が必要とされるが、酸解離定数pKaで約3以下であることが望ましい。これ以上の酸解離定数、すなわち、これ以上に弱い酸であれば、酸増殖剤の反応を引き起こすことができない。
このような低分子化合物を酸増殖剤として用いる場合、その使用量は、上記酸発生剤100質量部に対して100〜2000質量部とするのが、露光部と未露光部との色差を鮮明にする点で好ましく、150〜1500質量部とするのが更に好ましい。
また、本発明においては、側鎖に酸分解性末端基とスルホン酸発生基とを有する高分子化合物を酸増殖剤として用いることもできる。
この高分子化合物は、エステル基、ケタール基、チオケタール基、アセ タール基及び第三級アルコール基から選択される、酸により分解する末端基と、該末端基に隣接して該末端基が分解することにより分解してスルホン酸を発生させる基とを側鎖に有するが、より具体的にはこの側鎖構造は、下記一般式(I)で表されるものであることが好ましい。
一般式(I)
−L−SO3 −W1
(式中、W1 はエステル基、ケタール基、チオケタール基、アセタール基及び第三級アルコール基から選択される、酸により分解する基を示し、Lは一般式(I)で表される構造単位をポリマー骨格に連結するのに必要な多価の非金属原子から成る連結基を示す。)
即ち、上記一般式(I)中、−L−SO3 −で表される部分は、末端のW1 で表される酸分解性基の分解に伴って分解して、スルホン酸を発生させる基を表し、Lは非金属原子からなる多価の連結基であって、より具体的には下記の構造単位が組み合わさって構成されるものを挙げることができる。
多価の連結基が置換基を有する場合、置換基としてはメチル、エチルなどの炭素数1〜20までのアルキル基、フェニル、ナフチルなどの炭素数6〜16までのアリール基、水酸基、カルボキシル基、スルホンアミド基、N−スルホニルアミド基、アセトキシのような炭素数1〜6までのアシルオキシ基、メトキシ、エトキシのような炭素数1〜6までのアルコキシ基、塩素、臭素のようなハロゲン原子、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、シクロヘキシルオキ シカルボニルのような炭素数2〜7までのアルコキシカルボニル基、シアノ基、t−ブチルカーボネートのような炭酸エステル基などを用いることができる。 また、W1 は酸によって分解する末端基を示し、エステル基、ケタール基、チオケタール基、アセタール基及び第三級アルコール基から選択されるものである。以上説明したような、好ましくは一般式(I)で示される如き構造単位を側鎖に有する高分子化合物(以下、適宜、スルホン酸発生型 高分子化合物と称する)における一般式(I)は、好ましくは、下記一般式(1a)〜(4a)で示される構造単位を側鎖に有する高分子化合物を指す。
(式中、A1はアルキル基、もしくはアリール基を示し、A2は水素原子、アルキル基、もしくはアリール基を示し、A3は酸の作用により分解するカルボキシル基の保護基を表す。)
(式中、B1およびB4は水素原子、アルキル基、もしくはアリール基を示し、X は酸素原子、もしくは硫黄原子、B2およびB3はアルキル基、もしくはアリール基を表す。)
(式中、D1およびD2は水素原子、アルキル基、もしくはアリール基を示し、D3はアルキル基、もしくはアリール基を表す。)
(式中、E は水素原子、アルキル基、もしくはアリール基を表す。)
前記一般式(1a)において、A1はアルキル基、もしくはアリール基を示し、A2は水素原子、アルキル基、もしくはアリール基を示し、A3は酸の作用により分解するカルボキシル基の保護基を表す。ここで、A1はメチル、エチルなどの炭素数1〜20までのアルキル基;フェニル、4ーメトキシフェニルなどの如き炭素数6〜20までのアリール基を表す。A2は水素原子もしくはメチル、エチルなどの炭素数1〜20までのアルキル基、もしくはフェニル、4ーメトキシフェニルなどのような炭素数6〜20までのアリール基を表す。A1又はA2は、さらにアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アミド基などの置換基で置換されていてもよい。A3は 酸の作用により分解する基であり一般的にカルボキシル基の保護基として用いられる原子団を有用に用いることができる。この様な原子団としては T.W.Greene著 " Protective Groups in Organic Synthesis" John Wiley & Sons , Inc (1991)に記載の、カルボキシル基の保護基であり、かつ酸の作用により脱保護される原子団を挙げることができる。これらの原子団のうち、特に好ましいA3の具体的な例としては下記一般式(1A)〜(1D)の構造を用いることができる。
一般式(1A)
−C(−R1)(−R2)(−X−R3)
式中、R1は水素原子もしくはメチル、エチルなどの炭素数1〜20までのアルキル基;テトラヒドロフラニルなどのように−X−R3 と結合し環を形成する基;1ーメトキシシクロヘキシルなどのように−R2 と結合し環を形成する基を表す。R2はR1と同義、もしくはメトキシ、エトシキ、2ークロロエトキシなどのような炭素数1〜20までのアルコキシ基を表す。Xは酸素原子、もしくは硫黄原子を、R3はメチル、エチル、2ークロロエチル、ベンジル、4ーメトキシベンジル、2−(トリメチルシリル)エチル、 2−(t−ブチルジメチルシリル)エチル基のような炭素数1〜20までのアルキル基、フェニル、4ーメトキシフェニルなどのような炭素数6〜20までのアリール基を表す。ここで、R1〜R3は、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、アル コキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アミド基などの置換基で置換されていてもよい。一般式(1A)で表される原子団の具体的な例としては、メトキシメチル、メトキシチオメチル、ベンジルオキシメチル、p−メトキシベンジルオキシメチル、(4−メトキシフェノキシ)メチル、グアイアコルメチル、t−ブトキシメチル、4−ペンテノイルメチル、t−ブチル−ジメチルシリルオキシメチル、2−エトキシメトキシメチル、 2,2,2 −トリクロロエトキシメチル、ビス(2−クロロエトキシ)メチル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル、テトラヒドロピラニル、3−ブロモテトラヒド ロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、1−メトキシシクロヘキシル、4−メトキシテトラヒドロピラニル、4−メトキシテトラヒドロチオピラニル、S,S −ジオキシド−4−メトキシテトラヒドロチオピラニル、1−[(2−クロロ−4−メチル)フェニル]−4−メトキシピペリジン−4−イル、1,4 −ジオキサン−2−イル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフラニル、2,3,3a,4,5,6,7,7a −オクタヒドロ−7,8,8 −トリメチル−4,7−メタノベンゾフラン−2−イルなどの置換メチルエーテルを挙げることができる。
一般式(1B)
−C(−R4)(−R5)(−R6)
式中、R4、R5、R6は、それぞれ独立にメチル、エチル、2−クロロエチル,2−フェネチルなどの炭素数1〜20までのアルキル基を表す。このアルキル基は、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アミド基などの置換基で置換されていてもよ い。一般式(1B)で表される原子団の具体的な例としては、t−ブチル、t−オクチルなどを挙げることができる。
一般式(1C)
−C(−R7)(−R8)(−R9)
式中、R7、R8はそれぞれ独立に水素原子もしくはメチル、エチルなどの炭素数1〜20までのアルキル基、もしくはフェニル、4−メトキシフェニルなどのような炭素数6〜20までのアリール基を表し、R9はフェニル、4ーメトキシフェニルなどのような炭素数6〜20までのアリール基を表す。R7〜R9は、それぞれアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アミド基などの置換基で置換されていてもよい。一般式(1C)で表される原子団の具体的な例としては、4−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、2−ピコリル、ジフェニルメチル、5−ジベンゾスベリル、トリフェニルメチル、α−ナフチルジフェニルメチル、p−メトキシフェニルジフェニルメチル、4,4',4"−トリス(ベンゾイルオキシフェニル)メチル、3−(イミダゾール−1−イルメチル)ビス(4',4"−ジメトキシフェニル)メチル、9−アンスリル、9−(9−フェニル)キサンテニル、9−(9−フェニルー10ーオキソ)アンスリル、α−メチルシンナミルなどを挙げることができる。
一般式(1D)
−Si(−R10)(−R11)(−R12)
式中、R10 、R11 、R12 はメチル、エチルなどの炭素数1〜20までのアルキル基、もしくはフェニル、4−ブロモフェニル、4−メトキシフェニルなどのような炭素数6〜20までのアリール基を表す。R10 〜R12 はそれぞれアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アミド基などの置換基で置換されていてもよい。一般 式(1D)で表される原子団の具体的な例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル、トリベンジルシリル、トリフェニルシリル、ジフェニルメチルシリル、t−ブチルメトキシフェニルシリルなどを挙げることができる。
前記一般式(2a)中、B1およびB4は水素原子、アルキル基、もしくはアリール基を示し、Xは酸素原子、もしくは硫黄原子、B2およびB3はアルキル基、もしくはアリール基を表す。B1〜B4のアルキル基、アリール基としてはメチル、エチルなどの炭素数1〜
20までのアルキル基、もしくはフェニル、4−メトキシフェニルなどのような、炭素数6〜20までのアリール基を挙げることができる。B2、B3はともに結合して環を形成していても良い。B1〜B4はそれぞれアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アミド基などの置換基で置換されていてもよい。−C(−XB2)(−XB3) を含む構造の具体例としては、ジメチルアセタール、ジメチルケタール、ビス(2、2、2−トリクロロエチル)ケタール、ジベンジルアセタール、ジベンジルケタール、1,3−ジオキソラン、4−フェニル−1,3−ジオキソランジオキソラン、4−ブロモ−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、4−フェニル−1,3−ジオキサン、4−ブロモ−1,3−ジオキサン、1,3−オキサチオランなどのケタールおよびアセタールを挙げることができる。
前記一般式(3a)式中、D1およびD2は水素原子、アルキル基、もしくはアリール基を示し、D3はアルキル基、もしくはアリール基を表す。D1〜D3のアルキル基、アリール基としてはメチル、エチルなどの炭素数1〜20までのアルキル基、もしくはフェニル、4ーメトキシフェニルなどのような炭素数6〜20までのアリール基を挙げることができる。D1、D2はともに結合して環を形成していても良い。D1〜D3のアルキル基、アリール基は、それぞれアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アミド基などの置換基で置換されていてもよい。
前記一般式(4a)式中、Eは水素原子、アルキル基、もしくはアリール基を表す。Eのアルキル基、アリール基としてはメチル、エチルなどの炭素数1〜20までのアルキル基、もしくはフェニル、4−メトキシフェニルなどのような炭素数6〜20までのアリール基を挙げることができる。前記Eのアルキル基、アリール基は、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルコキシカル ボニル基、アシル基、アミド基などの置換基で置換されていてもよい。
本発明に用い得る一般式(1a)〜(4a)に示す官能基を側鎖に有する高分子化合物に代表される如きスルホン酸発生型高分子化合物をより具体的に示すと、下記に示すモノマーをラジカル重合して得られる高分子化合物を挙げることができる。モノマーの具体例としては下記化合物を挙げることができるが、本発明はこれにより限定されるものでない。
上記高分子化合物は、上述のモノマーを用い、ラジカル重合により得られるものが好ましく用いられるが、このようなスルホン酸発生型の高分子化合物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、一般式(I)に代表されるスルホン酸発生構造単位を有するモノマーと、それ以外の他のモノマーとの共重合体であっても良い。本発明において、さらに好適に使用されるスルホン酸発生型の高分子化合物は、上記一般式(I)で表される構造単位を有するモノマーと公知の他のモノマーを用い、ラジカル重合により得られる共重合体である。
共重合体に用いられる上記の他のモノマーとしては、例えばアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーが挙げられる。アクリル酸エステル類の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、(n −またはi−)プロピルアクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルアクリレート、アミルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ド デシルアクリレート、クロロエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、クロロベンジルアクリレート、ヒドロキシベンジルアクリレート、ヒドロキシフェネチルアクリレート、ジヒドロキシフェネチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、ヒドロキシフェニルアクリレート、クロロフェニルアクリレート、スルファモイルフェニルアクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオ キシ)エチルアクリレート等が挙げられる。
メタクリル酸エステル類の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、(n−またはi−)プロピルメタクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、クロロエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、5−ヒド ロキシペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、ヒドロキシベ ンジルメタクリレート、ヒドロキシフェネチルメタクリレート、ジヒドロキシフェネチルメタクリレート、フルフリルメタクリレー、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、クロロフェニルメタクリレート、スルファモイルフェニルメタクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルメタクリレート等が挙げられる。
アクリルアミド類の具体例としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−トリルアクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)アクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)アクリルアミド、N−(トリルスルホニル)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド等が挙げられる。
メタクリルアミド類の具体例としては、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミ ド、N−トリルメタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)メタクリルアミド、N−(トリルスルホニル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチル−N−フェニルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。
ビニルエステル類の具体例としては、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート等が挙げられる。スチレン類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、シクロヘキシルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、ジメトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、カルボキシスチレン 等が挙げられる。
これらの他のモノマーのうち特に好適に使用されるのは、炭素数20以下のアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニル
エステル類、スチレン類及び、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリルである。またこれらのモノマーの他に、架橋反応性を有するモノマーと共重合してもよい。架橋反応性を有するモノマーとしては、グリシジルメタクリレート、N−メチロールメタクリルアミド、オメガー(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、2−イソシアネートエチルアクリレートなどを好ましく用いることができる。これらを用いた共重合体中に含まれるスルホン酸発生基を含む構成単位(モノマー)の割合は、5質量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは10質量%以上である。5質量%以上とすることにより、現像が好適となり、10質量%以上とすることにより、現像後に現像残膜が発生することを防ぐことができる。また、本発明で使用されるスルホン酸発生型高分子化合物の分子量は、好ましくは質量平均分子量で2000以上であり、更に好ましくは5000〜30万の範囲であり、数平均分子量で好ましくは800以上であり、更に好ましくは 1000〜25万の範囲である。多分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は1以上が好ましく、更に好ましくは1.1〜10の範囲である。これらの高分子化合物は、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等いずれでも良いが、ランダムポリマーであることが好ましい。
上記高分子化合物を合成する際に用いられる好適な溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、 N,N−ジメチルアセトアミド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられる。これらの溶媒は単独であるいは 2種以上混合して用いられる。
上記高分子化合物を合成する際に用いられるラジカル重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤等重合開始剤として公知の化合物を任意に選択して使用できる。
上記高分子化合物は単独で用いても混合して用いてもよい。これら高分子化合物は、上記酸発生剤100質量部に対して100〜10000質量部とするのが、露光部と未露光部との色差を鮮明にする点で好ましく、150〜5000質量部とするのが更に好ましい。
本発明で使用される高分子化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれにより限定されるものでない。
また、本発明においては、3,4−二置換−シクロブテ−3−エン−1,2−ジオン(以下、「スクエア酸誘導体」という場合がある)を上記酸増殖剤として用いることもできる。該スクエア酸誘導体は酸感受性物質の色変化を行うのに非常に適した強力な酸であり、好ましく用いることができる。特に好ましいスクエア酸誘導体は、スクエア酸環に、酸素原子、アルキル基またはアルキレン基、部分的に水素化したアリール基またはアリレン基、またはアラルキル基を介して結合するものである。これらのスクエア酸誘導体の酸触媒分解は、誘導体の元のアルコキシ、アルキレンオキシ、アリールオキシ、アリレンオキシ、またはアラルコキシ基の水酸基との置換を生じ、これにより水酸基を1つ有するスクエア酸またはスクエア酸誘導体を生成する。
本発明において用いることができるスクエア酸誘導体としてのスクエア酸エステルとしては、以下のもの等が挙げられる。
(a)スクエア酸の一級エステルまたは二級エステルであって、エステルのα−炭素原子(すなわち、スクエア酸環の−O−原子に直接結合した炭素原子)が非塩基性のカチオン安定化基を有するエステルである。このカチオン安定化基は、例えば、sp2もしくはsp混成炭素原子、または酸素原子であり得る;
(b)スクエア酸の三級エステルであって、エステルのα−炭素原子が、それに直接結合したsp2またはsp混成炭素原子を有しないエステルである;および
(c)スクエア酸の四級エステルであって、エステルのα−炭素原子が、それに直接結合したsp2またはsp混成炭素原子を有するエステルである。ただし、このsp2またはsp混成炭素原子(または、1つよりも多いこのような原子がα−炭素原子に直接結合している場合、少なくとも1つのこれらのsp2またはsp混成炭素原子)が電子吸引基と結合している。
このような酸増殖剤の配合割合は、上記酸発生剤100質量部に対して、100〜2000質量部とするのが、露光部と未露光部との色差を鮮明にする点で好ましく、150〜1500質量部とするのが更に好ましい。
[塩基発生剤]
本発明に用いられる上記塩基発生剤としては、特開平2−166450号公報の第6頁上段左2行目〜同頁上段右15行目に記載されているような化合物、具体的には、加熱により脱炭酸する有機酸と塩基との塩、分子内求核置換反応、ロッセン転移、ベックマン転移などの反応によってアミン類を放出する化合物など、加熱により何らかの反応を起こして塩基を放出するものが好ましく用いられる。
具体的には、塩基の酸塩が挙げられ、該塩基としては、例えば、グアニジン、トリフェニルグアニジン、トリシクロヘキシルグアニジン、ピペリジン、モルホリン、p−トルイジン、2−ピコリンなどが挙げられ、酸としては、例えば、酢酸、トリクロロ酢酸、フェニルスルホニル酢酸、4−メチルスルフォニルフェニルスルホニル酢酸、4−アセチルアミノメチルプロピオン酸、蓚酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、炭酸、重炭酸などが挙げられる。
これらの塩基発生剤は、固体状のまま画像形成層用の組成物中に分散して粒子状物として層中に導入しても良く、また後述するマイクロカプセルの中に内包された状態で導入しても良い。
また、塩基発生剤の添加量は、下記赤外線吸収剤100質量部に対して10〜1000質量部とするのが、露光部の視認性の点で好ましく、30〜800質量部とするのが更に好ましい。
[塩基増殖剤]
本発明において用いられる上記塩基増殖剤は、塩基の作用により分解して塩基を発生し、また、この際に発生する塩基と同一の塩基を作用させると、分解して塩基を発生する特性を有するものである。従って、上記塩基増殖剤は、その一定量に対してそれより少ない当量の塩基を作用させるだけで、自己増殖的に分解し、最終的にその全量が分解し、その塩基増殖剤量に対応する多量の塩基を発生させることができる。このような塩基増殖剤としては、特開2000−330270号公報の(0010)〜(0032)に記載されている化合物などを挙げることができる。
具体的には、上記塩基増殖剤としては、前記特性を有するウレタン系化合物を好ましく挙げることができる。このような上記塩基増殖剤は、少なくとも1つのウレタン結合を含有するウレタン系化合物からなり、該ウレタン系化合物は、該ウレタン結合を形成するアミノ基由来の塩基(アンモニア又はアミン)の作用により分解し、該ウレタン結合由来の塩基(アンモニア又はアミン)を発生するものである。もちろん、そのウレタン結合を形成するアミノ基由来の塩基とは異った塩基を作用させても、分解して塩基を発生する。
このようなウレタン化合物が塩基増殖剤としての機能を有するか否かは、以下に示す簡単な予備実験により判定することができる。
(塩基増殖判定法)
ウレタン系化合物の2wt%メタノール−d4溶液に、そのウレタン系化合物のウレタン結合(−OCONR1R2)を形成するアミノ基NR1R2に由来の塩基と同一の塩基HNR1R2を0.1wt%添加した溶液をNMRスペクトル測定用試料管に入れ、これを封管してから100℃に加熱してNMRスペクトルを測定する。ウレタン化合物の分解で生成するオレフィンのNMRシグナルの増加によって、ウレタン系化合物は塩基増殖機能を有するものと判定される。
上記のウレタン化合物からなる上記塩基増殖剤は、一般的には、下記一般式(1b)で表されるウレタン系化合物を挙げることができる。
前記式中、R1及びR2は水素原子、置換基又は電子吸引性基であり、その少なくとも一方は電子吸引性基である。R3及びR4は水素原子又は置換基であり、Zはアミノ基である。
前記電子吸引性基には、有機電子論等において慣用の電子吸引性基、例えば、フルオレニル基、有機スルホキシド基、シアノ基、ニトロ基、エステル基、カルボニル基、アミド基、ピリジル基等が包含される。
前記有機スルホキシド基には、下記一般式(2b)で表されるものが包含される。
前記式中、Arは置換基を表し、好ましくはアリール基である。その具体例としては、フェニル、トリル、ナフチル等が挙げられる。Arの炭素数は、6〜18、好ましくは6〜12である。
前記置換基には、好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは1〜6のアルキル基、好ましくは炭素数5〜10更に好ましくは炭素数6〜8のシクロアルキル基、好ましくは炭素数6〜14、更に好ましくは炭素数6〜10のアリール基、好ましくは炭素数7〜15、更に好ましくは7〜11のアリールアルキル基等が包含される。その具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロヘキシル、フェニル、トリル、ナフチル、ベンジル、フェネチル、ナフチルメチル等が挙げられる。
前記アミノ基には、未置換アミノ基及び置換アミノ基が包含される。置換アミノ基にはモノ置換アミノ基及びジ置換アミノ基が包含される。前記アミノ基は、下記一般式(3b)で表すことができる。
前記式中、R5及びR6は水素原子又は置換基を示す。置換基として好ましくは炭素数1〜18、更に好ましくは6〜12である。この置換基には、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基が包含される。アルキル基としては、特に、好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは2〜6のもの、例えば、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル等が挙げられる。シクロアルキル基としては、好ましくは炭素数5〜10、更に好ましくは6〜8のもの、例えば、シクロヘキシル、シクロオクチル等が挙げられる。アリール基としては、好ましくは炭素数6〜14、更に好ましくは6〜10のもの、例えば、フェニル、トリル、ナフチル等が挙げられる。アリールアルキル基としては、好ましくは炭素数が7〜15、更に好ましくは7〜11のもの、例えば、ベンジル、フェネチル、ナフチルメチル等が挙げられる。前記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアリールアルキル基は、置換基を有していてもよい。この場合の置換基としては、アミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、ヒドロキシ基等が挙げられる。
前記一般式(3b)のアミノ基において、R5とR6は連結して含窒素環を形成することができる。この場合の含窒素環の環構成原子数は好ましくは3〜12、更に好ましくは5〜8である。また、前記含窒素環は、その環構成原子に複数のヘテロ原子(N、O、S等)を含有することができる。
本発明においては、前記アミノ基としては、下記一般式(4b)で表されるものを好ましいものとして挙げることができる。
前記式中、n及びmは好ましくは1〜6、更に好ましくは2〜4の数を示す。n+mは好ましくは4〜12、更に好ましくは4〜8である。R7は水素原子の他、炭化水素基、炭化水素オキシ基、アシル基等の置換基を示すが、塩基増殖機能を有するウレタン系化合物の残基であってもよい。炭化水素基、炭化水素オキシ基における炭化水素基及びアシル基における炭化水素基の炭素数は好ましくは1〜12、更に好ましくは1〜8である。この炭化水素基には、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルが包含される。
上記塩基増殖剤として用いられるウレタン系化合物は2つ又はそれ以上のウレタン結合を含有することができる。このようなウレタン系化合物としては、下記一般式(5b)及び(6b)で表されるものを挙げることができる。
前記一般式(5b)において、R1及びR2は水素原子、置換基又は電子吸引性基であり、その少なくとも一方は電子吸引性基である。R3及びR4は水素原子又は置換基である。R1'及びR2'は水素原子、置換基又は電子吸引性基であり、その少なくとも一方は電子吸引性基である。R3'及びR4'は水素原子又は置換基である。n及びmは好ましくは1〜6、更に好ましくは2〜4の数を示す。n+mは好ましくは4〜12、更に好ましくは4〜8である。
前記一般式(6b)において、R1及びR2は水素原子、置換基又は電子吸引性基であり、その少なくとも一方は電子吸引性基である。R3及びR4は水素原子又は置換基である。R1'及びR2'は水素原子、置換基又は電子吸引性基であり、その少なくとも一方は電子吸引性基である。R3'及びR4'は水素原子又は置換基である。Yは炭素数好ましくは1〜8、更に好ましくは2〜6のアルキレン基である。n及びmは好ましくは1〜6、更に好ましくは2〜4の数を示す。n+mは好ましくは4〜12、更に好ましくは4〜8である。p及びqは好ましくは1〜6、更に好ましくは2〜4の数を示す。p+qは好ましくは4〜12、更に好ましくは4〜8である。
前記電子吸引性基及び置換基の具体例としては、前記一般式(1b)との関連で示したものを例示することができる。
上述の塩基増殖剤は、ウレタン結合を含有し、そしてそのウレタン基(カルバモイル基)が結合する炭素原子に隣接する炭素原子に電子吸引性基と水素原子とが結合しているものである。従って、このような構造的特徴のために、その電子吸引性基が結合している炭素原子に結合している水素原子は、酸的性質を帯び、塩基の作用により引き抜き可能となっている。上記塩基増殖剤による塩基増殖反応のメカニズムを示すと、先ず、塩基の作用により前記水素原子の引抜きが起り、次いでカルバミン酸が脱離し、これがさらに分解して塩基と二酸化炭素を発生する。そして、この際に生成した塩基が他の塩 基増殖剤分子に作用して、その分子を分解させて、塩基を発生させる。このようにして、塩基増殖剤は連鎖反応的に分解され、結局、少量の塩基により多量の塩基を発生させる。前記塩基増殖反応を、前記一般式(1b)のウレタン系化合物を例にとって反応式で示すと、以下の通りである。
前記反応式におけるH−Zがウレタン結合に結合しているアミノ基由来の塩基を示す。
この塩基はアンモニア又は好ましくはアミンである。上記塩基増殖剤を調製するには、アルコールにクロロ蟻酸エステルを反応させて非対称的な炭酸ジエステルを生成し、次いでこの炭酸ジエステルに塩基を反応させればよい。
本発明において好ましく用いられる塩基増殖剤の具体例を以下に示す。
前記No.1−1〜1−11の化合物は電子吸引性基としてフルオレニル基が結合しているフルオレン系塩基増殖剤の例を示し、アミンを増殖的に発生する。一方、前記No.2−1〜2−4の化合物は、電子吸引性基として有機スルホキシド基が結合しているスルホン系塩基増殖剤の例を示し、アミンを増殖的に発生する。
上記塩基増殖剤は、室温で熱的に安定であり、長期にわたって保存することができる。
この塩基増殖剤を有機溶剤中に溶解し、これに、初期の触媒反応を引き起こす塩基を少量添加して加熱反応させると、特定の反応時間から急激に分解が起こり、塩基増殖反応が進行していることが確認できる。
上記塩基増殖剤の添加量は、上記塩基発生剤100質量部に対して、100〜10000質量部とするのが、露光部の視認性の点で好ましく、200〜9000質量部とするのが更に好ましい。
変色剤(A)を含有する層は、それ自体が画像形成層であってもよく、画像形成層に隣接する層、例えば、オーバーコート層であっても良いが、画像形成層が好ましい。
変色剤(A)の添加量は、層全体の固形分質量に対して1質量%以上50質量%以下が好ましく、2質量%以上45質量%以下がより好ましい。
以下、画像形成層の構成成分について詳しく説明する。
[赤外線吸収剤]
本発明において画像形成層に用いられる赤外線吸収剤は、赤外線レーザーに対する感度を高めるために用いられる成分である。該赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有している。本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760〜1200nmに吸収極大を有する染料又は顔料であるのが好ましい。
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等の公報に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等の公報に記載されているスクワリリウム色素、英国特許第434,875号明細書記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、米国特許第5,156,938号明細書記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号公報に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
また、上記赤外線吸収色素の好ましい他の例としては、以下に例示するような特開2002−278057号公報記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。さらに、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい一つの例として下記一般式(I)で示されるシアニン色素が挙げられる。
一般式(I)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1又は以下に示す基を表す。ここで、X2は酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。
R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。画像形成層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R1とR2とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za-は、対アニオンを示す。ただし、一般式(I)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa-は必要ない。好ましいZa-は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
本発明において、好適に用いることのできる一般式(I)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号[0017]から[0019]に記載されたものを挙げることができる。
また、特に好ましい他の例としてさらに、前記した特開2002−278057号公報に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
本発明において使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然
顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
顔料の粒径は0.01〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1〜1μmの範囲にあることが好ましい。この範囲で、顔料分散物の画像形成層塗布液中での良好な安定性と画像形成層の良好な均一性が得られる。
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
これらの赤外線吸収剤は、他の成分と同一の層に添加してもよいし、画像形成層を2層以上の層で構成して他の成分(例えば、ラジカル重合開始剤、ラジカル重合性モノマー)とは別々の層に添加してもよい。また、マイクロカプセルに内包させて添加することもできる。
添加量としては、ネガ型の平版印刷版原版を作成した際に、画像形成層の波長760nm〜1200nmの範囲における極大吸収波長での吸光度が、反射測定法で0.3〜1.2の範囲にあるように添加することが好ましく、より好ましくは、0.4〜1.1の範囲である。この範囲で、画像形成層の深さ方向での均一な重合反応が進行し、良好な画像部の膜強度と支持体に対する密着性が得られる。画像形成層の吸光度は、画像形成層に添加する赤外線吸収剤の量と画像形成層の厚みにより調整することができる。吸光度の測定は常法により行うことができる。測定方法としては、例えば、アルミニウム等の反射性の支持体上に、乾燥後の塗布量が平版印刷版として必要な範囲において適宜決定された厚みの画像形成層を形成し、反射濃度を光学濃度計で測定する方法、積分球を用いた反射法により分光光度計で測定する方法等が挙げられる。
〔画像を形成するためのその他の要素〕
画像形成層に使用可能なその他の要素として、(a)ラジカル重合を利用する画像形成要素、及び(b)疎水化前駆体の熱融着や熱反応を利用する画像形成要素の少なくともいずれかを用いることができる。(a)の要素を用いれば、ラジカル重合系の画像形成層となり、(b)の要素を用いれば、疎水性前駆体系の画像形成層となる。以下、これらの要素について、各要素を用いた場合に加えられる他の成分についても言及しつつ説明する。
(a)ラジカル重合を利用する画像形成要素
ラジカル重合系要素は、画像形成の感度が高いので、露光エネルギーを焼き出し画像形成に有効に分配することができ、視認性の良好な焼き出し画像を得るのに好適である。
ラジカル重合系要素は、ラジカル重合性モノマー及びラジカル重合開始剤を基本成分としている。
<ラジカル重合性モノマー>
本発明に用いることができるラジカル重合性モノマー(以下では単に重合性化合物ともいう)は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。また、本明細書において、「ラジカル重合性モノマー」とは、単なる単量体だけでなく、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などを含めて意味する。モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート等がある。
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
その他のエステルの例として、例えば、特公昭51−47334、特開昭57−196231記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240、特開昭59−5241、特開平2−226149記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(a)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH2=C(R4)COOCH2CH(R5)OH (a)
(ただし、R4及びR5は、H又はCH3を示す。)
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
これらの重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な平版印刷版原版の性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。
感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。
また、画像形成層中の他の成分(例えばバインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、基板や後述の保護層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
重合性化合物は、添加される層の全固形分に対して、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは25〜75質量%の範囲で使用される。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。そのほか、重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、更に場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施しうる。
<ラジカル重合開始剤>
本発明に用いられるラジカル重合開始剤としては、光、熱又はその両方のエネルギーによりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を開始、促進する化合物を示す。本発明に使用できるラジカル重合開始剤としては、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤、さらに光酸化剤又は焼き出し剤などと呼ばれている公知のラジカル発生剤などを挙げることができる。中でも、本発明において好適に用いられるラジカル重合開始剤は、熱エネルギーによりラジカルを発生する化合物である。
以下、本発明で用いるラジカル重合開始剤についてより具体的に説明するが、かかるラジカル重合開始剤は、単独又は2種以上を併用して用いることができる。
このようなラジカル重合開始剤としては、例えば、有機ハロゲン化合物、カルボニル化合物、有機過酸化物、アゾ系化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ素化合物、ジスルホン化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩化合物、が挙げられる。
上記有機ハロゲン化合物としては、具体的には、若林等、「Bull Chem.Soc Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46−4605号、特開昭48−36281号、特開53−133428号、特開昭55−32070号、特開昭60−239736号、特開昭61−169835号、特開昭61−169837号、特開昭62−58241号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号の各公報、M.P.Hutt"Jurnal of Heterocyclic Chemistry"1(No3),(1970)」に記載の化合物が挙げられる。中でも、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物及びS−トリアジン化合物が好適である。
より好適には、すくなくとも一つのモノ、ジ、又はトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体、具体的には、例えば、2,4,6−トリス(モノクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジクロロメチル)−s−
トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2―n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4−エポキシフェニル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔1−(p−メトキシフェニル)−2,4−ブタジエニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−i−プロピルオキシスチリル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ナトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ベンジルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロモメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
上記カルボニル化合物としては、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−ヒドトキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル−(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチルー(4'−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノ−1−プロパノン、1,1,1−トリクロロメチル−(p−ブチルフェニル)ケトン等のアセトフェノン誘導体、チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体等を挙げることができる。
上記アゾ系化合物としては例えば、特開平8−108621号公報に記載のアゾ化合物等を使用することができる。
上記有機過酸化物としては、例えば、トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−オキサノイルパーオキサイド、過酸化こはく酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシオクタノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、ターシルカーボネート、3,3',4,4'−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等が挙げられる。
上記メタロセン化合物としては、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特開昭63−41484号公報、特開平2−249号公報、特開平2−4705号公報、特開平5−83588号公報記載の種々のチタノセン化合物、例えば、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報記載の鉄−アレーン錯体等が挙げられる。
上記ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特公平6−29285号公報、米国特許第3,479,185号、同第4,311,783号、同第4,622,286号の各明細書等に記載の種々の化合物、具体的には、2,2'−ビス(o−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−ブロモフェニル))4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイジダゾール、2,2'−ビス(o,o'−ジクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−メチルフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
上記有機ホウ素化合物としては、例えば、特開昭62−143044号、特開昭62−150242号、特開平9−188685号、特開平9−188686号、特開平9−188710号、特開2000−131837号、特開2002−107916号の各公報、特許第2764769号明細書、特開2002−116539号公報、及び、Kunz,Martin"Rad Tech'98.Proceeding April 19−22,1998,Chicago"等に記載される有機ホウ酸塩、特開平6−157623号公報、特開平6−175564号公報、特開平6−175561号公報に記載の有機ホウ素スルホニウム錯体或いは有機ホウ素オキソスルホニウム錯体、特開平6−175554号公報、特開平6−175553号公報に記載の有機ホウ素ヨードニウム錯体、特開平9−188710号公報に記載の有機ホウ素ホスホニウム錯体、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が挙げられる。
上記ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号公報、特開2002−328465号公報等記載される化合物が挙げられる。
上記オキシムエステル化合物としては、J.C.S. Perkin II (1979 )1653−1660)、J.C.S.Perkin II (1979)156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202−232、特開2000−66385号公報記載の化合物、特開2000−80068号公報記載の化合物、具体的には、下記の構造式で示される化合物が挙げられる。
上記オニウム塩化合物としては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、特開平4−365049号公報等に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号、同第4,069,056号の各明細書に記載のホスホニウム塩、欧州特許第104、143号、米国特許第339,049号、同第410,201号の各明細書、特開平2−150848号、特開平2−296514号の各公報に記載のヨードニウム塩、欧州特許第370,693号、同第390,214号、同第233,567号、同第297,443号、同第297,442号、米国特許第4,933,377号、同第161,811号、同第410,201号、同第339,049号、同第4,760,013号、同第4,734,444号、同第2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同第3,604,580号、同第3,604,581号の各明細書に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromolecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩等が挙げられる。
特に反応性、安定性の面から好適なものとして、上記オキシムエステル化合物又はオニウム塩(ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩もしくはスルホニウム塩)が挙げられる。
本発明において好適に用いられるオニウム塩は、下記一般式(RI−I)〜(RI−III)で表されるオニウム塩である。
式(RI−I)中、Ar11は置換基を1〜6個有していても良い炭素数20以下のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。Z11 -は1価の陰イオンを表し、具体的には、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンが挙げられる。中でも安定性の面から、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン及びスルフィン酸イオンが好ましい。
式(RI−II)中、Ar21及びAr22は、各々独立に置換基を1〜6個有していても良い炭素数20以下のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。Z21 -は1価の陰イオンを表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性、反応性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましい。
式(RI−III)中、R31、R32及びR33は、各々独立に置換基を1〜6個有していても良い炭素数20以下のアリール基又はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。中でも反応性、安定性の面から好ましいのは、アリール基である。置換基としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。Z31 -は1価の陰イオンを表す。具体例としては、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンが挙げられる。中でも安定性、反応性の面から、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましい。より好ましいものとして特開2001−343742号公報記載のカルボン酸イオン、特に好ましいものとして特開2002−148790号公報記載のカルボン酸イオンが挙げられる。
上記式(RI−I)〜(RI−III)で表されるオニウム塩の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
これらのラジカル重合開始剤は、添加される層を構成する全固形分に対し0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%の割合で添加することができる。この範囲内で耐刷性が更に向上する。これらのラジカル重合開始剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらのラジカル重合開始剤を他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
<その他の画像形成層成分>
本発明の画像形成層には、その他に、バインダーポリマー、界面活性剤、着色剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機微粒子、低分子親水性化合物などの添加剤を、必要に応じて含有させることができる。以下、それらについて説明する。
<バインダーポリマー>
画像形成層には、バインダーポリマーを含有させることができる。本発明に用いることができるバインダーポリマーは、従来公知のものを制限なく使用でき、皮膜性を有する線状有機ポリマーが好ましい。このようなバインダーポリマーの例としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられる。
バインダーポリマーは、画像部の皮膜強度を向上するために、架橋性を有していることが好ましい。バインダーポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の主鎖中又は側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよい。
分子の主鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、ポリ−1,4−ブタジエン、ポリ−1,4−イソプレン等が挙げられる。
分子の側鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル又はアミドのポリマーであって、エステル又はアミドの残基(−
COOR又はCONHRのR)がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
エチレン性不飽和結合を有する残基(上記R)の例としては、−(CH2 )n CR1 =CR2 R3 、−(CH2 O)n CH2 CR1 =CR2 R3 、−(CH2 CH2 O)n CH2 CR1 =CR2 R3 、−(CH2 )n NH−CO−O−CH2 CR1 =CR2 R3 、−(CH2 )n −O−CO−CR1 =CR2 R3 及び(CH2 CH2 O)2 −X(式中、R1 〜R3 はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基もしくはアリールオキシ基を表し、R1 とR2 又はR3 とは互いに結合して環を形成してもよい。nは、1〜10の整数を表す。Xは、ジシクロペンタジエニル残基を表す。)を挙げることができる。
エステル残基の具体例としては、−CH2 CH=CH2 (特公平7−21633号公報に記載されている。)、−CH2 CH2 O−CH2 CH=CH2 、−CH2 C(CH3 )=CH2 、−CH2 CH=CH−C6 H5 、−CH2 CH2 OCOCH=CH−C6 H5 、−CH2 CH2 −NHCOO−CH2 CH=CH2 及びCH2 CH2 O−X(式中、Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)が挙げられる。
アミド残基の具体例としては、−CH2 CH=CH2 、−CH2 CH2 −Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)、−CH2 CH2 −OCO−CH=CH2 が挙げられる。
架橋性を有するバインダーポリマーは、例えば、その架橋性官能基にフリーラジカル(重合開始ラジカル又は重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、ポリマー間で直接に又は重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。又は、ポリマー中の原子(例えば、官能性架橋基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。
バインダーポリマー中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。この範囲で、良好な感度と良好な保存安定性が得られる。
また、機上現像性向上の観点から、バインダーポリマーは、インキ及び/又湿し水に対する溶解性又は分散性が高いことが好ましい。
インキに対する溶解性又は分散性を向上させるためには、バインダーポリマーは、親油的な方が好ましく、湿し水に対する溶解性又は分散性を向上させるためには、バインダーポリマーは、親水的な方が好ましい。このため、本発明においては、親油的なバインダーポリマーと親水的なバインダーポリマーを併用することも有効である。
親水的なバインダーポリマーとしては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボキシレート基、ヒドロキシエチル基、ポリオキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ポリオキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アンモニウム基、アミド基、カルボキシメチル基、スルホン酸基、リン酸基等の親水性基を有するものが好適に挙げられる。
具体例として、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、デンプン誘導体、カルボキシメチルセルロース及びそのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸類及びそれらの塩、ポリメタクリル酸類及びそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレ
ートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシピロピルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、加水分解度が60モル%以上、好ましくは80モル%以上である加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマー及びポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、ポリビニルピロリドン、アルコール可溶性ナイロン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンとのポリエーテル等が挙げられる。
バインダーポリマーは、重量平均分子量が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましく、また、数平均分子量が1000以上であるのが好ましく、2000〜25万であるのがより好ましい。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であるのが好ましい。
バインダーポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマーのいずれでもよいが、ランダムポリマーがより好ましい。また、バインダーポリマーは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
バインダーポリマーは、従来公知の方法により合成することができる。合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ジメチルスルホキシド、水が挙げられる。これらは単独で又は2種以上混合して用いられる。
バインダーポリマーを合成する際に用いられるラジカル重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤等の公知の化合物を用いることができる。
バインダーポリマーの含有量は、画像形成層の全固形分に対して、10〜90質量%であり、20〜80質量%であるのが好ましく、30〜70質量%であるのがより好ましい。この範囲で、良好な画像部の強度と画像形成性が得られる。
また、重合性化合物とバインダーポリマーは、質量比で1/9〜7/3となる量で用いるのが好ましい。
<界面活性剤>
本発明において、画像形成層には、印刷開始時の機上現像性を促進させるため、及び、塗布面状を向上させるために界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いられるノニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、
プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
本発明に用いられるアニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
本発明に用いられるカチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
更に好ましい界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号及び同60−168144号の各公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤の含有量は、画像形成層の全固形分に対して、0.001〜10質量%であ
るのが好ましく、0.01〜7質量%であるのがより好ましい。
<着色剤>
本発明では、更に必要に応じてこれら以外に種々の化合物を添加してもよい。例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、及び特開昭62−293247号に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料も好適に用いることができる。
これらの着色剤は、画像形成後、画像部と非画像部の区別がつきやすいので、添加する方が好ましい。なお、添加量は、画像形成層の全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合である。
<重合禁止剤>
画像形成層には、画像形成層の製造中又は保存中においてラジカル重合性モノマーの不要な熱重合を防止するために、少量の熱重合防止剤を添加するのが好ましい。
熱重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩が好適に挙げられる。
熱重合防止剤の添加量は、画像形成層の全固形分に対して、約0.01〜約5質量%であるのが好ましい。
<高級脂肪酸誘導体等>
画像形成層には、酸素による重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で画像形成層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、画像形成層の全固形分に対して、約0.1〜約10質量%であるのが好ましい。
<可塑剤>
画像形成層は、機上現像性を向上させるために、可塑剤を含有してもよい。
可塑剤としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、オクチルカプリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジアリルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルグリコールフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、トリエチレングリコールジカプリル酸エステル等のグリコールエステル類;トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;ジイソブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルマレエート等の脂肪族二塩基酸エステル類;ポリグリシジルメタクリレート、クエン酸トリエチル、グリセリントリアセチルエステル、ラウリン酸ブチル等が好適に挙げられる。
可塑剤の含有量は、画像形成の全固形分に対して、約30質量%以下であるのが好まし
い。
<無機微粒子>
画像形成層は、画像部の硬化皮膜強度向上及び非画像部の機上現像性向上のために、無機微粒子を含有してもよい。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウム又はこれらの混合物が好適に挙げられる。これらは光熱変換性でなくても、皮膜の強化、表面粗面化による界面接着性の強化等に用いることができる。
無機微粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであるのが好ましく、0.5〜3μmであるのがより好ましい。上記範囲であると、画像形成層中に安定に分散して、画像形成層の膜強度を十分に保持し、印刷時の汚れを生じにくい親水性に優れる非画像部を形成することができる。
上述したような無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、画像形成層の全固形分に対して、20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましい。
<低分子親水性化合物>
画像形成層は、機上現像性向上のため、親水性低分子化合物を含有しても良い。親水性低分子化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びそのエーテル又はエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール等のポリヒドロキシ類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンモノエタノールアミン等の有機アミン類及びその塩、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類及びその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類及びその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類及びその塩等が挙げられる。
<ラジカル重合系画像形成層の形成>
本発明において、画像形成層を形成させる方法として、いくつかの態様を用いることができる。一つは、例えば、特開2002−287334号公報に記載のごとく、該構成成分を適当な溶媒に溶解して塗布する態様であり、もう一つは、例えば、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載のごとく、画像形成層の構成成分をマイクロカプセルに内包させて画像形成層を形成させる態様(マイクロカプセル型画像形成層)である。さらに、マイクロカプセル型画像形成層において、該構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。マイクロカプセル型画像形成層においては、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包させ、親水性構成成分をマイクロカプセル外に含有させることがより好ましい態様である。
画像形成層の構成成分のうち、赤外線吸収剤と、変色剤(A)とをマイクロカプセル化することは、焼き出し画像形成反応系と印刷画像形成反応系とを分離することによってお互いの反応を阻害することが避けられるため、良好な焼き出し画像と良好な耐刷性を得るのにより好ましい態様である。
画像形成層構成成分をマイクロカプセル化する方法としては、公知の方法が適用できる。例えばマイクロカプセルの製造方法としては、米国特許第2800457号、同第2800458号明細書にみられるコアセルベーションを利用した方法、米国特許第3287154号の各明細書、特公昭38−19574号、同42−446号の各公報にみられる界面重合法による方法、米国特許第3418250号、同第3660304号明細書にみられるポリマーの析出による方法、米国特許第3796669号明細書に見られるイソシアナートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3914511号明細書に見られるイソシアナート壁材料を用いる方法、米国特許第4001140号、同第4087376号、同第4089802号の各明細書にみられる尿素―ホルムアルデヒド系又は尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4025445号明細書にみられるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシセルロース等の壁材を用いる方法、特公昭36−9163号、同51−9079号の各公報にみられるモノマー重合によるin situ法、英国特許第930422号、米国特許第3111407号明細書にみられるスプレードライング法、英国特許第952807号、同第967074号の各明細書にみられる電解分散冷却法などがあるが、これらに限定されるものではない。
本発明に用いられる好ましいマイクロカプセル壁は、3次元架橋を有し、溶剤によって膨潤する性質を有するものである。このような観点から、マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、及びこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレア及びポリウレタンが好ましい。また、マイクロカプセル壁に、前記バインダーポリマー導入可能なエチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を有する化合物を導入しても良い。
上記のマイクロカプセルの平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましい。0.05〜2.0μmがさらに好ましく、0.10〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
また、本発明においては、上述した画像形成層の各成分、特に好ましくは各上記赤外線吸収剤、変色剤(A)が、それぞれ、樹脂微粒子に内包されている態様とすることもできる。
このような態様は、各成分を溶媒に溶解した後、高分子溶液(好ましくは高分子水溶液)とホモジナイザー等を用いて混合して得られる樹脂微粒子分散液を調製し、これを用いることにより達成できる。
この際用いることができる上記溶媒としては、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、ジイソプロピルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、ジクロロエタン、これらの混合溶媒を挙げることができる。
また、上記高分子としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリメタクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、アクリル酸−アクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウムコポリマー等が挙げられる。
画像形成層は、必要な上記各成分を溶剤に分散、又は溶かして塗布液を調製し、塗布される。ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独又は混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。上記画像形成層は、同一又は異なる上記各成分を同一又は異なる溶剤に分散、又は溶かした塗布液を複数調製し、複数回の塗布、乾燥を繰り返して形成することも可能である。
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の画像形成層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.3〜3.0g/m2が好ましい。この範囲で、良好な感度と画像
形成層の良好な皮膜特性が得られる。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
(b)疎水化前駆体系の画像形成要素
<疎水性化前駆体>
本発明において疎水性化前駆体とは、熱が加えられたときに親水性の画像形成層を疎水性に変換できる微粒子である。この微粒子としては、熱可塑性ポリマー微粒子及び熱反応性ポリマー微粒子から選ばれる少なくともひとつの微粒子であることが好ましい。また、熱反応性基を有する化合物を内包したマイクロカプセルであってもよい。
画像形成層に用いられる熱可塑性ポリマー微粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure No.33303、特開平9−123387号公報、同9−131850号公報、同9−171249号公報、同9−171250号公報及び欧州特許第931647号明細書などに記載の熱可塑性ポリマー微粒子を好適なものとして挙げることができる。かかるポリマー微粒子を構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾールなどのモノマーのホモポリマーもしくはコポリマー又はそれらの混合物を挙げることができる。その中で、より好適なものとして、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルを挙げることができる。
本発明に用いられる熱可塑性ポリマー微粒子の平均粒径は0.01〜2.0μmが好ましい。このような熱可塑性ポリマー微粒子の合成方法としては、乳化重合法、懸濁重合法の他に、これら化合物を非水溶性の有機溶剤に溶解し、これを分散剤が入った水溶液と混合乳化し、さらに熱をかけて、有機溶剤を飛ばしながら微粒子状に固化させる方法(溶解分散法)がある。
本発明に用いられる熱反応性ポリマー微粒子としては、熱硬化性ポリマー微粒子及び熱反応性基を有するポリマー微粒子が挙げられる。
上記熱硬化性ポリマーとしては、フェノール骨格を有する樹脂、尿素系樹脂(例えば、尿素又はメトキシメチル化尿素など尿素誘導体をホルムアルデヒドなどのアルデヒド類により樹脂化したもの)、メラミン系樹脂(例えば、メラミン又はその誘導体をホルムアルデヒドなどのアルデヒド類により樹脂化したもの)、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。中でも、特に好ましいのは、フェノール骨格を有する樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂及びエポキシ樹脂である。
好適なフェノール骨格を有する樹脂としては、例えば、フェノール、クレゾールなどをホルムアルデヒドなどのアルデヒド類により樹脂化したフェノール樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、及びN−(p−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、p−ヒドロキシフェニルメタクリレートなどのフェノール骨格を有するメタクリルアミドもしくはアクリルアミド又はメタクリレートもしくはアクリレートの重合体又は共重合体を挙げることができる。
本発明に用いられる熱硬化性ポリマー微粒子の平均粒径は0.01〜2.0μmが好ましい。このような熱硬化性ポリマー微粒子は、溶解分散法で容易に得られるが、熱硬化性ポリマーを合成する際に微粒子化してもよい。しかし、これらの方法に限らない。
本発明に用いる熱反応性基を有するポリマー微粒子の熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でも良いが、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基など)、付加反応を行うイソシアナート基又はそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基など)、縮合反応を行うカルボキシル基及び反応相手であるヒドロキシル基又はアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及び反応相手であるアミノ基又はヒドロキシル基などを好適なものとして挙げることができる。
これらの官能基のポリマー微粒子への導入は、重合時に行ってもよいし、重合後に高分子反応を利用して行ってもよい。
重合時に導入する場合は、上記の官能基を有するモノマーを乳化重合又は懸濁重合することが好ましい。上記の官能基を有するモノマーの具体例として、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、2−(ビニルオキシ)エチルメタクリレート、p−ビニルオキシスチレン、p−{2−(ビニルオキシ)エチル}スチレン、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、2−イソシアナートエチルメタクリレート又はそのアルコールなどによるブロックイソシアナート、2−イソシアナートエチルアクリレート又はそのアルコールなどによるブロックイソシアナート、2−アミノエチルメタクリレート、2−アミノエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、2官能アクリレート、2官能メタクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明では、これらのモノマーと、これらのモノマーと共重合可能な、熱反応性基をもたないモノマーとの共重合体も用いることができる。熱反応性基をもたない共重合モノマーとしては、例えば、スチレン、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニルなどを挙げることができるが、熱反応性基をもたないモノマーであれば、これらに限定されない。
熱反応性基の導入を重合後に行う場合に用いる高分子反応としては、例えば、国際公開第96/34316号パンフレットに記載されている高分子反応を挙げることができる。
上記熱反応性基を有するポリマー微粒子の中で、ポリマー微粒子同志が熱により合体するものが好ましく、その表面は親水性で水に分散するものが特に好ましい。ポリマー微粒子のみを塗布し、凝固温度よりも低い温度で乾燥して作製した皮膜の接触角(空中水滴)が、凝固温度より高い温度で乾燥して作製した皮膜の接触角(空中水滴)よりも低くなることが好ましい。このようにポリマー微粒子表面を親水性にするには、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどの親水性ポリマーもしくはオリゴマー又は親水性低分子化合物をポリマー微粒子表面に吸着させてやればよい。しかし、表面親水化の方法は、これに限定されない。
これらの熱反応性基を有するポリマー微粒子の凝固温度は、70℃以上が好ましいが、経時安定性を考えると100℃以上がさらに好ましい。ポリマー微粒子の平均粒径は、0.01〜2.0μmが好ましいが、その中でも0.05〜2.0μmがさらに好ましく、特に0.1〜1.0μmが最適である。この範囲内で良好な解像度及び経時安定性が得られる。
本発明に用いられる熱反応性基を有する化合物を内包するマイクロカプセルにおける熱
反応性基としては、前記の熱反応性基を有するポリマー微粒子に用いられるものと同じ熱反応性基を好適なものとして挙げることができる。以下に、熱反応性基を有する化合物について説明する。
ラジカル重合性不飽和基を有する化合物としては、前記ラジカル重合系のマイクロカプセルように示したのと同じ化合物が好適に用いられる。
本発明に好適なビニルオキシ基を有する化合物としては、特開2002−29162号公報に記載の化合物が挙げられる。具体例として、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、1,4−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ベンゼン、1,2−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ベンゼン、1,3−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ベンゼン、1,3,5−トリス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ベンゼン、4,4´−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ビフェニル、4,4´−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ジフェニルエーテル、4,4´−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ジフェニルメタン、1,4−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ナフタレン、2,5−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}フラン、2,5−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}チオフェン、2,5−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}イミダゾール、2,2−ビス[4−{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}フェニル]プロパン{ビスフェノールAのビス(ビニルオキシエチル)エーテル}、2,2−ビス{4−(ビニルオキシメチルオキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{4−(ビニルオキシ)フェニル}プロパンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明に好適なエポキシ基を有する化合物としては、2個以上エポキシ基を有する化合物が好ましく、多価アルコールや多価フェノールなどとエピクロロヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテル化合物又はそのプレポリマー、更に、アクリル酸グリシジル又はメタクリ酸グリシジルの重合体もしくは共重合体等を挙げることができる。
具体例としては、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、レソルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル又はエピクロロヒドリン重付加物、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル又はエピクロロヒドリン重付加物、ハロゲン化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル又はエピクロロヒドリン重付加物、ビフェニル型ビスフェノールのジグリシジルエーテル又はエピクロロヒドリン重付加物、ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物等、更に、メタクリ酸メチル/メタクリ酸グリシジル共重合体、メタクリ酸エチル/メタクリ酸グリシジル共重合体等が挙げられる。
上記化合物の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート1001(分子量約900、エポキシ当量450〜500)、エピコート1002(分子量約1600、エポキシ当量600〜700)、エピコート1004(約1060、エポキシ当量875〜975)、エピコート1007(分子量約2900、エポキシ当量2000)、エピコート1009(分子量約3750、エポキシ当量3000)、エピコート1010(分子量約5500、エポキシ当量4000)、エピコート1100L(エポキシ当量4000)、エピコートYX31575(エポキシ当量1200)、住友化学(株)製のスミエポキシESCN−195XHN、ESCN−195XL、ESCN−195XF等を挙げることができる。
本発明に好適なイソシアナート化合物としては、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアナート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、シクロヘキシルジイソシアナート、又は、これらをアルコールもしくはアミンでブロックした化合物を挙げることができる。
本発明に好適なアミン化合物としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ポリエチレンイミンなどが挙げられる。
本発明に好適なヒドロキシル基を有する化合物としては、末端メチロール基を有する化合物、ペンタエリスリトールなどの多価アルコール、ビスフェノール・ポリフェノール類などを挙げることができる。
本発明に好適なカルボキシル基を有する化合物としては、ピロメリット酸、トリメリット酸、フタル酸などの芳香族多価カルボン酸、アジピン酸などの脂肪族多価カルボン酸などが挙げられる。本発明に好適な酸無水物としては、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物などが挙げられる。
上記の熱反応性基を有する化合物のマイクロカプセル化は、ラジカル重合系の説明で前記した公知の方法で行うことができる。
<その他の画像形成層成分>
画像形成層には、機上現像性や画像形成層自体の皮膜強度向上のため親水性樹脂を含有させることができる。親水性樹脂としては、例えばヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、アミド基などの親水基を有するものが好ましい。
また、親水性樹脂は、疎水化前駆体の有する熱反応性基と反応し架橋することによって画像強度が高まり、高耐刷化されるので、熱反応性基と反応する基を有することが好ましい。例えば、疎水化前駆体がビニルオキシ基又はエポキシ基を有する場合は、親水性樹脂としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などを有するものが好ましい。中でも、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有する親水性樹脂が好ましい。
親水性樹脂の具体例として、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、ソヤガム、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びそのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸類及びそれらの塩、ポリメタクリル酸類及びそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマー及びコポリー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、加水分解度が少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも80モル%の加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、2−アクリルアミド−2−メチル−1
−プロパンスルホン酸のホモポリマー及びコポリマー、2−メタクロイルオキシエチルホスホン酸のホモポリマー及びコポリマー等を挙げることができる。
上記親水性樹脂の画像形成層への添加量は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
また、上記親水性樹脂は印刷機上で未露光部が機上現像できる程度に架橋して用いてもよい。架橋剤としては、グリオキザール、メラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂などのアルデヒド類、N−メチロール尿素やN−メチロールメラミン、メチロール化ポリアミド樹脂などのメチロール化合物、ジビニルスルホンやビス(β−ヒドロキシエチルスルホン酸)などの活性ビニル化合物、エピクロルヒドリンやポリエチレングリコ−ルジグリシジルエーテル、ポリアミド、ポリアミン、エピクロロヒドリン付加物、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂などのエポキシ化合物、モノクロル酢酸エステルやチオグリコール酸エステルなどのエステル化合物、ポリアクリル酸やメチルビニルエーテル/マレイン酸共重合物などのポリカルボン酸類、ホウ酸、チタニルスルフェート、Cu、Al、Sn、V、Cr塩などの無機系架橋剤、変性ポリアミドポリイミド樹脂などが挙げられる。その他、塩化アンモニウム、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等の架橋触媒を併用できる。
画像形成層は、前記熱反応基の反応を開始又は促進する反応促進剤を含有することができる。かかる反応促進剤としては、前記のラジカル重合開始剤を好適なものとして挙げることができる。
上記反応促進剤は2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、反応促進剤の画像形成層への添加は、画像形成層塗布液への直接添加でも、ポリマー微粒子中に含有させた形での添加でもよい。画像形成層中の反応促進剤の含有量は、画像形成層全固形分の0.01〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。この範囲内で、機上現像性を損なわず、良好な反応開始又は促進効果が得られる。
上記の疎水化前駆体系の画像形成層には、耐刷力を一層向上させるために多官能モノマーを画像形成層マトリックス中に添加することができる。この多官能モノマーとしては、重合性化合物として例示したものを用いることができる。なかでも好ましいモノマーとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどを挙げることができる。
また、上記の疎水化前駆体系の画像形成層には、前記重合系画像形成層の<その他の画像形成層成分>に記載の界面活性剤、着色剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機微粒子、低分子親水性化合物などの添加剤を、必要に応じて含有させることができる。
<疎水化前駆体系の画像形成層の形成>
上記の疎水化前駆体系の画像形成層は、前記ラジカル重合系画像形成層の場合と同様に、必要な上記各成分を溶剤に分散又は溶解した塗布液を調製し、支持体上に塗布、乾燥して形成される。
塗布、乾燥後に得られる支持体上の画像形成層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。
上記疎水化前駆体系の画像形成層を用いると、機上現像可能な平版印刷版原版を作ることができる。
一方、上記疎水化前駆体系の画像形成層を未露光でも十分な耐刷力のある「架橋構造を有する親水性層」にすることによって、本発明の平版印刷版原版を無処理(無現像)型の平版印刷版原版に適用することができる。
かかる架橋構造を有する親水性層としては、架橋構造を形成してなる親水性樹脂、及び、ゾル−ゲル変換によって形成される無機親水性結着樹脂のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい態様である。これらのうち、まず、親水性樹脂について説明する。この親水性樹脂を添加することにより、エマルジョンインク中の親水成分との親和性が良好となり、且つ、画像形成層自体の皮膜強度も向上するという利点をも有する。親水性樹脂としては、例えばヒドロキシル、カルボキシル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、アミノ、アミノエチル、アミノプロピル、カルボキシメチルなどの親水基を有するものが好ましい。
親水性樹脂の具体例として、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース及びそのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸類及びそれらの塩、ポリメタクリル酸類及びそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、ならびに加水分解度が少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも80モル%の加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマー及びポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー等を挙げることができる。
上記親水性樹脂を本発明に係る画像形成層に用いる場合には、親水性樹脂を架橋して用いればよい。架橋構造を形成するために用いる架橋剤としては、前記したものが用いられる。
また、無処理(無現像)型の画像形成層の好ましい態様として、ゾル−ゲル変換によって形成される無機親水性結着樹脂を含有させるものを挙げることができる。好適なゾル−ゲル変換系結着樹脂は、多価元素から出ている結合基が酸素原子を介して網目状構造、即ち、三次元架橋構造を形成し、同時に多価金属は未結合の水酸基やアルコキシ基も有していてこれらが混在した樹脂状構造となっている高分子体であって、アルコキシ基や水酸基が多い段階ではゾル状態であり、脱水縮合が進行するに伴って網目状の樹脂構造が強固となる。ゾル−ゲル変換を行う水酸基やアルコキシ基を有する化合物の多価結合元素は、アルミニウム、珪素、チタン及びジルコニウムなどであり、これらはいずれも本発明に用いることができる。中でも、より好ましいのは珪素を用いたゾル−ゲル変換系であり、特に好ましいのはゾル−ゲル変換が可能な、少なくとも一つのシラノール基を有するシラン化合物を含んだ系である。以下に、珪素を用いたゾル−ゲル変換系について説明するが、アルミニウム、チタン、ジルコニウムを用いたゾル−ゲル変換系は、下記説明の珪素をそれぞれの元素に置き換えて実施することができる。
ゾル−ゲル変換系結着樹脂は、好ましくはシロキサン結合及びシラノール基を有する樹脂であり、上記画像形成層には、少なくとも一つのシラノール基を有する化合物を含んだゾル系である塗布液を用い、塗布乾燥過程でシラノール基の縮合が進んでゲル化し、シロキサン骨格の構造が形成されるプロセスによって含有させられる。
また、ゾル−ゲル変換系結着樹脂を含む画像形成層は、膜強度、膜の柔軟性など、物理的性能の向上や塗布性の改良などを目的として、前記親水性樹脂や架橋剤と併用することも可能である。
ゲル構造を形成するシロキサン樹脂は、下記一般式(V)で、又少なくとも一つのシラノール基を有するシラン化合物は、下記一般式(VI)で示される。又、画像形成層に添加される物質系は、必ずしも一般式(VI)のシラン化合物単独である必要はなく、一般には、シラン化合物が部分縮合したオリゴマーもしくは一般式(VI)のシラン化合物とオリゴマーの混合物あってもよい。
一般式(V)のシロキサン樹脂は、一般式(VI)で示されるシラン化合物の少なくとも1種を含有する分散液からゾル−ゲル変換によって形成される。ここで、一般式(V)のR01〜R03の少なくとも一つは水酸基を表し、他は一般式(VI)中の記号R0及びYから選ばれる有機残基を表す。
一般式(VI) (R0)nSi(Y)4-n
ここで、R0は水酸基、炭化水素基又はヘテロ環基を表す。Yは水素原子、ハロゲン原子、−OR1、−OCOR2、又は−N(R3)(R4)を表す。R1、R2は、それぞれ炭化水素基を表し、R3、R4は同じでも異なっていてもよく、炭化水素基又は水素原子を表す。nは0、1、2又は3を表す。
R0の炭化水素基又はヘテロ環基とは、例えば炭素数1〜12の置換されてもよい直鎖状もしくは分岐状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等;これらの基に置換される基としては、ハロゲン原子(塩素原子、フッ素原子、臭素原子)、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、スルホ基、シアノ基、エポキシ基、−OR'基(R'は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、2−ヒドロキシエチル基、3−クロロプロピル基、2−シアノエチル基、N,N−ジメチルアミノエチル基、2−ブロモエチル基、2−(2−メトキシエチル)オキシエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、3−カルボキシエチル基、3−カルボキシプロピル基、ベンジル基等を示す)、
−OCOR"基(R"は、前記R'と同一の内容を表す)、−COOR"基、−COR"基、−N(R"')(R"')基(R"'は、水素原子又は前記R'と同一内容を表し、それぞれ同一でも異なってもよい)、−NHCONHR"基、−NHCOOR"基、―Si(R")3基、−CONHR"基等が挙げられる。これらの置換基はアルキル基中に複数置換されてもよい。炭素数2〜12の置換されてもよい直鎖状又は分岐状のアルケニル基(例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基等;これらの基に置換される基としては、前記アルキル基に置換される基と同一内容のものが挙げられる)、炭素数7〜14の置換されてもよいアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基等;これらに置換される基としては、前記アルキル基に置換される基と同一内容のものが挙げられ、又複数個置換されてもよい)、炭素数5〜10の置換されてもよい脂環式基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−シクロヘキシルエチル基、ノルボニル基、アダマンチル基等;これらに置換される基としては、前記アルキル基に置換される基と同一内容のものが挙げられ、又複数個置換されてもよい)、炭素数6〜12の置換されてもよいアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基で、置換基としては、前記アルキル基に置換される基と同一内容のものが挙げられ、又複数個置換されてもよい)、又は、窒素原子、酸素原子、イオウ原子から選ばれる少なくとも1種の原子を含有する縮環してもよいヘテロ環基(例えば、ピラン環、フラン環、チオフェン環、モルホリン環、ピロール環、チアゾール環、オキサゾール環、ピリジン環、ピペリジン環、ピロリドン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、テトラヒドロフラン環等で、置換基を含有してもよい。置換基としては、前記アルキル基に置換される基と同一内容のものが挙げられ、又複数個置換されてもよい)、を表す。
一般式(VI)のYの−OR1基、−OCOR2基又は−N(R3)(R4)基の置換基としては、例えば以下の置換基を表す。−OR1基において,R1は炭素数1〜10の置換されてもよい脂肪族基〔例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、ペンチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘプテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基、2−(2−メトキシエチル)オキシエチル基、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル基、2−メトキシプロピル基、2−シアノエチル基、3−メチルオキシプロピル基、2−クロロエチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロオクチル基、クロロシクロヘキシル基、メトキシシクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、ジメトキシベンジル基、メチルベンジル基、ブロモベンジル基等が挙げられる〕を表す。
−OCOR2基においてR2はR1と同一の内容の脂肪族基又は炭素数6〜12の置換されてもよい芳香族基(芳香族基としては、前記Rのアリール基で例示したと同様のものが挙げられる)を表す。又、−N(R3)(R4)基において、R3、R4は、互いに同じでも異なってもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜10の置換されてもよい脂肪族基(例えば、前記の−OR1基のR1と同様の内容のものが挙げられる)を表す。より好ましくは,R3とR4の炭素数の総和が16以内である。一般式(VI)で示されるシラン化合物の具体例としては、以下のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
テトラクロルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−プロピルシラン、メチルトリクロルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリクロルシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリクロルシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、フェニルトリクロルシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメトキシジトリエトキシシラン
、ジメチルジクロルシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、トリエトキシヒドロシラン、トリメトキシヒドロシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
画像形成層には一般式(VI)のシラン化合物と共に、Ti、Zn、Sn、Zr、Al等のゾル−ゲル変換の際に樹脂に結合して製膜可能な金属化合物を併用することができる。用いられる金属化合物として、例えば、Ti(OR")4、TiCl4、Zn(OR")2、Zn(CH3COCHCOCH3)2、Sn(OR")4、Sn(CH3COCHCOCH3)4、Sn(OCOR")4、SnCl4、Zr(OR")4、Zr(CH3COCHCOCH3)4、(NH4)2ZrO(CO3)2、Al(OR")3、Al(CH3COCHCOCH3)3等が挙げられる。ここでR"は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基等を表す。
更に一般式(VI)で示される化合物、更に併用する前記金属化合物の加水分解及び重縮合反応を促進するために、酸性触媒又は塩基性触媒を併用することが好ましい。触媒は、酸又は塩基性化合物をそのままか、又は水もしくはアルコールなどの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、それぞれ酸性触媒、塩基性触媒という)を用いる。その時の濃度については特に限定しないが、濃度が濃い場合は加水分解、重縮合速度が速くなる傾向がある。
ただし、濃度の濃い塩基性触媒を用いると、ゾル溶液中で沈殿物が生成する場合があるため、塩基性触媒の濃度は1N(水溶液での濃度換算)以下が望ましい。
酸性触媒の具体例としては、塩酸などのハロゲン化水素酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸が挙げられる。塩基性触媒の具体例としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられるが、これらに限定されない。
以上述べたゾル−ゲル法を用いた画像形成層は、本発明に係る画像形成層の構成として特に好ましい。上記ゾル−ゲル法の更に詳細は、作花済夫著「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社刊(1988年)、平島碩著「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター刊(1992年)等に記載されている。
架橋構造を有する画像形成層における親水性樹脂の添加量は、画像形成層固形分の5〜70質量%が好ましく、5〜50質量%がさらに好ましい。
また、上記画像形成層の厚さは、0.1〜10μmとするのが、耐刷性の点で好ましく、0.5〜5μmとするのがさらに好ましい。
〔支持体〕
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、親水性であれば特に限定されず、寸度的に安定な板状物であればよい。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム
、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルム及びアルミニウム板が挙げられる。中でも、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が好ましい。
アルミニウム板は、純アルミニウム板、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、又は、アルミニウムもしくはアルミニウム合金の薄膜にプラスチックがラミネートされているものである。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は10質量%以下であるのが好ましい。本発明においては、純アルミニウム板が好ましいが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、わずかに異元素を含有するものでもよい。アルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、公知公用の素材のものを適宜利用することができる。
支持体の厚さは0.1〜0.6mmであるのが好ましく、0.15〜0.4mmであるのがより好ましく、0.2〜0.3mmであるのが更に好ましい。
アルミニウム板を使用するに先立ち、粗面化処理、親水性皮膜形成等の表面処理を施すのが好ましい。表面処理により、親水性の向上及び画像形成層と支持体との密着性の確保が容易になる。アルミニウム板を粗面化処理するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための界面活性剤、有機溶剤、アルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。
<粗面化処理>
アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理(電気化学的に表面を溶解させる粗面化処理)、化学的粗面化処理(化学的に表面を選択溶解させる粗面化処理)が挙げられる。
機械的粗面化処理の方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。
電気化学的粗面化処理の方法としては、例えば、塩酸、硝酸等の酸を含有する電解液中で交流又は直流により行う方法が挙げられる。また、特開昭54−63902号公報に記載されているような混合酸を用いる方法も挙げられる。
<親水性皮膜の形成>
以上のようにして粗面化処理および必要に応じて他の処理を施されたアルミニウム板に、低熱伝導率の親水性皮膜を設けるための処理を施す。親水性皮膜は、膜厚方向の熱伝導率が0.05W/mK以上であり、好ましくは0.08W/mK以上であり、また、0.5W/mK以下であり、好ましくは0.3W/mK以下であり、より好ましくは0.2W/mK以下である。膜厚方向の熱伝導率を0.05〜0.5W/mKとすると、レーザー光の露光により画像形成層に発生する熱が支持体に拡散することを抑制することができる。その結果、本発明の平版印刷版原版を機上現像タイプ、無処理型として用いる場合には、レーザー露光により発生する熱を有効に利用可能となるため感度が高くなり、十分な画像形成及び焼き出し画像形成が可能となる。
以下、本発明で規定する親水性皮膜の膜厚方向の熱伝導率について説明する。薄膜の熱伝導率測定方法としては種々の方法がこれまでに報告されている。1986年にはONOらがサーモグラフを用いて薄膜の平面方向の熱伝導率を報告している。また、薄膜の熱物性の測定に交流加熱方法を応用する試みも報告されている。交流加熱法はその起源を18
63年の報告にまでさかのぼることができるが、近年においては、レーザーによる加熱方法の開発やフーリエ変換との組み合わせにより様々な測定法が提案されている。レーザーオングストローム法を用いた装置は実際に市販もされている。これらの方法はいずれも薄膜の平面方向(面内方向)の熱伝導率を求めるものである。
しかし、薄膜の熱伝導を考える際にはむしろ深さ方向への熱拡散が重要な因子である。
種々報告されているように薄膜の熱伝導率は等方的でないといわれており、特に本発明のような場合には直接、膜厚方向の熱伝導率を計測することが極めて重要である。このような観点から薄膜の膜厚方向の熱物性を測定する試みとしてサーモコンパレータを用いた方法がLambropoulosらの論文(J.Appl.Phys.,66(9)(1November 1989))及びHenagerらの論文(APPLIED OPTICS,Vol.32,No.1(1 January 1993))で報告されている。更に、近年、ポリマー薄膜の熱拡散率を、フーリエ解析を適用した温度波熱分析により測定する方法が橋本らによって報告されている(Netsu Sokutei,27(3)(2000))。
本発明で規定する親水性皮膜の膜厚方向の熱伝導率は、上記サーモコンパレータを用いる方法で測定される。以下、上記方法を具体的に説明するが、上記方法の基本的な原理については、上述したLambropoulosらの論文及びHenagerらの論文に詳細に記載されている。本発明では、特開2003−103951号公報の図3に示されているサーモコンパレータを用い、同公報に記載の方法で測定した。
上記各温度と皮膜の熱伝導率の関係は、下記式(1)のようになる。
ただし、上記式(1)中の符号は、以下の通りである。
Tt :チップ先端温度、Tb :ヒートシンク温度、Tr :リザーバ温度、Ktf:皮膜熱伝導率、K1 :リザーバ熱伝導率、K2 :チップ熱伝導率(無酸素銅の場合、400W/mK)、K4 :(皮膜を設けない場合の)金属基体熱伝導率、r1 :チップ先端曲率半径、A2 :リザーバとチップとの接触面積、A3 :チップと皮膜との接触面積、t:膜厚、t2 :接触厚み(≒0)
膜厚(t)を変化させて各温度(Tt 、Tb 及びTr )を測定しプロットすることにより、上記式(1)の傾きを求め、皮膜熱伝導率(Ktf)を求めることができる。即ち、この傾きは上記式(1)から明らかなように、リザーバ熱伝導率(K1 )、チップ先端の曲率半径(r1 )、皮膜熱伝導率(Ktf)及びチップと皮膜との接触面積(A3 )によって決まる値であり、K1 、r1 及びA3は、既知の値であるから、傾きからKtfの値を求めることができる。
本発明者らは、上記の測定方法を用いてアルミニウム基板上に設けた親水性皮膜(陽極酸化皮膜Al2 O3 )の熱伝導率を求めた。膜厚を変えて温度を測定し、その結果のグラフの傾きから求められたAl2 O3 の熱伝導率は、0. 69W/mKであった。これは、上述したLambropoulosらの論文の結果とよい一致を示している。そして、この結果は、薄膜の熱物性値がバルクの熱物性値(バルクのAl2 O3 の熱伝導率は、28W/mK)とは異なることも示している。
本発明の平版印刷版原版の親水性皮膜の膜厚方向の熱伝導率の測定に上記方法を用いると、チップ先端を微小なものにし、かつ、押し付け荷重を一定に保つことにより、平版印刷版用に粗面化された表面についてもバラツキのない結果を得ることができるので好ましい。熱伝導率の値は、試料上の異なる複数の点、例えば、5点で測定し、その平均値として求めるのが好ましい。
親水性皮膜の膜厚は、傷付きにくさ及び耐刷性の点で、0.1μm以上であるのが好ましく、0.3μm以上であるのがより好ましく、0.6μm以上であるのが特に好ましく、また、製造コストの観点から、厚い皮膜を設けるためには多大なエネルギーを必要とすることを鑑みると、5μm以下であるのが好ましく、3μm以下であるのがより好ましく、2μm以下であるのが特に好ましい。
上記親水性皮膜は、断熱性への効果及び皮膜強度、印刷での汚れ難さの観点から、密度が1000〜3200kg/m3 であることが好ましい。
密度の測定法としては、例えば、メイソン法(クロム酸/リン酸混合液溶解による陽極酸化皮膜質量法)による質量測定と、断面をSEMで観察して求めた膜厚から、以下の式によって算出することができる。
密度(kg/m3 )=(単位面積あたりの親水性皮膜質量/膜厚)
親水性皮膜を設ける方法としては、特に限定されず、陽極酸化法、蒸着法、CVD法、ゾルゲル法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、拡散法等を適宜用いることができる。また、親水性樹脂又はゾルゲル液に中空粒子を混合した溶液を塗布する方法を用いることもできる。
中でも、陽極酸化法により酸化物を作成する処理、即ち、陽極酸化処理を用いるのが最も好適である。陽極酸化処理はこの分野で従来行われている方法で行うことができる。具体的には、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸等の単独の又は2種以上を組み合わせた水溶液又は非水溶液の中で、アルミニウム板に直流又は交流を流すと、アルミニウム板の表面に、親水性皮膜である陽極酸化皮膜を形成することができる。陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1〜80質量%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60A/dm2 、電圧1〜200V、電解時間1〜1000秒であるのが適当である。これらの陽極酸化処理の中でも、英国特許第1,412,768号明細書に記載されている、硫酸電解液中で高電流密度にて陽極酸化処理する方法、及び、米国特許第3,511,661号明細書に記載されている、リン酸を電解浴として陽極酸化処理する方法が好ましい。また、硫酸中で陽極酸化処理し、更にリン酸中で陽極酸化処理するなどの多段陽極酸化処理を施すこともできる。
本発明においては、陽極酸化皮膜は、傷付きにくさ及び耐刷性の点で、0.1g/m2 以上であるのが好ましく、0.3g/m2 以上であるのがより好ましく、2g/m2 以上であるのが特に好ましく、3.2g/m2 以上であるのがさらに好ましい。また、厚い皮膜を設けるためには多大なエネルギーを必要とすることを鑑みると、100g/m2 以下であるのが好ましく、40g/m2 以下であるのがより好ましく、20g/m2 以下であるのが特に好ましい。
陽極酸化皮膜には、その表面にマイクロポアと呼ばれる微細な凹部が一様に分布して形成されている。陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアの密度は、処理条件を適宜選択することによって調整することができる。マイクロポアの密度を高くすることにより、陽極酸化皮膜の膜厚方向の熱伝導率を0.05〜0.5W/mKとすることができる。また、マイクロポアの径は、処理条件を適宜選択することによって調整することができる。マイクロポアの径を大きくすることにより、陽極酸化皮膜の膜厚方向の熱伝導率を0.05〜0.5W/mKとすることができる。また、マイクロポアの径は、処理条件を適宜選択することによって調整することができる。マイクロポアの径を大きくすることにより、陽極酸化皮膜の膜厚方向の熱伝導率を0.05〜0.5W/mKとすることができる。
本発明においては、熱伝導率を下げる目的で、陽極酸化処理の後、マイクロポアのポア径を拡げるポアワイド処理を行うことが好ましい。このポアワイド処理は、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム基板を酸水溶液又はアルカリ水溶液に浸漬することにより、陽極酸化皮膜を溶解し、マイクロポアのポア径を拡大するものである。ポアワイド処理は、陽極酸化皮膜の溶解量が、好ましくは0.01〜20g/m2 、より好ましくは0.1〜5g/m2 、特に好ましくは0.2〜4g/m2 となる範囲で行われる。
ポアワイド処理に酸水溶液を用いる場合は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸又はこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。酸水溶液の濃度は10〜1000g/Lであるのが好ましく、20〜500g/Lであるのがより好ましい。酸水溶液の温度は、10〜90℃であるのが好ましく、30〜70℃であるのがより好ましい。酸水溶液への浸漬時間は、1〜300秒であるのが好ましく、2〜100秒であるのがより好ましい。一方、ポアワイド処理にアルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液のpHは、10〜13であるのが好ましく、11.5〜13.0であるのがより好ましい。アルカリ水溶液の温度は、10〜90℃であるのが好ましく、30〜50℃であるのがより好ましい。アルカリ水溶液への浸漬時間は、1〜500秒であるのが好ましく、2〜100秒であるのがより好ましい。しかしながら、最表面のマイクロポア径を拡大しすぎると、印刷時の汚れ性能が劣化することから、最表面のマイクロポア径は40nm以下にすることが好ましく、20nm以下にすることがより好ましく、10nm以下にすることが最も好ましい。したがって、断熱性と汚れ性能を両立する。より好ましい陽極酸化皮膜形状としては、表面のマイクロポア径が0〜40nmで、内部のマイクロポア径が20〜300nmである。例えば、電解液の種類が同じであれば、電解によって、生成するポアのポア径は電解時の電解電圧に比例することが知られている。その性質を利用して電解電圧を徐々に上昇させていくことで底部分の拡がったポアが生成する方法を用いることができる。また、電解液の種類を変えるとポア径が変化することが知られていて、硫酸、シュウ酸、リン酸の順にポア径が大きくなる。従って、1段階目に電解液に硫酸を用いて、2段階目にリン酸を用いて陽極酸化する方法を用いることができる。また、陽極酸化処理、及びあるいはポアワイド処理して得られた支持体に後述の封孔処理を行ってもよい。
また、親水性皮膜は、上述した陽極酸化皮膜のほかに、スパッタリング法、CVD法等により設けられる無機皮膜であってもよい。無機皮膜を構成する化合物としては、例えば、酸化物、チッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物が挙げられる。また、無機皮膜は、化合物の単体のみから構成されていてもよく、化合物の混合物により構成されていてもよい。無機皮膜を構成する化合物としては、具体的には、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化クロム;チッ化アルミニウム、チッ化ケイ素、チッ化チタン、チッ化ジルコニウム、チッ化ハフニウム、チッ化バナジウム、チッ化ニオブ、チッ化タンタル、チッ化モリブデン、チッ化タングステン、チッ化クロム、チ
ッ化ケイ素、チッ化ホウ素;ケイ化チタン、ケイ化ジルコニウム、ケイ化ハフニウム、ケイ化バナジウム、ケイ化ニオブ、ケイ化タンタル、ケイ化モリブデン、ケイ化タングステン、ケイ化クロム;ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化ハフニウム、ホウ化バナジウム、ホウ化ニオブ、ホウ化タンタル、ホウ化モリブデン、ホウ化タングステン、ホウ化クロム;炭化アルミニウム、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化ニオブ、炭化タンタル、炭化モリブデン、炭化タングステン、炭化クロムが挙げられる。
<封孔処理>
本発明においては、上述したようにして親水性皮膜を設けて得られた親水性支持体に封孔処理を行ってもよい。本発明に用いられる封孔処理としては、特開平4−176690号公報及び特開平11−301135号公報に記載の加圧水蒸気や熱水による陽極酸化皮膜の封孔処理が挙げられる。また、ケイ酸塩処理、重クロム酸塩水溶液処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム塩処理、電着封孔処理、トリエタノールアミン処理、炭酸バリウム塩処理、極微量のリン酸塩を含む熱水処理等の公知の方法を用いて行うこともできる。封孔処理皮膜は、例えば、電着封孔処理をした場合にはポアの底部から形成され、また、水蒸気封孔処理をした場合にはポアの上部から形成され、封孔処理の仕方によって封孔処理皮膜の形成され方は異なる。そのほかにも、溶液による浸漬処理、スプレー処理、コーティング処理、蒸着処理、スバッタリング、イオンプレーティング、溶射、鍍金等が挙げられるが、特に限定されるものではない。中でも特に好ましいのは、特開2002−214764号公報記載の平均粒径8〜800nmの粒子を用いた封孔処理が挙げられる。
粒子を用いた封孔処理は、平均粒径8〜800nm、好ましくは平均粒径10〜500nm、より好ましくは平均粒径10〜150nmの粒子によって行われる。この範囲内で、親水性皮膜に存在するマイクロポアの内部に粒子が入り込んでしまうおそれが少なく、高感度化の効果が十分得られ、また、画像形成層との密着性が十分となり、耐刷性が優れたものとなる。粒子層の厚さは、8〜800nmであるのが好ましく、10〜500nmであるのがより好ましい。
本発明に用いられる粒子は、熱伝導率が60W/mK以下であるのが好ましく、40W/mK以下であるのがより好ましく、0.3〜10W/mK以下であるのが特に好ましい。熱伝導率が60W/mK以下であると、アルミニウム基板への熱拡散の抑制が十分となり、高感度化の効果が十分に得られる。
粒子層を設ける方法としては、例えば、溶液による浸漬処理、スプレー処理、コーティング処理、電解処理、蒸着処理、スパッタリング、イオンプレーティング、溶射、鍍金等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
電解処理は、直流又は交流を用いることができる。上記電解処理に用いられる交流電流の波形としては、サイン波、矩形波、三角波、台形波等が挙げられる。また、交流電流の周波数は、電源装置を製作するコストの観点から、30〜200Hzであるのが好ましく、40〜120Hzであるのがより好ましい。交流電流の波形として台形波を用いる場合、電流が0からピークに達するまでの時間tpはそれぞれ0.1〜2msecであるのが好ましく、0.3〜1.5msecであるのがより好ましい。上記tpが0.1msec未満であると、電源回路のインピーダンスが影響し、電流波形の立ち上がり時に大きな電源電圧が必要となり、電源の設備コストが高くなる場合がある。
親水性粒子としては、Al2 O3 、TiO2 、SiO2 及びZrO2 を単独で又は2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。電解液は、例えば、前記親水性粒子を含有量が全体の0.01〜20質量%となるように、水等に懸濁させて得られる。電解液は、電荷
をプラス又はマイナスに帯電させるために、例えば、硫酸を添加するなどして、pHを調整することもできる。電解処理は、例えば、直流を用い、アルミニウム板を陰極として、上記電解液を用い、電圧10〜200Vで1〜600秒間の条件で行う。この方法によれば、容易に、陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアの内部に空隙を残しつつ、その口をふさぐことができる。
また、封孔処理として特開昭60−149491号公報に記載されている、少なくとも1個のアミノ基と、カルボキシル基及びその塩の基ならびにスルホ基及びその塩の基からなる群から選ばれた少なくとも1個の基とを有する化合物からなる層、特開昭60−232998号公報に記載されている、少なくとも1個のアミノ基と少なくとも1個のヒドロキシ基を有する化合物及びその塩から選ばれた化合物からなる層、特開昭62−19494号公報に記載されているリン酸塩を含む層、特開昭59−101651号公報に記載されているスルホ基を有するモノマー単位の少なくとも1種を繰り返し単位として分子中に有する高分子化合物からなる層等をコーティングによって設ける方法が挙げられる。
また、カルボキシメチルセルロース;デキストリン;アラビアガム;2−アミノエチルホスホン酸等のアミノ基を有するホスホン酸類;置換基を有していてもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸、エチレンジホスホン酸等の有機ホスホン酸;置換基を有していてもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸、グリセロリン酸等の有機リン酸エステル;置換基を有していてもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸、グリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸;グリシン、β−アラニン等のアミノ酸類;トリエタノールアミンの塩酸塩等のヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等から選ばれる化合物の層を設ける方法も挙げられる。
封孔処理には、不飽和基を有するシランカップリング剤を塗設処理してもよい。シランカップリング剤としては、例えば、N−3−(アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、3−(N−アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、アリルジメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−ブテニルトリエトキシシラン、2−(クロロメチル)アリルトリメトキシシラン、メタクリルアミドプロピルトリエトキシシラン、N−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(メタクリロキシメチル)ジメチルエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン、メトキシジメチルビニルシラン、1−メトキシ−3−(トリメチルシロキシ)ブタジエン、スチリルエチルトリメトキシシラン、3−(N−スチリルメチル−2−アミノエチルアミノ)−プロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルジフェニルエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、O−(ビニロキシエチル)−N−(トリエトキシシリルプロピル)ウレタン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリ−t−ブトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ジアリルアミノプロピルメトキシシランが挙げられる。中でも、不飽和基の反応性が速いメタクリロイル基、アクリロイル基を有するシランカップリング剤が好ましい。
そのほかにも、特開平5−50779号公報に記載されているゾルゲルコーティング処理、特開平5−246171号公報に記載されているホスホン酸類のコーティング処理、特開平6−234284号公報、特開平6−191173号公報及び特開平6−230563号公報に記載されているバックコート用素材をコーティングにより処理する方法、特開平6−262872号公報に記載されているホスホン酸類の処理、特開平6−297875号公報に記載されているコーティング処理、特開平10−109480号公報に記載されている陽極酸化処理する方法、特開2000−81704号公報及び特開2000−89466号公報に記載されている浸漬処理方法等が挙げられ、いずれの方法を用いてもよい。
親水性皮膜を形成した後、必要に応じて、アルミニウム板の表面に親水化処理を施す。
親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号及び同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケート法がある。この方法においては、支持体をケイ酸ナトリウム等の水溶液で浸漬処理し、又は電解処理する。そのほかに、特公昭36−22063号公報に記載されているフッ化ジルコン酸カリウムで処理する方法、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号及び同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が挙げられる。
支持体は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであるのが好ましい。この範囲で、画像形成層との良好な密着性、良好な耐刷性と良好な汚れ難さが得られる。
また、支持体の色濃度としては、反射濃度値として0.15〜0.65であるのが好ましい。この範囲で、画像露光時のハレーション防止による良好な画像形成性と現像後の良好な検版性が得られる。
〔バックコート層〕
支持体に表面処理を施した後又は下塗層を形成させた後、必要に応じて、支持体の裏面にバックコートを設けることができる。
バックコートとしては、例えば、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平6−35174号公報に記載されている有機金属化合物又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好適に挙げられる。中でも、Si(OCH3 )4 、Si(OC2 H5 )4 、Si(OC3 H7 )4 、Si(OC4 H9 )4 等のケイ素のアルコキシ化合物を用いるのが、原料が安価で入手しやすい点で好ましい。
〔下塗層〕
本発明の平版印刷版原版においては、必要に応じて、画像形成層と支持体との間に下塗層を設けることができる。下塗層が断熱層として機能することにより、赤外線レーザーによる露光により発生した熱が支持体に拡散せず、効率よく利用されるようになるため、高感度化が図れるという利点がある。また、未露光部においては、画像形成層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、機上現像性が向上する。
下塗層としては、具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2−304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物等が好適に挙げられる。
下塗層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/m2であるのが好ましく、1〜30mg/m2であるのがより好ましい。
〔保護層(オーバーコート層)〕
本発明の平版印刷版原版においては、画像形成層における傷等の発生防止、酸素遮断、
高照度レーザー露光時のアブレーション防止のため、必要に応じて、画像形成層の上に保護層を設けることができる。
本発明においては、通常、露光を大気中で行うが、保護層は、画像形成層中で露光により生じる画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素、塩基性物質等の低分子化合物の画像形成層への混入を防止し、大気中での露光による画像形成反応の阻害を防止する。したがって、保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性が低いことであり、更に、露光に用いられる光の透過性が良好で、画像形成層との密着性に優れ、かつ、露光後の機上現像処理工程で容易に除去することができるものであるのが好ましい。このような特性を有する保護層については、以前より種々検討がなされており、例えば、米国特許第3、458、311号明細書及び特開昭55−49729号公報に詳細に記載されている。
保護層に用いられる材料としては、例えば、比較的、結晶性に優れる水溶性高分子化合物が挙げられる。具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸等の水溶性ポリマーが挙げられる。中でも、ポリビニルアルコール(PVA)を主成分として用いると、酸素遮断性、現像除去性等の基本的な特性に対して最も良好な結果を与える。ポリビニルアルコールは、保護層に必要な酸素遮断性と水溶性を与えるための未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル又はアセタールで置換されていてもよく、一部が他の共重合成分を有していてもよい。
ポリビニルアルコールの具体例としては、71〜100モル%加水分解された重合度300〜2400の範囲のものが好適に挙げられる。具体的には、例えば、(株)クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8が挙げられる。
保護層の成分(PVAの選択、添加剤の使用等)、塗布量等は、酸素遮断性及び現像除去性のほか、カブリ性、密着性、耐傷性等を考慮して適宜選択される。一般には、PVAの加水分解率が高いほど(即ち、保護層中の未置換ビニルアルコール単位含有率が高いほど)、また、膜厚が厚いほど、酸素遮断性が高くなり、感度の点で好ましい。また、製造時及び保存時に不要な重合反応、画像露光時の不要なカブリ及び画線の太り等を防止するためには、酸素透過性が高くなりすぎないことが好ましい。従って、25℃、1気圧下における酸素透過性Aが0.2≦A≦20(cc/m2・day)であることが好ましい。
保護層の他の組成物として、グリセリン、ジプロピレングリコール等を水溶性高分子化合物に対して数質量%相当量添加して可撓性を付与することができ、また、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤;アルキルアミノカルボン酸塩、アルキルアミノジカルボン酸塩等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン界面活性剤を(共)重合体に対して数質量%添加することができる。
保護層の膜厚は、0.1〜5μmが適当であり、特に0.2〜2μmが好適である。
また、画像部との密着性、耐傷性等も平版印刷版原版の取り扱い上、極めて重要である。即ち、水溶性高分子化合物を含有するため親水性である保護層を、画像形成層が親油性である場合に、画像形成層に積層すると、接着力不足による保護層のはく離が生じやすく、はく離部分において、酸素による重合阻害に起因する膜硬化不良等の欠陥を引き起こす
ことがある。
これに対して、画像形成層と保護層との間の接着性を改良すべく、種々の提案がなされている。例えば、特開昭49−70702号公報及び英国特許出願公開第1303578号明細書には、主にポリビニルアルコールからなる親水性ポリマー中に、アクリル系エマルジョン、水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体等を20〜60質量%混合させ、画像形成層上に積層することにより、十分な接着性が得られることが記載されている。本発明においては、これらの公知の技術をいずれも用いることができる。保護層の塗布方法については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書及び特開昭55−49729号公報に詳細に記載されている。
本発明においては、上記保護層に前記の焼き出し画像形成成分(変色剤(A)、ラジカル重合開始剤、赤外線吸収剤)を含有させることができる。これら焼き出し画像形成成分を画像形成層ではなく保護層に入れる態様は、焼き出し画像形成反応が画像形成層における重合反応系と分離され、お互いの反応の阻害を避けることができるので好ましい。また、これらの焼き出し画像形成成分をマイクロカプセルに内包した形で保護層に含有させることも好ましい態様である。焼き出し画像を強化する場合は、上記焼き出し画像形成成分を保護層と画像形成層の両方に含有させることもできる。
更に、保護層には、他の機能を付与することもできる。例えば、露光に用いられる赤外線の透過性に優れ、かつ、それ以外の波長の光を効率よく吸収しうる、着色剤(例えば、水溶性染料)の添加により、感度低下を引き起こすことなく、セーフライト適性を向上させることができる。
〔露光〕
本発明の平版印刷版原版は、赤外線レーザーで画像様に露光して用いる。
この際用いられる赤外線レーザーは、特に限定されないが、波長760〜1200nmの赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適に挙げられる。赤外線レーザーの出力は、100mW以上であるのが好ましい。また、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザーデバイスを用いるのが好ましい。
1画素あたりの露光時間は、20μ秒以内であるのが好ましい。また、照射エネルギー量は、10〜300mJ/cm2 であるのが好ましい。
〔印刷方法〕
本発明の平版印刷版原版は、赤外線レーザーで画像様に露光した後、なんらの現像処理工程を経ることなく油性インキと水性成分とを供給して印刷することができる。
具体的には、平版印刷版原版を赤外線レーザーで露光した後、現像処理工程を経ることなく、印刷機に装着して印刷する方法、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上において赤外線レーザーで露光した後、現像処理工程を経ることなく印刷する方法等が挙げられる。
例えば、ネガ型の機上現像型平版印刷版原版の一態様では、平版印刷版原版を赤外線レーザーで画像様に露光した後、湿式現像処理工程等の現像処理工程を経ることなく水性成分と油性インキとを供給して印刷すると、画像形成層の露光部においては、露光により硬化した画像形成層が、親油性表面を有する油性インキ受容部を形成する。一方、未露光部においては、供給された水性成分および/または油性インキによって、未硬化の画像形成層が溶解しまたは分散して除去され、その部分に親水性の表面が露出する。
その結果、水性成分は露出した親水性の表面に付着し、油性インキは露光領域の画像形成層に着肉し、印刷が開始される。ここで、最初に版面に供給されるのは、水性成分でもよく、油性インキでもよいが、水性成分が未露光部の画像形成層により汚染されることを防止する点で、最初に油性インキを供給するのが好ましい。水性成分および油性インキと
しては、通常の平版印刷用の湿し水と印刷インキが用いられる。
また、露光部分は変色剤(A)が変色するので視認性に優れる。
このようにして、平版印刷版原版はオフセット印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。