JP2007007905A - 平版印刷版原版及びそれを用いた平版印刷方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 支持体上に、少なくとも(A)赤外線吸収剤と、(B)重合開始剤と、(C)重合性化合物と、(D)バインダーポリマーと、(E)ボレート化合物とを含有し、赤外線の照射により記録可能な画像記録層を有する平版印刷版原版を、赤外線レーザーで画像様に露光する工程と、露光後の平版印刷版原版になんらの現像処理を施すことなく、油性インキと水性成分とを供給して、印刷する印刷工程とを有し、該印刷工程の途上において平版印刷版原版の赤外線レーザー未露光部分が除去されることを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
この平版印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(画像記録層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)が広く用いられている。通常は、平版印刷版原版を、リスフィルム等の原画を通した露光を行った後、画像部の画像記録層を残存させ、非画像部の画像記録層をアルカリ性現像液または有機溶剤によって溶解して除去することで親水性の支持体の表面を露出させる方法により製版を行って、平版印刷版を得ている。
機上現像の具体的方法としては、例えば、湿し水、インキ溶剤または湿し水とインキとの乳化物に溶解しまたは分散することが可能な画像記録層を有する平版印刷版原版を用いる方法、印刷機のローラー類やブランケット胴との接触により、画像記録層の力学的除去を行う方法、湿し水、インキ溶剤等の浸透によって画像記録層の凝集力または画像記録層と支持体との接着力を弱めた後、ローラー類やブランケット胴との接触により、画像記録層の力学的除去を行う方法が挙げられる。
なお、本発明においては、特別な説明がない限り、「現像処理工程」とは、印刷機以外の装置(通常は自動現像機)を使用し、液体(通常はアルカリ性現像液)を接触させることにより、平版印刷版原版の赤外線レーザー未露光部分を除去し、親水性支持体表面を露出させる工程を指し、「機上現像」とは、印刷機を用いて、液体(通常は印刷インキ及び/又は湿し水)を接触させることにより、平版印刷版原版の赤外線レーザー未露光部分を除去し、親水性支持体表面を露出させる方法および工程を指す。
上述したように、近年、製版作業の簡素化、乾式化および無処理化は、地球環境への配慮とデジタル化への適合化との両面から、従来にも増して、強く望まれるようになってきている。
従来の製版方法では、感光性の平版印刷版原版に対して、低照度から中照度で像様露光を行い、画像記録層における光化学反応による像様の物性変化によって画像記録を行う。これに対して、上述した高出力レーザーを用いる方法では、露光領域に極短時間に大量の光エネルギーを照射して、光エネルギーを効率的に熱エネルギーに変換させ、その熱により、画像記録層において化学変化、相変化、形態または構造の変化等の熱変化を起こさせ、その変化を画像記録に利用する。したがって、画像情報はレーザー光等の光エネルギーによって入力されるが、画像記録は光エネルギーに加えて熱エネルギーによる反応も加味された状態で行われる。通常、このような高パワー密度露光による発熱を利用した記録方式はヒートモード記録と呼ばれ、光エネルギーを熱エネルギーに変えることは光熱変換と呼ばれる。
しかしながら、画像記録層として実用上有用な感光性記録材料の多くは、感光波長が760nm以下の可視光域にあるため、赤外線レーザーでは画像記録をすることができない。このため、赤外線レーザーで画像記録をすることができる材料が望まれている。
これらの平版印刷版原版のように重合反応を用いて疎水性の領域を形成する方法は、重合体微粒子の熱融着により形成される画像部に比べ、画像部の化学結合密度が高いため画像強度が比較的良好であるという特徴を有するが、実用的な観点から見ると、機上現像性、耐刷性および重合効率(感度)のいずれも未だ不十分であり、実用化には至っていない。
また、本発明のさらなる目的は、前記平版印刷方法に好適に用いられる、露光による発色性に優れ、露光部と未露光部との色相の差異が明確であり、被膜強度に優れるとともに、インク及び/又は湿し水により未露光部が容易に除去しうる画像記録層を有する平版印刷版原版を提供することにある。
即ち、本発明の平版印刷方法は、 支持体上に、(A)赤外線吸収剤と、(B)重合開始剤と、(C)重合性化合物と、(D)バインダーポリマーと、(E)ボレート化合物とを含有し、赤外線の照射により記録可能な画像記録層を有する平版印刷版原版を、赤外線レーザーで画像様に露光する工程と、露光後の平版印刷版原版になんらの現像処理を施すことなく、油性インキと水性成分とを供給して、印刷する印刷工程とを有し、該印刷工程の途上において平版印刷版原版の赤外線レーザー未露光部分が除去されることを特徴とする。
ここで用いられる(E)ボレート化合物は、テトラアリールボレート構造を有する化合物であることが好ましい。
また、前記画像記録層には、前記各化合物に加え、さらに(F)マイクロカプセルまたはミクロゲルを含有することが好ましい態様である。
また、本発明の平版印刷版原版は、機上現像による平版印刷方法に好適に用いられ、露光による発色性に優れ、露光部と未露光部との色相の差異が明確となり、被膜強度に優れ、且つ、インク及び/又は湿し水により未露光部が容易に除去しうる画像記録層を有するという効果を奏する。
まず、本発明の平版印刷方法に好適に用いられる平版印刷版原版について説明する。
[平版印刷版原版]
<画像記録層>
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、(A)赤外線吸収剤と、(B)重合開始剤と、(C)重合性化合物と、(D)バインダーポリマーと、(E)ボレート化合物とを含有し、赤外線の照射により記録可能な画像記録層を有する。
この平版印刷版原版においては、赤外線の照射により画像記録層の露光部が硬化して疎水性(親油性)領域を形成し、かつ、印刷開始時に未露光部が湿し水、インキまたは湿し水とインキとの乳化物によって支持体上から速やかに除去される。即ち、上記画像記録層は、印刷インキおよび/または湿し水により除去可能な画像記録層である。
以下、画像記録層の各構成成分について説明する。
まず、本発明の画像記録層に含まれる特徴的な成分である(E)ボレート化合物について述べる。
本発明に使用することができる(E)ボレート化合物は、硼素アニオン構造を有する化合物であれば、特に制限無く使用することができるが、下記一般式(I)に示す構造を有するボレート化合物が好ましい。
R1〜R4で表される1価の有機基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキニル基、シクロアルキル基が挙げられ、なかでもアリール基が好ましい。これらの有機基は、置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、シアノ基、アミド基、ウレタン基、スルホ基、チオアルコキシ基、カルボキシル基などが挙げられる。
なかでも、好ましくはR1〜R4がそれぞれアリール基である化合物であり、更に好ましくは置換基として電子吸引性基を有するアリール基が好ましい。ここで、R1〜R4はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。
アリール基に導入される好ましい電子吸引性基としては、ハロゲン原子、フルオロアルキル基が好ましく、中でもフッ素原子、トリフルオロメチル基が好ましい。
下記に本発明に用いられる好ましい(E)ボレート化合物の例を示すが、本発明は下記に制限されるものではない。
本発明の画像記録層には、感度向上に有用な赤外線吸収剤を含有する。赤外線吸収剤としては、700〜1200nmに吸収極大を有する化合物が好ましい。赤外線吸収剤を含有することで、本発明に係る画像記録層は赤外線波長域に感応性を有することになる。
赤外線吸収剤ととしては、入手容易な高出力レーザーへの適合性の観点から、波長760〜1200nmに吸収極大を有する赤外線吸収性染料又は顔料であることが好ましい。
また、Za-は、対アニオンを示す。但し、一般式(a)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa-は必要ない。好ましいZa-は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、カルボン酸イオン、及びスルホン酸イオンであり、アルカリ可溶性樹脂との相溶性や塗布液への溶解性の観点からは、ハロゲンイオン、及び、カルボン酸イオンやスルホン酸イオンの有機酸イオンが好ましく、より好ましくはスルホン酸イオンであり、中でもアリールスルホン酸イオンが特に好ましい。
本発明における(A)成分としては、反応性、安定性の観点から、シアニン色素が好ましい。
感度の観点からは、一般式(a)で示されるシアニン色素がより好ましく、一般式(a)で示されるシアニン色素の中でも、反応性の観点から、X1がジアリールアミノ基又はX2−L1であるシアニン色素が好ましく、ジアリールアミノ基を有するシアニン色素がさらに好ましい。
画像記録層の吸光度は、画像記録層に添加する赤外線吸収剤の量と画像記録層の厚みにより調整することができる。吸光度の測定は常法により行うことができる。測定方法としては、例えば、アルミニウム等の反射性の支持体上に、乾燥後の塗布量が平版印刷版として必要な範囲において適宜決定された厚みの画像記録層を形成し、反射濃度を光学濃度計で測定する方法、積分球を用いた反射法により分光光度計で測定する方法等が挙げられる。
なお、含有量について述べれば、感度と、被膜の均一性、被膜強度とのバランスといった観点からは、画像記録層の全固形分中、0.5〜8質量%含まれることが好ましい。
本発明に用いられる重合開始剤とは、光、熱或いはその両方のエネルギーによりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を開始、促進する、所謂ラジカル発生剤を示す。本発明に使用できるラジカル発生剤としては、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などを使用することができ、なかでも、熱エネルギーによりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を、開始、促進させる熱ラジカル発生剤が好ましい。本発明に用いうる熱ラジカル発生剤としては、公知の重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物などを、適宜、選択して用いることとができる。また、ラジカルを発生する化合物は、単独又は2種以上を併用して用いることができる。
ラジカルを発生する化合物としては、例えば、有機ハロゲン化化合物、カルボニル化合物、有機過酸化化合物、アゾ系重合開始剤、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ジスルホン酸化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩化合物、が挙げられる。これらの各化合物について以下に詳細に説明する。
有機過酸化化合物としては、例えば、トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−オキサノイルパーオキサイド、過酸化こはく酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシオクタノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、ターシルカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等が挙げられる。
オキシムエステル化合物としては、J.C.S. Perkin II (1979 )1653−1660)、J.C.S. Perkin II (1979)156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202−232、特開2000−66385記載の化合物、特開2000−80068記載の化合物具体的には以下に示す化合物などが挙げられる。
本発明において、これらのオニウム塩は酸発生剤ではなく、イオン性のラジカル重合開始剤として機能する。
本発明において好適に用いられるオニウム塩は、下記一般式(RI−I)〜(RI−III)で表されるオニウム塩である。
Z11-は1価の陰イオンを表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオンが好ましい。
以下に、本発明に好ましく用いられる(B)重合開始剤の具体例を挙げるが本発明はこれらに制限されるものではない。
これらの(B)重合開始剤は、画像記録層を構成する全固形分に対し0.1〜40質量%、好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%の割合で添加することができる。この範囲で、良好な感度と印刷時の非画像部の良好な汚れ難さが得られる。
本発明に用いることができる(C)重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。
また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
(ただし、R4及びR5は、H又はCH3を示す。)
感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。
また、画像記録層中の他の成分(例えばバインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、付加重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、基板や後述のオーバーコート層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
本発明に用いることができるバインダーポリマーは、従来公知のものを制限なく使用でき、皮膜性を有する線状有機ポリマーが好ましい。このようなバインダーポリマーの例としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられる。
バインダーポリマーは、画像部の皮膜強度を向上するために、架橋性を有していることが好ましい。バインダーポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の主鎖中または側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよい。
分子の主鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、ポリ−1,4−ブタジエン、ポリ−1,4−イソプレン等が挙げられる。
分子の側鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルまたはアミドのポリマーであって、エステルまたはアミドの残基(−COORまたは−CONHRのR)がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
エステル残基の具体例としては、−CH2CH=CH2(特公平7−21633号公報に記載されている。)、−CH2CH2O−CH2CH=CH2、−CH2C(CH3)=CH2、−CH2CH=CH−C6H5、−CH2CH2OCOCH=CH−C6H5、−CH2CH2−NHCOO−CH2CH=CH2および−CH2CH2O−X(式中、Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)が挙げられる。
アミド残基の具体例としては、−CH2CH=CH2、−CH2CH2−Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)、−CH2CH2−OCO−CH=CH2が挙げられる。
また、画像記録層の未露光部の機上現像性向上の観点から、(D)バインダーポリマーは、インキ及び/又湿し水に対する溶解性又は分散性が高いことが好ましい。
インキに対する溶解性又は分散性を向上させるためには、(D)バインダーポリマーは、親油的な方が好ましく、湿し水に対する溶解性又は分散性を向上させるためには、バインダーポリマーは、親水的な方が好ましい。このため、本発明においては、親油的なバインダーポリマーと親水的なバインダーポリマーを併用することも有効である。
(D)バインダーポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれでもよいが、ランダムポリマーであるのが好ましい。
(D)バインダーポリマーを合成する際に用いられるラジカル重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤等の公知の化合物を用いることができる。
(D)バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の全固形分に対して、10〜90質量%であり、20〜80質量%であるのが好ましく、30〜70質量%であるのがより好ましい。この範囲で、良好な画像部の強度と画像形成性が得られる。
また、(C)重合性化合物と(D)バインダーポリマーは、質量比で1/9〜7/3となる量で用いるのが好ましい。
さらに、他の好ましい態様として、画像記録層に架橋樹脂粒子、すなわち(F)ミクロゲルを含有する態様が挙げられる。該ミクロゲルは、その中および/または表面に該構成成分(A)〜(E)の一部を含有することが出来る。特に(C)重合性化合物をその表面に有することによって反応性ミクロゲルとした態様が、画像形成感度や耐刷性の観点から特に好ましい。
より良好な機上現像性を得るためには、画像記録層は、(F)マイクロカプセルもしくはミクロゲルを含有するマイクロカプセル型もしくはミクロゲル型画像記録層であることが好ましい。
例えばマイクロカプセルの製造方法としては、米国特許第2800457号、同第2800458号明細書にみられるコアセルベーションを利用した方法、米国特許第3287154号の各明細書、特公昭38−19574号、同42−446号の各公報にみられる界面重合法による方法、米国特許第3418250号、同第3660304号明細書にみられるポリマーの析出による方法、米国特許第3796669号明細書に見られるイソシアナートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3914511号明細書に見られるイソシアナート壁材料を用いる方法、米国特許第4001140号、同第4087376号、同第4089802号の各明細書にみられる尿素―ホルムアルデヒド系または尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4025445号明細書にみられるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシセルロース等の壁材を用いる方法、特公昭36−9163号、同51−9079号の各公報にみられるモノマー重合によるin situ法、英国特許第930422号、米国特許第3111407号明細書にみられるスプレードライング法、英国特許第952807号、同第967074号の各明細書にみられる電解分散冷却法などがあるが、これらに限定されるものではない。
上記界面重合を利用する方法としては、上述した公知のマイクロカプセル製造方法を応用することができる。
<界面活性剤>
本発明において、画像記録層には、印刷開始時の機上現像性を促進させるため、および、塗布面状を向上させるために界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
界面活性剤の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましい。
本発明に係る画像記録層には、必要に応じて、例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、および特開昭62−293247号に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料も好適に用いることができる。
本発明の画像記録層には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、焼き出し画像生成のため、酸又はラジカルによって変色する化合物を添加することができる。このような化合物としては、例えばジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
酸又はラジカルによって変色する染料の好適な添加量は、それぞれ、画像記録層固形分に対して0.01〜10質量%の割合である。
本発明の画像記録層には、画像記録層の製造中または保存中において(C)ラジカル重合性化合物の不要な熱重合を防止するために、少量の熱重合防止剤を添加するのが好ましい。
熱重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩が好適に挙げられる。
熱重合防止剤の添加量は、画像記録層の全固形分に対して、約0.01〜約5質量%であるのが好ましい。
本発明の画像記録層には、酸素による重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で画像記録層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、画像記録層の全固形分に対して、約0.1〜約10質量%であるのが好ましい。
本発明の画像記録層は、機上現像性を向上させるために、可塑剤を含有してもよい。
可塑剤としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、オクチルカプリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジアリルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルグリコールフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、トリエチレングリコールジカプリル酸エステル等のグリコールエステル類;トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;ジイソブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルマレエート等の脂肪族二塩基酸エステル類;ポリグリシジルメタクリレート、クエン酸トリエチル、グリセリントリアセチルエステル、ラウリン酸ブチル等が好適に挙げられる。
可塑剤の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、約30質量%以下であるのが好ましい。
本発明の画像記録層は、画像部の硬化皮膜強度向上及び非画像部の機上現像性向上のために、無機微粒子を含有してもよい。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはこれらの混合物が好適に挙げられる。これらは光熱変換性でなくても、皮膜の強化、表面粗面化による界面接着性の強化等に用いることができる。
無機微粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであるのが好ましく、0.5μm〜3μmであるのがより好ましい。上記範囲であると、画像記録層中に安定に分散して、画像記録層の膜強度を十分に保持し、印刷時の汚れを生じにくい親水性に優れる非画像部を形成することができる。
上述したような無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましい。
本発明の画像記録層は、機上現像性向上のため、親水性低分子化合物を含有しても良い。親水性低分子化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びそのエーテル又はエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール等のポリヒドロキシ類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンモノエタノールアミン等の有機アミン類及びその塩、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類及びその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類及びその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類及びその塩等が上げられる。
本発明の画像記録層は、必要な上記各成分を溶剤に分散、又は溶かして塗布液を調製し、塗布される。ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独又は混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
本発明の画像記録層は、同一又は異なる上記各成分を同一又は異なる溶剤に分散、又は溶かした塗布液を複数調製し、複数回の塗布、乾燥を繰り返して形成することも可能である。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、特に限定されず、寸度的に安定な板状物であればよい。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされまたは蒸着された紙またはプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルムおよびアルミニウム板が挙げられる。中でも、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が好ましい。
機械的粗面化処理の方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。
電気化学的粗面化処理の方法としては、例えば、塩酸、硝酸等の酸を含有する電解液中で交流または直流により行う方法が挙げられる。また、特開昭54−63902号公報に記載されているような混合酸を用いる方法も挙げられる。
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成させる種々の電解質の使用が可能である。一般的には、硫酸、塩酸、シュウ酸、クロム酸またはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化処理の条件は、用いられる電解質により種々変わるので一概に特定することはできないが、一般的には、電解質濃度1〜80質量%溶液、液温5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分であるのが好ましい。形成される陽極酸化皮膜の量は、1.0〜5.0g/m2であるのが好ましく、1.5〜4.0g/m2であるのがより好ましい。この範囲で、良好な耐刷性と平版印刷版の非画像部の良好な耐傷性が得られる。
また、支持体の色濃度としては、反射濃度値として0.15〜0.65であるのが好ましい。この範囲で、画像露光時のハレーション防止による良好な画像形成性と現像後の良好な検版性が得られる。
支持体に表面処理を施した後または下塗層を形成させた後、必要に応じて、支持体の裏面にバックコートを設けることができる。
バックコートとしては、例えば、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平6−35174号公報に記載されている有機金属化合物または無機金属化合物を加水分解および重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好適に挙げられる。中でも、Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4、Si(OC3H7)4、Si(OC4H9)4等のケイ素のアルコキシ化合物を用いるのが、原料が安価で入手しやすい点で好ましい。
本発明の平版印刷方法に用いられる本発明の平版印刷版原版においては、必要に応じて、画像記録層と支持体との間に下塗層を設けることができる。下塗層が断熱層として機能することにより、赤外線レーザによる露光により発生した熱が支持体に拡散せず、効率よく利用されるようになるため、高感度化が図れるという利点がある。また、未露光部においては、画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、機上現像性が向上する。
下塗層としては、具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、エチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物等が好適に挙げられる。
下塗層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/m2であるのが好ましく、3〜30mg/m2であるのがより好ましい。
本発明の平版印刷方法に用いられる本発明の平版印刷版原版においては、画像記録層における傷等の発生防止、酸素遮断、高照度レーザー露光時のアブレーション防止のため、必要に応じて、画像記録層の上に保護層を設けることができる。
本発明においては、通常、露光を大気中で行うが、保護層は、画像記録層中で露光により生じる画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素、塩基性物質等の低分子化合物の画像記録層への混入を防止し、大気中での露光による画像形成反応の阻害を防止する。したがって、保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性が低いことであり、更に、露光に用いられる光の透過性が良好で、画像記録層との密着性に優れ、かつ、露光後の機上現像処理工程で容易に除去することができるものであるのが好ましい。このような特性を有する保護層については、以前より種々検討がなされており、例えば、米国特許第3、458、311号明細書および特開昭55−49729号公報に詳細に記載されている。
ポリビニルアルコールの具体例としては、71〜100%加水分解された重合度300〜2400の範囲のものが好適に挙げられる。具体的には、例えば、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8が挙げられる。
保護層の膜厚は、0.1〜5μmが適当であり、特に0.2〜2μmが好適である。
更に、保護層には、他の機能を付与することもできる。例えば、露光に用いられる赤外線の透過性に優れ、かつ、それ以外の波長の光を効率よく吸収しうる、着色剤(例えば、水溶性染料)の添加により、感度低下を引き起こすことなく、セーフライト適性を向上させることができる。
次に、前記本発明の平版印刷版原版を用いる、本発明の平版印刷方法について説明する。
本発明の方法では、前記した如き平版印刷版原版を、赤外線レーザーで画像様に露光する工程と、露光後の平版印刷版原版になんらの現像処理を施すことなく、油性インキと水性成分とを供給して、印刷する印刷工程とを有し、該印刷工程の途上において平版印刷版原版の赤外線レーザー未露光部分が除去されることを特徴とする。以下、工程順に説明する。
本発明の平版印刷方法においては、上述した本発明の平版印刷版原版を、赤外線レーザーで画像様に露光する。
本発明に用いられる赤外線レーザーは、特に限定されないが、波長760〜1200nmの赤外線を放射する固体レーザーおよび半導体レーザーが好適に挙げられる。赤外線レーザーの出力は、100mW以上であるのが好ましい。また、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザーデバイスを用いるのが好ましい。
1画素あたりの露光時間は、20μ秒以内であるのが好ましい。また、照射エネルギー量は、10〜300mJ/cm2であるのが好ましい。
本発明の平版印刷方法においては、上述したように、本発明の平版印刷版原版を赤外線レーザーで画像様に露光した後、なんらの現像処理工程を経ることなく油性インキと水性成分とを供給して印刷する。
具体的には、平版印刷版原版を赤外線レーザーで露光した後、現像処理工程を経ることなく印刷機に装着して印刷する方法、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上において赤外線レーザーで露光し、現像処理工程を経ることなく印刷する方法等が挙げられる。
その結果、水性成分は露出した親水性の表面に付着し、油性インキは露光領域の画像記録層に着肉し、印刷が開始される。ここで、最初に版面に供給されるのは、水性成分でもよく、油性インキでもよいが、水性成分が未露光部の画像記録層により汚染されることを防止する点で、最初に油性インキを供給するのが好ましい。水性成分および油性インキとしては、通常の平版印刷用の湿し水と印刷インキが用いられる。
このようにして、平版印刷版原版はオフセット印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。
1.平版印刷版原版の作成
(1)支持体の作成
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm3)を用いアルミ表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。この板を45℃の25%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに60℃で20%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2であった。
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温は50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
この支持体基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
下塗り液(1)
・下塗り化合物(1)(分子量Mw:30,000) 0.017g
・メタノール 9.00g
・水 1.00g
(2)画像記録層の形成
上記支持体上に、下記組成の画像記録層塗布液(1)をバー塗布した後、100℃で60秒間オーブン乾燥し、乾燥塗布量1.4g/m2の画像記録層を形成した。さらにその上に下記組成の保護層塗布液(1)をバー塗布した後、125℃で75秒間オーブン乾燥し、乾燥塗布量0.15g/m2の保護層を形成して平版印刷版原版(1)を得た。
なお、画像記録層塗布液(1)は下記感光液(1)とミクロゲル液(1)を塗布直前に混合し、攪拌することにより得た。
・バインダーポリマー(1)〔(D)成分〕 0.147g
(分子量Mw:80,000)
・重合開始剤(1)〔(B)成分〕 0.141g
・重合開始剤(2)〔(B)成分〕 0.240g
・赤外吸収剤(1)〔(A)成分〕 0.026g
・ボレート化合物(1)〔(E)成分〕 0.227g
・重合性モノマー〔(C)成分〕 0.350g
(アロニックスM−215(東亜合成(株)製)
・フッ素系界面活性剤(1) 0.040g
・メチルエチルケトン 0.991g
・1−メトキシ−2−プロパノール 7.816g
・下記の通り合成したミクロゲル分散液(A) 2.397g
・水 2.202g
(ミクロゲル分散液(A)の合成)
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−110N、75質量%酢酸エチル溶液)10.0g、重合性モノマーとしてアロニックスM−215(東亜合成(株)製)6.00g、パイオニンA−41C(竹本油脂(株)製)0.12gを酢酸エチル16.67gに溶解した。水相成分としてPVA−205の4質量%水溶液37.5gを調製した。油相成分および水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、40℃で2時間攪拌した。このようにして得られたミクロゲル液の固形分濃度を、15質量%になるように蒸留水を用いて希釈し、ミクロゲル分散液(A)を得た。平均粒径は0.23μmであった。
・ポリビニルアルコール(6質量%水溶液) 2.240g
((株)クラレ製PVA105、ケン化度98.5モル%、重合度500)
・酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体 0.007g
(BASF製ルビスコールVA64W、50質量%水溶液)
・ポリビニルピロリドン(和光純薬(株)製30K) 0.005g
・界面活性剤(花王(株)製エマレックス710、1質量%水溶液) 2.150g
・鱗状合成雲母 3.750g
(UNICOO(株)製MEB3L、平均粒径1〜5μmΦ、3.4質量%水分散物)
・蒸留水 10.600g
(露光)
得られた平版印刷版原版(1)を水冷式40W赤外線半導体レーザー搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにて、出力9W、外面ドラム回転数210rpm、解像度2400dpiの条件で画像露光した。露光画像には細線チャートを含むようにした。
(検版性評価)
得られた露光済み原版を現像処理することなく、暗所、25℃、相対湿度50%の雰囲気下で露光から30分間静置した後に検版性を評価した。検版性の評価には、細線チャートの見え易さの目視評価と、KONICA MINOLTA製分光測色計(CM2600d)とオペレーションソフト(CM−S100W)を用いてSCE(正反射光除去)方式による測定値を用いた。SCE方式では、正反射光を除去し、拡散光だけを測定しているので、目視に近い画像評価ができる。また、検版性の数値化にはL*a*b*表色系のL値(明度)を用い、露光部のL値と未露光部のL値の差の絶対値をΔLとして表記した。ΔL値が大きいほど検版性が優れることを意味している。
この得られた露光済み原版を現像処理することなく、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付けた。湿し水(EU−3(富士写真フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール=1/89/10(容量比))とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業社製)とを用い、湿し水とインクを供給した後、毎時6,000枚の印刷速度で印刷を行った。この時、画像記録層の未露光部(非画像部)に、インキが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数により機上現像性を評価した。枚数が少ないほど機上現像性に優れると評価する。
(印刷:耐刷性の評価)
さらに印刷を続け、印刷枚数を増やしていくと徐々に画像記録層が磨耗しインキ受容性が低下するため、印刷用紙におけるインキ濃度が低下した。インキ濃度(反射濃度)が印刷開始時よりも0.1低下したときの印刷枚数を計測し、耐刷性評価の指標とした。枚数が多いほど耐刷性に優れると評価する。
画像記録層塗布液(1)の調製に用いた感光液(1)におけるボレート化合物(1)に代えて下記ボレート化合物(2)を用いた他は、実施例1と同様にして平版印刷版原版(2)を作製した。実施例1と同様に、露光および印刷し、平版印刷版原版の性能を評価した。
画像記録層塗布液(1)の調製に用いた感光液(1)における重合開始剤(2)に代えて下記重合開始剤(3)を用いた他は、実施例1と同様にして平版印刷版版(3)を作製した。実施例1と同様に、露光および印刷し、平版印刷版原版の性能を評価した。
画像記録層塗布液(1)の調製に用いた感光液(1)におけるボレート化合物(1)に代えて下記ボレート化合物(3)を用いた他は、実施例1と同様にして平版印刷版原版(4)を作製した。実施例1と同様に、露光および印刷し、平版印刷版原版の性能を評価した。
画像記録層塗布液(1)の調製に用いた感光液(1)におけるボレート化合物(1)に代えてボレート化合物(4):Ph4B- Na+を用いた他は、実施例1と同様にして平版印刷版原版(5)を作製した。実施例1と同様に、露光および印刷し、平版印刷版原版の性能を評価した。
画像記録層塗布液(1)の調製に用いた感光液(1)にボレート化合物(1)を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして比較用平版印刷版原版(R1)を作製した。実施例1と同様に、露光および印刷し、平版印刷版原版の性能を評価した。
画像記録層塗布液(1)の調製に用いた感光液(1)に重合開始剤(2)を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして比較用平版印刷版原版(R2)を作製した。実施例1と同様に、露光および印刷し、平版印刷版原版の性能を評価した。
これらの結果を下記表1に示す。
Claims (6)
- 支持体上に、(A)赤外線吸収剤と、(B)重合開始剤と、(C)重合性化合物と、(D)バインダーポリマーと、(E)ボレート化合物とを含有し、赤外線の照射により記録可能な画像記録層を有する平版印刷版原版を、赤外線レーザーで画像様に露光する工程と、露光後の平版印刷版原版になんらの現像処理を施すことなく、油性インキと水性成分とを供給して、印刷する印刷工程とを有し、該印刷工程の途上において平版印刷版原版の赤外線レーザー未露光部分が除去されることを特徴とする平版印刷方法。
- 前記(E)ボレート化合物が、テトラアリールボレート構造を有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の平版印刷方法。
- 前記画像記録層が、さらに(F)マイクロカプセルまたはミクロゲルを含有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の平版印刷方法。
- 支持体上に、(A)赤外線吸収剤と、(B)重合開始剤と、(C)重合性化合物と、(D)バインダーポリマーと、(E)ボレート化合物とを有する化合物を含有し、印刷インキおよび/または湿し水により除去可能な画像記録層を有する平版印刷版原版。
- 前記(E)のボレート化合物が、テトラアリールボレート構造を有する化合物であることを特徴とする請求項4に記載の平版印刷版原版。
- 前記画像記録層に、さらに(F)マイクロカプセルまたはミクロゲルを含有することを特徴とする請求項4又は請求項5記載の平版印刷版原版。
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