JP3981520B2 - 有機化合物の分離方法 - Google Patents

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Description

【発明の属する技術分野】
本発明は、有機溶媒に対する溶解度の差が小さい二種以上の有機化合物の混合物から目的とする有機化合物を高純度且つ高収率で分離する分離方法に関する。
【従来の技術】
従来、二種以上の有機化合物を含む混合物から特定の有機化合物を分離する方法として、有機化合物の混合物を有機溶媒に溶解し、冷却することにより、目的とする有機化合物を析出させる方法が一般的であった。
しかしながら、この方法では、二種以上の有機化合物の有機溶媒に対する溶解度の差が小さい場合、目的とする有機化合物以外の有機化合物が目的とする有機化合物と共に析出し、目的とする有機化合物を高純度で得られないという問題があった。
これを再度、有機溶媒に溶解させた後、冷却して再結晶化することにより、目的とする有機化合物の純度を向上させる方法も知られている。しかし、このような再結晶を繰り返し行うと、目的とする有機化合物の純度は向上するが、回収率が低下するという問題が生じた。
近年、アルキルアダマンチル(メタ)アクリレートのポリマーは、半導体製造プロセスにおけるドライエッチング耐性が高いことが報告され(例えば、特開平5−265212号公報)、半導体用レジスト材料としての可能性が注目されている。これらアルキルアダマンチル(メタ)アクリレートにおいても半導体用レジスト材料として使用する場合には高純度のものが要求される。
該アルキルアダマンチル(メタ)アクリレートは、一般にアダマンタンからアダマンタノンを経てアルキルアダマンタノールを得、これと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸の無水物、又は(メタ)アクリル酸ハロゲン化物との反応により製造できることが知られている。
しかし、目的化合物であるアルキルアダマンチル(メタ)アクリレートおよび未反応原料や反応副生成物として混入しているアダマンタン、アダマンタノン、アルキルアダマンタノール等は、有機溶媒に対する溶解度が極めて大きく、且つ溶解度の差が小さいため目的化合物を再結晶により効率よく分離することが困難であった。
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来技術の欠点を補う新しい技術の開発が望まれてきた。即ち、簡単な操作で、目的とする有機化合物を高純度及び高回収率で分離する方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、有機溶媒に対する溶解度は大きいが水に対する溶解度が小さく、且つ目的とする有機化合物と他の有機化合物との間で有機溶媒に対する溶解度の差が小さい二種以上の有機化合物の混合物について、水と有機溶媒との混合溶媒を用いて再結晶化することにより、目的とする有機化合物を効率よく分離できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記一般式
【化2】
Figure 0003981520
(式中、R は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、R は水素原子又はメチル基である。)
で示されるアルキルアダマンチル(メタ)アクリレートと、アダマンタン、アダマンタノン、およびアルキルアダマンタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種と、の混合物から前記一般式で示されるアルキルアダマンチル(メタ)アクリレートを分離する方法であって、水と、アルコール類、ケトン類、及ニトリル類からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶媒との混合溶媒に前記混合物を溶解させた後、該混合溶媒を冷却することによって前記一般式で示されるアルキルアダマンチル(メタ)アクリレートを析出させることを特徴とする分離方法である。
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明では、前記一般式で示されるアルキルアダマンチル(メタ)アクリレートと、アダマンタン、アダマンタノン、およびアルキルアダマンタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種(以下、その他の有機化合物ともいう)と、の混合物から前記一般式で示されるアルキルアダマンチル(メタ)アクリレートを分離する。
一般式において、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、Rは水素原子又はメチル基である。Rで示されるアルキル基を具体的に例示すれば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等の直鎖アルキル基;及びイソプロピル基、第3級ブチル基、ネオペンチル基等の分岐アルキル基を挙げることができる。特に半導体用レジストの原料として有用であり、特に高純度化が重要であるという観点から、前記一般式で示されるものの中でもRがメチル基、エチル基、またはブチル基であり、Rが水素またはメチル基であるものが好適である。
前記一般式で示されるアルキルアダマンチル(メタ)アクリレートは、通常、製造方法に由来して未反応原料や反応副生物が不可避的に混入した混合物として得られる。原料や反応副生物としては、アダマンタン、アダマンタノン、アルキルアダマンタノール等を挙げることができる。このような原料や反応副生物は、本発明における分離の対象物である。
本発明において、有機溶媒の混合物中、目的とする有機化合物である前記一般式で示されるアルキルアダマンチル(メタ)アクリレートとその他の有機化合物との混合割合は特に制限されないが、目的とする有機化合物が80重量%以上でその他の有機化合物が20重量%以下である混合物から目的物を分離する場合には、目的物を高純度で、例えば、99重量%以上で分離できるために好適である。
本発明においては、アルコール類、ケトン類、及びニトリル類からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶媒と水との混合溶媒に前記混合物を溶解させた後、該混合溶媒を冷却することによって前記一般式で示されるアルキルアダマンチル(メタ)アクリレートを析出させる。このとき使用される混合溶媒は、有機溶媒と水とが任意の混合割合で相溶していることが好ましいが、一部相溶せずに二層に分離していてもよい。
上記混合溶媒に有機溶媒として使用されるアルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の炭素数1〜4のアルコール類を挙げることができ、ケトン類としてはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等を挙げることができ、ニトリル類としてはアセトニトリル等を挙げることができる。これらの有機溶媒は単独或いは2種以上混合して用いることができる。
混合溶媒中の水の濃度は、目的とする有機化合物を高純度且つ高収率で得るためには10〜50重量%の範囲であることが望ましい。
水と有機溶媒との混合溶媒中の前記一般式で示されるアルキルアダマンチル(メタ)アクリレートとその他の有機化合物との混合物の濃度は10〜70重量%の範囲で溶解させるのが好ましい。上記混合物が混合溶媒中に全量溶解しない場合は、加温することによって全量溶解することができる。加温する場合の温度は、20〜60℃、好ましくは30〜50℃の範囲であることが望ましい。
上記の温度範囲まで加温後、冷却することにより目的物の結晶が析出し、成長する。冷却速度は結晶核を成長させる理由から徐冷が好ましく、通常、0.2〜0.5℃/分で冷却することが好ましい。
冷却による到達温度は−5〜10℃の範囲であれば十分である。一般には20〜300分かけて上記到達温度まで冷却することが好ましい。冷却到達温度では、通常、30分〜10時間程度保持し、目的とする有機化合物の結晶核を十分に成長させることが好ましい。又、冷却到達温度で結晶化しない場合は、目的とする有機化合物の高純度物、例えば99重量%程度の純度のものを混合溶媒100重量部に対して0.01〜0.1重量部の範囲で種晶として加え、冷却到達温度で30分〜10時間程度保持することが望ましい。目的とする有機化合物の結晶核を十分に成長させた後、濾過等の方法で分離することができる。
【発明の効果】
本発明によれば、前記一般式で示されるアルキルアダマンチル(メタ)アクリレートとその他有機化合物との混合物から前記一般式で示されるアルキルアダマンチル(メタ)アクリレートを高純度且つ高回収率で分離することができる。
【実施例】
以下、本発明を具体的に説明するため代表的な実施例を示すが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
尚、濾過及び純度分析は下記の方法によって実施した。
(1)濾過:下記の加圧濾過器を用いて窒素(0.1MPa)で加圧して濾過した。
加圧濾過器:タンク付きステンレスホルダーKST-90(ADVANTEC製)
フィルター:定量濾紙No.5C(ADVANTEC製)
(2)純度分析:ガスクロマトグラフGC-14A(島津製作所製)を用いて測定した。
カラム:DB-1 30m、I.D(mm)0.53、Film(μm)1.5(J&W Scientific製)
分析条件:カラム温度 100℃→200℃ 10℃/min
Injection温度 200℃、Detector温度 200℃
試料調製:試料0.1g/ノルマルヘプタン10ml 注入量1μl。
また、以下の実施例では、前記一般式で示されるアルキルアダマンチル(メタ)アクリレートとその他の有機化合物との混合物として、次の表1に示した混合物を用いた。これら混合物はアルキルアダマンチルエステルとその製造工程で生成する未反応原料や副生成物(不純物)である。
参考例
表1に示したNo.1〜6の有機化合物の溶解度を測定した。測定方法は50mlガラス管瓶に過剰量の有機化合物を入れた後、適当量の有機溶媒を加え、撹拌しながら一定温度下で3時間放置した。その後、1時間静置させて上澄み液をディスポシリンジで5g程度採取し、ナスフラスコへ入れて重量を測定する。エバポレーター及び真空ポンプで重量変化がなくなるまで溶媒を留去した後、重量を測定し、溶媒留去前後の重量から濃度を計算して溶解度を求めた。なお、No.1〜6の有機化合物の水に対する溶解度は0重量%であった。
結果を表1に示した。
実施例1
表2に示したNo.1〜8の8種類の混合物について、水と有機溶媒との混合溶媒中に溶解または分散して存在する混合物の濃度が20重量%になるように、表3に示した各種の混合溶媒にそれぞれ分散させた。これを35℃に加温した後、0.2℃/分の速度で0℃まで徐冷し、0℃で2時間保持した。
析出した結晶は加圧濾過器で濾過し、濾過物は30℃で10時間減圧乾燥した後、重量測定及びガスクロマトグラフで純度分析を行った。結果を表3(No.1〜8)に示した。
実施例2
表2に示したNo.1〜8の8種類の混合物について、水の濃度を30重量%に調整した混合溶媒中に溶解または分散して存在する混合物の濃度を表4に示したように変えたこと以外は、実施例1と同様に行った。
析出した結晶は加圧濾過器で濾過し、濾過物は30℃で10時間減圧乾燥した後、重量測定及びガスクロマトグラフで純度分析を行った。結果を表4(No.9〜16)に示した。
比較例1
表2のNo.1及び5の混合物を水を含まない有機溶媒中に溶解または分散し、濃度を表4に示したように変えたこと以外は、実施例2と同様に行った。その結果を表4(No.17〜18)に併せて示した。
【表1】
Figure 0003981520
【表2】
Figure 0003981520
【表3】
Figure 0003981520
【表4】
Figure 0003981520
【表5】
Figure 0003981520
【表6】
Figure 0003981520
【表7】
Figure 0003981520
【表8】
Figure 0003981520
【表9】
Figure 0003981520
【表10】
Figure 0003981520
【表11】
Figure 0003981520

Claims (1)

  1. 下記一般式
    Figure 0003981520
    (式中、R は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、R は水素原子又はメチル基である。)
    で示されるアルキルアダマンチル(メタ)アクリレートと、アダマンタン、アダマンタノン、およびアルキルアダマンタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種と、の混合物から前記一般式で示されるアルキルアダマンチル(メタ)アクリレートを分離する方法であって、アルコール類、ケトン類、及びニトリル類からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶媒と水との混合溶媒に前記混合物を溶解させた後、該混合溶媒を冷却することによって前記一般式で示されるアルキルアダマンチル(メタ)アクリレートを析出させることを特徴とする分離方法
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