JP3862981B2 - 2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート結晶粉末 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体レジストの原料として有用である2−エチル−2−アダマンチルメタクリレートの結晶粉末に関する。
【0002】
【従来の技術】
2−エチル−2−アダマンチルメタクリレートは半導体レジストの原料として有用であることが知られている。例えば、特開平9−73173号公報、特開平10−161313号公報、特開平10−301285号公報等の特許公報、あるいは、1998年「Japanese Journal of Applied Physics, Part1」の37巻10号5781ページ、1999年「Proceedings of SPIE− The International Society for Optical Engineering」の3678巻,「Part1 Advances in Resist Technology and Processing XVI」の510ページ等の文献に示されている。また、その合成方法として、特開平10−182552号公報、特開2000−229911号公報、特開2000−309558号公報、特開2001−97893号公報および特開2001−97924号公報が知られている。
【0003】
ところが、特開平10−182552号公報および特開2000−229911号公報では、2−エチル−2−アダマンチルメタクリレートは単離されておらず、特開2000−309558号公報では、「微黄色の透明液体として」得られているに過ぎない。この物質が室温で固体であるとの記載は、本発明者らの発明である特開2001−97893号公報および特開2001−97924号公報で始めて現われているが、これらの固体または結晶は液体状態からそのまま固まっているために、容器から取り出すためには、物理的に砕く、温めて結晶を溶かす等の操作が必要であった。
【0004】
これらの取り出し操作は、外部からの汚染の危険性、あるいは、容器中での重合の危険性を伴うため、特に半導体レジストの原料として用いる場合には推奨される操作ではない。本発明者らはこれらの問題が解決された、粉末としての単離方法について種々の検討を行なってきた。その結果、晶析によって嵩密度の高い結晶粉末として単離することができることを見出したが、晶析の方法によってはろ過性の悪い面間隔の異なる微結晶が得られ、ろ過に長時間を要するといった問題が見出された。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
以上の背景にあって本発明は、上記のように単離操作上の問題点を解決し、ろ過性の悪い微結晶を実質的に含まない、操作性に優れた2−エチル−2−アダマンチルメタクリレートの結晶粉末を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、晶析溶媒を選び、より好ましくは晶析の際に特定の冷却速度とすることによって、単離や取り扱い時の操作性に優れた特有の嵩密度を有する2−エチル−2−アダマンチルメタクリレートの結晶粉末が得られことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、X線回折にて測定した面間隔(オングストローム単位)が、7.37〜7.42付近、6.67〜6.72付近、6.23〜6.29付近、5.46〜5.50付近、4.95〜4.98付近、4.75〜4.79付近、および4.52〜4.56付近にあり、嵩密度が0.4〜0.7g/cm3である2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート結晶粉末である。
【0008】
また、本発明によれば、かかる2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート結晶粉末において、X線回折にて測定した面間隔(オングストローム単位)が、7.14〜7.21付近、5.97〜6.02付近、4.87〜4.89付近、および4.38〜4.41付近には何れにもないものものも提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、嵩密度0.4〜0.7g/cm3である操作性に優れた2−エチル−2−アダマンチルメタクリレートの結晶粉末であり、該結晶粉末は、X線回折にて測定した面間隔(オングストローム単位)が7.37〜7.42付近、6.67〜6.72付近、6.23〜6.29付近、5.46〜5.50付近、4.95〜4.98付近、4.75〜4.79付近、および4.52〜4.56付近である。嵩密度は、0.4〜0.6g/cm3であるのが、ろ過性、取り扱い性に特に優れるためより好適である。
【0010】
なお、ろ過性の悪い結晶は、X線回折にて測定した面間隔(オングストローム単位)が、7.14〜7.21付近、5.97〜6.02付近、4.87〜4.89付近、4.38〜4.41付近にもあり、本発明の結晶粉末は、こうした面間隔を有する結晶は実質的に含んでおらず、該面間隔は何れも有していないのが好ましい。
【0011】
本発明の結晶粉末は、上記の特徴を有する限り、いかなる製造方法で製造されたものでもかまわないが、一般的には下記の晶析方法よって得られる。
【0012】
すなわち、炭素数3以下のアルコール、アセトニトリル、またはこれらの混合溶媒を用いた2−エチル−2−アダマンチルメタクリレートの溶液を、3〜1℃/時間の速度で冷却して、該2−エチル−2−アダマンチルメタクリレートを晶析させる方法である。かかる方法によれば、前記性状を有する操作性に優れる2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート結晶粉末を効率的に得ることができる。
【0013】
ここで、炭素数3以下のアルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。また、これらの溶媒は、2−エチル−2−アダマンチルメタクリレートの貧溶媒である水との混合溶媒とすることも可能である。これらアルコールやアセトニトリル以外の溶媒を用いた場合、本発明の結晶粉末は得難くなる。
【0014】
他方、冷却速度が、上記速度より速くても、本発明の結晶粉末を得ることは困難になり、前記ろ過性の悪い結晶が析出するようになる。該冷却速度が、上記速度より遅い場合、本発明の結晶粉末の効率的な製造が困難になる。
【0015】
具体的な晶析方法は、公知の方法を際限なく用いることができるが、一般的には溶媒に溶解するまで加熱し、その後、結晶が析出するまで冷却する。この時の温度は、用いる溶媒やその量、含まれている不純物の量などによって異なるので一概には規定できないが、溶解させる時の温度は20〜100℃の間で、用いる溶媒に2−エチル−2−アダマンチルメタクリレートが飽和になる温度より高い温度、望ましくは10℃以上高い温度で完全に溶解させることが好ましい。
【0016】
晶析時の濃度は、用いる溶媒または混合溶媒に対する2−エチル−2−アダマンチルメタクリレートの溶解度を勘案して決定すれば良いが、冷却時に良好なスラリーが得られる濃度とすることが良い。具体的には、2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート1重量部に対して、溶媒0.1〜100重量部が好ましく、0.3〜10重量部がより好ましい。
【0017】
なお、冷却の途中で、少量の種結晶を添加するのはより好ましい態様である。
【0018】
また、本発明の結晶粉末を得る別の晶析方法としては、初めに、前記炭素数3以下のアルコール、アセトニトリル、またはこれらの混合溶媒を用いた2−エチル−2−アダマンチルメタクリレートの溶液を、冷却速度に関係なく冷却して一旦結晶を析出させ(種結晶を用いても良い)、次いで、用いる溶媒に2−エチル−2−アダマンチルメタクリレートが飽和になる温度付近まで加熱して熟成、再溶解させ、再び冷却速度に関係なく冷却する方法も好ましい。この熟成、再溶解の際には結晶が全て溶解していても良いし、一部結晶が残っていても良い。
【0019】
また、熟成、再溶解の時間は用いる溶媒や晶析すべき2−エチル−2−アダマンチルメタクリレートの量にもよるが、0.5〜3時間程度が好適である。
【0020】
所定の温度まで冷却した後、0.5〜24時間の熟成時間を取ることが好ましい。
【0021】
晶析後に結晶を取り出す方法は、公知の方法が際限なく用いられるが、一般的には加圧ろ過、遠心ろ過等のろ過によって取り出すことができる。この際、晶析後のスラリーを冷却しながらろ過を行なうことが2−エチル−2−アダマンチルメタクリレートが再溶解することを防ぐ観点から好ましい。また、ろ過中やろ過終了後には、結晶が融解しないよう30℃以下に保つことが望ましい。
【0022】
取り出した後の乾燥は、公知の方法が際限なく用いられるが、用いた溶媒にもよるが、棚式通風乾燥機、減圧コニカルドライヤー等を用いて乾燥できる。この際、2−エチル−2−アダマンチルメタクリレートの結晶が融解しないよう、30℃以下の温度で乾燥する必要がある。
【0023】
上記晶析方法による本発明の2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート結晶粉末の製造は、前記嵩密度の要件を満足していない該化合物に対して制限なく適用可能である。通常は、2−エチル−2−アダマンチルメタクリレートを合成した後の単離、精製操作の一環として実施するのが好ましい。
【0024】
2−エチル−2−アダマンチルメタクリレートの合成方法としては、前記特開平10−182552号公報等に記載されている方法が制限なく適用できる。好ましくは、特願2000−143036号および特願2001−172087号に記載される、2−アダマンタノンと臭化リチウムを溶媒に溶解または懸濁させ、この溶液と金属リチウムとを反応させる事によって2−エチル−2−アダマンチルアルコキシリチウムを得、この反応溶液を、メタクリル酸誘導体、即ちメタクリル酸ハライドやメタクリル酸無水物、メタクリル酸ビニルやメタクリル酸イソプロペニル等のエノールエステル、メタクリル酸の活性エステル等の溶液へ滴下して反応させる方法が採用される。
【0025】
上記反応により得られた反応液は、水洗した後、溶媒を除去し、必要に応じて活性炭処理、蒸留、カラムクロマトグラフィーによって精製し、得られた粗体に対して前記晶析方法を実施すれば良い。
【0026】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0027】
合成例
攪拌翼、温度計、冷却管、滴下漏斗を取りつけた500mlの4つ口フラスコに、窒素雰囲気下、テトラヒドロフラン30g、金属リチウム2.78g(0.4mol)を加えた。この溶液に、予め2−アダマンタノン30g(0.2mol)、臭化エチル26.2g(0.24mol)をテトラヒドロフラン90gに溶解させた溶液を、窒素雰囲気下、反応温度が40℃前後になるようにコントロールしながら滴下した。滴下終了後45℃に加温し、1時間反応熟成を行った。目視で金属リチウムが消失したのを確認してから、臭化エチル4.36g(0.04mol)を加え、さらに45℃で1時間撹拌し、リチウム2−エチル−2−アダマンチルアルコラートの溶液を調製した。この時の2−アダマンタノンの転化率は98%であった。
【0028】
撹拌翼、温度計、冷却管を取りつけた500molの4つ口フラスコを窒素置換し、これにメタクリル酸クロライド22.0g(0.21mol)と、重合禁止剤としてフェノチアジン0.08g(0.4mmol)を加え、前段で調製したリチウム2−エチル−2−アダマンチルアルコラートの溶液を窒素雰囲気下、反応温度が10℃以下となるように2時間かけて滴下した。滴下終了後10℃以下で4時間撹拌し反応を熟成した。
【0029】
反応熟成後、メタノール10gと10質量%水酸化ナトリウム水溶液16gを10℃以下で加えて1時間撹拌し、有機層を分離した。有機層をさらに10質量%水酸化ナトリウムで洗浄した後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣にメタノール150gを加えて撹拌し、不溶分をろ過して取り除いた。得られたろ液を減圧留去して溶媒を除去した後、残渣をヘプタン150gに溶解させ、これに活性炭10gを入れて撹拌し、セライトろ過して活性炭を取り除き、ヘプタンを減圧留去して2−エチル−2−アダマンチルメタクリレートの粗体45gを得た。
実施例1
2−エチル−2−アダマンチルメタクリレートの粗体10gをメタノール9gとイソプロパノール1gの混合溶媒に溶解し、攪拌しながら40℃まで加熱した。溶液は淡黄色澄明であった。これを攪拌しながら10℃まで冷却したところ、結晶が析出し、温度が12℃まで上昇した。冷却をやめ、20℃まで加熱してその温度で1時間、熟成した。その時溶液は一部結晶が残って白濁していた。続いて溶液を攪拌しながら0℃まで冷却し、その温度で1時間熟成した。熟成後、減圧濾過にて素早く結晶をろ過し(ろ過時間は実質3秒ほどであった)、室温で減圧乾燥をして6.8gの2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート結晶粉末を得た。
【0030】
この結晶粉末の純度は、ガスクロマトグラフィーで98.8%であった。また、嵩密度は0.56g/cm3であり、この結晶粉末はX線回折で図1に示す通り、面間隔が、7.40、6.70、6.25、5.49、4.97、4.77、および4.55オングストロームであった。
実施例2
2−エチル−2−アダマンチルメタクリレートの粗体10gをイソプロパノール5gに溶解し、攪拌しながら40℃まで加熱した。溶液は淡黄色澄明であった。これを攪拌しながら8℃まで冷却したところ、結晶が析出し、温度が9℃まで上昇した。冷却をやめ、18℃まで加熱してその温度で1時間、熟成した。その時溶液は淡黄色澄明で結晶は全て溶解していた。続いて溶液を攪拌しながら0℃まで冷却し、その温度で1時間熟成した。熟成後、減圧濾過にて素早く結晶をろ過し(ろ過時間は実質3秒ほどであった)、室温で減圧乾燥をして5.1gの2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート結晶粉末を得た。
【0031】
この結晶粉末の純度は、ガスクロマトグラフィーで99.3%であった。また、嵩密度は0.52g/cm3であり、この結晶粉末はX線回折で図2に示す通り、面間隔が7.38、6.68、6.26、5.47、4.97、4.77、および4.54オングストロームであった。
実施例3
2−エチル−2−アダマンチルメタクリレートの粗体10gをイソプロパノール5gに溶解し、攪拌しながら40℃まで加熱した。溶液は淡黄色澄明であった。これを攪拌しながら30℃まで冷却し、その後、1分間に2℃の割合で徐々に冷却していった。20℃に達したところで冷却を止めて種結晶として実施例1で得られた結晶をほんの少量(0.1mg以下)加えた。この種結晶は全て溶解した。再び1分間に2℃の割合で徐々に冷却していったところ、9℃で結晶が析出し、温度が10℃まで上昇した。そのまま1分間に2℃の割合で徐々に冷却して0℃まで冷却し、0℃で1時間熟成した。熟成後、減圧濾過にて素早く結晶をろ過し(ろ過時間は実質3秒ほどであった)、室温で減圧乾燥をして5.1gの2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート結晶粉末を得た。
【0032】
この結晶粉末の純度は、ガスクロマトグラフィーで99.0%であった。また、嵩密度は0.60g/cm3であり、この結晶粉末はX線回折で、面間隔が7.38、6.69、6.26、5.47、4.96、4.77、および4.54オングストロームであった。
比較例1
上記合成例に従って、2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート粗体45gを得た。この粗体に対し、4.5gのジエチレングリコールと4.5gのテトラエチレングリコールを加え、減圧下蒸留を行った。その結果、蒸留装置内に固体が析出することなく蒸留は進行した。留出液をヘキサンに溶解し、純水で洗浄し、ヘキサンを留去することにより2−エチル−2−アダマンチルメタクリレートを28g(純度96.3%)液体状態で得ることができた。この2−エチル−2−アダマンチルメタクリレートを室温で放置するとフラスコ中で固化した。
【0033】
この固体を砕いて取り出し、密度を測定すると、1.1g/cm3であった。比較例2
冷却速度を制御せず、40℃から約3分間で0℃まで冷却したこと以外は実施例2と同様の操作をしたところ、結晶のろ過の段階でろ過時間が約5分かかった。室温で減圧乾燥して4.4gの2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート結晶粉末を得た。
【0034】
この結晶粉末の純度は、ガスクロマトグラフィーで99.1%であった。この結晶粉末はX線回折から、図3に示す通り、面間隔が7.33、6.74、6.28、5.50、4.98、4.77、および4.55オングストロームの他に、7.17、5.99、4.88、および4.39オングストロームにもあることが判明した。また、嵩密度は0.38g/cm3であった。
比較例3
晶析溶媒を実施例1で用いたメタノール9gとイソプロパノール1gの混合溶媒に、さらにヘプタンを0.5g加えた他は、実施例1と同様の操作を行なった。
結晶粉末のろ過時間は約3分であり、乾燥後の収量は5.8gで、この結晶粉末の嵩密度は0.26g/cm3であった。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、破砕操作をしなくても容器から取り出せるため汚染の危険性等がなく、晶析時のろ過性にも優れ、半導体レジストの原料等として利用する際の取り扱いも容易な、操作性の良い2−エチル−2−アダマンチルメタクリレートの結晶粉末が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、実施例1で得られた本発明の2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート結晶粉末のX線回折像である。
【図2】 図2は、実施例2で得られた本発明の2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート結晶粉末のX線回折像である。
【図3】 図3は、比較例2で得られた2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート結晶粉末のX線回折像である。
Claims (2)
- X線回折にて測定した面間隔(オングストローム単位)が、7.37〜7.42付近、6.67〜6.72付近、6.23〜6.29付近、5.46〜5.50付近、4.95〜4.98付近、4.75〜4.79付近、および4.52〜4.56付近にあり、嵩密度が0.4〜0.7g/cm3である2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート結晶粉末。
- X線回折にて測定した面間隔(オングストローム単位)が、7.14〜7.21付近、5.97〜6.02付近、4.87〜4.89付近、および4.38〜4.41付近には何れにもない請求項1記載の2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート結晶粉末。
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