JP3913329B2 - (±)−クロマンカルボン酸の光学分割法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、(±)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸の光学分割法に関する。本発明により製造される光学活性な6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸は、光学活性なビタミンE誘導体の合成中間体として有用である[例えば、Helvetica Chimica Acta、64巻、1158ペ−ジ(1981年)参照]。
【0002】
【従来の技術】
従来、光学活性な6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸の合成方法としては、▲1▼(±)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸エステルを酵素を用いて不斉加水分解する方法(米国特許第5348973号明細書参照)、▲2▼光学活性なアシルプロリン誘導体をハロラクトン化する方法[Chemistry Letters、465ページ(1989年参照]、▲3▼有機チタン化合物と光学活性なピルビン酸エステルを反応させる方法(特開昭61−60628号公報参照)が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記▲1▼の方法は、不斉加水分解後の目的物の単離・精製操作および酵素の分離除去操作が煩雑であるという問題点を有しており、また、上記▲2▼および▲3▼の方法では、使用する出発物質を容易に入手もしくは合成することが困難である。したがって、いずれの方法も、光学活性な6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸の工業的に有利な製造方法とは言い難い。一方、(±)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸を光学分割する方法として、光学活性なα−フェニルエチルアミンを使用する例が知られている(特公昭60−26975号公報参照)。しかしながら、後述の比較例から明らかなように、光学活性なα−フェニルエチルアミンを使用した場合の分割効率は低く、さらに再結晶が複数回必要となるという問題点を有している。
しかして、本発明の目的は、(±)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸を効率よく分割し、光学活性な6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸を得る方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、(±)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸(以下、単に(±)−クロマンカルボン酸という)に、光学活性なN−ベンジル−α−フェニルエチルアミンを作用させることを特徴とする(±)−クロマンカルボン酸の光学分割法を提供することによって達成される。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の光学分割法においては、分割剤として光学活性なN−ベンジル−α−フェニルエチルアミンが使用される。光学活性なN−ベンジル−α−フェニルエチルアミンの使用量は、特に限定されないが、(±)−クロマンカルボン酸に対して0.5〜1.0当量の範囲で使用するのが、効率よく、かつ高純度で分割するために好ましい。
【0006】
本発明の反応は、一般に溶媒の存在下で行われる。使用される溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール;ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル、第3級ブチルメチルエーテルなどのエーテル;酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素などが挙げられる。これらは必要に応じて2種以上の混合物として用いることもできる。中でも、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、第3級ブチルメチルエーテル、またはこれらの混合溶媒が、高純度の光学活性な6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸を得ることができるので好ましい。
【0007】
溶媒の使用量は、溶媒の種類、溶解度、晶析温度などによっても異なるが、通常、(±)−クロマンカルボン酸に対して1〜100重量倍、好ましくは2〜50重量倍の範囲で用いられる。
【0008】
本発明は、例えば次のような方法で実施される。(±)−クロマンカルボン酸、光学活性なN−ベンジル−α−フェニルエチルアミンおよび溶媒を混合し、加熱溶解したのち冷却してジアステレオマー塩を過飽和となし、好ましくは(+)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸・(−)−N−ベンジル−α−フェニルエチルアミン塩または(−)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸・(+)−N−ベンジル−α−フェニルエチルアミン塩を少量接種して、同種の難溶性のジアステレオマー塩を析出させ、これを分離する。ジアステレオマー塩の分離方法としては、濾過、遠心分離などの方法が用いられる。
【0009】
晶析温度は、溶媒の使用量、溶媒の種類、溶解温度などによって適宜選択することができるが、経済的見地からは−10〜50℃の範囲が好ましい。
【0010】
得られたジアステレオマー塩は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトシキドなどの塩基で処理して(+)−N−ベンジル−α−フェニルエチルアミンまたは(−)−N−ベンジル−α−フェニルエチルアミンを回収し、さらに、塩酸、硫酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸などの酸を作用させて、(+)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸または(−)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸を得る。なお、かかる操作は酸処理、次いで任意的な塩基処理の順に行ってもよい。
【0011】
原料として使用する(±)−クロマンカルボン酸は、例えば特開平7−97380号公報に記載された方法により、容易にかつ安価に合成できる。
【0012】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0013】
実施例1
(±)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸506mg(2.02mmol)を酢酸エチル3.0mLに懸濁させ、その懸濁液に(+)−N−ベンジル−α−フェニルエチルアミン427mg(2.02mmol)の第3級ブチルメチルエーテル4.0mL溶液を加え、加熱溶解させた。室温まで冷却後、(−)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸・(+)−N−ベンジル−α−フェニルエチルアミン塩を少量接種し、室温で一夜放置した。析出した結晶を濾過することにより、476mg(1.03mmol)の(−)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸・(+)−N−ベンジル−α−フェニルエチルアミン塩を得た。この(−)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸・(+)−N−ベンジル−α−フェニルエチルアミン塩のうち320mgに1規定水酸化ナトリウム水溶液を加え、エーテルで抽出を行った。次に、水相に1規定塩酸を加え、析出した結晶を濾過することにより、(−)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸121mg(0.484mmol)を得た。[α]D =−56.7゜(c1.2、エタノール)。仕込み(±)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸中の(−)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸に対する収率は71%であった。また、得られた(−)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸の光学純度は、旋光度分析で87%ee、液体クロマトグラフ分析では88%eeであった。
【0014】
実施例2
(±)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸53.4kg(水9kgを含む、純分換算177mol)、(+)−N−ベンジル−α−フェニルエチルアミン37.5kg(177mol)、エタノール166kg、イソプロパノール26kgを混合し、70℃まで加熱し、溶解させた。次に、70℃で水114kgを加え、50℃まで冷却後、(−)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸・(+)−N−ベンジル−α−フェニルエチルアミン塩を少量接種した。40℃で3時間撹拌した後、徐々に冷却しながら一夜放置した。析出した結晶を濾過することにより、湿重量43.0kg(純分換算63mol)の(−)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸・(+)−N−ベンジル−α−フェニルエチルアミン塩を得た。この(−)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸・(+)−N−ベンジル−α−フェニルエチルアミン塩に1規定水酸化ナトリウム水溶液100kgを加え、第3級ブチルメチルエーテル60Lで2回抽出を行った。水相に濃塩酸11.5kgを加え、酢酸エチル30Lで3回抽出を行った。溶媒を留去し、エタノール36L、水70Lから再結晶を行い、析出した結晶を濾過・乾燥することにより、(−)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸11.9kg(48mol)を得た。仕込み(±)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸中の(−)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸に対する収率は54%であった。また、得られた(−)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸の光学純度は99%eeであった(液体クロマトグラフ分析による)。
【0015】
比較例
(±)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸500mg(2.00mol)、(−)−α−フェニルエチルアミン242mg(2.00mmol)、酢酸エチル10mLを混合し加熱溶解させた。室温まで冷却後、一夜放置した。析出した結晶を濾過することにより、278mg(0.75mol)の(+)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸・(−)−α−フェニルエチルアミン塩を得た。この(+)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸・(−)−α−フェニルエチルアミン塩に1規定水酸化ナトリウム水溶液を加え、エーテルで抽出を行った。次に、水相に1規定塩酸を加え、析出した結晶を濾過することにより、(+)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸を得た。[α]D =+0.33゜(c1.2、エタノール)。得られた(+)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸の光学純度は0.5%eeであった(旋光度分析による)。
【0016】
【発明の効果】
本発明によれば、(±)−クロマンカルボン酸を効率よく光学分割して、光学純度の高い(+)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸または(−)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸を得ることができる。

Claims (1)

  1. (±)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸に、光学活性なN−ベンジル−α−フェニルエチルアミンを作用させることを特徴とする(±)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸の光学分割法。
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