JP3011819B2 - 血液製剤、その製造法および不活化処理のウイルス不活化能の決定法 - Google Patents

血液製剤、その製造法および不活化処理のウイルス不活化能の決定法

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JP3011819B2 JP4160948A JP16094892A JP3011819B2 JP 3011819 B2 JP3011819 B2 JP 3011819B2 JP 4160948 A JP4160948 A JP 4160948A JP 16094892 A JP16094892 A JP 16094892A JP 3011819 B2 JP3011819 B2 JP 3011819B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はウイルス不活化血液製
剤、その製造法ならびに不活化処理のウイルス不活化能
の決定法に関する。
【0002】血液製剤とは、治療、予防または診断的適
用を意図したヒトまたは動物の血液または血漿から得た
製造物を意味する。このような製剤は、酵素、凝固因
子、酵素補因子、酵素阻害剤、免疫グロブリン、アルブ
ミン、プラスミノーゲン、フィブリノーゲン、フィブロ
ネクチンを含むプロ酵素あるいは血漿を含有し得る。
【0003】
【従来の技術とその課題】血液製剤の投与には、供給者
の血漿中に存在するかも知れない感染性物質(例えば肝
炎ウイルスやAIDSウイルスなど)による感染の危険
を伴う。これらの感染性物質が存在しないことを試験し
た血漿だけを使用するとしても、試験法の感度に限界が
あるので、患者が感染するかも知れないという危険性は
排除できない。したがって血液製剤を生産する場合に
は、存在するかも知れない感染性物質の不活化を避ける
ことはできない。
【0004】血液製剤中の病原体の不活化に関する刊行
物は数多く存在する。種々の方法には次のものが含まれ
る: ・水溶液中の血液製剤を、場合によって殺ウイルス剤と
共に、加熱すること。 ・水溶液中の血液製剤を、安定化剤の存在下で加熱する
こと。 ・血液製剤を有機溶媒および/または界面活性剤で処理
すること。 ・血液製剤を乾燥状態および湿状態で加熱すること。 ・有機溶媒/界面活性剤による血液製剤の処理を、血液
製剤を乾燥状態で加熱することと組み合わせること。
【0005】これらの不活化法はすべて、その調製物の
潜在的感染性を除去する一方で、その生物学的活性をで
きる限り維持することを目指している。しかし現在まで
のところこの目的は、アルブミン水溶液を60℃で10
時間加熱することによって、アルブミン調製物の場合に
のみ達成され得る。なぜならアルブミンは他のどの血液
タンパク質よりも熱の影響に関して十分に安定だからで
ある。詳述すると、例えば次の刊行物を先行技術として
引用できる。
【0006】DE-A-2916711は、アミノ酸また
は単糖、オリゴ糖または糖アルコールを凝固因子の溶液
に混合して、30〜100℃の温度をかけることによっ
て水溶液中の凝固因子含有調製物を処理する方法につい
て記述している。
【0007】EP-A2-0053338は、因子IXお
よびXを含有する調製物中の肝炎ウイルスを不活化する
方法について記述している。この方法では、血液調製物
の水溶液をカルシウムイオンおよび場合によってアミノ
酸および/または糖あるいは糖アルコールの存在下で1
00℃までの温度で加熱する。
【0008】EP-A2-0035204には、因子VII
I、フィブロネクチン、グロブリン、フィブリノーゲン
および他のタンパク質を含有してもよいタンパク質水溶
液を不活化する方法が開示されている。この方法では、
その組成物をポリオールと混合し、その混合物を60〜
75℃の温度に加熱する。
【0009】EP-A2-0052827には、因子IIお
よびVIIを含有する水溶液中の肝炎ウイルスを、キレー
ト剤および場合によってアミノ酸および/または糖もし
くは糖アルコールの存在下で不活化する方法が記述され
ている。
【0010】US-A-4379085には、クエン酸カ
リウムまたはクエン酸アンモニウムの存在下における、
1-阻害因子または因子IXなどの血漿タンパク質の熱
不活化法が開示されている。
【0011】EP-A2-0077870には、因子VII
I含有水溶液をアミノ酸類、単糖類、オリゴ糖類、糖ア
ルコール類および3〜10個の炭素原子を有する炭化水
素カルボン酸またはヒドロキシ-炭化水素カルボン酸と
共に、50〜80℃の温度に加熱する不活化法が記述さ
れている。
【0012】PCT出願WO83/04371には肝炎
ウイルスの不活化法が開示されており、この方法ではこ
のウイルスを含有する調製物をハロ炭化水素(具体的に
はクロロホルム)と共に4〜40℃の温度で処理する。
【0013】EP-B1-0015055は、存在するあ
らゆる微生物を不活化するために、製剤に対して無水条
件下でのマイクロ波照射処理を行う血液製剤処理法を開
示している。
【0014】XIIに関する論文;“International Congr
ess on Blood Transfusion,Abstracts"(“MIR" Publish
ers,Moscow 1969,473-475頁))で、Rosenbergらは乾燥状
態のアルブミン含有調製物およびフィブリノーゲンを6
0℃で10時間加熱することによる不活化法を開示して
いる。
【0015】EP-A2-0094611は、存在するす
べての肝炎ウイルスを不活化するために少なくとも60
℃の温度をかけることによる、乾燥状態(例えば凍結乾
燥状態)の因子VIII含有組成物の処理法を開示してい
る。
【0016】公開PCT出願WO82/03871は、
血液凝固酵素を含有する調製物の処理法であって、存在
する感染性ウイルスを不活化するためにその調製物を乾
燥状態で加熱する方法について記述している。ここでの
“乾燥状態"は、水が5重量%(0.05)未満である状態
に限定されている。
【0017】凍結乾燥した因子VIII濃縮物を60℃で
10時間乾燥加熱する方法は、いくらかのウイルス不活
化をもたらすが、それでもこれらの乾燥加熱製剤を投与
することによって肝炎ウイルスおよびAIDSウイルス
が伝染することがわかっている(Eur.J.Epidemiol.3,103
-118(1987))。乾燥加熱の有効性を増大させるために、
PCT出願WO88/08710は連続熱処理を提案し
ている。
【0018】さらにEP-A-0378208では、タン
パク質含有組成物を、乾燥加熱処理と組み合わせてトリ
アルキルリン酸での処理にかける。
【0019】EP-B-0159311の方法は、固体湿
状態の血液製剤の処理を提案している。0.05(5重量
%)より高く、0.70(70重量%)より低い水、メタノ
ールまたはエタノールの含量を調節し、密閉容器中50
〜121℃の範囲で加熱を行う。
【0020】EP-B-0050061は、生物学的およ
び医薬的生産物を0.25〜10重量%の非変性性両親
媒性物質(界面活性剤)で処理することからなる方法を開
示している。以下、%界面活性剤濃度は重量%を意味す
る。しかしEP-B-0131740には、界面活性剤の
みによる処理がウイルス不活化に関して比較的非効果的
であることが示されている。この刊行物は、効果的な処
理のために界面活性剤とジ-またはトリ-アルキルリン酸
の混合物を提案している。この場合、界面活性剤の濃度
は1%であり、溶媒の濃度は0.1%であった。
【0021】有機溶媒/界面活性剤による処理と、血液
製剤を乾燥状態で加熱する処理を組み合わせた処理も文
献(American Journal of Hematology 35,142(1990))に
報告されている。
【0022】現在、高投与量の(例えば、凝固因子調製
物中約105の最大可能力価に相当する)試験ウイルスと
混合した血液製剤試料にあるウイルス不活化法を適用し
た後、もはやウイルスを全く検出できない場合、したが
ってウイルス力価が検出限界未満に減少した場合に、そ
のウイルス不活化法は有効であると称される。
【0023】不活化の尺度としていわゆる減少係数が知
られており、これは試験ウイルスの単一添加後、初期お
よび最終ウイルス力価の商の常用対数から計算される。
さらにザ・コミッション・オブ・ザ・ヨーロピアン・コ
ミュニティー(the Commission of the European Commun
ities)の指導的EC III/8115/89-ENから、
いわゆる総減少係数が知られている。これは個々の不活
化測定後の減少係数の和から計算される。
【0024】現代医学では、多くの血液製剤を長期間に
わたって(多くの場合には永続的治療としてさえ)大量
に、予防的理由からも投与する必要がある。これは必然
的に感染性粒子の蓄積を導き、したがってたとえ既にウ
イルスが不活化されている調製物を投与したとしても、
感染の危険性が本質的に増大する。
【0025】減少係数は、全血漿プールのウイルス汚染
に関していわゆる“最悪状況"と比較されなければなら
ない。Zeitschrift fur Allgemeine Medizin 65,429-43
3(1989)から、試験してHIV陰性であることがわかっ
ている血漿の使用にもかかわらず、105ID/ml(1ml
あたりの感染単位)のHIV含量が血漿誘導物中に存在
し得ることが知られている。患者がその人生の間に10
0lの因子VIII調製物を投与されると仮定すると、AI
DSウイルスによるその患者の感染を避けるためには、
血漿誘導物のウイルス不活化法は少なくとも1010のウ
イルス力価減少を可能にしなければならない。
【0026】本発明の目的は、アルブミンを除くウイル
ス安全な(ウイルス感染の危険がない)血液製剤であっ
て、大量に投与したとしてもその血液製剤からの感染性
物質の伝染は排除され、それでもなお高い生物学的活性
を有する血液製剤を提供することにある。
【0027】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、この目
的は、 a)血液製剤を少なくとも2%、好ましくは少なくとも
5%の界面活性剤を含有する水性溶液中で処理した後、
固体状態で加熱するか、もしくは b)血液製剤を固体状態で加熱した後、これを少なくと
も2%、好ましくは少なくとも5%の界面活性剤を含有
する水溶液中で処理する; という不活化処理によって得られる血液製剤であって、
少なくとも40の総ウイルス減少係数に従い、感染性物
質の不活化を実行する前の活性に基づいて少なくとも5
0%の生物学的活性を有する、感染性物質に関して不活
化された血液製剤によって達成される。
【0028】好ましくは、本発明は、感染性物質に関し
て不活化された血液製剤であって、その血液製剤が10
%より高濃度の界面活性剤を含有する水溶液中で処理さ
れ、固体状態で加熱されることにある。
【0029】もう1つの態様は、感染性物質に関して不
活化されたアルブミン以外の血液製剤であって、その血
液製剤が少なくとも40の総ウイルス減少係数に従い、
感染性物質の不活化を実行する前の活性に基づいて少な
くとも50%の生物学的活性を有し、少なくとも1つの
方法が0.05から0.70までの水含量を有する固体お
よび乾燥状態の血液製剤の加熱処理である2以上の異な
る不活化法からなる不活化処理によって得られる血液製
剤である。この態様では少なくとも1つの方法が水性界
面活性剤溶液による処理であることが有利である。
【0030】生物学的活性は酵素活性(例えば血液凝固
酵素および補因子の酵素活性)として、(免疫グロブリン
の)結合活性として、あるいは(おそらく活性または抗原
標識の使用による)抗原性活性として決定される。
【0031】本発明の血液製剤は、少なくとも40の総
ウイルス減少係数を得るに足る時間不活化処理を実行す
ることによって、従来の血液製剤から製造できる。この
時間は、ある量の試験ウイルスをその処理中に反復して
添加し、その際、ウイルス力価がある値に減少した時、
好ましくは検出限界未満に減少した時だけに各反復を行
うことによって、血液製剤試料で実験的に決定できる。
総ウイルス減少係数は個々の減少係数の和から得られ
る。
【0032】このようにウイルス不活化のための処理中
に試験ウイルスを選択した時間間隔で繰り返し生物学的
産物に添加すれば、初期および最終ウイルス力価を決定
した後、そのウイルス力価比の常用対数に間隔(反復)数
を掛け、その減少係数を合計することによって総ウイル
ス減少係数になり得る。この計算には、最終試験ウイル
ス添加後のウイルス力価減少がそれ以前の力価減少を越
えないことが必要であり、このことは最終以前のウイル
ス力価減少についても同様である。
【0033】試験ウイルスとして、例えばAIDSウイ
ルスまたはシンドビス・ウイルス(肝炎ウイルスのモデ
ルウイルスとして)を使用することができる。
【0034】本発明は、血液製剤を追加のウイルス不活
化法にかけない場合には、10%未満の界面活性剤濃度
で実行されるツウィーン(Tween)または先行技術の界面
活性剤での処理が十分な結果を与えないという発見に基
づいている。これはウイルス上のタンパク質の不活化試
薬(界面活性剤など)に対する保護効果によるものであろ
う。しかしこの保護効果は、それぞれ、より高濃度のツ
ウィーンまたは界面活性剤によって、本質的にタンパク
質の生物学的活性を損なうことなく排除され得る。この
ような方法は、例えば毒性効果が知られている溶媒など
の追加物質を添加することなく実行することを可能にす
る。
【0035】ツウィーンまたは界面活性剤による処理を
10%より高く、25%より低い質量濃度で、1〜30
分間、特に5.5〜8のpH、0〜56℃の温度(15〜
37℃の範囲が有利である)で、任意に7〜20mSの電
気伝導度で実行すれば、有利であることを立証した。
【0036】本発明の不活化血液製剤を製造する好まし
い方法は、血液製剤を、水性界面活性剤溶液での処理の
前または後に、熱蒸気で処理することであり、その際、
固体状態のその血液製剤を0.05(5質量%)より高く
0.70(70質量%)(好ましくは0.40(40質量%))
より低い水、メタノールまたはエタノール含量に調節
し、密閉容器中50〜121℃の温度で処理する。
【0037】本発明は、試験ウイルスを用いてその減少
係数を決定することによる、少なくとも1つの不活化法
からなる不活化処理のウイルス不活化能を決定する方法
であって、試験ウイルスを少なくとも1つの不活化法の
間、繰り返し添加し、任意に少なくとも1つの不活化法
の個々の減少係数を追加の不活化法の減少係数と合計す
ることによって、総ウイルス減少係数を得ることを特徴
とする方法にも関連する。
【0038】以下の実施例で本発明をより詳細に説明す
る。
【0039】
【実施例】実施例1 AT-B 391808に開示された方法に従って、ヒト
血漿から凝固因子VIIIを含有する低温沈殿物溶液を製
造した。この溶液を8%ツィーン80に調節し、2分間
隔でHIV-1ウイルス懸濁液と7回混合した。25℃
で14分間の総インキュベーション時間の後、ウイルス
を遠心分離し、その力価を決定した。ツィーンを添加し
ないこの調製物の対照値は105.1であった。ツィーン
処理の後、ウイルス力価は100.5の検出限界未満であ
り、逆転写酵素による陰性試験に基づいて0であると称
することができた。これは7x5.1=35.7のウイル
ス減少係数をもたらす。
【0040】ツィーンを除去した溶液を再度HIV-1
懸濁液と混合し、凍結乾燥し、EP-A-0159311
の方法に従って、8%の水含量で、60℃で10時間加
熱した。ウイルス力価は106.2から0に低下した。
【0041】このように両不活化操作は、41.9の総
ウイルス減少係数をもたらした。したがって、上述の条
件下での界面活性剤処理および加熱処理にかけた因子V
III調製物は41.9の総ウイルス減少係数に従い、ウイ
ルス安全であると見ることができる。
【0042】因子VIIIの残存活性の決定を、トロンボ
プラスチン形成試験(2段階試験)を用いて達成した。因
子VIIIの残存活性は、加熱した試料の因子VIII活性
と、ツィーン処理前の出発物質の因子VIII活性の商を
作ることによって計算し、80%になった。
【0043】実施例2 Vox.Sang.33,37-50(1977)に開示されている方法に従
い、DEAEセファデックスへの吸着、そのイオン交換
体の洗浄および複合体の溶出によって、ヒト血漿から凝
固因子II、IXおよびX(部分的プロトロンビン複合体、
PPC)を含有する調製物を回収した。
【0044】22%ツィーン80を含有する溶液中でこ
のPPCをHIV-1ウイルスと混合し、25℃でイン
キュベートした。ウイルス懸濁液を20秒間隔で15回
添加した。ツィーンを添加しない対照のウイルス力価は
105.7であった。ツィーン処理後、最終ウイルス力価
は100.5の検出限界未満であった。これから、少なく
とも15x5.2=78の総ウイルス減少係数が計算さ
れる。したがって、上記のツィーン処理にかけたPPC
調製物は78の総ウイルス減少係数に相当し、ウイルス
安全であると見るべきである。
【0045】これらの凝固因子の活性を、試験すべき試
料を因子IX欠乏血漿に添加し、活性化した部分的トロ
ンボプラスチン時間を決定することによる因子IX法(1
段階試験)で決定した。これらの凝固因子の活性はツィ
ーン処理による影響をほとんど受けなかった。非処理P
PC中の因子IX活性に対する処理試料の活性比は約1
00%であった。
【0046】実施例3 実施例2に記述したPPC調製物を12%ジメチルオク
チルアミン-N-オキシルと共に、モデルウイルス(シン
ドビスおよび小胞性口内炎ウイルス=VSV)の存在下
で25℃でインキュベートした。このウイルス懸濁液の
添加を5分間隔で10回行った。この界面活性剤による
処理の後、ウイルス力価はそれぞれ101.5の検出限界
未満であった。界面活性剤を添加しない対照値はそれぞ
れ106.4および106.1であった。これから少なくとも
10x4.9=49および10x4.6=46の総ウイル
ス減少係数が計算された。
【0047】生物学的活性は界面活性剤処理によってほ
とんど損なわれず、約100%になった。
【0048】実施例4 Cohnに従って血漿を分画し、フィブリノーゲン含有CO
HN I画分をモデルウイルス(それぞれシンドビスまた
はVSV)と混合した。凍結乾燥後、8%の水含量を有
するその濃縮物をEP-A-0159311の方法に従っ
て60℃で10時間加熱し、次いで80℃で3時間加熱
した。ウイルス力価は凍結乾燥によってそれぞれ10
5.5および106から、それぞれ104.9および105.5
低下し、さらに60℃での処理によって100.5の検出
限界未満に低下した。
【0049】80℃における第2処理段階の不活化能を
平行調製物で決定した。凍結乾燥はウイルス力価をそれ
ぞれ105.5および106.0から104.9および105.5
再度低下させ、80℃での処理はそれをさらに検出限界
未満に低下させた。
【0050】減少係数を、それぞれ5または5.5対数
目盛りによる2回の減少引くそれぞれ0.6または0.5
対数目盛りから計算した。なぜなら2段階処理に間、フ
ィブリノーゲン調製物を1回だけ凍結乾燥にかけたから
である。したがって減少係数はそれぞれ9.4および1
0.5であった。
【0051】次いで、その粉末を5%オクチルグルコシ
ドを含有する媒質中に溶解し、これに、5分間隔でそれ
ぞれシンドビスまたはVSVを9回添加した。このイン
キュベーション(25℃で合計45分間)の後、ウイルス
力価を決定した。この界面活性剤による処理はウイルス
力価を100.5の検出限界未満の値に減少させた。界面
活性剤を添加しない調製物の対照値はそれぞれ106.9
および106.0であった。これから、少なくともそれぞ
れ57.6および49.5のウイルス減少係数が計算され
た。したがって総ウイルス減少係数は少なくともそれぞ
れ67.0および60.0であった。上記の条件下で加熱
処理および界面活性剤処理に付したフィブリノーゲン調
製物は少なくとも60.0の総ウイルス減少係数に従
い、ウイルス安全であると見なすべきである。
【0052】このオクチル-グルコシド含有画分から8
%エチルアルコールで沈殿する沈殿物中で、フィブリン
-α-鎖の架橋試験(K.Schimpf“Fibrinogen,Fibrin und
Fibrinkleber"(F.K.Schattauer Verlag,Stuttgart-New
York)中のT.Seelich,H.Redl"Theoretische Grundlagen
des Fibrinklebers" 199-208,1980)を用いてフィブリノ
ーゲンの生物学的活性を決定し、トロンベラストグラフ
ィー(thrombelastography)(H.Hartert,“Thrombosis an
d Bleeding Disorders"(N.U.Bangら共編,Georg Thieme
Verlag Stuttgart,Acad.Press New York London)中,70-
76,1971)を用いて、それぞれの場合に混合されている凝
固因子XIIIを決定した。
【0053】処理したフィブリノーゲンの生物学的活性
は、COHN I画分の生物学的活性に基づいて、架橋
によって測定した場合87%であり、トロンベラストグ
ラムで測定した場合56%であった。
【0054】実施例5 選択した血漿をCohnに従って分画した。抗破傷風トキソ
イド・ガンマグロブリンを含有するCOHN III画分
を、15%トリトン(Triton)X-100の存在下で、そ
れぞれHIV-1およびシンドビス・ウイルスと混合
し、25℃でインキュベートした。ウイルス添加を1分
間隔で30回行った。合計30分間のインキュベーショ
ン期間の後、ウイルス力価はそれぞれ102.5および1
1.5の検出限界未満であった。界面活性剤を添加しな
い調製物の対照値はそれぞれ105.7および107.5であ
った。これから少なくともそれぞれ30x3.2=96
および30x6=180の総ウイルス減少係数が計算さ
れる。上記の界面活性剤処理に付したガンマグロブリン
調製物は少なくとも96の総ウイルス減少係数に相当
し、ウイルス安全と見るべきである。
【0055】結合活性で生物学的活性を決定した。この
ために破傷風トキソイドを微量滴定プレート上に吸着さ
せ、ゼラチンで覆い、洗浄した。次いで、試験すべきガ
ンマグロブリンをこの被覆微量滴定プレートに数倍希釈
で適用し、非吸着免疫グロブリンを洗浄除去した。破傷
風トキソイドに結合したガンマグロブリンを、この免疫
グロブリンのFc部分に対する抗ヒトIgGペルオキシ
ダーゼ複合体の吸着、さらにジアミノベンジジンおよび
22によるペルオキシダーゼの発色反応、およびそれ
に続く光学密度の測定によって決定した。
【0056】破傷風トキソイドに対するガンマグロブリ
ンの結合活性は界面活性剤による処理によってほとんど
影響を受けなかった。この処理の前後で結合活性の有意
な相違は検出できなかった。
【0057】実施例61エステラーゼ阻害因子を含有する溶液0.95ml(Vog
elaar E Fら(1973) Vox Sang.26,118-127“Contributio
ns to the Optimasl Use of Human Blood"に従って製造
した)をトリトンX-100 20mgと混合し、25℃で
インキュベートした。ウイルス不活化能を決定するため
に、VSVウイルス(10μl)を5分間隔で繰り返し混
合した。ウイルスを5回混合した時、ウイルス力価が1
0.5の検出限界未満であることがわかった。界面活性
剤を添加しない調製物の対照値は107.5であった。こ
れから、少なくとも5x7=35のウイルス減少係数が
計算される。
【0058】C1エステラーゼ阻害因子をDEAEセフ
ァデックスに吸着させ、8.89g/lNaCl溶液で界
面活性剤を含有しなくなるまで洗浄した。この阻害因子
を59g/l NaCl溶液で脱離させた後、これを1.0
g/l クエン酸ナトリウムおよび0.4g/l NaClを
含有する緩衝液(pH6.8)に対して透析した。この溶
液を凍結乾燥する前に、この溶液に再度VSVウイルス
を混合した。この調製物を72℃で24時間乾燥加熱し
た。凍結乾燥とそれに続く熱処理の間に、ウイルス力価
は107.2から100.5の検出限界未満に減少した。した
がってウイルス減少係数は少なくとも6.7であった。
【0059】この界面活性剤処理および熱処理のウイル
ス減少係数から、少なくとも41.7の総ウイルス減少
係数が計算される。この阻害剤の生物学的活性はVSV
ウイルスの不活化によってほとんど損なわれず、およそ
100%であった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 イェンドラ・リンナウ オーストリア、アー−1224ヴィーン、ラ ーフェンデルヴェーク24番 (72)発明者 ギュンター・ヴェーバー オーストリア、アー−2522オーバーヴァ ルターズドルフ、カロルスシュトラーセ 23番 (56)参考文献 特開 昭60−51116(JP,A) 特開 平1−224323(JP,A) The Lancet.339(1992)、 p819 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61K 35/14 A61K 35/00 - 35/76 A61K 37/00 - 37/66

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 総ウイルス減少係数が少なくとも40で
    あり、感染性物質の不活化を実行する前の活性と比較し
    て少なくとも50%の生物学的活性を有する、感染性物
    質を不活化したアルブミン以外の血液製剤であって、 a)血液製剤を少なくとも2%の界面活性剤を含有する
    水性溶液中で処理した後、固体状態で加熱するか、もし
    くはb)血液製剤を固体状態で加熱した後、これを少な
    くとも2%の界面活性剤を含有する水溶液中で処理す
    る; ことからなり、毒性を有する有機溶媒を使用しない不活
    化処理によって得られる血液製剤。
  2. 【請求項2】 該水性溶液が少なくとも5%の界面活性
    剤を含有する請求項1の血液製剤。
  3. 【請求項3】 該血液製剤が10%より高い濃度の界面
    活性剤を含有する水性溶液中で処理され、固体状態で加
    熱される請求項1または2の血液製剤。
  4. 【請求項4】 総ウイルス減少係数が少なくとも40で
    あり、感染性物質の不活化を実行する前の活性と比較し
    て少なくとも50%の生物学的活性を有する、感染性物
    質を不活化したアルブミン以外の血液製剤であって、少
    なくとも1つの不活化法が0.05から0.70までの水
    含量の固体および湿状態での血液製剤の加熱処理である
    少なくとも2つの異なる不活化法からなり、毒性を有す
    る有機溶媒を使用しない不活化処理によって得られる血
    液製剤。
  5. 【請求項5】 該不活化法の少なくとも1つが水性界面
    活性剤溶液による血液製剤の処理である請求項4の血液
    製剤。
  6. 【請求項6】 a)血液製剤を少なくとも2%の界面活
    性剤を含有する水性溶液中で処理した後、固体状態で加
    熱するか、もしくはb)血液製剤を固体状態で加熱した
    後、これを少なくとも2%の界面活性剤を含有する水性
    溶液中で処理する; ことからなり、毒性を有する有機溶媒を使用しない不活
    化処理であって、該加熱が熱蒸気を用いて行われ、固体
    状態の該血液製剤が0.05(5質量%)より高く0.70
    (70質量%)より低い水、メタノールまたはエタノール
    含量に調節され、処理が密閉容器中50〜121℃の範
    囲の温度で行われる不活化処理からなる、総ウイルス減
    少係数が少なくとも40であり、感染性物質の不活化を
    実行する前の活性と比較して少なくとも50%の生物学
    的活性を有する、感染性物質を不活化したアルブミン以
    外の血液製剤の製造方法。
  7. 【請求項7】 該水、メタノールまたはエタノール含量
    が0.40(40質量%)未満である請求項6の方法。
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