JP2012203212A - 位相差板、並びにそれを有する偏光板、3d表示装置及び3d表示システム - Google Patents

位相差板、並びにそれを有する偏光板、3d表示装置及び3d表示システム Download PDF

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Abstract

【課題】顔傾斜によって生じる白表示時の色味変化の軽減に寄与する位相差板の提供。
【解決手段】位相差領域A及びBが交互に配置されたパターニング位相差領域を含む位相差板であって、前記位相差領域A及びBは、互いに異なる方向に面内遅相軸を有する、又は、互いに異なる面内レターデーションを有する位相差領域であり、
前記位相差領域Aの波長550nmにおける厚み方向レターデーションRth(550)がRth(550)<25nmを満足し、且つ前記位相差領域BのRth(550)が25nm≦Rth(550)を満足する位相差板である。
【選択図】図1

Description

本発明は、3D表示装置等に有用なパターン化位相差板、並びにそれを用いた偏光板、3D表示装置及び3D表示システムに関する。
立体画像を表示する3D画像表示装置には、右眼用画像及び左眼用画像を、例えば、互いに反対方向の円偏光画像とするための光学部材が必要である。例えば、かかる光学部材には、遅相軸やレターデーション等が互いに異なる領域が規則的に面内に配置されたパターン化位相差板が利用され、その製造方法についても提案されている(例えば特許文献1〜3)。ところで、パターン化位相差板を有する3D表示装置では、観察者が、偏光眼鏡をかけて画面を観察するのが一般的である。眼鏡をかけた観察者が見る際は、顔傾斜(眼鏡回転)による輝度・色味・クロストーク変化を小さくすることが求められる。しかし、パターニング位相差板を配置した3D表示装置では、観察者の顔傾斜により、白表示時の色味変化が顕著になる。
特開2004−302409号公報 特開2007−163722号公報 WO2010/090429号A2公報
本発明は上記問題に鑑みなされたものであって、3D表示装置に有用な位相差板であって、観察者の顔の傾斜によって生じる白表示時の色味変化の軽減に寄与する位相差板を提供することを課題とする。
また、本発明は、観察者の顔の傾斜によって生じる白表示時の色味変化が軽減された、パターニング位相差板を利用した3D表示装置及び3D表示システムを提供することを課題とする。
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 位相差領域A及びBが交互に配置されたパターニング位相差領域を含む位相差板であって、前記位相差領域A及びBは、互いに異なる方向に面内遅相軸を有する、又は、互いに異なる面内レターデーションを有する位相差領域であり、
前記位相差領域Aの波長550nmにおける厚み方向レターデーションRth(550)がRth(550)<25nmを満足し、且つ前記位相差領域BのRth(550)が25nm≦Rth(550)を満足する位相差板。
[2] 前記位相差領域A及びBの少なくとも一方の面内レターデーションReが、可視光域において順波長分散性又はフラット波長分散性を示す[1]の位相差板。
[3] 前記位相差領域A及びBがそれぞれ、|Rth(550)|≦160nmを満足する[1]又は[2]の位相差板。
[4] 前記位相差領域A及びBの波長550nmの面内レターデーションRe(550)がそれぞれλ/4、且つ前記位相差領域A及びBの面内遅相軸αa及びαbが互いに直交する[1]〜[3]のいずれかの位相差板。
[5] 前記位相差領域A及びBそれぞれの面内遅相軸αa及びαbの少なくとも一方が、パターニングの周期方向と平行又は直交している[1]〜[4]のいずれかの位相差板。
[6] 前記位相差領域A及びBがそれぞれ、配向状態に固定された液晶化合物を含有する位相差層からなる、又は配向状態に固定された液晶化合物を含有する位相差層を含む[1]〜[5]のいずれかの位相差板。
[7] 前記位相差領域Aが、配向状態に固定された円盤状液晶化合物を含有する位相差層からなる、又は配向状態に固定された円盤状液晶化合物を含有する位相差層を含む[1]〜[6]のいずれかの位相差板。
[8] 前記位相差領域Bが、配向状態に固定された棒状液晶化合物を含有する位相差層からなる、又は配向状態に固定された棒状液晶化合物を含有する位相差層を含む[1]〜[7]のいずれかの位相差板。
[9] 前記位相差領域A及びBがそれぞれ、複屈折ポリマーフィルムからなる、又は複屈折ポリマーフィルムを含む[1]〜[8]のいずれかの位相差板。
[10] 前記位相差領域AのRth(550)が、Rth(550)≦−25nmを満足する[1]〜[9]のいずれかの位相差板。
[11] 最表面に反射防止層を有する[1]〜[10]のいずれかの位相差板。
[12] 紫外線吸収剤を含む[1]〜[11]のいずれかの位相差板。
[13] [1]〜[12]のいずれかの位相差板と、直線偏光膜とを少なくとも有する偏光板。
[14] 前記位相差領域A及びBの波長550nmの面内レターデーションRe(550)がそれぞれλ/4、前記位相差領域A及びBそれぞれの面内遅相軸αa及びαbが互いに直交し、且つαa及びαbのそれぞれと前記直線偏光膜の吸収軸θとの角度が45°である[13]の偏光板。
[15] 画像表示素子、及びその表示面側に、[13]又は[14]の偏光板を有する3D表示装置。
[16] 前記偏光板に含まれる位相差板の位相差領域A及びBのRe(550)がそれぞれλ/4、該位相差領域A及びBの面内遅相軸αa及びαbが互いに直交し、且つαa及びαbのそれぞれと、前記偏光板に含まれる直線偏光膜の吸収軸θとの角度が45°である[15]の3D表示装置。
[17] 前記偏光板の吸収軸が45°又は135°であり、
前記偏光板に含まれる位相差板のパターン周期方向が、表示面上下方向である場合は、位相差領域Aの面内遅相軸αaが、90°であり;又は
前記偏光板に含まれる位相差板のパターン周期方向が、表示面左右方向である場合は、位相差領域Aの面内遅相軸αaが、0°である;
[16]の3D表示装置。
[18] 前記画像表示素子が、液晶セルを含む液晶パネルである[15]〜[17]のいずれかの3D表示装置。
[19] 前記液晶セルが、TN、OCB又はECBモード液晶セルである[18]の3D表示装置。
[20] 前記偏光板に含まれる直線偏光膜が、前記画像表示素子の画像表示機能のためにも利用される[15]〜[19]のいずれかの3D表示装置。
[21] [15]〜[20]のいずれかの3D表示装置と、
前記3D表示装置に表示される右眼用及び左眼用の偏光画像のそれぞれを、観察者の右眼及び左眼にそれぞれ入射させるための第2の偏光板と、
を有する3D表示システム。
[22] 前記3D表示装置が右眼用及び左眼用円偏光画像を表示し、前記第2の偏光板が直線偏光膜とλ/4位相差膜とを有する円偏光板である[21]の3D表示システム。
本発明によれば、3D表示装置に有用な位相差板であって、観察者の顔の傾斜によって生じる白表示時の色味変化の軽減に寄与する位相差板を提供することができる。
また、本発明によれば、観察者の顔の傾斜によって生じる白表示時の色味変化が軽減された、パターニング位相差板を利用した3D表示装置及び3D表示システムを提供することができる。
本発明の位相差板と直線偏光膜との組み合わせの配置例を示す模式図である。 本発明の位相差板と直線偏光膜との組み合わせの配置例を示す模式図である。 本発明の3D表示システムの一例の断面模式図である。
以下、本発明について、実施の形態を挙げて詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
まず、本明細書で用いられる用語について説明する。
Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーション、及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH、又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。測定されるフィルムが、1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。なお、この測定方法は、後述する位相差層中のディスコティック液晶分子の配向膜側の平均チルト角、その反対側の平均チルト角の測定においても一部利用される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、又はWRが算出する。なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)、及び式(B)よりRthを算出することもできる。
Figure 2012203212
なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。また、式(A)におけるnxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは、面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzは、nx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d・・・・・・・・・・・式(B)
測定されるフィルムが、1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rth(λ)は算出される。Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。また、上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
本明細書において、透湿度は、JIS Z 0208に記載の方法に則り、各試料の透湿度を測定し、面積1m2あたり24時間で蒸発する水分量(g)として算出したものを意味する。
本明細書において、「平行」、「直交」とは、厳密な角度±10゜未満の範囲内であることを意味する。この範囲は厳密な角度との誤差は、±5゜未満であることが好ましく、±2゜未満であることがより好ましい。また、「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。
なお、屈折率の測定波長は、特に断らない限り、可視光域のλ=550nmでの値であり、Re及びRthの測定波長については、特に断らない限り、550nmとする。
1.位相差板
本発明は、位相差領域A及びBが交互に配置されたパターニング位相差領域を含む位相差板であって、前記位相差領域A及びBは、互いに異なる方向に面内遅相軸を有する、又は、互いに異なる面内レターデーションを有する位相差領域であり、前記位相差領域Aの波長550nmにおける厚み方向レターデーションRth(550)がRth(550)<25nmを満足し、且つ前記位相差領域BのRth(550)が25nm≦Rth(550)を満足する位相差板に関する。
通常、Reが例えばλ/4等、所望の範囲に調整された位相差フィルム等には、厚み方向のレターデーションRthもある程度あり、完全にゼロにすることは困難である。本発明者らが鋭意検討した結果、観察者の顔の傾斜に依存して発生する、白表示時の色味変化には、パターニング位相差板のRthが影響していることがわかった。この知見に基づきさらに検討した結果、互いに異なる方向に面内遅相軸を有する、又は、互いに異なる面内レターデーションを有する位相差領域A及びBを有する位相差板において、位相差領域AのRth(550)を25nm未満、且つ位相差領域BのRth(550)を25nm以上にすることにより、白表示時の斜め方向に生じる色味変化を軽減できるとの知見が得られ、本発明を完成するに至った。位相差領域AのRthを25nm未満とし、且つ位相差領域BのRthを25nm以上にすることで、顔の傾斜に依存して発生する白表示時の色味変化を、ほぼ左右対称に違和感なく軽減することができる。
ところで、位相差領域A及びBのReが可視光域において逆波長分散性(短波長ほど低Reである特性)の場合は、そもそも顔傾斜による色味変化が生じ難く、好ましいが、一方で、Reが逆波長分散性の位相差領域A及びBを形成するためには材料の制約を受ける。本発明によれば、位相差領域A及びBのReが可視光域において順波長分散性(短波長ほど高Reである特性)やフラット波長分散性(波長によらずReがほぼ一定)であっても、顔傾斜による色味変化を軽減できる。即ち、本発明は、位相差領域A及びBのRe順波長分散性やフラット波長分散性の態様において特に有効である。
位相差領域A及びBそれぞれの|Rth(550)|の上限値については特に制限はなく、必要とされているRe(550)との関係で決定されるであろう。一般的には、位相差領域A及びBそれぞれの|Rth(550)|は160nm以下になる。また互いの|Rth(550)|は同一である必要はなく、その差は、5〜300nm程度であってもよく、また10〜180nm程度であってもよい。位相差領域AのRth(550)は、負であるのが好ましく、−25nm以下であるのがより好ましく、−35〜−120nmであるのがさらに好ましい。位相差領域BのRth(550)は、35〜120nmであるのが好ましい。
本発明の位相差板の態様については特に制限はない。直線偏光膜との組み合わせによって、右眼用及び左眼用の偏光画像を分離可能な、パターン化の態様のいずれであってもよい。位相差領域A及びBのRe、それぞれの面内遅相軸αa及びαbの関係、及び直線偏光膜の吸収軸との関係について、いくつかの例をまとめれば、以下の通りである。
Figure 2012203212
上記表に示した態様の中でも、特に第1の態様が好ましい。第1の態様の位相差板は、直線偏光膜と表記関係で組み合わせることで、右眼及び左眼用の互いに逆向きの円偏光画像を形成することができる。
本発明の位相差板は直線偏光膜とともに表示パネルの視認側外側(表示パネルが視認側に直線偏光膜を有する場合には、位相差板単独で、表示パネルの視認側直線偏光膜のさらに外側)に配置され、当該位相差板の第1及び第2の位相差領域のそれぞれを通過した偏光画像が、偏光眼鏡等を介して右眼用又は左眼用の画像として右眼又は左眼にそれぞれ入射する。従って、左右画像が不均一にならないように、位相差領域A及びBは、互いに等しい形状であるのが好ましく、またそれぞれの配置は、均等且つ対称的であるのが好ましい。表示装置の画面は通常矩形状であり、この形状の位相差板を想定すると、本発明の位相差板の例には、位相差領域A及びBのパターンの周期として、表示面の上下方向に位相差領域A及びBを交互に配置した、即ち、パターン周期が表示面の上下方向にある位相差板、及び表示面の左右方向に位相差領域A及びBを交互に配置した、即ち、パターン周期が表示面の左右方向にある位相差板、が含まれる。
また、本発明の位相差板の第1の態様等では、位相差領域A及びBの面内遅相軸は互いに直交する。当該態様における面内遅相軸と、パターン周期との関係については特に制限はないが、位相差領域A及びBそれぞれの面内遅相軸が、パターニングの周期方向と平行又は直交しているのが好ましい。第1の態様では、位相差領域A及びBそれぞれの面内遅相軸と直線偏光膜の吸収軸とを±45°にして配置するので、直線偏光膜の吸収軸は、表示面に対して45°又は135°の方向にするのが好ましい。即ち、本発明の位相差板と直線偏光膜との関係のいくつかの例を示せば、図1(a)〜(d)、並びに図2(a)〜(d)の通りである。図1に示す例は、パターニングの周期方向が表示面上下方向であり、図2に示す例は、パターニングの周期方向が表示面左右方向である。また図1及び図2はいずれも、上記第1の態様の例であり、位相差領域A及びBのReがλ/4であり、それぞれの面内遅相軸αa及びαbが互いに直交し、且つ直線偏光膜の吸収軸θと±45°で交差している例である。
本発明の位相差板の材料については特に制限はない。前記位相差領域A及びBはそれぞれ、配向状態に固定された液晶化合物を含有する位相差層からなっていてもよい。液晶化合物についても、円盤状液晶及び棒状液晶のいずれも使用可能である。また、前記位相差領域A及びBはそれぞれ、複屈折ポリマーフィルムからなっていてもよい。さらに、前記位相差領域A及びBの光学特性を所望の範囲とするために、前記位相差領域A及びBはそれぞれ積層構造を有していてもよく、前記位相差層の積層体、複屈折ポリマーフィルムの積層体、前記位相差層と複屈折ポリマーフィルムとの積層体のいずれであってもよい。本発明の位相差板の製造に使用可能な材料の例については後述する。
前記位相差板は、表示パネルの視認側外側に配置されるので、表面層をさらに有していてもよい。表面層は、外光の映り込みを抑制する反射防止機能を備えた反射防止層であるのが好ましい。また、表示パネルの視認側外側に配置され、外光に曝されることから、耐光性の表面層を有しているのも好ましい。耐光性の表面層の一例は、紫外線吸収剤を少なくとも含有するポリマーフィルム又は硬化層である。また、反射防止層等の他の機能層中に紫外線吸収剤を含有させても耐光性を改善できる。さらに、紫外線吸収剤を、位相差領域を構成している位相差層や複屈折ポリマーフィルム中に含有させても、同様に耐光性を改善することができる。使用可能な表面層及び紫外線吸収剤等についても後述する。
2.3D表示装置及び3D表示システム
本発明は、本発明の位相差板を有する3D表示装置及び3D表示システムにも関する。本発明の位相差板は、表示パネルの視認側に配置され、表示パネルが表示する画像を右眼用及び左眼用の円偏光画像又は直線偏光画像等の偏光画像に変換する機能を有する。観察者は、これらの画像を円偏光又は直線偏光眼鏡等の偏光板を介して観察し、立体画像として認識する。
本発明では、表示パネルについてはなんら制限はない。例えば、液晶層を含む液晶パネルであっても、有機EL層を含む有機EL表示パネルであっても、プラズマディスプレイパネルであってもよい。いずれの態様についても、種々の可能な構成を採用することができる。また、透過モードの液晶パネル等は、視認側表面に画像表示のための直線偏光膜を有する態様では、本発明の位相差板は、当該直線偏光膜との組み合わせによって、上記機能を達成してもよい。勿論、本発明の位相差板は、液晶パネルとは別に直線偏光膜を有していてもよいが、その場合は、位相差板の直線偏光膜の吸収軸と、液晶パネルの直線偏光膜の吸収軸とを一致させて配置する。
本発明の位相差板を表示パネルに配置する際の、パターン周期方向と表示面との関係については特に制限はない。図1(a)〜(d)に示す様に、パターンの周期方向が画像表示面上下方向の沿っていても、図2(a)〜(d)に示す様に、パターンの周期方向が画像表示面左右方向に沿っていてもよい。但し、一般的には、位相差板のパターニング周期方向ではクロストーク性能が原理的に悪くなるので、用途に応じて、即ち、画面左右方向における3D表示性能が重要である態様では、図1の配置が、図2の配置と比較してより好ましく、一方、画面上下方向における3D表示性能が重要である態様では、図2の配置が、図1の配置と比較してより好ましい。
図1に示す態様は、画像表示面左右方向の3D表示特性に優れるので、本発明の位相差板を配置することによる色味変化の軽減効果が、画像表示面左右方向において特に顕著になるのが好ましい。図1(a)〜(d)のうち、図1(a)及び(c)の配置は、画像表示面左右方向における色味変化の軽減効果が高く、好ましい。具体的には、図1に示す様に、前記位相差板のパターン周期方向が、表示面上下方向である態様では、直線偏光膜の吸収軸θが45°又は135°であり、且つ位相差領域Aの面内遅相軸αaが90°である、図1(a)及び図1(c)の配置が、画面左右方向の色味変化軽減効果が特に高く、しかも左右方向の3D表示能にも優れる。
図2に示す態様は、画像表示面上下方向の3D表示特性に優れるので、本発明の位相差板を配置することによる色味変化の軽減効果が、画像表示面上下方向において特に顕著になるのが好ましい。図2(a)〜(d)のうち、図2(a)及び(c)の配置は、画像表示面上下方向における色味変化の軽減効果が高く、好ましい。具体的には、図2に示す様に、前記位相差板のパターン周期方向が、表示面左右方向である態様では、直線偏光膜の吸収軸θが45°又は135°であり、且つ位相差領域Aの面内遅相軸αaが0°である、図2(a)及び図2(c)の配置が、画面上下方向の色味変化軽減効果が特に高く、しかも上下方向の3D表示性能にも優れる。
図3に本発明の3D表示システムの一例の断面模式図を示す。図3に示す例は、3D表示装置の表示パネルとして、液晶セルを有する液晶パネルを利用した例である。
図3は、3D表示装置1、3D表示装置1と観察者との間に配置される偏光板2とを有し、観察者は偏光板2を介して、3D表示装置1が表示する画像を観察する。3D表示装置1によって表示される画像は、右眼及び左眼用の円偏光画像に分離されていて、偏光板2を介することによって、観察者の右眼には右眼用の画像のみが、左眼には左眼用の画像のみが入射し、観察者は3D画像として認識する。偏光板2は、例えば、偏光眼鏡であり、3D表示装置1が円偏光画像を表示する態様では、円偏光眼鏡が用いられる。
3D表示装置1は、液晶セル10を有する液晶パネルであり、液晶セル10が一対の直線偏光膜12及び14に挟持され、後方に、バックライトBLを備えた透過モードの液晶パネルとして構成されている。液晶セル10と一対の直線偏光膜12及び14との間には、液晶セル10を光学補償するための光学補償フィルム16及び18がそれぞれ配置されている。光学補償フィルム16及び18の光学特性は、液晶セル10のモードに応じて、光学補償に必要な範囲に調整される。位相差フィルム、液晶組成物の配向を固定してなる位相差層、又はそれらの積層体等が利用される。なお、液晶セル10のモードによっては光学補償フィルム16及び18はなくてもよく、例えば、光学的に等方性のポリマーフィルムを、直線偏光膜12及び14の保護フィルムとして配置してもよい。また、光学補償フィルム16及び18と直線偏光膜12及び14との間にそれぞれ保護フィルムを配置してもよい。また、直線偏光膜14のバックライトBL側に配置される保護フィルム19については特に制限はなく、後述する位相差ポリマーフィルムのいずれも使用することができる。また低位相差ポリマーフィルムを用いてもよい。
3D表示装置1は、その視認側のさらに外側に、本発明の位相差板20を有する。本発明の位相差板は、位相差領域A及びBが交互に配置されたパターニング位相差領域を含むパターニング位相差層21と、表面層22とを有する。表面層22が、反射防止機能を有していると、外光の映り込みを軽減できるので好ましい。また表面層22又は位相差層21が紫外線吸収剤を含有していると、耐光性が改善され、外光に曝されることによって劣化するのを抑制できるので好ましい。位相差層21及び表面層22との間に、いずれか一方又は双方を支持する1以上のポリマーフィルムを配置し、当該ポリマーフィルムに紫外線吸収剤を添加するのも好ましい。位相差層21及び偏光膜12との間に、いずれか一方又は双方を支持する1以上のポリマーフィルムを配置し、表面層22に紫外線吸収剤を添加するのも好ましい。
液晶セル10の構成については特に制限はなく、一般的な構成の液晶セルを採用することができる。液晶セルは、例えば、図示しない対向配置された一対の基板と、該一対の基板間に挟持された液晶層とを含み、必要に応じて、カラーフィルタ層などを含んでいてもよい。液晶セル10の駆動モードについても特に制限はなく、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等の種々のモードを利用することができる。TN、OCB又はECBモードでは、一般的に、直線偏光膜の吸収軸は、表示面左右方向0°に対して45°又は135°に配置されるので、これらのモードの液晶パネルと、本発明の位相差板を組み合わせる場合は、図1又は図2に示す態様で配置することができ、特に、図1(a)もしくは(c)、図2(a)もしくは(c)に示す配置にするのが好ましい。また、TN又はECBモードでは、液晶セル内の液晶配向に起因した階調反転が生じる方向がある。その方向と、前記位相差板のパターニング周期方向とを一致させると、階調反転が最も視認される方向とクロストークが原理的に悪くなる方向とが一致するため、視野角性能が重要である方向(例えば、図1では画像表示面左右方向)における3D表示の視認性を向上できるので好ましい。
偏光板2の構成については特に制限はなく、従来3D表示システムに利用されている種々の態様の偏光眼鏡を利用することができる。3D表示装置1が、右眼及び左眼用の円偏光画像を表示する態様では、偏光板2として、λ/4板24と直線偏光膜26とからなる円偏光眼鏡を用いるのが好ましい。
以下、本発明の位相差板の作製に利用可能な材料、及び方法等について詳細に説明する。
(1)位相差領域A及びB
本発明の位相差板は、Rthが25nm未満の位相差領域Aと、Rthが25nm以上の位相差領域Bとを有する、パターニング位相差板である。位相差領域A及びBの形成には、液晶を利用してもよいし、また複屈折ポリマーフィルムを利用してもよい。また双方を利用しても勿論よい。また使用可能な液晶の例には、ディスコティック液晶及び棒状液晶の双方が含まれる。
本発明の位相差板の一例は、位相差領域Aが配向状態(好ましくは垂直配向状態)に固定されたディスコティック液晶を含有する位相差層であり、位相差領域Bが配向状態(好ましくは水平配向状態)に固定された棒状液晶を含有する位相差層である。垂直配向状態に固定されたディスコティック液晶を含有する位相差層のRthは、ディスコティック液晶の固有の性質から、容易に25nm未満(特に負)に調整可能であり、位相差領域Aとして利用できる。また水平配向状態に固定された棒状液晶を含有する位相差層のRthは、棒状液晶の固有の性質から、容易に25nm以上に調整可能であり、位相差領域Bとして利用できる。また、垂直配向状態に固定したディスコティック液晶及び水平配向状態に固定された棒状液晶をそれぞれ含む位相差層のReを、λ/4、3λ/4、λ/2等に調整することも、例えば膜厚の調整や、液晶の種類の選択などにより容易にできる。
また、位相差領域A及びBはそれぞれ、垂直配向状態に固定されたディスコティック液晶を含有する位相差層の2以上の積層体、及び水平配向状態に固定された棒状液晶を含有する位相差層の2以上の積層体であってもよい。また、液晶の種類、又は、液晶の配向状態が異なる位相差層の2以上の積層体では、位相差層間に強い密着性を保持した状態でRthを容易に調整できるので好ましい。例えば、ディスコティック液晶又は棒状液晶の所定の配向状態を固定してなる位相差層と、ディスコティック液晶の水平配向状態を固定してなる位相差層とを積層する態様では、Reにほとんど影響を与えずに、正にRthを調節でき、棒状液晶の垂直配向状態を固定してなる位相差層とを積層する態様では、Reにほとんど影響を与えずに、負にRthを調節できる。
1種の液晶組成物を用い、パターニング配向膜(ラビング配向膜に対するマスクラビング処理や光配向膜に対するマスク露光処理等により形成されるパターニング配向膜)等を利用して、その配向を制御することにより、Re(例えばReがλ/4)が互いに同一であり、且つ遅相軸の向きが互いに異なる(例えば直交する)領域を含むパターニング位相差層を形成することができる。しかし、この方法では、通常、Rthは一様になり、領域間で同一になるので、本発明の位相差板の位相差領域A及びBとするためには、Rthを調整する必要がある。例えば、一方の位相差領域のみに、ディスコティック液晶の水平配向状態を固定してなる位相差層を積層することで、Reに影響を与えずに、Rthを正に高め、位相差領域Bに求められる25nm≦Rthを満足する位相差領域とすることができる。また、一方の位相差領域のみに、棒状液晶の垂直配向状態を固定してなる位相差層を積層することで、Reに影響を与えずに、Rthを負に高め、位相差領域Aに求められるRth<25nmを満足する位相差領域とすることができる。
また、液晶の配向状態を固定してなる位相差の面内遅相軸は、液晶の配向を制御する配向膜の配向規制方向(例えば、ラビング配向膜ではラビング処理方向、光配向膜では光照射方向)等によって調整することができる。
液晶を所定の配向状態に固定してなる位相差層のReの波長分散性は、液晶の固有の性質から、順波長分散性になるのが一般的であり、従って、従来、液晶を利用して作製されたパターニング位相差板を利用すると、顔傾斜により色味変化が生じるという問題があった。本発明の位相差板は、たとえ液晶を利用して作製されていて、Reの波長分散性が順分散性であったとしても、顔傾斜による色味変化を軽減できるという特徴がある。
前記位相差板の作製に利用可能な棒状液晶性化合物については特に制限はない。棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。棒状液晶性化合物を重合によって配向を固定することがより好ましい。液晶性化合物には活性光線や電子線、熱などによって重合や架橋反応を起こしうる部分構造を有するものが好適に用いられる。その部分構造の個数は好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性棒状液晶性化合物としては、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、及び特開2001−328973号公報などに記載の化合物を用いることができる。
前記位相差板の作製に利用可能なディスコティック液晶性化合物については特に制限はない。ディスコティック液晶性化合物は、様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page 111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page 1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page 2655(1994))に記載されている。ディスコティック液晶性化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
ディスコティック液晶性化合物は、重合により固定可能なように、重合性基を有するのが好ましい。例えば、ディスコティック液晶性化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させた構造が考えられるが、但し、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に連結基を有する構造が好ましい。即ち、重合性基を有するディスコティック液晶性化合物は、下記式で表される化合物であることが好ましい。
D(−L−P)n
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Pは重合性基であり、nは1〜12の整数である。前記式中の円盤状コア(D)、二価の連結基(L)及び重合性基(P)の好ましい具体例は、それぞれ、特開2001−4837号公報に記載の(D1)〜(D15)、(L1)〜(L25)、(P1)〜(P18)であり、同公報に記載の内容を好ましく用いることができる。なお、液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、30〜300℃が好ましく、30〜170℃が更に好ましい。
下記式(I)で表わされるディスコティック液晶性化合物は、面内レターデーションの波長分散性が低く、高い面内レターデーションを発現可能であり、また特殊な配向膜や添加剤を使用しなくても高い平均傾斜角で均一性に優れた垂直配向を達成できるので、好ましい。更に該液晶性化合物を含有する塗布液は、その粘度が比較的低くなる傾向があり、塗布性が良好である点でも好ましい。
Figure 2012203212
式中、Y11、Y12及びY13は、それぞれ独立に置換されていてもよいメチン又は窒素原子を表し;L1、L2及びL3は、それぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表し;H1、H2及びH3は、それぞれ独立に一般式(I−A)又は(I−B)の基を表し;R1、R2及びR3は、それぞれ独立に下記一般式(I−R)を表す;
Figure 2012203212
一般式(I−A)中、YA1及びYA2は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し;XAは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;*は上記一般式(I)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し;**は上記一般式(I)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す;
Figure 2012203212
一般式(I−B)中、YB1及びYB2は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し;XBは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;*は上記一般式(I)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し;**は上記一般式(I)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す;
一般式(I−R)
*−(−L21−Q2n1−L22−L23−Q1
一般式(I−R)中、*は、一般式(I)におけるH1〜H3側と結合する位置を表す;L21は単結合又は二価の連結基を表す;Q2は少なくとも1種類の環状構造を有する二価の基(環状基)を表す;n1は、0〜4の整数を表す;L22は、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−S−、**−NH−、**−SO2−、**−CH2−、**−CH=CH−又は**−C≡C−を表す;L23は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−及び−C≡C−並びにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す;Q1は重合性基又は水素原子を表す。
前記式(I)で表される3置換ベンゼン系ディスコティック液晶化合物の各符号の好ましい範囲、及び前記式(I)の化合物の具体例については、特開2010−244038号公報の段落[0013]〜[0077]記載を参照することができる。但し、本発明に使用可能なディスコティック液晶化合物は、前記式(I)の3置換ベンゼン系ディスコティック液晶化合物に限定されるものではない。
トリフェニレン化合物としては、特開2007−108732号公報の段落[0062]〜[0067]記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、前記3置換ベンゼン又はトリフェニレン化合物とともに、下記一般式(II)(より好ましくは一般式(II’))で表されるピリジニウム化合物の少なくとも1種、及び下記一般式(III)で表されるトリアジン環基を含む化合物の少なくとも1種を含有させてもよい。前記ピリジニウム化合物の添加量は、ディスコティック液晶性化合物100質量部に対し、0.5〜3質量部であるのが好ましい。また、前記トリアジン環基を含む化合物の添加量は、ディスコティック液晶性化合物100質量部に対し、0.2〜0.4質量部であるのが好ましい。
Figure 2012203212
式中、L23及びL24はそれぞれ二価の連結基であり;R22は水素原子、無置換アミノ基、又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基であり;Xはアニオンであり;Y22及びY23はそれぞれ、置換されていてもよい5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基であり;Z21はハロゲン置換フェニル、ニトロ置換フェニル、シアノ置換フェニル、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が2〜20のアルキニル基、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基、炭素原子数が2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基および炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基からなる群より選ばれる一価の基であり;pは1〜10の数であり;並びにmは1又は2である。
Figure 2012203212
式中、R31、R32及びR33は、末端にCF3基を有するアルキル基又はアルコキシ基を表し、但し、アルキル基(アルコキシ基中のアルキル基も含む)中の隣接していない2以上の炭素原子は、酸素原子又は硫黄原子に置換されていてもよい;X31、X32及びX33は、アルキレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−、−SO2−及びそれらの群より選ばれる二価の連結基を少なくとも二つ組み合わせた基を表し;m31、m32及びm33はそれぞれ、1〜5の数である。上記式(III)中、R31、R32及びR33はそれぞれ、下記式で表される基であるのが好ましい。
−O(Cn2nn1O(Cm2mm1−Ck2k+1
式中、n及びmはそれぞれ1〜3であり、n1及びm1はそれぞれ1〜3であり、kは1〜10である。
Figure 2012203212
式(II’)中、式(II)と同一の符号は同一の意義であり;L25はL24と同義であり;R23、R24及びR25はそれぞれ、炭素原子数が1〜12のアルキル基を表し、n23は0〜4、n24は1〜4、及びn25は0〜4を表す。
る。
前記位相差板の作製に用いられる重合性液晶性組成物は、少なくとも1種以上含有しており、また、前記組成物とともに添加剤の1種以上を含有していてもよい。使用可能な添加剤の例として、空気界面配向制御剤、ハジキ防止剤、重合開始剤、重合性モノマー等について説明する。
空気界面配向制御剤:
前記組成物は、空気界面においては空気界面のチルト角で配向する。このチルト角は、液晶性組成物に含まれる液晶性化合物の種類や添加剤の種類等で、その程度が異なるため、目的に応じて空気界面のチルト角を任意に制御する必要がある。
前記チルト角の制御には、例えば、電場や磁場のような外場を用いることや添加剤を用いることができるが、添加剤を用いることが好ましい。このような添加剤としては、炭素原子数が6〜40の置換もしくは無置換脂肪族基、又は炭素原子数が6〜40の置換もしくは無置換脂肪族置換オリゴシロキサノキシ基を、分子内に1本以上有する化合物が好ましく、分子内に2本以上有する化合物が更に好ましい。例えば、空気界面配向制御剤としては、特開2002−20363号公報に記載の疎水性排除体積効果化合物を用いることができる。
また、特開2009−193046号公報等に記載のフルオロ脂肪族基含有ポリマーも同様な作用があるので空気界面配向制御剤として添加することができる。
空気界面側の配向制御用添加剤の添加量としては、前記組成物(塗布液の場合は固形分、以下同様である)に対して、0.001質量%〜20質量%が好ましく、0.01質量%〜10質量%が更に好ましく、0.1質量%〜5質量%がより更に好ましい。
ハジキ防止剤:
前記組成物に添加し、該組成物の塗布時のハジキを防止するための材料としては、一般に高分子化合物を好適に用いることができる。
使用するポリマーとしては、前記組成物の傾斜角変化や配向を著しく阻害しない限り、特に制限はない。
ポリマーの例としては、特開平8−95030号公報に記載があり、特に好ましい具体的ポリマー例としてはセルロースエステル類を挙げることができる。セルロースエステルの例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース及びセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。
前記組成物の配向を阻害しないように、ハジキ防止目的で使用されるポリマーの添加量は、前記組成物に対して一般に0.1〜10質量%の範囲にあり、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
重合開始剤:
前記組成物は、重合開始剤を含有しているのが好ましい。重合開始剤を含有する前記組成物を用いると、液晶相形成温度まで加熱した後、重合させ冷却することによって液晶状態の配向状態を固定化して、各位相差領域を形成することもできる。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応と電子線照射による重合反応が含まれるが、熱により支持体等が変形、変質するのを防ぐためにも、光重合反応又は電子線照射による重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)等が挙げられる。
光重合開始剤の使用量は、前記組成物の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
重合性モノマー:
前記組成物には、重合性のモノマーを添加してもよい。本発明で使用できる重合性モノマーとしては、併用される液晶化合物と相溶性を有し、液晶性組成物の配向阻害を著しく引き起こさない限り、特に限定はない。これらの中では重合活性なエチレン性不飽和基、例えばビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基などを有する化合物が好ましく用いられる。上記重合性モノマーの添加量は、併用される液晶化合物に対して一般に0.5〜50質量%の範囲にあり、1〜30質量%の範囲にあることが好ましい。また反応性官能基数が2以上のモノマーを用いると、配向膜との密着性を高める効果が期待できるため、特に好ましい。
前記組成物は、塗布液として調製してもよい。塗布液の調製に使用する溶剤としては、汎用の有機溶剤が好ましく用いられる。汎用の有機溶剤の例には、アミド系溶剤(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド系溶剤(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環系溶剤(例、ピリジン)、炭化水素系溶剤(例、トルエン、ヘキサン)、アルキルハライド系溶剤(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル系溶剤(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン系溶剤(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル系溶剤(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。エステル系溶剤及びケトン系溶剤が好ましく、特にケトン系溶剤が好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
前記位相差領域A及びBは、前記組成物を、配向状態とし、その配向状態を固定することで、作製することができる。以下に、製造方法の一例について説明するが、この方法に限定されるものではない。
まず、重合性液晶性化合物を少なくとも含有する組成物を支持体の表面上(配向膜を有する場合は配向膜表面)に塗布する。所望により加熱等して、所望の配向状態で配向させる。次に、重合反応等を進行させて、その状態を固定して、各位相差領域を形成する。この方法に用いられる前記組成物に添加可能な添加剤の例としては、前記した空気界面配向制御剤、ハジキ防止剤、重合開始剤、重合性モノマー等が挙げられる。
塗布は、公知の方法(例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により行うことができる。
均一に配向した状態を実現するためには、配向膜を利用するのが好ましい。配向膜は、ポリマー膜(例えば、ポリビニルアルコール膜及びイミド膜等)の表面をラビング処理することで形成されるものが好ましい。本発明に利用するのに好ましい配向膜の例には、特開2006−276203号公報の[0130]〜[0175]に記載のあるアクリル酸コポリマー又はメタクリル酸コポリマーの配向膜が含まれる。当該配向膜を利用すると、液晶化合物のゆらぎを抑制でき高コントラスト化が達成できるので好ましい。
次に、配向状態を固定するために、重合を実施するのが好ましい。前記組成物中に光重合開始剤を含有させ、光照射により重合を開始するのが好ましい。光照射には、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、10mJ/cm2〜50J/cm2であることが好ましく、50mJ/cm2〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。また、雰囲気の酸素濃度は重合度に関与するため、空気中で所望の重合度に達しない場合には、窒素置換等の方法により酸素濃度を低下させることが好ましい。好ましい酸素濃度としては、10%以下が好ましく、7%以下がさらに好ましく、3%以下がよりさらに好ましい。
本発明で配向状態が固定化された状態とは、その配向が保持された状態が最も典型的、且つ好ましい態様ではあるが、それだけには限定されず、具体的には、通常0℃〜50℃、より過酷な条件下では−30℃〜70℃の温度範囲において、該固定化された組成物に流動性が無く、また外場や外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向形態を安定に保ち続けることができる状態を指すものである。なお、配向状態が最終的に固定化され各位相差領域が形成された際に、前記組成物はもはや液晶性を示す必要はない。例えば、結果的に熱、光等による反応により重合又は架橋反応が進行し、高分子量化して、液晶性化合物が液晶性を失ってもよい。
前記位相差領域A及びBの厚さについては特に制限されないが、一般的には、0.1〜10μm程度であるのが好ましく、0.5〜5μm程度であるのがより好ましい。
前記位相差領域A及びBの形成には、配向膜を利用してもよく、配向膜としては、ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールを主成分とする膜の表面をラビング処理したもの等を利用することができる。また光配向膜を利用してもよい。
本態様の位相差板は、液晶組成物からなる位相差領域A及びBを支持するポリマーフィルムを有していてもよい。例えば、支持体として、Reが0〜50nm、0〜30nm、又は0〜10nmの低位相差のポリマーフィルムを用いてもよい。支持体として用いられるポリマーフィルムは、位相差領域A及びBのRe及びRthが所望の範囲である場合には、低位相差であるのが好ましく、位相差領域A及びBのRe又はRthが所望の範囲になっていない場合は、それを補うための位相差を有していてもよい。使用可能なポリマーフィルムの例は、位相差領域A及びBとして利用可能なポリマーフィルムの以下の例と同様である。
本発明の位相差板の位相差領域A及びBはそれぞれ、複屈折ポリマーフィルムからなっていてもよい。ポリマーフィルムの材料については、特に制限はない。種々のポリマーフィルム、例えば、セルロースアシレート(例えば、セルローストリアセテートフィルム、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム)、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ノルボルネン等の環状オレフィン系ポリマー、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーを混合したポリマー等が挙げられる。1種又は2種以上のポリマーを、主成分として用いることができる。市販品を用いても良く、環状オレフィン系ポリマーであるアートン(JSR社製)、非晶質ポリオレフィンであるゼオネックス(日本ゼオン社製))などを用いてもよい。このうちトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、環状オレフィン系ポリマーが好ましく、特にトリアセチルセルロースが好ましい。
上記複屈折ポリマーフィルムの中でも、ノルボルネン等の環状オレフィン系ポリマーは、Reの波長分散性が小さく、Reはほぼフラットな、波長分散性を示すことが知られている。従って、従来、ノルボルネン等の環状オレフィン系ポリマーを利用して作製されたパターニング位相差板を利用すると、顔傾斜により色味変化が生じるという問題があった。本発明の位相差板は、たとえノルボルネン等の環状オレフィン系ポリマー等のReの波長分散性がフラットな位相差板を利用しても、顔傾斜による色味変化を軽減できるという特徴がある。
前記複屈折ポリマーフィルム等の製造方法については特に制限はない。溶液製膜方法及び溶融製膜方法のいずれも利用することができる。所望の特性とするために、製膜後に延伸処理を行ってもよい。また、その上に、液晶組成物からなる位相差層を形成する場合は、ポリマーフィルムを表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理、鹸化処理)等してもよい。
前記複屈折ポリマーフィルムの厚みについては特に制限はないが、通常25μm〜1000μm程度のものが使用される。
(2)表面層
本発明の位相差板は、表面に、種々の機能の表面層を有していてもよい。目的に応じて必要な表面層を単独又は複数層設けてもよい。好ましい態様としては、前記位相差領域A及びBの上にハードコート層が積層された態様、前記位相差領域A及びBの上に反射防止層が積層された態様、前記位相差領域A及びBの上にハードコート層が積層され、その上に更に反射防止層が積層された態様、等が挙げられる。
[反射防止層]
反射防止層は、光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して設計された,少なくとも一層以上の層からなる層である。
反射防止層は、最も単純な構成では、フィルムの最表面に低屈折率層のみを塗設した構成である。更に反射率を低下させるには、屈折率の高い高屈折率層と、屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて反射防止層を構成することが好ましい。構成例としては、下側から順に、高屈折率層/低屈折率層の2層のものや、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(下層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているもの等があり、更に多くの反射防止層を積層するものも提案されている。中でも、耐久性、光学特性、コストや生産性等から、ハードコート層上に、中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層の順に有することが好ましく、例えば、特開平8−122504号公報、特開平8−110401号公報、特開平10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等に記載の構成が挙げられる。また、膜厚変動に対するロバスト性に優れる3層構成の反射防止フィルムは特開2008−262187号公報記載されている。上記3層構成の反射防止フィルムは、画像表示装置の表面に設置した場合、反射率の平均値を0.5%以下とすることができ、映り込みを著しく低減することができ、立体感に優れる画像を得ることができる。また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層、帯電防止性のハードコート層、防眩性のハードコート層としたもの(例、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報、特開2007−264113号公報等)等が挙げられる。
ハードコート層や反射防止層を有する場合の具体的な層構成の例を下記に示す。以下表記中−*/は表面層が積層される基材を表す。具体的には、−*/は、上述の前記位相差領域A及びBの支持体、前記位相差領域A及びB、支持体などを表す。
・−*/ハードコート層、
・−*/低屈折率層、
・−*/防眩層/低屈折率層
・−*/ハードコート層/低屈折率層、
・−*/ハードコート層/防眩層/低屈折率層
・−*/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
・−*/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
・−*/ハードコート層/防眩層/高屈折率層/低屈折率層
・−*/ハードコート層/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
・−*/防眩層/高屈折率層/低屈折率層
・−*/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
上記の各構成のなかでも、前記位相差領域A及びBの上にハードコート層、防眩層、反射防止層等の表面層を直接形成することが好ましい。また、前記位相差領域A及びBを含む光学フィルムと、別途、支持体上にハードコート層、防眩層、反射防止層等の層を設けた光学フィルムとを貼合積層して製造してもよい。
[ハードコート層]
保護部材に設ける表面フィルムには、フィルムの物理的強度を付与するために、ハードコート層を設けることができる。本発明においては、ハードコート層を設けなくてもよいが、ハードコート層を設けた方が鉛筆引掻き試験などの耐擦傷性面が強くなり、好ましい。
好ましくは、ハードコート層上に低屈折率層が設けられ、更に好ましくはハードコート層と低屈折率層の間に中屈折率層、高屈折率層が設けられ、反射防止フィルムを構成する。ハードコート層は、二層以上の積層から構成されてもよい。
本発明におけるハードコート層の屈折率は、反射防止性の表面フィルムを得るための光学設計から、屈折率が1.48〜2.00の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.48〜1.70である。
ハードコート層の膜厚は、表面フィルムに充分な耐久性、耐衝撃性を付与する観点から、通常0.5μm〜50μm程度とし、好ましくは1μm〜20μm、更に好ましくは5μm〜20μmである。
ハードコート層の強度は、鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。更に、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
ハードコート層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を透明支持体上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の重合性官能基を有する化合物が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基及び−C(O)OCH=CH2が好ましい。
電離放射線硬化性化合物の具体例としては、アルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、エチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類、エポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。
(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート系化合物類は市販されているものを用いることもでき、新中村化学工業(株)社製NKエステル A−TMMT、日本化薬(株)製KAYARAD DPHA等を挙げることができる。多官能モノマーについては、特開2009−98658号公報の段落[0114]〜[0122]に記載されており、本発明においても同様である。
電離放射線硬化性化合物としては、水素結合性の置換基を有する化合物であることが、支持体との密着性、低カール性の点から好ましい。水素結合性の置換基とは、窒素、酸素、硫黄、ハロゲンなどの電気陰性度が大きな原子と水素結合とが共有結合で結びついた置換基を指し、具体的にはOH−、SH−、−NH−、CHO−、CHN−などが挙げられ、ウレタン(メタ)アクリレート類や水酸基を有する(メタ)アクリレート類が好ましい。市販されている化合物を用いることもでき、新中村化学工業(株)社製NKオリゴ U4HA、同NKエステルA−TMM−3、日本化薬(株)製KAYARAD PET−30等を挙げることができる。
ハードコート層には、内部散乱性付与の目的で、平均粒径が1.0〜10.0μm、好ましくは1.5〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子又は樹脂粒子を含有してもよい。
ハードコート層のバインダーには、ハードコート層の屈折率を制御する目的で、各種屈折率モノマー又は無機粒子、或いは両者を加えることができる。無機粒子には屈折率を制御する効果に加えて、架橋反応による硬化収縮を抑える効果もある。本発明では、ハードコート層形成後において、前記多官能モノマー及び/又は高屈折率モノマー等が重合して生成した重合体、その中に分散された無機粒子を含んでバインダーと称する。
[防眩層]
防眩層は、表面散乱による防眩性と、好ましくは表面フィルムの硬度、耐擦傷性を向上するためのハードコート性をフィルムに寄与する目的で形成される。
防眩層については特開2009−98658号公報の段落[0178]〜[0189]に記載されており、本発明においても同様である。
[高屈折率層及び中屈折率層]
高屈折率層の屈折率は、1.70〜1.74であることが好ましく、1.71〜1.73であることがより好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整される。中屈折率層の屈折率は、1.60〜1.64であることが好ましく、1.61〜1.63であることが更に好ましい。
高屈折率層及び中屈折率層の形成方法は化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、特に物理蒸着法の一種である真空蒸着法やスパッタ法により、無機物酸化物の透明薄膜を用いることもできるが、オールウェット塗布による方法が好ましい。
上記中屈折率層は、上記高屈折率層と屈折率を異ならせた以外は同様の材料を用いて同様に調整できるので、以下、特に高屈折率層について説明する。
上記高屈折率層は、無機微粒子、3官能以上の重合性基を有する硬化性化合物(以下、「バインダー」と称する場合もある)、溶媒及び重合開始剤を含有する塗布組成物を塗布し、溶媒を乾燥させた後、加熱、電離放射線照射あるいは両手段の併用により硬化して形成されたものであるのが好ましい。硬化性化合物や開始剤を用いる場合は、塗布後に熱及び/又は電離放射線による重合反応により硬化性化合物を硬化させることで、耐傷性や密着性に優れる中屈折率層や高屈折率層が形成できる。
[低屈折率層]
本発明における低屈折率層は、屈折率が1.30〜1.47であることが好ましい。表面フィルムが多層薄膜干渉型の反射防止フィルム(中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層)の場合の低屈折率層の屈折率は1.33〜1.38であることが望ましく、更に望ましくは1.35〜1.37が望ましい。上記範囲内とすることで反射率を抑え、膜強度を維持することができ、好ましい。低屈折率層の形成方法も化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、特に物理蒸着法の一種である真空蒸着法やスパッタ法により、無機物酸化物の透明薄膜を用いることもできるが、低屈折率層用組成物を用いてオールウェット塗布による方法を用いることが好ましい。
低屈折率層は、含フッ素硬化性ポリマー、含フッ素硬化性モノマー、非含フッ素硬化性モノマー、低屈折率粒子などを構成成分として形成することができる。これら化合物は、特開2010−152311号公報[0018]〜[0168]段落に記載のものを用いることができる。
低屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましく、2%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが最も好ましい。
低屈折率層まで形成した反射防止フィルムの強度は、500g荷重の鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
また、反射防止フィルムの防汚性能を改良するために、表面の水に対する接触角が95゜以上であることが好ましい。更に好ましくは102゜以上である。特に、接触角が105°以上であると、指紋に対する防汚性能が著しく良化するため、特に好ましい。また、水の接触角が102°以上で、かつ、表面自由エネルギーが25dyne/cm以下であることがより好ましく、23dyne/cm以下であることが特に好ましく、20dyne/cm以下であることが更に好ましい。最も好ましくは、水の接触角が105°以上で、かつ、表面自由エネルギーが20dyne/cm以下である。
(3)紫外線吸収剤
本発明の位相差板は、紫外線吸収剤を含有しているのが好ましい。位相差板を構成している少なくとも1つの層が、紫外線吸収剤を含有しているのが好ましい。例えば、透明支持体、前記位相差領域A及びB、反射防止層、又はそれらを接着する接着剤を有する態様では、これらのいずれかに紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。また、表面フィルムのハードコート層及び/又は反射防止層には、紫外線吸収剤を含有させることができる。紫外線吸収剤としては、紫外線吸収性を発現できるもので、公知のものがいずれも使用できる。そのような紫外線吸収剤のうち、紫外線吸収性が高く、電子画像表示装置で用いられる紫外線吸収能(紫外線カット能)を得るためにベンゾトリアゾール系又はヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤が好ましい。また、紫外線の吸収幅を広くするために、最大吸収波長の異なる紫外線吸収剤を2種以上併用することができる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−tert−ブチル−3′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−ニトロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−ter―ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、ベンゼンプロパン酸−3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1、1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−,C7〜9−ブランチ直鎖アルキルエステル、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール等が挙げられる。
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチルオキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アセトキシエトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシ−5,5′−ジスルホベンゾフェノン・2ナトリウム塩等が挙げられる。
紫外線吸収剤の含有量は、求める紫外線透過率や紫外線吸収剤の吸光度にもよるが、前記紫外線硬化型樹脂100質量部に対して、通常20質量部以下、好ましくは1〜20質量部である。紫外線吸収剤の含有量が20質量部よりも多い場合には、硬化性組成物の紫外線による硬化性が低下する傾向があると共に、光学フィルムの可視光線透過率が低下するおそれもある。一方、1質量部より少ない場合には、光学フィルムの紫外線吸収性を十分に発揮することができなくなる。
(4)3D画像表示システム用偏光板(第2の偏光板)
本発明の3D表示システムでは、特に3D映像とよばれる立体画像を視認者に認識させるため、偏光板を通して画像を認識する。偏光板の一態様は、偏光眼鏡である。前記位相差板によって右眼用及び左眼用の円偏光画像を形成する態様では、円偏光眼鏡が用いられ、直線偏光画像を形成する態様では、直線眼鏡が用いられる。位相差板の位相差領域A及びBのいずれか一方から出射された右眼用画像光が右眼鏡を透過し、且つ左眼鏡で遮光され、前記第1及び第2の位相差領域の他方から出射された左眼用画像光が左眼鏡を透過し、且つ右眼鏡で遮光されるように構成されていることが好ましい。
前記偏光眼鏡は、位相差機能層と直線偏光子を含むことで偏光眼鏡を形成している。なお、直線偏光子と同等の機能を有するその他の部材を用いてもよい。
偏光眼鏡を含め、本発明の3D用画像表示システムの具体的な構成について説明する。まず、光学フィルムは、映像表示パネルの交互に繰り返されている複数の第一ライン上と複数の第二ライン上(例えば、ラインが水平方向であれば水平方向の奇数ライン上と偶数ライン上であり、ラインが垂直方向であれば垂直方向の奇数ライン上と偶数ライン上でもよい)に偏光変換機能が異なる前記第1の位相差領域と前記第2の位相差領域が設けられている。円偏光を表示に利用する場合には、上述の前記第1の位相差領域と前記第2の位相差領域の位相差は、ともにλ/4であることが好ましく、前記第1の位相差領域と前記第2の位相差領域は遅相軸が直交していることがより好ましい。
円偏光を利用する場合、前記第1の位相差領域と前記第2の位相差領域の位相差値をともにλ/4とし、映像表示パネルの奇数ラインに右眼用画像を表示し、奇数ライン位相差領域の遅相軸が45度方向であるならば、偏光眼鏡の右眼鏡と左眼鏡にともにλ/4板を配置することが好ましく、偏光眼鏡の右眼鏡のλ/4板の遅相軸は具体的には略45度に固定すればよい。また、上記の状況であれば、同様に、映像表示パネルの偶数ラインに左眼用画像を表示し、偶数ライン位相差領域の遅相軸が135度方向であるならば、偏光眼鏡の左眼鏡の遅相軸は具体的には略135度に固定すればよい。
更に、一度前記パターニング位相差フィルムにおいて円偏光として画像光を出射し、偏光眼鏡により偏光状態を元に戻す観点からは、上記の例の場合の右眼鏡の固定する遅相軸の角度は正確に水平方向45度に近いほど好ましい。また、左眼鏡の固定する遅相軸の角度は正確に水平135度(又は−45度)に近いほど好ましい。
また、例えば前記映像表示パネルが液晶表示パネルである場合、液晶表示パネルのフロント側偏光板の吸収軸方向が通常、水平方向であり、前記偏光眼鏡の直線偏光子の吸収軸が該フロント側偏光板の吸収軸方向に直交する方向であることが好ましく、前記偏光眼鏡の直線偏光子の吸収軸は鉛直方向であることがより好ましい。
また、前記液晶表示パネルのフロント側偏光板の吸収軸方向と、前記パターニング位相差フィルムの奇数ライン位相差領域と偶数ライン位相差領域の各遅相軸は、偏光変換の効率上、45度をなすことが好ましい。
なお、このような偏光眼鏡と、パターニング位相差フィルム及び液晶表示装置の好ましい配置については、例えば特開2004−170693号公報に開示がある。
偏光眼鏡の例としては、特開2004−170693号公報に記載のものや、市販品として、Zalman製 ZM−M220Wの付属品やHyundai製 W220Sの付属品を挙げることができる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
パターニング位相差フィルム1の作製:
《セルロースアシレートフィルムT1の作製》
(セルロースアシレートの調製)
アセチル置換度2.94のセルロースアシレートを調製した。触媒としての硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)とカルボン酸無水物との混合物を−20℃に冷却してからパルプ由来のセルロースに添加し、40℃でアシル化を行った。この時、カルボン酸無水物の種類及びその量を調整することで、アシル基の種類及びその置換比を調整した。またアシル化後に40℃で熟成を行って全置換度を調整した。
(セルロースアシレート溶液の調製)
1)セルロースアシレート
調製したセルロースアシレートを120℃に加熱して乾燥し、含水率を0.5質量%以下とした後、30質量部を溶媒と混合させた。
2)溶媒
ジクロロメタン/メタノール/ブタノール(81/15/4質量部)を溶媒として用いた。なお、これらの溶媒の含水率は、いずれも0.2質量%以下であった。
3)添加剤
全ての溶液調製に際し、トリメチロールプロパントリアセテート0.9質量部を添加した。また、全ての溶液調製に際し、二酸化ケイ素微粒子(粒径20nm、モース硬度 約7)0.25質量部を添加した。
4)膨潤、溶解
攪拌羽根を有し外周を冷却水が循環する400リットルのステンレス製溶解タンクに、上記溶媒、添加剤に加え、下記UV吸収剤Aを1.2%、下記Rth低減剤Bを11%投入して撹拌、分散させながら、上記セルロースアシレートを徐々に添加した。投入完了後、室温にて2時間撹拌し、3時間膨潤させた後に再度撹拌を実施し、セルロースアシレート溶液を得た。
なお、攪拌には、15m/sec(剪断応力5×104kgf/m/sec2)の周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌軸及び中心軸にアンカー翼を有して周速1m/sec(剪断応力1×104kgf/m/sec2)で攪拌する攪拌軸を用いた。膨潤は、高速攪拌軸を停止し、アンカー翼を有する攪拌軸の周速を0.5m/secとして実施した。
Figure 2012203212
5)ろ過
上記で得られたセルロースアシレート溶液を、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(#63、東洋濾紙(株)製)で濾過し、更に絶対濾過精度2.5μmの濾紙(FH025、ポール社製)にて濾過してセルロースアシレート溶液を得た。
(セルロースアシレートフィルムの作製)
上記セルロースアシレート溶液を30℃に加温し、流延ギーサー(特開平11−314233号公報に記載)を通して15℃に設定したバンド長60mの鏡面ステンレス支持体上に流延した。流延スピードは15m/分、塗布幅は200cmとした。流延部全体の空間温度は、15℃に設定した。そして、流延部から50cm手前で、流延して回転してきたセルロースアシレートフィルムをバンドから剥ぎ取り、45℃の乾燥風を送風した。次に110℃で5分、更に140℃で10分乾燥して、セルロースアシレートフィルムT1を得た。
得られたセルロースアシレートフィルムT1のRe(550)は0nm、Rth(550)は−1nmであった。ここで、Re(550)及びRth(550)は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
(パターニング位相差層の形成)
Re(550)が138nmであり、且つ遅相軸の向きが、282μm周期で0度、90度となるように、下記の棒状液晶性化合物(RLC)と円盤状液晶性化合物(DLC)をそれぞれ交互にパターニングした位相差層をガラス基板上に作製した。DLCの円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、DLCがフィルム面に対して垂直に配向していることを確認した。またRLCの長軸のフィルム面に対する平均傾斜角は0°であり、RLCがフィルム面に対して水平に配向していることを確認した。形成した位相差層の状態を調べ、塗布ムラ(塗布液が配向膜にはじかれて生じたムラ)や配向の乱れがないことを確認した。これをセルロースアシレートフィルムT1上に転写して、パターニング位相差フィルム1を作製した。また位相差フィルム全体のRth(550)は、RLC塗工部が70nm(即ち位相差領域B)、DLC塗工部が−45nm(即ち位相差領域A)であった。位相差フィルム全体のRe波長分散は、RLC塗工部もDLC塗工部も順分散であった。ここで、Re(550)及びRth(550)、Re波長分散は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
Figure 2012203212
Figure 2012203212
(表面層(反射防止層)の形成)
(ハードコート層用塗布液の調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用塗布液(固形分濃度58質量%)とした。
溶剤
酢酸メチル 36.2質量部
メチルエチルケトン 36.2質量部
(a)モノマー:PETA 77.0質量部
(b)モノマー:ウレタンモノマー 20.0質量部
光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
3.0質量部
レベリング剤(SP−13) 0.02質量部
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
PETA:新中村化学工業(株)製、下記構造の化合物。質量平均分子量は325で、1分子中の官能基の数は3.5(平均値)。
Figure 2012203212
ウレタンモノマー:下記構造の化合物。質量平均分子量は596で、1分子中の官能基の数は4。
Figure 2012203212
Figure 2012203212
(低屈折率層用塗布液の調製)
各成分を下記のように混合し、MEK/MMPG−ACの85/15混合物(質量比)に溶解して固形分5質量%の低屈折率層塗布液を調製した。
低屈折率層塗布液の組成
下記のパーフルオロオレフィン共重合体 15質量部
DPHA 7質量部
ディフェンサMCF−323 5質量部
下記の含フッ素重合性化合物 20質量部
中空シリカ粒子固形分として 50質量部
イルガキュア127 3質量部
使用した化合物を以下に示す。
Figure 2012203212
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、日本化薬(株)製
ディフェンサMCF−323:フッ素系界面活性剤、大日本インキ化学工業(株)製
イルガキュア127:光重合開始剤、チバ・ジャパン(株)製
中空シリカ:中空シリカ粒子分散液(平均粒子サイズ45nm、屈折率1.25、表面をアクリロイル基を有するシランカップリング剤で表面処理、MEK分散液濃度20%)
MEK:メチルエチルケトン
MMPG−Ac:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(ハードコート層及び低屈折率層の形成)
パターニング位相差フィルム1の液晶性化合物を含む層を塗設していない側の支持体表面上に、前記ハードコート層用塗布液をダイコーターを用いて塗布した(固形分塗布量:12g/m2)。100℃で60秒乾燥した後、酸素濃度が0.1体積%の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量150mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、ハードコート層付き光学フィルムを作製した。このハードコート層の上に、上記低屈折率層用塗布液を塗布した。低屈折率層の乾燥条件は70℃、60秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm2、照射量300mJ/cm2の照射量とした。低屈折率層の屈折率は1.34、膜厚は95nmであった。
パターニング位相差フィルム2の作製:
《セルロースアシレートフィルムT2の作製》
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、固形分濃度22質量%のセルロースアセテート溶液(ドープA)を調製した。
(セルロースアセテート溶液組成)
酢化度60.7〜61.1%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
紫外線吸収剤(チヌビン328 チバ・ジャパン製) 1.8質量部
紫外線吸収剤(チヌビン326 チバ・ジャパン製) 0.4質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 336質量部
メタノール(第2溶媒) 29質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 11質量部
上記ドープAに平均粒径16nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)をセルロースアセテート100質量部に対して0.02質量添加したマット剤入りドープBを調製した。ドープAと同じ溶剤組成で固形分濃度が19質量%になるように調節した。
ドープAを主流とし、マット剤入りドープBを最下層及び最上層になるようにして、バンド延伸機を用いて流延した。バンド上での膜面温度が40℃となってから、70℃の温風で1分乾燥し、バンドからフィルムをはがし140℃の乾燥風で10分乾燥し、残留溶剤量が0.3質量%のセルロースアシレートフィルムT2を作製した。マット剤入りの最下層及び最上層はそれぞれ3μmに、主流は37μmになるように流量を調節した。
得られた長尺状のセルロースアシレートフィルムT2の幅は2300mmであり、厚さは43μmであった。また、面内レターデーションRe(550)は1nm、厚み方向のレターデーションRth(550)は20nmであった。ここで、Re(550)及びRth(550)は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
(パターニング位相差層および表面層(反射防止層)の形成)
パターニング位相差フィルム1の製造において、セルロースアシレートフィルムT1をセルロースアシレートフィルムT2に変更した以外はパターニング位相差フィルム1の製造方法と同様にしてパターニング位相差フィルム2を作製した。位相差フィルム全体のRth(550)は、RLC塗工部が90nm(即ち位相差領域B)、DLC塗工部が−25nm(即ち位相差領域A)であった。位相差フィルム全体のRe波長分散は、RLC塗工部もDLC塗工部も順分散であった。ここで、Re(550)及びRth(550)、Re波長分散は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
パターニング位相差フィルム3の作製:
《セルロースアシレートフィルムT3の作製》
セルロースアシレートフィルムT1の作製において、原料となるセルロースを全置換度2.97(内訳:アセチル置換度0.45、プロピオニル置換度2.52)のものに変更し、前記UV吸収剤Aの添加量を3.0%に変更し、前記Rth低減剤Bを添加しなかった以外は、セルロースアシレートフィルムT1の製造方法と同様にしてセルロースアシレートフィルムT3を作製した。
得られた長尺状のセルロースアシレートフィルムT3の面内レターデーションRe(550)は1nm、厚み方向のレターデーションRth(550)は−45nmであった。ここで、Re(550)及びRth(550)は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
(パターニング位相差層および表面層(反射防止層)の形成)
パターニング位相差フィルム1の製造において、セルロースアシレートフィルムT1をセルロースアシレートフィルムT3に変更した以外はパターニング位相差フィルム1の製造方法と同様にしてパターニング位相差フィルム3を作製した。位相差フィルム全体のRth(550)は、RLC塗工部が25nm(即ち位相差領域B)、DLC塗工部が−90nm(即ち位相差領域A)であった。位相差フィルム全体のRe波長分散は、RLC塗工部もDLC塗工部も順分散であった。ここで、Re(550)及びRth(550)、Re波長分散は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
パターニング位相差フィルム4の作製:
《セルロースアシレートフィルムT7の作製》
セルロースアシレートフィルムT3の作製において、厚みを変更した以外は、セルロースアシレートフィルムT3の製造方法と同様にしてセルロースアシレートフィルムT7を作製した。
得られた長尺状のセルロースアシレートフィルムT7の面内レターデーションRe(550)は1nm、厚み方向のレターデーションRth(550)は−20nmであった。ここで、Re(550)及びRth(550)は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
パターニング位相差フィルム1の製造において、セルロースアシレートフィルムT1をセルロースアシレートフィルムT7に変更した以外はパターニング位相差フィルム1の製造方法と同様にしてパターニング位相差フィルム4Aを作製した。位相差フィルム全体のRth(550)は、RLC塗工部が50nm(即ち位相差領域B)、DLC塗工部が−65nm(即ち位相差領域A)であった。位相差フィルム全体のRe波長分散は、RLC塗工部もDLC塗工部も順分散であった。ここで、Re(550)及びRth(550)、Re波長分散は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
続いて、ガラス基板上に、円盤状液晶性化合物(DLC)の塗工層と非塗工層とが、282μm周期で交互にパターニングされた位相差層を作製した。DLCの円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は0°であり、ディスコティック液晶がフィルム面に対して水平に配向していることを確認した。形成した位相差層の状態を調べ、塗布ムラ(塗布液が配向膜にはじかれて生じたムラ)や配向の乱れがないことを確認した。続いて、作製したDLC水平配向層をパターニング位相差フィルム4Aの塗工層側に転写し、パターニング位相差フィルム4を作製した。ここで、パターニング位相差フィルム4AのRLC塗工部上に水平配向DLC塗工層が、パターニング位相差フィルム4AのDLC塗工部上に前記DLC水平配向層の非塗工層が配置されるように調整した。位相差フィルム全体のRth(550)は、RLC塗工部が65nm(即ち位相差領域B)、DLC塗工部が−65nm(即ち位相差領域A)であった。位相差フィルム全体のRe波長分散は、RLC塗工部もDLC塗工部も順分散であった。ここで、Re(550)及びRth(550)、Re波長分散は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
パターニング位相差フィルム5の作製:
パターニング位相差フィルム4の製造において、セルロースアシレートフィルムT7をセルロースアシレートフィルムT1に変更し、さらに水平配向DLC層の厚みを4.0倍にした以外はパターニング位相差フィルム4の製造方法と同様にしてパターニング位相差フィルム5を作製した。位相差フィルム全体のRth(550)は、RLC塗工部が110nm(即ち位相差領域B)、DLC塗工部が−45nm(即ち位相差領域A)であった。位相差フィルム全体のRe波長分散は、RLC塗工部もDLC塗工部も順分散であった。ここで、Re(550)及びRth(550)、Re波長分散は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
パターニング位相差フィルム6の作製:
(パターニング位相差フィルム6Aの作製)
Re(550)が138nmであり、且つ遅相軸の向きが、282μm周期で0度、90度となるように、前記RLCと前記DLCを交互にパターニングした位相差層を、ガラス基板上に作製した。DLCの円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、DLCがフィルム面に対して垂直に配向していることを確認した。また、RLCの長軸のフィルム面に対する平均傾斜角は0°であり、RLCがフィルム面に対して水平に配向していることを確認した。形成した位相差層の状態を調べ、塗布ムラ(塗布液が配向膜にはじかれて生じたムラ)や配向の乱れがないことを確認した。これをセルロースアシレートフィルムT1上に転写して、パターニング位相差フィルム6Aを作製した。また位相差フィルム全体のRth(550)は、RLC塗工部が70nm(即ち位相差領域B)、DLC塗工部が−45nm(即ち位相差領域A)であった。位相差フィルム全体のRe波長分散は、RLC塗工部もDLC塗工部も順分散であった。ここで、Re(550)及びRth(550)、Re波長分散は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
(表面層(反射防止層)付き光学フィルム6Bの作製)
(ハードコート層用塗布液の調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用塗布液(固形分濃度58質量%)とした。
溶剤
酢酸メチル 36.2質量部
メチルエチルケトン 36.2質量部
(a)モノマー:PETA 77.0質量部
(b)モノマー:ウレタンモノマー 20.0質量部
光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
3.0質量部
レベリング剤(SP−13) 0.02質量部
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
PETA:新中村化学工業(株)製、下記構造の化合物。質量平均分子量は325で、1分子中の官能基の数は3.5(平均値)。
Figure 2012203212
ウレタンモノマー:下記構造の化合物。質量平均分子量は596で、1分子中の官能基の数は4。
Figure 2012203212
Figure 2012203212
(低屈折率層用塗布液の調製)
各成分を下記のように混合し、MEK/MMPG−ACの85/15混合物(質量比)に溶解して固形分5質量%の低屈折率層塗布液を調製した。
低屈折率層塗布液の組成
下記のパーフルオロオレフィン共重合体 15質量部
DPHA 7質量部
ディフェンサMCF−323 5質量部
下記の含フッ素重合性化合物 20質量部
中空シリカ粒子固形分として 50質量部
イルガキュア127 3質量部
使用した化合物を以下に示す。
Figure 2012203212
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、日本化薬(株)製
ディフェンサMCF−323:フッ素系界面活性剤、大日本インキ化学工業(株)製
イルガキュア127:光重合開始剤、チバ・ジャパン(株)製
中空シリカ:中空シリカ粒子分散液(平均粒子サイズ45nm、屈折率1.25、表面をアクリロイル基を有するシランカップリング剤で表面処理、MEK分散液濃度20%)
MEK:メチルエチルケトン
MMPG−Ac:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(ハードコート層及び低屈折率層の形成)
セルロースアシレートフィルムT1上に、前記ハードコート層用塗布液をダイコーターを用いて塗布した(固形分塗布量:12g/m2)。100℃で60秒乾燥した後、酸素濃度が0.1体積%の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量150mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、ハードコート層付き光学フィルムを作製した。このハードコート層の上に、上記低屈折率層用塗布液を塗布し、表面層(反射防止層)付き光学フィルム6Bとして使用した。低屈折率層の乾燥条件は70℃、60秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm2、照射量300mJ/cm2の照射量とした。低屈折率層の屈折率は1.34、膜厚は95nmであった。得られた表面層(反射防止層)付き光学フィルム6BのRe(550)は−1nm、Rth(550)は−1nmであった。ここで、Re(550)及びRth(550)は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
(パターニング位相差フィルム6の作製)
パターニング位相差フィルム6Aの支持体層側に易接着層を介して表面層(反射防止層)付き光学フィルム6Bの支持体面を貼合し、パターニング位相差フィルム6を作製した。
パターニング位相差フィルム7の作製:
(パターニング位相差フィルム7Aの作製)
パターニング位相差フィルム6Aの製造において、セルロースアシレートフィルムT1をセルロースアシレートフィルムT7に変更した以外はパターニング位相差フィルム6Aの製造方法と同様にしてパターニング位相差フィルム7Aを作製した。位相差フィルム全体のRth(550)は、RLC塗工部が50nm(即ち位相差領域B)、DLC塗工部が−65nm(即ち位相差領域A)であった。位相差フィルム全体のRe波長分散は、RLC塗工部もDLC塗工部も順分散であった。ここで、Re(550)及びRth(550)、Re波長分散は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
(表面層(反射防止層)付き光学フィルム7Bの作製)
表面層(反射防止層)付き光学フィルム6Bの製造において、セルロースアシレートフィルムT1を「TD80UL」(富士フイルム社製)に変更した以外は表面層(反射防止層)付き光学フィルム6Bの製造方法と同様にして表面層(反射防止層)付き光学フィルム7Bを作製した。
(パターニング位相差フィルム7の作製)
パターニング位相差フィルム7Aの支持体層側に易接着層を介して表面層(反射防止層)付き光学フィルム7Bの支持体面を貼合し、パターニング位相差フィルム7を作製した。位相差フィルム全体のRth(550)は、RLC塗工部が90nm(即ち位相差領域B)、DLC塗工部が−25nm(即ち位相差領域A)であった。位相差フィルム全体のRe波長分散は、RLC塗工部もDLC塗工部も順分散であった。ここで、Re(550)及びRth(550)、Re波長分散は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
パターニング位相差フィルム8の作製:
《セルロースアシレートフィルムT4の作製》
室温において、平均酢化度59.7%のセルロースアセテート120質量部、トリフェニルホスフェート9.36質量部、ビフェニルジフェニルホスフェート4.68質量部、レターデーション上昇剤(A)1.00質量部、メチレンクロリド543.14質量部、メタノール99.35質量部及びn−ブタノール19.87質量部を混合して、溶液(ドープ)を調製した。
得られたドープを、ガラス板上に流延し、室温で1分間乾燥後、45℃で5分間乾燥させた。乾燥後の溶剤残留量は30質量%であった。セルロースアシレートフィルムをガラス板から剥離し、120℃で10分間乾燥した。フィルムを適当な大きさに切断した後、130℃で流延方向とは平行な方向に延伸した。延伸方向と垂直な方向は、自由に収縮できるようにした。延伸後、そのままの状態で120℃で30分間乾燥した後、延伸フィルムを取り出した。延伸後の溶剤残留量は0.1質量%であった。この様にしてセルロースアシレートフィルムT4を得た。得られたフィルムの厚さは97μm、Re(550)は138nm、Rth(550)は85nmであった。ここで、Re(550)及びRth(550)は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。また、延伸倍率は42%であった。
(パターニング位相差フィルム8の作製)
ガラス基板上に、Re(550)=275nm、遅相軸の向きが90度の前記円盤状液晶性化合物(DLC)の塗工部と未塗工部とを、282μm周期で交互にパターニングした位相差層をガラス基板上に作製した。DLCの円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、DLCがフィルム面に対して垂直に配向していることを確認した。形成した位相差層の状態を調べ、塗布ムラ(塗布液が配向膜にはじかれて生じたムラ)や配向の乱れがないことを確認した。これをセルロースアシレートフィルムT4上に転写して、Re(550)=138nm、遅相軸の向きが282μm周期で0度、90度で交互にパターニングされたパターニング位相差フィルム8を作製した。さらに、パターニング位相差フィルム1と同様の手順で表面層(反射防止層)を形成した。位相差フィルム全体のRth(550)は、DLC塗工部が−25nm(即ち位相差領域A)、DLC未塗工部が85nm(即ち位相差領域B)であった。位相差フィルム全体のRe波長分散は、DLC塗工部が順分散、DLC未塗工部が逆分散であった。ここで、Re(550)及びRth(550)、Re波長分散は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
パターニング位相差フィルム9の作製:
《ノルボルネン系フィルムN1の作製》
市販のノルボルネン系ポリマーフィルム「ZEONOR ZF14」((株)オプテス製)を、温度156℃にて、延伸倍率45%で自由端一軸延伸を行いうことで、ノルボルネン系フィルムN1を作製した。ノルボルネン系フィルムN1のRe(550)は138nm、Rth(550)は85nmであった。ここで、Re(550)及びRth(550)は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
(パターニング位相差フィルム9Aの作製)
ガラス基板上に、Re(550)が275nmであり、且つ遅相軸の向きが90度の前記円盤状液晶性化合物(DLC)の塗工部と未塗工部とを、282μm周期で交互にパターニングした位相差層をガラス基板上に作製した。DLCの円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、DLCがフィルム面に対して垂直に配向していることを確認した。形成した位相差層の状態を調べ、塗布ムラ(塗布液が配向膜にはじかれて生じたムラ)や配向の乱れがないことを確認した。これをノルボルネン系フィルムN1上に転写して、Re(550)=138nm、遅相軸の向きが282μm周期で0度、90度で交互にパターニングされたパターニング位相差フィルム9Aを作製した。
(パターニング位相差フィルム9の作製)
パターニング位相差フィルム1の作製に使用した表面層をガラス基板上に作製した後、表面層を剥離し、接着剤でパターニング位相差フィルム9Aの塗工層がない側に貼合しパターニング位相差フィルム9を作製した。また位相差フィルム全体のRth(550)は、DLC塗工部が−25nm(即ち位相差領域A)、DLC未塗工部が85nm(即ち位相差領域B)であった。位相差フィルム全体のRe波長分散は、DLC塗工部が順分散、DLC未塗工部がフラット分散であった。ここで、Re(550)及びRth(550)、Re波長分散は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
パターニング位相差フィルム10の作製:
(パターニング位相差フィルム10の作製)
パターニング位相差フィルム9Aの塗工層がない側に易接着層を介して表面層(反射防止層)付き光学フィルム6Bの支持体面を貼合し、パターニング位相差フィルム10を作製した。位相差フィルム全体のRth(550)は、DLC塗工部が−25nm(即ち位相差領域A)、DLC未塗工部が85nm(即ち位相差領域B)であった。位相差フィルム全体のRe波長分散は、DLC塗工部が順分散、DLC未塗工部がフラット分散であった。ここで、Re(550)及びRth(550)、Re波長分散は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
パターニング位相差フィルム11の作製:
(パターニング位相差フィルム11の作製)
Re(550)が138nmであり、且つ遅相軸の向きが、282μm周期で0度、90度となるように、前記円盤状液晶性化合物(DLC)を交互にパターニングした位相差層をガラス基板上に作製した。DLCの円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、DLCがフィルム面に対して垂直に配向していることを確認した。形成した位相差層の状態を調べ、塗布ムラ(塗布液が配向膜にはじかれて生じたムラ)や配向の乱れがないことを確認した。これを「TD80UL」(富士フイルム社製)上に転写して、パターニング位相差フィルム11を作製した。さらに、パターニング位相差フィルム1と同様の手順で表面層(反射防止層)の形成した。位相差フィルム全体のRth(550)は、いずれの領域でも−5nmであった。位相差フィルム全体のRe波長分散は、いずれの領域でも順分散であった。ここで、Re(550)及びRth(550)、Re波長分散は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
パターニング位相差フィルム12の作製:
(パターニング位相差フィルム12の作製)
パターニング位相差フィルム11の製造において、前記円盤状液晶性化合物(DLC)を前記棒状液晶性化合物(RLC)に、「TD80UL」(富士フイルム社製)をセルロースアシレートフィルムT1に変更した以外はパターニング位相差フィルム11の製造方法と同様にしてパターニング位相差フィルム12を作製した。位相差フィルム全体のRth(550)は、いずれの領域でも70nmであった。位相差フィルム全体のRe波長分散は、いずれの領域でも順分散であった。ここで、Re(550)及びRth(550)、Re波長分散は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
パターニング位相差フィルム13の作製:
《セルロースアシレートフィルムT6の作製》
セルロースアシレートフィルムT3の作製において、主流の厚みを調節した以外は。セルロースアシレートフィルムT3の製造方法と同様にしてセルロースアシレートフィルムT6を作製した。面内レターデーションRe(550)は0nm、厚み方向のレターデーションRth(550)は−25nmであった。ここで、Re(550)及びRth(550)は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
(パターニング位相差フィルム13の作製)
パターニング位相差フィルム12の製造において、セルロースアシレートフィルムT1をセルロースアシレートフィルムT6に変更した以外はパターニング位相差フィルム12の製造方法と同様にしてパターニング位相差フィルム13を作製した。位相差フィルム全体のRth(550)は、いずれの領域でも45nmであった。位相差フィルム全体のRe波長分散は、いずれの領域でも順分散であった。ここで、Re(550)及びRth(550)、Re波長分散は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
パターニング位相差フィルム14の作製:
《セルロースアシレートフィルムT5の作製》
セルロースアシレートフィルムT2の作製において、主流が47μmになるように流量を調節した以外は。セルロースアシレートフィルムT2の製造方法と同様にして厚さ53μmのセルロースアシレートフィルムT5を作製した。面内レターデーションRe(550)は1nm、厚み方向のレターデーションRth(550)は25nmであった。ここで、Re(550)及びRth(550)は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
(パターニング位相差フィルム14の作製)
パターニング位相差フィルム1の製造において、セルロースアシレートフィルムT1をセルロースアシレートフィルムT5に変更した以外はパターニング位相差フィルム1の製造方法と同様にしてパターニング位相差フィルム14を作製した。位相差フィルム全体のRth(550)は、RLC塗工部が95nm(即ち位相差領域B)、DLC塗工部が−20nm(即ち位相差領域A)であった。位相差フィルム全体のRe波長分散は、RLC塗工部もDLC塗工部も順分散であった。ここで、Re(550)及びRth(550)、Re波長分散は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
パターニング位相差フィルム15の作製:
(パターニング位相差フィルム15の作製)
パターニング位相差フィルム1の製造において、セルロースアシレートフィルムT1をセルロースアシレートフィルムT6に変更した以外はパターニング位相差フィルム1の製造方法と同様にしてパターニング位相差フィルム15を作製した。位相差フィルム全体のRth(550)は、RLC塗工部が45nm、DLC塗工部が−70nmであった。位相差フィルム全体のRe波長分散は、RLC塗工部もDLC塗工部も順分散であった。ここで、Re(550)及びRth(550)、Re波長分散は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
パターニング位相差フィルム16の作製:
(パターニング位相差フィルム16の作製)
パターニング位相差フィルム1の製造において、前記棒状液晶性化合物(RLC)と前記円盤状液晶性化合物(DLC)の配向方向を90度回転させた以外はパターニング位相差フィルム1の製造方法と同様にしてパターニング位相差フィルム16を作製した。位相差フィルム全体のRth(550)は、RLC塗工部が70nm(即ち位相差領域B)、DLC塗工部が−45nm(即ち位相差領域A)であった。位相差フィルム全体のRe波長分散は、RLC塗工部もDLC塗工部も順分散であった。ここで、Re(550)及びRth(550)、Re波長分散は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
パターニング位相差フィルム17の作製:
(パターニング位相差フィルム17Aの作製)
市販のセルロースアシレートフィルムTD80UL(富士フイルム社製)を用意した。TD80ULを、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムの片面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14mL/m2で塗布し、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、純水を3mL/m2塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥した。
<アルカリ溶液組成>
────────────────────────────────────
アルカリ溶液組成(質量部)
────────────────────────────────────
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
界面活性剤
SF−1:C1429O(CH2CH2O)20H 1.0質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
────────────────────────────────────
(ラビング配向膜付透明支持体の作製)
上記作製した支持体の、鹸化処理を施した面に、下記の組成のラビング配向膜塗布液を#8のワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒、さらに100℃の温風で120秒乾燥し、配向膜を形成した。次に、透過部の横ストライプ幅285μm、遮蔽部の横ストライプ幅285μmのストライプマスクをラビング配向膜上に配置し、室温空気下にて、UV−C領域における照度2.5mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を4秒間照射して、光酸発生剤を分解し酸性化合物を発生させることにより第1の位相差領域用配向層を形成した。その後に、ストライプマスクのストライプに対して0°の角度を保持して500rpmで一方向に1往復、ラビング処理を行い、ラビング配向膜付透明支持体を作製した。なお、配向膜の膜厚は、0.5μmであった。
<配向膜形成用塗布液の組成>
配向膜用ポリマー材料 3.9質量部
(PVA103、クラレ(株)製ポリビニルアルコール)
光酸発生剤(S−2) 0.1質量部
メタノール 36質量部
水 60質量部
Figure 2012203212
(パターン化された光学異方性層Aの作製)
下記の光学異方性層用塗布液を、バーコーターを用いて塗布量4mL/m2で塗布した。次いで、膜面温度110℃で2分間加熱熟成した後、80℃まで冷却し空気下にて20mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を20秒間照射して、その配向状態を固定化することによりパターン光学異方性層Aを形成した。マスク露光部分(第1の位相差領域)は、ラビング方向に対し遅相軸方向が平行にディスコティック液晶が垂直配向しており、未露光部分(第2の位相差領域)は直交に垂直配向していた。なお、光学異方性層の膜厚は、0.95μmであった。形成した位相差層の状態を調べ、塗布ムラ(塗布液が配向膜にはじかれて生じたムラ)や配向の乱れがないことを確認した。
<光学異方性層用組成>
ディスコティック液晶E−1 100質量部
配向膜界面配向剤(II−1) 3.0質量部
空気界面配向剤(P−1) 0.4質量部
光重合開始剤 3.0質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.0質量部
メチルエチルケトン 400質量部
Figure 2012203212
形成されたパターン光学異方性層Aの第1の位相差領域及び第2の位相差領域をそれぞれTOF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法、ION−TOF社製TOF−SIMS V)により分析したところ、第1の位相差領域と第2の位相差領域では、対応する配向層中における光酸発生剤S−2の存在比が8対92であり、第1の位相差領域ではS−2がほとんど分解していることがわかった。また、光学異方性層においては、第1の位相差領域の空気界面に、II−1のカチオン及び光酸発生剤S−2から発生した酸HBF4のアニオンBF4 -が存在していることが確認された。第2の位相差領域の空気界面には、これらのイオンはほとんど観測されず、II−1のカチオン及びBr-が配向膜界面近傍に存在していることがわかった。空気界面におけるそれぞれのイオンの存在比は、II−1のカチオンは93対7、BF4 -は90対10であった。このことから、第2の位相差領域中、配向膜界面配向剤(II−1)は配向膜界面に偏在しているが、第1の位相差領域では偏在性が減少し、空気界面にも拡散していること、及び第1の位相差領域においては、発生した酸HBF4とII−1がアニオン交換することによってII−1カチオンの拡散が促進されていることが理解できる。
(光学異方性層の評価)
作製した光学異方性層を透明支持体から剥離した後、DLCの平均傾斜角を測定したところ、DLCの円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、DLCがフィルム面に対して垂直に配向していることを確認した。また、第1および第2の位相差領域のRe(550)はいずれも138nmであり、且つ遅相軸の向きは282μm周期で0度、90度が交互にパターニングされていた。また、Re波長分散はいずれも順分散であった。
第1および第2の位相差領域のRth(550)はいずれも−69nmであった。ここで、Re(550)及びRth(550)、Re波長分散は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
この結果から、ディスコティック液晶を、ピリジニウム塩化合物、及びフルオロ脂肪族基含有共重合体の存在下で、光酸発生剤を含有したPVA系ラビング配向膜にマスク露光した後、一方向にラビング処理した該配向膜上で配向させることによって、垂直配向であるとともに、遅相軸が直交した第1の位相差領域と第2の位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
前記光学異方性層Aの第2の位相差領域上のみに、パターニング位相差フィルム5と同様の方法で水平配向DLC層を塗布し、パターニング位相差フィルム17Aを作製した。
(表面層(反射防止層)付き光学フィルム17Bの作製)
表面層(反射防止層)付き光学フィルム6Bの製造において、セルロースアシレートフィルムT1をセルロースアシレートフィルムT2に変更した以外は表面層(反射防止層)付き光学フィルム6Bの製造方法と同様にして表面層(反射防止層)付き光学フィルム17Bを作製した。
(パターニング位相差フィルム17の作製)
パターニング位相差フィルム17Aの支持体層側に易接着層を介して表面層(反射防止層)付き光学フィルム17Bの支持体面を貼合し、パターニング位相差フィルム17を作製した。パターニング位相差フィルム17全体のRth(550)は、第1の位相差領域(位相差領域A)が20nm、第2の位相差領域(位相差領域B)が60nmであった。第1および第2の位相差領域のRe(550)はいずれも138nmであり、且つ遅相軸の向きは282μm周期で0度、90度が交互にパターニングされていた。また、Re波長分散はいずれも順分散であった。ここで、Re(550)及びRth(550)、Re波長分散は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
3. 偏光板の作製
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%のヨウ素水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの直線偏光膜を得た。
アルカリ鹸化処理した「WV−EA」(富士フイルム社製))を用意し、片面を「WV−EA」で、もう片面をパターニング位相差フィルム1〜17のいずれか1枚で直線偏光膜を挟んで、粘着剤を用いて貼り合せ、偏光板1〜17を作製した。組み合わせについては下記表に示す。
視野角白色味の評価:
パターンドリターダー方式の3Dモニター W220S(Hyundai製)に使用されているパターン位相差板とフロント偏光板をはがし、偏光板1〜16のそれぞれを貼合して、図3と同様の構成の3D表示装置を作製した。各偏光板を、その直線偏光膜を液晶セル側にして、及びその表面層を視認側の外側にして貼合した。直線偏光膜の吸収軸、及び各位相差フィルムの位相差領域A及びBの遅相軸の関係を下記表にまとめる。なお、下記表の軸の角度は、表示面左右方向を0°、及び観察者側から見た反時計回りを正として特定される角度である。下記表中の実施例1〜12および14、及び比較例1〜4はいずれも、図1(a)に示す配置例と同様の配置を採用した例である。また実施例13は、図1(d)に示す配置例と同様の配置を採用した例である。
続いて、作製した各3D表示装置を3D表示にし、片目を白表示に、もう片目を黒表示とした状態で、白表示側の眼鏡を通した位置に測定器(BM−5A トプコン製)をおいて眼鏡回転時の白色味を測定した。パターニング位相差フィルムのパターニング周期が上下方向の場合、上下方向の3D表示におけるクロストーク性能は原理的に悪くなるため、横方向の視野角性能高めることが重要となる。よって、方位角0度・極角60度における白表示における色味v’の最小値と最大値の差をもとに、以下の基準で評価した。
◎:白表示のv’変化が0.010未満(色味付が全く視認されず、許容)
○:白表示のv’変化が0.010以上0.015未満(ごくわずかな色味付が視認される程度で許容できる。)
△:白表示のv’変化が0.015以上0.020未満(わずかな色味付が視認される程度で許容できる。)
△△:白表示のv’変化が0.020以上0.025未満(色味付が視認されるが許容できる。)
×:白表示のv’変化が0.025以上(色味つきが激しく、許容できない。)
結果を下記表に示す。
Figure 2012203212
Figure 2012203212
Figure 2012203212
Figure 2012203212
上記表に示す結果から、本発明の位相差板を図1(a)に示すのと同様の軸関係で配置した実施例1〜12および14の3D表示装置は、眼鏡を回転しても、画面左右方向において白表示時に生じる色味変化が少なく、良好な3D表示特性を示したことが理解できる。
一方、比較例1〜3では、位相差板の位相差領域AのRth<25nm、及び位相差領域BのRth≧25nmのいずれか一方を満足していないため、眼鏡を回転すると、画面左右方向において白表示時に顕著な色味変化が生じていることが理解できる。Rthの絶対値としては同等であるか、又はより小さい(例えば比較例1ではRthは−5nmである)パターニングλ/4を使用している比較例と比較して、本発明の実施例では、顕著に色味変化を軽減できたことは、予期せぬ効果である。
実施例13は、軸関係が図1(d)に示す配置であり、本発明の位相差板を配置したことによる効果は画像表示面上下方向において顕著になる。しかし、パターン周期が画像表示面の上下方向になっているので、色味変化は軽減されても、画像表示面上下方向はクロストークの発生がある。したがって、バランスのよい3D表示性能を得るためには、実施例1〜12および14の配置例、即ち、図1(a)の配置を採用した態様のほうが好ましい。
なお、実施例1〜12および14は、図1(a)の配置を採用した実施例であるが、直線偏光膜の吸収軸角度を135°にし、図1(c)の配置を採用した実施例も同様に作製し、評価したところ、実施例1〜12および14と同様の効果が得られた。
また、上記実施例1〜12および14は、パターニング位相差フィルムのパターニング周期が画像表示面上下方向の例であるが、パターニング位相差フィルムのパターニング周期が画像表示面左右方向(横方向)の例についても同様に評価した。即ち、図2(a)及び(c)の配置を採用した実施例についても同様に作製し、同様に評価した。
但し、パターニング位相差フィルムのパターニング周期が横方向の場合、横方向の3D表示におけるクロストーク性能は原理的に悪くなるため、上下方向の視野角性能高めることが重要になる。よって、方位角90度・極角60度における白表示における色味v’の最小値と最大値の差をもとに、上記と同様の基準で評価した。
その結果、上記実施例と同様、本発明の位相差板を図2(a)又は(c)に示すのと同様の軸関係で配置した実施例の3D表示装置は、眼鏡を回転しても、画面上下方向において白表示時に生じる色味変化が少なく、良好な3D表示特性を示した。
一方、位相差板の位相差領域AのRth<25nm、及び位相差領域BのRth≧25nmのいずれか一方を満足していない比較例については、眼鏡を回転すると、画面上下方向において白表示時に顕著な色味変化が生じた。Rthの絶対値としては同等であるか、又はより小さい(例えばRthが−5nmである)パターニングλ/4を使用している比較例と比較して、本発明の実施例では、顕著に色味変化を軽減できたことは、予期せぬ効果である。
また、図2(b)又は(d)に示す配置を採用した例では、本発明の位相差板を配置したことによる効果は画像表示面左右方向において顕著になった。しかし、パターン周期が画像表示面の左右方向になっているので、色味変化は軽減されても、画像表示面左右方向はクロストークの発生がある。したがって、バランスのよい3D表示性能を得るためには、図2(a)又は(c)の配置を採用した態様のほうが好ましい。
1 3D表示装置
2 偏光板(偏光眼鏡)
10 液晶セル
12、14 直線偏光膜
16、18 光学補償フィルム
19 保護フィルム
20 位相差板(本発明の位相差板)
21 位相差層(位相差領域A及びB)
22 表面層
24 λ/4板
26 直線偏光膜
BL バックライト

Claims (22)

  1. 位相差領域A及びBが交互に配置されたパターニング位相差領域を含む位相差板であって、
    前記位相差領域A及びBは、互いに異なる方向に面内遅相軸を有する、又は、互いに異なる面内レターデーションを有する位相差領域であり、
    前記位相差領域Aの波長550nmにおける厚み方向レターデーションRth(550)がRth(550)<25nmを満足し、且つ前記位相差領域BのRth(550)が25nm≦Rth(550)を満足する位相差板。
  2. 前記位相差領域A及びBの少なくとも一方の面内レターデーションReが、可視光域において順波長分散性又はフラット波長分散性を示す請求項1に記載の位相差板。
  3. 前記位相差領域A及びBがそれぞれ、|Rth(550)|≦160nmを満足する請求項1又は2に記載の位相差板。
  4. 前記位相差領域A及びBの波長550nmの面内レターデーションRe(550)がそれぞれλ/4、且つ前記位相差領域A及びBの面内遅相軸αa及びαbが互いに直交する請求項1〜3のいずれか1項に記載の位相差板。
  5. 前記位相差領域A及びBそれぞれの面内遅相軸αa及びαbの少なくとも一方が、パターニングの周期方向と平行又は直交している請求項1〜4のいずれか1項に記載の位相差板。
  6. 前記位相差領域A及びBがそれぞれ、配向状態に固定された液晶化合物を含有する位相差層からなる、又は配向状態に固定された液晶化合物を含有する位相差層を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の位相差板。
  7. 前記位相差領域Aが、配向状態に固定された円盤状液晶化合物を含有する位相差層からなる、又は配向状態に固定された円盤状液晶化合物を含有する位相差層を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の位相差板。
  8. 前記位相差領域Bが、配向状態に固定された棒状液晶化合物を含有する位相差層からなる、又は配向状態に固定された棒状液晶化合物を含有する位相差層を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の位相差板。
  9. 前記位相差領域A及びBがそれぞれ、複屈折ポリマーフィルムからなる、又は複屈折ポリマーフィルムを含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の位相差板。
  10. 前記位相差領域AのRth(550)が、Rth(550)≦−25nmを満足する請求項1〜9のいずれか1項に記載の位相差板。
  11. 最表面に反射防止層を有する請求項1〜10のいずれか1項に記載の位相差板。
  12. 紫外線吸収剤を含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の位相差板。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の位相差板と、直線偏光膜とを少なくとも有する偏光板。
  14. 前記位相差領域A及びBの波長550nmの面内レターデーションRe(550)がそれぞれλ/4、前記位相差領域A及びBそれぞれの面内遅相軸αa及びαbが互いに直交し、且つαa及びαbのそれぞれと前記直線偏光膜の吸収軸θとの角度が45°である請求項13に記載の偏光板。
  15. 画像表示素子、及びその表示面側に、請求項13又は14に記載の偏光板を有する3D表示装置。
  16. 前記偏光板に含まれる位相差板の位相差領域A及びBのRe(550)がそれぞれλ/4、該位相差領域A及びBの面内遅相軸αa及びαbが互いに直交し、且つαa及びαbのそれぞれと、前記偏光板に含まれる直線偏光膜の吸収軸θとの角度が45°である請求項15に記載の3D表示装置。
  17. 前記偏光板の吸収軸が45°又は135°であり、
    前記偏光板に含まれる位相差板のパターン周期方向が、表示面上下方向である場合は、位相差領域Aの面内遅相軸αaが、90°であり;又は
    前記偏光板に含まれる位相差板のパターン周期方向が、表示面左右方向である場合は、位相差領域Aの面内遅相軸αaが、0°である;
    請求項16に記載の3D表示装置。
  18. 前記画像表示素子が、液晶セルを含む液晶パネルである請求項15〜17のいずれか1項に記載の3D表示装置。
  19. 前記液晶セルが、TN、OCB又はECBモード液晶セルである請求項18に記載の3D表示装置。
  20. 前記偏光板に含まれる直線偏光膜が、前記画像表示素子の画像表示機能のためにも利用される請求項15〜19のいずれか1項に記載の3D表示装置。
  21. 請求項15〜20のいずれか1項に記載の3D表示装置と、
    前記3D表示装置に表示される右眼用及び左眼用の偏光画像のそれぞれを、観察者の右眼及び左眼にそれぞれ入射させるための第2の偏光板と、
    を有する3D表示システム。
  22. 前記3D表示装置が右眼用及び左眼用円偏光画像を表示し、前記第2の偏光板が直線偏光膜とλ/4位相差膜とを有する円偏光板である請求項21に記載の3D表示システム。
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