JP2011127018A - 重合体組成物およびそれからなる成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来よりも、一定期間内にブリードする活性化合物量を増加させることができる重合体組成物を提供する。
【解決手段】オレフィン系重合体100重量部と、該オレフィン系重合体100重量部に対し、HLB値が4以下であるエステル0.01〜100重量部と、放出性活性化合物0.01〜200重量部とを含む重合体組成物。前記放出性活性化合物が、害虫防除剤および/または滑剤である重合体組成物。前記オレフィン系重合体が、密度が870〜980kg/m3、MFRが0.1〜20g/10minのエチレン−α−オレフィン共重合体である重合体組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、重合体組成物および該重合体組成物を成形して得られる成形体に関する。
従来、殺虫剤等の活性化合物を重合体中に含有してなる重合体組成物およびその成形体は知られており、比較的安価に種々の形状の成形体を得ることができるため広範な分野で用いられている。これらは、蒸散、あるいは活性化合物が成形体表面へにじみ出るいわゆるブリードにより活性化合物が成形体から放出され、その効力を発揮するものである(特許文献1参照)。
特開平6−315332
蒸散性の低い活性化合物の場合、蒸散による成形体からの放出はほとんどなく、主にブリードにより成形体から放出される。ブリードとは、重合体への飽和溶解量以上(過飽和量)の活性化合物が成形体中に保持されている場合に起こり、活性化合物の過飽和分(=活性化合物の配合量−活性化合物の成形体中への飽和溶解量)が時間と共に成形体表面へ移行する現象である。従って、飽和溶解量を超える量の活性化合物を配合した重合体組成物から得られる成形体の場合、活性化合物は経時的に成形体表面にブリードするが、一般にこのブリード速度は活性化合物の初期添加量に大きく依存することが知られており、またその速度は経時的に減速する。一方、成形体において活性化合物のブリードにより効果を発揮する場合、所望するブリードの速度が達成されている期間が製品の有効期間の目安となる。そのため有効期間が決定されると必然的に初期の放出性活性化合物の添加量も決定される。
したがって、長期間に渡って使用可能な成形体とするためには、重合体への飽和溶解量を超える量の活性化合物を配合した重合体組成物を用いる必要がある。しかしながら過飽和量の活性化合物を重合体に含有させた重合体組成物を用いて得られる成形体は、使用初期に多量に活性化合物がブリードしてしまい、所望の期間ブリード速度を維持できないことがあった。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、オレフィン系重合体、放出性活性化合物およびHLB値が4以下であるエステルを含有するオレフィン系重合体組成物が、活性化合物のブリード速度の低下を抑制することができ、その結果、一定期間内にブリードする活性化合物量を増加させることができることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、オレフィン系重合体100重量部と、該オレフィン系重合体100重量部に対し、HLB値が4以下であるエステル0.01〜100重量部と、放出性活性化合物0.01〜200重量部とを含む重合体組成物である。
さらに本発明は、前記重合体組成物を成形して得られる成形体である。
本発明によれば、活性化合物のブリード速度の低下を抑制することができるため、一定期間内にブリードする活性化合物量を増加させることができる重合体組成物、およびそれからなる成形体を提供することができる。
本発明は、オレフィン系重合体100重量部と、該オレフィン系重合体100重量部に対し、HLB値が4以下であるエステル0.01〜100重量部と、放出性活性化合物0.01〜200重量部とを含む重合体組成物である。
本発明の放出性活性化合物における「放出性」とは、重合体組成物を用いて得られる成形体から活性化合物がブリードして成形体表面ににじみ出てくることを意味する。
該放出性活性化合物は、本発明の重合体組成物を成形して得られる成形体の使用目的に応じて害虫防除、防菌、防黴、防汚、除草、植物成長調節、経皮治療、防錆、滑り性等に対して活性を有する有機化合物であり、1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。該放出性活性化合物としては、害虫防除剤および/または滑剤を用いることが好ましい。
放出性活性化合物の添加量としては、該放出性活性化合物の効果の観点から、重合体組成物に含まれるオレフィン系重合体100重量部に対して0.01重量部以上であることが好ましく、0.1重量部以上であることがさらに好ましい。また成形体のべたつきを抑えるという観点から、オレフィン系重合体100重量部に対して、200重量部以下であることが好ましく、100重量部以下であることがより好ましく、50重量部以下であることがさらに好ましい。
害虫防除性に活性を有する有機化合物として害虫防除剤を用いる場合には、殺虫剤、昆虫成長制御剤、忌避剤等の害虫防除性がある化合物を使用することができる。また、害虫防除剤の効果を高める役割をもつ化合物(共力剤)を併用してもよい。共力剤としては例えばピペロニルブトキシド、オクタクロロジプロピルエーテル、チオシアノ酢酸イソボルニル、N−(2−エチルヘキシル)−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−エチルヘキシル)−1−イソプロピル−4−メチルシクロ〔2,2,2〕オクト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等が挙げられる。
殺虫剤としては、ピレスロイド系化合物、有機燐系化合物、カーバメート系化合物、フェニルピラゾール系化合物等が挙げられる。ピレスロイド系化合物としては、ペルメトリン、アレスリン、d−アレスリン、dd−アレスリン、d−テトラメトリン、プラレスリン、サイフェノトリン、d−フェノトリン、d−レスメトリン、エムペントリン、フェンバレレート、エスフェンバレレート、フェンプロパスリン、シハロトリン、サイフルトリン、エトフェンプロクス、トラロメスリン、エスビオスリン、ベンフルスリン、テラレスリン、デルタメスリン、サイパーメスリン、フェノトリン、テフルトリン、ビフェントリン、シフルトリン、シフェノトリン、シペルメトリン、アルファシペルメトリン等が挙げられ、有機燐系化合物としては、フェニトロチオン、ジクロルボス、ナレド、フェンチオン、シアノホス、クロロピリホス、カルクロホス、サリチオン、ダイアジノン等が挙げられ、カーバメート系化合物としては、メトキシジアゾン、プロポクスル、フェノブカーブ、カルバリル等が挙げられ、フェニルピラゾール系化合物としてはフィプロニル等が挙げられる。
昆虫成長制御剤としては、ピリプロキシフェン、メソプレン、ヒドロプレン、ジフルベンズロン、シロマジン、フェノキシカーブ、ルフェニュロン(CGA184599)等が挙げられる。
忌避剤としては、ジエチルトルアミド、ジブチルフタレート等が挙げられる。
これらの害虫防除剤としては、殺虫剤が好ましく、ピレスロイド系化合物がより好ましく、25℃での蒸気圧が1×10-6mmHg未満であるピレスロイド系化合物がさらに好ましい。該25℃での蒸気圧が1×10-6mmHg未満であるピレスロイド系化合物としては、レスメスリン、ペルメトリン等が挙げられる。
該害虫防除剤によって防除することができる害虫としては、クモ、ダニ、昆虫等の節足動物が挙げられる。更に例をあげて説明すると以下の通りである。蛛形綱では、例えばダニ目(Acarina)に属するトリサシダニ、ミカンハダニ、ケナガコナダニ等;真正蜘蛛目(Araneae)に属するジグモ、イエユウレイグモ等が挙げられる。唇脚綱では、例えばゲジ目(Scutigeromorpha)に属するゲジ等;イシムカデ目(Lithobiomorpha)に属するイッスンムカデ等が挙げられる。倍脚綱では、例えばオビヤスデ目(Polydesmoidea)に属するヤケヤスデ、アカヤスデ等が挙げられる。
また、昆虫目としては、例えば以下のものが挙げられる。シミ目(Thysanura)に属するヤマトシミ等;バッタ目(Orthoptera)に属するカマドウマ、ケラ、エンマコオロギ、トノサマバッタ、サバクトビバッタ、イナゴ等;ハサミムシ目(Dermaptera)に属するハサミムシ等;ゴキブリ目(Blattaria)に属するチャバネゴキブリ、クロゴキブリ、ヤマトゴキブリ、ワモンゴキブリ等;シロアリ目(Isoptera)に属するヤマトシロアリ、イエシロアリ、アメリカカンザイシロアリ等;チャタテムシ目(Psocoptera)に属するカツブシチャタテ、ヒラタチャタテ等;ハジラミ目(Mallophaga)に属するイヌハジラミ、ネコハジラミ等;シラミ目(Anoplura)に属するコロモジラミ、ケジラミ、ヒトジラミ等;カメムシ目(Hemiptera)に属するトビイロウンカ、ツマグロヨコバイ、オンシツコナジラミ、モモアカアブラムシ、トコジラミ、クサギカメムシ等;コンチュウ目(Coleoptera)に属するカツオブシムシ、ウリハムシ、コクゾウムシ、ヒラタキクイムシ、ナガヒョウホンムシ、マメコガネ等;ノミ目(Siphonaptera)に属するネコノミ、イヌノミ、ヒトノミ等;ハエ目(Diptera)に属するアカイエカ、ネッタイシマカ、ハマダラカ、ブユ、セスジユスリカ、チョウバエ、イエバエ、ヒメイエバエ、ツェツェバエ、ウシアブ、ヒラタアブ等;ハチ目(Hymenoptera)に属するスズメバチ、アシナガバチ、マツノミドリハバチ、クリタマバチ、クロアリガタバチ、イエヒメアリ等が挙げられる。
防黴、防汚、除草、植物成長調節、経皮治療、防錆、滑り性、抗ブロッキング性等の放出性活性化合物としては、それぞれ、市販の防黴剤、防汚剤、除草剤、植物成長調節剤、経皮治療剤、防錆剤、滑剤等が挙げられる。
滑剤としては、例えば炭素数8〜22の直鎖脂肪酸、炭素数8〜22の脂肪族アルコール、ポリグリコール、炭素数8〜22の脂肪族アマイド、シリコーン油、ロジン誘導体等が挙げられる。
防黴剤としては、例えば、前記公知の抗微生物活性成分の他、イソチアゾロン系化合物あるいはイソチアゾロン系化合物の包接化合物などを挙げることができる。
防汚剤としては、公知の防汚剤が挙げられる。有機錫化合物としては、ビス(トリブチル錫)オキサイド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫フルオライド、トリブチル錫アセテート、トリブチル錫ニコチネート、トリブチル錫バーサテート、ビス(トリブチル錫)α,α′−ジブロムサクシネート、トリフェニル錫ハイドロオキサイド、トリフェニル錫ニコチネート、トリフェニル錫バーサテート、ビス(トリフェニル錫)α,α′−ジブロムサクシネート、ビス(トリフェニル錫)オキサイド、トリフェニル錫アセテート、トリフェニル錫ジメチルジチオカーバメートなどを挙げることができる。
除草剤としてはアトラジン、メトリブジン等のトリアジン系化合物;フルオメツロン、イソプロチュロン等のウレア系化合物;ブロモキシニル、アイオキシニル等のヒドロキシベンゾニトリル系化合物;ペンディメサリン、トリフルラリン等の2、6−ジニトロアニリン系化合物;2,4−D、ジカンバ、フルロキシピル、メコプロップ等のアリロキシアルカノイック酸系化合物;ベンスルフロンメチル、メツルフロンメチル、ニコスルフロン、プリミスルフロンメチル、シクロスルファムロン等のスルホニルウレア系化合物;イマザピル、イマザキン、イマゼタピル等のイミダゾリノン系化合物;ビスピリバックNa塩、ビスチオバックNa塩、アシフルオルフェンNa塩、サルフェントラゾン、パラコート、フルメツラム、トリフルスルフロンメチル、フェノキサプロップ−p−エチル、シハロホップブチル、ジフルフェニカン、ノルフルラゾン、イソキサフルトール、グルフォシネートアンムニウム塩、グリフォセート、ベンタゾン、ベンチオカーブ、メフェナセット、プロパニル、フルチアミド等を挙げることができる
植物成長調節剤としては、マレイックヒドラジド、クロルメカット、エテフォン、ジベレリン、メピカットクロライド、チジアズロン、イナベンファイド、パクロブトラゾール 、ウニコナゾール等を挙げることができる。
経皮治療剤としては公知のフェロモン製剤、鎮痛剤、ニコチン等を挙げることができる。
防錆剤としてはベンゾトリアゾール、ジシクロへキシルアミンナイトライト、トリルトリアゾール等が挙げられる。
放出性活性化合物は保持体に、保持、担持、含浸、浸透、注入、吸着、吸収等の処理した放出性活性化合物保持体として用いてもよい。保持体しては、放出性活性化合物を保持・担持・吸収・吸着・含浸・浸透・注入できるものが用いられ、シリカ系化合物、ゼオライト類、粘度鉱物、金属酸化物、雲母類、ハイドロタルサイト類、有機保持体等が挙げられる。シリカ系化合物としては、非晶性シリカと結晶性シリカがあり、例えば、粉末ケイ酸、微粉末ケイ酸、酸性白土、珪藻土、石英、ホワイトカーボン等が挙げられる。ゼオライト類としては、A型ゼオライト、モルデナイト等が挙げられ、粘度鉱物としては、モンモリロナイト、サポナイト、バイデライト、ベントナイト、カオリナイト、ハロイサイト、ナクライト、デッカイト、アノーキサイト、イライト、セリサイト等が挙げられ、金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン等が挙げられ、雲母類としては、雲母、パーミキュライト等が挙げられ、ハイドロタルサイト類としては、ハイドロタルサイト、スメクタイト等が挙げられ、有機保持体としては、炭類(木炭、泥炭、草炭等)、ポリマービーズ(微結晶セルロース、ポリスチレンビーズ、アクリル酸エステル系ビーズ、メタクリル酸エステル系ビーズ、ポリビニルアルコール系ビーズ等)およびそれらの架橋ポリマービーズ等が挙げられる。その他にも、パーライト、石こう、セラミック、火山性岩等が挙げられる。
本発明に用いられるオレフィン系重合体としては、例えば、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ブテン系重合体、4−メチル−1−ペンテン系重合体、これらの変性物、けん化物、水添物等が挙げられる。オレフィン系重合体として、2種類以上を用いてもよい。
エチレン系重合体としては、エチレン単独重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−環状オレフィン共重合体等、エチレンに基づく単量体単位が主単位(通常、重合体を構成する全単量体単位を100モル%として、エチレンに基づく単量体単位の含有量が50モル%以上)の重合体を挙げることができる。エチレン単独重合体としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、または高密度ポリエチレンが挙げられる。また、エチレン−α−オレフィン共重合体のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン等、炭素数3〜20のα−オレフィンが挙げられる。エチレン−α−オレフィン共重合体としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体等が挙げられる。
プロピレン系重合体としては、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−環状オレフィン共重合体など、プロピレンに基づく単量体単位が主単位(通常、重合体を構成する全単量体単位を100モル%として、プロピレンに基づく単量体単位の含有量が50モル%以上)の重合体をあげることができる。また、プロピレン−α−オレフィン共重合体のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン等、炭素数4〜20のα−オレフィンが挙げられる。
オレフィン系重合体としては、好ましくはエチレン系重合体である、より好ましくはエチレン−α−オレフィン共重合体である。
オレフィン系重合体のメルトフローレート(MFR)としては、成形体の外観を高める観点から、0.1g/10分以上であることが好ましく、0.3g/10分以上であることがより好ましく、0.5g/10分以上であることがさらに好ましい。また、成形体の機械的強度を高める観点から、20g/10分以下であることが好ましく、10g/10分以下であることがより好ましく、5g/10分以下であることがさらに好ましい。なお、該MFRは、JIS K7210−1995に規定された方法において、プロピレン系重合体については荷重21.18Nおよび温度230℃の条件で、エチレン系重合体やブテン系重合体などプロピレン系重合体以外の重合体については荷重21.18Nおよび温度190℃の条件で測定される。
エチレン系重合体の密度としては、放出性活性化合物をブリードさせやすくするため、980kg/m3以下であることが好ましく、970kg/m3以下であることがより好ましく、960kg/m3以下であることがさらに好ましい。また、成形体の剛性を高める観点から、870kg/m3以上であることが好ましく、875kg/m3以上であることがより好ましく、880kg/m3以上であることがさらに好ましい。なお、該密度は、測定試料片をJIS K6760−1995に記載のアニーリングを行ったのち、JIS K7112−1980のうちA法に規定された方法に従って測定される。
オレフィン系重合体の製造方法としては、チーグラー・ナッタ系触媒、クロム系触媒、メタロセン系触媒、ラジカル重合触媒、有機金属化合物等の公知のオレフィン重合触媒を用いて、溶液重合法、スラリー重合法、気相重合法、高圧重合法等の公知の重合方法によって製造する方法が挙げられる。また、該重合法は、回分重合法、連続重合法のいずれでもよく、2段階以上の多段重合法でもよい。
エステルのHLB値は、グリフィン法を用いて算出する。グリフィン法においてはHLB値=20×親水部の式量の総和/分子量で定義する。
本発明の重合体組成物に含まれるエステルとしては、オレフィン系重合体に含有させやすく、該重合体中に分散させやすく、運動性が高いものが好ましい。このような観点から該エステルのHLB値が小さいほうが好ましく、特にHLB値4以下のエステルが好ましい。
HLB値が4以下であるエステルとしては、ミリスチン酸エチルエステル、パルミチン酸エチルエステル、ジステアリン酸グリセロール、トリステアリン酸グリセロールなどが挙げられる。該エステルを添加することにより放出性活性化合物のブリード量が増加する。該エステルの配合量は、所望する放出性活性化合物のブリード量およびその所望する期間等に応じて調整することが可能である。該エステルの添加量としては、ブリード量増加の効果の観点から、オレフィン系重合体100 重量部に対して0.01重量部以上が好ましく、0.1重量部以上がより好ましい。また、成形体のべたつきを抑えるという観点から、オレフィン系重合体100重量部に対して100重量部以下であることが好ましく、50重量部以下であることがさらに好ましく、30重量部以下であることがより好ましい。
本発明における放出性活性化合物は、HLB値が4以下であるエステルとは異なる化合物である。
本発明の重合体組成物には、必要に応じて、HLB値が4以下であるエステルおよび放出性活性化合物以外の添加剤を配合してもよい。
本発明の重合体組成物は、オレフィン系重合体、HLB値が4以下であるエステルおよび放出性活性化合物を公知の方法で溶融混練することにより得られる。例えば、予めオレフィン系重合体と該エステルおよび放出性活性化合物を混合し、得られた混合物を押出機やロール成形機やニーダー等を用いて溶融混練する方法、オレフィン系重合体と該エステルおよび放出性活性化合物とを別々に押出機やロール成形機やニーダー等に供給し溶融混合する方法、予め該エステルおよび放出性活性化合物を混合したものとオレフィン系重合体とを押出機やロール成形機やニーダー等に供給して溶融混合する方法、オレフィン系重合体と該エステルを予め混合したものと、放出性活性化合物とを別々に押出機やロール成形機やニーダー等に供給して溶融混練する方法、等が挙げられる。また、押出機により溶融混練する場合、サイド押出機あるいはフィーダー等の添加装置等を使用し押出機の途中から注入してもよい。
放出性活性化合物およびHLB値が4以下であるエステルを重合体に添加したマスターバッチとして用い、オレフィン系重合体と溶融混練して本発明の重合体組成物を製造してもよい。特に放出性活性化合物は、重合体に添加したマスターバッチとして用いることが好ましい。
マスターバッチのベースとなる重合体は、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ブテン系重合体、4−メチル−1−ペンテン系重合体、これらの変性物、けん化物、水添物等のオレフィン系重合体をあげることができる。好ましくは、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状極低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレン系重合体;ブタジエン系重合体水添物などが挙げられる。
重合体組成物の製造において、マスターバッチを用いる場合、マスターバッチの配合量は、本発明の重合体組成物に含まれるオレフィン系重合体100重量部に対し通常50重量部未満であり、経済性を高める観点から、20重量部以下が好ましく、10重量部以下がより好ましい。
重合体組成物の成形方法としては例えば射出成形、押出成形、プレス成形、スラッシュ( 粉末) 成形等の公知の成形方法が例示できる。また、使用時の力学的物性の改善、放出性活性化合物の成形体表面の高濃度化、あるいは加工成形性の向上等の目的に応じて、適宜多層押出成形、多色射出成形、複合紡糸、押出ラミネート成形等の従来知られているオレフィン系重合体で用いられる種々の方法で加工して使用することができる。成形体における、本発明の重合体組成物層は、目的に応じてどの層に配されていてもよい。
本発明の重合体組成物を成形して得られる成形体としては、フィルム、シート、壁紙、カーテン、床材、梱包材、ホース、テープ、チューブ、パイプ、バック、テント・ターフ、暖簾、日よけ、電線、ケーブル、シース、フィラメント、繊維、ネット・網類(蚊帳・網戸・防虫網等)、糸、ロープ、フィルター、カーペット、靴、鞄、衣類、電子機器、電気機器、家電製品、事務機器、車両機器、輸送機器、コンテナ・ケース等の物流資材;住宅用品および住宅用部品に用いられるもの;犬小屋、マット、シート、首輪、タグ類等のペット用品等が挙げられる。
上記成形体の中でも、延伸されている成形体において、特に本発明の効果は顕著である。ここで延伸とは、成形体を固体もしくは半溶融もしくは溶融状態で、公知の方法により、一軸または二軸に延伸することを意味する。例えばフィラメントの成形においては、押出機から押出された成形体を引き取り冷却して太いフィラメントを成形し、これを加熱水槽を通して前述の引き取り時の速度よりも速いスピードで引き取ることにより延伸を行うことができる。
例えば一軸延伸の場合には、押出機から成形体を1m/secの速度で回転しているロールで引き取り、最終的に成形体を10m/secで回転しているロールを通してサンプリングしたとすると延伸倍率10倍となる。二軸延伸の場合には、延伸前後の面積の比を延伸倍率とする。前述したフィラメントの製造方法においては、引取速度の異なるロールの間に加熱水槽等の装置を設置して成形体を通すことにより、成形体に熱をかけ、より高倍まで延伸することができる。延伸倍率が高いほうが、該エステルにより放出性活性化合物ブリード量が増加する効果が持続する。成形体の延伸倍率は2倍以上が好ましく、4倍以上であることがより好ましく、6倍以上であることがさらに好ましい。延伸倍率を上げすぎると破断伸びが小さく、ヤング率が大きくなってしまうため、柔らかさと伸びの観点から、該延伸倍率は50倍以下であることが好ましく、30倍以下であることがより好ましく、20倍以下であることがさらに好ましく、15倍以下であることが最も好ましい。前述の延伸工程は必ずしも押出と同一ライン上で行う必要は無く、延伸工程のみを独立に行ってもよく、次の工程があるとすればその前に行ってもよい。
本発明の重合体組成物は、溶融紡糸性に優れ、溶融押出性も良好であるため、マルチフィラメント、モノフィラメントなどのフィラメントに成形して好適に用いられる。より好適には、モノフィラメントに成形して用いられる。また、該重合体組成物からなるフィラメントは加熱延伸性に優れ、機械的強度も良好である。更には、該重合体組成物を用いてフィラメントを製造する際には、高吐出で重合体組成物を押し出して紡糸し、1段の延伸操作で高延伸が可能であるため、低コストで可能である。
本発明の重合体組成物をフィラメントに成形する方法としては、溶融紡糸法、(直接)紡糸・延伸法等の公知の成形方法を挙げることができる。具体的には、押出機等を用いて重合体組成物を溶融し、ギアポンプ等を経て、ダイ・ノズルから溶融押し出ししてストランド状となし、溶融押し出ししたストランド状の重合体組成物を引き取り、水や空気等の冷却媒体を用いて冷却して紡糸を行い、その後に、必要に応じて、加熱延伸、熱処理、オイル塗布等の処理を行い、巻き取る方法をあげることができる。
フィラメントの断面形状としては、例えば、円形、楕円形、三角形、四角形、六角形、星型などが挙げられる。
以下、実施例および比較例により本発明を説明する。
実施例および比較例での物性は、次の方法に従って測定した。
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210−1995に規定された方法において、荷重21.18Nおよび温度190℃の条件で測定を行った。
(2)密度(単位:kg/m3
JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定した。なお、測定試料片は、JIS K6760−1995に記載のアニーリング低密度ポリエチレンの方法に従いアニーリングを行い測定に用いた。
〔実施例1〕
(1)放出性活性化合物保持体の調整
放出性活性化合物として、害虫防除剤であるペルメトリン(住友化学社製 商品名エクスミン)を用いた。ペルメトリン51重量部に、酸化防止剤2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(以下、AO−1と記す。)1.5重量部を溶解させた。次に、ペルメトリンとAO−1との混合物52.5重量部と保持体である非晶性シリカ(鈴木油脂製 商品名多孔質シリカ)47.5重量部(ペルメトリン100重量部あたり93.1重量部)とを攪拌混合し、放出性活性化合物保持体を調製した。
(2)重合体組成物の調整
オレフィン系重合体として、高密度ポリエチレン(プライムポリマー製 商品名:ハイゼックス440M;MFR=0.9g/10分、密度=948kg/m3)のペレット100重量部と、高圧法低密度ポリエチレン(住友化学社製 スミカセン G803)(以下、LDと記す。)のペレット9.8重量部とを混合した混合物を用いた(以下、オレフィン系重合体混合物と記す)。
オレフィン系重合体混合物100重量部と、該混合物オレフィン系重合体混合物100重量部に対し、酸化防止剤n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバスペシャルティケミカルズ社製 商品名Irganox1076を0.013重量部と、放出性活性化合物保持体4.4重量部と、HLB値が4以下であるエステルとしてミリスチン酸エチルエステル(HLB=3.4)1.4重量部とを、バンバリーミキサーを用いて、約150℃で溶融混練し、フィラメント成形用重合体組成物を調製した。
(3)モノフィラメントの製造
フィラメント成形用重合体組成物を、1mmφ−4穴ダイ付の20mmφ押出機を用いて、吐出量0.6kg/hr、ダイ設定温度200℃で押し出し、ライン速度14m/分で引き取り、加熱水槽に通して112m/分で引き取り延伸倍率を8倍延伸として、200デニールのモノフィラメントに成形した。
(4)ブリード量の測定
このモノフィラメントを23℃の恒温室において保管し、3,7,14,28日後に取り出し、アセトンを用いて表面を洗浄しブリード物を除去し、洗浄に用いたアセトンを窒素ブローにより留去させた後、内標準であるリン酸トリフェニル50ppmのエタノールを用いて再分散させ、ガスクロマトグラフィーによりペルメトリンブリード量を求めた。
ガスクロマトグラフィーは下記の条件で測定を行った。

注入量 1μl.
カラム キャピラリーカラム DB-1
(長さ 30m、内径 0.25 mm、膜厚 0.25 μm)
検出器 水素炎イオン検出器(FID)
気化室温度 265℃
検出器温度 265℃
カラム温度 初期50℃ 1分 後240℃まで20℃/minで昇温

内標準ピークに対するペルメトリンピークの比の検量線を作成し、ペルメトリンのブリード量を求めた。
ペルメトリンブリード量をモノフィラメント重量で除し、モノフィラメント重量あたりのブリード量とした。洗浄したモノフィラメントは再び23℃の恒温室において次の測定日まで保管した。3(または1)、7、14、28日目におけるブリード量を足し合わせたものを累積ペルメトリンブリード量とした。このようにして28日間の累積ペルメトリンブリード量を算出した。結果を表1に示した。
〔比較例1〕
重合体組成物の調整時にミリスチン酸エチルエステルの代わりに、ステアリン酸亜鉛を用いた以外は、実施例1と同様にして、重合体組成物を得た。該組成物を用いて実施例1と同様にモノフィラメントを製造し、ペルメトリンブリード量を測定した。結果を表1に示した。
〔比較例2〕
重合体組成物の調整時にミリスチン酸エチルエステルの代わりに、ミリスチン酸を用いた以外は、実施例1と同様にして、重合体組成物を得た。該組成物を用いて実施例1と同様にモノフィラメントを製造し、ペルメトリンブリード量を測定した。結果を表1に示した。
〔比較例3〕
重合体組成物の調整時にミリスチン酸エチルエステルの代わりに、パルミチン酸を用いた以外は、実施例1と同様にして、重合体組成物を得た。該組成物を用いて実施例1と同様にモノフィラメントを製造し、ペルメトリンブリード量を測定した。結果を表1に示した。
〔比較例4〕
重合体組成物の調整時にミリスチン酸エチルエステルの代わりに、ステアリン酸を用いた以外は、実施例1と同様にして、重合体組成物を得た。該組成物を用いて実施例1と同様にモノフィラメントを製造し、ペルメトリンブリード量を測定した。結果を表1に示した。
〔比較例5〕
重合体組成物の調整時にミリスチン酸エチルエステルの代わりに、ベヘン酸を用いた以外は、実施例1と同様にして、重合体組成物を得た。該組成物を用いて実施例1と同様にモノフィラメントを製造し、ペルメトリンブリード量を測定した。ブリード量の測定は1,7,14,28日後に行いこれらを足し上げ28日間累積ペルメトリンブリード量とした。結果を表1に示した。
〔比較例6〕
重合体組成物の調整時にミリスチン酸エチルエステルの代わりに、モノステアリン酸グリセロールを用いた以外は、実施例1と同様にして、重合体組成物を得た。該組成物を用いて実施例1と同様にモノフィラメントを製造し、ペルメトリンブリード量を測定した。結果を表1に示した。モノステアリン酸グリセロールのHLB値は4.4であった。
〔実施例2〕
放出性活性化合物含有コンパウンドの調整時にミリスチン酸エチルエステルの代わりにジステアリン酸グリセロールとした以外は、実施例1と同様にして、モノフィラメントを作製しペルメトリンブリード量を測定した。この結果を表1に示した。ジステアリン酸グリセロールのHLB値は3.4であった。
Figure 2011127018

Claims (11)

  1. オレフィン系重合体100重量部と、該オレフィン系重合体100重量部に対し、HLB値が4以下であるエステル0.01〜100重量部と、放出性活性化合物0.01〜200重量部とを含む重合体組成物。
  2. 前記放出性活性化合物が、害虫防除剤および/または滑剤である請求項1に記載の重合体組成物。
  3. 前記放出性活性化合物が、ピレスロイド系化合物である請求項2に記載の重合体組成物。
  4. 前記オレフィン系重合体がエチレン系重合体である請求項1−3いずれかに記載の重合体組成物。
  5. 前記エチレン系重合体がエチレン−α−オレフィン共重合体であり、その密度が870〜980kg/m3、MFRが0.1〜20g/10minである、請求項4に記載の重合体組成物。
  6. 請求項1〜5いずれかに記載の重合体組成物を成形して得られる成形体。
  7. 2倍以上に延伸されている請求項6に記載の成形体。
  8. フィラメントである請求項7に記載の成形体。
  9. 請求項8に記載のフィラメントから形成される蚊帳。
  10. オレフィン系重合体100重量部と、該オレフィン系重合体100重量部に対し、HLB値が4以下であるエステル0.01〜100重量部と、放出性活性化合物0.01〜200重量部とを含む重合体組成物を、2倍以上に延伸することを特徴とする成形体の製造方法
  11. フィラメントを製造する、請求項10に記載の製造方法。
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