JP2010018764A - インクセット、インクジェット記録方法、記録ユニット及びインクジェット記録装置 - Google Patents

インクセット、インクジェット記録方法、記録ユニット及びインクジェット記録装置 Download PDF

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Abstract

【課題】特に普通紙記録において、十分な画像濃度が得られ、画像濃度の均一性が高く、特にカラー画像におけるブリードを防止し、高い文字品位や、優れた耐水性、耐光性を示す堅牢性の高い画像が得られるインクセットの提供。
【解決手段】第1のインクと、該インクとは色彩が異なるか無色の第2のインクとを独立に有し、普通紙などの記録媒体に付与して記録媒体上への画像形成に用いられ、第1のインクは、一般式(I)の化合物と、顔料粒子の表面にアニオン性官能基が化学的に結合している顔料と、水性媒体とを含んでなるpHが3から10の水性インクであり、第2のインクは、第1のインクと混合されたときに第1のインク中の顔料の分散を不安定化させる反応性化合物を含んでなる水性インクであるインクセット、これを用いたインクジェット記録方法、記録ユニット、インクジェット記録装置。
【選択図】なし

Description

本発明は、セルロースを含有する記録媒体に付与して画像を形成するのに用いられるインクセット、インクジェット記録方法、記録ユニット及びインクジェット記録装置に関する。とりわけ、普通紙に画像形成を行った場合に、充分な画像濃度を有する鮮明で高品質な画像を与え、さらに、印字物の画像が、耐水性や耐光性などの堅牢性に優れるものとなる技術に関する。本発明は、上記した効果に加えて、異色のインク画像同士が隣接した場合にも、その境界領域におけるブリードが十分に緩和されたカラー画像を与えるインクセット、これを用いたインクジェット記録方法、記録ユニット及びインクジェット記録装置に関する。
インクジェット記録は、種々のインク吐出方式によりインクの小滴を発生させ、これを飛翔させて紙などの記録媒体に付着させ、インクジェットを形成させて記録を行うものであり、騒音の発生が少なく、高速印字、多色印字を行えるという利点がある。インクジェット記録方式としては、高電圧印加による静電吸引方式、圧電素子を用いて着色インクに機械的振動又は変位を与える方式、インクを加熱して発泡させる圧力を利用する方式など、種々の方式がある。
上記したインクジェット記録方式でカラー画像を形成する場合には、一般に、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の三原色の水性インクが使用されている。さらに、提供される画像は、文字画像なども多いことから、ブラック(Bk)の画像を記録する頻度が高いため、上記したC、M及びYの三原色インクに加えて、Bkの水性インクが追加されて、4色インクが使用されるのが、より一般的である。
インクジェット記録方式で、特に普通紙などのセルロースを含有する記録媒体に対して高精細な画像を形成するためには、インクジェット記録に使用する水性インクに対し、下記に挙げるような性能が求められる。すなわち、フェザリングや滲みのないこと、カラー画像においては、異色間同士の色の混じり合い(ブリード)がないこと、また得られる画像の堅牢性として、耐水性、耐光性などが良好であることなどが求められる。
また特に、文字が主体の画像を形成する際に多く用いられるBkインクには、良好な文字品位、高い画像濃度や黒色再現性が求められる。しかし、色材に水溶性染料を用いた水性インクでは、画像の耐水性が十分ではないという問題があり、色材に顔料が用いられるようになってきている。顔料を水性インクの色材として使用するためには、水性媒体中に顔料を安定に分散させることが必要である。特許文献1には、顔料の分散性を高めるために、分散剤として水溶性樹脂を使用する方法が開示されている。
また、分散剤を使用しない顔料の分散方法としては、顔料粒子表面に親水性基を導入することで顔料を自己分散性に改質し、分散剤を用いることなく顔料を水性媒体中に分散させる方法が提案されている(特許文献2及び3参照)。これら自己分散型の顔料は、顔料粒子表面の親水性基によってカチオン性若しくはアニオン性に帯電しており、そのイオンの反発によって水分散性を有し、またその親水性基により親水性が向上したものになっている。そのため、インクを長期間保存した場合にも、水性媒体中に顔料が安定して分散された顔料インクが得られる。このような顔料を色材として用いた水性インクで画像形成を行うことで、良好な文字品位と高い画像濃度の画像を得ることができる。また、形成画像の耐水性も、染料インクで形成した画像に比べて格段に良好なものとなる。しかし、このような顔料インクを用いた場合でも、ブリードの問題は改善されていない。
ここでブリードとは、C、M、Y及びBkの4色のインクを用い、異色のインクを記録媒体の隣接した領域に付与して画像を形成した場合、その境界部においてインクが未定着のまま部分的に混じり合い、その結果、異色間の境界滲みが生じるという現象である。特に、Bkとカラーの2つのインクを隣接させる場合では、このブリード現象が顕著になる。
ブリードの問題を解決するための手段として、特定の構成のインク中に界面活性剤などの浸透性を高める化合物を添加したインクを用いること(特許文献4参照)、また、揮発性溶媒を主体としたインクを用いること(特許文献5参照)、が提案されている。しかし、前者の方法では、インクの記録紙への浸透性が向上し、ブリードはある程度抑えられるものの、インクが着色剤と共に記録紙の奥深くまで浸透してしまうため、画像濃度が低下したり、画像の鮮明性が低下したりするなどの不具合があった。また、記録紙表面に対するインクの濡れ性が向上するため、インクが広がり易く、解像性が低下したり、滲みが発生し、特に、黒文字を表現する場合に品位が低下したりして、十分なものとは言い難かった。一方、後者の場合には、前者の不具合に加え、記録ヘッドのノズル部での溶剤の蒸発による目詰まりが発生し易く、この点で問題があった。
ブリードの問題を解決するための手段として、その他にも種々の提案がされている。例えば、化学反応により析出する水溶性染料を組み合わせたインクセットでカラー画像を形成する方法についての提案がある(特許文献6乃至8参照)。これらの技術は、色材としてpH感応性染料を用いたり、沈殿剤を用いることで、記録媒体にインクを付与した後に染料を析出させることで、ブリードを防止するものである。
また、異色のインクの極性を変えることによって、異色間のインクの境界部での混合を防ぐ方法についての提案がある(特許文献9及び10参照)。特許文献9に記載の方法では、2色以上のどちらかに、ポリマーを含有させたアニオン性のインク、カチオン性のインクを接触させて、ブリードを低減させている。また特許文献10に記載の方法では、アニオン性染料とカチオン染料の組み合わせ、若しくは、一方が水溶性染料でもう一方が非水溶性染料と高分子物質という組み合わせにより、ブリード低減を試みている。
これらに開示されているインクセットは、アニオン性とカチオン性という異なる極性のインク同士の反応で、異色インクの境界部で造塩、凝集させることによりブリードを低減させている。そして、インク極性は、水溶性染料や水溶性ポリマーに由来するものであるが、これらインクの極性を左右しているこれらの物質は、水性媒体中に均一に溶解している。そのため、異色インク間境界部での造塩、凝集の反応が、水溶性染料分子や水溶性ポリマー分子という小さな分子レベルで起きているために、急激な凝集とはならなく、完全にブリードを防ぐまでには至っていない。加えて、染料が造塩反応を起こす場合では、色調の変化も生じてしまうという問題もある。また、これらの技術では、インクセットを構成する各インクの少なくとも1つに、水溶性染料を色材に使用したインクを用いているため、得られる記録画像の耐水性が問題となる。
特開平3−210373号公報 特開平5−186704号公報 特開平8−3498号公報 特開昭55−65269号公報 特開昭55−66976号公報 特開平5−208548号公報 特開平6−57192号公報 特開平6−106841号公報 特開平7−145336号公報 特開平9−109547号公報
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は下記の点にある。本発明の目的は、特に普通紙記録において、十分な画像濃度が得られ、画像濃度の均一性が高く、特にカラー画像におけるブリードを防止し、また、高い文字品位や、優れた耐水性、耐光性を示す堅牢性の高い画像が得られるインクセットを提供することである。本発明の他の目的は、このようなインクセットを用いたることで、高品位で、堅牢性に優れるカラー画像を形成することのできるインクジェット記録方法、記録ユニット及びインクジェット記録装置を提供することにある。
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、少なくとも第1のインクと、該第1のインクとは色彩が異なるか無色である第2のインクとを独立に有してなり、これらのインクをセルロースを含有する記録媒体に付与して画像を形成する記録方法に用いられるインクセットであって、該第1のインクは、下記一般式(I)の化合物と、色材として、表面に直接或いは他の原子団を介してアニオン性官能基が化学的に結合している顔料と、該顔料の分散媒としての水性媒体とを含んでなるpHが3から10の水性インクであり、該第2のインクは、該第1のインクと混合されたときに該第1のインク中の顔料の分散を不安定化させる反応性化合物と、水性媒体とを含んでなる水性インクであることを特徴とするインクセットである。
Figure 2010018764
(式中、M1及びM2は、独立して、水素原子、アルカリ金属、有機アミンを示し、Rは、アルキル基又はアリール基、アルキルアリール基を表す。nは、0≦n≦7のいずれかの整数を表す。)
また、本発明の別の実施形態は、上記構成のインクセットを用い、セルロースを含有する記録媒体上にインクジェット方式でカラー画像を形成するインクジェット記録方法であって、上記インクセットを構成している第1のインクをインクジェット記録方法で記録媒体に付与する工程と、上記インクセットを構成している第2のインクを上記記録媒体に付与する工程とを有し、第1のインクと第2のインクとを接触させることを特徴とするインクジェット記録方法である。
また、本発明の別の実施形態は、前記インクセットを構成している第1のインクを収容している第1のインク収容部と、第2のインクを収容している第2の収容部と、各々のインクを独立して吐出するためのインクジェットヘッド群と、を有していることを特徴とする記録ユニットである。
また、本発明の別の実施形態は、上記の記録ユニットを備えていることを特徴とするインクジェット記録装置である。
本発明によれば、特に普通紙記録において、十分な画像濃度が得られ、画像濃度の均一性が高く、特にカラー画像におけるブリードを防止し、また、高い文字品位や、優れた耐水性、耐光性を示す堅牢性の高い画像が得られるインクセットが提供される。また、本発明によれば、高品位で、堅牢性に優れるカラー画像を形成することのできるインクジェット記録方法、記録ユニット及びインクジェット記録装置の提供が可能となる。
以下、好ましい実施の形態を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明者らは、上記した従来技術の課題について鋭意検討の結果、特定の化合物と特定の色材を含む第1のインクと、該第1のインクとは色彩が異なるか無色である第2のインクとを組み合わせてインクセットとすることで、上記目的が達成されることを見出した。本発明のインクセットを特徴づける第1のインクと、該第1のインクとともに使用される第2のインクについて、それぞれを構成する成分などについて説明する。
本発明のインクセットを構成する第1のインクは、下記の3成分を含有し、そのpHが3から10に調整された水性インクであることを要する。すなわち、第1のインクは、下記一般式(I)の化合物と、色材として、表面に直接或いは他の原子団を介してアニオン性官能基が化学的に結合している顔料と、該顔料の分散媒としての水性媒体とを含んでなる。
Figure 2010018764
(式中、M1及びM2は、独立して、水素原子、アルカリ金属、有機アミンを示し、Rは、アルキル基又はアリール基、アルキルアリール基を表す。nは、0≦n≦7のいずれかの整数を表す。)
本発明のインクセットを構成する第2のインクは、上記第1のインクと混合されたときに、上記第1のインク中の顔料の分散を不安定化させる反応性化合物を含んでなる水性インクであることを要する。
上記本発明のインクセットのより好ましい形態としては、第1或いは第2のインクが、下記の要件を満たす水性インク(以下、単にインクという)であることが挙げられる。まず、第1のインクのより好ましい構成としては、下記のことが挙げられる。第1のインク中の前記一般式(I)の化合物が、エチレンオキサイド鎖を含まない[すなわち、前記式(I)中のn=0である]こと。第1のインク中の顔料の平均粒径が60nmから180nmの範囲にあること。第1のインク中の顔料粒子の表面に直接或いは他の原子団を介して化学的に結合しているアニオン性官能基が、カルボン酸若しくはスルホン酸であること。第1のインク中の顔料に結合しているアニオン性官能基の数が、顔料1gに対して100μmol/g以上5,000μmol/g以下であること。さらに、第1のインク中の顔料粒子に結合しているアニオン性官能基が、顔料1gへの付与量として300μmol/g以上2,500μmol/g以下であること。第1のインクが多価金属イオンを含み、該多価金属イオン濃度が300ppm以下であること。第1のインクがブラックインクであること。
また、第2のインクのより好ましい構成としては、第2のインク中に、多価金属塩、低分子カチオン性化合物、カチオン性ポリマーのいずれかを含むことが挙げられる。
[第1のインク]
(一般式(I)で表される化合物)
本発明のインクセットを構成する第1のインクは、下記一般式(I)で表される化合物を含むものであることを要するが、本発明のインクセットで画像形成した場合に、第1のインクと第2のインクとの反応によって優れたブリード抑制効果が発揮される。本発明者らの検討によれば、特に、一般式(I)の化合物の中でもエチレンオキサイド鎖を含まない(n=0)化合物を用いた場合に、より強いブリード抑制効果が発揮され、さらにより高い画像濃度を得ることができる。
Figure 2010018764
(式中、M1、M2は、独立して水素原子、アルカリ金属、有機アミンを示し、Rは、アルキル基又はアリール基、アルキルアリール基を表す。nは、0≦n≦7の整数を表す。)
上記一般式(I)の化合物を用いることで、優れたブリード抑制効果が認められる理由は定かではないが、本発明者らは以下のように考えている。上記構造を有する一般式(I)の化合物は、第1のインク中では、顔料表面に存在する疎水部に該化合物の疎水部が吸着し、親水部が水性媒体と親和して分散助剤として働く。一方、画像を形成する際に第2のインクと接触すると、下記のように機能する。上記一般式(I)の化合物は、構造中にリンに結合している酸基が2つあるため、第2のインク中に含有させた第1のインク中の顔料の分散を不安定化させるための反応成分と強く反応し、疎水化されることで顔料の親水性を低下させると考えられる。このため、異色インクが隣接して打ち込まれた場合における顔料の異色インクへの流出が抑制され、結果として、ブリード現象が抑制された高品位画像が得られたものと推測される。
上記において顔料の疎水化をより促進するためには、前記一般式(I)の化合物の疎水性はより高い方が好ましい。したがって、親水性を示すエチレンオキサイド鎖数(一般式(I)中のnの数)はより少ない方が好ましい。しかし、その分、水溶液中への一般式(I)で表される化合物の溶解度は減少するため、該化合物が水溶液中で溶解又は分散する範囲で、n及びRを設定する必要がある。インク中における一般式(I)で表される化合物の含有量は特に限定されないが、インク全量に対して、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは、0.05質量%以上5質量%以下である。
前記一般式(I)の化合物の好ましい具体例を以下に示す。
Figure 2010018764
Figure 2010018764
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Figure 2010018764
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(顔料)
本発明のインクセットを構成する第1のインクに含まれる顔料は、顔料粒子の表面に直接或いは他の原子団を介してアニオン性官能基が化学的に結合している顔料であることを要する。インク中における顔料の含有量は特に限定されないが、下記のように構成することが好ましい。インク中への添加量はこの範囲に限定されるものではないが、下記の範囲で添加させることが好ましい。インク全量に対して0.1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、特には0.2質量%以上12質量%以下、さらには0.3質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
以下、第1のインクに含まれる顔料を構成する顔料粒子(以下、単に顔料という。)について説明する。まず、黒色インクに使用される顔料としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラックが好適である。カーボンブラックの中でも、以下の特性を持つものが好ましく用いられる。すなわち、一次粒子径が15nm以上40nm以下、BET法による比表面積が50m2/g以上300m2/g以下、DBP吸油量が40ml/100g以上150ml/100g以下、揮発分が0.5質量%以上10質量%以下の特性を持つものである。
カラーインクに使用される顔料としては、下記に挙げるような有機顔料が好適に使用される。具体的には、下記の顔料が例示できる。トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッドなどの不溶性アゾ顔料。リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2Bなどの水溶性アゾ顔料。アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーンなどの建染染料からの誘導体。フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料。キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタなどのキナクリドン系顔料。ペリレンレッド、ペリレンスカーレットなどのペリレン系顔料。イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジなどのイソインドリノン系顔料。ベンズイミダゾロンイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッドなどのイミダゾロン系顔料。ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジなどのピランスロン系顔料。インジゴ系顔料。縮合アゾ系顔料、チオインジゴ系顔料。ジケトピロロピロール系顔料。フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、キノフタロンイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレットなど。
また、有機顔料を、カラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示すと、下記のようなものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー12、同13、同14、同17、同20、同24、同55、同74、同83、同86、同93、同97、同98、同109、同110、同117、同120、同125、同同128。C.I.ピグメントイエロー137、同138、同139、同147、同148、同150、同151、同153、同154、同155、同166、同168、同180、同185。C.I.ピグメントオレンジ16、同36、同43、同51、同55、同59、同61、同71。C.I.ピグメントレッド9、同48、同49、同52、同53、同57、同97、同122、同123、同149、同168、同175、同176、同177、同180、同192。C.I.ピグメントレッド202、同209、同215、同216、同217、同220、同223、同224、同226、同227、同228、同238、同240、同254、同255、同272。C.I.ピグメントバイオレット19、同23、同29、同30、同37、同40、同50。C.I.ピグメントブルー15、同15:1、同15:3、同15:4、同15:6、同22、同60、同64。C.I.ピグメントグリーン7、同36。C.I.ピグメントブラウン23、同25、同26などが例示できる。上記のような顔料以外でも使用することができるが、これらの顔料の中でも、特に、下記に挙げるものが好ましい。C.I.ピグメントイエロー13、同17、同55、同74、同93、同97、同98、同110、同128、同139、同147、同150、同151、同154、同155、同180、同185。C.I.ピグメントレッド122、同202、同209。C.I.ピグメントブルー15:3、同15:4が好ましい。
さらに、インクジェット記録に用いるインクに含有させる顔料は、1次粒子が微粒子化されたものであることが好ましい。この際に用いる微粒子化の方法としては、下記に挙げる方法を用いることができる。例えば、ビーズミルなどによる強い摩砕をかける方法、ジェットミルなどを使用する機械的方法、或いは、顔料の合成時に1次粒子径ができるだけ細かく、かつ、表面活性の低い顔料を合成する方法が挙げられる。また、不活性ガス中での蒸発法による微粒子化、すなわち気相法などの方法が挙げられる。画像形成した場合に、顔料の普通紙への好ましい吸着力を得るためには、インクに含有させる顔料の平均粒径を、60nm以上180nm以下、好ましくは80nm以上170nm以下、より好ましくは100nm以上160nm以下とする。
(顔料粒子の表面に化学的に結合させるアニオン性官能基)
前述したように、本発明で使用する第1のインクを構成する顔料は、顔料粒子の表面に直接或いは他の原子団を介してアニオン性官能基が化学的に結合しているアニオン性官能基を付与した顔料であるが、上記官能基について説明する。該官能基としては、例えば、−COO(M2)、−SO3(M2)2、−PO3H(M2)、−PO3(M2)2などの親水性基を結合させたものが挙げられる。ただし、式中のM2は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わす。
上記親水性基中「M2」として表したもののうち、アルカリ金属の具体例としては、例えば、Li、Na、K、Rb及びCsなどが挙げられる。また、有機アンモニウムの具体例としては、例えば、下記のものが挙げられる。すなわち、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、モノヒドロキシメチルアミン、ジヒドロキシメチルアミン、トリヒドロキシメチルアミンなどである。
本発明で使用する顔料粒子の表面に直接或いは他の原子団を介してアニオン性官能基が化学的に結合しているアニオン性官能基を付与した顔料の製造方法の具体例としては、カーボンブラックを次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法などが挙げられる。この方法によれば、カーボンブラック表面に、親水性基である−COONa基を化学結合させることができる。
ところで、上記したような種々の親水性基は、顔料の表面に直接結合させてもよいし、或いは、他の原子団を顔料表面と上記したような親水性基との間に介在させ、親水性基を顔料表面に間接的に結合させてもよい。ここで他の原子団の具体例としては、例えば、炭素原子数1乃至12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、置換若しくは未置換のフェニレン基、置換若しくは未置換のナフチレン基が挙げられる。ここで、フェニレン基及びナフチレン基の置換基としては、例えば、炭素数1乃至6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。また、他の原子団と親水性基の組み合わせの具体例としては、例えば、−C24−COO(M2)、−Ph−SO3(M2)2、−Ph−COO(M2)などが挙げられる。ただし、上記のPhはフェニル基を表す。
ここで、顔料粒子に結合しているアニオン性官能基の数(親水化処理量)は、顔料1gに対して100μmol/g以上5,000μmol/g以下であることが好ましく、より好ましくは、300μmol/g以上2,500μmol/g以下である。親水化処理量が100μmol/g未満では、水溶液中で安定に分散されず、顔料が沈降してしまい、インクとしての信頼性に欠ける場合がある。一方、親水化処理量が5,000μmol/gを超えると、印字物のブリードが十分に抑制されない場合があるので好ましくない。第1のインク中の顔料及び一般式(I)の化合物と、第2のインク中の反応性化合物との反応によって顔料の疎水性を高めても、顔料の親水性が十分に高いため、分散が不安定化されず、結果として、印字物のブリードが十分に抑制されないことがある。
(水性媒体)
本発明で使用する第1インクは、水性媒体を必須成分とするが、水を含有するものであることが好ましい。インク中の水の含有量は、インク全質量に対して、30質量%以上であることが好ましく、また、95質量%以下であることが好ましい。また、水性媒体として、水と水溶性溶剤が併用された水性媒体が使用される場合も多い。水と併用される水溶性溶剤としては、下記のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ペンタノールなどの炭素数1乃至5のアルキルアルコール類。ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類。アセトン、ジアセトンアルコールなどのケトン又はケトアルコール類。テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類。ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのオキシエチレン又はオキシプロピレン重合体。エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールなどのアルキレン基が2乃至6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類。1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどのトリオール類。エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル、ブチル)エーテルなどのグリコールの低級アルキルエーテル類。トリエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル、テトラエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテルなどの多価アルコールの低級ジアルキルエーテル類。モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン類。スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、尿素、エチレン尿素、ビスヒドロキシエチルスルフォン、ジグリセリン、トリグリセリンなどが挙げられる。水と併用される水溶性溶剤の種類や含有量は特に限定されないが、インク全量に対して、3質量%以上であることが好ましく、また、60質量%以下であることが好ましい。
(界面活性剤)
本発明で使用する第1インクにおいて、よりバランスのよい吐出安定性を得るためには、インク中に界面活性剤をさらに含有することが好ましい。中でもノニオン界面活性剤を、一般式(I)の化合物に対して質量比で、1/10乃至10/1の割合で併用することが好適である。この際に使用する界面活性剤は、中でもアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物が特に好ましい。また、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値は、10以上であることが好ましい。こうして併用される界面活性剤の含有量は、インク全量に対して0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましく、特には0.05質量%以上4質量%以下、さらには0.1質量%以上3質量%以下であることが好ましい。
(その他の添加剤)
また、本発明で使用する第1インクは、所望の物性値を有するインクとするために、上記した成分の他に必要に応じて、添加剤として、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤などを添加することができる。添加剤の選択は、インクの表面張力が25mN/m以上、好ましくは28mN/m以上になるようにすることが好ましい。
(pH)
本発明で使用する第1のインクのpHは、3乃至10の範囲に調整されたものであることを要す。pHが3未満では、先に説明した一般式(I)の化合物、或いは、本発明で使用する顔料の溶解性が低くなり、インク中に析出物が発生する場合がある。また、pHが10より大きくなると、第1のインクと第2のインクが接触しても分散が不安定化されず、本発明の技術課題が解決できない場合がある。なお、第1のインクのpH調整には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを用いることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
(多価金属)
さらに、本発明で使用する第1のインクは、その他に金属を含有するものであってもよい。しかし、先に説明した一般式(I)の化合物自体が多価金属と反応することを考慮すると、第1のインクに含まれる多価金属のイオン濃度はできるだけ少なくすることが好ましい。具体的には、300ppm以下であることが好ましい。これは、本発明で使用する第1のインク中の多価金属イオン濃度が300ppmを超えると、該化合物を使用する効果が十分に発揮されない場合があるためである。
[第2のインク]
(反応性化合物)
本発明のインクセットを構成する第2のインクは、第1のインクとは色彩が異なるか無色である水性インクである。ここで、『無色』とは、インクの構成成分として積極的に色材を含有させていないことを意味しており、第1のインクと混合した場合に第1のインクの色調を変化させない程度に着色されたものであってもよい。さらに、本発明のインクセットを構成する第2のインクは、先に説明した第1のインクと混合されたときに、第1のインク中の顔料の分散を不安定化させる反応性化合物を含んでなる水性インクであることを要する。なお、ここで言う『顔料の分散を不安定化させる』とは、第1のインクと第2のインクを混合した場合に不溶物が生ずるものを意味する。この不溶物は、目視にて判断できる凝集物が大半であるが、例えば、孔径1μm程度のフィルターで濾過した際に析出物があるか否かで確認できる程度の凝集物を指す。
第1のインクと混合されたときに前記顔料の分散を不安定化させる、本発明の第2のインクに含有する反応性化合物としては、第1のインク中の顔料、及び一般式(I)の化合物と化学反応を起こし、顔料の分散を不安定化するものであればいずれでもよい。例えば、多価金属塩、低分子カチオン性化合物、カチオン性ポリマーなどが代表的なものとして挙げられ、具体的には、下記に挙げたようなものが使用できるが、これらに限定されるものではない。
多価金属塩の具体例としては、下記のものが挙げられる。多価金属塩としては、アルカリ土類金属塩や遷移金属塩が挙げられる。アルカリ土類金属塩としては、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウムなどが挙げられる。遷移金属塩としては、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、塩化銅(II)、硝酸イットリウム、塩化ジルコニウムなどが挙げられる。また、低分子カチオン化合物の代表的なものとしては、アミン系化合物が挙げられ、特に四級アンモニウム塩が好ましい。具体的には、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド。また、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリドなどが挙げられる。さらに、カチオン性ポリマーとしては、カチオン性モノマーのホモポリマー又はコポリマーなどポリマー分子中にカチオン性基を有すればいずれでもよい。具体例としては、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、N−ビニルホルムアミドを共重合成分としたポリマーの加水分解物などが挙げられる。
これらの反応性化合物は単独で使用してもよく、また併用しても構わない。添加量としては、第1のインクと第2のインクとが混合された場合に化学反応を起こすだけの量があればいずれでもよい。通常、第2のインク全量に対して0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、特には0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。また、第2のインクにも第1のインクと同様に、水溶性溶剤、水、界面活性剤、各種添加剤を配合してもよい。また第2のインクは、色材が入っていても、入っていなくてもいずれでもよい。第2のインクに色材を含有させる場合には、第1のインクとは色彩が異なる色材を用いる。当然ながら、第2のインクに含有させる色材は、第2のインクを構成する前記したような反応性化合物と反応しないか、或いは、反応性化合物が存在しても水溶液中で安定に溶解又は分散可能なものを選定する必要がある。
本発明のインクセットは、インクジェット記録方式による記録に好適に用いられる。すなわち、本発明のインクセットを用い、セルロースを含有する記録媒体上にインクジェット方式でカラー画像を形成した場合に、高品位で、堅牢性に優れるカラー画像を形成することができる。本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインクセットを構成している第1のインクをインクジェット記録方法で上記記録媒体に付与する工程と、上記インクセットを構成している第2のインクを上記記録媒体に付与する工程とを有する。さらに、本発明のインクセットを構成する第1のインクと第2のインクとを接触させることを特徴とする。
インクジェット記録方式としては、インクに力学的エネルギーを作用させてインクを吐出する記録方法、及びインクに熱エネルギーを加えてインクの発泡によりインクを吐出する記録方法があるが、本発明では、いずれの記録方法も用いることができる。本発明のインクジェット記録方法では、中でも熱エネルギーを利用したサーマルジェット方式を用いることが好ましい。また、第1のインクと第2のインクを接触させる接触方法は特に限定されるものではないが、例えば、下記に挙げるような方法で行えばよい。記録媒体に、どちらか一方のインクを先にインクジェット記録方法で付与した後、その上に重なるか、或いは隣接するようにもう一方をインクジェット記録方法で付与する方法が好ましい。また、第2のインクをローラーなどで記録媒体に塗布した上に、第1のインクをインクジェット記録方法で付与することも有効である。
次に、上記した本発明のインクセットを用いて記録を行うことを特徴とする本発明のインクジェット記録装置の好適な一例を以下に説明する。本発明のインクジェット記録装置は、下記の構成の記録ユニットを備えていることを特徴とする。該記録ユニットは、本発明のインクセットを構成する第1のインクを収容している第1のインク収容部と、第2のインクを収容している第2の収容部と、各々のインクを独立して吐出するためのインクジェットヘッド群と、を有していることを特徴とする。
図1及び図2に、熱エネルギーを利用したインクジェット記録装置の主要部であるヘッド構成の一例を示す。図1は、インク流路に沿ったヘッド13の断面図であり、図2は、図1のA−B線での切断面図である。ヘッド13は、インクを通す流路(ノズル)14を有するガラス、セラミック、シリコン又はプラスチック板などと発熱素子基板15とを接着して得られる。発熱素子基板15は、保護層16、電極17−1及び17−2、発熱抵抗体層18、蓄熱層19及び基板20よりなっている。保護層16は、酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコンなどで形成されている。電極17−1及び17−2は、アルミニウム、金、アルミニウム−銅合金などで形成されている。発熱抵抗体層18は、HfB2、TaN、TaAlなどの高融点材料で形成される。蓄熱層19は、熱酸化シリコン、酸化アルミニウムなどで形成され基板20、基板20は、シリコン、アルミニウム、窒化アルミニウムなどの放熱性のよい材料で形成されている。
熱エネルギーを利用したインクジェット記録装置では、上記のような構成からなる記録ヘッドから、下記のようにしてインクが吐出される。まず、上記ヘッド13の電極17−1及び17−2にパルス状の電気信号が印加されると、発熱素子基板15のnで示される領域が急速に発熱し、この表面に接しているインク21に気泡が発生する。すると、その気泡の圧力でメニスカス23が突出し、インク21がヘッドのノズル14を通して吐出し、吐出オリフィス22よりインク小滴24となり、記録媒体25に向かって飛翔する。図3に、図1に示したヘッドを多数並べたマルチヘッドの一例の外観図を示す。このマルチヘッドは、マルチノズル26を有するガラス板27と、図1に説明したものと同じような構成の発熱ヘッド28を接着して作られている。
図4に、このヘッドを組み込んだインクジェット記録装置の一例を示した。図4において、61はワイピング部材としてのブレードであり、その一端はブレード保持部材によって保持固定されており、カンチレバーの形態をなす。ブレード61は記録ヘッド65による記録領域に隣接した位置に配置され、また、本例の場合、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。
62は、記録ヘッド65の突出口面のキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配置され、記録ヘッド65の移動方向と垂直な方向に移動して、インク吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成を備える。さらに、63は、ブレード61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。上記ブレード61、キャップ62及びインク吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61及びインク吸収体63によって吐出口面に、水分、塵埃などの除去が行われる。
65は、吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66はガイド軸67と摺動可能に係合し、キャリッジ66の一部はモーター68によって駆動されるベルト69と接続(不図示)している。これによりキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接した領域の移動が可能となる。
51は、記録媒体を挿入するための給紙部、52は、不図示のモーターにより駆動される紙送りローラーである。これらの構成により記録ヘッドの65吐出口面と対向する位置へ記録媒体が給紙され、記録が進行につれて排紙ローラー53を配した排紙部へ排紙される。以上の構成において記録ヘッド65が記録終了してホームポジションへ戻る際、吐出回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。その結果、記録ヘッド65の吐出口がワイピングされる。
なお、キャップ62が記録ヘッド65の吐出面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッドの移動経路中に突出するように移動する。記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード61は上記したワイピングの時の位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。上述の記録ヘッドのホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッドが記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行われる。
図5は、記録ヘッドにインク供給部材、例えば、チューブを介して供給されるインクを収容したインクカートリッジの一例を示す図である。ここで40は、供給用インクを収納したインク収容部、例えば、インク袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。この栓42に針(不図示)を挿入することにより、インク袋40中のインクをヘッドに供給可能にする。44は廃インクを受容するインク吸収体である。インク収容部としてはインクとの接液面がポリオレフィン、特にポリエチレンで形成されているものが好ましい。
本発明のインクジェット記録装置は、上述のように記録ヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、図6に示したような、それらが一体になったものにも好適に用いられる。図6において、70は記録ユニットであり、この中にはインクを収容したインク収容部、例えば、インク吸収体が収納されており、かかるインク吸収体中のインクが複数オリフィスを有するヘッド部71からインク滴として吐出される構成になっている。インク吸収体の材料としては、本発明においてはポリウレタンを用いることが好ましい。また、インク吸収体を用いず、インク収容部が内部にバネなどを仕込んだインク袋であるような構造でもよい。72は、カートリッジ内部を大気に連通させるための大気連通口である。この記録ユニット70は、図4に示す記録ヘッド65に換えて用いられるものであって、キャリッジ66に対して着脱自在になっている。
次に、力学的エネルギーを利用してインクを吐出させる構成のインクジェット記録装置の好ましい一例について説明する。このような装置を構成する記録ヘッドとしては、下記のようなオンデマンドインクジェット記録ヘッドを挙げることができる。該記録ヘッドでは、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクとを備えてなる。そして、印加電圧によって圧力発生素子を変位させ、インクの小液滴をノズルから吐出させるように構成されている。図7に、力学的エネルギーを利用してインクを吐出させる方式の記録装置の主要部である記録ヘッドの構成の一例を示す。
記録ヘッドは、インク室(不図示)に連通したインク流路80と、所望の体積のインク滴を吐出するためのオリフィスプレート81と、振動板82と、圧電素子83と、オリフィスプレート81、振動板82などを支持固定する基板84とから構成されている。振動板82は、インクに直接圧力を作用させるものであり、圧電素子83は、この振動板82に接合されており、電気信号により変位するように構成されている。
図7に示した記録ヘッドを構成する各部材は、下記に挙げるような材料からなるものである。インク流路80は、感光性樹脂などで形成され、オリフィスプレート81は、ステンレス、ニッケルなどの金属からなるが、電鋳やプレス加工による穴あけなどによってインクの吐出口85が形成されている。また、振動板82は、ステンレス、ニッケル、チタンなどの金属フイルム及び高弾性樹脂フイルムなどで形成され、圧電素子83は、チタン酸バリウム、PZTなどの誘電体材料で形成されている。
力学的エネルギーを利用してインクを吐出させる方式のインクジェット記録装置では、上記のような構成からなる記録ヘッドから、下記のようにしてインクが吐出されて記録が行われる。まず、圧電素子83にパルス状の電圧を与えることで歪み応力を発生させる。すると、そのエネルギーが圧電素子83に接合された振動板82を変形させ、インク流路80内のインクを垂直に加圧し、インク滴(不図示)をオリフィスプレート81の吐出口85より吐出して記録が行われるように動作する。上記方式の記録ヘッドも、図4に示したものと同様なインクジェット記録装置に組み込んで使用される。この際におけるインクジェット記録装置の細部の動作は、先述した熱エネルギーを利用してインクを吐出させる記録方式の装置と同様に行うもので差しつかえない。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の記載で「部」、及び「%」とあるのは特に断りのない限り、質量基準である。なお、実施例では、本発明で規定する第1のインク及び第2のインクを用いるが、比較例においても2種類のインクを用いたので、便宜上、これらのインクも第1のインク及び第2のインクと呼ぶ。
<ブラック顔料A製造例>
比表面積が220m2/gでDBP吸油量が105ml/100gのカーボンブラック100gと、p−アミノ安息香酸25gとを水750gによく混合した後、これに硝酸16.2gを滴下して70℃で攪拌した。ここにさらに数分後、50gの水に10.7gの亜硝酸ナトリウムを溶かした溶液を加え、さらに1時間攪拌した。得られたスラリーを濾紙(商品名:東洋濾紙No.2;アドバンティス社製)で濾過し、濾取した顔料粒子を十分に水洗し、90℃のオーブンで乾燥させた。以上の方法により、カーボンブラックの表面にアニオン性官能基であるp−安息香酸基が導入されたブラック顔料Aを作製した。
上記で作製したブラック顔料の表面官能基密度を水酸化ナトリウムによる中和滴定を行い、その値から粒子表面のアニオン性官能基の密度(顔料1gへのアニオン性官能基の付与量)を換算したところ、700μmol/gであった。また、上記で作製したブラック顔料の平均粒径を濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子製)にて測定したところ、平均粒径は110nmであった。
<第1のインク1〜5の調製例>
第1のインク1〜5の調製は、ブラック顔料Aを使用し、下記処方で各成分を加えて所定の濃度(合計100部)にし、これらを十分に混合撹拌し、水酸化カリウムにてpHを8.5に調整した。その後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過して第1のインク1〜5を調製した。なお、各インクに含有させたノニオン系界面活性剤であるアセチレングリコールエチレンオキサイド付加物には、アセチレノールEH(商品名、川研ファインケミカル製)を用いた。
〔第1のインク1〕
・ブラック顔料A 4部
・グリセリン 10部
・トリエチレングリコール 5部
・トリメチロールプロパン 5部
・下記化合物(a) 0.5部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 0.5部
・水 残部
Figure 2010018764
〔第1のインク2〕
・ブラック顔料A 4部
・ジグリセリン 12部
・ジエチレングリコール 4部
・トリメチロールプロパン 4部
・下記化合物(b) 0.5部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 0.5部
・水 残部
Figure 2010018764
〔第1のインク3〕
・ブラック顔料A 4部
・グリセリン 10部
・エチレングリコール 6部
・2−ピロリドン 4部
・下記化合物(c) 0.5部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 0.5部
・水 残部
Figure 2010018764
〔第1のインク4〕
・ブラック顔料A 4部
・グリセリン 10部
・トリエチレングリコール 5部
・トリメチロールプロパン 5部
・下記化合物(z) 0.5部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 0.5部
・水 残部
Figure 2010018764
〔第1のインク5〕
第1のインク1の化合物(a)を除いた以外は全く同様の手法で第1のインク5を作製した。
<第2のインク1〜3の調製例>
下記の処方で、1N−塩酸水溶液でpHを5.0に調整し、1μmのフィルターを通して加圧濾過し、第2の無色インク1〜3を調製した。なお、各インクに含有させたノニオン系界面活性剤であるアセチレングリコールエチレンオキサイド付加物には、アセチレノールEH(商品名、川研ファインケミカル製)を用いた。
〔第2のインク1〕
・C.I.アシッドブルー9 1部
・硝酸マグネシウム 2部
・ジグリセリン 7部
・エチレングリコール 7部
・ジエチレングリコール 5部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 1部
・水 残部
〔第2のインク2〕
・ポリアリルアミン(平均分子量1,300) 1.5部
・塩化ベンザルコニウム 0.5部
・グリセリン 8部
・ポリエチレングリコール(平均分子量200) 5部
・エチレングリコール 5部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 1部
・水 残部
〔第2のインク3〕
下記の組成中のポリ(ジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄)には、平均分子量5,000のものを用いた。
・酢酸カルシウム 2部
・ポリ(ジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄) 1部
・グリセリン 10部
・ジエチレングリコール 4部
・1,2−ヘキサンジオール 4部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 0.5部
・水 残部
<イエローインクの調製例>
下記の組成中のノニオン系界面活性剤であるアセチレングリコールエチレンオキサイド付加物には、アセチレノールEH(商品名、川研ファインケミカル製)を用いた。
・C.I.アシッドイエロー23 3.5部
・グリセリン 8部
・ジエチレングリコール 8部
・エチレン尿素 4部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 1部
・水 残部
[実施例及び比較例]
<各インクセットの構成>
第1のインク1〜5及び第2のインク1〜3をそれぞれ表1に示したように組み合わせて、実施例1〜9のインクセット、比較例1〜6のインクセットとした。
<評価>
下記の評価方法及び評価基準により、各インクセットを評価した。評価1として、第1のインクと第2のインクとを混合させた場合の反応性をそれぞれ評価した。また、上記の各インクセットと、上記で調製したイエローインクとを用いて画像を形成し、形成した画像のブリードをそれぞれ評価した。また、上記の各インクセットとを用いて画像を形成し、画像濃度を測定し、評価を行った。得られた評価結果を表1にまとめて示した。
〔評価1:反応性(顔料分散不安定化)〕
第1のインクと第2のインクをそれぞれ50gずつ混合し、約1時間攪拌した後、混合液を1μmのフィルターを通して加圧濾過した。フィルター上に残留した濾過物(析出物)の様子を観察し、以下の評価基準にて反応性(顔料分散不安定化)を評価した。
A:フィルター上に析出物が堆積している。
B:フィルター上に析出物がやや存在する。
C:フィルター上に析出物が殆ど存在しない。
〔評価2:ブリード〕
第1のインクと第2のインクをそれぞれインクタンクに詰め、インクの重ね打ち機構を搭載したインクジェットプリンタ(BJF8500)を用い、キヤノン製PPC用紙に第2のインクを印字濃度50%でベタ印字した。その後、第1のインクを印字濃度100%でベタ印字し、さらにその直後に、それと隣接するように、イエローインクを印字濃度100%でベタ印字した。得られたベタ印字部の境界部分を目視にて観察して、ブラックインクとイエローインク間のブリードの評価を行った。その際における評価基準は、以下の通りとした。
A:全ての境界部でブリードが殆ど認められない。
B:若干のブリードが認められる。
C:殆ど全ての境界部でブリードがひどい。
〔評価3:画像濃度〕
第1のインクと第2のインクを各々インクタンクに詰め、インクの重ね打ち機構を搭載したインクジェットプリンタ(BJF8500)を用い、キヤノン製PPC用紙に第2のインクを印字濃度50%でベタ印字をした。その後、第1のインクを印字濃度100%でベタ印字した。これを3回繰り返して、それぞれ3紙の印字物を得た。このようにして得た印字物を3日間放置後、反射濃度計マクベスRD915(マクベス社製)にてベタ印字部の反射濃度を測定し、この値を、各インクの画像濃度とした。3紙の平均値を印字濃度として下記の評価基準にて評価した。
A:1.30以上
B:1.25以上、1.30未満
C:1.25未満
Figure 2010018764
上記表1の各評価結果より、本発明の実施例1〜9のインクセットはいずれも、印字物のブリードが抑制され、さらに高い画像濃度を備えたものであることが確認された。
インクジェット記録装置のヘッドの一例を示す縦断面図である。 インクジェット記録装置のヘッドの一例を示す横断面図である。 図1に示したヘッドをマルチ化したヘッドの外観斜視図である。 インクジェット記録装置の一例を示す概略斜視図である。 インクカートリッジの一例を示す縦断面図である。 記録ユニットの一例を示す斜視図である。 インクジェット記録ヘッドの別の構成例を示す概略断面図である。

Claims (12)

  1. 少なくとも第1のインクと、該第1のインクとは色彩が異なるか無色である第2のインクとを独立に有してなり、これらのインクをセルロースを含有する記録媒体に付与して画像を形成する記録方法に用いられるインクセットであって、
    該第1のインクは、下記一般式(I)の化合物と、色材として、表面に直接或いは他の原子団を介してアニオン性官能基が化学的に結合している顔料と、該顔料の分散媒としての水性媒体とを含んでなるpHが3から10の水性インクであり、
    該第2のインクは、該第1のインクと混合されたときに該第1のインク中の顔料の分散を不安定化させる反応性化合物と、水性媒体とを含んでなる水性インクであることを特徴とするインクセット。
    Figure 2010018764
    (式中、M1及びM2は、独立して、水素原子、アルカリ金属、有機アミンを示し、Rは、アルキル基又はアリール基、アルキルアリール基を表す。nは、0≦n≦7のいずれかの整数を表す。)
  2. 前記一般式(I)の化合物が、エチレンオキサイド鎖を含まない(前記式(I)中のn=0)請求項1に記載のインクセット。
  3. 前記第1のインク中の顔料の平均粒径が、60nmから180nmの範囲にある請求項1又は2に記載のインクセット。
  4. 前記第1のインク中の顔料に結合しているアニオン性官能基が、カルボン酸若しくはスルホン酸である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクセット。
  5. 前記顔料に結合しているアニオン性官能基が、顔料1gへの付与量として100μmol/g以上5,000μmol/g以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクセット。
  6. 前記顔料に結合しているアニオン性官能基の数が、顔料1gに対して300μmol/g以上2,500μmol/g以下である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクセット。
  7. 前記第1のインクが多価金属イオンを含み、該多価金属イオン濃度が300ppm以下である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクセット。
  8. 前記第1のインクがブラックインクである請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインクセット。
  9. 前記第2のインク中の反応性化合物が、多価金属塩、低分子カチオン性化合物、カチオン性ポリマーのいずれかである請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインクセット。
  10. 請求項1乃至9のいずれか1項に記載のインクセットを用い、セルロースを含有する記録媒体上にインクジェット方式でカラー画像を形成するインクジェット記録方法であって、上記インクセットを構成している第1のインクをインクジェット記録方法で記録媒体に付与する工程と、上記インクセットを構成している第2のインクを記録媒体に付与する工程とを有し、第1のインクと第2のインクとを接触させることを特徴とするインクジェット記録方法。
  11. 請求項1乃至9のいずれか1項に記載のインクセットを構成している第1のインクを収容している第1のインク収容部と、第2のインクを収容している第2の収容部と、各々のインクを独立して吐出するためのインクジェットヘッドと、を有していることを特徴とする記録ユニット。
  12. 請求項11に記載の記録ユニットを備えていることを特徴とするインクジェット記録装置。
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