JP2004143290A - 水性顔料インク - Google Patents

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Daiji Okamura
岡村 大二
Koichi Osumi
大角 孝一
Tomonari Watanabe
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Abstract

【課題】自己分散型顔料を用い、塩を含む水性顔料インクでありながら、異色インクと組み合わせ画像形成した場合に、ブリードの抑制性能が有効に維持されると同時に、顔料の分散安定性が飛躍的に向上し、長期間放置後にも良好な画像形成できる、印字性能とインクの信頼性とを両立した水性顔料インクの提供。
【解決手段】(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SO及び(M1)COからなる群より選ばれる少なくとも1の塩(M1は、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表し、Phは、フェニル基を表す)と、自己分散型顔料と水性媒体とを含む水性インクであって、上記塩の添加量が、水性インク中の成分の蒸発量を50質量%とした場合にも顔料が安定に分散できる量に調整されている水性顔料インク。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性顔料インク、とりわけ、着色剤として自己分散型顔料(例えば、自己分散型カーボンブラック)を含む水性顔料インクに関し、特に、インクジェット記録方法や該方法を適用したインクジェット機器類に好適な水性顔料インクに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、インクジェット方式の記録においては、特に普通紙に対しての印字濃度、印字品位、耐水性及び耐光性等の堅牢性に優れた黒色画像を形成し得る、着色剤に顔料を用いたブラックインクや、ブラックインクで印字された画像と、カラーインクで印字された画像との境界部における滲み(以下、ブリードと呼ぶ)の発生を抑制し得る、ブラックインクとカラーインクとを独立に組み合わせてなるインクセット、及びこれらを用いたインクジェット記録方法や機器類が種々報告されている。
【0003】
上記ブラックインクの一つとして、自己分散型カーボンブラックを含む水性顔料インクがあるが、上記した印字性能を持たせるために、インク中に塩を添加することが行なわれている。即ち、塩を含む水性顔料インクは、記録媒体上でインク中の水分が蒸発する結果、顔料の分散が不安定化して凝集を起こし、これによって顔料の記録媒体への浸透が抑えられて、印字物の、印字濃度及び印字品位を良化させることができる。更に、顔料の凝集によって、印字画像の耐水性や耐光性等の堅牢性を良化させ、しかも、カラーインクへの滲み出しがないことから、ブリードを抑えることができる。
【0004】
しかしながら、自己分散型カーボンブラックを含む水性顔料インク中に含有させる塩の添加が過剰であると、インク中における顔料の分散安定性を悪化させることから、塩を添加する場合には、印字性能とインクの信頼性との両立をはかることが重要である。
【0005】
これに対して、インクの蒸発と顔料の分散安定性に関しては、種々の提案がなされているが(特許文献1及び特許文献2参照)、何れも蒸発に伴う粒径を規定することについて記載しており、塩添加系のインクにおけるインク成分の蒸発量と顔料の分散安定性の関係に着目している記載はない。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−153618号公報
【特許文献2】
特開2002−167534号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、着色剤として自己分散型顔料を用い、塩を含む水性顔料インクであるにもかかわらず、特に、異なる色のインクを独立に組み合わせてインクセットとした場合におけるブリードの発生を有効に抑える性能を有効に維持すると同時に、インク中における自己分散型顔料(例えば、自己分散型カーボンブラック)の分散安定性を飛躍的に向上せしめ、長期間放置した後においても良好な画像形成が可能である、優れた印字性能とインクのより一層の信頼性の向上とを兼ね備えた水性顔料インクを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下の本発明によって達成される。即ち、本発明の一実施形態は、(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SO及び(M1)COからなる群より選ばれる少なくとも1の塩(但し、上記M1はアルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表し、又、上記Phはフェニル基を表す)と、自己分散型顔料と水性媒体とを含む水性インクであって、インク中における上記塩の添加量が、水性インク中の成分の蒸発量を50質量%とした場合にも上記顔料が安定に分散できる量に調整されていることを特徴とする水性顔料インクである。又、特に好ましい形態としては、上記構成において、インクが、インクジェット用のインクである水性顔料インクである。
【0009】
又、本発明の別の実施形態は、異なる色のインクを2以上有するカラー記録用インクセットにおいて、ブラック用、シアン用、マゼンタ用、イエロー用、レッド用、グリーン用及びブルー用のインクから選ばれる少なくとも1種のインクと、上記構成を有する水性顔料インクとを独立して含んでなることを特徴とするインクセットである。
【0010】
又、本発明の別の実施形態としては、下記のものが挙げられる。上記構成を有する水性顔料インクを収容しているインクタンクを備えていることを特徴とするインクカートリッジ、又、かかる構成を有するインクカートリッジと、該インクカートリッジに収容されているインクを吐出させるための記録ヘッド及び該記録ヘッドに上記インクカートリッジからインクを供給する手段を備えていることを特徴とする画像記録装置である。又、上記構成を有する水性顔料インクを収容したインク収容部及び該インクを吐出させるためのヘッド部を備えていることを特徴とする記録ユニット、更に、かかる構成を有する記録ユニットを備えていることを特徴とする画像記録装置である。
【0011】
又、本発明の別の実施形態としては、下記のものが挙げられる。上記したインクセットを構成する各インクを独立に収容しているインク収容部、及び各インク収容部に収容されているインクを各々吐出させるためのヘッド部を備えていることを特徴とする画像記録装置、上記したインクセットを構成する各インクを独立に収容しているインク収容部を備えたインクカートリッジと、インク収容部に収容されている各々のインクをそれぞれ吐出させるためのヘッド部と、及び上記インク収容部に収容されている各々のインクを各々のインクカートリッジから各々のヘッド部に供給するための手段とを備えていることを特徴とする画像記録装置である。
【0012】
又、本発明の別の実施形態としては、下記のものが挙げられる。前記した構成を有する水性顔料インクを記録媒体表面に向けて飛翔させて、該記録媒体表面に付着させることにより画像を記録することを特徴とするインクジェット記録方法である。更に、かかる構成を有するインクジェット記録方法において、インクを飛翔させるためのエネルギーが、熱エネルギーであるインクジェット記録方法、又、上記構成を有するインクジェット記録方法において、インクを飛翔させるためのエネルギーが、力学的エネルギーであるインクジェット記録方法である。
【0013】
又、本発明の別の実施形態としては、(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SO及び(M1)COからなる群より選ばれる少なくとも1の塩と、自己分散型顔料と、水性媒体とを含むことを特徴とする水性顔料インク(但し、M1はアルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表し、又、Phはフェニル基を表す)の分散安定性向上方法であり、インク中における上記塩の添加量を、水性インク中の成分の蒸発量を50質量%とした場合にも上記顔料が安定に分散できる量に調整することを特徴とする水性顔料インクの分散安定性向上方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の水性顔料インクは、特定の群より選ばれる少なくとも1の塩と、自己分散型顔料とを含む水性インクであって、インク中における上記塩の添加量が、水性インク中の成分を蒸発させて、蒸発量を50質量%とした場合に上記顔料が安定に分散できる量に調整されていることを特徴とする。該水性顔料インクは、着色剤として自己分散型顔料(例えば、自己分散型カーボンブラック)を含み、塩を含むものであるにもかかわらず、ブリードの発生を有効に抑える性能を維持した状態で、インク中における顔料の分散安定性が飛躍的に向上した水性顔料インクとなる。該水性顔料インクは、特にインクジェット記録方法や該方法を適用したインクジェット機器類に好適である。
【0015】
インク中における塩の添加量を決定する場合には、例えば、下記のようにして行なえばよい。少なくとも水性媒体(水、又は水と水溶性有機溶媒からなる)中に、所望の自己分散型顔料を所望量分散させ、更に必要に応じて添加する添加物等、塩以外のインク成分を加えて混合してインクを得る。このインクを、60℃の環境において、インク成分を蒸発させて、インクの量が、最初の量の50質量%なるまで乾燥を続ける。この蒸発後のインクを一定量入れたものを複数用意し、この中に所望する塩を段階的に異なる量でそれぞれ添加する。そして、これらを観察して、顔料の分散性が低下して、顔料が沈降し始める値を求め、かかる値から、50質量%蒸発させた後のインク中に顔料が安定に分散できる塩の量を決定する。この値を、水性顔料インクに含有させる塩の量とすればよい。
【0016】
以下に、本発明に係るインクの各構成要素を順に説明する。
(塩)
先ず、本発明で使用する特定の塩について詳述する。本発明で使用する塩は、(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SO及び(M1)COからなる群より選ばれる少なくとも1種である。ここでM1は、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表し、Phは、フェニル基を表す。上記M1で表されるアルカリ金属としては、例えば、Li、Na、K、Rb、及びCs等が挙げられる。
【0017】
又、有機アンモニウムとしては、例えば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリヒドロキシメチルアミン、ジヒドロキシメチルアミン、モノヒドロキシメチルアミン、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、及びトリエタノールアンモニウム等が挙げられる。これらのアンモニウム化合物は、夫々に相当する有機アミンから誘導される。
【0018】
本発明に係るインクは、上記したような塩を、後述する自己分散型アニオンカーボンブラックを着色剤として含む水性インク中に含有させる構成とすることによって、通常の水性顔料インクを使用した場合には、高品位画像が得られ難かった浸透性の大きな紙、例えば、普通紙に印字した場合にも、高品位な画像の形成が可能となる。例えば、浸透性の大きな紙に従来の水性顔料インクで印字した場合には、文字のシャープネスが損なわれたり、画像濃度の低下が生じる等の場合があったが、本発明に係るインクによれば、これらの点がいずれも改良される。
【0019】
本発明に係るインクによって、上記した優れた効果が得られる理由は明らかでないが、本発明者らは、下記のように考えている。以下、自己分散型顔料として、自己分散型カーボンブラックを使用した水性顔料インクを例にとって説明する。このような構成のインクを、インクジェット記録方法によって記録媒体である普通紙等の上に飛翔させて付着させた場合には、インク中では着色剤であるカーボンブラック顔料は安定に分散しているが、紙面に付着後に、インクの固液分離が速やかに起こる結果(この固液分離を起こす要因としては、毛管現象、水分蒸発等が考えられる)、上記した文字のシャープネスや画像濃度が損なわれるといった現象が起こり難くなるものと考えている。
【0020】
即ち、記録媒体上でのインクの固液分離が遅いと、図9に示したように、記録媒体1103として浸透性の大きな紙を用いた場合には、インク1101全体が紙中に拡散する結果、文字のシャープネス(文字品位)が損なわれると同時に、紙の奥までインクが浸透するため(図9の1111参照)、当然に画像濃度の低下が生じたのに対し、本発明に係るインクの場合は、図8に示したように、記録媒体1003上で、インク1001を構成している顔料1005と水系媒体1007との固液分離が速やかに起こるため、顔料1005が紙1003内部へと浸透しづらくなり、紙等の記録媒体中に深くまで顔料1005が浸透することが生じない。このため、記録媒体上でのインクの固液分離が速い本発明に係るインクを用いれば、比較的浸透性が高い紙に印字した場合であっても、記録媒体の種類にかかわらず、つまり、浸透性の大小等といった紙種による要因を受けづらくなり、発色性に優れ、シャープネスさ等が損なわれることのない高品位画像を得ることが可能となったものと考えられる。又、本発明に係るインクを用いた場合には、上記した現象に起因して、塩を添加しない状態のインクと比較し、同一の紙に印字した場合の画像濃度(反射濃度)が高まるといった効果も得られる。
【0021】
更に、本発明者らは、本発明に係るインクが速やかな固液分離を引き起こす最大の要因は、吐出後における水性顔料インク中の主成分である水性媒体、特に水分の蒸発(以下、水分蒸発と表現する)にあると考えている。勿論、インク着弾後の紙上の毛管現象も、固液分離を引き起こす要因の一つではあるが、本発明者らは、以下の事実に基づき、本発明に係るインクにおいて、記録媒体上での固液分離が速やかに引き起こされる最大の要因は、吐出後におけるインク中の水分蒸発にあると考えている。本発明者らの検討によれば、本発明に係るインクは、清浄なガラス面上においても、塩を添加しない状態のインクと比較して固液分離が早く起こることが分かった。即ち、このことは、本発明に係るインクでは、上記のような毛管現象が起こらない状態においても、インクの固液分離が起こっていることを如実に示しており、かかる事実から、本発明者らは、本発明に係るインクの固液分離を起こす最大の要因は、吐出後の水分蒸発にあると考えるに至ったものである。
【0022】
更に、本発明に係るインクは、カラー画像の形成に使用した場合において、色間境界での異なる色同士の滲み(ブリード)の発生を有効に抑制できるという別の効果が得られる。かかる効果も、前記した記録媒体上でインクの固液分離が速やかに起こることによると考えられる。即ち、インクの固液分離が速いと、記録媒体上にインクが付着した場合に、直ちにインク中の水性媒体が顔料と分かれて紙中深くまで浸透するので、顔料の固化が速やかに起こる。この結果、カラー画像を形成する際に、異なる色彩のインクが重ね打ちされた場合においても、インク中の顔料が隣接する他の色のインク側に滲み出すことが生じにくくなり、色間境界で生じる異なる色同士の滲みの発生が有効に抑制される。
【0023】
ところで、上記の効果は、記録媒体上におけるインク中の水分蒸発による固液分離によって得られるが、インクが記録媒体に付着する前の段階、即ち、インクが記録ヘッド内に存在するようなときにおいては、吐出口からの水分蒸発によって顔料濃度が上昇し、顔料が凝集することによってノズルが目詰まりを起こすことが考えられる。特に、インク中の塩濃度が高くなればなるほど、この危険性は大きくなることが知られている。
【0024】
しかし、本発明に係るインクは、塩の濃度が、水分蒸発がインクの全質量に対して50%となった場合においても顔料の分散安定性を保つことができるよう調節されているため、上記したような問題を生じない。即ち、本発明者らの検討によれば、インク成分の蒸発率が50%となった場合において、顔料が安定に分散していれば、ノズル内にインクを満たした記録ヘッド部をキャッピングした状態で、通常プリンタを使用する環境下に一年以上放置した場合においても、水分蒸発によるノズルの目詰まりの危険性を充分に回避することができることがわかった。更に、水性顔料インク中の塩が、上記したようにして規定される濃度に調整されている場合には、塩を添加したことによる効果が損なわれることなく、該水性顔料インクを使用して印字物を形成した場合には、記録媒体に付着したインクは速やかに固液分離し、これによって、ブリード等の発生がない、印字品位に優れた印字物を形成する効果が有効に保たれる。
【0025】
(自己分散型顔料)
次に、本発明に係るインクに、着色剤として含有させる自己分散型顔料について説明する。その代表例として自己分散型アニオンカーボンブラックについて詳述する。本発明に係るインクに使用できる自己分散型カーボンブラックとしては、例えば、少なくとも1つの親水性基がカーボンブラック表面に直接、若しくは他の原子団を介して結合しているアニオン性に帯電したカーボンブラックが挙げられる。このような構造を有するカーボンブラックを用いれば、従来の水性顔料インクのように、カーボンブラックを水系媒体中に分散させるための分散剤を添加することが、必ずしも必要ではなくなる。
【0026】
本発明に係るインクに用いることのできるアニオン性に帯電した自己分散型カーボンブラックとしては、カーボンブラックの表面に、例えば、次に示すような親水性基を結合させたものが挙げられる。−COO(M2)、−SO(M2)、−POH(M2)、−PO(M2)(但し、式中のM2は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表す。)
【0027】
これらの中でも特に、−COO(M2)や−SO(M2)の親水性基をカーボンブラック表面に結合してアニオン性に帯電せしめたカーボンブラックは、インク中での分散性が良好なため、本発明に係るインクの着色剤として特に好適に用いることができる。ところで、上記親水性基中「M2」として表したもののうち、アルカリ金属の具体例としては、例えば、Li、Na、K、Rb及びCs等が挙げられ、又、有機アンモニウムの具体例としては、例えば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、モノヒドロキシメチルアミン、ジヒドロキシメチルアミン、トリヒドロキシメチルアミン等が挙げられる。
【0028】
上記したような、アニオン性に帯電している自己分散型カーボンブラックの製造方法としては、例えば、カーボンブラックを次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法等が挙げられる。この方法によれば、カーボンブラック表面に、親水性基である−COONa基を化学結合させることができる。
【0029】
ところで、上記したような種々の親水性基は、カーボンブラックの表面に直接結合させてもよいし、或いは他の原子団をカーボンブラック表面と上記したような親水性基との間に介在させ、親水性基をカーボンブラック表面に間接的に結合させてもよい。ここで他の原子団の具体例としては、例えば、炭素原子数1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、置換若しくは未置換のフェニレン基、置換若しくは未置換のナフチレン基が挙げられる。ここでフェニレン基及びナフチレン基の置換基としては、例えば、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。又、他の原子団と親水性基の組合わせの具体例としては、例えば、−C−COO(M2)、−Ph−SO(M2)、−Ph−COO(M2)(但し、式中のPhはフェニル基を表す。又、式中のM2は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表す。)等が挙げられる。
【0030】
ところで、本発明では、上記に挙げた自己分散型カーボンブラックの中から2種若しくはそれ以上を適宜選択してインクの着色剤としてもよい。インク中に含有させるこれらの自己分散型カーボンブラックの添加量としては、インク全質量に対して、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは1〜10質量%の範囲内とする。この範囲内で含有させれば、上記のような自己分散型カーボンブラックは、インク中において十分な分散状態を維持することができる。本発明に係るインクを作製する場合には、インクの調色等を目的として、上記自己分散型カーボンブラックに加えて公知の染料を着色剤として更に添加してもよい。
【0031】
上記した種々の自己分散型カーボンブラックのうち、カーボンブラックの表面に結合させる下記の親水性基としては、特に、一般式、−COO(M2)、−SO(M2)、−POH(M2)、−PO(M2)で表されるものであって、M2が、アンモニウムや有機アンモニウムである場合が好ましい。
【0032】
(水性媒体)
本発明に係る水性顔料インクは、上記した顔料を水性媒体中に分散してなるが、水性媒体としては、水、或いは水と水性有機媒体との混合媒体が用いられる。本発明で使用する水性媒体は、水単独又は水と水溶性有機溶剤との混合溶媒からなるものであるが、水溶性有機溶媒としては、インクの乾燥防止効果を有するものが特に好ましく、又、水は、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、脱イオン水を使用することが望ましい。
【0033】
本発明で使用する水溶性有機溶剤としては、具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の低級アルキルエーテルアセテート;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の多価アルコール;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及びアセチレンアルコール等が挙げられる。上記のごとき水溶性有機溶剤は、単独でも或いは混合物としても使用することができる。
【0034】
本発明に係る水性顔料インク中に含有される上記したような水溶性有機溶剤の含有量は特に限定されないが、インク全質量に対して、好ましくは3〜50質量%の範囲である。又、インクに含有される水の含有量は、インク全質量に対して、好ましくは50〜95質量%の範囲である。
【0035】
(その他の成分)
又、本発明の水性顔料インクは、上記の成分の他に必要に応じて、所望の物性値を持つインクとするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤等を添加することができる。例えば、インクの表面張力の調整が必要とされる場合には、アセチレンアルコール等の界面活性剤や浸透性溶剤等を適宜所定量添加することが有効である。
【0036】
(カラーインク)
上記した構成を有する本発明に係る水性顔料インクは、先に述べたように、カラーインクとともに用いた場合に、色間境界での異なる色同士の滲み(ブリード)の発生を有効に抑制できるという効果が得られるが、カラーインクとしては、従来より知られているインクジェット記録用に開発されたカラーインクを何れも用いることができる。
【0037】
以上のような構成を有する本発明の水性顔料インクは、インクジェット記録に用いられる場合に、特に効果的である。インクジェット記録方法としては、インクに力学的エネルギーを作用させてインクを吐出する記録方法、及びインクに熱エネルギーを加えてインクの発泡によりインクを吐出するインクジェット記録方法があるが、これらのインクジェット記録方法に本発明に係る水性顔料インクは特に好適である。
【0038】
次に、上記した構成からなる本発明の水性顔料インクを用いて記録を行うのに好適な、インクジェット記録装置の一例について説明する。先ず、熱エネルギーを利用したインクジェット記録装置の主要部であるヘッド構成の一例を図1及び図2に示す。図1は、インク流路に沿ったヘッド13の断面図であり、図2は図1のA−B線での切断面図である。ヘッド13はインクを通す流路(ノズル)14を有するガラス、セラミック、シリコン又はプラスチック板等と発熱素子基板15とを接着して得られる。発熱素子基板15は、酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン等で形成される保護層16と、アルミニウム、金、アルミニウム−銅合金等で形成される電極17−1及び17−2と、HfB、TaN、TaAl等の高融点材料から形成される発熱抵抗体層18と、熱酸化シリコン、酸化アルミニウム等で形成される蓄熱層19と、シリコン、アルミニウム、窒化アルミニウム等の放熱性のよい材料で形成される基板20、よりなっている。
【0039】
上記ヘッド13の電極17−1及び17−2にパルス状の電気信号が印加されると、発熱素子基板15のnで示される領域が急速に発熱し、この表面に接しているインク21に気泡が発生し、その圧力でメニスカス23が突出し、インク21がヘッドのノズル14を通して吐出し、吐出オリフィス22よりインク小滴24となり、記録媒体25に向かって飛翔する。図10には、図1に示したヘッドを多数並べたマルチヘッドの一例の外観図を示す。このマルチヘッドは、マルチノズル26を有するガラス板27と、図1に説明したものと同じような発熱ヘッド28を接着して作られている。
【0040】
上記したような装置を利用して、カラー画像を形成する場合には、例えば、図10に示した記録ヘッドをキャリッジ90上に4個並べた記録装置を使用する。図6はその一例である。86、87、88、89は、それぞれ4種のインク、例えば、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びイエロー(Y)の各カラーインクと、ブラックインク、の各々のインクを吐出するための記録ヘッドである。該ヘッドは、前記した記録装置に配置され、記録信号に応じて各色のインクを吐出する。
【0041】
図6では、4個の記録ヘッドを使用した例を示したが、これに限定されるものではなく、図7に示したように、1つの記録ヘッドで、Mインク、Cインク、Yインク及びBkインクの4種のインクを、液流路を分けて行う場合も好ましい形態である。
【0042】
図11に、このヘッドを組み込んだインクジェット記録装置の一例を示す。図11において、61はワイピング部材としてのブレードであり、その一端はブレード保持部材によって保持固定されており、カンチレバーの形態をなす。ブレード61は記録ヘッド65による記録領域に隣接した位置に配置され、又、本例の場合、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。
【0043】
62は記録ヘッド65の突出口面のキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配置され、記録ヘッド65の移動方向と垂直な方向に移動して、インク吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成を備える。更に、63はブレード61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。上記ブレード61、キャップ62及びインク吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61及びインク吸収体63によって吐出口面に水分、塵埃等の除去が行われる。
【0044】
65は、吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66はガイド軸67と摺動可能に係合し、キャリッジ66の一部はモーター68によって駆動されるベルト69と接続(不図示)している。これによりキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接した領域の移動が可能となる。
【0045】
51は記録媒体を挿入するための紙給部、52は不図示のモーターにより駆動される紙送りローラーである。これらの構成により記録ヘッド65の吐出口面と対向する位置へ記録媒体が給紙され、記録が進行につれて排紙ローラー53を配した排紙部へ排紙される。以上の構成において記録ヘッド65が記録終了してホームポジションへ戻る際、吐出回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。その結果、記録ヘッド65の吐出口がワイピングされる。
【0046】
尚、キャップ62が記録ヘッド65の吐出面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッドの移動経路中に突出するように移動する。記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード61は上記したワイピングの時の位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。上述の記録ヘッドのホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッドが記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行われる。
【0047】
図3は、記録ヘッドにインク供給部材、例えば、チューブを介して供給されるインクを収容したインクカートリッジの一例を示す図である。ここで40は供給用インクを収納したインク収容部、例えば、インク袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。この栓42に針(不図示)を挿入することにより、インク袋40中のインクをヘッドに供給可能にする。44は廃インクを受容するインク吸収体である。インク収容部としてはインクとの接液面がポリオレフィン、特にポリエチレンで形成されているものが好ましい。
【0048】
本発明で使用されるインクジェット記録装置としては、上述のようにヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、図4に示すようなそれらが一体になったものにも好適に用いられる。図4において、70は記録ユニットであり、この中にはインクを収容したインク収容部、例えば、インク吸収体が収納されており、かかるインク吸収体中のインクが複数オリフィスを有するヘッド部71からインク滴として吐出される構成になっている。インク吸収体の材料としてはポリウレタンを用いることが本発明にとって好ましい。又、インク吸収体を用いず、インク収容部が内部にバネ等を仕込んだインク袋であるような構造でもよい。72はカートリッジ内部を大気に連通させるための大気連通口である。この記録ユニット70は、図11に示す記録ヘッド65に換えて用いられるものであって、キャリッジ66に対して着脱自在になっている。
【0049】
次に、力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置の好ましい一例としては、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクを備え、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクの小液滴をノズルから吐出させるオンデマンドインクジェット記録ヘッドを挙げることができる。その記録装置の主要部である記録ヘッドの構成の一例を図5に示す。
【0050】
ヘッドは、インク室(不図示)に連通したインク流路80と、所望の体積のインク滴を吐出するためのオリフィスプレート81と、インクに直接圧力を作用させる振動板82と、この振動板82に接合され、電気信号により変位する圧電素子83と、オリフィスプレート81、振動板82等を指示固定するための基板84とから構成されている。
【0051】
図5において、インク流路80は、感光性樹脂等で形成され、オリフィスプレート81は、ステンレス、ニッケル等の金属を電鋳やプレス加工による穴あけ等により吐出口85が形成され、振動板82はステンレス、ニッケル、チタン等の金属フィルム及び高弾性樹脂フィルム等で形成され、圧電素子83は、チタン酸バリウム、PZT等の誘電体材料で形成される。以上のような構成の記録ヘッドは、圧電素子83にパルス状の電圧を与え、歪み応力を発生させ、そのエネルギーが圧電素子83に接合された振動板を変形させ、インク流路80内のインクを垂直に加圧しインク滴(不図示)をオリフィスプレート81の吐出口85より吐出して記録を行うように動作する。このような記録ヘッドは、図11に示したものと同様なインクジェット記録装置に組み込んで使用される。インクジェット記録装置の細部の動作は、先述と同様に行うもので差しつかえない。
【0052】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。なお、以下の記載で、「部」及び「%」とあるものは特に断らない限り質量基準である。先ず、本発明にかかる水性顔料インクと、これと比較するための水性顔料インクとを下記のようにして調製した。
【0053】
<顔料分散体>
先ず、5.3gの水に5gの濃塩酸を溶かした溶液に5℃においてアントラニル酸1.58gを加えた。次に、アイスバスで攪拌することにより常に10℃以下に保たった状態で、これに、8.7gの5℃の水に、1.78gの亜硝酸ナトリウムを加えた溶液を加えた。更に、これを15分攪拌後、混合した状態のままで、表面積が220m/gで、DBP吸油量が105mL/100gのカーボンブラックを7g加えた。その後、更に15分攪拌した。得られたスラリーを東洋濾紙No.2(アドバンティス社製)で濾過し、顔料粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させた。更に、乾燥後の顔料に水を足して顔料濃度10質量%の顔料水溶液を作製して、カーボンブラックの表面に、−Ph−COONH基が導入された自己分散型カーボンブラックが分散した顔料分散体を得た。
【0054】
(ブラックインク1)
上記で得た顔料分散体を含む以下の成分を混合し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過して、水性のブラックインク1を調製した。得られたブラックインク1について、インク中の成分を蒸発させた場合における顔料の分散安定性について調べたところ、ブラックインク1中の顔料の分散が不安定となる蒸発量は、51%であった。インク中の顔料の分散安定性については、60℃環境において、インク成分を蒸発させ、各蒸発量においてインクの少量をサンプル瓶にとり、しばらく放置した後、目視にて固液分離が起こったポイントを、顔料の分散が不安定となる蒸発量とした。
【0055】
・グリセリン              10部
・ジエチレングリコール         10部
・アセチレノールEH
(商品名:川研ファインケミカル製)  0.2部
・上記顔料分散体            40部
・安息香酸アンモニウム          1部
・水                38.8部
【0056】
(ブラックインク2)
上記で得た顔料分散体を含む以下の成分を混合し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過して、ブラックインク2を調製した。得られたブラックインク2について、インク中の成分を蒸発させた場合における顔料の分散安定性について、インク中の成分を蒸発させて、実施例1と同様の方法で調べた。この結果、ブラックインク2中の顔料の分散が不安定となった時点の水分の蒸発量は、48%であった。
【0057】
・グリセリン              10部
・ジエチレングリコール         10部
・アセチレノールEH
(商品名:川研ファインケミカル製)  0.2部
・上記顔料分散体            40部
・安息香酸アンモニウム        1.5部
・水                38.3部
【0058】
(イエローインク1)
以下の成分を混合し、十分に攪拌して各成分を溶解後、ポアサイズ0.2μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過し、染料を色材とするイエローインク1を調製した。
・アセチレノールEH
(商品名:川研ファインケミカル製)    1部
・ジエチレングリコール         10部
・グリセリン               5部
・C.I.ダイレクトイエロー86     3部
・水                  81部
【0059】
(マゼンタインク1)
以下の成分を混合し、十分に攪拌して各成分を溶解後、ポアサイズ0.2μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過し、染料を色材とするマゼンタインク1を調製した。
・アセチレノールEH
(商品名:川研ファインケミカル製)    1部
・ジエチレングリコール         10部
・グリセリン               5部
・C.I.アシッドレッド35       3部
・水                  81部
【0060】
(シアンインク1)
以下の成分を混合し、十分に攪拌して各成分を溶解後、ポアサイズ0.2μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過し、染料を色材とするシアンインク1を調製した。
・アセチレノールEH
(商品名:川研ファインケミカル製)    1部
・ジエチレングリコール         10部
・グリセリン               5部
・C.I.アシッドブルー9        3部
・水                  81部
【0061】
<実施例1>
先に得たブラックインク1をキヤノン(株)製インクジェットプリンタBJS600に搭載し、ヘッド内のインク流路を該インクで満たした状態にした後、キャップ部によってヘッドのノズル部をキャッピングすることを確認した。この本発明にかかる水性顔料インクであるブラックインク1を搭載したインクジェット記録装置を、常温環境下で1年間放置し、その後に印字を行った。この結果、本実施例では、1年間もの長期間に渡って放置した水性顔料インクでありながら、印字に何の問題もないことが確認された。
【0062】
<比較例1>
先に得た比較例にかかる水性顔料インクであるブラックインク2をキヤノン(株)製インクジェットプリンタBJS600に搭載し、ヘッド内のインク流路を該インクで満たした状態にした後、キャップ部によってヘッドのノズル部をキャッピングすることを確認した。このブラックインク2を搭載したインクジェット記録装置を、常温環境下で1年間放置し、その後に印字を行った。この結果、実施例1では印字に何の問題もなかったのに対して、ブラックインク2を使用した場合にはブラックインクの印字がかすれていることが確認された。
【0063】
<実施例2及び比較例2>
先に述べたようにして得られたブラックインク及び各色インクを、表1に示したように組み合わせて、複数のインクを独立に有する実施例2、比較例2のインクセットを得た。
【0064】
Figure 2004143290
【0065】
[評価]
次に、上記で得た各インクセットを、キヤノン(株)製インクジェットプリンタBJS600に各々搭載して、印字試験を行い、ブラックインクとカラーインクとの間のブリードの評価を、下記の方法及び基準で行った。印字試験に用いた記録媒体は、キヤノン製コピー用紙:PB PAPER(PB紙)、ゼロックス製:4024 PAPER(XX紙)の普通紙2紙である。
【0066】
(評価方法及び基準)
ブラックインクとカラーインクとを、上記した装置を用い、同一のスキャンで印字する印字方法で、上記した普通紙2紙に、各インクセットで、ブラックインクで印字したベタ部と、イエロー、又はマゼンタ、又はシアンインクで印字したベタ部とが隣接するようなパターンを印字し、ブラックインクとカラーインクとの間におけるブリーディングの発生について目視で観察し、評価した。評価基準は以下の通りである。得られた結果を表2に示した。
○:全ての色の境界で目視でブリードが認められない。
×:何れかの色の境界において、目視でブリードが認められる。
【0067】
Figure 2004143290
表2に示したように、ブラックインクとカラーインクとの境界において生じるブリードの発生においては、従来のインクと比べて有意差がなく、塩を添加したことによる効果が維持されていることを確認した。
【0068】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、塩を含む水性顔料インクにおいて、長期間放置した場合においても分散安定性に優れ、安定した画像形成ができ、更に、カラーインクと組み合わせてインクセットとした場合に、ブリードを有効に抑えることができる、特にインクジェット記録方式への適用において、高品位なインクジェット記録画像を与え、且つより高い信頼性を有する水性顔料インクが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】インクジェット記録装置のヘッドの一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1のA−B線断面図である。
【図3】インクカートリッジの一実施形態を示す縦断面図である。
【図4】記録ユニットの一例を示す斜視図である。
【図5】インクジェット記録ヘッドの別の構成例を示す概略斜視図である。
【図6】4つのインクカートリッジが取り付けられた記録ヘッドの概略説明図である。
【図7】4つの記録ヘッドがキャリッジ上に並べられている構成を示す概略説明図である。
【図8】塩を含む顔料インクを記録媒体に付与した時の固液分離の過程を示す概略図である。
【図9】塩を含まない顔料インクを記録媒体に付与した時の固液分離の過程を示す概略図である。
【図10】図1に示したヘッドをマルチ化したヘッドの外観斜視図である。
【図11】インクジェット記録装置の一実施態様を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
13:ヘッド
14:流路(ノズル)
15:発熱素子基板
16:保護層
17−1、17−2:電極
18:発熱抵抗体層
19:蓄熱層
20:基板
21:インク
22:吐出オリフィス(微細孔)
23:メニスカス
24:インク小滴
25:記録媒体
26:マルチノズル
27:ガラス板
28:発熱ヘッド
40:インク収容部
42:栓
44:インク吸収体
45:インクカートリッジ
51:給紙部
52:紙送りローラー
53:排紙ローラー
61:ブレード
62:キャップ
63:インク吸収体
64:吐出回復部
65:記録ヘッド
66:キャリッジ
67:ガイド軸
68:モーター
69:ベルト
70:記録ユニット
71:ヘッド部
72:大気連通口
80:インク流路
81:オリフィスプレート
82:振動板
83:圧電素子
84:基板
85:吐出口
86、87、88、89:記録ヘッド
90:キャリッジ
1001:塩を含む顔料インク
1003:記録媒体
1005:インク中の固体成分の殆どが豊富に含まれる領域
1007:溶剤の浸透先端
1101:塩を含まない顔料インク
1103:記録媒体
1105:固液分離しない状態の顔料インク
1107:インク中の固形分の浸透先端
1109:溶剤の浸透先端
1111:インク中の固形分含有領域

Claims (1)

  1. (M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SO及び(M1)COからなる群より選ばれる少なくとも1の塩(但し、上記M1はアルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表し、又、上記Phはフェニル基を表す)と、自己分散型顔料と水性媒体とを含む水性インクであって、インク中における上記塩の添加量が、水性インク中の成分の蒸発量を50質量%とした場合にも上記顔料が安定に分散できる量に調整されていることを特徴とする水性顔料インク。
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