JP2005350612A - 顔料インク、これを用いたインクセット、インクカートリッジ、記録ユニット、画像記録装置及びインクジェット記録方法 - Google Patents

顔料インク、これを用いたインクセット、インクカートリッジ、記録ユニット、画像記録装置及びインクジェット記録方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 優れた耐擦過性、及び耐マーカー性を維持した状態で、画像濃度の低下が少ない画像を得ことができる顔料インク、これを用いたインクセット、インクカートリッジ、記録ユニット、記録装置及び記録方法を提供すること。
【解決手段】 顔料を含有する顔料インクにおいて、該顔料が、構造式(I)のいずれかで表される原子団の1種若しくは数種と、構造式(II)のいずれかで表される原子団の1種若しくは数種の、2種類以上の原子団を表面に有しており、且つ、該構造式(I)で表される原子団の総量が、実質的に顔料をインク中に安定に分散させるのに十分な量であり、更に、該構造式(II)で表される原子団の総量が、上記該構造式(I)で表される原子団の総量と実質的に同数かそれよりも多い量であるインク、これを用いたインクセット、インクカートリッジ、記録ユニット、記録装置及び記録方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、水性ボールペン、万年筆、水性サインペン等の筆記具や、サーマルジェット方式やピエゾ方式等のオンデマンドタイプのインクジェットプリンタ用に好適に使用できるインク(記録液)、インクセット、インクカートリッジ、記録ユニット、画像記録装置及びインクジェット記録方法に関する。
従来より、優れた発色性や安定性を求められるインクの色材として染料が利用されてきている。しかし、染料は上記長所を有しているものの、形成される画像が、耐水性や耐光性等の堅牢性に劣るという問題を有しており、改善が要求されている。近年、これらの問題点を改良するために、染料の代わりに有機顔料やカーボンブラックを用いた顔料インク(以下、単に「インク」という)が数多く提案されている。
しかしながら、インクの色材として染料の代わりに有機顔料やカーボンブラックを用いた場合には、形成される画像の耐擦過性や耐マーカー性(例えば、画像を指で擦る、或いは画像に対してマーカーペンを使用する等した場合に擦れや滲みを起こさない性質)が十分でないという問題がある。この問題を解決するために、樹脂結合タイプの自己分散性顔料等を使用することについての提案がある(例えば、特許文献1参照)。これは、インクジェット記録法において用いられる液媒体と着色剤成分(色材)とを含有する記録媒体液(インク)において、顔料表面の官能基と反応し得る反応性基を有するセグメント(A)と、前記反応性基を実質的に有さず且つセグメント(A)よりも液媒体に対し高い親和性を示すセグメント(B)とを有する重合体を、顔料と加熱して得られる顔料複合ポリマーを、着色剤成分としてインクに含有させる技術である。しかし、この発明で使用されている顔料複合ポリマーにおいては、顔料表面に反応する重合体として特定の官能基を有するものが必要となるため、使用できる重合体が限定される。又、顔料表面にも重合体と反応可能な官能基が必須であり、使用できる顔料の種類も限定されてしまう。又、製造上の問題として、顔料表面と反応性基を有さないセグメントにイオン性を持たせることは難しく、イオン性を有する水分散体を得ることは難しいという問題がある。
又、複数の分子を用いた樹脂結合タイプの自己分散性顔料を使用することについての開示がある(例えば、特許文献2参照)。この樹脂結合タイプの自己分散性顔料は、イオン性を有する水性顔料分散が可能である。これらの樹脂結合タイプの自己分散性顔料を用いることにより、インクの記録ヘッドに対する信頼性は確保できたものの、印字物の耐擦過性については更に改善する余地があった。
又、耐水性を向上させるためのエステル官能基と分散性を付与する官能基を顔料表面に結合させて、耐水性と分散安定性を両立させる顔料インクについて提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、このインクを用いて印字された印字物は、耐マーカー性について更に改善する余地があった。
インクジェット記録によって印字された画像の耐擦過性を向上させることを目的として、インクの浸透性を高くして記録媒体へ色材を浸透させる方法は、業界における公知技術である。
特開平9−272831号公報 国際公開第01/51566号パンフレット 特開2001−55532公報
しかしながら浸透性の高いインクとした場合には、印字物の画像濃度が低下し易いという弊害があった。
従って、本発明の目的は、優れた耐擦過性、及び耐マーカー性を維持した状態で、画像濃度の低下が少ない画像を得ことができる顔料インク(以下、インクという)を提供することにある。又、本発明の他の目的は、高画像濃度及び高発色性の画像を安定して形成できる画像記録装置、インクジェット記録方法及びそれらに用いられるインクカートリッジ及び記録ユニットを提供することにある。
上記の目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、顔料を含有する顔料インクにおいて、該顔料が、下記の構造式(I)のいずれかで表される原子団の1種若しくは数種と、下記の構造式(II)で表される原子団の1種若しくは数種の、2種類以上の原子団を表面に有しており、且つ、該構造式(I)で表される原子団の総量が、実質的に顔料をインク中に安定に分散させるのに十分な量であり、更に、該構造式(II)で表される原子団の総量が、該構造式(I)で表される原子団の総量と実質的に同数かそれよりも多い量であることを特徴とするインク、及び該インクを用いたインクセット、インクカートリッジ、記録ユニット、画像記録装置及びインクジェット記録方法である。
Figure 2005350612
(但し、式中にあるMは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わし、R1は、炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基を表わす。)
Figure 2005350612
(但し、上記式中のR2は、疎水性である炭素数が13以上の、アルキル基を含む置換基を有するフェニル基を表す。)
特定の構成を有する自己分散型の顔料を有する本発明にかかるインクを用いることで、優れた耐擦過性、耐マーカー性が維持され、しかも画像濃度の低下のない記録物(印字物)を得ることが可能となる。
次に、好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。本発明にかかるインクは、インク中に含有させる顔料が、その表面に、特定構造を有する少なくとも2種類の原子団を特定量及び特定比率で有する結合したものであることを特徴とする。本発明においては、これらの原子団は、顔料の表面に化学的に結合している。
先ず、顔料表面に結合した特定構造を有する少なくとも2種類の原子団について説明する。顔料表面に結合させる1つ目の原子団は、下記に列挙した構造式(I)で表される原子団から選ばれる少なくとも1種である。
Figure 2005350612
ここで、上記式中にあるMは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わし、R1は、炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基を表わす。上記アルカリ金属としては、例えば、Li、Na、K、Rb、及びCs等が挙げられる。上記有機アンモニウムとしては、例えば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、モノヒドロキシメチルアミン、ジヒドロキシメチルアミン、トリヒドロキシメチルアミン、エタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、及びトリエタノールアンモニウム等が挙げられる。上記原子団の顔料表面への結合量は、結合している構造式(I)で表される原子団の総量が、実質的に顔料をインク中に安定に分散させるのに十分な量であればよく、特に限定されない。
2つめの原子団は、顔料表面に結合させる下記構造式(II)で表される原子団から選ばれる少なくとも1種である。
Figure 2005350612
ここで、R2は、疎水性である炭素数が13以上の、アルキル基を含む置換基を有するフェニル基であり、例えば、p−安息香酸オクチル等が挙げられる。
本発明にかかるインクは、上記で説明した少なくとも2種類の原子団が、特定量及び特定比率で顔料表面に化学的に結合していることを特徴とする。即ち、顔料表面に結合している前記構造式(I)で表される原子団の総量が、実質的に顔料をインク中に安定に分散させるのに十分な量であり、更に、結合している前記構造式(II)で表される原子団の総量が、上記結合している構造式(I)で表される原子団の総量と実質的に同数かそれよりも多い量である。特定量及び特定比率で顔料表面に結合していることを特徴とするが、該インクによって、特に記録媒体の種類によって画像濃度及び発色性が大きく悪化することがなく、画像品質が大きく変化することのない、安定的に高品位の画像の形成が可能となる。更に、本発明にかかるインクによって、上記に加えて、優れた耐擦過性、耐マーカー性が維持された画像の形成が可能となる。
本発明にかかる、上記したような構成の顔料を含むインクによって得られる画像が、上記したような優れたものとなる詳細なメカニズムは現時点においては明らかでないが、下記のように考えている。即ち、インク中では前記構造式(I)の原子団が存在することによって安定に存在している顔料粒子が、記録媒体上に印字されると、上記構造式(I)の原子団が、前記構造式(II)の原子団に包み込まれることにより、顔料粒子同士の結着力が強まるという、インク特性が発揮され、前記した優れた画像が得られるものと考えている。
本発明で使用する顔料の表面改質状態を分析する方法としては特に限定されず、通常考えられうる方法を用いて分析を行うことができる。例えば、ESCAやTOF−SIMS等で表面改質された顔料表面の化学結合状態を分析する方法が挙げられる。又、顔料表面に上記2種以上の原子団を化学的に結合させる方法としては、通常用いられる方法によって行えばよく、特に限定されるものではない。
次に、本発明で使用することのできる顔料について説明する。本発明で使用する顔料としては、カーボンブラックが好ましく用いられる。例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料を使用することができる。より具体的には、例えば、レイヴァン(Raven)7000、レイヴァン5750、レイヴァン5250、レイヴァン5000、レイヴァン3500、レイヴァン2000、レイヴァン1500、レイヴァン1250、レイヴァン1200、レイヴァン1190ULTRA−II、レイヴァン1170、レイヴァン1255(以上、コロンビア製)、ブラックパールズ(Black Pearls)L、リーガル(Regal)400R、リーガル330R、リーガル660R、モウグル(Mogul)L、モナク(Monarch)700、モナク800、モナク880、モナク900、モナク1000、モナク1100、モナク1300、モナク1400、ヴァルカン(Valcan)XC−72R(以上、キャボット製)、カラーブラック(Color Black)FW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス(Printex)35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック(Special Black)6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4(以上、デグッサ製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学製)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、従来公知のカーボンブラックを使用することが可能である。
又、本発明では、有機顔料を用いることもできる。具体的には、例えば、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料;リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料;アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料;キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料;ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料;イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料;ベンズイミダゾロンイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料;ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料;インジゴ系顔料;縮合アゾ系顔料;チオインジゴ系顔料;フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、キノフタロンイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等のその他の顔料が挙げられる。
又、本発明で使用することのできる有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示すと、例えば、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、109、110、117、120、125、137、138、147、148、151、153、154、166、168;C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61;C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240;C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50;C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:4、15:6、22、60、64;C.I.ピグメントグリーン7、36;C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が挙げられる。勿論、上記以外でも従来公知の有機顔料が使用可能である。
本発明にかかるインクは、上記したように、その表面が、2種類以上の特定の原子団によって特定の状態で改質されている顔料を用いることを特徴とするが、その他の成分としては、水性媒体や、種々の添加剤等、通常の水系のインク成分と同様である。本発明にかかるインクに用いることのできる水性媒体について説明する。水性媒体としては、例えば、水、或いは水と水溶性有機溶剤との混合溶媒が挙げられる。水としては脱イオン水を使用することが望ましい。水溶性有機溶剤としては、インクの乾燥防止効果を有するものが特に好ましい。具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むポリオール類;ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の低級アルキルエーテルアセテート;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の多価アルコール;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。上記のごとき水溶性有機溶剤は、単独でも或いは混合物としても使用することができる。
本発明にかかるインク中に含有される水溶性有機溶剤の量は特に限定されないが、インク全質量に対して、3〜50質量%の範囲が好適である。又、インクに含有される水の量は、インク全質量に対して好ましくは50〜95質量%の範囲である。
又、インクの保湿性維持のために、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の保湿性固形分もインク成分として用いてもよい。尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン等、保湿性固形分のインク中の含有量は一般にはインクに対して0.1〜20.0質量%の範囲が好ましく、より好ましくは3.0〜10.0質量%の範囲である。
この他更に、本発明のインクには上記成分以外にも必要に応じて界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤等、種々の添加剤を含有させてもよい。
上記界面活性剤としては、下記構造式(1)〜(4)で表される界面活性剤のいずれかを含有することが好ましい。
Figure 2005350612
(但し、上記構造式(1)中、Rはアルキルを表し、nは整数を表す。)
Figure 2005350612
(但し、上記構造式(2)中、Rはアルキル基を表し、nは整数を表す。)
Figure 2005350612
(但し、上記構造式(3)中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、m及びnは、夫々整数を表す。)
Figure 2005350612
(但し、上記構造式(4)中、m及びnは、夫々整数を表す。)
本発明にかかるインクは、筆記具用インクやインクジェット記録用インクとすることができる。インクジェット記録方式には、インクに力学的エネルギーを作用させ、インク液滴を吐出する記録方式、及びインクに熱エネルギーを加えてインクの発泡によりインク液滴を吐出する記録方式があり、それらの記録方式のいずれにも、本発明にかかるインクは特に好適である。
本発明にかかるインクをインクジェット記録用に用いる場合には、該インクは、インクジェットヘッドから吐出可能である特性を有することが好ましい。インクジェットヘッドからの吐出性という観点からは、該インクの特性としては、例えば、粘度が1〜15cps(mPa・s)、表面張力が25dyn/cm(mN/m)以上、特には粘度が1〜5cps(mPa・s)、表面張力が25〜50dyn/cm(mN/m)とすることが好ましい。
次に、上記で説明したような構成の、本発明にかかるインクを好適に用いることができるインクジェット記録技術について説明する。本発明にかかるインクを好ましく適用できる画像記録装置について説明する。該装置としては、下記に説明するようなインクジェット記録装置が挙げられる。先ず、インクの吐出手段として熱エネルギーを利用したインクジェット記録装置について説明する。当該装置の主要部であるヘッド構成例を、図1及び図2に示した。
図1は、インク流路に沿ったヘッド13の断面図であり、図2は図1のA−B線での切断面図である。ヘッド13は、インクを通す流路(ノズル)14を有するガラス、セラミック、シリコン又はプラスチック板等と、発熱素子基板15とを接着して得られる。発熱素子基板15は、酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン等で形成される保護層16、アルミニウム、金、アルミニウム−銅合金等で形成される電極17−1、17−2、HfB2、TaN、TaAl等の高融点材料から形成される発熱抵抗体層18、熱酸化シリコン、酸化アルミニウム等で形成される蓄熱層19、シリコン、アルミニウム、窒化アルミニウム等の放熱性のよい材料で形成される基板20、より成り立っている。
上記ヘッド13の電極17−1及び17−2にパルス状の電気信号が印加されると、発熱素子基板15のnで示される領域が急速に発熱し、この表面に接しているインク21に気泡が発生し、その発生する圧力でメニスカス23が突出し、インクがヘッド13のノズル14を通して吐出し、吐出オリフィス22よりインク小滴24となり、記録媒体25に向かって飛翔する。
図3には、図1に示したようなヘッドを多数並べたマルチヘッドの外観図を示す。このマルチヘッドは、マルチノズル26を有するガラス板27と、図1に説明したものと同じような発熱ヘッド28を接着して作られている。
図4に、このようなヘッドを組み込んだインクジェット記録装置の一例を示す。図4において、61は、ワイピング部材としてのブレードであり、その一端はブレード保持部材によって保持固定されており、カンチレバーの形態をなす。ブレード61は、記録ヘッド65による記録領域に隣接した位置に配置され、又、図示した例の装置の場合、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。
62は、記録ヘッド65の突出口面のキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配置され、記録ヘッド65の移動方向と垂直な方向に移動して、インク吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成を備える。更に、63は、ブレード61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。上記ブレード61、キャップ62及びインク吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61及びインク吸収体63によって吐出口面に水分、塵埃等の除去が行われる。
65は、吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録ヘッドであり、66は、記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66は、ガイド軸67と摺動可能に係合し、キャリッジ66の一部は、モーター68によって駆動されるベルト69と接続(不図示)している。これにより、キャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接した領域の移動が可能となる。51は、記録媒体を挿入するための給紙部、52は、不図示のモーターにより駆動される紙送りローラーである。
これらの構成により、記録ヘッドの65の吐出口面と対向する位置へ記録媒体が給紙され、記録が進行につれて排紙ローラー53を配した排紙部へ排紙される。以上の構成において、記録ヘッド65が記録終了してホームポジションへ戻る際、吐出回復部64のキャップ62は、記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。その結果、記録ヘッド65の吐出口がワイピングされる。
尚、キャップ62が記録ヘッド65の吐出面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッド65の移動経路中に突出するように移動する。記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード61は、上記したワイピングの時の位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。
上述の記録ヘッド65のホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッド65が記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行われる。
図5は、記録ヘッドにインク供給部材、例えば、チューブ等を介して供給されるインクを収容したインクカートリッジ45の一例を示す図である。ここで40は、供給用インクを収納したインク収容部、例えば、インク袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。この栓42に針(不図示)を挿入することにより、インク袋40中のインクをヘッドに供給可能にする。44は、廃インクを受容するインク吸収体である。インク収容部としては、インクとの接液面がポリオレフィン、特にポリエチレンで形成されているものが好ましい。
インクジェット記録装置としては、上述のようにヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、図6に示すようなそれらが一体になったものも好適に用いられる。図6において、70は記録ユニットであり、この中にはインクを収容したインク収容部、例えば、インク吸収体が収納されており、かかるインク吸収体中のインクが、複数オリフィスを有するヘッド部71からインク液滴として吐出される構成になっている。インク吸収体の材料としては、ポリウレタンを用いることが好ましい。
又、インク吸収体を用いず、インク収容部が内部にバネ等を仕込んだインク袋であるような構造でもよい。72は、カートリッジ内部を大気に連通させるための大気連通口である。この記録ユニット70は、図4に示す記録ヘッド65に換えて用いられるものであって、キャリッジ66に対して着脱自在になっている。
次に、インクの吐出手段として力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置について説明する。かかる形態の装置としては、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクを備え、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクの小液滴をノズルから吐出させるオンデマンドインクジェット記録ヘッドを挙げることができる。図7に、その記録装置の主要部である記録ヘッドの構成例を示す。
ヘッドは、インク室(不図示)に連通したインク流路80と、所望の体積のインク液滴を吐出するためのオリフィスプレート81と、インクに直接圧力を作用させる振動板82と、この振動板82に接合され、電気信号により変位する圧電素子83と、オリフィスプレート81、振動板82等を支持固定するための基板84とから構成されている。
図7において、インク流路80は、感光性樹脂等で形成され、オリフィスプレート81は、ステンレス、ニッケル等の金属を電鋳やプレス加工による穴あけ等により吐出口85が形成されており、振動板82は、ステンレス、ニッケル、チタン等の金属フィルム及び高弾性樹脂フィルム等で形成され、圧電素子83は、チタン酸バリウム、PZT等の誘電体材料で形成される。
以上のような構成の記録ヘッドは、圧電素子83にパルス状の電圧を与え、ひずみ応力を発生させ、そのエネルギーが圧電素子83に接合された振動板82を変形させ、インク流路80内のインクを垂直に加圧しインク液滴(不図示)をオリフィスプレート81の吐出口85より吐出して記録を行うように動作する。このような記録ヘッドは、図4に示したものと同様な記録装置に組み込んで使用される。記録装置の細部の動作は先述と同様に行うもので差し支えない。
次に、本発明にかかるインクを、ブラック用、シアン用、マゼンタ用、イエロー用のインクのいずれかに用いたカラー記録用のインクセットを用いて、カラー画像を記録する装置について説明する。この場合には、例えば、前記図3に示したマルチ記録ヘッドを4つキャリッジ上に並べた記録ヘッド90を用いることができる。図9はその一例であり、91、92、93及び94は、各々イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのインクを吐出するための記録ユニットである。該記録ユニット91、92、93及び94は、前記した記録装置のキャリッジ上に配置され、記録信号に応じて各色のインクを吐出する。
又、図9では記録ユニットを4つ使用した例を示したが、これに限定されず、例えば図8に示したように1つの記録ヘッドで上記の4色のインクを各々含むインクカートリッジ86、87、88及び89から供給される各色のインクを各々個別に吐出させることができるようにインク流路を分けて構成した記録ヘッド95に取り付けて記録を行う態様も挙げられる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の記載で、「部」、「%」とあるものは特に断らない限り質量基準である。
[顔料分散液A]
以下の例は、カーボンブラックの表面に、カーボンブラック1g当たり、下記構造を有する原子団(I−1)と、下記構造を有する原子団(II−1)が、それぞれ0.3mmol/gの量で化学的に結合してなる表面改質カーボンブラック顔料が分散されてなる分散液の調製を開示するものである。
Figure 2005350612
先ず、200m2/gの表面積及び122ml/100gのDBP吸油量を有するカーボンブラック300gを、70℃まで加熱されたバッチピンミキサー(batch pin mixer)に入れる。そこへ、4−アミノ安息香酸(13.0g)を加える。混合を開始し、亜硝酸ナトリウムの水溶液(亜硝酸ナトリウム6.21gを107.3gの水に溶解)を混合しながら添加する。全混合時間は、おおよそ5分である。その後、4−アミノ安息香酸オクチル(22.7g)を添加する。混合を再開し、且つ混合しながら硝酸溶液(8.1gの70%硝酸を107.3gの水に溶解)を添加する。混合時間は4分である。最後に、亜硝酸ナトリウムの水溶液(亜硝酸ナトリウム6.21gを107.3gの水に溶解)を混合しながら5分間添加する。混合を停止し、材料をバッチピンミキサーから取り出して、室温まで冷却する。次いで、これを水中に15%固形物となるように再分散し、水酸化ナトリウムを使用してpHを約8.5に調整し、その後、0.5μm(0.5ミクロン)に微細ろ過して、上記原子団(I−1)と上記原子団(II−1)とが表面に化学的に結合してなるカーボンブラックが分散してなる顔料分散液Aを得た。
[顔料分散液B]
処理剤の量を変更した以外は、顔料分散液Aを作製した方法と同様の処理法を利用して、カーボンブラックの表面に、カーボンブラック1g当たり、上記構造を有する原子団(I−1)が0.3mmol/gと、上記構造を有する原子団(II−1)が0.5mmol/gの量で結合してなる表面改質カーボンブラックが分散されてなる顔料分散液Bを調製した。
[顔料分散液C]
処理剤の量を変更した以外は、顔料分散液Aを作製した方法と同様の処理法を利用して、カーボンブラックの表面に、カーボンブラック1g当たり、上記構造を有する原子団(I−1)が0.3mmol/gと、上記構造を有する原子団(II−1)が0.2mmol/gの量で化学的に結合してなる表面改質カーボンブラックが分散されてなる顔料分散液Cを調製した。
[顔料分散液D]
顔料分散液Aを作製した方法において、4−アミノ安息香酸オクチルを4−アミノ安息香酸ブチルに変更したことと、該処理剤の量を変更した以外は、顔料分散液Aを作製した方法と同様の処理法を利用して顔料分散液Dを得た。顔料分散液Dは、カーボンブラックの表面に、カーボンブラック1g当たり、下記構造を有する原子団(I−1)が0.3mmol/gと、下記構造を有する原子団(II−2)が0.3mmol/gの量で化学的に結合してなる表面改質カーボンブラックが分散されてなる。
Figure 2005350612
表1に、顔料分散液A〜Dのそれぞれの特徴をまとめる。
Figure 2005350612
<インクの調製>
上記で得た顔料分散液Aを含む下記の組成を混合し、よく撹拌した後に、ポアサイズ1.0μmのメンブランフィルターで濾過して本実施例のインクを調製した。
[実施例1]
・顔料分散液A 40部
・グリセリン 7部
・1,5ペンタンジオール 5部
・トリメチロールプロパン 7部
・アセチレングリコールEO付加物 0.2部
(商品名アセチレノールEH、川研ファインケミカル(株)製)
・超純水 40.8部
[実施例2]
実施例1において、顔料分散液Aを顔料分散液Bに変更した以外は全く同様にしてインクを作製し、実施例2のインクとした。
[比較例1]
実施例1において、顔料分散液Aを顔料分散液Cに変更した以外は全く同様の方法でインクを作製し、比較例1のインクとした。
[比較例2]
実施例1において、顔料分散液Aを顔料分散液Dに変更した以外は全く同様の方法でインクを作製し、比較例2のインクとした。
<評価>
上記で得た実施例及び比較例の各インクについて、以下に述べる試験を実施し、下記の基準で評価した。
[印字汚れ耐擦過性]
インクジェット記録装置(BJ−S600:キヤノン製)に各インクを搭載して、下記の5種類のコピー用普通紙A〜Eにそれぞれ印字を行った。そして、得られた各画像を1日放置した後、印字部分を、シルボン紙に40g/cm2の加重で5回擦り、擦り部分付近の汚れを目視にて観察して、以下の基準で評価した。
(評価基準)
○:全ての紙で汚れが目立たない。
△:一部の紙で汚れが目立つ。
×:全ての紙で汚れが目立つ。
(使用した紙の種類)
A:キヤノン製PPC用紙 NSK
B:キヤノン製PPC用紙 NDK
C:ゼロックス製PPC用紙 4024
D:フォックスリバー製PPC用紙 プローバーボンド
E:ノイジドラ製 キヤノン用PPC用紙
[印字汚れ耐マーカー性]
先に使用したと同様のインクジェット記録装置(BJ−S600:キヤノン製)に各インクを搭載して、先に使用したと同様の5種類のコピー用普通紙A〜Eにそれぞれ印字を行った。そして、得られた各画像を1日放置した後、市販の水性蛍光マーカーペン(例えば、ゼブラ製蛍光ペン OPTEX OP−100−Y)を用いて印字部分をマーキングして、マーキング部分の汚れを目視にて観察して、以下の基準で評価した。
(評価基準)
○:全ての紙で汚れが目立たない。
△:一部の紙で汚れが目立つ。
×:全ての紙で汚れが目立つ。
Figure 2005350612
インクジェット記録装置ヘッドの縦断面図である。 図1のA−B線での切断面図である。 図1に示したヘッドをマルチ化したヘッドの外観斜視図である。 インクジェット記録装置の一例を示す斜視図である。 インクカートリッジの縦断面図である。 記録ユニットの一例を示す斜視図である。 記録ヘッドの構成の別の一例を示す図である。 4つのインクカートリッジが取り付けられた記録ヘッドの概略説明図。 4つの記録ヘッドがキャリッジ上に並べられている構成を示す概略斜視図。
符号の説明
13:ヘッド
14:ノズル
15:発熱素子基板
16:保護層
17−1、17−2:電極
18:発熱抵抗体層
19:蓄熱層
20:基板
21:インク
22:吐出オリフィス(微細孔)
23:メニスカス
24:インク滴
25:記録媒体
26:マルチノズル
27:ガラス板
28:発熱ヘッド
40:インク袋
42:栓
44:インク吸収体
45:インクカートリッジ
51:給紙部
52:紙送りローラー
53:排紙ローラー
61:ブレード
62:キャップ
63:インク吸収体
64:吐出回復部
65:記録ヘッド
66:キャリッジ
67:ガイド軸
68:モーター
69:ベルト
70:記録ユニット
71:ヘッド部
72:大気連通口
80:インク流路
81:オリフィスプレート
82:振動板
83:圧電素子
84:基板
85:吐出口
86、87、88、89:インクカートリッジ
90:記録ヘッド
91、92、93、94:記録ユニット

Claims (10)

  1. 顔料を含有する顔料インクにおいて、該顔料が、下記の構造式(I)のいずれかで表される原子団の1種若しくは数種と、下記の構造式(II)で表される原子団の1種若しくは数種の、2種類以上の原子団を表面に有しており、且つ、該構造式(I)で表される原子団の総量が、実質的に顔料をインク中に安定に分散させるのに十分な量であり、更に、該構造式(II)で表される原子団の総量が、該構造式(I)で表される原子団の総量と実質的に同数かそれよりも多い量であることを特徴とする顔料インク。
    Figure 2005350612
    (但し、式中にあるMは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わし、R1は、炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基を表わす。)
    Figure 2005350612
    (但し、上記式中のR2は、疎水性である炭素数が13以上の、アルキル基を含む置換基を有するフェニル基を表す。)
  2. 前記顔料が、カーボンブラックである請求項1に記載の顔料インク。
  3. ブラック用、イエロー用、マゼンタ用及びシアン用の各インクを組み合わせてなるカラー記録用インクセットにおいて、各インクの中の少なくとも1種が、請求項1又は2に記載の顔料インクであることを特徴とするインクセット。
  4. 請求項1又は2に記載の顔料インクを収容しているインクタンクを備えていることを特徴とするインクカートリッジ。
  5. 請求項1又は2に記載のインクを収容したインク収容部及び該インクを吐出させるためのヘッド部を備えたことを特徴とする記録ユニット。
  6. 請求項4に記載のインクカートリッジ、インクを吐出させるための記録ヘッド及び該記録ヘッドに該インクカートリッジからインクを供給する手段を備えていることを特徴とする画像記録装置。
  7. 請求項5に記載の記録ユニットを備えていることを特徴とする画像記録装置。
  8. 請求項1又は2に記載の顔料インクを収容したインク収容部及び各々のインク収容部に収容されているインクを各々吐出させるためのヘッド部を備えていることを特徴とする画像記録装置。
  9. 請求項1又は2に記載の顔料インクを収容したインク収容部を備えたインクカートリッジ、各々のインク収容部に収容されているインクを各々吐出させるためのヘッド部及び各々のインクを各々のインクカートリッジから各々のヘッド部に供給するための手段を備えていることを特徴とする画像記録装置。
  10. 請求項1又は2に記載の顔料インクを記録媒体表面に向けて飛翔させて記録媒体表面に付着させることにより画像を記録することを特徴とするインクジェット記録方法。
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