JP2008285118A - 鉄道設備の異常診断計測システム - Google Patents
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Abstract
【課題】この発明の課題は、レール等の鉄道設備の異常を診断する異常診断計測システムを提供することである。
【解決手段】パンタグラフ上に設けられ、車両の走行中に前記車両と電線間の距離変化に追従して動き、垂直方向加速度を計測する加速度取得手段と、前記加速度取得手段で予め計測した特定区間における加速度の変化を示す基準となる加速度分布情報を記録する記憶手段と、前記記憶手段に記録されている前記基準加速度分布情報と、前記加速度取得手段が計測している加速度とを比較する比較手段と、前記比較手段の比較結果に基づいて、前記電線または前記パンタグラフに異常があるか否かを判断する判断手段とを有する。
【選択図】 図4
【解決手段】パンタグラフ上に設けられ、車両の走行中に前記車両と電線間の距離変化に追従して動き、垂直方向加速度を計測する加速度取得手段と、前記加速度取得手段で予め計測した特定区間における加速度の変化を示す基準となる加速度分布情報を記録する記憶手段と、前記記憶手段に記録されている前記基準加速度分布情報と、前記加速度取得手段が計測している加速度とを比較する比較手段と、前記比較手段の比較結果に基づいて、前記電線または前記パンタグラフに異常があるか否かを判断する判断手段とを有する。
【選択図】 図4
Description
この発明は、列車の走行に必要な設備の異常を検知する異常診断計測システムに関する。
列車が正確に運行していることを把握し、列車が遅延した際には、どの位置を走行しているのかを正確に把握することで、乱れたダイヤの正常化および利用客に対して適切な対応をとることができる。そのため、列車を制御する上では、列車の詳細な位置、速度が計測できれば、より正確な制御が可能となる。
従来、列車の位置検出は、列車にGPS(Global Positioning System:衛星測位システム)受信機を搭載し、衛星がGPS情報を受信することで位置を検出する方法がある。また、線路にATS(Automatic Train Stop 自動列車停車装置)等を設置することで、ATSの設置位置を基準位置として、列車の車輪の回転数から走行距離を判断し、列車の位置を検出する方法も用いられている。また、距離センサによって列車の走行距離を、方位センサによって列車の走行方位を時系列的に観測し、列車の走行位置を推測する推測航法も用いられている。
特許文献1には、列車最前部に推測航法演算装置が設置され、列車最前部と列車最後部にはGPS受信機が搭載されている。推測航法演算装置は、それぞれのGPS受信機で受信したGPS情報から得られる位置情報から列車の軌跡を算出し、記憶部が記録する。そして、列車最前部と列車最後部に搭載されたいずれかのGPS受信機が通信不能となった場合には、記憶部が記録している列車の軌跡に基づいて、推測航法演算装置は、通信不能となったGPS受信機が搭載された位置情報を補正する構成が開示されている。
特許文献2には、衛星からGPS情報から受信する受信手段と、緯度、経度と、既知である線路の曲率と、線路長とを関係付けたデータベースを記録する記憶手段と、情報処理手段とを有し、情報処理手段は、GPS情報を受信したときに受信信頼度を演算し、信頼度が高ければ、GPS情報により列車走行位置を特定し、それ以外の場合は、車軸の回転数等から曲率を算出し、記憶手段で記録している曲率と比較し、列車走行位置を特定する構成が開示されている。
特開平7−294622号公報
特開2003−294825
しかしながら、特許文献1および特許文献2は、GPS情報や電波強度による位置検知を用いており、列車に搭載されたGPS受信機は、常に衛星や電波を捉えている必要がある。そのため、列車がトンネルを通過する場合または地下鉄では、位置を検知することは困難である。また、いずれの場合も、衛星によるGPS情報が得られない場合は、演算によって位置を算出しているが、測定区間の累積加算により位置を検知しているため累積誤差が生じる可能性がある。
また、衛星からのGPS情報を用いないATS等の補助装置を線路側に設ける方法では、設備を線路側につけるコストの問題がある。ATS等の補助装置は、常に列車の位置を検知するための用途ではない。さらに、レールおよび列車の車輪は、金属製である。そのため、車輪が磨耗し、車輪径が変化することや、車輪が空転することが起こり得る。そのため、ATSを用いた方法では、列車の車輪の回転数から走行距離を判断し、列車の位置、または速度を検知するのは必ずしも正確とはいえない。
この発明の目的は、列車の位置を正確に計測すると共に、計測結果を用いて列車の走行に係る設備の異常を判定する異常診断計測システムを提供することである。
パンタグラフ上に設けられ、列車の走行中に前記列車と電線間の距離変化に追従して動き、垂直方向加速度を計測する加速度取得手段と、前記加速度取得手段で予め計測した特定区間における加速度の変化を示す基準となる加速度分布情報を記録する記憶手段と、前記記憶手段に記録されている前記基準加速度分布情報と、前記加速度取得手段が計測している加速度とを比較する比較手段と、前記比較手段の比較結果に基づいて、前記電線または前記パンタグラフに異常があるか否かを判断する判断手段とを有する。
本発明により、レールまたは電線の経年劣化や、レールの置石、車輪またはパンタグラフの異常、列車の走行に係る設備の異常などを、特別な設備を設けることなく、判定することができる。
以下、図面を参照して、この発明の第1実施例に係る列車位置検知システムについて説明する。図1は、本発明が適用される列車の構造を示す外観図である。列車1は、レール2に沿って走行する。またレール2に沿って、電線3が中空に敷かれている。電線3は、任意の間隔で設置された支持点4によってある程度の張力を有して固定されている。駅と駅との間では、複数の支持点4が設けられている。
また、列車1はレール2からの振動、車輪6とレールとの左右方向のすべり、駆動系の振動、風圧などによって、様々な方向から走行中に振動を受ける。列車1は、これらの振動を抑制するために、台車5が設けられている。図2に、列車1に設けられる台車5の構造を示す。台車5は、図示しない駆動装置および制動装置、車輪53、車軸54を有している。台車5には、レール2および図示しない駆動装置からの振動を抑制するために、車輪53および車軸54が1次緩衝装置(サスペンション)52を介して設けられている。また、台車5と列車1は、2次緩衝装置51を介して設けられている。2次緩衝装置51も、車体での乗り心地を良くするためのものである。
ここで、車軸54にはセンサ55が設けられている。車軸54に設けられるセンサ55としては、例えば3次元加速度センサまたはジャイロセンサが用いられる。車輪54が図2に示すように、レール2とレール2の継ぎ目56を通過するとき、車軸54に設けられたセンサ55は車軸54の上下運動に追従して動作し、車軸54の加速度を検知する。この加速度に基づいてレールの継ぎ目が検出される。レール2の継ぎ目の箇所は、レール2を取り替えない限り固定である。尚、レールの継ぎ目を検出するためのセンサとしては、ストロークセンサを用いることもできる。ストロークセンサは図2の一次サスペンション52に設けられ、一次サスペンション52の伸縮のストロークを検知する。この場合継ぎ目の検出は、ストロークの大きさ、またはストロークを2回微分して得られる加速度の大きさに基づいて行われる。
例えば、A駅からB駅の間に、レール2とレール2の継ぎ目が8箇所設けられているとする。図3は、列車1がA駅からB駅間を走行する際にセンサ55が検知したデータを示す図である。図3の横軸は、駅Aから駅B間におけるレール2の継ぎ目位置を示している。縦軸は、センサ55が検知した加速度またはストロークデータを示している。
本実施例のように、車軸54にセンサ55を設けることで、列車1の上下動に従ってセンサ55が車軸54の加速度またはストロークを検知する。センサ55は、車輪53がレール2とレール2の継ぎ目を通過するとき、継ぎ目以外を走行しているときよりも突出した縦(垂直)方向の加速度またはストロークデータを検知することとなる。
次に、センサ55として加速度センサを用い、センサ55が取得した加速度に基づいて、列車1の位置を検知するシステムについて図4に示す列車位置検知システムのブロック図を用いて詳細に説明する。
本実施例に係る列車位置検知システムは、センサ55、データロガー100、処理装置101、記憶装置102を有している。データロガー100は、センサ55が取得した加速度またはストロークデータをデジタル値に変換し、時間ごとのデータに変換する。記憶手段としての記録装置102は、駅と駅の間に存在するレールとレールの継ぎ目の数と、それぞれの継ぎ目が駅からどの位置に存在するのかを対応付けて予め記録している。また、記録装置102は、レール2の各継ぎ目を車輪53が通過する際にセンサ55が検知した加速度の過去の履歴などのデータを記録している。
処理装置101は、計算部1011、比較部1012、判断部1013を有している。計算部1011は、データロガー100を介した加速度またはストロークデータを3次元に分解する。また、計算部1011は、センサ55が検知した加速度から、車輪53の上下(垂直)方向速度及び移動距離を算出する。比較部1012は、センサ55が検知した加速度の大きさと規定値とを比較し、比較結果を提供する。判断部1013は、車輪53がレール2の継ぎ目を通過したか否かを判断する。
ここで、図3のように列車1が駅Aと駅B間を走行する場合を例として本実施形態の動作を説明する。
はじめに、列車1が駅Aを出発し、センサ55が上下方向の加速度を検知すると、処理装置101の比較部1012は、検知した加速度の大きさと規定値とを比較し比較結果を提供する。この規定値は記憶装置102に記録されている値である。また規定値は予め設定されたものであり、車輪53がレール2の継ぎ目を通過するときにセンサ55が検知する加速度の大きさ、または加速度を3次元分解したパターンである。判断部1013は、センサ55が検知した加速度が規定値以上であり、加速度の3次元分解したパターンも所定範囲で照合すると判断すると、車輪53がレール2の継ぎ目を通過したと判断する。
記憶装置102は、例えば駅Aと駅B間には、8つのレール2の継ぎ目が設けられている旨の情報を有している。判断部1013は、駅Aから駅B間で、車輪53がレール2の継ぎ目を通過したと判断すると、列車1が、駅Aから1つ目のレール2の継ぎ目の位置を走行したことを示す情報を記憶装置102に記録する。
次に、センサ55が上下方向の加速度を検知して、判断部1013が車輪53はレール2の継ぎ目を通過したと再び判断すると、判断部1013は、記憶装置102から列車1が駅Aと駅B間で駅Aから1つ目のレール2の継ぎ目を通過した旨の情報を読み出し、列車1が駅Aから2つ目のレール2の継ぎ目の位置を走行している旨を示す情報を出力する。そして、判断部1013は記憶装置102に、駅Aから2つ目のレール2の継ぎ目を通過した旨を示す情報を記録する。
センサ55は、例えば3次元加速度センサであり、列車1がレール2の継ぎ目を通過しないときであっても、進行方向の加速度を計測する。そのため、列車1が駅Bに到着し、センサ55がおおよそゼロの加速度を検知し、列車1の車輪の回転が停止したとき、判断部1013は、駅Aと駅B間の列車位置検知は終了したと判断する。また、列車1が駅Bを出発し、センサ55が上下方向の加速度を検知して、判断部1013が、車輪53はレール2の継ぎ目を通過したと判断すると、判断部1013は、駅Bから1つ目のレール2の継ぎ目を通過した旨を示す情報を出力するとともに、記憶装置102に記録する。
レール2の継ぎ目の位置は既知情報である。そのため、本実施例により、レール2の継ぎ目を列車が通過したことが分かれば、どの駅から駅までの区間におけるどのレール2の継ぎ目の位置を列車1が走行しているのか正確に特定することができる。
また、記録装置102は、図3に示す駅と駅との間でセンサ55が取得する加速度データの分布(加速度分布)を記録する。記録装置102はまた、基準となる基準加速度分布を記録している。この基準加速度分布は、例えば、乗客の乗っていない列車1がレール2上を走行した場合、もしくは、数日に1度または毎朝の始発列車でセンサ55が取得した加速度分布を用いることができる。
通常、基準加速度分布は図3に示すように、センサ55がレール2とレール2の継ぎ目56で取得した加速度、及びレール2上では計測誤差程度しか取得しない加速度の分布である。
例えば、列車1が駅Aと駅Bとの間を走行し、レール2とレール2の継ぎ目56以外でセンサ55が縦方向の加速度を取得したとする。比較部1012は、駅Aと駅Bとの間の基準となる加速度分布と列車1が取得した加速度分布とを比較する。判断部1013は、例えば、駅Aから3つ目のレールの継ぎ目と4つ目の継ぎ目の間に基準となる加速度分布にはない縦方向の加速度が得られていた場合、異常である旨を出力する。
判断部1013は、レール2とレール2の継ぎ目56の位置は把握できるため、異常な加速度を取得した場合、どの継ぎ目56と継ぎ目56の間にレールの異常があるのかを容易に判別することができる。
レール2の継ぎ目以外で発生する縦方向の加速度は、例えば、レール2上に置かれた置石等の障害物、レール2の経年劣化による変化等によるものである。
そのため、基準となる加速度分布をレール2を設けた時点の加速度分布とした場合に、比較部1012が、基準となる加速度分布と列車1がレール2上を走行するごとにセンサ55が取得した加速度分布と比較することで、判断部1013は、レール2の経年劣化を判別できる。基準となる加速度分布を毎朝の始発列車が取得した加速度分布とした場合に、比較部1012が、基準となる加速度分布と列車1がレール2上を走行するごとにセンサ55が取得した加速度分布と比較することで、判断部1013は、レール2に置かれた障害物や、その日のうちにレール2上に発生した事象を判別できる。
判断部1013は、レール2の経年劣化が発生した場所を容易に特定できるため、同じ箇所で繰り返し異常と判断した場合は、劣化の原因が地盤であると判断することもできる。
ここで、センサ55には3次元加速度センサが用いられている。そのため、列車1がカーブを通過する際には、センサ55が横方向の加速度を検知するので、列車1がレール2の継ぎ目を通過する場合にセンサ55が取得する加速度パターンとは異なる加速度パターンが得られる。このようにして、レール2の継ぎ目以外の箇所でも列車1の位置を特定することができる。
このように、基準となる加速度分布を列車1に乗客が乗車しておらず、風等の外乱の影響を受けない条件での3次元加速度分布とする。この加速度分布は、縦方向の加速度のみならずカーブ等で発生する横方向の加速度も含めた分布である。
例えば列車1が走行中、判断部1013が、記憶装置102に基準となる加速度分布として記録されている横方向の加速度以上の加速度をセンサ55が取得したと判断すると、異常である旨を示す情報を出力する。この場合の異常は、混雑時の乗客過多、もしくは風の影響である。
従って、風の影響のない混雑時、もしくは風の影響がある空席時では、列車1の走行に影響を及ぼしている要因を知ることができる。このとき加速度の大きさもわかるので、混雑状況、外乱条件によって運行の危険度を判別することができる。また、判断部1013がリアルタイムに、基準となる加速度分布として記録されている横方向の加速度以上の加速度をセンサ55が取得したと判断した場合、異常である旨および加速度の大きさ(基準に対する割合など)を示す情報を、運転士が視認できる図示しないモニタに出力することで、運転士は列車1を例えば徐行運転することができる。
次に、センサ55を列車1の各車両に設置し、列車1がカーブを走行した場合、最後尾車両がカーブを抜けたか否か判断する実施例について説明する。
例えば、列車1が駅Aと駅Bとの間のカーブを走行したとき、センサ55は、徐々に大きくなる横方向加速度を計測し、抜ける手前では徐々に減少する横方向加速度を計測する。
はじめに、比較部1012は、先頭車両のセンサ55が取得したカーブに入ったときから抜けるまでの加速度の変化を検出する。判断部1013は、横方向の加速度をセンサ55が取得しないようになったと判断した場合、横方向の加速度がほぼゼロである旨を示す情報を運転士が視認できる図示しないモニタに出力する。
判断部1013が、横方向の加速度がほぼゼロとなった旨を示す情報を、車両ごとのセンサ55で計測した加速度について出力することで、運転士は、どの車両までがカーブを抜けたかを容易に判断できる。
カーブを列車1が走行している場合、運転士は、列車1の先頭車両がカーブを抜けたことは把握できるが、多数車両が連結されている場合は、最後尾車両がカーブを抜けたかどうかは容易に把握できない。上記構成により、車両ごとに取得された加速度を比較することで運転士は最後尾車両がカーブを抜けたことを容易に把握することができる。そのため、運転士は、列車1の最後尾車両がカーブを完全に抜けたことを確認した後に列車1を加速することができる。従って、列車1の最後尾車両がカーブを抜ける前に加速することで遠心力が加わり、揺れが激しくなり、乗り心地が悪くなることを回避することができる。
上記説明した列車1の最後尾車両がカーブを抜けたか否か判断する動作について図5に示すフローチャートを用いて説明する。
はじめに、列車1がカーブを走行中しているとき、各車両のセンサ55は、加速度を計測する(ステップS100)。
判断部1013は、センサ55が横方向の加速度を検出している車両を判断する(ステップS101)。そして、車両ごとにカーブを通過中であることを示す情報を図示しない表示部に出力する。
判断部1013は、各車両に設けられたセンサ55が横方向の加速度をほとんど計測しなくなれば、当該車両は、カーブを抜けたと判断する(ステップS102)。更に、全ての車両がカーブを抜けたか判断し、その情報を表示部に出力する(ステップS103)。
次に、第2実施例について説明する。列車1の屋根には、パンタグラフ11が設けられている。パンタグラフ11は、列車1の走行の動力として、電線3から電力を受け取っている。図6を用いて、パンタグラフ11の構造について説明する。図6(a)は、パンタグラフ11を列車1の側面側から見た図である。また、図6(b)は、パンタグラフ11を列車1の正面側から見た図である。パンタグラフ11は、主として枠111、ダンパー112、すり板体113で構成されている。枠111は、すり板体113を電線3に接触する位置に上下移動させるものである。枠111は、折りたたんだ状態からリンク機構とばねや空気シリンダによってすり板体113を上昇させる。パンタグラフ11を構成する枠111は、例えば図2(a)に示すように、側面形状が菱形のものである。
すり板体113は、枠111の上部に設置されている。そして、すり板体113は、電線3と接触する位置まで枠111によって上昇される。すり板体113は、図2(a)に示すように、1つのパンタグラフ11に例えば2つ設けられている。すり板体113には、電線3と接触する部分としてすり板が設けられている。すり板体の材料は、磨耗しにくく電気伝導性の良いカーボン系が用いられる。すり板体113は、電線3と高速で接触しながら電力を受け取るものである。
ダンパー112は、すり板体113が自由に上下運動できるように、枠111とすり板体113の間に設けられている。またダンパー112は、上下動を緩和する弾性体(例えば復元バネ)を有している。すり板体113は、電線3と常に接触するように押し付けられている。列車1が高速で走行しているときに生じる上下動に対しても、すり板体113を電線3から離れないように、ダンパー112が列車1の上下動に追従して上下動する。つまりダンパー112は、電線3と接触するすり板体113の平行や円滑な上下動を保ち、すり板体113への電線3に対する追従性を向上させる。
支持点4は、電線3を固定するものであるため、電線3とは異なり突き出た硬点である。そのため、列車1の走行に伴って、パンタグラフ11が、すり板体113を電線に対して押し付けた状態で支持点4を通過するとき、支持点4は、パンタグラフ11を下方に押し付ける。ダンパー112は、支持点4による押し付けに追従して縮む。パンタグラフ11が支持点4を通過すると、縮んだダンパー112は元の高さまですり板体113を上方向に押し戻す。
ダンパー112には、センサ114が設けられている。ダンパー114に設けられるセンサ114としては、例えば3次元加速度センサ(またはジャイロセンサ)もしくはストロークセンサである。センサ114が例えば加速センサの場合、パンタグラフ11が支持点4を通過してダンパー112が伸縮すると、センサ114は追従して移動し、すり板体113の垂直方向加速度を検知する。またセンサ114がストロークセンサの場合、ダンパーの伸縮のストロークが検知される。
図7は、第2実施例に係る位置検知システムの構成を示すブロック図である。この位置検知システムは、図4に示した位置検知システムの第1実施例と同様な構成であるが、パンタグラフに設けられたセンサ114が追加されている。
第2実施例に係る位置検知システムは、車軸54上の加速度センサ55から得られる加速度情報に基づき列車位置を算出する処理と並行して、パンタグラフ11に設けられた加速度センサ114から得られる加速度情報に基づき列車位置を算出する。両センサから得られる加速度情報に基づいて算出される列車位置情報を用いて、列車位置をより正確に判断することができる。
車軸54にセンサ55を設けることでレール2の状態を診断するのと同様に、パンタグラフ11にセンサ114を設けることで電線3の状態を診断することができる。また、各車両のパンタグラフ11にセンサ114を設けることで、パンタグラフ11の状態も診断することができる。
また、例えば地下鉄の場合は、電線3が設置できないため、パンタグラフ11は設けられていない。しかし、レール2と平行にサイドレールが設けられ、列車1には、サイドレールから電力を受けるためのパンタグラフ11と同様の機構が列車1の下部に設けられている。サイドレールには、電線3に設けられた支持点4と同様に、サイドレールを支持するための支持点が設けられている。そのため、地下鉄等のパンタグラフ11が設けられていない列車でも、上記説明した場合と同様に位置検出が可能である。またセンサ114は列車1に設けているが、支持点4に設けても同様である。
次に、車輪54に設けられたセンサ55またはパンタグラフ11に設けられたセンサ114によるレール2または電線3の異常診断について図8に示すフローチャートを用いて説明する。
センサ55またはセンサ114は、列車1の走行に追従して特定区間(例えば駅間)の加速度分布を計測する(ステップS200)。記憶装置102は、センサ55またはセンサ114が計測した加速度分布を記録する。
また、記憶装置102は、予め基準となる加速度分布を記録している。
比較部1012は、センサ55またはセンサ114が計測した加速度分布と記憶装置102から読み出した基準となる加速度分布とを比較する(ステップS201)。
比較部1012が、基準となる加速度分布とある程度の範囲でマッチングすると判断すれば(ステップS201、YES)、判断部1013は、特定区間におけるレール2、電線3、車軸54、パンタグラフ11に異常がないと判断し、その旨を示す情報を出力する(ステップS202)。
比較部1012が、基準となる加速度分布と異なる加速度が計測されていると判断すれば(ステップS201、NO)、判断部1013は、電線3または車軸54またはパンタグラフ11に異常があると判断する(ステップS203)。
そして、判断部1013は、センサ55またはセンサ114のいずれのセンサで計測した加速度分布に異常があったかを判断する(ステップS204)。判断部1013は、レール2の継ぎ目56または支持点4の位置と、異常があった加速度分布からどの地点に異常があるかを特定して出力する(ステップS205)。
上記説明したように、列車1に特別な設備を設けることなく、列車の走行に必要な設備に劣化等の異常が発生した場合に、異常を生じた位置を容易に検出することができる。
尚、この発明は前述した実施例の形態に限定されるものではなく、現在または将来の実施段階では、その時点で利用可能な技術に基づき、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
1…列車、2…レール、3…電線、4…支持点、5…台車、11…パンタグラフ、55…センサ、114…センサ。
Claims (8)
- パンタグラフ上に設けられ、車両の走行中に前記車両と電線間の距離変化に追従して動き、垂直方向加速度を計測する加速度取得手段と、
前記加速度取得手段で予め計測した特定区間における加速度の変化を示す基準となる加速度分布情報を記録する記憶手段と、
前記記憶手段に記録されている前記基準加速度分布情報と、前記加速度取得手段が計測している加速度とを比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果に基づいて、前記電線または前記パンタグラフに異常があるか否かを判断する判断手段と、
を有することを特徴とする鉄道設備の異常診断計測システム。 - 車輪に設けられ、車両の走行中にレールの継ぎ目に追従して動き、垂直方向加速度を計測する加速度取得手段と、
前記加速度取得手段で予め計測した特定区間における加速度の変化を示す基準となる基準加速度分布情報を記録する記憶手段と、
前記記憶手段に記録されている前記基準加速度分布情報と、前記加速度取得手段が計測している加速度とを比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果に基づいて、前記レールまたは前記車輪に異常があるか否かを判断する判断手段と、
を有することを特徴とする鉄道設備の異常診断計測システム。 - 前記記憶手段は、前記基準加速度分布情報として前記車両に乗客を乗せていない状態、外乱を受けない状態、または始発のいずれかの走行で取得した加速度分布情報を記録することを特徴とする請求項1または2記載の異常診断計測システム。
- 前記判断手段は、前記比較手段の比較結果に基づいて乗客もしくは外乱の影響を判断することを特徴とする請求項3記載の異常診断計測システム。
- 列車の各車両に設けられた横方向加速度を計測する加速度センサと、
前記加速度センサで予め計測したカーブにおける加速度の変化を示す基準となる基準加速度分布情報を記録する記憶手段と、
前記列車がカーブを走行する場合に、前記記憶手段に記録されている前記基準加速度分布情報と、前記加速度センサが計測している加速度とを比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果に基づいて、前記車両ごとカーブを抜けたか否かを判断する判断手段と、
を有することを特徴とする請求項1または2記載の異常診断計測システム。 - 列車の各車両に設けられた横方向加速度を計測する加速度取得手段と、
前記加速度取得手段で予め計測したカーブにおける加速度の変化を示す基準となる基準加速度分布情報を記録する記憶手段と、
前記列車がカーブを走行する場合に、前記記憶手段に記録されている前記基準加速度分布情報と、前記加速度取得手段が計測している加速度とを比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果に基づいて、前記車両ごとカーブを抜けたか否かを判断する判断手段と、
を有することを特徴とする計測システム。 - パンタグラフ上に設けられ、車両の走行中に前記車両と電線間の距離変化に追従して動く加速度センサにより、垂直方向加速度を計測し、
路線の特定区間における加速度の変化を示す基準となる基準加速度分布情報を記録し、
前記記録された基準加速度分布情報と、前記計測された垂直方向加速度とを比較し、
前記比較の比較結果に基づいて、前記電線または前記パンタグラフに異常があるか否かを判断する
ことを特徴とする鉄道設備の異常診断計測方法。 - 車輪に設けられ、車両の走行中にレールの継ぎ目に追従して動く加速センサにより、垂直方向加速度を計測し、
路線の特定区間における加速度の変化を示す基準となる基準加速度分布情報を記録し、
前記記録された基準加速度分布情報と、前記計測した加速度とを比較し、
前記比較の比較結果に基づいて、前記レールまたは前記車輪に異常があるか否かを判断する
ことを特徴とする鉄道設備の異常診断計測方法。
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