JP2008047304A - 非水電解液二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】充放電に起因する膨張や変形を防止することが可能な非水電解液二次電池を提供すること。
【解決手段】本発明の非水電解液二次電池は、正極、負極及びこれらの間に介在配置されたセパレータが捲回されてなり、横断面が扁平な形状を有する捲回体1を備え、捲回体1の中心部に板状の芯材3が配されていることを特徴とする。芯材3は、正極又は負極の集電用タブを兼用していることが好ましい。芯材は、捲回体1の高さ方向に延びる複数の短冊片が、捲回体1の幅方向に直線状に一列に配置されたものからなることも好ましい。本発明の非水電解液二次電池は角型電池又はラミネート電池であり得る。
【選択図】図1

Description

本発明は、リチウム二次電池などの非水電解液二次電池に関する。
リチウム二次電池の形態として、正極、セパレータ及び負極をこの順で重ねて一体的に捲回してなる捲回体を備えてなる円筒型や角型のものが知られている。更に、アルミニウムラミネート外装体内に該捲回体を封入したラミネート型のものも知られている。この種の電池の一例として、特許文献1には、芯材を用いて正極、セパレータ及び負極を一体に捲回して円筒型の電極体を作製し、該芯材を取り除いた後に該電極体を捲回軸に対して垂直方向から押圧して断面略楕円形状に変形させつつ、変形した電極体を捲回方向と同一方向に回転させて巻き取り状態を緩め、次いで該電極体をプレスして扁平渦巻電極体となしたリチウム二次電池が提案されている。特許文献1の記載によれば、この電池では、扁平渦巻電極体のコーナー部近傍にゆるみができるので、電極が膨張した場合に、電極がこのゆるみを埋める方向に変形して、そのたわみが防止されるとされている。
特許文献1に記載の扁平渦巻電極体を採用すれば、そのコーナー部における電極の膨張を吸収することが可能かもしれないが、その中心部における電極の変形を防止することはできない。一般に扁平渦巻電極体の中心部には、その製造上の理由により図13(a)に示すように空隙Kが存在するので、中心部付近の電極が膨張すると、その膨張は空隙が存在している中心部に向かい、図13(b)に示すように座屈等の変形が生じるからである。また、電極体の中心部には、図13(a)に示すように集電用のタブTが取り付けられており、厚みが不均一になっていることから、電極の膨張の程度が、タブが存在する部分とそうでない部分とで異なり、それによっても図13(b)に示すように電極の座屈が起こりやすくなる。
特開2006−164956号公報
従って本発明の目的は、前述した従来技術が有する種々の欠点を解消し得る非水電解液二次電池を提供することにある。
本発明は、正極、負極及びこれらの間に介在配置されたセパレータが捲回されてなり、横断面が扁平な形状を有する捲回体を備え、該捲回体の中心部に板状の芯材が配されていることを特徴とする非水電解液二次電池を提供するものである。
本発明によれば、扁平捲回体における中心部に板状の芯材が配されており、正極及び負極等は該芯材の周りに隙間なく捲回されているので、電極の膨張に起因して生ずる応力が該捲回体の中心に局所的に加わっても、その応力を芯材が受け止めることができる。その結果、座屈を始めとする電極の変形が該芯材によって抑制される。
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の非水電解液二次電池(以下、単に二次電池又は電池ともいう)は、その基本構成部材として、正極、負極及びこれらの間に配されたセパレータを有している。電池は、正極、負極及びこれらの間に介在配置されたセパレータを一体に捲回してなる捲回体を備えている。捲回体は、その横断面が長円形や楕円形などの扁平形状になっている。正極及び負極の集電体の一方の面にのみ正極活物質層及び負極活物質層が形成されている場合には、これら活物質層を対向させた状態下に、両者間にセパレータを介在配置させ、これら三者を捲回する。正極及び負極の集電体の両面に正極活物質層及び負極活物質層が形成されている場合には、正極と負極を対向させた状態下に、両者間にセパレータを介在配置させ、更に正極の外面又は負極の外面に第2のセパレータを配置させ、これら四者を捲回する。正極と負極との間はセパレータを介して非水電解液で満たされている。本発明の電池は、かかる捲回体が角型外装缶内に収容されてなる形態や、ラミネート外装体内に収容されてなる形態であり得る。特に、捲回体における横断面の長径をA、短径をBとしたとき、A/Bが3以上である捲回体を用いた場合に、本発明の効果が顕著なものとなる。A/Bの上限値は本発明において臨界的ではないが、経験的には20程度である。
図1(a)及び(b)には、本発明の電池における捲回体1の一実施形態が示されている。捲回体1は、正極、負極及びこれらの間に介在配置されたセパレータが芯材3を中心にして捲回されてなる扁平形状をしている。なお図1においては、正極、負極及びセパレータは個別には描かれておらず、簡便のため、これらが組み合わされた一本の線として描かれている。捲回体1における正極、セパレータ及び負極は何れも長尺状である。正極及び負極の幅は同寸である。セパレータの幅は正極及び負極よりも若干大きくなっている。
捲回体1の中心からは、正極及び負極の集電用のタブ2,2が引き出されている。タブ2は、各電極における集電体に電気的に接続している。タブ2は導電性材料、例えばニッケルから構成されている。
図2には、図1に示す捲回体1における中心部の捲回状態を解いた平面図が模式的に示されている。芯材3は、正極C(及び負極A)の幅方向に延びる一対の第1の辺X、及び正極C(及び負極A)の長さ方向に延びる一対の第2の辺Yを有する矩形状のものである。芯材3は中空又は中実の板状をしている。芯材3における第1の辺Xの長さは、正極C(及び負極A)の幅と略同寸になっている。芯材3における第2の辺Yの長さは、目的とする電池の寸法との関係で、第1の辺Xの長さと同じであるか、又はそれによりも短いか若しくはそれよりも長くなっている。また第2の辺Yの長さは、捲回体1の最内周部における該捲回体の内側部分の幅W(図1(b)参照)に対して好ましくは70〜99%、更に好ましくは80〜95%の長さになっている。この割合が70%未満の場合は、本発明の効果が十分に奏されないことがある。99%超の場合は、電池の充電時に生じる応力が芯材3のエッジ部分に加わり、捲回体が破損するおそれがある。
芯材3の厚みに関しては、負極の膨張に抗して変形しない程度の厚みが必要とされる。そのような厚みは、後述する芯材3の材質にもよるが、0.03〜1mm、特に0.1〜0.5mm程度であれば十分である。例えば063448型等の規定サイズの電池に収容する捲回体において、負極等の長さを十分に確保するためには、芯材3の厚みは1mm以下とすることが好ましい。
芯材3は、後述する負極の座屈を防止する観点から、高強度の材料から構成されていることが好ましい。また芯材3は、電池の重量エネルギー密度を高める観点から軽量であることも好ましい。これらの観点から、芯材3は、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂を始めとする絶縁性材料から構成されている。その場合、強度向上のためにガラス繊維を添加することも好ましい。或いは後述するように、芯材3はニッケル等の導電性材料から構成されている。
本発明の電池に用いられる正極は、例えば集電体の少なくとも一面に正極活物質層が形成されてなるものである。正極活物質層には活物質が含まれている。この活物質としては、例えばリチウム遷移金属複合酸化物が用いられる。リチウム遷移金属複合酸化物としてはLiCoO2、LiNiO2、LiMn24、LiMnO2、LiCo0.5Ni0.52、LiNi0.7Co0.2Mn0.12、LiNi1/3Co1/3Mn1/32などが用いられる。しかしこれらに制限されるものではない。これら正極活物質は一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明に用いられる正極は、前記の正極活物質を、アセチレンブラック等の導電剤及びポリフッ化ビニリデン等の結着剤とともに適当な溶媒に懸濁し、正極合剤を作製し、これをアルミニウム箔等の集電体の少なくとも一面に塗布、乾燥した後、ロール圧延、プレスすることにより得られる。
前記の方法で正極を製造する場合、前記のリチウム遷移金属複合酸化物はその一次粒子径の平均値は5μm以上10μm以下であることが、充填密度と反応面積との兼ね合いから好ましい。また結着剤として用いられるポリフッ化ビニリデンはその重量平均分子量が350,000以上2,000,000以下であることが、低温環境での放電特性を向上させ得る点から好ましい。
本発明の電池に用いられる負極は、例えば集電体の少なくとも一面に負極活物質層が形成されてなるものである。負極活物質層には活物質が含まれている。この活物質としては、リチウムイオンの吸蔵放出が可能な材料が用いられる。そのような材料としては、例えばSiを含む材料やSnを含む材料、Alを含む材料、Geを含む材料が挙げられる。Snを含む材料としては、例えばスズと、コバルトと、炭素と、ニッケル及びクロムのうちの少なくとも一方とを含む合金が好ましく用いられる。負極重量あたりの容量密度を向上させる上では、特にSiを含む材料又はSnを含む材料が好ましい。
Siを含む材料としては、リチウムの吸蔵が可能で且つシリコンを含有する材料、例えばシリコン単体、シリコンと金属との合金、シリコン酸化物などを用いることができる。これらの材料はそれぞれ単独で、或いはこれらを混合して用いることができる。前記の金属としては、例えばCu、Ni、Co、Cr、Fe、Ti、Pt、W、Mo及びAuからなる群から選択される1種類以上の元素が挙げられる。これらの金属のうち、Cu、Ni、Coが好ましく、特に電子伝導性に優れる点、及びリチウム化合物の形成能の低さの点から、Cu、Niを用いることが望ましい。また、負極を電池に組み込む前に、又は組み込んだ後に、Siを含む材料からなる活物質に対してリチウムを吸蔵させてもよい。特に好ましいSiを含む材料は、リチウムの吸蔵量の高さの点からシリコン又はシリコン酸化物である。
負極活物質層は、例えば、前記の負極活物質からなる連続薄膜層、前記の負極活物質の粒子を含む塗膜層、前記の負極活物質の粒子を含む焼結体層等であり得る。また、後述する図7に示す構造の層であり得る。
本発明の電池におけるセパレータとしては、合成樹脂製不織布、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、又はポリテトラフルオロエチレンの多孔質フィルム等が好ましく用いられる。電池の過充電時に生じる電極の発熱を抑制する観点からは、ポリオレフィン微多孔膜の片面又は両面にフェロセン誘導体の薄膜が形成されてなるセパレータを用いることが好ましい。セパレータは、突刺強度が0.2N/μm厚以上0.49N/μm厚以下であり、捲回軸方向の引張強度が40MPa以上150MPa以下であることが好ましい。充放電に伴い大きく膨張・収縮する負極活物質を用いても、セパレータの損傷を抑制することができ、内部短絡の発生を抑制することができるからである。
非水電解液は、支持電解質であるリチウム塩を有機溶媒に溶解した溶液からなる。リチウム塩としては、CF3SO3Li、(CF3SO2)NLi、(C25SO22NLi、LiClO4、LiA1Cl4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiCl、LiBr、LiI、LiC49SO3等が例示される。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのリチウム塩のうち、耐水分解性が優れている点から、CF3SO3Li、(CF3SO2)NLi、(C25SO22NLiを用いることが好ましい。有機溶媒としては、例えばエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。特に、非水電解液全体に対し0.5〜5重量%のビニレンカーボネート及び0.1〜1重量%のジビニルスルホン、0.1〜1.5重量%の1,4−ブタンジオールジメタンスルホネートを含有させることが充放電サイクル特性を更に向上する観点から好ましい。その理由について詳細は明らかでないが、1,4−ブタンジオールジメタンスルホネートとジビニルスルホンが段階的に分解して、正極上に被膜を形成することにより、硫黄を含有する被膜がより緻密なものになるためであると考えられる。
特に非水電解液としては、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン ,4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン或いは4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどのハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体のような比誘電率が30以上の高誘電率溶媒を用いることも好ましい。耐還元性が高く、分解されにくいからである。また、上記高誘電率溶媒と、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、或いはメチルエチルカーボネートなどの粘度が1mPa・s以下である低粘度溶媒を混合した電解液も好ましい。より高いイオン伝導性を得ることができるからである。更に、電解液中のフッ素イオンの含有量が14質量ppm以上1290質量ppm以下の範囲内であることも好ましい。電解液に適量なフッ素イオンが含まれていると、フッ素イオンに由来するフッ化リチウムなどの被膜が負極に形成され、負極における電解液の分解反応を抑制することができると考えられるからである。更に、酸無水物及びその誘導体からなる群のうちの少なくとも1種の添加物が0.001重量%〜10重量%含まれていることが好ましい。これにより負極の表面に被膜が形成され、電解液の分解反応を抑制することができるからである。この添加物としては、環に−C(=O)−O−C(=O)−基を含む環式化合物が好ましく、例えば無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2−スルホ安息香酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、無水ヘキサフルオログルタル酸、無水3−フルオロフタル酸、無水4−フルオロフタル酸などの無水フタル酸誘導体、又は無水3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、無水1,8−ナフタル酸、無水2,3−ナフタレンカルボン酸、無水1,2−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸などの無水1,2−シクロアルカンジカルボン酸、又はシス−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物或いは3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物などのテトラヒドロフタル酸無水物、又はヘキサヒドロフタル酸無水物(シス異性体、トランス異性体)、3,4,5,6−テトラクロロフタル酸無水物、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物、二無水ピロメリット酸、又はこれらの誘導体などが挙げられる。
以上の構成を有する捲回体1を備えた本実施形態の電池によれば、捲回体1の中心部に芯材3が配置されており、捲回体と芯材3との間に空隙が実質的に存在していないので、負極活物質の膨張に起因して生ずる応力が捲回体1の中心に局所的に加わっても、その応力を芯材3が受け止めることができる。その結果、負極の座屈が芯材3によって抑制される。従って本実施形態の電池は、サイクル特性が向上したものとなる。捲回体1の中心部に大きな空隙が存在していると、負極活物質の膨張に起因して、その空隙に向けて負極が変形し、座屈が起こってしまう。
図3(a)及び(b)には捲回体1の別の構造が示されている。本実施形態の捲回体1においては芯材3を2個用い、それぞれの芯材3が正極及び負極の集電用タブを兼用している。詳細には、芯材3は、本体部3Aと該本体部3Aの上端縁から上方に延出し、正極C(負極A)の長手方向縁部を超えて延びるタブ部3Bとから構成されている。本体部3Aの寸法は、図2に示す芯材と同様になっている。タブ部3Bは矩形をしており、その大きさは本体部3Aよりも小さくなっている。各芯材3は、その本体部3Aにおいて正極及び負極に電気的にそれぞれ接続されている。図3(a)においては、2つの芯材3,3が対向して接触しているように描かれているが、実際には2つの芯材3,3の間にはセパレータ等の絶縁性材料が介在配置されており、両芯材3,3は電気的に絶縁されている。
本実施形態によれば、集電用タブを電極に別途取り付けることに起因して捲回体内に生ずる段差がなくなる。その結果、負極の膨張に起因する座屈の発生を一層効果的に防止することができる。また、芯材3を用いることによる若干の体積増加に起因するエネルギー密度の低下を生じさせない。なお、本実施形態においては芯材3を2個用いているが、これに代えて、1個の芯材のみを用い、該芯材が正極又は負極の集電用タブを兼用するようにしてもよい。この場合には、芯材が集電用タブを兼用していない方の電極に、通常の集電用タブを電気的に接続させればよい。
図4(a)及び(b)には捲回体1の更に別の構造が示されている。本実施形態の捲回体1においても芯材が正極及び負極の集電用タブを兼用している。この点に関しては、図3(a)及び(b)に示す実施形態と同様である。本実施形態が図3(a)及び(b)に示す実施形態と異なる点は、集電用タブを兼用している芯材に加えて、タブを兼用してない芯材を更に用いた点である。
詳細には、正極Cに関しては、該正極Cの幅方向(=捲回体の高さ方向)に延びる矩形の短冊片からなる芯材31が、正極Cの長手方向(=捲回体の幅方向)に3個並列配置されている。3個の芯材31のうちの一つは、本体部31A及び該本体部31Aの上辺から上方に延出し、正極Cの長手方向縁部を超えて延びるタブ部31Bを備えて構成されている。タブ部31Bを有する芯材31は、正極Cに電気的に接続されている。残りの2つのタブは、正極Cに電気的に接続されていてもよく、或いは絶縁状態で正極Cに固定されていてもよい。
一方、負極Aについては、該負極Aの幅方向(=捲回体の高さ方向)に延びる矩形の短冊片からなる芯材32が、負極Aの長手方向(=捲回体の幅方向)に2個並列配置されている。2個の芯材32のうちの一方は、本体部32A及び該本体部32Aの上辺から上方に延出し、負極Aの長手方向縁部を超えて延びるタブ部32Bを備えて構成されている。タブ部32Bを有する芯材32は、負極Aに電気的に接続されている。他方のタブ32は、負極Aに電気的に接続されていてもよく、或いは絶縁状態で負極Aに固定されていてもよい。
正極用の芯材31と負極用の芯材32とは、これら正極及び負極等が捲回されて捲回体1となったときに、図4(a)に示すように、捲回体1の中心部において直線状に一列に並ぶように配置される。芯材31,32をこのように配置することによって、捲回体1においては、あたかも幅広の一枚の芯材を用いた状態と同様の状態を実現することができる。その結果、捲回体1において芯材31,32が占める体積及び重量を、図3(a)及び(b)に示す実施形態よりも少なくすることができる。このことは電池の単位体積当たり及び単位重量当たりのエネルギー密度を向上させ得る点から有利である。これに加えて、本実施形態によれば、図3(a)及び(b)に示す実施形態の奏する効果と同様の効果も奏される。なお、図示していないが、芯材31と芯材32とは、セパレータ等の絶縁材料を介して電気的に絶縁されている。
正極Cにおける芯材31間の距離、及び負極Aにおける芯材32間の距離は、0〜2mm、特に0.5〜1mmであることが好ましい。この距離を0.5mm以上とすることによって、発明の効果を維持しつつ、重量当たりのエネルギー密度の向上が図れる。また、2mm以下とすることで、芯材31間のくぼみ部分に座屈が生じることを防止できる。
の点から好ましい。
なお図4(a)及び(b)に示す実施形態においては、複数の芯材31,32のうちの一部に、タブ部32を有するものが含まれていたが、これに代えて、各芯材31,32の何れもがタブ部32を有していなくてもよい。この場合には、通常の集電用タブを正極C及び負極Aに電気的に接続させればよい。
次に、本発明に用いられる捲回体の製造方法を、図3(a)及び(b)に示す捲回体の製造方法を例にとり図5を参照しながら説明する。本製造方法は、集電体の各面に正極活物質層が形成されてなる正極、及び集電体の各面に負極活物質層が形成されてなる負極を用いた捲回体の製造に係るものである。先ず図5(a)に示すように、ロール状に捲回されている原反S1’,S2’から、長尺帯状の第1のセパレータS1及び第2のセパレータS2をそれぞれ繰り出し、その先端を板状の巻き取り治具20に取り付ける。巻き取り治具20は、その中心線のまわりに回転可能になっている。次に図5(b)に示すように、巻き取り治具20を矢印方向に回転させて該治具20の周囲にセパレータS1,S2を巻き付ける。
次に図5(c)に示すように、ロール状に捲回されている原反C’,A’から、長尺帯状の正極C及び負極Aをそれぞれ繰り出し、その先端を、既にセパレータS1,S2が巻き付けられている巻き取り治具20に取り付ける。この場合、負極Aが二つのセパレータS1,S2間に位置し、且つ正極Cが第1のセパレータS1の外面側に位置するように、これらの電極の先端を巻き取り治具20に取り付ける。
負極A及び正極Cのそれぞれには、それらの一面に予め芯材3,3が取り付けられている。各芯材3,3は図3(b)に示す形状のものであり、タブ部を備えている。各芯材3,3は、負極A及び正極Cに電気的に接続された状態で、これらの電極にそれぞれ取り付けられている。各芯材3,3は、巻き取り治具20を回転させて、セパレータS1,S2と共に正極C及び負極Aを該治具20の周囲に巻き付けていったときに、図5(d)に示すように、各芯材3,3が巻き取り治具20上に位置し、且つ芯材3,3どうしが対向するように位置合わせされている。そのように位置合わせされた芯材3,3が取り付けられた正極C及び負極Aを、セパレータS1,S2と共に巻き取り治具20の周囲に巻き付けて図5(d)に示す状態とする。所望の回数の巻き付けによって捲回体1が得られる。各部材の巻き付けにおいては、隣り合う部材間は、重ね合わせのみによって接しており、接着剤などの接合手段によっては接合されていない。つまり、各部材は、機械的に剥離可能なように接しているだけである。
巻き付けが完了したら、正極C及び負極Aを、セパレータS1,S2を、それらの原反ロールから切断し、切断された端部を捲回体1の側面に固定する。固定には例えば粘着テープや接着剤が用いられる。最後に、図5(e)に示すように捲回体の中心から巻き取り治具20を引き抜くことで、図3(a)及び(b)に示す捲回体1が得られる。巻き取り治具20が引き抜かれた捲回体1は、角型外装缶やアルミニウムラミネート外装体に収容される。
図4(a)及び(b)に示す捲回体1を製造する場合には、上述の図5(c)に対応する工程である図6(a)に示す工程において、正極C及び負極Aに、短冊片からなる芯材31,32を取り付けて捲回を行えばよい。この場合、各芯材31,32は、巻き取り治具20を回転させて、セパレータS1,S2と共に正極C及び負極Aを該治具20の周囲に巻き付けていったときに、図6(b)に示すように、各芯材31,32が巻き取り治具20上に位置し、且つ芯材31,32どうしが対向しないように位置合わせされている。
図7には本発明において用いられる負極の好適な一実施形態の断面構造の模式図が示されている。本実施形態の負極10は、集電体11と、その少なくとも一面に形成された活物質層12を備えている。なお図7においては、便宜的に集電体11の片面にのみ活物質層12が形成されている状態が示されているが、活物質層は集電体の両面に形成されていてもよい。
活物質層12においては、Siを含む活物質の粒子12aの表面の少なくとも一部が、リチウム化合物の形成能の低い金属材料で被覆されている。この金属材料13は、粒子12aの構成材料と異なる材料である。該金属材料で被覆された該粒子12aの間には空隙が形成されている。つまり該金属材料は、リチウムイオンを含む非水電解液が粒子12aへ到達可能なような隙間を確保した状態で該粒子12aの表面を被覆している。図7中、金属材料13は、粒子12aの周囲を取り囲む太線として便宜的に表されている。なお同図は活物質層12を二次元的にみた模式図であり、実際は各粒子は他の粒子と直接ないし金属材料13を介して接触している。「リチウム化合物の形成能の低い」とは、リチウムと金属間化合物若しくは固溶体を形成しないか、又は形成したとしてもリチウムが微量であるか若しくは非常に不安定であることを意味する。
金属材料13は導電性を有するものであり、その例としては銅、ニッケル、鉄、コバルト又はこれらの金属の合金などが挙げられる。特に金属材料13は、活物質の粒子12aが膨張収縮しても該粒子12aの表面の被覆が破壊されにくい延性の高い材料であることが好ましい。そのような材料としては銅を用いることが好ましい。
金属材料13は、活物質層12の厚み方向全域にわたって活物質の粒子12aの表面に存在していることが好ましい。そして金属材料13のマトリックス中に活物質の粒子12aが存在していることが好ましい。これによって、充放電によって該粒子12aが膨張収縮することに起因して微粉化しても、その脱落が起こりづらくなる。また、金属材料13を通じて活物質層12全体の電子伝導性が確保されるので、電気的に孤立した活物質の粒子12aが生成すること、特に活物質層12の深部に電気的に孤立した活物質の粒子12aが生成することが効果的に防止される。金属材料13が活物質層12の厚み方向全域にわたって活物質の粒子12aの表面に存在していることは、該材料13を測定対象とした電子顕微鏡マッピングによって確認できる。
金属材料13は、粒子12aの表面を連続に又は不連続に被覆している。金属材料13が粒子12aの表面を連続に被覆している場合には、金属材料13の被覆に、非水電解液の流通が可能な微細な空隙を形成することが好ましい。金属材料13が粒子12aの表面を不連続に被覆している場合には、粒子12aの表面のうち、金属材料13で被覆されていない部位を通じて該粒子12aへ非水電解液が供給される。このような構造の金属材料13の被覆を形成するためには、例えば後述する条件に従う電解めっきによって金属材料13を粒子12aの表面に析出させればよい。
活物質の粒子12aの表面を被覆している金属材料13は、その厚みの平均が好ましくは0.05〜2μm、更に好ましくは0.1〜0.25μmという薄いものである。つまり金属材料13は最低限の厚みで以て活物質の粒子12aの表面を被覆している。これによって、エネルギー密度を高めつつ、充放電によって粒子12aが膨張収縮して微粉化することに起因する脱落を防止している。ここでいう「厚みの平均」とは、活物質の粒子12aの表面のうち、実際に金属材料13が被覆している部分に基づき計算された値である。従って活物質の粒子12aの表面のうち金属材料13で被覆されていない部分は、平均値の算出の基礎にはされない。
金属材料13で被覆された粒子12a間に形成された空隙は、リチウムイオンを含む非水電解液の流通の経路としての働きを有している。この空隙の存在によって非水電解液が活物質層12の厚み方向へ円滑に流通するので、サイクル特性を向上させることができる。更に、粒子12a間に形成されている空隙は、充放電で活物質の粒子12aが体積変化することに起因する応力を緩和するための空間としての働きも有する。充電によって体積が増加した活物質の粒子12aの体積の増加分は、この空隙に吸収される。その結果、該粒子12aの微粉化が起こりづらくなり、また負極10の著しい変形が効果的に防止される。
活物質層12は、後述するように、好適には粒子12a及び結着剤を含むスラリーを集電体上に塗布し乾燥させて得られた塗膜に対し、所定のめっき浴を用いた電解めっきを行い、粒子12a間に金属材料13を析出させることで形成される。
非水電解液の流通が可能な空隙を活物質層12内に必要且つ十分に形成するためには、前記の塗膜内にめっき液を十分浸透させることが好ましい。これに加えて、該めっき液を用いた電解めっきによって金属材料13を析出させるための条件を適切なものとすることが好ましい。めっきの条件にはめっき浴の組成、めっき浴のpH、電解の電流密度などがある。めっき浴のpHに関しては、これを7.1〜11に調整することが好ましい。pHをこの範囲内とすることで、活物質の粒子12aの溶解が抑制されつつ、該粒子12aの表面が清浄化されて、粒子表面へのめっきが促進され、同時に粒子12a間に適度な空隙が形成される。pHの値は、めっき時の温度において測定されたものである。
めっきの金属材料13として銅を用いる場合には、ピロリン酸銅浴を用いることが好ましい。また該金属材料としてニッケルを用いる場合には、例えばアルカリ性のニッケル浴を用いることが好ましい。特に、ピロリン酸銅浴を用いると、活物質層12を厚くした場合であっても、該層の厚み方向全域にわたって、前記の空隙を容易に形成し得るので好ましい。また、活物質の粒子12aの表面には金属材料13が析出し、且つ該粒子12a間では金属材料13の析出が起こりづらくなるので、該粒子12a間の空隙が首尾良く形成されるという点でも好ましい。ピロリン酸銅浴を用いる場合、その浴組成、電解条件及びpHは次の通りであることが好ましい。
・ピロリン酸銅三水和物:85〜120g/l
・ピロリン酸カリウム:300〜600g/l
・硝酸カリウム:15〜65g/l
・浴温度:45〜60℃
・電流密度:1〜7A/dm2
・pH:アンモニア水とポリリン酸を添加してpH7.1〜9.5になるように調整する。
ピロリン酸銅浴を用いる場合には特に、P27の重量とCuの重量との比(P27/Cu)で定義されるP比が5〜12であるものを用いることが好ましい。P比が5未満のものを用いると、活物質の粒子12aを被覆する金属材料13が厚くなる傾向となり、粒子12a間に所望の空隙を形成させづらい場合がある。また、P比が12を超えるものを用いると、電流効率が悪くなり、ガス発生などが生じやすくなることから生産安定性が低下する場合がある。更に好ましいピロリン酸銅浴として、P比が6.5〜10.5であるものを用いると、活物質の粒子12a間に形成される空隙のサイズ及び数が、活物質層12内での非水電解液の流通に非常に有利になる。
アルカリ性のニッケル浴を用いる場合には、その浴組成、電解条件及びpHは次の通りであることが好ましい。
・硫酸ニッケル:100〜250g/l
・塩化アンモニウム:15〜30g/l
・ホウ酸:15〜45g/l
・浴温度:45〜60℃
・電流密度:1〜7A/dm2
・pH:25重量%アンモニア水:100〜300g/lの範囲でpH8〜11となるように調整する。
このアルカリ性のニッケル浴と前述のピロリン酸銅浴とを比べると、ピロリン酸銅浴を用いた場合の方が活物質層12内に適度な空隙が形成される傾向があり、負極の長寿命化を図りやすいので好ましい。
前記の各種めっき浴に、タンパク質、活性硫黄化合物、セルロース等の銅箔製造用電解液に用いられる各種添加剤を加えることにより、金属材料13の特性を適宜調整することも可能である。
上述の各種方法によって形成される活物質層全体の空隙の割合、つまり空隙率は、15〜45体積%程度、特に20〜40体積%程度であることが好ましい。空隙率をこの範囲内とすることで、非水電解液の流通が可能な空隙を活物質層12内に必要且つ十分に形成することが可能となる。活物質層12の空隙量は、水銀圧入法(JIS R 1655)で測定される。水銀圧入法は、固体中の細孔の大きさやその容積を測定することによって、その固体の物理的形状の情報を得るための手法である。水銀圧入法の原理は、水銀に圧力を加えて測定対象物の細孔中へ圧入し、その時に加えた圧力と、押し込まれた(浸入した)水銀体積の関係を測定することにある。この場合、水銀は活物質層12内に存在する大きな空隙から順に浸入していく。本発明においては、圧力90MPaで測定した空隙量を全体の空隙量とみなしている。活物質層12の空隙率(%)は、前記の方法で測定された単位面積当たりの空隙量を、単位面積当たりの活物質層12の見かけの体積で除し、それに100を乗じることにより求める。
活物質の粒子12aの粒径を適切に選択することによっても、前記の空隙率をコントロールすることができる。この観点から、粒子12aはその最大粒径が好ましくは30μm以下であり、更に好ましくは10μm以下である。また粒子の粒径をD50値で表すと0.1〜8μm、特に0.3〜4μmであることが好ましい。粒子の粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定、電子顕微鏡観察(SEM観察)によって測定される。
負極全体に対する活物質の量が少なすぎると電池のエネルギー密度を十分に向上させにくく、逆に多すぎると強度が低下し活物質の脱落が起こりやすくなる傾向にある。これらを勘案すると、活物質層の厚みは10〜40μm、好ましくは15〜30μm、更に好ましくは18〜25μmである。
本実施形態の負極10においては、活物質層12の表面に薄い表面層(図示せず)が形成されていてもよい。また負極10はそのような表面層を有していなくてもよい。表面層の厚みは、0.25μm以下、好ましくは0.1μm以下という薄いものである。表面層の厚みの下限値に制限はない。表面層を形成することで、微粉化した活物質の粒子12aの脱落を一層防止することができる。尤も、本実施形態においては、活物質層12の空隙率を上述した範囲内に設定することによって、表面層を用いなくても微粉化した活物質の粒子12aの脱落を十分に防止することが可能である。
負極10が前記の厚みの薄い表面層を有するか又は該表面層を有していないことによって、負極10を用いて二次電池を組み立て、当該電池の初期充電を行うときの過電圧を低くすることができる。このことは、二次電池の充電時に負極10の表面でリチウムが還元することを防止できることを意味する。リチウムの還元は、両極の短絡の原因となるデンドライトの発生につながる。
負極10が表面層を有している場合、該表面層は活物質層12の表面を連続又は不連続に被覆している。表面層が活物質層12の表面を連続に被覆している場合、該表面層は、その表面において開孔し且つ活物質層12と通ずる多数の微細空隙(図示せず)を有していることが好ましい。微細空隙は表面層の厚さ方向へ延びるように表面層中に存在していることが好ましい。微細空隙は非水電解液の流通が可能なものである。微細空隙の役割は、活物質層12内に非水電解液を供給することにある。微細空隙は、負極10の表面を電子顕微鏡観察により平面視したとき、金属材料13で被覆されている面積の割合、即ち被覆率が95%以下、特に80%以下、とりわけ60%以下となるような大きさであることが好ましい。被覆率が95%を超えると、高粘度な非水電解液が浸入しづらくなり、非水電解液の選択の幅が狭くなるおそれがある。
表面層は、リチウム化合物の形成能の低い金属材料から構成されている。この金属材料は、活物質層12中に存在している金属材料13と同種でもよく、或いは異種でもよい。また表面層は、異なる2種以上の金属材料からなる2層以上の構造であってもよい。負極10の製造の容易さを考慮すると、活物質層12中に存在している金属材料13と、表面層を構成する金属材料とは同種であることが好ましい。
本実施形態の負極10において、活物質層12中の空隙率が前述の値になっている場合には、折り曲げに対する負極10の耐性が高くなる。具体的には、JIS C 6471に従い測定されたMIT耐折性が好ましくは30回以上、更に好ましくは50回以上という高耐折性を有するようになる。耐折性が高いことは、負極10を折り畳んだり捲回したりして電池容器内に収容する場合に、負極10に折れが生じにくくなることから極めて有利である。MIT耐折装置としては、例えば東洋精機製作所製の槽付フィルム耐折疲労試験機(品番549)が用いられ、屈曲半径0.8mm、荷重0.5kgf、サンプルサイズ15×150mmで測定することができる。
負極10における集電体11としては、非水電解液二次電池用負極の集電体として従来用いられているものと同様のものを用いることができる。集電体11は、先に述べたリチウム化合物の形成能の低い金属材料から構成されていることが好ましい。そのような金属材料の例は既に述べた通りである。特に、銅、ニッケル、ステンレス等からなることが好ましい。また、コルソン合金箔に代表されるような銅合金箔の使用も可能である。更に集電体として、常態抗張力(JIS C 2318)が好ましくは500MPa以上である金属箔、例えば前記のコルソン合金箔の少なくとも一方の面に銅被膜層を形成したものを用いることもできる。更に集電体として常態伸度(JIS C 2318)が4%以上のものを用いることも好ましい。抗張力が低いと活物質が膨張した際の応力によりシワが生じ、伸び率が低いと該応力により集電体に亀裂が入ることがあるからである。これらの集電体を用いることで、上述した負極10の耐折性を一層高めることが可能となる。集電体11の厚みは、負極10の強度維持と、エネルギー密度向上とのバランスを考慮すると、9〜35μmであることが好ましい。なお、集電体11として銅箔を使用する場合には、クロメート処理や、トリアゾール系化合物及びイミダゾール系化合物などの有機化合物を用いた防錆処理を施しておくことが好ましい。
次に、本実施形態の負極10の好ましい製造方法について、図8を参照しながら説明する。本製造方法では、活物質の粒子及び結着剤を含むスラリーを用いて集電体11上に塗膜を形成し、次いでその塗膜に対して電解めっきを行う。
先ず図8(a)に示すように集電体11を用意する。そして集電体11上に、活物質の粒子12aを含むスラリーを塗布して塗膜15を形成する。集電体11における塗膜形成面の表面粗さは、輪郭曲線の最大高さで0.5〜4μmであることが好ましい。最大高さが4μmを超えると塗膜15の形成精度が低下する上、凸部に浸透めっきの電流集中が起こりやすい。最大高さが0.5μmを下回ると、活物質層12の密着性が低下しやすい。活物質の粒子12aとしては、好適に上述した粒度分布及び平均粒径を有するものを用いる。
スラリーは、活物質の粒子の他に、結着剤及び希釈溶媒などを含んでいる。またスラリーはアセチレンブラックやグラファイトなどの導電性炭素材料の粒子を少量含んでいてもよい。特に、活物質の粒子12aがシリコン系材料から構成されている場合には、該活物質の粒子12aの重量に対して導電性炭素材料を1〜3重量%含有することが好ましい。導電性炭素材料の含有量が1重量%未満であると、スラリーの粘度が低下して活物質の粒子12aの沈降が促進されるため、良好な塗膜15及び均一な空隙を形成しにくくなる。また導電性炭素材料の含有量が3重量%を超えると、該導電性炭素材料の表面にめっき核が集中し、良好な被覆を形成しにくくなる。
結着剤としてはスチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン(PE)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)などが用いられる。希釈溶媒としてはN−メチルピロリドン、シクロヘキサンなどが用いられる。スラリー中における活物質の粒子12aの量は30〜70重量%程度とすることが好ましい。結着剤の量は0.4〜4重量%程度とすることが好ましい。これらに希釈溶媒を加えてスラリーとする。
形成された塗膜15は、粒子12a間に多数の微小空間を有する。塗膜15が形成された集電体11を、リチウム化合物の形成能の低い金属材料を含むめっき浴中に浸漬する。めっき浴への浸漬によって、めっき液が塗膜15内の前記微小空間に浸入して、塗膜15と集電体11との界面にまで達する。その状態下に電解めっきを行い、めっき金属種を粒子12aの表面に析出させる(以下、このめっきを浸透めっきともいう)。浸透めっきは、集電体11をカソードとして用い、めっき浴中にアノードとしての対極を浸漬し、両極を電源に接続して行う。
浸透めっきによる金属材料の析出は、塗膜15の一方の側から他方の側に向かって進行させることが好ましい。具体的には、図8(b)ないし(d)に示すように、塗膜15と集電体11との界面から塗膜の表面に向けて金属材料13の析出が進行するように電解めっきを行う。金属材料13をこのように析出させることで、活物質の粒子12aの表面を金属材料13で首尾よく被覆することができると共に、金属材料13で被覆された粒子12a間に空隙を首尾よく形成することができる。
前述のように金属材料13を析出させるための浸透めっきの条件には、めっき浴の組成、めっき浴のpH、電解の電流密度などがある。このような条件については既に述べた通りである。
図8(b)ないし(d)に示されているように、塗膜15と集電体11との界面から塗膜の表面に向けて金属材料13の析出が進行するようにめっきを行うと、析出反応の最前面部においては、ほぼ一定の厚みで金属材料13のめっき核からなる微小粒子13aが層状に存在している。金属材料13の析出が進行すると、隣り合う微小粒子13aどうしが結合して更に大きな粒子となり、更に析出が進行すると、該粒子どうしが結合して活物質の粒子12aの表面を連続的に被覆するようになる。
浸透めっきは、塗膜15の厚み方向全域に金属材料13が析出した時点で終了させる。めっきの終了時点を調節することで、活物質層12の上面に表面層(図示せず)を形成することができる。このようにして、図8(d)に示すように、目的とする負極が得られる。
浸透めっき後、負極10を防錆処理することも好ましい。防錆処理としては、例えばベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール等のトリアゾール系化合物及びイミダゾール等を用いる有機防錆や、コバルト、ニッケル、クロメート等を用いる無機防錆を採用できる。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば捲回体を、前述の特許文献1の記載に従い製造して、該捲回体のコーナー部にたるみが生じるようにしてもよい。
また前記の製造方法においては、巻き取り治具20を捲回後に引き抜かず、そのまま芯材として使用することもできる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〕
厚さ18μmの電解銅箔からなる集電体を室温で30秒間酸洗浄した。処理後、15秒間純水洗浄した。集電体の両面上にケイ素からなる粒子を含むスラリーを膜厚15μmになるように塗布し塗膜を形成した。スラリーの組成は、粒子:スチレンブタジエンラバー(結着剤):アセチレンブラック=100:1.7:2(重量比)であった。粒子の平均粒径D50は2μmであった。平均粒径D50は、日機装(株)製のマイクロトラック粒度分布測定装置(No.9320−X100)を使用して測定した。
塗膜が形成された集電体を、以下の浴組成を有するピロリン酸銅浴に浸漬させ、電解により、塗膜に対して銅の浸透めっきを行い、活物質層を形成した。電解の条件は以下の通りとした。陽極にはDSEを用いた。電源は直流電源を用いた。
・ピロリン酸銅三水和物:105g/l
・ピロリン酸カリウム:450g/l
・硝酸カリウム:30g/l
・P比:7.7
・浴温度:50℃
・電流密度:3A/dm2
・pH:アンモニア水とポリリン酸を添加してpH8.2になるように調整した。
浸透めっきは、塗膜の厚み方向全域にわたって銅が析出した時点で終了させた。このようにして目的とする負極を得た。活物質層の縦断面のSEM観察によって該活物質層においては、活物質の粒子は、平均厚み240nmの銅の被膜で被覆されていることを確認した。また、活物質層の空隙率は30%であった。
正極活物質としてLiCo1/3Ni1/3Mn1/32を用いた。これを、アセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデンともに、溶媒であるポリビニルピロリドンに懸濁させ正極合剤を得た。この正極合剤をアルミニウム箔からなる集電体に塗布、乾燥した後、ロール圧延及びプレスを行い正極を得た。第1及び第2のセパレータとして厚み20μmのポリプロピレン製多孔質フィルムを用いた。
負極、正極並びに第1及び第2のセパレータは、幅60mmの長尺帯状に形成した。図5(a)及び(b)に示すように第1及び第2のセパレータS1,S2を巻き取り治具20の周りに巻き付け、次に、図6(a)に示すように正極C及び負極Aを更に治具20の周りに巻き付けた。正極Cには、短冊片からなるAl製の芯材31が1個取り付けられていた。芯材31はタブ部を有するものであった。負極Aには、短冊片からなるNi製の芯材32が5個取り付けられていた。5個の芯材32のうちの一の芯材はタブ部を有するものであった。芯材31,32は何れも長さ42mm、幅4mm、厚さ100μmであった(タブ部を除く寸法)。芯材31,32は、正極C及び負極Aが巻き取り治具20の巻き付けられたときに、図6(b)に示す配置状態になるように位置合わせされてこれらの電極に取り付けられていた。所望の回数の巻き付けによって捲回体が得られたら、原反ロールから正極C、負極A及びセパレータS1及びS2を切断し、切断された端部を捲回体の側面に粘着テープで固定した。最後に、捲回体の中心から巻き取り治具20を引き抜き、捲回体1を得た。得られた捲回体における芯材間の距離は約0.5mmであった。
得られた捲回体を角型外装缶に収容した。更に、外装缶内に電解液を充填した。電解液としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの1:1体積%混合溶媒に1mol/lのLiPF6を溶解した溶液に対して、ビニレンカーボネートを2体積%外添したものを用いた。電解液を充填した後に外装缶を密閉して、角型リチウム二次電池を得た。電池の厚みは6mm、幅は34mm、高さは48mmであった(063448型)。
〔比較例1〕
正極に集電用のAl製タブを取り付けると共に負極に集電用のNi製タブを取り付けて、且つ実施例1で用いた芯材31,32を用いない以外は実施例1と同様にして角型リチウム二次電池を得た。
〔評価〕
実施例1及び比較例1で得られた電池について100サイクルの充放電を行った。充電条件は0.5C、終止電圧4.2Vで、定電流・定電圧(CCCV)とした。放電条件は0.5C、終止電圧2.7Vで、定電流(CC)とした。但し、1サイクル目の充放電は0.05Cとし、2〜4サイクル目の充放電は0.1C、5〜7サイクル目の充放電は0.5C、8〜10サイクル目の充放電は1Cとした。100サイクルの充放電後の電池について、その横断面をCTスキャンして捲回体の状態を非破壊観察した。その結果を図9(実施例1)及び図10(比較例1)に示す。なお、図9及び図10には、充放電前の電池のCTスキャン像も併せて示されている。
図9及び図10に示す結果から明らかなように、実施例1の電池においては、100サイクルの充放電後において負極等に変形が殆ど生じていないのに対し、比較例1の電池においては、100サイクルの充放電後において負極等に甚だしい座屈が生じていることが判る。なお、実施例1で用いた芯材31及び比較例1で用いた正極の集電用タブは何れもAl製であることから、そのCTスキャン像である図9及び図10においてはこれらは現れていない。
〔実施例2〕
図3(a)及び(b)に示す構造の捲巻体を、実施例1に準じて製造した。負極に取り付ける芯材3として、長さ42mm、幅25mm、厚さ100μmのNi板を用いた(タブ部を除く寸法)。また正極に取り付ける芯材3として、長さ40mm、幅25mm、厚さ40μmのAl板を用いた(タブ部を除く寸法)。これら以外は実施例1と同様にして角型リチウム二次電池を得た。
〔比較例2〕
実施例2において、ニッケル板からなる芯材3を用いない以外は実施例2と同様にして角型リチウム二次電池を得た。
〔評価〕
実施例2及び比較例2で得られた電池について、実施例1と同様にして100サイクルの充放電後に、それらの横断面をCTスキャンして捲回体の状態を非破壊観察した。その結果を図11(実施例2)及び図12(比較例1)に示す。
図11及び図12に示す結果から明らかなように、実施例2の電池は、比較例2の電池に比べ、捲回体の中心部における電極の変形が抑制されていることが判る。なお、実施例2と、先に述べた実施例1を対比すると、実施例2の方が全体的な変形の程度が大きい。この理由は、実施例2で用いた負極の集電体の強度が、実施例1で用いた負極の集電体の強度よりも低いことに起因している。なお、実施例2で用いたAl製の芯材は、図11におけるCTスキャン像には現れていない。
図1(a)は本発明の電池の一実施形態における捲回体を示す斜視図であり、図1(b)は図1(a)におけるb−b線断面図である。 図2は、図1に示す捲回体における中心部の捲回状態を解いた平面状態での模式図である。 図3(a)は本発明の第2の実施形態における捲回体の横断面の構造を示す模式図(図1(b)相当図)であり、図3(b)は図3(a)に示す捲回体における中心部の捲回状態を解いた平面状態での模式図(図2相当図)である。 図4(a)は本発明の第3の実施形態における捲回体の横断面の構造を示す模式図(図1(b)相当図)であり、図4(b)は図4(a)に示す捲回体における中心部の捲回状態を解いた平面状態での模式図(図2相当図)である。 図5(a)ないし(e)は、図3(a)及び(b)に示す捲回体の製造方法を順次示す工程図である。 図6(a)及び(b)は、図4(a)及び(b)に示す捲回体の製造方法を示す工程図であり、図5(c)及び(d)に示す工程に対応する図である。 図7は、本発明に用いられる負極の一実施形態の断面構造を示す模式図である。 図8は、図7に示す負極の製造方法を示す工程図である。 図9は、実施例1で得られた電池の横断面のCTスキャン像である。 図10は、比較例1で得られた電池の横断面のCTスキャン像である。 図11は、実施例2で得られた電池の横断面のCTスキャン像である。 図12は、比較例2で得られた電池の横断面のCTスキャン像である。 図13(a)は、従来の角型電池における電極捲回体の横断面の構造を示す模式図であり、図13(b)は、図13(a)に示す電極捲回体の充放電後の状態を示す模式図である。
符号の説明
A 負極
C 正極
S1 第1のセパレータ
S2 第2のセパレータ
1 捲回体
2 集電用タブタブ
3 芯材
3A 本体部
3B タブ部
10 非水電解液二次電池用負極
11 集電体
12 活物質層
12a 活物質の粒子
13 リチウム化合物の形成能の低い金属材料
15 塗膜
31,32 芯材
31A,32A 本体部
31B,32B タブ部

Claims (9)

  1. 正極、負極及びこれらの間に介在配置されたセパレータが捲回されてなり、横断面が扁平な形状を有する捲回体を備え、該捲回体の中心部に板状の芯材が配されていることを特徴とする非水電解液二次電池。
  2. 前記芯材が、正極又は負極の集電用タブを兼用している請求項1記載の非水電解液二次電池。
  3. 前記芯材が、前記捲回体の高さ方向に延びる複数の短冊片が、該捲回体の幅方向に直線状に一列に配置されたものからなる請求項1又は2記載の非水電解液二次電池。
  4. 前記捲回体が角型外装缶内に収容されてなる請求項1ないし3の何れかに記載の非水電解液二次電池。
  5. 前記捲回体がラミネート外装体内に収容されてなる請求項1ないし3の何れかに記載の非水電解液二次電池。
  6. 前記負極が、Siを含む材料又はSnを含む材料からなる活物質を含む負極活物質層を有する請求項1ないし5の何れかに記載の非水電解液二次電池。
  7. 前記負極活物質層がSi又はSnを含む活物質の粒子を含有し、該粒子の表面の少なくとも一部がリチウム化合物の形成能の低い金属材料で被覆されていると共に、該金属材料で被覆された該粒子どうしの間に空隙が形成されている請求項6記載の非水電解液二次電池。
  8. 前記金属材料が、前記負極活物質層の厚み方向全域にわたって前記粒子の表面に存在している請求項7記載の非水電解液二次電池。
  9. 前記負極活物質層の空隙率が15〜45体積%である請求項7又は8記載の非水電解液二次電池。
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