JP2005194243A - メントール誘導体およびその製造方法 - Google Patents

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Shuji Ichikawa
修治 市川
Takako Takahashi
孝子 高橋
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Abstract

【課題】 水溶性基を有する酒石酸モノメントールエステル類およびこれを高純度でかつ簡便に製造する方法を提供する。
【解決手段】 式(1)
Figure 2005194243

(R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアリール基又はアシル基を示し、Mは水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を示す。)で表される酒石酸モノメントールエステル類で、酒石酸無水物誘導体とメントールとの縮合反応生成物を、塩基性アルカリ金属塩、塩基性アルカリ土類金属塩等を用いてカルボン酸塩とし、これを分離する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、メントール誘導体及びその製造方法に関する。該化合物は、医薬品、医薬部外品、抗菌剤、香粧品、食品組成物、皮膚洗浄剤、毛髪洗浄剤、入浴剤、口腔用液体または貼付剤の原料、組成物として有用である。
メントールは従来から様々な分野に使用されてきている。清涼作用があり、風邪を防いで、散熱、解熱の効果があることから、虫に噛まれた時のかゆみ症、関節炎や神経痛のような痛み、結核、胃腸障害治癒を目的とした医薬品、医薬部外品、食品組成物等に利用されている。また、血管中枢に作用して、血管弛緩効果を示すことから、貼付剤の原料として、坑菌作用をも有することから、抗菌剤、皮膚洗浄剤、毛髪洗浄剤、口腔用液体として利用されている。さらに、清涼感を得るため、種々の化粧料、入浴剤、毛髪洗浄剤、口腔用液体として多くの需要を有している。
これらは、主として内用(経口摂取用)、外皮、毛髪若しくは粘膜に適用されるため、水性組成物として提供されるのが一般的であるが、メントールは水難溶であることが、欠点となっている。これを解決する目的ならびに遅効性を付与する目的等で、メンチルラクテート、メントキシプロパンジオール、メンチルヒドロキシブチレート等の水酸基を有するメントール誘導体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
ここで、分子内に水酸基を有する化合物である上記メンチルラクテートの製造方法においては、乳酸とメントールの直接のエステル化は行われた例は知られておらず、まず、分子内に水酸基の存在しないメンチルピルベートを製造し、しかる後に還元することによりメンチルラクテートを製造する方法が幾つか提案されているのみである(非特許文献1〜4参照)。
しかしながら、これらの方法では、還元剤として、多置換ジヒドロピリジン誘導体、ジアリールシリルジハイドライド、水素化ホウ素ナトリウムと糖から多工程経て合成されたアンモニウム塩との組み合わせ、及び、3級アルコールで3置換された水素化アルミニウム還元剤等、汎用品として入手困難で、多工程反応を経て合成される高価な還元剤を大量に使用することから、工業的な製造方法としては満足のいくものではない。
また、分子内に水酸基の存在しない基質を用いたメンチルラクテートの別の製造方法として、まずメンチルプロピオネートを製造し、これをリチウムアミドを用いてリチウムエノラートとした後、トリメチルクロロシランで処理しトリメチルシリルエノラートに変換し、最後に修飾された過酸化モリブデンを用いて酸化することによりメンチルラクテートを製造する方法が知られているが(非特許文献5参照)、この製造方法において用いられているリチウムジシソプロピルアミドは高価で発火性があり、トリメチルクロロシランは湿気により毒性ガスの発生が懸念され、さらに毒性のある特殊な過酸化モリブデンを使用しているということに加え、多工程で煩雑な工程を必要とすることから、この方法も工業的には好ましい製造方法ではない。
特開平6−329528号公報 Journal of the Chemical Society, Chemical Communications(1976),(3),101−2. Journal of Organic Chemistry(1977),42(10),1671−9. Agricultural and Biological Chemistry(1978),42(4),869−72. Tetrahedron:Asymmetry(1991),2(8),771−4. Tetrahedron:Asymmetry(1994),5(10),1878−4
本発明では、医薬品、医薬部外品、抗菌剤、香粧品、食品組成物、皮膚洗浄剤、毛髪洗浄剤、入浴剤、口腔用液体または貼付剤の原料として有用である水溶性の高いメントール誘導体及びそのメントール誘導体を工業的に有利に製造する方法を提供することである。
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、分子内に水酸基若しくはそれに誘導可能な基とカルボキシル基若しくはその塩とを置換基として有する新規メントール誘導体を工業的に製造可能な方法により得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の要旨は、下記一般式(1)
Figure 2005194243
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアリール基又はアシル基を示し、Mは水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を示す。)で表される酒石酸モノメントールエステル類及び酒石酸無水物誘導体とメントールとの縮合反応生成物を、塩基性アルカリ金属塩、塩基性アルカリ土類金属塩及びアルカリ土類金属の酸化物からなる群より選ばれる化合物を用いてカルボン酸塩とし、これを分離する工程を有することを特徴とする酒石酸モノメントールエステル類の製造方法に存する。
本発明によれば、新規なメントール誘導体及びその製造方法を提供することができる。
また、本発明の新規なメントール誘導体は、医薬品、医薬部外品、抗菌剤、香粧品、食品組成物、皮膚洗浄剤、毛髪洗浄剤、入浴剤、口腔用液体または貼付剤の原料、組成物として有用である。
以下、本発明を実施するための代表的な態様を具体的に説明する。
1,酒石酸モノメントールエステル類
本発明のメントール誘導体は、上記一般式(1)で表されるような酒石酸のモノメント−ルエステル類である。
式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアリール基又はアシル基を示す。
上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n
−ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基が挙げられ、このうち好ましくは炭素数1〜10のものであり、より好ましくは炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のものであり、特に好ましくは炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のものである。
上記アリール基としては、フェニル基又はナフチル基等が挙げられ、このうち好ましくはフェニル基である。
上記アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ベンジルカルボニル基等の置換されていても良いアルキルカルボニル基;又は、ベンゾイル基、o−メチルベンゾイル基、m−メチルベンゾイル基、p−メチルベンゾイル基、o−メトキシベンゾイル基、m−メトキシベンゾイル基、p−メトキシベンゾイル基、2,4−ジメトキシベンゾイル基、3,4−ジメトキシベンゾイル基、o−クロロベンゾイル基、m−クロロベンゾイル基、p−クロロベンゾイル基等の置換されていても良いアリールカルボニル基が挙げられる。
上記アルキル基、アリール基、アルキルカルボニル基及びアリールカルボニル基の置換基としては、反応に不活性な基であれば特に限定されないが、好ましくはハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基及びフェニル基が挙げられる。
このうち、化合物の水溶性の観点から、上記R1及びR2が水素原子又はアシル基であるのが好ましい。
また、R1及びR2がアシル基の場合には、原料となる酒石酸無水物を酒石酸から製造するにあたり、酸無水物化と同時に水酸基の保護ができることとなり、工業的な製造の観点から簡便であり好ましい。
上記アシル基として、より好ましくは無置換の炭素数1〜4のアルキルカルボニル基;又は、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群より選ばれる置換基で置換されていても良いアリールカルボニル基であり、さらに好ましくはアセチル基、ベンゾイル基、クロロベンゾイル基、トルイル基、ジメチルベンゾイル基又はメトキシベンゾイル基が挙げられ、特に好ましくはアセチル基、ベンゾイル基、クロロベンゾイル基又はメトキシベンゾイル基が挙げられる。
また、R1及びR2は、それぞれ異なっていても良いが、同一のものの方が好ましい。
Mは、水素原子;ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;又は、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属を示し、このうち、水素原子又はアルカリ金属が好ましく、より好ましくはアルカリ金属であり、特に好ましくはナトリウム又はカリウムである。
かかる上記一般式(1)で表される化合物として、好ましくは上述の置換基の説明の項で挙げられた好ましい置換基同士を組み合わせたものが挙げられるが、その具体例としては、(2R,3R)−2,3−ジヒドロキシブタン二酸水素メンチル、(2R,3R)−2,3−ジヒドロキシブタン二酸ナトリウムメンチル、(2R,3R)−2,3−ジヒドロキシブタン二酸カリウムメンチル、(2S,3S)−2,3−ジヒドロキシブタン二酸水素メンチル、(2S,3S)−2,3−ジヒドロキシブタン二酸ナトリウムメンチル、(2S,3S)−2,3−ジヒドロキシブタン二酸カリウムメンチル、(2R,3R)−2,3−ビス(アセチルオキシ)−ブタン二酸水素メンチル、(2R,3R)−2,3−ビス(アセチルオキシ)−ブタン二酸ナトリウムメンチル、(2R,3R)−2,3−ビス(アセチルオキシ)−ブタン二酸カリウムメンチル、(2S,3S)−2,3−ビス(アセチルオキシ)−ブタン二酸水素メンチル、(2S,3S)−2,3−ビス(アセチルオキシ)−ブタン二酸ナトリウムメンチル、(2S,3S)−2,3−ビス(アセチルオキシ)−ブタン二酸カリウムメンチル、(2R,3R)−2,3−ビス(ベンゾイルオキシ)−ブタン二酸水素メンチル、(2R,3R)−2,3−ビス(ベンゾイルオキシ)−ブタン二酸ナトリウムメンチル、(2R,3R)−2,3−ビス(ベンゾイルオキシ)−
ブタン二酸カリウムメンチル、(2S,3S)−2,3−ビス(ベンゾイルオキシ)−ブタン二酸水素メンチル、(2S,3S)−2,3−ビス(ベンゾイルオキシ)−ブタン二酸ナトリウムメンチル、(2S,3S)−2,3−ビス(ベンゾイルオキシ)−ブタン二酸カリウムメンチル、(2R,3R)−2,3−ビス(トルイルオキシ)−ブタン二酸水素メンチル、(2R,3R)−2,3−ビス(トルイルオキシ)−ブタン二酸ナトリウムメンチル、(2R,3R)−2,3−ビス(トルイルオキシ)−ブタン二酸カリウムメンチル、(2S,3S)−2,3−ビス(トルイルオキシ)−ブタン二酸水素メンチル、(2S,3S)−2,3−ビス(トルイルオキシ)−ブタン二酸ナトリウムメンチル、(2S,3S)−2,3−ビス(トルイルオキシ)−ブタン二酸カリウムメンチル等が挙げられる。
また、かかる上記一般式(1)で表される化合物の純度としては、通常80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上のものである。
2,酒石酸モノメントールエステル類の製造方法
本発明の製造方法は、下記反応式で表される反応を行った後、得られる生成物(1’)を塩の状態で分離する工程を有することを特徴とするものである。
Figure 2005194243
(酒石酸無水物誘導体)
原料として使用する、酒石酸無水物誘導体は、上記一般式(2)で表されるものであり、式中のR1及びR2は、前記と同義である。
ここで、上記エステル化反応においては、R1及びR2が水素原子以外のものである方が好ましい。
該酒石酸無水物は、公知の水酸基のアルキル化又はアリール化反応等に従い水酸基の保護をした後、酸無水物又は酸ハライドを用い、公知の条件により酒石酸を環化することで得られる。
このうち、R1及びR2がアシル基の場合には、酒石酸の環化と水酸基の保護が1工程で行え好ましく、具体的には、酒石酸に酸触媒の存在下、酒石酸に対して3〜5モル倍程度の酸無水物又は酸ハライドを作用させる。
上記酸触媒としては、ルイス酸及びブレンステッド酸のいずれも使用可能であるが、好ましくは塩酸、硫酸等の無機酸;又は、p−トルエンスルホン酸等の有機酸といったブレンステッド酸であり、特に好ましくはスルホン酸系化合物が挙げられる。
本発明で用いられる酒石酸無水物の原料となる酒石酸の立体構造(配置)としては、L型及びD型のいずれであっても特に限定されないが、工業的に大量に、且つ、安価に入手できる点からは、天然型のL−酒石酸(すなわち、(2R,3R)−酒石酸)が好ましく用いられる。
かかる、酒石酸無水物誘導体としては、例えば、O,O’−ジアセチル−L−酒石酸無水物、O,O’−ジアセチル−D−酒石酸無水物、O,O’−ジプロピオニル−L−酒石
酸無水物 、O,O’−ジプロピオニル−D−酒石酸無水物 、O,O’−ジベンゾイル−L−酒石酸無水物、O,O’−ジベンゾイル−D−酒石酸無水物、O,O’−ジトルイル−L−酒石酸無水物、O,O’−ジトルイル−D−酒石酸無水物 、O,O’−ジ(パラクロロベンゾイル)−L−酒石酸無水物、O,O’−ジ(パラクロロベンゾイル)−D−酒石酸無水物、O,O’−ジ(3,4−ジメチルベンゾイル)−L−酒石酸無水物、O,O’−ジ(3,4−ジメチルベンゾイル)−D−酒石酸無水物、O,O’−ジ(メトキシベンゾイル)−L−酒石酸無水物、O,O’−ジ(メトキシベンゾイル)−D−酒石酸無水物などが挙げられるがこれに限定されるものではない。
(メントール)
酒石酸無水物誘導体と反応させる基質は、2−イソプロピルー5−メチルシクロヘキサノール(いわゆるメントール)である。該化合物は、その構造上種々の立体異性体が知られているが、本発明の製造法においては、その立体構造(配置)については特に限定されずいずれも使用可能であるが、工業的に大量に、且つ、安価に入手できる点からは天然型の(1R,2S,5R)−2−イソプロピルー5−メチルシクロヘキサノール、すなわちL−メントールが好ましく用いられる。
(エステル化反応)
上記一般式(2)で表される酒石酸無水物誘導体とメントールとは、通常、溶媒中で、必要に応じて酸又は塩基の共存下で反応させる。
このとき用いるメントールの使用量は、酒石酸無水物に対して、通常、0.8倍モル以上、好ましくは0.9倍モル以上である。このときメントールの使用量が多すぎると、酒石酸無水物の転化速度は増加する傾向にあるものの、未反応のメントールが反応系中に残存し、生成物の分離等に悪影響を与える場合があるので、通常、3倍モル以下、好ましくは1.5倍モル以下の範囲で用いられる。
添加する酸触媒としては、硫酸、燐酸、p−トルエンスルホン酸等のプロトン酸;又は、塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のルイス酸といった通常のエステル化反応に用いられるような酸であれば特に限定されないが、好ましくは硫酸、燐酸、p−トルエンスルホン酸等のプロトン酸である。
添加する、塩基触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム等の無機塩基;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等の金属アルコキシド類;又は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等のアミン類といった通常のエステル化反応に用いられるような塩基であれば特に限定されないが、好ましくはトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等のアミン類である。
酸及び塩基の使用量としては、酒石酸無水物誘導体に対し、通常、0.01〜20モル%、好ましくは0.1〜10モル%である。
但し、酸又は塩基触媒を使用する場合、使用する基質、反応温度、反応時間により、望ましくない副生物が生成する場合があることから、酸又は塩基を共存させずにそのまま反応させる方が好ましい。
使用する溶媒は、原料を溶解し、且つ、反応を妨げないものであれば特に限定されないが、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;又は、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、クロロエタン、ジクロロエタン、プロピルクロライド、ブチルクロライド等のハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。このうち酒石酸無水物誘導体及びメントールに対する溶解性が良好なことから芳香族炭化水
素類又はハロゲン化炭化水素類が好ましい。
この際に用いる溶媒量としては、特に制限されるものでは無いが、通常、50重量倍以下であり、このうち経済的な理由で酒石酸無水物誘導体に対して溶剤量が重量で20重量倍以下になるように設定することが好ましい。上記溶媒は予め脱水等の前処理をすることなくそのまま使用することが可能である。
反応温度は、通常、0℃以上、好ましくは15℃以上、より好ましくは40℃以上で行われる。反応温度が高い方が反応速度的には早くなるため好ましいが、あまり反応温度が高すぎると不純物が副生する可能性が高くなるので、通常150℃以下、好ましくは120℃以下で行われる。
反応時間は、基質、反応温度及び試剤の添加量等に依存するので一概に規定できないが、一般には0.1〜20時間で反応は完結する。このとき、逐次、反応混合物のサンプルを採取して、薄層クロマトグラフィー及び液体クロマトグラフィー等により分析して、反応の進行状況を確認することができる。
(カルボン酸塩の単離工程)
上記縮合反応後の反応液には、不純物として未反応の原料である酒石酸誘導体及びメントール、並びに、酒石酸誘導体の置換基(R1及びR2)のいずれか若しくは両方が脱離した化合物及び酒石酸無水物誘導体の加水分解体等といった副生物が存在する。
上述の目的物であるメントールモノエステルとこれらの不純物はいずれも高沸点化合物であるため蒸留精製には不適である。また、これらはいずれも水酸基やカルボキシル基と言った水溶性基を有するため晶析分離も困難であった。
本発明の製造方法は、上述のような酒石酸無水物とメントールとの縮合反応により生成した酒石酸モノメントールエステル誘導体を、塩基性アルカリ金属塩、塩基性アルカリ土類金属塩及びアルカリ土類金属の酸化物から選ばれる化合物を用いてカルボン酸塩へと誘導化した場合に、上記不純物との分離が容易となり、高純度の酒石酸モノメントールエステル誘導体を得ることができることを見出したものである。
上記塩基性アルカリ金属塩としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物;重炭酸リチウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム等のアルカリ金属重炭酸塩;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;又は、塩基性リン酸ナトリウム、塩基性リン酸カリウム等のアルカリ金属リン酸塩が挙げられ、このうち好ましくはアルカリ金属重炭酸塩である。
上記塩基性アルカリ土類金属塩としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;又は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩が挙げられ、このうち好ましくはアルカリ土類金属の炭酸塩である。
上記アルカリ土類金属の酸化物としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウムが挙げられる。
上記アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアルカリ土類金属の酸化物としては、単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
上記塩基性アルカリ金属塩、塩基性アルカリ土類金属塩及びアルカリ土類金属の酸化物のうち好ましくは、主として経済的な理由で、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム又は炭酸カリウムが挙げられる。
これらの塩基性化合物は、酒石酸無水物誘導体とメントールとの縮合反応終了後の反応
液と接触させればよく、通常、該塩基性化合物を水に溶解又は懸濁させた水性溶液を直接反応液に添加する。
用いられる塩基性化合物の量は、酒石酸メントールエステル誘導体のカルボキシル基を塩とするのに充分な量であれば特に制限されず、通常は、酒石酸無水物誘導体(原料)1モルにつき1モル当量以上が必要である。但し、塩基性化合物の量が多すぎると導入したメントールエステルが加水分解を受ける等といった望ましくない副反応が起こる可能性があるので、通常10当量以下、好ましくは4当量以下の範囲で用いられる。
これらの塩基性化合物を水に溶解又は懸濁させる場合には、その溶液又は懸濁液中の塩基性化合物の量は、通常、3重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上となるようにし、上限としては、取り扱い性等の点から、通常、50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは25重量%以下の範囲とする。
上記塩基性化合物の添加方法としては、一括添加及び逐次添加のいずれでも差し支えないが、これらの試剤の添加時に若干の発熱が起こることから、所望の温度に制御しうる範囲で添加速度を制御することが好ましい。このときの温度は、通常、−5℃以上、好ましくは0℃以上である。但し、あまり高すぎると生成物の加水分解等の問題もあるため、通常、100℃以下、好ましくは40℃以下である。
塩の生成に供する時間は、通常、1時間以上、好ましくは2時間以上攪拌を継続すれば良く。攪拌時間は長くても問題なく、反応スケール等、他の条件との兼ね合いで決定すればよいが、通常、数時間以内、例えば、3〜4時間あれば十分である。
上記操作により、酒石酸無水物誘導体とメントールとの縮合反応生成物の塩が固体として析出するので、こらを濾取後、純水又はイオン交換水等で洗浄することにより、高純度の酒石酸モノメントールエステル誘導体が取得できる。
上記酒石酸無水物誘導体とメントールとの縮合反応生成物の塩の純度としては、通常80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上のものである。
(塩からカルボキシル基への誘導)
このようにして得られた酒石酸モノメントールエステルのアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩は、酸性化することにより容易に遊離酸型の酒石酸モノメントールエステル(すなわち、一般式(1)において、Mが水素原子の化合物)に誘導可能である。
通常、当該アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を液体媒体に溶解又は懸濁し、これを酸性化することにより遊離酸型の酒石酸モノメントールエステルへ誘導する。
上記液体媒体としては、水;MTBE(メチル第三ブチルエ−テル)、ジ−n−ブチルエ−テル、ジ−i−プロピルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジエチルエーテル等の脂肪族エ−テル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル又は酢酸の3−メトキシブチルエステル等の脂肪族カルボン酸のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン(2−ペンタノン)、メチルイソプロピルケトン、3−ペンタノン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン(2−ヘキサノン)または3−ヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;又は、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、クロロエタン、ジクロロエタン、プロピルクロライド、ブチルクロライド等のハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。
上記液体媒体は、単独で用いても良いし2種以上を混合して用いても良いが、水と有機溶媒との混合溶媒を用いるのが好ましく、より好ましくは水とエーテル類、エステル類及びケトン類から選ばれる溶媒との混合溶媒が挙げられ、特に好ましくは水とエステル類と
の混合溶媒が挙げられる。
使用される酸は鉱酸、特に非酸化性鉱酸又は十分な酸度を有する有機酸である。使用される鉱酸としては、硫酸、リン酸、塩酸、臭化水素酸及び/又はヨウ化水素酸が例示可能であり、また有機酸としては、ギ酸、ハロゲン化又は非ハロゲン化酢酸、脂肪族又は芳香族スルホン酸又はこれら酸の混合物である。このうち好ましくは硫酸、リン酸、塩酸、臭化水素酸及び/又はヨウ化水素酸が挙げられる。
酸は、通常、液性が酸性であれば特に限定されないが、好ましくはpH6以下、より好ましくはpH4以下、特にはpH3以下とするのが好ましいが、一方あまり酸性度が強すぎるとエステルの加水分解等といった副反応が生じる可能性も出てくるので、通常、pH0以上、より好ましくはpH0.1以上、特に好ましくはpH1以上となるような量で添加される。
酸性化により遊離される酒石酸モノメントールエステル誘導体は、反応混合物から溶剤を用いて抽出することにより単離することができる。
溶剤としては、例えばMTBE(メチル第三ブチルエ−テル)、ジ− n− ブチルエ−テル、ジ−i−プロピルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジエチルエーテル等の脂肪族エ−テル類;又は、酢酸、プロピオン酸等といった炭素数1〜6の脂肪族カルボン酸のエステル類が挙げられ、なかでも、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル又は酢酸の3−メトキシブチルエステル等といった酢酸のアルキルエステル又は酢酸のアルコキシアルキルエステルが好ましい。
抽出された有機層から該溶剤を留去することで目的の酒石酸モノメントールエステル誘導体を得ることができ、これらはそのままでも十分な純度を有しているが、必要に応じて、公知の方法、例えば、吸着による方法、抽出、再結晶等の方法により単離することができる。
(水酸基の脱保護反応)
また、上記一般式(1)において、R1及びR2が水素原子以外の置換基である酒石酸モノメントールエステル類からR1及びR2が水素原子の化合物へ誘導する場合には、酸処理、還元、加水分解等といった一般的な水酸基の脱保護反応(脱アルキル化、脱アリール化又は脱アシル化反応)に従い実施することができる。
具体的には、R1及びR2がアルキル基の場合には、ヨウ化トリメチルシリル、塩化アルミニウム又は三臭化ホウ素等の脱アルキル化剤で処理することにより容易に誘導可能である。これらの試剤を用いた脱アルキル化反応は溶媒として好ましくは塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類が使用されるが、特に限定されるものではない。反応は−70〜30℃、とりわけ−30〜20℃で行うのが好ましい。
また、R1及びR2がアシル基の場合には、通常、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化リチウム等の無機塩基若しくはトリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン等の有機塩基を用いて脱アシル化を行うことができる。
上記塩基の量としては、酒石酸モノメントールエステル類に存在するR1及びR2を加水分解するのに充分な量であれば特に限定されず、通常、原料1モルにつき1モル当量以上が必要である。但し、塩基の量が多すぎると、導入したメントールエステルが加水分解を受けるといったような望ましくない副反応が起こる可能性があるので、通常、5当量以下、好ましくは2当量以下の範囲で用いられる。
反応溶媒としては、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等)、アミド系溶媒(ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルア
セトアミド等)、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、プロパノール等)、水といった極性溶媒又はこれらの混合溶媒が好適に用いられる。
反応温度としては、通常0℃から溶媒の沸点までの範囲を任意に採用することができる。
反応時間は基質、反応温度及び試剤の添加量等に依存するので一概に規定できないが、一般には0.1〜20時間で反応は完結する。このとき、逐次、反応混合物のサンプルを採取して、薄層クロマトグラフィー及び液体クロマトグラフィー等により分析して、反応の進行状況を確認することができる。
目的物の単離精製方法としては、公知の方法、例えば、吸着による方法、抽出、再結晶等の方法により実施可能である。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(製造例1) 酒石酸無水物誘導体の製造
500mlガラス製4つ口フラスコに、攪拌子、窒素導入管及び温度計を付し、23℃にて、窒素気流中、トルエン 130g、L−酒石酸 32.7g(217.8mmol)及び無水酢酸78.0g(763.7mmol)を添加し攪拌した。この溶液に、95%硫酸 2.12g(21.57mmol)を約20秒かけて滴下し、窒素気流中、80℃にて2時間攪拌した。次に、ヘプタン 69g及びトルエン 52.7gを添加してから反応液を0℃まで冷却した。1時間、0℃に保った後、反応液を濾過し、得られたケーキをヘプタン 31gで洗浄し、引き続きトルエン 98.5gで洗浄してから、45℃で4時間減圧乾燥することで白色の結晶として、O,O’−ジアセチル−L−酒石酸無水物 41.5g(192.1mmol)を得た(収率:88%)。該目的物のNMRデータ及び分子量測定結果を以下に示す。
1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ2.18(6H,s,OCOMe)、5.63(2H,s,CHOCOMe)。
13C−NMR(300MHz,CDCl3):δ20.3(OCOMe)、70.7(C
HOCOMe)、55.4(OMe)、55.8(OMe)、55.9(NCHCH2
、63.7(HOCH2CH)、167.5(OCOMe)、169.3(OCOCH)

質量分析 (CIマススペクトル、イソブタン) :217(M+1)。
(実施例1−1) 酒石酸モノメントールエステルの塩の製造
500mlガラス製4つ口フラスコに、攪拌子、窒素導入管及び温度計を付し、25℃にて、窒素気流中、トルエン 185g、O,O’−ジアセチル−L−酒石酸無水物 20.0g(92.55mmol)及びL−メントール 15.9g(101.8mmol)を添加し攪拌した。この溶液を加温し、還流下にて3時間攪拌した。反応液を25℃に冷却した後、8wt%の炭酸水素ナトリウム水溶液 130g(炭酸水素ナトリウムの量:10.4g=123.8mmol)を反応液にゆっくり添加し、25℃に保持した状態で攪拌を1時間継続した後、反応液を濾過することで析出した固体分を分取した。濾取したケーキをトルエン 80gで2回洗浄後、さらに酢酸エチル 35gで1回洗浄してから、50℃で3時間減圧乾燥することで白色の結晶として、(2R,3R)−2,3−ビス(アセチルオキシ)−ブタン二酸ナトリウムメンチル 30.6g(77.7mmol)を得た(収率:84%、純度99.3%)。
該化合物のNMRデータ及び分子量測定結果を以下に示す。
1H−NMR(300MHz,DMSO−d6):δ0.63(3H,d,CHMe:メントール環の側鎖Me)、0.84及び0.92(2×3H,2×d,CHMe2:メント
ール環の側鎖i−Pr)、1.05(2H,m,CHMe:メントール環のメチン及びC
HCHCMe2)、1.41(2H,m,−CH2−:メントール環のメチレン)、1.62(4H,m,−CH2−:メントール環のメチレン)、1.85(1H,m,CHCH
CMe2:メントール環のメチン)、1.98及び2.07(2×3H,2×s,OCO
Me)、4.60(1H,dt,COOCH)、5.16(1H,d,CHCOONa)、5.56(1H,d,CHCOOCH)。
13C−NMR(300MHz,DMSO−d6):δ13.75(CHMe:メントール
環の側鎖Me)、18.79及び18.97(OCOMe)、19.14及び20.12(CHMe2:メントール環の側鎖i−Pr)、20.14,20.64及び23.42
(メントール環のメチレン)、29.14(CHCHCMe2)、31.87(CHMe
:メントール環のメチン)、41.51(CHCHCMe2:メントール環のメチン)、
71.25,71.66及び72.94(2×CHOCOMe,COOCH)、164.75,165.61,167.4及び168.1(4×CO)。
質量分析(FABMS(ポジティブモード)、グリセリン):371[M−Na]
(実施例1−2) 脱塩処理
300mlガラス製4つ口フラスコに、攪拌子、窒素導入管及び温度計を付し、21℃にて、窒素気流中、酢酸エチル 95g、水 60g及び上記実施例1−1で得られた(2R,3R)−2,3−ビス(アセチルオキシ)−ブタン二酸ナトリウムメンチル 12.8g(32.4mmol)を添加し攪拌した。この懸濁液に、1N−塩酸 45ml(塩化水素換算で45.0mmol)を約30秒かけて添加し、窒素気流中、21℃にて1時間攪拌した。反応液を分液ロートに移して有機層を分離してから、さらに水層に酢酸エチル30mlを加え抽出した。上記有機層をあわせ、冷飽和食塩水30mlで水層がほぼ中性になるまで洗浄した。該有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、エバポレーターで濃縮乾固することにより透明粘稠状液体が得られた。このものを50℃で3時間減圧乾燥し、さらに5℃にて10時間冷却することによって白色の結晶、(2R,3R)−2,3−ビス(アセチルオキシ)−ブタン二酸水素メンチル 11.1g(29.8mmol)を得た(収率 92%、純度99.2%)。
該目的物のNMRデータ及び分子量測定結果を以下に示す。
1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ0.69(3H,d,CHMe:メントール環の側鎖Me)、0.86及び0.91(2×3H,2×d,CHMe2:メントール
環の側鎖i−Pr)、1.04(2H,m,CHMe:メントール環のメチン及びCHCHCMe2)、1.43(2H,m,−CH2−:メントール環のメチレン)、1.68(4H,m,−CH2−:メントール環のメチレン)、2.05(1H,m,CHCHCM
2:メントール環のメチン)、2.16及び2.19(2×3H,2×s,OCOMe
)、4.73(1H,dt,COOCH)、5.67及び5.69(2×1H,2×d,CHCOO)。
13C−NMR(300MHz,CDCl3):δ15.66(CHMe:メントール環の
側鎖Me)、20.23及び20.41(OCOMe)、20.83及び21.92(CHMe2:メントール環の側鎖i−Pr)、22.80,5.90及び32.43(メン
トール環のメチレン)、34.01(CHCHCMe2)、40.56(CHMe:メン
トール環メチン)、46.72(CHCHCMe2:メントール環のメチン)、70.6
6,70.70及び70.82(2×CHOCOMe及びCOOCH),160.3,169.7,169.9及び170.4(4×CO)。
質量分析(エレクトロスプレーイオン化法):373(M+H)
(参考例1)
上記実施例1−2の生成物と同一の化合物である(2R,3R)−2,3−ビス(アセチルオキシ)−ブタン二酸水素メンチルを公知の方法に準じて塩での単離を行うことなく製造した。
すなわち、300mlガラス製4つ口フラスコに、攪拌子、窒素導入管及び温度計を付し、25℃にて、窒素気流中、トルエン 110g、O,O’−ジアセチル−L−酒石酸
無水物 12.0g(55.53mmol)及びL−メントール 9.54g(61.1mmol)を添加し攪拌した。この溶液を加温し、還流下にて3時間攪拌した。室温まで冷却後、この反応液に、飽和食塩水50g添加し、30分間攪拌した。反応液を分液ロートに移して有機層を分離してから、さらに水層にトルエン40gを加え抽出した。上記有機層をあわせ、さらに脱塩水30gで2回、有機層を洗浄した。該有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、エバポレーターで濃縮乾固することにより透明粘稠状液体が得られた。この粗生成物を分析した結果は以下のような混合物であり、目的生成物の純度は67.2%であった。
Figure 2005194243
この粗生成物を酢酸エチル 40gに溶解し、炭酸水素ナトリウム水溶液 32gを加え、分液ロートを用い洗浄した。有機層を分離してから、さらに水層に酢酸エチル30gを加え抽出した。上記有機層をあわせ、さらに脱塩水で水層が中性になるまで洗浄した。該有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、エバポレーターで濃縮乾固することにより透明粘稠状液体が得られた。得られた、透明粘稠状液体を攪拌子及び温度計を付した、200mlガラス製3つ口フラスコに移し、トルエン47gに溶解した。この溶液を、40℃に昇温し保持し、ヘプタンを逐次に添加した。添加に伴い生成する白色懸濁が溶解しなくなるまでヘプタンを添加した。この時のヘプタンの添加量は、55gであった。この溶液を60℃まで昇温し、完全に溶解した後、室温まで降温し、さらに一晩放置した後、反応液を濾過した。濾取したケーキを冷トルエン 10gで2回洗浄後、50℃で3時間減圧乾燥することで白色の結晶として、(2R,3R)−2,3−ビス(アセチルオキシ)−ブタン二酸水素メンチル 12.6g(33.87mmol)を得た(収率:61%、純度89%)。この結晶中には、原料L−メントール 0.44g(2.78mmol)及び(2R,3R)−アセチルオキシ−ヒドロキシ−ブタン二酸水素メンチルが異性体混合物として 0.54g(1.62mmol)混入していた。
(実施例2−1) 脱アセチル化
300mlガラス製4つ口フラスコに、攪拌子、窒素導入管及び温度計を付し、20℃にて、窒素気流中、メタノール115g、炭酸カリウム3.51g(25.37mmol)及び上記実施例1−1で得られた(2R,3R)−2,3−ビス(アセチルオキシ)−ブタン二酸ナトリウムメンチル 10.0g(25.37mmol)を仕込み攪拌した。さらに、この温度にて攪拌を2.5時間継続した後、減圧下にてメタノールを留去し回収し、引き続き水30mlを留去した。残りの反応液を濾過し、濾取したケーキを酢酸エチル 70gで2回洗浄後、水 10gで2回洗浄してから50℃で4時間減圧乾燥することで白色の結晶として、(2R,3R)−2,3−ジヒドロキシブタン二酸ナトリウムメンチル 5.59g(18.0mmol)を得た(収率 71%、純度98.9%)。
該目的物のNMRデータ及び分子量測定結果を以下に示す。
1H−NMR(300MHz,CD3OD):δ0.75(3H,d,CHMe:メントール環の側鎖Me)、0.88及び0.92(2×3H,2×d,CHMe2:メントール
環の側鎖i−Pr)、1.10(3H,m,CHMe:メントール環のメチンおよびメチレン)、1.45(2H,m,−CH2−:メントール環のメチレン)、1.72(2H
,m,−CH2−:メントール環のメチレン)、2.03(2H,m,CHCHCMe2:メントール環のメチン及びCHCHCMe2)、4.21(1H,d,CHCOONa)
、4.50(1H,d,CHCOOCH)、4.73(1H,dt,COOCH)。
13C−NMR(300MHz,CD3OD):δ16.43(CHMe:メントール環の
側鎖Me)、21.35(CHMe2:メントール環の側鎖i−Pr)、22.54,2
4.31及び27.12(メントール環のメチレン)、32.87(CHCHCMe2
、35.51(CHMe:メントール環のメチン)、42.10(CHCHCMe2:メ
ントール環のメチン)、74.10,75.00及び76.64(2×CHOCOMe及びCOOCH)、174.1及び175.9(2×CO)。
質量分析(FABMS(ポジティブモード)、グリセリン):287[M−Na]
(実施例2−2) 脱塩処理
300mlガラス製4つ口フラスコに、攪拌子、窒素導入管及び温度計を付し、26℃にて、窒素気流中、酢酸エチル 72.2g、1N−塩酸 100ml(塩化水素換算で100mmol)及び上記実施例2−1で得られた(2R,3R)−2,3−ジヒドロキシブタン二酸ナトリウムメンチル 5.69g(18.84mmol)を仕込み攪拌した。このとき溶液はpH1であり、攪拌に伴い懸濁液が徐々に均一溶液になった。1時間攪拌した後、反応液を分液ロートに移して有機層を分離し、さらに水層に酢酸エチル80mlを加え抽出した。該有機層をあわせた後、冷飽和食塩水30mlで水層がほぼ中性になるまで洗浄してから、該有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、エバポレーターで濃縮乾固することにより透明粘稠状液体が得られた。このものを40℃で2時間減圧乾燥し、さらに2日室温にて静置することによって白色の結晶、(2R,3R)−2,3−ジヒドロキシブタン二酸水素メンチル 4.81g(16.7mmol)を得た(収率:91%、純度99.2%)。
該目的物のNMRデータ及び分子量測定結果を以下に示す。
1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ0.68(3H,d,CHMe:メントール環の側鎖Me)、0.84及び0.90(2×3H,2×d,CHMe2:メントール
環の側鎖iPr)、1.05(3H,m,CHMe:メントール環のメチン及びメチレン)、1.44(2H,m,−CH2−:メントール環のメチレン)、1.68(2H,m
,−CH2−:メントール環のメチレン)、1.89(1H,m,CHCHCMe2:メントール環のメチン)、2.04(1H,m,CHCHCMe2)、4.58及び4.62
(2×1H,2×d,CHCOOCH)、4.80(1H,dt,COOCH)。
13C−NMR(300MHz,CDCl3):δ15.79(CHMe:メントール環の側鎖Me)、20.85及び22.00(CHMe2:メントール環の側鎖iPr)、2
3.03,25.94及び31.45(メントール環のメチレン)、34.12(CHCHCMe2)、40.68(CHMe:メントール環のメチン)、47.00CHCHC
Me2:メントール環のメチン)、72.01,72.11及び72.26(2×CHO
COMe,COOCH)、171.1及び174.7(2×CO)。
質量分析(エレクトロスプレーイオン化法):289(M+H)

Claims (2)

  1. 下記一般式(1)
    Figure 2005194243
    (式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアリール基又はアシル基を示し、Mは水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を示す。)で表される酒石酸モノメントールエステル類。
  2. 酒石酸無水物誘導体とメントールとの縮合反応生成物を、塩基性アルカリ金属塩、塩基性アルカリ土類金属塩及びアルカリ土類金属の酸化物からなる群より選ばれる化合物を用いてカルボン酸塩とし、これを分離する工程を有することを特徴とする酒石酸モノメントールエステル類の製造方法。

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