JP2004079421A - 有機el素子 - Google Patents

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Koji Yasukawa
安川 浩司
Masatoshi Takizawa
瀧澤 正利
Michio Arai
荒井 三千男
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Abstract

【課題】従来検討されていない2層以上の発光層から白色発光を得る上面光取り出し型の構造を有する有機EL素子において、素子内部での光学モデルを確立し、効率の良い、白色の色度に優れた有機EL素子を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの発光ピークを持つ1種の発光層5,6を有し、基板1と反対側の上面から取り出し光を得る有機EL素子であって、前記基板1とこの基板1上に可視光反射率50%以上を有する反射層2と、陽極2と、発光層を有する有機層4,5,6,7と、陰極である透明電極9とを少なくとも順次有し、前記発光層の中間点から陽極下端面までの総膜厚が45nm〜160nmであり、前記発光層中間点から陰極上端面までの総膜厚が120nm〜290nmである構成の有機EL素子とした。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機化合物を用いた有機EL素子に関し、さらに詳細には、発光を有効に取り出すことができ発光輝度のバラツキの少ない有機EL素子を提供するための光学モデルを適用した有機EL素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機EL素子は、ホール注入電極上にトリフェニルジアミン(TPD)などのホール輸送材料を蒸着により薄膜とし、さらにアルミキノリノール錯体(Alq3)などの蛍光物質を発光層として積層し、さらにMgなどの仕事関数の小さな金属電極(電子注入電極)を形成した基本構成を有する素子である。有機EL素子は、自発光型の薄膜構造物であって、10V前後の電圧で数100から数10000cd/mときわめて高い輝度が得られることで注目されている。
【0003】
有機EL素子は、前述のように基板上に電子注入電極、有機層、ホール注入電極等を有する有機EL構造体が成膜されている基本構成を有し、通常、発光した光はホール注入電極を介して基板側から取り出される。
【0004】
ところで、一般に有機EL素子では、発光種の発光スペクトルは外部に出る間に素子内部で光学的な干渉を起こし、変調されることが知られている。このため、同一の発光材料を持つ有機EL素子であっても、光学系が異なれば外部に発光されるスペクトルやその強度が変化してしまう。
【0005】
この光学変調の最も大きなものとしては、特開平4−328295号公報に開示されているように、前方に発光された光と、後方に発光され金属面(電子注入電極)で反射した光との干渉によるものである。この効果は、発光点と金属面との距離で決まる関数で表せるので、所望の変調スペクトルを得るための光学的構成がわかる。しかし、さらに精密な予想を行う場合には誤差が大きく、これでも不十分であり、さらに考慮すべきパラメータを必要としていた。
【0006】
さらに、特開平7−240277号公報において、ガラス/透明電極界面での反射光が干渉して有機EL素子の発光光を変調するという問題が明らかになった。しかし、同公報中にはある狭い範囲の特定波長の発光強度を、光学変調を利用して強くするためには、ガラス/透明導電膜界面と有機多層部を挟む金属面までの光学膜厚を特定の値にすればよいことが述べられているにすぎない。
【0007】
ある任意の光学系があったとき、上記したパラメータ以外の干渉により、どの程度変調されるのかが予想できなくては、スペクトル変調についての詳細な検討は困難であり、素子のさらなる最適化への光学設計を困難にしていた。また、上記モデルは何れも基板側から光を取り出す素子を対象としており、基板と反対側である上面から光を取り出す構造の素子についての検討はなされていない。
【0008】
上述のように、有機EL素子の構成膜厚が変わると外部に発せられる光のスペクトルや輝度が変化する。特に複数の発光層を有する白色発光素子においては、各発光層からの発光スペクトルが変化すると、最終的に外部に現れる白色の色純度が変化してしまい、高効率かつ高純度のディスプレーとすることが困難であり、均一な製品を供給することを困難にしていた。
【0009】
なお、特開2000−243573号公報には、透光性の基板上に少なくとも、透明電極と、発光層を含む有機化合物材料層と、金属電極と、が順に積層されて形成され、発光層の発光界面を境にした透明電極側の有機化合物材料層又は透明電極に最大屈折率段差の界面を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、透明電極側の有機化合物材料層は、有機化合物材料層の透明電極側の膜厚に対する発光効率特性における1次極大値及び2次極大値の発光効率の間の極小値を生じる膜厚以上となるように、形成されている有機エレクトロルミネッセンス素子が記載されている。
【0010】
しかし、この文献で検討されているのは基板側から光り取り出しを行うボトムタイプの素子であり、上面光取り出しに関する検討はなされていない。しかも、検討されている発光色は単独のピーク波長λを有する単色光であり、この波長の1/4の奇数倍として素子構造内の厚さを規定しているが、2層以上の発光層から得られる発光色を合成して白色発光を得る素子に関する検討はなされていない。また、素子の積層構成により白色の色バランスが悪化するといった課題も提示されてはいない。
【0011】
一方、特開2000−323277号公報には、製造が簡単で、光の外部取り出し効率の高い有機エレクトロルミネッセンス多色ディスプレイとその製造方法を提供することを目的として、各々が透明基板上に順に積層された、透明電極と、発光層を含む有機化合物材料層と、金属電極と、からなり、発光層が異なる有機化合物材料からなりかつ異なる発光色を呈する有機エレクトロルミネッセンス素子の複数からなる有機エレクトロルミネッセンス多色ディスプレイであって、発光層を除く有機化合物材料層の同一機能を有する何れかの機能層は発光色に対応してそれぞれ異なる膜厚を有する有機エレクトロルミネッセンス多色ディスプレイが開示されている。
【0012】
しかし、この文献で検討されているのはボトム取り出しで、しかもR、G、B塗り分けタイプのフルカラーディスプレイであり、2種以上の発光層を積層した白色発光に関する検討はなされていない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来検討されていない上面光取り出し型の構造を有する有機EL素子において、好ましくは2層以上の発光層から白色発光を得る素子において、素子内部での光学モデルを確立し、効率の良い、白色の色度に優れた有機EL素子を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
すなわち上記目的は以下の本発明の構成により達成される。
(1) 少なくとも1つの発光ピークを持つ1種の発光層を有し、基板と反対側の上面から取り出し光を得る有機EL素子であって、
前記基板とこの基板上に可視光反射率50%以上を有する反射層と、陽極と、発光層を有する有機層と、陰極である透明電極とを少なくとも順次有し、
前記発光層の中間点から陽極下端面までの総膜厚が45nm〜160nmであり、前記発光層中間点から陰極上端面までの総膜厚が120nm〜290nmである有機EL素子。
(2) 前記反射層が陽極であり、
前記発光層中間点から陽極上端面までの総膜厚が45nm〜160nmであり、前記発光層中間点から陰極上端面までの総膜厚が120nm〜290nmである上記(1)の有機EL素子。
(3) 前記発光層を2種以上有し、この2種以上の発光層の合成光により基板と反対側の上面から白色の取り出し光を得、
少なくとも最も陽極側に位置する下部発光層と最も陰極側に位置する上部発光層との界面あるいはこれらの中間点から陽極下端面までの総膜厚が45nm〜100nmであり、前記界面あるいは中間点から陰極上端面までの総膜厚が100nm〜260nmである上記(1)の有機EL素子。
(4) 前記下部発光層と上部発光層との界面あるいはこれらの中間点から陽極下端面までの総膜厚が45nm〜130nmであり、
陽極の膜厚が25〜70nmである上記(3)の有機EL素子。
(5) 前記下部発光層と上部発光層との界面あるいはこれらの中間点から陰極上端面までの総膜厚が100nm〜260nmであり、
陰極である透明電極の膜厚が50nm〜140nmである上記(3)または(4)の有機EL素子。
(6) 前記陰極の少なくとも一部が透明電極であって、その屈折率が1.7〜2.0、前記発光層を含む有機層の屈折率が1.6〜1.8、前記陽極が透明電極でありその屈折率が1.6〜2.0である上記(1)〜(5)のいずれかの有機EL素子。
(7) 前記下部発光層と上部発光層との界面あるいはこれらの中間点から陽極下端面までの膜厚(nm)と屈折率の積の総和をA、
A=(a1×n2)+(a2×n3)
(a1は陽極の膜厚、n2は陽極の屈折率、a2は下部発光層を含む下側有機層の膜厚、n3は下部発光層5を含む下側有機層の屈折率)、
前記界面あるいは中間点から陰極上端面までの膜厚(nm)と屈折率の積の総和をB、
B=(b1×n4)+(b2×n5)
(b1は上部発光層を含む上側有機層の膜厚、n4は上部発光層を含む上側有機層の屈折率、b2は透明陰極の膜厚、n5は透明陰極の屈折率、)
とすると、
A=72〜248、
B=165〜496、
である上記(3)の有機EL素子。
(8) 前記反射層が陽極であり、
前記下部発光層と上部発光層との界面あるいはこれらの中間点から陽極上端面までの総膜厚が45nm〜130nmであり、前記界面あるいは中間点から陰極上端面までの総膜厚が100nm〜290nmである上記(3)の有機EL素子。
(9) 前記下部発光層と上部発光層との界面あるいはこれらの中間点から陰極上端面までの総膜厚が100nm〜260nmであり、陰極である透明電極の膜厚が40nm〜140nmである上記(8)の有機EL素子。
(10) 前記陰極の少なくとも一部が透明陰極であって、その屈折率が1.7〜2.0、前記発光層を含む有機層の屈折率が1.6〜1.8である上記(8)または(9)の有機EL素子。
(11) 前記下部発光層と上部発光層の界面あるいはこれらの中間点から陽極上端部までの膜厚(nm)と屈折率の積の総和をA、
A=(a2×n3)
(a2は下部発光層を含む下側有機層の膜厚、n3は下部発光層を含む下側有機層の屈折率)、
前記界面あるいはこれらの中間点から陰極上端部までの膜厚(nm)と屈折率の積の総和をB、
B=(b1×n4)+(b2×n5)
(b1は上部発光層を含む上側有機層の膜厚、n2は上部発光層を含む上側有機層の屈折率、b2は透明電極の膜厚、n3は透明電極の屈折率)、
とすると、
A=72〜234
B=164〜496
である上記(8)の有機EL素子。
【0015】
(12) 異なる発光ピークを有する2種以上の発光層を有し、この2種以上の発光層の合成光により基板と反対側の上面から白色の取り出し光を得る有機EL素子であって、
前記基板と、この基板上に可視光反射率50%以上を有する反射層と、陽極と、少なくとも最も陽極側に位置する下部発光層と最も陰極側に位置する上部発光層とを有する有機層と、陰極である透明電極とを順次有し、
前記下部発光層と上部発光層との界面あるいはこれらの中間点から陽極下端面までの膜厚(nm)と屈折率の積の総和をA、
A=(a1×n2)+(a2×n3)
(a1は陽極の膜厚、n2は陽極の屈折率、a2は下部発光層を含む下側有機層の膜厚、n3は下部発光層5を含む下側有機層の屈折率)、
前記界面あるいは中間点から陰極上端面までの膜厚(nm)と屈折率の積の総和をB、
B=(b1×n4)+(b2×n5)
(b1は上部発光層を含む上側有機層の膜厚、n4は上部発光層を含む上側有機層の屈折率、b2は透明陰極の膜厚、n5は透明陰極の屈折率、)
とすると、
A=72〜248、
B=165〜496、
である有機EL素子。
(13) 前記反射層が陽極であり、
前記下部発光層と上部発光層の界面あるいはこれらの中間点から陽極上端部までの膜厚(nm)と屈折率の積の総和をA、
A=(a2×n3)
(a2は下部発光層を含む下側有機層の膜厚、n3は下部発光層を含む下側有機層の屈折率)、
前記界面あるいはこれらの中間点から陰極上端部までの膜厚(nm)と屈折率の積の総和をB、
B=(b1×n4)+(b2×n5)
(b1は上部発光層を含む上側有機層の膜厚、n2は上部発光層を含む上側有機層の屈折率、b2は透明電極の膜厚、n3は透明電極の屈折率)、
とすると、
A=72〜234
B=164〜496
である上記(12)の有機EL素子。
(14) 前記2種以上の発光層を構成するホスト材料が同一である上記(3)〜(13)のいずれかの有機EL素子。
(15) 前記2種以上の発光層の発光色は、450nm〜500nmの青色、及び560nm〜600nmの黄色である上記(3)〜(14)のいずれかの有機EL素子。
(16) 1種類または2種類以上の発光層を有し、基板と反対側の上面から白色の取り出し光を得る有機EL素子であって、
前記基板とこの基板上に可視光反射率50%以上を有する反射層と、この反射層を陽極とし、少なくとも最も陽極側に位置する下部発光層と最も陰極側に位置する上部発光層とを有する有機層と、無機電子注入層と、陰極である透明電極とを順次有し、
前記無機電子注入層の膜厚が0.1nm〜5nmで、屈折率が1.6〜2.6である有機EL素子。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の有機EL素子は、少なくとも1つの発光ピークを持つ1種の発光層を有し、基板と反対側の上面から取り出し光を得る有機EL素子であって、
前記基板とこの基板上に可視光反射率50%以上を有する反射層と、陽極と、発光層を有する有機層と、陰極である透明電極とを少なくとも順次有し、
前記発光層の中間点から陽極下端面までの総膜厚が45nm〜160nmであり、前記発光層中間点から陰極上端面までの総膜厚が120nm〜290nmであるものである。
【0017】
また、好ましくは前記発光層を2種以上有し、この2種以上の発光層の合成光により基板と反対側の上面から白色の取り出し光を得、少なくとも最も陽極側に位置する下部発光層と最も陰極側に位置する上部発光層との界面あるいはこれらの中間点から陽極下端面までの総膜厚が45nm〜100nmであり、前記界面あるいは中間点から陰極上端面までの総膜厚が100nm〜260nmであるものである。
【0018】
このように、基板と反対側の上面から取り出し光、好ましくは2種以上の発光層の合成光により白色の取り出し光を得る有機EL素子において、発光層あるいは2種以上の発光層の場合には上部発光層および下部発光層より、基板側と陰極側の各界面までの距離を規制することにより、高効率で高純度の白色発光を取り出すことができる。
【0019】
すなわち、本発明者らの検討によると、発光層の中点、または2層以上の発光層同士の界面、あるいは最外層発光層同士の中間点から基板側である陽極下端面までの総膜厚と、その反対側である陰極上端面までの総膜厚を最適化することで、発光光取り出しの効率を向上させ、白色の色バランスを整えて高純度の白色発光を得ることができる。
【0020】
次ぎに、図を参照しつつ、本発明の有機EL素子についてより詳細に説明する。図1は、本発明の有機EL素子の基本構成を示す概略断面図である。図において、有機EL素子は基板1上に、光反射層2と、透明電極である陽極3と、有機ホール注入輸送層4と、第1の発光層(下部発光層)5と、第2の発光層(上部発光層)6と、有機電子注入輸送層7と、無機電子注入層8と、透明電極である陰極9とが順次積層されている。なお、発光層5,6は単層であってもよい。
【0021】
本発明では、発光層は好ましくは図示例のように第1の発光層(下部発光層)5、第2の発光層(上部発光層)6の2層構造、または単層構造、あるいは3層以上の複数層により構成される。そして、これら複数の発光層5,6からの発光光が合成され、好ましくは白色の取り出し光が得られる。このため、図示例のような2層の発光層から白色光を得る場合、例えば青色と橙色等のように、互いに補色関係にある発光が得られるよう、それぞれの発光層の発光を調製することが望ましい。また、発光層が3層以上ある場合には、例えばRGBの3原色を発光させ、白色を得るようにしても良いし、最終的な合成光が白色になるように各発光層の発光色を調製すればよい。
【0022】
本発明では、単層、あるいは上記のような複数の発光層からの発光色により、取り出し光、好ましくは白色の取り出し光を得る素子であって、基板と反対側の上面(陰極側)から光を取り出す構造の素子において、効率よく、白色の純度に優れた取り出し光が得られる素子構成を提供する。
【0023】
本発明者らの検討によると、白色取り出し光の効率、色純度を最適化するためには、構成層の膜厚が以下の関係にあると良いことが判明した。すなわち、前記下部発光層と上部発光層との界面あるいはこれらの中間点から陽極下端面ないし反射層上端面までの総膜厚をa、前記界面あるいは中間点から陰極上端面(つまり陰極と空気との界面)までの総膜厚をbとすると、
〔単一発光層の場合〕
a=45nm〜160nm、好ましくは60〜140nm、
b=120nm〜290nm、好ましくは140〜250nm、
〔2種以上の発光層の場合〕
a=45nm〜130nm、好ましくは60〜110nm、
b=100nm〜260nm、好ましくは110〜180nm、
の範囲とするとよい。
【0024】
また、反射層が陽極を兼ねる場合には、以下のようになる。
〔単一発光層の場合〕
a=45nm〜160nm、好ましくは60〜140nm、
b=120nm〜290nm、好ましくは140〜250nm、
〔2種以上の発光層の場合〕
a=45nm〜130nm、好ましくは60〜110nm、
b=100nm〜290nm、好ましくは110〜180nm、
である。
【0025】
ここで、前記発光層の中間点とは単一発光層の膜厚方向における中間点をいう。また、前記界面あるいは中間点とは、第1の発光層(下部発光層)5、第2の発光層(上部発光層)6の2層構造の場合には、これらの界面であり、2層以上有する場合には下部発光層5と上部発光層6の間の中間点をいう。通常、発光は2つの発光層の界面で発生すると想定して問題ないが、発光層を2層以上有する場合にも最上部の発光層と最下部の発光層の中間地点を界面と擬制しても問題はない。
【0026】
また、上記膜厚範囲において、特に陽極の膜厚が25〜50nm、より好ましくは35〜45nmであり、陰極である透明電極の膜厚が40nm〜140nm、より好ましくは90〜120nmとするとよい。
【0027】
ここで、各構成層の屈折率について検討する。基板1の屈折率n1としては、通常ガラス基板等が用いられ、この場合にはn1=1.50〜1.54程度である。次ぎに陽極2,3は、通常、ITO等の透明導電膜が用いられ、この場合にはn2=1.6〜2.0程度である。さらに、下部発光層5を含む有機層5,4の屈折率は、通常1.6〜1.8であり、上部発光層6を含む有機層6,7の屈折率は、同様に1.6〜1.8である。なお、無機電池注入層8は、極めて膜厚が薄いため、ここでは無視する。そして、陰極である透明電極の屈折率は、通常1.7〜2.0程度である。なお、空気の屈折率は、この明細書では1.0として扱うこととする。
【0028】
上記各構成層の屈折率の関係を見ると、基板1/透明電極(陽極)3の界面、および透明電極(陰極)9/空気の界面での屈折率の変化が最も大きくなることがわかる。従って、発光光は主にこれらの界面で反射することとなるが、本発明では反射層を有するので、陽極方向に進んだ光はこの反射層の表面で反射する。このため、発光中心である発光層界面からこれらの界面、反射層表面までの距離を規制することで、取り出される発光光の効率と、白色の純度を最適化できることがわかる。
【0029】
すなわち、発光中心で生じた発光は、基板側と基板と反対側の上面側に向かう。なお、ここでは基板面と垂直方向以外の光はモデルを単純化するために無視することとする。そして、上面側に向かった光は、透明陰極9と外気との界面でその一部が反射される。一方、基板側に向かった光は、反射層2で少なくともその一部が反射され、上面側に向かう。従って、これら2つの光路長を最適化することで、上面に向かう光と、基板側に向かう光の干渉を極力抑え、効率の良い光取り出しを行わせることができる。
【0030】
このため、上記膜厚と屈折率との関係を表すと以下のようになる。
前記下部発光層と上部発光層との界面あるいはこれらの中間点から陽極下端面までの膜厚(nm)と屈折率の積の総和をA、
A=(a1×n2)+(a2×n3)
(a1は陽極の膜厚、n2は陽極の屈折率、a2は下部発光層5を含む有機層4,5の膜厚、n3は下部発光層5を含む有機層4,5の屈折率)、
前記界面あるいは中間点から陰極上端面までの膜厚(nm)と屈折率の積の総和をB、
B=(b1×n4)+(b2×n5)
(b1は上部発光層6を含む有機層6,7の膜厚、n4は上部発光層6を含む有機層6,7の屈折率、b2は透明陰極の膜厚、n5は透明陰極の屈折率、)とすると、
A=72〜190、好ましくは103〜153、
B=164〜520、好ましくは249〜456、
となる。
【0031】
なお、本発明において、上記屈折率、および光取り出し光率など取り出し光の評価は、波長400〜700nmの帯域の光について、これを満たすものであることが好ましい。
【0032】
本発明において、有機EL構造体を形成する基板としては、非晶質基板(例えばガラス、石英など)、結晶基板(例えば、Si、GaAs、ZnSe、ZnS、GaP、InPなど)、あるいは透明プラスチックなどの樹脂が挙げられ、また、これらの結晶基板に結晶質、非晶質あるいは金属のバッファ層を形成した基板も用いることができる。また、金属基板としては、Mo、Al、Pt、Ir、Au、Pdなどを用いることができ、好ましくはガラス基板が用いられる。また、基板側から光を取り出さない構造であるため、Si等の結晶基板も好ましい。
【0033】
反射層は、発光層から発した光の50%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上の光を反射する機能を有する。反射層の反射率が低下すると外部への取り出し光が減少し、光取り出し効率が低下してくる。一方、反射率があまり高すぎると、逆にコントラスト比が低下するなどの弊害が生じる場合もある。
【0034】
反射層の材質としては、特に限定されるものではないが、金属、またはその酸化物、窒化物等を挙げることができる。具体的には、Mo,Cr,Al,Ag,Ti等の金属元素単体、あるいはその合金、酸化物、窒化物等を挙げることができ、これらのなかでもAg,Al等が反射率が高いことから好ましい。しかし、陽極にITO等を使用する場合には電触を防止するため、TiN等のバリア層あるいはバリア機能を有する反射層が必要になる。反射層の膜厚は、用いる材料や、設計する反射率により異なるが、通常30〜300nm、特に50〜250nm程度である。
【0035】
陽極は、導電性を有する電極材料であれば特に限定されるものではないが、ホール注入性を有し、素子設計上要求される仕事関数等を最適化できる材料が好ましい。このような陽極材料としては、具体的には、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、ZnO、SnO、Inなどの透明電極を用いることが好ましい。本来、陽極側から積極的に光を取り出すものではないが、上記特性を有する材料である点からこれらの材料が好ましく、特に上記屈折率の関係からは、ITO、IZO等が好ましい。
【0036】
また、陽極の厚さは25〜50nm程度とすることが好ましい。素子の信頼性を向上させるために駆動電圧が低いことが必要であるが、好ましいシート抵抗のものとして、20〜60Ω/□(膜厚50〜300nm)のITOが挙げられる。実際に使用する場合には、ITO等の陽電極界面での反射による干渉効果が、光取り出し効率や色純度を十分に満足するように、電極の膜厚や光学定数を設定すればよい。
【0037】
さらに、陽極と反射層とが一体となっていてもよい。つまり、陽極が反射層として機能してもよい。このような陽極兼反射層の構成材料としては、酸化ゲルマニウムインジウム(GeOIn)、あるいは酸化ケイ素(SiO )に金属(例えばFe,Ni,Cr,In,Zn,Ag,Au,Cu等)元素を添加したもの等を用いることができる。
【0038】
陽極兼反射層の膜厚も、上記陽極と同様である。
【0039】
無機電子注入輸送層は、有機の電子注入輸送層等との組み合わせにおいては電子注入性を有するものとして必要に応じて下記のものを用いることができる。例えば、K、Li、Na、Mg、La、Ce、Ca、Sr、Ba、Sn、Zn、Zr等の金属元素単体、または安定性を向上させるためにそれらを含む2成分、3成分の合金系、例えばAg・Mg(Ag:0.1〜50at%)、Al・Li(Li:0.01〜14at%)、In・Mg(Mg:50〜80at%)、Al・Ca(Ca:0.01〜20at%)等が挙げられる。
【0040】
さらに、アルカリ金属またはアルカリ士類金属のハロゲン化物も好ましく、例えば、アルカリ金属では、LiF、LiCl、LiBr、LiI、CsF、CsCl、CsBf、CsI、また、アルカリ土類金属ではMgF 、MgCl 、MgBr 、MgI 等がある。取扱の簡易さと、抵抗率の低さから好ましくはCsI、CsCl、LiFが選択される。
【0041】
無機電子注入層の膜厚としては、好ましくは、0.1nm〜5.0nm、より好ましくは0.5〜1.0nmが好ましい。膜厚はこれより薄いと効果が十分ではなくなり、これより厚いと駆動電圧の上昇が顕著になる為である。前記無機電子注入層の屈折率は、好ましくは1.6〜2.6である。
【0042】
上記無機電子注入層の作製方法はスパッタ法、EB蒸着法、イオンプレーティング法、抵抗加熱蒸着法等が考えられるが、有機EL素子に与えるダメージを考慮して、抵抗加熱蒸着法を用いた蒸着や、多元蒸着源による共蒸着が好ましい。
【0043】
陰極は、光透過性を必要とすることから透明電極が好ましい。また、無機電子注入層との組み合わせでは、電子注入性はあまり問題にならないが、電極としての性能面でシート抵抗が低いか、導電率が高いことが要求される。
【0044】
具体的には、上記陽極で例示された透明電極、すなわち錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、ZnO、SnO 、
In などを用いることが好ましい。
【0045】
また、シート抵抗を減少させ、導電率を向上させるためには、これらの材料に不純物をドーピングするとよい。具体的には、Al、Ir等の元素の1種または2種以上を総計5 mol%以下、特に3 mol%以下、さらには2〜1 mol%添加するとよい。
【0046】
このようにして不純物をドーピングすることで、100nm以下の膜厚でも、20Ω/□以下のシート抵抗とすることができる。従って、上記光学設計を行う上でも有効である。
【0047】
陰極は、通常光取り出し側の電極となる。光を取り出す側の電極は、発光波長帯域、通常400〜700nmの波長の光に対する光透過率が50%以上、さらには80%以上、特に90%以上であることが好ましい。透過率が低くなりすぎると、発光層からの発光自体が減衰され、発光素子として必要な輝度を得難くなってくる。
【0048】
本発明において、有機発光層は、単層もしくは2層以上の積層体により構成され、好ましくは各発光層からの発光光の合成スペクトルが白色発光になるように調製される。なお、本発明における白色とは、CIE色座標において、x=0.29〜0.37、y=0.30〜0.45、好ましくはx=0.32〜0.36、y=0.30〜0.40で表される範囲のものであり、400〜700nmの波長帯域でブロードな発光スペクトルを有するものである。また、複数の発光ピークを有する発光層からの合成光であるため、上記波長帯域内において完全にフラットな特性とはならず、ある程度のピークが数カ所に点在したスペクトルとなる。
【0049】
白色発光を得るための具体的な発光層としては、例えば450nm〜500nmの青色、及び560nm〜600nmの黄色の2層構造とするとよい。
【0050】
発光層は、正孔輸送性化合物もしくは電子輸送性化合物またはこれらの混合物であるホスト物質を含み、正孔および電子の注入機能、正孔および電子の輸送機能ならびに正孔および電子の再結合により、励起子を生成させる機能を有しており、電子的に比較的ニュートラルな化合物を含んでいることが好ましい。
【0051】
有機発光層のホスト物質として用いられる正孔輸送性化合物としては、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ビラゾリン誘導体、ビラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体が挙げられ、さらに、トリフェニルジアミン誘導体が好ましく使用できる。
【0052】
トリフェニルジアミン誘導体の例としては、テトラアリールべンジシン化合物(トリアリールジアミンないしトリフェニルジアミン:TPD)がとくに好ましい。
【0053】
有機発光層のホスト物質として用いられる電子輸送性化合物としては、下記に示すようなジスチリルアリーレン誘導体を好ましく使用することがでる。また、フェニルアントラセン誘導体やテトラアリールエテン誘導体も、電子輸送性化合物として使用することができる。
【0054】
【化1】
Figure 2004079421
【0055】
本発明において、有機発光層は、正孔輸送性化合物もしくは電子輸送性化合物またはこれらの混合物であるホスト物質に、蛍光物質であるドーバントがドープされた構造を有していることが好ましい。
【0056】
また、本発明にかかる有機EL素子は、好ましくは、互いに積層された2層以上の有機発光層を備えている。2層以上の有機発光層を形成する場合には、それぞれに、異なった発光波長を有する蛍光物質をドーピングすることによって、広い発光波長帯域を確保し、また、発光色の色彩の自由度を向上させることができる。
【0057】
本発明において、ドーバントとして含有させる蛍光物質としては、たとえば、特開昭63−264692号公報に開示された化合物、具体的には、ルブレン系化合物、クマリン系化合物、キナクリドン系化合物、ジシアノメチルビラン系化合物などの化合物よりなる群から選ばれる1種以上の化合物が好ましく使用できる。
【0058】
本発明に好ましく使用できる蛍光物質の例を挙げると、以下のとおりである。
【0059】
【化2】
Figure 2004079421
【0060】
【化3】
Figure 2004079421
【0061】
【化4】
Figure 2004079421
【0062】
【化5】
Figure 2004079421
【0063】
さらに、本発明においては、特開2000−26334号公報および特開2000−26337号公報に記載されているナフタセン系化合物も、ドーバントとして含有させる蛍光物質として、好ましく使用することができ、ルブレン系化合物、クマリン系化合物、キナクリドン系化合物、ジシアノメチルピラン系化合物などと併用することによって、有機EL素子の寿命を飛澤的に向上させることができる。
【0064】
2層以上の有機発光層を設ける場合、各有機発光層が、2種以上のこれらの蛍光物質を含み、2種以上の蛍光物質が、異なった発光波長を有していることが好ましい。
【0065】
本発明において、有機発光層におけるドーバントの含有量は、0.01〜20質量%であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜15質量%である。
【0066】
本発明において、好ましくは、有機発光層は蒸着によって形成される。
【0067】
本発明において、好ましくは、有機発光層は、正孔輸送性化合物と電子注入輸送性化合物の混合物を含んでいる。
【0068】
有機発光層が、正孔輸送性化合物と電子注入輸送性化合物の混合物を含んでいる場合には,キャリアのホッピング伝導パスが形成されるため、各キャリアは極性的に優勢な物質中を移動し、逆の極性のキャリア注入が起こり難くなり、したがって、有機発光層に含まれた化合物がダメージを受けることが防止されるので、素子の寿命を向上させることができるという利点がある。
【0069】
さらに、蛍光物質からなるドーバントを、正孔輸送性化合物および電子注入輸送性化合物の混合物を含んだ有機発光層に含有させることによって、有機発光層自体が有する発光波長特性を変化させることができ、発光波長を長波長側に移行させるとともに、発光強度を向上させ、さらには、有機EL素子の安定性を向上させることが可能になる。
【0070】
有機発光層が、正孔輸送性化合物および電子注入輸送性化合物の混合物を含んでいる場合、正孔輸送性化合物と電子注入輸送性化合物の混合比は、それぞれのキャリア移動度とキャリア濃度にしたがって決定されるが、一般的には、質量比で、1/99〜99/1、好ましくは、10/90〜90/10、さらに好ましくは、20/80〜80/20、最も好ましくは、40/60〜60/40が選ばれる。
【0071】
正孔輸送性化合物および電子注入輸送性化合物の混合物を含む有機発光層を形成する場合には、正孔輸送性化合物と電子注入輸送性化合物を、異なる蒸着源に入れて、蒸発させ、共蒸著することが好ましいが、正孔輸送性化合物と電子注入輸送性化合物の蒸気圧が同程度あるいは非常に近い場合には、あらかじめ同じ蒸着源内で混合させておき、蒸著することもできる。
【0072】
正孔輸送性化合物および電子注入輸送性化合物の混合物を含む有機発光層を形成する場合、有機発光層内で、正孔輸送性化合物と電子注入輸送性化合物とが均一に混合していることが好ましいが、均一に混合していることは必ずしも必要でない。
【0073】
本発明において、有機物層は、好ましくは、少なくとも一層の有機発光層に加えて、正孔を安定的に輸送する機能を有する正孔輸送層、ならびに、電子を安定的に輸送する機能を有する電子輸送層を備えている。これらの層を備えることによって、有機発光層に注入される正孔や電子を増大させるとともに、有機発光層内に閉じ込めさせ、再結合領域を最適化させ、発光効率を向上させることが可能になる。
【0074】
本発明において、正孔輸送層に、好ましく使用することができる化合物としては、例えば、テトラアリールベンジシン化合物(トリアリールジアミンないしトリフェニルジアミン:TPD)、芳香族三級アミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体」イミダゾール誘導体、アミノ基を有するオキサジアゾール誘導体、ポリチオフェンなどを挙げることができる。これらのうち、テトラアリールべンジシン化合物(トリアリールジアミンないしトリフェニルジアミン:TPD)、WO/98/30071号に記載されているトリアリールアミン多量体(ATP)が、とくに好ましく使用することができる。
【0075】
トリアリールアミン多量体(ATP)の好ましい具体例は、以下のとおりである。
【0076】
【化6】
Figure 2004079421
【0077】
【化7】
Figure 2004079421
【0078】
【化8】
Figure 2004079421
【0079】
本発明において、さらには、特開昭63−295695号公報、特開平2−191694号公報、特開平3−792号公報、特開平5−234681号公報、特開平5−239455号公報、特開平5−299174号公報、特開平7−126225号公報、特開平7−126226号公報、特開平8−100172号公報、EPO650955Alなどに記載されている各種有機化合物も、正孔注入輸送層、正孔注入層および正孔輸送層に使用することができる。
【0080】
本発明において、2種以上のこれらの化合物を併用してもよく、2種以上のこれらの化合物を併用する場合には、一層中に混合しても、また、2以上の層として、積層してもよい。
【0081】
本発明において、正孔輸送層は、前記化合物を蒸着することによって形成することができる。蒸着によって、素子化する場合には、均一で、ピンホールのない1〜10nm程度の薄膜を形成することができるため、正孔注入層にイオン化ポテンシャルが小さく、可視波長の光を吸収する化合物を用いても、発光色の色調変化や再吸収による発光効率の低下を防止することができる。
【0082】
本発明において、電子輸送層に、好ましく使用することができる化合物としては、たとえば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)などの8−キノリノールないしその誘導体を配位子とする有機金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体などを挙げることができる。
【0083】
本発明において、電子輸送層は、前記化合物を蒸着することによって形成することができる。
【0084】
本発明において、有機発光層、正孔注入輸送層あるいは正孔注入層および正孔輸送層、ならびに、電子注入輸送層あるいは電子注入層および電子輸送層の各層を、蒸着によって形成する条件はとくに限定されるものではないが、1×10−4パスカル以下で、蒸着速度を0.01〜1nm/秒程度とすることが好ましい。各層は、1×10−4パスカル以下の減圧下で、連続して、形成されることが好ましい。1×10−4パスカル以下の減圧下で、連続して、各層を形成することによって、各層の界面に不純物が吸着されることを防止することができるから、高特性の有機EL素子を得ることが可能になるとともに、有機EL素子の駆動電圧を低下させ、ダークスポットが発生し、成長することを抑制することができる。
【0085】
さらに、素子の有機層や電極の劣化を防ぐために、素子上を封止板等により封止することが好ましい。封止板は、湿気の浸入を防ぐために、接着性樹脂層を用いて、封止板を接着し密封する。封止ガスは、Ar、He、N2 等の不活性ガス等が好ましい。また、この封止ガスの水分含有量は、100ppm 以下、より好ましくは10ppm 以下、特には1ppm 以下であることが好ましい。この水分含有量に下限値は特にないが、通常0.1ppm 程度である。
【0086】
さらに、本発明の素子を、平面上に多数並べてもよい。平面上に並べられたそれぞれの素子の発光色を変えて、カラーのディスプレーにすることができる。
【0087】
素子基板または封止基板に色フィルター膜や蛍光性物質を含む色変換膜、あるいは誘電体反射膜を用いて発光色をコントロールしてもよい。
【0088】
【実施例】
〔実施例1〕
ガラス基板上に反射層としてTiNをスパッタ法により、膜厚50nmに成膜した。このとき、反射層の波長400〜700nmにおける反射率は45%であった。
【0089】
次いで、表1に示す厚さにITO透明電極(陽極)を成膜し、この反射層、ITO付きガラス基板を、中性洗剤、アセトン、エタノールを用いて超音波洗浄し、煮沸エタノール中から引き上げて乾燥した。この透明電極付き基板をUV/O 洗浄した後、真空蒸着装置の基板ホルダーに固定して、チャンバー内を10−4Pa以下の減圧状態とした。なお、ITOの屈折率n1=1.9であった。なお、サンプル9のみITOを設けず、TiN反射層を陽極としてITOに代えてホール注入性を確保するためにGeOInを膜厚2nmに成膜して用いた。
【0090】
次に、ホール注入層として、減圧状態を保ったまま、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス[N−(4−メチルフェニル)−N−フェニル(4−アミノフェニル)]−1,1’−ビフェニル−4,4′−ジアミンを蒸音速度0.1nm/secで20nmの厚さに形成した。
【0091】
次いで、減圧状態を保ったまま、ホール輸送層として、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−1,1’−ジフェニル−4.4’−ジアミンを蒸着速度0.1nm/sec で10nmの厚さに形成した。
【0092】
さらに、減圧状態を保ったまま、下部発光属として下記の化合物1と化合物2を、100:3の体積比率、蒸着速度0.1nm/sec で共蒸着し、30nmの厚さに形成した。これら、ホール注入層、ホール輸送層、下部発光層のうち、ホール輸送層の膜厚を変えることで、総膜厚が表1に示す各サンプルの膜厚となるように形成した。なお、これらの有機層の屈折率n3=1.7であった。
【0093】
【化9】
Figure 2004079421
【0094】
【化10】
Figure 2004079421
【0095】
さらに、減圧状態を保ったまま、発光属として下記の化合物3と化合物4を、100:3の体積比率、蒸着速度0.1nm/sec で共蒸着し、30nmの厚さに形成した。
【0096】
【化11】
Figure 2004079421
【0097】
【化12】
Figure 2004079421
【0098】
次に、電子注入層として、上記IDE120を蒸着速度0.1nm/sec で30nmの厚さに形成した。これら、上部発光層、有機の電子注入層のうち、電子注入層の膜厚を変えることで、総膜厚が表1に示す各サンプルの膜厚となるように形成した。なお、これらの有機層の屈折率n4=1.7であった。
【0099】
次に、減圧状態を保ったまま、無機電子注入層としてLiFを蒸着速度0.01nm/sec で3nmの厚さに形成した後、ZnOにAlを5 mol%ドープした透明電極を、スパッタ法にて速度0.05nm/sec で表1に示す厚さに形成した。この透明電極の屈折率はn5=1.8であった。
【0100】
この有機EL素子に電圧を印加して電流を流し評価した。得られた発光輝度、電圧、色度(CIE色座標)を表1に示す。
【0101】
【表1】
Figure 2004079421
【0102】
表1から明らかなように、各構成層の膜厚、あるいは膜厚と屈折率との積が本発明範囲のサンプルは輝度、色度ともに優れた値が得られていることがわかる。また、電極の膜厚が厚くなる駆動電圧が上昇してしまう。
【0103】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、従来検討されていない2層以上の発光層から白色発光を得る上面光取り出し型の構造を有する有機EL素子において、素子内部での光学モデルを確立し、効率の良い、白色の色度に優れた有機EL素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機EL素子の基本構成を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1  基板
2  光反射層
3  陽極
4  有機ホール注入輸送層
5  第1の発光層(下部発光層)
6  第2の発光層(上部発光層)
7  有機電子注入輸送層
8  無機電子注入層8
9  陰極

Claims (16)

  1. 少なくとも1つの発光ピークを持つ1種の発光層を有し、基板と反対側の上面から取り出し光を得る有機EL素子であって、
    前記基板とこの基板上に可視光反射率50%以上を有する反射層と、陽極と、発光層を有する有機層と、陰極である透明電極とを少なくとも順次有し、
    前記発光層の中間点から陽極下端面までの総膜厚が45nm〜160nmであり、前記発光層中間点から陰極上端面までの総膜厚が120nm〜290nmである有機EL素子。
  2. 前記反射層が陽極であり、
    前記発光層中間点から陽極上端面までの総膜厚が45nm〜160nmであり、前記発光層中間点から陰極上端面までの総膜厚が120nm〜290nmである請求項1の有機EL素子。
  3. 前記発光層を2種以上有し、この2種以上の発光層の合成光により基板と反対側の上面から白色の取り出し光を得、
    少なくとも最も陽極側に位置する下部発光層と最も陰極側に位置する上部発光層との界面あるいはこれらの中間点から陽極下端面までの総膜厚が45nm〜100nmであり、前記界面あるいは中間点から陰極上端面までの総膜厚が100nm〜260nmである請求項1の有機EL素子。
  4. 前記下部発光層と上部発光層との界面あるいはこれらの中間点から陽極下端面までの総膜厚が45nm〜130nmであり、
    陽極の膜厚が25〜70nmである請求項3の有機EL素子。
  5. 前記下部発光層と上部発光層との界面あるいはこれらの中間点から陰極上端面までの総膜厚が100nm〜260nmであり、
    陰極である透明電極の膜厚が50nm〜140nmである請求項3または4の有機EL素子。
  6. 前記陰極の少なくとも一部が透明電極であって、その屈折率が1.7〜2.0、前記発光層を含む有機層の屈折率が1.6〜1.8、前記陽極が透明電極でありその屈折率が1.6〜2.0である請求項1〜5のいずれかの有機EL素子。
  7. 前記下部発光層と上部発光層との界面あるいはこれらの中間点から陽極下端面までの膜厚(nm)と屈折率の積の総和をA、
    A=(a1×n2)+(a2×n3)
    (a1は陽極の膜厚、n2は陽極の屈折率、a2は下部発光層を含む下側有機層の膜厚、n3は下部発光層5を含む下側有機層の屈折率)、
    前記界面あるいは中間点から陰極上端面までの膜厚(nm)と屈折率の積の総和をB、
    B=(b1×n4)+(b2×n5)
    (b1は上部発光層を含む上側有機層の膜厚、n4は上部発光層を含む上側有機層の屈折率、b2は透明陰極の膜厚、n5は透明陰極の屈折率、)
    とすると、
    A=72〜248、
    B=165〜496、
    である請求項3の有機EL素子。
  8. 前記反射層が陽極であり、
    前記下部発光層と上部発光層との界面あるいはこれらの中間点から陽極上端面までの総膜厚が45nm〜130nmであり、前記界面あるいは中間点から陰極上端面までの総膜厚が100nm〜290nmである請求項3の有機EL素子。
  9. 前記下部発光層と上部発光層との界面あるいはこれらの中間点から陰極上端面までの総膜厚が100nm〜260nmであり、陰極である透明電極の膜厚が40nm〜140nmである請求項8の有機EL素子。
  10. 前記陰極の少なくとも一部が透明陰極であって、その屈折率が1.7〜2.0、前記発光層を含む有機層の屈折率が1.6〜1.8である請求項8または9の有機EL素子。
  11. 前記下部発光層と上部発光層の界面あるいはこれらの中間点から陽極上端部までの膜厚(nm)と屈折率の積の総和をA、
    A=(a2×n3)
    (a2は下部発光層を含む下側有機層の膜厚、n3は下部発光層を含む下側有機層の屈折率)、
    前記界面あるいはこれらの中間点から陰極上端部までの膜厚(nm)と屈折率の積の総和をB、
    B=(b1×n4)+(b2×n5)
    (b1は上部発光層を含む上側有機層の膜厚、n2は上部発光層を含む上側有機層の屈折率、b2は透明電極の膜厚、n3は透明電極の屈折率)、
    とすると、
    A=72〜234
    B=164〜496
    である請求項8の有機EL素子。
  12. 異なる発光ピークを有する2種以上の発光層を有し、この2種以上の発光層の合成光により基板と反対側の上面から白色の取り出し光を得る有機EL素子であって、
    前記基板と、この基板上に可視光反射率50%以上を有する反射層と、陽極と、少なくとも最も陽極側に位置する下部発光層と最も陰極側に位置する上部発光層とを有する有機層と、陰極である透明電極とを順次有し、
    前記下部発光層と上部発光層との界面あるいはこれらの中間点から陽極下端面までの膜厚(nm)と屈折率の積の総和をA、
    A=(a1×n2)+(a2×n3)
    (a1は陽極の膜厚、n2は陽極の屈折率、a2は下部発光層を含む下側有機層の膜厚、n3は下部発光層5を含む下側有機層の屈折率)、
    前記界面あるいは中間点から陰極上端面までの膜厚(nm)と屈折率の積の総和をB、
    B=(b1×n4)+(b2×n5)
    (b1は上部発光層を含む上側有機層の膜厚、n4は上部発光層を含む上側有機層の屈折率、b2は透明陰極の膜厚、n5は透明陰極の屈折率、)
    とすると、
    A=72〜248、
    B=165〜496、
    である有機EL素子。
  13. 前記反射層が陽極であり、
    前記下部発光層と上部発光層の界面あるいはこれらの中間点から陽極上端部までの膜厚(nm)と屈折率の積の総和をA、
    A=(a2×n3)
    (a2は下部発光層を含む下側有機層の膜厚、n3は下部発光層を含む下側有機層の屈折率)、
    前記界面あるいはこれらの中間点から陰極上端部までの膜厚(nm)と屈折率の積の総和をB、
    B=(b1×n4)+(b2×n5)
    (b1は上部発光層を含む上側有機層の膜厚、n2は上部発光層を含む上側有機層の屈折率、b2は透明電極の膜厚、n3は透明電極の屈折率)、
    とすると、
    A=72〜234
    B=164〜496
    である請求項12の有機EL素子。
  14. 前記2種以上の発光層を構成するホスト材料が同一である請求項3〜13のいずれかの有機EL素子。
  15. 前記2種以上の発光層の発光色は、450nm〜500nmの青色、及び560nm〜600nmの黄色である請求項3〜14のいずれかの有機EL素子。
  16. 1種類または2種類以上の発光層を有し、基板と反対側の上面から白色の取り出し光を得る有機EL素子であって、
    前記基板とこの基板上に可視光反射率50%以上を有する反射層と、この反射層を陽極とし、少なくとも最も陽極側に位置する下部発光層と最も陰極側に位置する上部発光層とを有する有機層と、無機電子注入層と、陰極である透明電極とを順次有し、
    前記無機電子注入層の膜厚が0.1nm〜5nmで、屈折率が1.6〜2.6である有機EL素子。
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