JP2003253391A - 冷間成形用ばね鋼 - Google Patents

冷間成形用ばね鋼

Info

Publication number
JP2003253391A
JP2003253391A JP2002061805A JP2002061805A JP2003253391A JP 2003253391 A JP2003253391 A JP 2003253391A JP 2002061805 A JP2002061805 A JP 2002061805A JP 2002061805 A JP2002061805 A JP 2002061805A JP 2003253391 A JP2003253391 A JP 2003253391A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel
spring
content
strength
spring steel
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2002061805A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3918587B2 (ja
Inventor
Kazuyoshi Kimura
和良 木村
Yutaka Kurebayashi
豊 紅林
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Daido Steel Co Ltd
Original Assignee
Daido Steel Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Daido Steel Co Ltd filed Critical Daido Steel Co Ltd
Priority to JP2002061805A priority Critical patent/JP3918587B2/ja
Publication of JP2003253391A publication Critical patent/JP2003253391A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3918587B2 publication Critical patent/JP3918587B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】伸線加工性、焼入れ性などのばね鋼線の製造性
に優れ、かつ200kgf/mm2(HRC:53)以
上の高強度を有する冷間成形用ばね鋼線を製造するに適
した鋼を提供する。 【解決手段】質量%で、C:0.38〜0.53%、S
i:1.4〜2.4%、Mn:0.4〜1.4%、C
u:0.05〜0.35%、Ni:0.05〜0.40
%、Cr:0.05〜0.55%、Mo:0.01〜
0.30%、B:0.0005〜0.0030%、と
V:0.01〜0.20%、Nb:0.020〜0.0
50%、Ti:0.020〜0.100%、Al:0.
005〜0.040%のうちいずれか1種以上とを含
み、1.2%≦C%+Mn%+Cr%≦2.0%、およ
び1.4%≦(Si%)/3+(Cr%)/2+Mn%+
353×B%≦2.1%の関係を満足することを特徴と
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、冷間成形法によっ
てコイルばねに成形するのに適したばね鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車は燃費向上のため、軽量化
が強く要求され、懸架用コイルばねにおいても一層の軽
量化が進められている。コイルばねの軽量化を達成する
ためには、使用するばね素線の直径を細くするか、ある
いは使用するばね素線の長さを短くする必要がある。所
要のばね特性を維持しつつコイルばねの軽量化を達成す
るためにはばねの設計応力を高める必要があり、ばね素
線にはより高い材料強度が要求されるようになった。こ
のような要求に対処して、従来のばね用鋼の化学成分を
調整しさらに特殊元素を配合することによって200k
gf/mm2(HRC:53)以上の材料強度を有する
高強度ばね用鋼が開発されている(例えば特許第306
4672号公報)。
【0003】ところで、懸架用コイルばねの製造方法に
は、大別して熱間成形法と冷間成形法の二種類がある。
鋼線を熱間加工によってばね形状に成形したのち、焼入
れ焼もどしを行ってばね強度に調整する熱間成形法に対
して、あらかじめ所要のばね強度に調整された鋼線を用
い、冷間加工によってばね形状に成形する冷間成形法
は、ばねに成形したのちに焼入れなどの高温処理を要せ
ず、焼入れ変形の修正作業がなくなるなど、ばね製造に
おける設備面・工程面での簡素化効果が高い経済的なば
ね製造方法であり、自動車懸架用ばねの製造にも広く採
用されている。
【0004】冷間成形に用いるばね鋼線は、適当な組成
を有する鋼の圧延線材に対して、所定の線径まで伸線加
工を施し、その後オイルテンパー処理、高周波連続焼入
れ処理などの連続加熱処理を施して製造される。ばね鋼
線としては、前記のように高強度化が望まれているが、
一般に鋼の強度を高めると靭延性が低下する。一方、冷
間成形法によってばねを成形する上では、ばね鋼線は適
当な靭延性を有することが求められる。また鋼線の製造
過程では圧延線材に対して伸線加工を施すので、熱間圧
延後の線材は伸線加工に耐える延性を備えることも必要
である。
【0005】従来、ばね鋼としては、強度向上の観点か
ら比較的C含有率の高い鋼が使用されている。そのた
め、熱間圧延によって製造される圧延線材の熱間圧延後
の硬さが高まり、その後の引抜きや伸線加工において割
れやカッピー状の断線が発生するとか、焼入れ時に焼割
れを生じるという問題もあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、圧延線材の
状態での伸線加工性、オイルテンパー処理・高周波連続
焼入れ処理における熱処理対応性などのばね鋼線の製造
性に優れ、かつ200kgf/mm2(HRC:53)
以上という高強度を有する冷間成形用ばね鋼線を製造す
るに適した鋼を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、本発明の冷間成形用ばね鋼は、(1)質量%で、
C:0.38〜0.53%、Si:1.4〜2.4%、
Mn:0.4〜1.4%、P:0.015%以下、S:
0.010%以下、Cu:0.05〜0.35%、N
i:0.05〜0.40%、Cr:0.05〜0.55
%を含み、かつ、1.2%≦C%+Mn%+Cr%≦
2.0%、および1.4%≦(Si%)/3+(Cr
%)/2+Mn%≦2.1%の関係を満足し、残余、F
eおよび不可避的不純物よりなることを特徴とする。
【0008】また、(2)上記(1)記載の化学成分に
加えて、B:0.0005〜0.0030%、N:0.
020%以下を含み、かつ、V:0.01〜0.20
%、Nb:0.020〜0.050%、Ti:0.02
0〜0.100%、Al:0.005〜0.040%の
うちいずれか1種以上を含み、さらに1.2%≦C%+
Mn%+Cr%≦2.0%、および1.4%≦(Si
%)/3+(Cr%)/2+Mn%+353×B%≦2.
1%の関係を満足することを特徴とする。(3)上記
(2)記載の化学成分に加えて、さらにMo:0.01
〜0.30%を含有することを特徴とする。
【0009】
【作用】本発明の冷間成形用ばね鋼は、鋼材の化学組成
分を特定することによって、圧延線材の状態での伸線加
工性に優れ、オイルテンパー処理・高周波連続焼入れ処
理において焼割れなどの障害を生じることなく十分に焼
入れができるなど、ばね鋼線の製造性に優れ、かつ20
0kgf/mm2(HRC:53)以上の高強度を具備
する冷間成形用ばね鋼線を製造するに適した鋼を得るこ
とに成功したものである。以下、各化学成分の含有率を
定めた理由について説明する。
【0010】C:0.38〜0.53% Cは、焼入れ焼もどし後の鋼の強度を高めるために必須
の元素である。その含有率が0.38%未満では焼入れ
によって十分な硬さが得られないのでC含有率の下限を
0.38%とする。0.53%を超えてCを含有すると
焼入れ時に割れを生じたり、焼入れ焼もどし後の鋼の靭
性が低下したりするうえ、疲労強度、耐遅れ破壊性が劣
化する。また、熱間圧延後の鋼の硬さが高くなりすぎ、
その後の引抜きや伸線加工工程において割れやカッピー
状の断線が発生するなどの障害をもたらす。それゆえC
含有率の上限を0.53%とする。
【0011】Si:1.4〜2.4% Siは、固溶強化元素として鋼の強度および耐へたり性
を向上するために添加するが、その効果を十分に発揮す
るためには1.4%以上を含有する必要がある。しか
し、過剰に含有すると製造工程中の高温加熱時に鋼表面
に脱炭を生じ疲労強度の低下を招くのでSi含有率の上
限を2.4%とする。
【0012】Mn:0.4〜1.4% 鋼溶製時の脱酸を促し、MnS形成による赤熱脆性を防
止し、また、鋼の焼入れ性を高めるために0.4%以上
含有せしめる。しかし過剰に含有すると熱間圧延後の鋼
の硬さを高め、また焼入れ時には焼割れを生じるなど鋼
の製造性を損なうので含有率の上限を1.4%とする。
【0013】P:0.015%以下 Pは、鋼の結晶粒界に偏析して結晶粒界を脆弱化させ、
遅れ破壊の発生を助長するので、その含有量は少ないほ
ど好ましいが、経済性を考慮して含有率の上限を0.0
15%とする。
【0014】S:0.010%以下 Sは、鋼中でMnと結合してMnSを形成し非金属介在
物となり鋼の疲労強度を低下するので、その含有量は極
力低減することが好ましいが、経済性を考慮して含有率
の上限を0.010%とする。
【0015】Cu:0.05〜0.35% Cuは、鋼の耐食性の向上に対して有効であり、またフ
ェライト脱炭の防止効果を有する。その効果を発揮する
ためには0.05%以上を含有させる必要がある。しか
し過剰に含有すると鋼の熱間加工性を損なうので含有率
の上限を0.35%とする。
【0016】Ni:0.05〜0.40% Niは、鋼の耐食性を高め、またフェライト脱炭の防止
効果を有するので0.05%以上を含有させる。しかし
過剰に含有すると鋼のコストを高めるので含有率の上限
を0.40%とする。
【0017】Cr:0.05〜0.55% Crは、鋼の焼入れ性を高めるために0.05%以上を
含有させる。しかし過剰に含有すると熱間圧延後の鋼の
硬さが高くなりすぎ、伸線加工において割れを生じるな
どの弊害をもたらすので、Cr含有率の上限を0.55
%とする。
【0018】B:0.0005〜0.0030% Bは、鋼の結晶粒界に優先析出し、P、Sの結晶粒界偏
析を防止して鋼の遅れ破壊強度を向上させる。この効果
を得るためには0.0005%以上のBを含有する必要
がある。しかし過剰に含有すると結晶粒界にB構成物を
形成して鋼の焼入れ性を低減し、鋼の靭性を損なうの
で、B含有率の上限は0.0030%とする。
【0019】N:0.020%以下Nは、鋼中で窒化物
あるいは炭窒化物を形成し、非金属介在物として鋼の疲
労強度を低下させるので、その含有率は低いほど好まし
いが、経済性を考慮して含有率の上限を0.020%と
する。
【0020】V:0.01〜0.20%、Nb:0.0
20〜0.050%、Ti:0.020〜0.100
%、Al:0.005〜0.040%のうちいずれか1
種以上これらの元素は、いずれも鋼のオーステナイト結
晶粒の微細化効果を有し鋼の靭性向上に寄与するので、
これらの元素のうちいずれか1種以上を添加する。特
に、高周波誘導加熱による焼入れを行う場合に優れた結
晶粒微細化効果が得られ、高強度とした鋼の靭延性の向
上に著しく寄与する。このような効果を得るために、そ
れぞれVは0.01%以上、Tiは0.02%以上、N
bは0.02%以上、Alは0.005%以上を含有す
る必要がある。
【0021】Vは、鋼中で炭化物、炭窒化物を形成して
オーステナイト結晶粒の微細化に寄与するが、さらに析
出硬化に寄与してばねの耐へたり性を向上する。しかし
V炭化物は、鋼表面で局部電極となり、腐食ピットを形
成し疲労亀裂の起点となり、また過剰に含有すると熱間
圧延後の鋼の硬さを高め、加工性を損なうのでV含有率
の上限を0.2%とする。
【0022】Nbは、Vと同様に鋼中で炭化物、炭窒化
物を形成し、さらに析出硬化に寄与してばねの耐へたり
性を向上する。しかし過剰に含有してもその効果は飽和
し、むしろ鋼の熱間加工性および冷間加工性を低下させ
るので、Nb含有率の上限を0.050%とする。
【0023】Tiは、Nb、Vと同様に鋼中で炭窒化物
を形成し、オーステナイト結晶粒を微細化するとともに
析出硬化に寄与する。しかし過剰にTiを含有すると、
鋼の焼入れ加熱時に未溶解化合物として残留し、そのサ
イズが比較的大きいため、破壊の起点となって疲労強度
の低下をもたらすので、Ti含有率の上限を0.100
%とする。
【0024】Alは、鋼中で窒化物を形成してオーステ
ナイト結晶粒の微細化に寄与するが、酸化物形成傾向の
強い元素なので多量に含有すると鋼中の酸化物系介在物
量を増し、鋼の清浄度を損なう。それゆえ、Al含有率
の上限を0.040%とする。また、鋼中の酸素(O)
含有率の上限は12ppmとすることが好ましい。
【0025】Mo:0.01〜0.30% Moは、鋼の焼入れ性を向上するとともに焼もどし軟化
抵抗性を高める元素であり、高強度における靭性や遅れ
破壊特性の改善に効果がある。これらの効果を発揮する
ためにはMo含有率を0.01%以上とする必要があ
る。しかし過剰に含有すると上記の効果は飽和するばか
りでなく、熱間圧延後の鋼の硬さを上昇させ、伸線加工
を困難にするので、Mo含有率の上限を0.30%とす
る。
【0026】1.2%≦C%+Mn%+Cr%≦2.0
% 種々研究の結果、焼入れ硬化した状態で200kgf/
mm2(HRC53)以上の材料強度を確保するために
はC、Mn、Crの含有率がそれぞれ本発明の特定する
範囲にあるほか、さらに(C%+Mn%+Cr%)の値
が1.2%以上である必要があることが判った。しかし
(C%+Mn%+Cr%)の値が2.0%を超えると圧
延材の伸線加工時にカッピー状割れあるいは破断を生じ
る。それゆえ(C%+Mn%+Cr%)の値は1.2〜
2.0%とする。
【0027】1.4%≦(Si%)/3+(Cr%)/2
+Mn%+353×B%≦2.1% 種々検討の結果、鋼の焼入れ後200kgf/mm2(H
RC53)以上の材料強度を確保するためにはSi、C
r、Mn、Bの含有率がそれぞれ本発明の特定する範囲
にあるほか、さらに((Si%)/3+(Cr%)/2+
Mn%+353×B%)の値が1.4%以上である必要
があることが判った。しかしその値が2.1%を超える
と鋼の焼入れ性が過剰となり、鋼の焼入れ時に焼割れを
生じることがある。それゆえ((Si%)/3+(Cr
%)/2+Mn%+353×B%)の値は1.4〜2.
1%とする。
【0028】本発明の冷間成形用ばね鋼は、上述のよう
に化学成分を特定し、化学組成を調整することによっ
て、熱間圧延後の線材の硬さを制御し、焼なましなどの
熱処理を施すことなく引抜き加工あるいは伸線加工を行
える。さらに、焼入れ焼もどしを施すことによって20
0kgf/mm2(HRC53)以上の材料強度を示し、
かつ、前記材料強度において冷間成形法によってコイル
ばねに成形することができる十分な靱延性と、優れた耐
へたり性、耐食性、耐疲労性、遅れ破壊特性を兼備す
る。
【0029】なお、本発明の請求項2および請求項3に
提示する鋼については、200kgf/mm2(HRC5
3)以上の材料強度を得るために行う焼入れとして、高
周波誘導加熱焼入れを行うことにより、一層優れた強靭
化の効果を得ることができる。
【0030】
【実施例】表1に示す化学組成を有する鋼を溶製して得
た鋼塊を分塊圧延し、さらに線材圧延によってφ13m
mの圧延線材とした。線材圧延は鋼片を1,100℃に
加熱し圧延終了温度869℃として行った。圧延終了後
は空冷とした。
【0031】
【表1】
【0032】前記圧延線材の横断面について金属組織を
観察し、フェライト脱炭層の厚さを測定した。その結果
を「脱炭深さ」として表2に示す。また、該横断面につ
いて硬さを測定した。ロックウエルCスケール硬さを3
0点測定し、(平均値+6σ)の値を「圧延線材の最大
硬さ」として表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】前記圧延線材にボンダ皮膜処理を施し、伸
線加工してφ12mmの伸線材とした。前記伸線加工に
おける破断の発生の有無を「伸線時の破断」として表2
に示す。前記伸線材を高周波コイル中に通して周波数3
0kHz、300Aの条件で加熱し、加熱後直ちに水冷
して焼入れを行い、焼入れ材を得た。該焼入れ材ににつ
いて割れの発生の有無を調べ、その結果を「焼割れ」と
して表2に示す。また、焼入れ材の横断面についてロッ
クウエルCスケール硬さを20点測定し、その平均値を
「焼入れ硬さ」として表2に示す。
【0035】前記焼入れ材を焼もどしして硬さHRC5
3の焼もどし材とした。該焼もどし材から試験片を切り
出し、重錘式ねじりクリープ試験機を用い、負荷応力1
050MPaとし、70℃で96h負荷後、残留する歪
を測定した。その結果を「残留せん断歪」として表2に
示す。
【0036】前記焼もどし材から採取した試験片に対し
て塩水噴霧試験機を用いて、35℃で5%NaCl水溶
液を2h噴霧、相対湿度50%で60℃の環境において
4h乾燥、相対湿度95%で35℃の環境において2h
保持のサイクルを6回繰り返した後、応力振幅を700
MPaとして両振りねじり疲労試験を行い、破断繰り返
し数を測定した。比較例8(JIS SUP7相当鋼)
の破断繰り返し数を1として各試験片の破断繰り返し数
との比を求め、「腐食強度比」として表2に示す。
【0037】前記焼もどし材から直径6mm、長さ80
mmで、中央部に深さ1mmで先端部半径0.1mmの
V型切欠きを有する遅れ破壊試験片を切り出した。該遅
れ破壊試験片に所定の曲げモーメントを加えつつ、切欠
き部にpH2の塩酸水溶液(試験液)を滴下して破断に
いたるまでの時間を測定し、30hで破断しない最大の
曲げ応力(遅れ破壊強度)を求めた。他方、同形の試験
片について試験液を滴下することなく漸増曲げモーメン
トを加えて破断した時の最大曲げ応力(曲げ破断強度)
を求めた。(遅れ破壊強度)/(曲げ破断強度)の比の
値を遅れ破壊強度比として表2に示す。
【0038】表2から明らかなように、本発明が特定す
る範囲を超えてSi含有率の高い比較例2はフェライト
脱炭を生じているが、本発明の実施例は、いずれも脱炭
深さが0であり、フェライト脱炭が認められない。
【0039】(C%+Mn%+Cr%)の値が本発明の
特定する範囲を超えて高い比較例4および9〜14は、
圧延材の最大硬さがHRC37以上と高く、伸線時に破
断を生じているが、本発明の実施例においては圧延材の
最大硬さはいずれもHRC33以下となり、φ13mm
の圧延線材からφ12mmに伸線加工した結果において
も伸線時の破断は発生していない。本発明材では焼なま
しなどの軟化処理を行わなくても十分に冷間伸線によっ
て加工可能であることを示している。
【0040】((Si%)/3+(Cr%)/2+Mn%
+353×B%)の値が本発明の特定する範囲を超えて
高い比較例4および5では高周波焼入れ工程で焼割れが
発生しているが、本発明の実施例では高周波焼入れにお
いても焼割れの発生は認められず、焼入れ硬さもHRC
55以上の高い値を示し、焼もどし後にも十分HRC5
3の硬さを維持することを示している。
【0041】残留せん断歪は材料の耐へたり性の指標と
なり、その値が小さい程耐へたり性が高いことを示す。
表2より明らかなように、本発明の実施例はいずれも比
較例に比べて耐へたり性が優れていることを示してい
る。腐食強度比は、腐食作用を蒙った鋼の疲労強度の指
標となるもので、標準的なばね鋼であるJIS SUP
7を基準として比較している。表2から明らかなよう
に、本発明の実施例はいずれも腐食後の疲労強度がJI
S SUP7より優れていることを示している。
【0042】遅れ破壊強度比は、鋼の遅れ破壊に対する
感受性を示す指標であって、その数値が高いほど遅れ破
壊を生じにくいことを示す。表2から判るように、本発
明の実施例は、いずれも比較例より遅れ破壊感受性が低
く、遅れ破壊に対して安定であることを示している。
【0043】以上実施例によって示すごとく、本発明が
特定する化学組成を有する鋼は、熱間圧延による脱炭も
なく、圧延材の伸線加工性にも優れ、焼入れにおいても
割れを生じることがなく、製造製に優れている。また、
焼入れ材の強度もHRC53(200kgf/mm2)を
超えることが明らかである。このような高強度を保持し
つつ、耐へたり性、疲労強度、遅れ破壊特性など、ばね
鋼として所用の諸特性も優れている。
【0044】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の冷間成
形用ばね鋼は、圧延線材の状態での伸線加工性、オイル
テンパー処理・高周波連続焼入れ処理における熱処理対
応性などのばね鋼線の製造性に優れ、かつ、200kg
f/mm2(HRC:53)以上という高強度を保持し
つつ、耐へたり性、疲労強度、遅れ破壊特性など、優れ
たばね特性を示す冷間成形用ばね鋼線を製造を可能とす
るもので、その経済効果は極めて大きいといえる。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成14年3月28日(2002.3.2
8)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項2
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正内容】
【0008】また、(2)上記(1)記載の化学成分に
加えて、B:0.0005〜0.0030%、N:0.
020%以下を含み、かつ、Nb:0.020〜0.0
50%、Ti:0.020〜0.100%、Al:0.
005〜0.040%のうちいずれか1種以上を含み、
さらに1.2%≦C%+Mn%+Cr%≦2.0%、お
よび1.4%≦(Si%)/3+(Cr%)/2+Mn%
+353×B%≦2.1%の関係を満足することを特徴
とする。(3)上記(2)記載の化学成分に加えて、さ
らにMo:0.01〜0.30%を含有することを特徴
とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正内容】
【0020】Nb:0.020〜0.050%、Ti:
0.020〜0.100%、Al:0.005〜0.0
40%のうちいずれか1種以上 これらの元素は、いずれも鋼のオーステナイト結晶粒の
微細化効果を有し鋼の靭性向上に寄与するので、これら
の元素のうちいずれか1種以上を添加する。特に、高周
波誘導加熱による焼入れを行う場合に優れた結晶粒微細
化効果が得られ、高強度とした鋼の靭延性の向上に著し
く寄与する。このような効果を得るために、それぞれT
iは0.02%以上、Nbは0.02%以上、Alは
0.005%以上を含有する必要がある。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】削除
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正内容】
【0022】Nbは、鋼中で炭窒化物を形成し、さらに
析出硬化に寄与してばねの耐へたり性を向上する。しか
し過剰に含有してもその効果は飽和し、むしろ鋼の熱間
加工性および冷間加工性を低下させるので、Nb含有率
の上限を0.050%とする。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正内容】
【0023】Tiは、Nbと同様に鋼中で炭窒化物を形
成し、オーステナイト結晶粒を微細化するとともに析出
硬化に寄与する。しかし過剰にTiを含有すると、鋼の
焼入れ加熱時に未溶解化合物として残留し、そのサイズ
が比較的大きいため、破壊の起点となって疲労強度の低
下をもたらすので、Ti含有率の上限を0.100%と
する。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正内容】
【0031】
【表1】

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、 C :0.38〜0.53%、 Si:1.4〜2.4%、 Mn:0.4〜1.4%、 P :0.015%以下、 S :0.010%以下、 Cu:0.05〜0.35%、 Ni:0.05〜0.40%、 Cr:0.05〜0.55% を含み、かつ、 1.2%≦C%+Mn%+Cr%≦2.0%、および 1.4%≦(Si%)/3+(Cr%)/2+Mn%≦
    2.1% の関係を満足し、残余、Feおよび不可避的不純物より
    なることを特徴とする冷間成形用ばね鋼。
  2. 【請求項2】 質量%で、 C :0.38〜0.53%、 Si:1.4〜2.4%、 Mn:0.4〜1.4%、 P :0.015%以下、 S :0.010%以下、 Cu:0.05〜0.35%、 Ni:0.05〜0.40%、 Cr:0.05〜0.55%、 B :0.0005〜0.0030%、 N :0.020%以下 を含み、かつ、 V :0.01〜0.20%、 Nb:0.020〜0.050% Ti:0.020〜0.100%、 Al:0.005〜0.040% のうちいずれか1種以上を含み、さらに 1.2%≦C%+Mn%+Cr%≦2.0%、および 1.4%≦(Si%)/3+(Cr%)/2+Mn%+3
    53×B%≦2.1% の関係を満足し、残余Feおよび不可避的不純物よりな
    ることを特徴とする冷間成形用ばね鋼。
  3. 【請求項3】 質量%で、 Mo:0.01〜0.30% を含むことを特徴とする請求項1または2記載の冷間成
    形用ばね鋼。
JP2002061805A 2002-03-07 2002-03-07 冷間成形用ばね鋼 Expired - Fee Related JP3918587B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002061805A JP3918587B2 (ja) 2002-03-07 2002-03-07 冷間成形用ばね鋼

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002061805A JP3918587B2 (ja) 2002-03-07 2002-03-07 冷間成形用ばね鋼

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2003253391A true JP2003253391A (ja) 2003-09-10
JP3918587B2 JP3918587B2 (ja) 2007-05-23

Family

ID=28670453

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002061805A Expired - Fee Related JP3918587B2 (ja) 2002-03-07 2002-03-07 冷間成形用ばね鋼

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3918587B2 (ja)

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2006022009A1 (ja) * 2004-08-26 2006-03-02 Daido Tokushuko Kabushiki Kaisha 高強度ばね用鋼、並びに高強度ばね及びその製造方法
WO2007099671A1 (ja) * 2006-02-28 2007-09-07 Kabushiki Kaisha Kobe Seiko Sho 伸線加工性に優れた線材およびその製造方法
WO2012063620A1 (ja) * 2010-11-11 2012-05-18 日本発條株式会社 高強度ばね用鋼、高強度ばねの製造方法及び高強度ばね
KR101289132B1 (ko) * 2009-12-28 2013-07-23 주식회사 포스코 피로수명이 우수한 고강도 고인성 스프링용 강선, 이를 이용한 스프링 및 이들의 제조방법
WO2013133070A1 (ja) * 2012-03-07 2013-09-12 株式会社神戸製鋼所 ばね加工性に優れた高強度ばね用鋼線材およびその製造方法、並びに高強度ばね
CN104114732A (zh) * 2012-02-14 2014-10-22 杰富意钢铁株式会社 弹簧钢
WO2014196308A1 (ja) * 2013-06-04 2014-12-11 中央発條株式会社 ばね用鋼、ばね及びばねの製造方法
US9005378B2 (en) 2007-09-10 2015-04-14 Kobe Steel, Ltd. Spring steel wire rod excellent in decarburization resistance and wire drawing workability and method for producing same
JP2015143391A (ja) * 2013-12-27 2015-08-06 株式会社神戸製鋼所 高強度ばね用圧延材及びこれを用いた高強度ばね用ワイヤ
CN114959486A (zh) * 2022-06-13 2022-08-30 杭州兴发弹簧有限公司 用于大型挖掘机上大线径热卷弹簧的42SiCrV6弹簧钢

Cited By (19)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2006022009A1 (ja) * 2004-08-26 2006-03-02 Daido Tokushuko Kabushiki Kaisha 高強度ばね用鋼、並びに高強度ばね及びその製造方法
EP1801253A1 (en) * 2004-08-26 2007-06-27 Daido Tokushuko Kabushiki Kaisha Steel for high strength spring, and high strength spring and method for manufacture thereof
EP1801253A4 (en) * 2004-08-26 2008-04-23 Daido Steel Co Ltd HIGH RESISTANCE SPRING STEEL, HIGH RESISTANCE SPRING, AND MANUFACTURING METHOD THEREOF
JPWO2006022009A1 (ja) * 2004-08-26 2008-05-08 大同特殊鋼株式会社 高強度ばね用鋼、並びに高強度ばね及びその製造方法
JP4588030B2 (ja) * 2004-08-26 2010-11-24 大同特殊鋼株式会社 高強度ばね用鋼、並びに高強度ばね及びその製造方法
WO2007099671A1 (ja) * 2006-02-28 2007-09-07 Kabushiki Kaisha Kobe Seiko Sho 伸線加工性に優れた線材およびその製造方法
US9267183B2 (en) 2006-02-28 2016-02-23 Kobe Steel, Ltd. Wire with excellent suitability for drawing and process for producing the same
US9005378B2 (en) 2007-09-10 2015-04-14 Kobe Steel, Ltd. Spring steel wire rod excellent in decarburization resistance and wire drawing workability and method for producing same
KR101289132B1 (ko) * 2009-12-28 2013-07-23 주식회사 포스코 피로수명이 우수한 고강도 고인성 스프링용 강선, 이를 이용한 스프링 및 이들의 제조방법
JP2012102378A (ja) * 2010-11-11 2012-05-31 Nhk Spring Co Ltd 高強度ばね用鋼、高強度ばねの製造方法及び高強度ばね
WO2012063620A1 (ja) * 2010-11-11 2012-05-18 日本発條株式会社 高強度ばね用鋼、高強度ばねの製造方法及び高強度ばね
US9404547B2 (en) 2010-11-11 2016-08-02 Nhk Spring Co., Ltd. Steel for high-strength spring, method for producing same, and high-strength spring
CN104114732A (zh) * 2012-02-14 2014-10-22 杰富意钢铁株式会社 弹簧钢
WO2013133070A1 (ja) * 2012-03-07 2013-09-12 株式会社神戸製鋼所 ばね加工性に優れた高強度ばね用鋼線材およびその製造方法、並びに高強度ばね
JP2013185203A (ja) * 2012-03-07 2013-09-19 Kobe Steel Ltd ばね加工性に優れた高強度ばね用鋼線材およびその製造方法、並びに高強度ばね
WO2014196308A1 (ja) * 2013-06-04 2014-12-11 中央発條株式会社 ばね用鋼、ばね及びばねの製造方法
JPWO2014196308A1 (ja) * 2013-06-04 2017-02-23 中央発條株式会社 ばね用鋼、ばね及びばねの製造方法
JP2015143391A (ja) * 2013-12-27 2015-08-06 株式会社神戸製鋼所 高強度ばね用圧延材及びこれを用いた高強度ばね用ワイヤ
CN114959486A (zh) * 2022-06-13 2022-08-30 杭州兴发弹簧有限公司 用于大型挖掘机上大线径热卷弹簧的42SiCrV6弹簧钢

Also Published As

Publication number Publication date
JP3918587B2 (ja) 2007-05-23

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5167616B2 (ja) 耐遅れ破壊特性に優れた金属ボルト
WO2007114491A1 (ja) 高強度ばね用熱処理鋼
JP2003105485A (ja) 耐水素疲労破壊特性に優れた高強度ばね用鋼およびその製造方法
WO2008102573A1 (ja) 高強度ばね用鋼線及び高強度ばね並びにそれらの製造方法
JPH05195153A (ja) 高強度ばね用鋼
JP2003129190A (ja) マルテンサイト系ステンレス鋼およびその製造方法
WO1999005333A1 (fr) Acier cemente particulierement capable d'empecher la recristallisation secondaire des particules pendant la cementation, procede de fabrication, et matiere brute formee pour pieces cementees
WO2011078165A1 (ja) 高強度ばね用鋼
JP3562192B2 (ja) 高周波焼入用部品およびその製造方法
JP2005220392A (ja) ばね用鋼線
JP3918587B2 (ja) 冷間成形用ばね鋼
JP3606024B2 (ja) 高周波焼入部品およびその製造方法
JP2003105496A (ja) 低脱炭及び耐遅れ破壊性に優れたばね鋼
JP3896902B2 (ja) 腐食疲労強度に優れた高強度ばね鋼
JPH06240408A (ja) ばね用鋼線及びその製造方法
JPH09324219A (ja) 耐水素脆性に優れた高強度ばねの製造方法
JP2004027334A (ja) 高周波焼もどし用鋼およびその製造方法
JP4867638B2 (ja) 耐遅れ破壊特性および耐腐食性に優れた高強度ボルト
JP3550886B2 (ja) 被削性および疲労強度に優れた高周波焼入用の歯車用鋼材の製造方法
JP5214292B2 (ja) 耐水素脆性、腐食疲労強度の優れたばね用鋼及びそれを用いた高強度ばね部品
WO1998054372A1 (fr) Acier non trempe pour structure mecanique
JP4044460B2 (ja) 冷間成形ばね用鋼
US20060057419A1 (en) High-strength steel product excelling in fatigue strength and process for producing the same
JP3975110B2 (ja) 鋼線およびその製造方法ならびにばね
WO2004055226A1 (ja) ばね用鋼線

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20050131

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20061013

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20061031

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20061215

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20070123

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20070205

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 3918587

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110223

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110223

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120223

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130223

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130223

Year of fee payment: 6

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees