JP2000223269A - 有機薄膜形成装置 - Google Patents

有機薄膜形成装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】有機EL表示素子を連続生産でき、熱的に変性
しやすい有機材料を用いて再現性のよい有機薄膜を安定
して連続的に生産し、量産に適した有機薄膜形成装置を
提供する。 【解決手段】有機薄膜形成装置は、複数の有機材料を個
別に充填する複数のルツボ12を用意し、ルツボのいず
れかを選択し、真空室11内で有機材料を蒸発源21の
熱で蒸発させ、基板20に蒸着して膜を形成し膜を積層
して有機EL表示素子を作る。ルツボと蒸発源は分離し
て形成されかつルツボは蒸発源に対して着脱自在であ
り、かつ蒸発源に対してルツボを取り付け、取り外しす
る搬送機構15を備え、成膜開始前に、搬送機構によっ
て、成膜しようとする膜の厚みに対応する所定量の有機
材料34が充填された状態のルツボを蒸発源に取り付け
るように構成される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は有機薄膜形成装置に
関し、特に、大型フラット表示パネルとして利用可能な
有機EL表示素子の連続生産に適した有機薄膜形成装置
に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のフラット表示パネルには主に液晶
表示素子が使用されていた。しかし、液晶表示装置につ
いては、自発光素子でないこと、大型化が難しいことな
どからその他の形式の表示パネルの開発が急がれてい
る。一方、有機EL表示素子は、有機高分子材料の薄膜
化技術と有機・無機材料のハイブリッド化技術からな
り、新しい原理に基づく表示素子であり、自発光素子で
ある。視野角が広く、また構造が簡単であるため、将来
低コストでかつ大型化可能な表示パネルとして期待され
ている。
【0003】有機EL表示素子は実際上輝度や発光色の
制御の観点から複雑な積層構造を有している。有機EL
表示素子の一例を断面構造で表された図4に示す。陽極
としてのガラス基板71の上に酸化インジウム等の透明
導電膜72を形成し、さらに透明導電膜72の上に、正
孔輸送層73、発光層74、カソード電極75が順次に
成膜され、最終的に全体に耐環境性を高めるための封止
処理の保護膜76が施されている。正孔輸送層73には
トリアリールアミン誘導体、発光層74にはキノリノー
ル錯体などの有機材料が使用される。また発光層74に
も発光効率を向上させるための有機材料(例えば緑色の
発光ではクマリン誘導体)が使用される。上記の各層は
それぞれ厚さが500オングストローム程度の薄い層と
して形成される。従来、有機EL表示素子の各層を作製
は、真空中で有機材料や金属材料を蒸発することにより
行われていた。薄膜の作製は近年では連続生産が可能で
あるという観点からカソードスパッタリング技術が主流
であるが、有機EL表示素子の有機薄膜の作製では、有
機材料の特性上、蒸気圧が高く分解、変性しやすいこ
と、イオンや電子等の荷電粒子の衝撃に極めて弱いこ
と、粉体で昇華蒸発する材料が多いこと、蒸着マスクに
よるパターニングが必要であるため粒子の直線性が要求
されること、など理由に基づいて、スパッタリング技術
は使用できず、蒸着技術が利用されている。このよう
に、有機EL表示素子の有機材料の各層の成膜は蒸着装
置によって行われており、この蒸着装置には、研究用装
置として、現在、一般的に、抵抗加熱方式の蒸着ボート
蒸発源が使用されている。
【0004】抵抗加熱方式の蒸発装置の一例を図5に示
す。この蒸着装置は研究用のものである。蒸着装置は、
排気ポート81を介して図示しない真空ポンプで高真空
に排気された真空室82の中で、その下側に蒸着ボート
83が配置され、蒸着ボート83の中に粉末状の蒸着材
料84がセットされている。基板ホルダ85は真空室8
2の上方に配置され、その下面に成膜が行われるガラス
基板86が固定されている。ガラス基板86と蒸着ボー
ト83の間には、成膜される膜の厚みを制御するシャッ
タ87と膜の厚みをモニタする膜厚計88が配置され
る。領域89は成膜領域である。蒸着材料84が充填さ
れた蒸着ボート83は数百℃程度に加熱され、このため
蒸着材料が蒸発して蒸着ボート83に形成された孔から
外部に出て上昇し、ガラス基板86の下面(透明導電
膜)の上に付着し、成膜が行われる。蒸着ボートは積層
される有機材料膜の種類の数だけ用意される。
【0005】また分子線蒸着装置に一般的に使用される
蒸発源としてKセル(クヌンセンセル)と呼ばれるルツ
ボが使用されている。Kセルの構造の一例を図6に示
す。加熱コイル91の内側に例えば窒化ボロン製のルツ
ボ92が配置され、ルツボ92の内部に適量の蒸発材料
93が収容される。ルツボ92の外側にはその温度を正
確に管理するためのタンタルなどで作られた3層構造の
熱遮蔽板94が設けられ、ルツボ92の下側には熱電対
95が設けられている。加熱コイル91に電流を流す
と、ルツボ92が加熱され、蒸発材料93が蒸発する。
蒸発材料の蒸発量は、図示しない蒸発速度計を監視しな
がら加熱コイル91に流す電流を調整することにより調
整される。Kセルは、蒸発温度が1000℃以上の高温
である場合には温度制御がしやすい。
【0006】さらに実用装置に関する従来の技術文献と
して特開平10−195638号公報を挙げることがで
きる。この文献には主材料に対する添加材料の蒸発速度
の正確な制御を可能にする有機材料用蒸発源と、これを
利用して構成される有機薄膜形成装置が開示されてい
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】有機EL表示素子を製
作するための有機薄膜形成装置は、現状、その特性上、
連続生産に適したスパッタリング技術を利用できず、蒸
発技術を適用しなければならない。前述の抵抗加熱方式
の蒸発装置によれば、蒸着ボート83の蒸発材料がなく
なったときには真空室82の内部を大気に戻して蒸発材
料を充填することが必要となり、研究レベルでは使える
が、連続生産が要求される実用的な製造装置として使う
ことは困難である。すなわち、連続生産を行える蒸発装
置としては蒸発材料の連続供給を行うことが構造上極め
て難しい。
【0008】前述のKセルは精度よく温度管理できるル
ツボであり、上記の抵抗加熱方式の蒸発装置において蒸
発材料の交換回数を減らすという前提で当該Kセルを使
用すれば、連続生産の可能性も考えられる。しかしなが
ら、蒸発材料の交換回数を減らす場合には、Kセルで蒸
発材料の充填量が多くなることから、ルツボの熱容量が
大きくなり、温度制御が難しくなるという問題が起き
る。温度制御が難しくなると、膜の厚みを正確に制御す
ることができず、さらにガラス基板上に蒸着された有機
EL表示素子に熱的な影響が与えられ、望ましい精度の
有機EL表示素子を製作することが困難となる。Kセル
自体は精密に正確な温度制御を行える蒸発源であるの
で、蒸発材料の充填量を適切に設定し、かつ蒸発材料の
供給を連続的に行うことができるのであれば、連続生産
が蒸発装置においても可能になる。しかし、現在のとこ
ろ、蒸発材料を連続的に供給できる手段が開発されてい
ないので、連続生産を行うことはできない。
【0009】前述の特許公開公報に開示された有機材料
用蒸発源は、添加材料を収容し蒸発させる蒸発源の構造
を、容器本体である第1のルツボと孔部を有した第2の
ルツボとから構成し、添加材料を充填した第1のルツボ
に第2のルツボをはめ込み、添加材料の蒸気を、孔部を
通して上昇させることにより添加材料の蒸発を制御する
ように構成している。これによれば、主材料に対する添
加材料の蒸発速度を正確に制御することができるかもし
れないが、上記で指摘した連続生産の問題を解決するこ
とは困難である。
【0010】本発明の目的は、上記の課題を解決するこ
とにあり、有機EL表示素子を連続生産できる製造装置
であり、熱的に変性しやすい有機材料を用いて再現性の
よい有機薄膜を安定して連続的に生産し、量産に適した
有機薄膜形成装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段および作用】本発明に係る
有機薄膜形成装置は、上記目的を達成するために次のよ
うに構成される。本発明に係る有機薄膜形成装置は、好
ましくは、有機EL表示素子製造装置の一部を構成する
ものであり、有機材料の膜を形成するときに、蒸着作用
に基づいて基板の上に有機材料蒸着膜を形成するための
装置である。有機薄膜形成装置は、前提として、種類の
異なる複数の有機材料の各々を個別に充填する複数の蒸
発容器(ルツボ)を用意しており、複数の蒸発容器のい
ずれかを選択し、真空室内で、その中に充填された有機
材料を蒸発源の熱で蒸発させ、上方に配置された基板に
蒸着して膜を形成し、各種の前記有機材料を用いて基板
に複数の膜を積層して有機EL表示素子を形成する。本
発明による有機薄膜形成装置は、その特徴として、蒸発
容器と蒸発源(加熱部)が分離して形成されかつ蒸発容
器は蒸発源に対して着脱自在であり、かつ蒸発源に対し
て蒸発容器を取り付け、取り外しする蒸発容器搬送機を
備え、成膜開始前に、蒸発容器搬送機によって、成膜し
ようとする膜の厚みに対応する所定量の有機材料が充填
された状態の蒸発容器を蒸発源に取り付けるように構成
される。上記の構成によれば、蒸発源の本体に対してル
ツボを着脱自在にし、かつ当該ルツボに対して蒸着によ
る成膜を行う前(大気中あるいは減圧下)の段階で1回
の成膜工程に必要な量の有機材料が正確に秤量・充填さ
れ用意される。成膜工程では、用意されたルツボを順次
に成膜室内の蒸発源にセットしながら蒸着による成膜を
行い、これによって有機EL表示素子の連続的な生産が
可能になる。上記の構成において、さらに、複数の蒸発
容器が配置された容器収容室と、蒸発源が配置された成
膜室が設けられ、容器収容室と成膜室の間にゲートバル
ブが設けられる。蒸着による成膜が行われる成膜室と、
蒸発源から取り外されかつ必要な少量の有機材料が充填
された複数のルツボが用意される容器収容室は、ゲート
バルブで隔離され、各々独自に所定の真空状態に保持さ
れる。上記の構成において、さらに、上記蒸発容器搬送
機は、蒸発容器をつかむ把持部を備え、この把持部で蒸
発容器をつかみ、ゲートバルブを設けた開口部を介して
容器収容室と成膜室の間で蒸発容器を搬送することを特
徴とする。蒸発容器搬送機は、搬送ロボットとして構成
され、蒸発源に対して着脱自在に構成されたルツボを、
連続生産を可能にすべく、搬送する機能を有している。
上記の構成において、さらに、複数の蒸発容器の各々に
は、材料供給室で、1回の成膜工程に必要な量の有機材
料が充填されるように構成される。比較的に少量(およ
そ1g以下の程度)にすることによって、ルツボを小型
化することが可能となり、前述の従来技術であるKセル
で問題となるルツボの熱容量も小さくできる。また、成
膜工程中においても、大気中で有機材料の供給・充填が
簡単に行えるため、容易に連続生産することが可能とな
る。また本発明に係る有機薄膜形成装置は、前述の第1
の基本構成において、容器収容室を特別に設けることな
く、成膜室だけとし、蒸発容器と蒸発源と蒸発容器搬送
機を同じ成膜室に配置し、複数の蒸発容器の各々に、1
回の成膜工程に必要な量の有機材料を充填するように構
成することもできる。この構成によれば、全体的な構成
が簡易化される。さらに、上記の各構成において、複数
の蒸発容器に1回の成膜に必要な量の有機材料を充填す
る材料供給機構を付設するように構成することも好まし
い。連続生産を可能にするためには自動的に有機材料を
供給しルツボに充填することが可能な材料供給装置を装
備することが必要である。
【0012】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の好適な実施形態
を添付図面に基づいて説明する。
【0013】図1〜図3は本発明に係る有機薄膜形成装
置の代表的な実施形態を示す。この有機薄膜形成装置は
有機EL表示素子製造装置の一部として構成される。こ
の有機薄膜形成装置は、例えば図4に示した2層の有機
材料の蒸着層および金属材料の蒸着層を含んで形成され
る有機EL表示素子の製造において、所定の厚みを有す
る有機材料の各蒸着層の膜を再現性よく正確に形成して
かつ連続的に生産する蒸着装置である。図1は有機薄膜
形成装置のシステム全体の構成を示しており、成膜装置
を構成する各部分、制御部(コントローラ)、給電部
(電源)、制御部と装置の各部を接続する複数の信号線
(破線で示す)、給電部と蒸発源を接続する給電線(一
点鎖線で示す)などが示されている。本実施形態による
有機薄膜形成装置は、有機材料の蒸着作用により成膜が
行われる真空室11と、複数の蒸発容器(または蒸発ボ
ート)12、すなわち複数のルツボ12が用意され配置
される容器収容室(予備室)13とを備えている。真空
室11と容器収容室13は隣接して設けられており、そ
の間にはゲートバルブ14が設けられる。ゲートバルブ
14は通常閉じられて真空室11と容器収容室13を隔
離する。またゲートバルブ14を開くことによって、真
空室11と容器収容室13との間で両者を通じる開口部
が形成され、複数のルツボ12のいずれかを移動させる
ことが可能となる。ルツボ12の移動には、容器収容室
13の内部に設けられた搬送機構15が使用される。真
空室11と容器収容室13の各々には真空ポンプ16,
17が付設されており、これらの真空ポンプは独立に動
作し、これらの真空ポンプで各室は独立に排気され、そ
れぞれ別個の真空状態になるように減圧されている。
【0014】容器収容室13の中に配置されるルツボ1
2の数は、通常、例えば成膜しようとする有機EL表示
素子に含まれる各種の有機材料による複数の層の数に対
応している。図示例では、3つのルツボ12が示されて
いる。3つのルツボ12は例えば回転可能な円盤状のパ
レット18に配置されている。パレット18にはルツボ
12を収容するための複数の収容穴(ルツボ立て)が形
成されており、ルツボ12はその収容穴の中に出し入れ
自在にセットされている。各収容穴には、その位置に対
応して固有の番号が割り当てられている。この固有の番
号は、各ルツボに収容された材料に関して蒸着による成
膜を行うとき、成膜工程を管理するコントローラ用の管
理データとして用いられる。パレット18には、有機材
料を精密に秤量し充填し終えたルツボ12がセットされ
る。成膜を開始する前の段階で、複数のルツボ12の各
々には、前述した正孔輸送層や発光層などの有機材料蒸
着層を順次に成膜するための有機材料が1回の成膜工程
において必要でかつ十分な量にて厳密に充填されてい
る。従って、各ルツボ12には、従来のルツボの場合と
比較して相対的に少量(およそ1g以下の程度)の有機
材料が充填されており、また少量の蒸着材料を充填でき
ればよいことから、ルツボ12自体も、従来のルツボに
比較して小型の形態を有している。なおルツボ12は例
えば石英で作られている。
【0015】さらに図1に示すごとく容器収容室13の
右隣には材料供給室41が設けられ、容器収容室13と材
料供給室41の間には開閉自在なゲートバルブ19が設
けられている。材料供給室41には、材料を供給するた
めのノズル42aを備えた材料自動供給機構42が備え
られている。容器収容室13内の複数のルツボ12の各
々に必要な量の有機材料を充填するときにゲートバルブ
19が開かれる。
【0016】真空室11は蒸着作用に基づく成膜が行わ
れる部分であり、上方に成膜が行われるガラス基板20
が配置され、下方に複数の蒸発源21が設けられてい
る。ガラス基板20の下面に有機材料が蒸着される。図
1で22はガラス基板20を固定するホルダである。蒸
発源21は、全体の基本構成は図6で説明した従来の構
成に類似しているが、次のような特徴点を有する。図3
に蒸発源21の詳細な構造を示す。蒸発源21は、加熱
コイルを利用して成る筒型の加熱部23と、加熱部23
を覆う複数の熱遮蔽板24a〜24cからなる熱遮蔽部
24を備える。この蒸発源21では、加熱部23に対し
てルツボ12が分離して形成されており、ルツボ12は
加熱部23に対して着脱自在に設けられる点に特徴があ
り、この点が従来の蒸発源の構成との大きな相違点であ
る。従って加熱部23は、ルツボ12を上側の開口部2
3aから出し入れできる容器のごとき形態を有してい
る。さらに加熱部23の下部には、上下動自在な支持部
材25が設けられている。加熱部23の内部に入れられ
たルツボ12は、その下部を支持部材25によって支持
され、さらにこの支持部材25は駆動装置26(図1に
示す)によって矢印Aに示すごとく上下に動かされる。
支持部材25の上昇動作によってルツボ12は突き出さ
れ、ルツボ12の取り出しを容易に行うことができる。
図1と図2に示された例では、説明の便宜上、蒸発源2
1にセットされたルツボ12は上部が出た状態に示され
ているが、成膜の際には、支持部材25がさらに下降
し、ルツボ12はその上部の縁部(鍔の部分)12aを
残して、その下側全体が加熱部23の中に入る。そし
て、蒸発源21から取り出すときには、下側の支持部材
25の上昇動作でルツボ12を突き上げ、搬送機構15
によってルツボ12をつかみやすいようにする。なおル
ツボ12のすべてを加熱部23の中にすっぽりと入れる
ように構成することも可能である。駆動装置26の支持
部材25を駆動させるための動作は、図1に示すごとく
コンピュータで構成されるコントローラ27によって制
御される。コントローラ27にはその記憶部に成膜処理
を行うための制御プログラムが内蔵され、当該制御プロ
グラムに従って蒸発源21の支持部材25を動作させ、
かつ搬送機構15を関連させて動作させることにより、
ルツボ12を搬送し、取りつけ・取り外しを行う。また
コントローラ27は、蒸発を行う各有機材料のプロセス
条件(蒸着材料、秤量重量、設定温度等)を、各ルツボ
ごと、前述した固有のルツボ番号別に設定・管理する。
【0017】真空室11において蒸発源21は例えば5
個以上設けられる。蒸発源を複数設けることによって異
なった種類の有機材料を同時に蒸発させることができ
る。複数の蒸発源21の各々で有機材料を蒸発させると
きには蒸発源21は加熱部23に電力が投入されて加熱
されるが、各蒸発源21の加熱のための条件(設定温
度)はコントローラ27によって独立に制御される。ま
た各蒸発源には上方にシャッタ28が設けられており、
これが開くことによって蒸発した材料を上方に昇らせる
ことが可能となる。図1においてシャッタ28を開閉さ
せる機構の図示は省略されている。
【0018】真空室11において、ガラス基板20と、
蒸発源21のシャッタ28との間の空間に成膜領域29
が形成される。ガラス基板20を取りつけるためのホル
ダ22は真空室11の天井部に設けられ、真空室11の
外に設けられた回転駆動装置30によって回転するよう
に設けられている。ガラス基板20を回転させるのは基
板面に均一に蒸着が行われるようにするためである。回
転駆動装置30の動作はコントローラ27によって制御
される。また従来では、成膜領域29に対応して膜厚計
が取りつけられていたが、本実施形態による有機材料の
蒸着装置の場合は、毎回の蒸着成膜で使用する分のみの
少量の材料をルツボ12に充填し、ルツボ12における
充填量を厳密にかつ正確に管理することによって有機材
料の蒸着層の膜厚を決定するようしているので、膜厚計
を付設して成膜された膜厚をモニタする必要はない。し
かしながら、さらに図示のごとく膜厚計31を付設して
フィードバック制御を実現し、本発明の特徴的構成と組
み合わせることにより蒸着層の膜厚管理を向上すること
も可能である。この場合、膜厚計31で検出された情報
はコントローラ27に送られる。
【0019】また上記支持部材25には熱電対32が内
蔵される。熱電対32はルツボ12の温度を測定するた
めのものであり、測定で得られたルツボ12の温度情報
はコントローラ27に与えられる。加熱部23の加熱コ
イルに対しては、給電部33から電流が供給され、供給
される電流量に応じてルツボ12の加熱温度が決定され
る。ルツボ12の加熱温度は、ルツボ12に充填された
材料34の蒸発量を決定する。そこでコントローラ27
は、熱電対32から与えられるルツボ12の温度情報に
基づいて給電部33から供給される電流量を制御し、蒸
着に適した最適な電流量を設定する。各ルツボ12の材
料蒸発の際に、セットされた蒸発源21の加熱部23に
供給される電力は、コントローラ27によって、材料ご
とに、固有のルツボ番号で管理されながら個別に制御さ
れる。
【0020】容器収容室13内に設けられた搬送機構1
5は、図2に示すごとく、ルツボ12を把持する開閉自
在なハンド35と、矢印36のごとく回転自在でかつ矢
印37のごとく伸縮自在なアーム38と、図1の矢印B
に示すごとく上下動する支柱39と、ハンド35とアー
ム38と支柱39にかかる動作を行わせる駆動装置40
とから構成される搬送ロボット機構である。ハンド35
はアーム38の先部に設けられ、アーム38は支柱36
の先部に固定される。支柱36が回転することによりア
ーム38は回転自在となる。駆動装置40の動作は、コ
ントローラ27の記憶部に用意された成膜のための制御
プログラムに含まれる搬送プログラムに従って制御され
る。例えば成膜が行われるとき、搬送機構15の動作に
よって、容器収容室13のパレット18にセットされた
複数のルツボ12のうちのいずれかが選択され、ハンド
32で把持され、ゲートバルブ14が開いた状態では、
図2中破線で示されるごとく真空室11の内部に運ば
れ、蒸発源21にセットされる。この場合において、成
膜が開始される前の段階で、容器収容室13において、
蒸発源21に取りつけられるルツボ12には、その後に
行われる成膜工程にて1回の成膜で形成される有機材料
蒸着層の所定の厚みの分のみの比較的に少量の材料が予
め充填されるようにして用意されている。
【0021】前述の構成では、搬送機構15は容器収容
室13に設けられたが、搬送機構15を真空室11の内
部、すなわち成膜室内に設けることも可能である。この
場合には、真空室11側から容器収容室13へルツボ1
2を取りにいく構成となる。また前述の構成において、
真空室11と別個に容器収容室13を設ける代わりに、
準備段階の複数のルツボ12をパレットを利用して真空
室11内に設けるように構成することも可能である。こ
の場合には、ルツボの搬送の際にゲートバルブ14を開
閉する必要がなくなる。
【0022】次に、容器収容室13のパレット18にセ
ットされた各ルツボ12に有機材料の材料を充填する構
成について説明する。各ルツボ12への材料の充填は、
成膜工程が開始される前の段階、または成膜工程中の段
階で行われる。材料を充填するときには、ゲートバルブ
14が閉じた状態にてゲートバルブ19が開かれる。従
って真空室11内の真空状態は保持されている。ゲート
バルブ19が開かれると、容器収容室13と材料供給室
41が通じた状態になる。このときに、例えば搬送機構
15で各ルツボ12をを把持し、材料自動供給機構42
のノズル42aの下側に運び、ノズル42aからルツボ
12へ、ルツボに応じて選択された所定の材料が供給・
充填される。材料自動供給機構42の内部には、各有機
材料ごとに材料タンクが設けられており、これらの材料
タンクから必要な材料が取り出され、ノズル42aを介
して各ルツボ12へ供給される。材料自動供給機構42
の動作はコントローラ27によって制御される。材料自
動供給機構42から各ルツボ12に供給される材料の充
填量は、その後、真空室11で実施される蒸着による1
回の成膜工程で作製される膜厚に必要な分だけであり、
比較的に少量(およそ1g以下の程度)である。
【0023】上記の構成によれば、例えば大気圧状態あ
るいは減圧状態の材料供給室41で比較的に少量の材料
が対応する各ルツボ12に正確に秤量・充填される。各
ルツボ12への材料の充填が完了すると、その後ゲート
バルブ19が閉じられる。ゲートバルブ19が閉じられ
ると、真空ポンプ17が動作し、容器収容室13内が減
圧され、所定の真空状態にされ、次の成膜工程に移行す
る。成膜工程ではゲートバルブ14が開かれ、パレット
18に用意された複数のルツボ12がそれぞれ搬送機構
15によって真空室11内の蒸発源21に搬送され、セ
ットされ、成膜が開始される。以上の材料供給の構成に
よれば、成膜工程が開始される前の段階で、蒸着作用に
基づく成膜が行われる真空室11に搬入される複数のル
ツボ12に対して、成膜工程で必要とされる少量の有機
材料を正確に秤量することができ、成膜工程中には、成
膜室の真空状態を保ったまま成膜に必要とされる材料を
収容するルツボを順次に交換して、連続的に有機材料を
供給することができるので、蒸着による有機EL表示素
子の作製で連続生産を行うことができる。
【0024】またルツボ12は、1回の蒸着成膜に必要
な量を充填できる大きさの容器でよいため、例えば内径
が10mm程度、高さが30mm程度の小型のサイズで
形成することができる。このため、ルツボの熱容量が小
さくなって、しかも蒸発源21の構造、主に加熱部23
の小型化も可能であるため、全体的な熱輻射が小さくな
り、基板のダメージが低減される。また前述のフィード
バック制御が効果的に機能できるため、温度制御性が向
上するという利点を有する。さらに蒸着による成膜で必
要とされる材料の量を成膜される蒸着層の厚みとの関係
で正確に管理できるようにしたため、熱的に変成しやす
い有機材料の制御を可能にし、有機材料の管理を有効に
行うことができる。
【0025】前述した実施形態は次のように変形させる
ことができる。例えば、前述ではルツボのみを搬送する
ようにしたが、ルツボに加熱部を一体化させて搬送する
ように構成することもできる。この場合には、ルツボの
温度条件が常に一定に保持されるため、ルツボの間のば
らつきを減少させることができる。
【0026】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明に
よれば、蒸発による成膜で有機EL表示素子を作製する
装置において、蒸発源の加熱部と蒸発容器を分離して構
成し、かつ蒸発源の本体に対してルツボを着脱自在の構
成とし、成膜工程を行う前に1回の成膜工程において必
要とされる有機材料を各ルツボに必要な少量だけ充填し
て準備するようにしたため、連続的な生産を行うことが
可能になった。蒸発源に対して着脱自在なかつ小型のル
ツボと、このルツボを搬送する搬送機構と、ルツボに対
して正確に秤量された最適な量の材料を大気中あるいは
減圧下で自動的に充填する自動材料供給機構を設けるよ
うにしたため、実用的な連続生産を行える有機薄膜形成
装置を実現することができる。連続したまた各ルツボに
は1回の成膜工程に足りる有機材料を充填すればよいの
で、小型のルツボを使用することができ、ルツボの熱容
量が小さくなり、ルツボに充填された有機材料の温度制
御性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る有機薄膜形成装置の代表的実施形
態を示す全体構成図である。
【図2】図1に示した有機薄膜形成装置の要部の平面図
である。
【図3】蒸発源の内部構造を示した縦断面図である。
【図4】有機EL表示素子の構造の一例を示す縦断面図
である。
【図5】従来の有機EL表示素子製造装置に含まれる有
機薄膜形成装置の一例を示す図である。
【図6】従来の蒸発源の構造の一例を示す縦断面図であ
る。
【符号の説明】
11 真空室 12 ルツボ(蒸発容器) 13 容器収容室 15 搬送機構 18 パレット 21 蒸発源 23 ホルダ 34 有機材料
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山崎 猛 東京都府中市四谷5丁目8番1号 アネル バ株式会社内 (72)発明者 荻野 三善 東京都府中市四谷5丁目8番1号 アネル バ株式会社内 Fターム(参考) 3K007 AB18 DA01 DB03 EB00 FA01 4K029 AA09 BA62 BB02 BC07 BD00 DB06 DB10 DB14 DB18

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 種類の異なる複数の有機材料の各々を個
    別に充填する複数の蒸発容器を用意し、前記複数の蒸発
    容器のいずれかを選択し、真空室内で、その中に充填さ
    れた有機材料を蒸発源の熱で蒸発させ、上方に配置され
    た基板に蒸着して膜を形成し、各種の前記有機材料を用
    いて前記基板に複数の膜を積層して有機EL表示素子を
    形成する有機薄膜形成装置において、 前記蒸発容器と前記蒸発源は分離して形成されかつ前記
    蒸発容器は前記蒸発源に対して着脱自在であり、かつ前
    記蒸発源に対して前記蒸発容器を取り付け、取り外しす
    る蒸発容器搬送機を備え、成膜開始前に、前記蒸発容器
    搬送機によって、所定量の有機材料が充填された状態の
    蒸発容器を前記蒸発源に取り付けるようにしたことを特
    徴とする有機薄膜形成装置。
  2. 【請求項2】 複数の前記蒸発容器が配置された容器収
    容室と、前記蒸発源が配置された成膜室が設けられ、前
    記容器収容室と前記成膜室の間にゲートバルブが設けら
    れることを特徴とする請求項1記載の有機薄膜形成装
    置。
  3. 【請求項3】 前記蒸発容器搬送機は、前記蒸発容器を
    つかむ把持部を備え、この把持部で前記蒸発容器をつか
    み、ゲートバルブを設けた開口部を介して前記容器収容
    室と前記成膜室の間で前記蒸発容器を搬送することを特
    徴とする請求項2記載の有機薄膜形成装置。
  4. 【請求項4】 複数の前記蒸発容器の各々には、前記容
    器収容室で、1回の成膜工程に必要な量の前記有機材料
    が充填されるように構成されることを請求項1〜3のい
    ずれか1項に記載の特徴とする有機薄膜形成装置。
  5. 【請求項5】 前記蒸発容器と前記蒸発源と前記蒸発容
    器搬送機は成膜室に配置され、複数の前記蒸発容器の各
    々には、1回の成膜工程に必要な量の有機材料が充填さ
    れるように構成されることを請求項1記載の特徴とする
    有機薄膜形成装置。
  6. 【請求項6】 複数の前記蒸発容器に1回の成膜に必要
    な量の有機材料を充填する材料供給機構が設けられるこ
    とを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有
    機薄膜形成装置。
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