柿とは、カキノキ科カキノキ属の落葉樹「カキノキ」に実る果実である。
概要
ニコニコ大百科:植物 カキノキ |
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分類? | ツツジ目カキノキ科カキノキ属 | |
学名? | Diospyros kaki | |
カキノキ科 Ebenaceae? | ||
カキノキ |
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このテンプレートについて |
その実は秋に熟し、スーパーなどではサンマなどと並び、秋の味覚のひとつとして庶民に親しまれている。
熟れてすぐ甘くなる甘柿と、相当熟れないと渋くて食べられない渋柿に大きく分けられる。柿の実には柿渋と呼ばれるタンニン(渋み成分)の混合物が含まれており、渋柿には水溶性のタンニンが多いため、唾液に溶けて渋く感じるのだ。人間はこれをアルコールやお湯に浸けたり、干し柿にすることによって、脂溶性のタンニンに変化させて食べられるようにしてきたのである。市場に流通する柿にも渋柿の品種があり、このような渋を抜く処理を施してから出荷されている。渋柿って食えるの?って単純な疑問を抱く人も少なくないが、刀根早生や平核無(地域によって庄内柿、おけさ柿、たねなし柿などと呼ばれる)などは渋柿の代表的な品種である。また、地元では渋柿のまま購入して自宅で脱渋(割と簡単にできる)を行ってから食べる家庭も少なくない。
日本原産という説もあるが、近年は中国原産とする説が有力なようだ。英語ではpersimmon(パーシモン)というが、kakiで通る国もある。厳密には、高級ゴルフクラブの素材として知られていたアメリカガキと比較するためにpersimmon kakiやJapanese persimmonと呼ばれていたりするそうだ。
日本では古くから栽培されており、平安時代中期の「延喜式」や、10世紀初頭の「和名類聚抄」にも記述があるなど、特に歴史のある果樹として知られる。正岡子規の名句、柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺でも知られるように、柿は日本の風物に調和している。もっとも、栽培が本格化したのは明治以降であり、20世紀の初め頃は日本における果物生産量のトップに君臨していた。
そのため、その土地固有の品種が多いのが特徴であり、中には全国区となっているのもある。特に有名なのは甘柿の王様、「富有柿」であり、これは岐阜県瑞穂市(旧巣南町)発祥で、現在は岐阜県のほか、和歌山県、奈良県、福岡県、愛媛県などに全国に産地が広まった。また「刀根早生」は奈良県天理市、「平核無」(ひらたねなし)柿は新潟県発祥である。
柿の産地は和歌山県、奈良県、福岡県の順に多く、愛知県、岐阜県、新潟県、愛媛県、山形県、福島県、熊本県などが続く。そして、北海道と沖縄県を除く45都府県で生産されている。樹木としては、一応、乾燥さえ気を付けてやればどこでも育つが、果樹として美味しく育てるためには一定の条件があり、朝晩の温度差が大きく、そして根を深く張るため粘土質で、乾燥に弱いために(大切なことなので2度ry)保水性の良い緩斜面の土壌が適地である。寒冷地では柿は育たないことはないが、まるで甘くならない(夏場で平均気温25度以上必要といわれる)ので甘柿の栽培北限はみかんより低い(別に小鳥ホイホイにする庭木として植えるだけなら問題ない)。一方、渋柿はある程度寒冷地でも育つので、山形、宮城あたりまで産地がある。同じ柿産地でも、甘柿と渋柿の産地が偏在するのはこういう理由があるわけである。
紀ノ川(吉野川)流域一帯が日本一の柿産地となっており、高野山を取り囲むように和歌山県北東部と、奈良県中西部に産地が集中する。和歌山県は生産量日本一を誇る柿産地である。また、富有柿などの甘柿より渋柿の比率が高いのも特徴であり、刀根早生、平核無が主流。とりわけ、かつらぎ町四郷は串柿の産地として名高く、この串柿生産が多くを占めている(この串柿を差し引いたら奈良の方が上なのは機密事項)。産地では橋本市、かつらぎ町、九度山町、紀の川市、紀美野町(旧美里町)など県北東部を代表する果樹となっている。九度山町、紀美野町では温暖な気候を利用した富有柿が主流で、九度山産の富有柿は特に評価が高い。紀の川市、かつらぎ町では刀根早生や中谷早生など、かつらぎ町、橋本市では平核無が中心である。紀の川市の紀の川柿(平核無を特別な方法で育てるもので、極上品は黒あまと呼ばれる芸術品)も名高い。農業に乏しい奈良県において柿は県を代表する特産品で、ハウス柿生産量は日本一。産地としても和歌山より知名度が高い。奈良県五條市は自治体単位としては日本一の柿産地(日本一になるために西吉野村と合併したとも)で、とりわけ西吉野産の柿が市場評価も高い。市内には柿博物館なるびっくりハウス観光施設も。この五條市と、栃原柿で名高い下市町で県産柿の大半を占める。県内の至る所に柿の古樹が自生していたといい、その葉を使った柿の葉寿司も名物として有名である。
福岡県の筑後川流域も筑紫山地と津江山系に囲まれた柿栽培の適地。朝倉市杷木や、うきは市吉井、久留米市田主丸などが主産地で、温暖な気候を利用した甘柿の生産は全国一位である。特に旧杷木町の志波柿は高級富有柿のブランドとして名高いほか、近年は早秋、太秋の生産も増えている。
岐阜県は全国で最も一人あたりの柿消費量が多い県であり、かつ全国有数の産地である。とりわけ、富有柿の発祥地として有名で、本巣市糸貫(旧糸貫町)や大野町は原産地に近かったことと、根尾川からの肥沃な土壌に恵まれたことで富有柿の一大産地として成長した。中でも糸貫産は減農薬栽培をいち早く採り入れるなど自治体ぐるみで柿栽培に取り組んできたため、最高級品としてブランド力が高い。また、岐阜市は天下富舞という超高級甘柿を生産し、名古屋市場で凄い高値を付けた。
近年、産地として急速に発展したのが熊本県である(かつては20位圏外で、県も調査統計を取っていなかった)。その契機となった品種が、人気急上昇中の甘柿「太秋」で、糖度の高さと果汁の多さが特色。1995年に登録を受けてから県を挙げて産地育成に取り組んだ結果、実を結んだ(桃栗三年柿八年というように、結果に時間がかかっていた)。以後は宣伝活動、口コミなどで瞬く間に広がり、菊池市、益城町、玉東町、宇城市などで盛んになっているほか、福岡県でも栽培が盛んになっている。
愛知県豊橋市石巻地区はかつて一世を風靡した「次郎柿」の主産地であり、独特の歯ごたえがある。また、県内では幸田町の筆柿も有名。新潟県はおけさ柿(本土では八珍柿という)が有名で、佐渡島や新潟市で作られる。愛媛県には愛宕柿で有名な西条市丹原町や甘柿産地の内子などがある。山形は庄内柿(平核無)で知られる。ほかに長野県の市田柿、福島県の会津みしらず柿、鳥取県の輝太郎に花御所柿、山梨県の甲州百目(枯露柿で知られ、富士柿ともいわれる)、佐賀県の伽羅(樹齢100年で食べ頃になるという幻の柿)などご当地の名産品が多い。
また、あんぽ柿という硫黄で燻蒸したドライフルーツも知られ、その独特の甘味にはファンが多い。使用している柿はそれぞれ違っている(大体は、蜂屋柿か平核無のいずれか)ので、またひと味違った風味が堪能できる。
「桃栗三年柿八年」と呼ばれるように、種を植えてから実をつけるまでの期間が長い。そのため接ぎ木の技術を用いて苗を作り、それを栽培することが多い。それでも4年近くかかるようだが。ちなみに種の形に似た米菓が「柿の種」と名付けられ、おつまみなどに人気である。
「柿が赤くなれば医者が青くなる」という言い伝えがあるなど、古くから柿は健康によいとされてきた。実際、果実の中でも栄養価が高い部類に入る。
昔話の「さるかに合戦」にも登場し、種はカニのおにぎりとの交換用に、実は親ガニを撲殺する凶器としてサルに用いられた。物語中にはクリの実が登場し、サルが囲炉裏にあたろうと帰ってくる場面があるなど、秋の話だったことが読み取れる(柿が実を結ぶのに数年かかり、そこで既に蟹の寿命を超えているのだが)。
日本海軍の艦船にも「柿」という駆逐艦が存在する。また同じく秋が旬の「梨」「栗」という駆逐艦も存在する。
同じ読みの二枚貝が存在するが、向こうは「牡蠣」と書く。ちなみに向こうの旬も秋、あるいは冬である(岩牡蠣は初夏)。
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