トキとは、
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トキ(朱鷺)とは、鳥類の一種である。
概要
現在絶滅の危機に瀕している種であり、2010年3月現在中国に約600羽、日本に112羽、韓国に2羽生存しているのみである。
なおこの数は飼育下にある数なので野生のトキがこれ以外にいる可能性はあるが、2008年に日本において放鳥された30羽を除いて、限りなく低い。
現在の生存数で言えば中国がメインの鳥であるが、学名を「Nipponia nippon」と言い、日本を象徴する鳥でもある。
これは、学名がつけられた当初は日本にしかいない種と思われていたためで、中国にも生息していることが知られたのは、これより後のことであった。
(※ 日本の国鳥はトキではなくキジ。トキを指定の鳥としているのは新潟県の県鳥、および佐渡市(新潟県)・輪島市(石川県)の市鳥である。)
「Nipponia」でコウノトリ目ペリカン目・トキ科の中のトキ属を意味するが、「トキ」一種でトキ属を構成する。
中国・韓国・ロシアなどにも生息するが、その全てが遺伝的に全く同じの完全な同一種である。
その数の少なさから中国では「国家一級重点保護動物」、日本では「特別天然記念物」と指定されている。国際的にも「国際保護鳥」に指定されている他、ワシントン条約によって保護されている種でもある。
長らくの間、コウノトリの仲間とされていたが、DNA解析の結果、ペリカンの仲間であることが判明。このため、2012年9月、日本鳥類目録の改訂で変更され、2013年2月に発表された。
特徴
冒頭のお絵カキコにもあるとおり、朱色の皮膚が露出した顔が最大の特徴。
他にはトキ科によく見られる特徴として長いクチバシを持つ。トキのクチバシは黒いが、先端は赤い。
非常に珍しい羽色変化を行う鳥としても有名。
普段は白い色をしているが、繁殖期に入ると首の側部から粉末状の物質を出し、これを水浴びの際に羽にこすりつける。そうすると羽の色がだんだんと黒くなっていき、最終的に灰色になる。繁殖期が終わるとやめるので、次第に元の白色に戻る。
この「粉末状のものを自分でこすり付けて色を変える」と言うのが解明されたのは20世紀後半になってからのことで、それまでは真っ白なトキと灰色のトキは別種の鳥であるとも考えられていた。20世紀後半になってこれが解明され同種の鳥の羽色変化だと分かったが、何故このようなことをするのか・どうやって粉末状のものを分泌しているのかなど、詳細は未だ不明。
雄と雌はほぼ同じ姿をしており、雄の方がやや食事量が多く、体やクチバシが大きく、攻撃的な性格をしている事が分かっているが曖昧であり、決定的な見分け方がまだ分かっていない。また、野生のトキについて研究できないため、野生で育ったトキも同様の差異を持っているのかも不明。
ちなみに羽の裏側はピンクがかった色をしており、この色を日本では特に「とき色(朱鷺色)」と呼ぶ。
トキの生息数が減少したのは、この美しい色の羽根を、矢羽根や装飾品にするべく狩られ続けたのも一因である。
乱獲・絶滅
既に書いたとおりトキは既にほぼ絶滅しているが、これは人為的な乱獲によるものである。
トキがたくさんいた頃は、トキは田んぼや畑を荒らす害鳥としての認識が一般的であり、盛んに駆除が行われていた。
稲作で苗を植えたそばから踏んづけてダメにし、育ってきたら来たで稲にとって有益な虫などを見境無く食べてしまう。実際、新潟地方には「鳥追い歌」と言う歌があり、内容はスズメやサギ等の鳥と一緒にトキが田んぼを荒らすといったもの。
江戸時代では鳥類のむやみな殺生を禁じるお触れが出ていた事もあってトキは希少どころかカラスやスズメのようにありふれて邪魔な鳥であり、農民がお上にトキ駆除の許可を懇願するほどだったと言う。
加えて、害鳥でありながらトキの羽は装飾品として需要があったため、トキは明治時代に入ったあたりからは乱獲に次ぐ乱獲で一気に数を減らすことになる。
なお、トキ絶滅の原因に農薬が挙げられる事があるが、これは誤りと言っていい。日本で農薬が使われだした1950年代の時点で、既にトキは2~30羽程度しか残っておらず絶滅寸前だったからである。
現在は後述の神宮式年遷宮や日本を象徴する鳥である事などの関係で、国によって保護が進められているが、今でも一部からは害鳥であるトキを保護する理由がどこにあるのか、と異論を唱える声が上がっている。
この声はトキ保護そのものに反対する層に限ったものではなく、トキ保護そのものは賛成するが、放鳥して野生に返すことで田畑の被害がまた出るのではないかと懸念する・・・と言った声もある。
現状
現在、日本におけるトキは「野生絶滅」として指定されている。
野生絶滅とは「絶滅危惧種」のレベルを通り越して完全な絶滅の一歩手前を意味する状態で、人工飼育の環境下ではまだ生き残りがいるが、野生に生息している分は完全に絶滅してしまったと言う意味。
純日本産(元から日本にいた野生のトキ)に限って言えば、2003年10月10日に死亡した「キン」を最後に、完全に絶滅している。
今いるのは中国のトキを日本で飼育しているだけである。
中国から受け入れたトキは順調に数を増やし、2008年には100羽を超えている。
トキに関する逸話
- 伊勢神宮の神宮式年遷宮
天皇が宮司を務める唯一の神社・伊勢神宮は、20年に一度、建物やその他装飾品などを全て新調し、敷地内を移動するという儀式がある(神宮式年遷宮)。
この時新調される神宝の一つ、須賀利御太刀(すがりのおんたち)は柄にトキの羽を2枚使うと定められている。
なお次回の遷宮は平成25年。現在、トキの羽は次回の分まで確保されているため、少なくとも次回の遷宮は確実に行われる。 - トキ保護センター
トキは既に野生のものが絶滅しているため、本来ならば「保護すべき対象がどこにもいない」事になるが、いまだに運営が続いている。その理由は上記の神宮式年遷宮のため。
中国のトキと日本のトキは遺伝上は全くの同一種だが、1300年も続いている日本国の神聖な儀式に使われるトキの羽が中国産ではあまりに格好が付かないため、なんとしてでも「日本産トキ」を確保すべく運営されているのである。
(「乱獲・絶滅」の項にあるとおり、純日本産野生トキは既に絶滅してしまっているが、親が中国産であっても日本で生まれて日本で育ったトキなら日本産と言えるだろう・・・と言う理屈) - 古代エジプトの知恵の神、トト神
古代エジプトの神話には、人身ながら頭部がトキである神、トト(ジェフウティ)神が登場する。この神は一般に知恵、知識を司るとされ、また当時のエジプト社会では非常に尊敬されていた職業、書記の守り神の役も担っていた。そのため、複数の創世神話が並存しているようなアバウトさを特徴とするエジプト神話の全盛時においても、系統を問わず非常に広い範囲で主要な神として祭られていた
またこの神を祭った神域からは、21世紀現在までに数万体にも及ぶ朱鷺のミイラが発見されている。これは神への捧げものとして奉られたものであるが、エジプト学においては神話の領分のみならず、当時の自然環境を知るための貴重な資料としても役だっている。
関連動画
冒頭にある、放鳥された30羽の中の1羽が本州に飛来したものを撮影した動画。
トキを題材にした曲・映像。
テレビ新潟の放送開始・終了時に流れる映像。
新潟はトキを県鳥としている県である。
株式会社プロメディア新潟による、トキの歴史を題材にしたアニメ作品。
トキにちなんだもの
地名・企業名
- 朱鷺メッセ
新潟県新潟市にある、ホテルを中心とした施設群。 - 株式会社トッキー
JR東日本のグループ会社で、新潟県新潟市に本社を置く。
駅ビル「CoCoLo」を始めとして、ホテル・広告・不動産など幅広く手がける総合サービス企業。
ロゴマークにトキの姿が取り入れられている。
架空のキャラクター
- トッキッキ
主に新潟県の国体などのスポーツ大会のマスコットを勤めるキャラクター。
丸っこい胴体に足と羽のような手が生えた生き物。オスとメスがおり、それぞれ「とっぴー」「きっぴー」と言う。 - 朱鷺子
東方Projectの書籍「東方香霖堂」に登場するキャラクター。
朱鷺子と言うのはファンによる愛称であり、本来は名前の無いモブキャラで、妖怪である事くらいしか分かっていない。
鳥の妖怪であるミスティア・ローレライと同じような羽を持つことから鳥の妖怪であると推定され、そしてその羽の色が朱鷺色に似ている事から朱鷺子と言う名前がついた。 - トキ(けものフレンズ)
メディアミックス作品「けものフレンズ」に登場するキャラクター。
同作に多数登場する、動物がヒト型に変化した存在「アニマルガール」(「フレンズ」とも)のひとり。 - トキ(真・女神転生IV FINAL)
仮面をかぶった暗殺者の少女。 - トキ(時と永遠~トキトワ~)
その他
- とき(列車)
詳細はとき(列車)の記事を参照のこと。
当初は「とき」の他に「朱鷺」と言う漢字も併記されていたが、ひらがなの愛称を付けた新幹線としてはかなり異例のことであった。 - 朱鷺P
MAD動画を投稿しているユーザー。詳細は「朱鷺P」の記事を参照のこと。 - 越後屋ときな
新潟県のご当地Vtuber。デザインモチーフが朱鷺。
トキを題材にした創作物
- 鳥追い歌
民謡。「乱獲・絶滅」の項参照。 - 朱鷺によせる哀歌
関連動画参照。 - 朱鷺の声
関連動画参照。 - 「神鳥(イビス)」
篠田節子著の小説。獰猛なトキが人間を襲うという内容のホラー小説。 - 「ニッポニアニッポン」
阿部和重著の小説。トキを殺害して駆除しようと計画する少年にまつわるストーリー。
関連項目
- 10
- 0pt