まさつ‐けいすう【摩擦係数】
摩擦係数(タイヤ)
クルマの運動に必要な駆動力、制動力、横力(カーブ走行に必要な力、コーナリングフォース)はすべて、タイヤと路面間で生じる摩擦力である。摩擦力Fをタイヤ接地面での垂直荷重Wで割った値(F/W)を摩擦係数といい、慣用的にμで表す。タイヤと路面間の摩擦係数は、路面の状態や種類、タイヤの種類や空気圧、走行速度、スリップ率により大きく変化する。とくに濡れた路面、積雪路、凍結路、砂利道など、摩擦係数の低い路面ではクルマの挙動は不安定になりやすい。対応策として、ABS、TRC、DSCなどのシステムやスタッドレスタイヤ、ウエット性能に優れた高性能タイヤが開発されているが、それらの開発やシステムにもμ特性のデータが重要である。
参照 μ-5特性(タイヤ)、コーナリングフォース摩擦係数
2つの物体が相接して運動し、または運動を始めようとするとき、その運動を妨げようとする力が働く。この現象を摩擦と呼びその力を摩擦力という。摩擦は相対速度の有無により運動摩擦と静止摩擦、運動の状態により滑り摩擦と転がり摩擦とがある。摩擦係数とは、両面間に生ずる摩擦力と接触面に直角に作用する力との比で、静止摩擦と運動摩擦とでは大きさが異なり、静止摩擦のほうが大きく、また、両物質の種類、接触面の状態によっても異なる。
摩擦係数
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/15 01:23 UTC 版)
摩擦係数とは垂直抗力に対する摩擦力の比で定義される無次元量で、多くの場合ギリシャ文字 μ で表される。摩擦係数は物質の組み合わせによってゼロに近い値から1を超える値にまでなる。摩擦係数の項を初めて導入し、その使い方を示したのはアーサー・モリンである。摩擦係数が結び付ける二つの物理量はどちらも力で同一の次元を持つので,本来は摩擦因子(英: friction factor)と呼称するのがよいが,日本国においては慣習的に摩擦係数との語が用いられている。 静止摩擦係数と動摩擦係数はどちらも接触している物質の組み合わせに依存する。たとえば、鋼の上に置かれた氷は摩擦係数が小さく、舗装道路の上に置かれたゴムは摩擦係数が大きい。金属同士の接触では、異種金属よりも性質の似た金属の組み合わせの方が大きい摩擦係数を持つという原則がある。つまり、真鍮を鋼やアルミニウムとこすり合わせるより、真鍮どうしをこすり合わせる方が摩擦係数は大きくなる。互いに静止している接触面についての静止摩擦係数は、ほとんどの場合、同じ接触面が互いに滑っている場合の動摩擦係数よりも大きい。しかし、テフロンどうしの組み合わせのように静止摩擦係数と動摩擦係数に差がない場合もある。 乾いた物質の組み合わせでは、摩擦係数はほとんどの場合0.3から0.6までの値になる。この範囲を超える値は希少だが、たとえばテフロンは0.04という低い値を持ちうる。摩擦係数が0となるのは摩擦が全くはたらかない場合であって現実には考えにくい。摩擦係数が1より大きくなることはないという主張がしばしば見られるが、正しくない。1を超える摩擦係数は、単に物体を滑らせるのに必要な力が接触面にはたらく垂直抗力より大きいということを意味するに過ぎない。現実的には μ < 1 {\displaystyle \mu <1} となる場合がほとんどだが、たとえばゴムとほかの物質との間の摩擦係数は1から2の値を取りうる。シリコーンゴムやアクリルゴムをコーティングした面の摩擦係数は1よりはるかに大きくなる。 摩擦係数は単純な物性値というより、系全体の特性と考える方が実際に近い。真の物性値(伝導率、誘電率、降伏強さなど)が物質の種類だけで決まるのに対し、摩擦係数は温度や湿度、滑り速度、雰囲気、待機時間など、系に特有の変数に依存する:12-14。また物質界面の形状的な特性、すなわち表面粗さの影響も受ける。たとえば、雪や氷のような融点が低い物質の滑り摩擦では摩擦熱が大きな役割を果たす。氷上を高速で滑ると接触部で融解が起き、水が潤滑剤となって摩擦係数は0.1以下になるが、低速で界面の圧力も低い場合には摩擦係数は 0.6 - 0.8 にまで高くなりうる。ロケットスレッドや銃砲身などでは、金属界面でさえ融解が起きる。したがって摩擦特性について一般則を見出すのは困難である。摩擦によって表面構造がダイナミックに変化する場合、従来は表面科学的な解析を行うことも困難であった。しかし、近年では摩擦現象のその場観察の手法が進歩しつつある。 静止摩擦係数は物体の変形特性と表面粗さによって決まるが、その起源をたどれば、それぞれの物体の内部や表面の原子、あるいは吸着分子の間にはたらく化学結合である。静止摩擦の大きさを決める上で、物体表面のフラクタル性、すなわちアスペリティのスケーリング挙動を記述するパラメータが重要な役割を持つことも知られている。
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