26日の自民党大会には3月に始まる統一地方選への組織固め以外にも、重要な「裏テーマ」があった。労働組合の中央組織・連合の芳野友子会長(57)に出席してもらうこと。立憲民主党、国民民主党の支持団体である連合の会長が、選挙直前に自民党大会に出ればかなりの衝撃が走っただろう。結局、この話は寸前で立ち消えになったが、かつてなく自民と連合は接近している。
「労働組合員のため、賃上げを実現するには政府・与党と連携した方がいいのではないか」
自民党執行部の一人は繰り返しそんな風に芳野氏側に秋波を送り、年明けから自民は党大会招待に向けて水面下で動き始めた。
連合並びに友好的な労働組合との連携を強化する――。26日、90回目の党大会で採択した運動方針には、連合との関係強化がはっきりと書き込まれた。昨年の「政策懇談を積極的に進める」から進み、「働く人々の側に立った雇用労働政策の充実」も強調された。
これらは芳野氏が党大会に来ることを視野に入れた対応でもあった。
自民にかわる「新しい政治勢力の形成」を掲げて1989年に結成した連合の会長出席となれば、野党とその支持層に与える打撃は大きい。芳野氏への働きかけはこれにとどまらなかった。
2月6日、岸田文雄首相が首相官邸で芳野氏と会った。官邸側から要請した。
賃上げへの労組の運動状況や、一人親家庭の状況について芳野氏が「夏休みや冬休みは給食がなく、体重が減る子もいる」と話すと、首相はソファから身を乗り出し「え、そんな子どもたちがいるんですか」。
首相は時に表情を変えながら、芳野氏の説明に聴き入った。終盤、芳野氏が「連合は現場に根ざしている。政労会見を復活させてほしい」と、首相と連合会長が定期的に話す場の復活を求めると、首相も「信頼関係をつくる上でも重要だ」。帰り際には、首相の求めで二人で写真に納まった。
2021年に連合初の女性会長となって以来、2回目の首相との会談。「満額回答だった」と芳野氏は喜びを隠しきれない様子で、周囲に手応えを語った。
野党分裂で見通せぬ成果「連合が立ちゆかない」
連合の組織力、政治力は低下…