明 細 書 歯ブラシ 技術分野
本発明は、 歯間進入性、 歯垢除去機能、 外観差別性に優れるとともに、 毛立ち も良好な平線植毛式の歯ブラシに関する。 背景技術
平線植毛式の歯ブラシは、 平線と呼ばれる金属片またはプラスチック片を用い て毛束を 2つ折りに植毛穴に打ち込むことにより植毛している。 このため、'へヅ ド部植毛面に形成される植毛穴は、 直径 1 . 5〜2 . 2 mmの円形状で隣り合う 植毛穴同士の穴縁間隔を 1 . 0 mm以上とし、 さらに、 植毛する毛束も、 1穴当 たり刷毛本数 1 6 ~ 6 0本 (折り返し本数で 3 2 - 1 2 0本)、 折り返された状 態での 1穴当たりの刷毛断面積の総和が 1 . 0 mm2以上の太い毛束を用いるの が一般的であった。
上記のように太い毛束を用いた場合、 植毛穴数の少数化と毛腰の向上をもたら すため、 生産効率の向上につながるという利点があった。 一方、 太い毛束を用い た場合、 口腔疾患の好発部位である歯頸部、 歯間部、 咬合面の小窩裂溝部などに 刷毛先が届きにくく、 口腔疾患予防上の問題が残されており、 口腔衛生上好まし くない。
すなわち、 このような歯ブラシの場合、 太い毛束による強力な清掃効果を実現 できる一方で、毛束が太いためにブラッシング圧を毛束同士で支え合ってしまい、 毛束を構成する刷毛単体が本来持っているしなやかな動きを発揮することができ ず、 口腔疾患好発部位とされる歯間部、 歯間三角などの小さな隙間部分に毛先が 届きにくくなる。 また、 毛束が太い場合、 歯間進入性が悪いほか、 毛腰が硬くな りがちで、 口腔粘膜に対する刺激も大きい。 さらに、 強度との関係で隣り合う植 毛穴同士の穴縁間隔を 1 . 0 mm以上とする必要があり、 デザイン上の制約も多 くなることから、 新奇性に乏しく、 外観差別性も低かった。 このため、 従来にお
いてはヘッド部やハンドルの形状、 色などを工夫することにより、 製品間の差別 化を図っていた。
この種の歯ブラシとしては、 例えば、 日本国特閧 2 0 0 0 - 3 0 0 3 4 6号公 報に、 植毛台の幅を 8 mm以内とするとともに、 ハンドル長手方向と平行に毛束 を 4列以上配置し、 さらに外側に位置する毛束を内側に位置する毛束よりも柔ら かくした歯ブラシが示されている。 しかし、 この歯ブラシは、 主としてバス法に よる歯磨き時の口腔内の粘膜に対する安全性の観点から外側の刷毛を柔らかくし たものであり、 本発明とはその技術思想を異にするもので、 植毛穴の穴縁間隔と 植毛される刷毛の断面積との関係については何らの検討もなされていない。
また、 日本国特開平 1 1— 3 1 8 5 6 5号公報には、 長円形状の植毛穴に矩形 状断面のフィラメントを植毛した歯ブラシが示されているが、 植毛穴の穴縁間隔 と植毛される刷毛の断面積との関係については何らの検討もなされていない。 植毛穴の穴縁間隔を狭めて薄壁化した歯ブラシについても、 例えば日本国特開 平 1 1— 1 1 3 6 3 4号公報などに示されているが、 この歯ブラシの場合、 平線 を打ち込む植毛穴の間隔は一定方向において確保されているだけであり、さらに、 植毛穴の穴縁間隔と植毛される刷毛の断面積との関係については何らの検討もな されていない。
また、 日本国特閧 2 0 0 2— 1 0 8 3 4号公報には、 植毛穴たる長孔の向きを 長軸の向きが異なるように選択して組み合わせることにより、 硬さ方向の異なる 毛束を混在配置させた歯ブラシが、 さらに、 日本国特開平 1 0— 3 2 7 9 3 0号 ゃ特開平 1 0— 3 2 7 9 3 1号公報には、 ブラシ基台から多数の毛を突出させ、 多数の毛は少なくとも断面楕円形の毛を複数含むようにした歯ブラシがそれそれ 示されているが、 いずれも植毛穴の穴縁間隔と刷毛の断面積の総和との関係につ いては何らの検討もなされていない。
上述したように、 従来の平線植毛式歯ブラシでは、 植毛のしゃすさから大きめ の植毛穴を採用し、 隣り合う植毛穴の間隔も広めに設定していた。 このため、 使 用する毛束も太くなるとともに、 植毛された毛束同士の間隔も広くなりがちであ つた
歯ブラシの必要条件としては、 歯垢除去効果に優れるだけでなく、 口腔内粘膜
に対する安全性が高い点も求められるが、 従来の平線植毛式歯ブラシの場合、 毛 束が太いため、 歯面のスティン除去機能には優れるが、 歯肉などの軟組織に対す る刺激が強く、 特に齒周炎や歯周病の患者に使用させるには細心の注意が必要で あった。 このため、 齒周炎や歯周病の患者などには、 毛腰の柔らかな刷毛を用い た歯ブラシを使用させるのが通例であるが、 毛腰が柔らかいために十分な歯垢除 去機能を発揮できないという問題があった。
本発明は、 上記問題を解決するためになされたもので、 最近接する植毛穴との 間の穴縁間隔と、 植毛穴に植毛される刷毛の断面積の総和とを最適な値に設定す ることにより、 口腔疾患好発部位における歯垢除去機能に優れるとともに、 口腔 内軟組織に対する刺激も柔らかで、 しかも外観差別性、 使用性にも優れた歯ブラ シを提供することを目的とするものである。 発明の開示
上記課題を解決するため、 本発明は、 植毛穴が形成された植毛面を有するへッ ド部と、 それぞれ複数本の刷毛よりなる毛束であって、 前記植毛面の植毛穴にそ れそれ 2つ折りにして平線によつて植毛した複数の毛束とを備えた歯ブラシにお いて、 前記植毛穴の少なくとも一部が、 最近接する任意の植毛穴との間の穴縁間 隔が 1 . 0 mm以下で配設されるとともに、 前記の少なくとも一部の植毛穴に植 毛された各毛束は、 折り返された刷毛部分の断面積の総和が 1穴当たり 1 . 0 m m2以下となるように設定したものである。
前記刷毛部分の断面積の総和は、 好ましくは植毛穴 1穴当たり 0 . 1 0〜0 . 7 0 mm2の範囲である。 また、 前記の少なくとも一部の植毛穴と最近接する植 毛穴との間の穴縁間隔は、 好ましくは 0 . 2 5〜0 . 7 0 mmの範囲である。 刷毛の断面形状が円形の場合を例に採ると、 折り返された刷毛部分の断面積の 総和が 1 . 0 mm2以下となるのは、 7 m i l (直径 1 7 8 mm) の刷毛で は 1穴当たりおよそ 5〜 1 4本、 すなわち折り返された状態の刷毛部分で 1 0〜 2 8本に相当する。
この刷毛本数は、 設計上の歯ブラシ仕様と刷毛径、 断面形状などにより適宜設 定できる。 1つの植毛穴に植毛される刷毛の断面積の総和が 1 . 0 mm2を超え
ると、 毛束としての強度が大きくなるため、 剛性の高い毛束となって毛束の柔軟 性が極端に低下し、 好ましくない。
さらに、 刷毛の断面積の総和が 1 . 0 mm2以下の毛束を植毛した植毛穴と最 近接する任意の植毛穴との穴縁間隔は 1 . O mm以下が好ましく、 より好ましく は 0 . 2 5〜0 . 7 O mmの範囲である。 穴縁間隔が狭過ぎると、 毛束の間隔も 狭くなり、 歯間に刷毛が入らず、 歯間進入性が低下する。 一方、 穴縁間隔が広が ると、 外観差別性、 使用感が低下する。 植毛穴間隔が 1 . O mmを超えると、 ブ ラッシング運動に伴う毛束の反発作用が強くなり、 毛束のゴッゴヅした感触が加 わり、 使用感が低下するばかりでなく、 毛束の連続した運動が発揮されず、 歯垢 除去効果も低下する。
本発明の歯ブラシは、 細い毛束が最適な間隔で配置されるため、 刷毛の 1本 1 本が歯牙および歯肉に届きやすくなり、 口腔疾患好発部位への毛先の到達性が改 善される。 また、 少数の刷毛本数からなる毛束の植毛により、 従来不可能であつ た細い毛束の連続した動きを発現させることができ、 歯頸部、 歯間乳頭部などの 口腔粘膜に過大な負荷をかけることなく、 歯垢除去、 歯肉マッサージ機能を発現 させることが可能となる。 このように本発明の歯ブラシは、 口腔疾患好発部位に おける歯垢除去機能に優れるとともに、 口腔軟組織に対する安全性が高く、 しか も外観差別性、 使用性にも優れたものである。
上記条件を満たす植毛穴は、へッド部植毛面の任意の位置に形成すればよいが、 少なくともヘッド部植毛面の最外側の一部に配置するのが好ましい。 このように 構成することにより、 ブラッシング時、 刷毛が歯面に接し易くなり、 歯間進入性 をより向上させることができる。 この場合、 刷掃実感やデザイン、 生産性などの 面から、 ヘッド部植毛面の中央付近に太い毛束を配置するようにすれば、 さらに 好ましいものとなる。
上記植毛穴の穴断面形状は通常用いられている円形や正方形でもよいが、 楕円 形または略楕円形、 長円形または略長円形、 長方形または略長方形など、 穴断面 に短軸方向 (短径または短辺方向) と長軸方向 (長径または長辺方向) を有する 異形の穴形状とするのが好ましい。 この場合、 該植毛穴として、 短軸方向に対す る長軸方向の寸法割合が 1 . 0よりも大きな穴形状の植毛穴を用いるのが望まし
レ、。 また、 植毛穴の向きを種々組み合わせて配置を設定することにより、 目的と する毛の当たり心地、 刷掃実感に応じた仕様の設計が可能である。 さらに、 植毛 穴の向きを工夫することにより、 側面からの毛束の見え方を変えることができ、 例えば、 へッド部植毛面の外側に位置して植毛穴の短軸が側縁に沿うように配列 すると、 同じ本数の刷毛を植毛した円形の毛束と比較して細く見え、 外観差別性 も向上させることができる。 また、 隣り合う植毛穴の平線同士の干渉を避けると 同時により密毛化を図るため、 植毛穴の配置を千鳥状としてもよい。
また、 植毛穴に対する平線の打ち込み方向を工夫すれば、 植毛された毛束と植 毛穴との間の隙間を可能な限り小さくすることができ、 毛立ちの優れた植毛部を 作成することができる。すなわち、植毛穴の長軸方向に沿って平線を打ち込めば、 平線に沿って刷毛が並ぶため、 植毛強度が向上する。 また、 平線の打ち込み方向 によりへッド部最外側の毛束が細く見えるため、 外観差別性を向上させることが できる。 この際の植毛穴形状は、 毛束と植毛穴の間隔を狭めるために略長方形が 好ましい。 また、 短軸方向に沿って平線を打ち込む際には、 毛束断面に対する外 接円の直径と植毛穴の短軸方向を合致させることにより、 植毛穴と毛束との空間 をより少なくすることが可能となり、 毛立ちの優れた植毛部を作成することがで きる。 この際、 使用する刷毛断面が円形の場合には、 植毛穴形状を略楕円形、 略 長円形、 略長方形とすればより好ましい。
歯ブラシヘッド部は、 形状、 大きさ、 デザインとも、 何ら制限を受けない。 ま た、 歯ブラシで使用する平線の材質は、 真鍮、 ステンレスなどの金属のほか、 硬 質プラスチックや生分解性プラスチックなども使用可能である。 また、 平線の厚 みを調節することによって、 植毛穴と毛束とを確実に固定して空隙を少なくする ことができる。 使用する平線幅には特に制限はなく、 任意に設定できる。
へヅド部を含む歯ブラシのハンドル材料としては、 ポリスチレン樹脂(P S )、 ポリプロピレン樹脂 (P P )、 ポリエチレンテレフ夕レート樹脂 (P E T )、 飽 和ポリエステル樹脂 (酸変成ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレ一トコ ポリマ一 [ P .C T A] , グリコール変成ポリシクロへキシレンジメチレンテレフ タレ一トコポリマ一 [ P C T G] など)、 アクリロニトリルブタジエンスチレン 樹脂 (A B S )、 セルロースプロピオネート樹脂 (C P )、 ポリアリレート樹脂、
ポリカーボネート樹脂 (PC)、 アクリロニトリルスチレン樹脂 (AS)、 ポリ ァセタール樹脂 (POM)、 ポリブチレンテレフ夕レート樹脂 (PBT)、 ポリ エチレンナフ夕レート樹脂 (PEN) などの素材を単独または混合して用いるこ とができる。 また、 熱可塑性エラストマ一と組み合わせた多色成形ハンドルとす ることも好ましい。なお、ハンドル材料は上記のものに限定されるものではない。 刷毛 (フィラメント) 材料としては、 ポリエチレンテレフ夕レート, ポリプチ レンテレフ夕レート, ポリトリメチレンテレフタレ一トなどのポリエステル、 ナ ィロン 6, ナイロン 66, ナイロン 6— 10, ナイロン 6— 12, ナイロン 12 などのポリアミド、 ポリェチレン, ポリプロピレンなどのポリオレフイン、 ポリ フッ化ビニリデンなどのポリハロゲン化ビニルなど、 溶融紡糸可能な素材が利用 されるが、 使用感、 耐久性などの点で、 ナイロン、 ポリトリメチレンテレフタレ ートが好ましい。 また、 これらの刷毛を二重芯鞘状に成形して外側と内側の材質 の異なる刷毛としたり、 表面状態の異なる刷毛としたり、 目的に応じて使い分け ることが可能である。
刷毛の太さとしては、 3〜: L 0ミル (0. 076〜0. 2 54mm)、 好まし くは 5〜8ミノレ(0. 127~0. 203 mm)のものがよく、使用性、刷掃感、 清掃効果、 耐久性を考慮して、 これらを組み合わせて利用することも好ましい。 特に、 多数の植毛穴を配置した歯ブラシ仕様では、 外側の毛束から中央に向かう に従って、 刷毛の硬さを硬くしたり、 太さ、 材質、 長さ、 色、 断面形状を変化さ せれば、 使用感、 外観差別化の上からより好ましい。
刷毛の種類としては、 通常のラウンド用毛 (毛先を丸めた刷毛)、 テーパー用 毛 (先細にされた刷毛)、 ダイヤモンド用毛 (断面が菱形の刷毛)、 フヱザ一用 毛 (毛先が羽毛状に分割された刷毛)、 異形断面用毛 (断面形状が円形ではない 刷毛)、 グレイ二一用毛 (研磨剤を練り込んだ刷毛)、 スパイラルキャッチ用毛 (螺旋状の溝が形成された刷毛)、 インジケ一夕用毛 (外層が着色された二重芯 鞘構造を有し外層の摩耗により交換時期を知らせる刷毛) など、 種々のものを利 用することができる。 なお、 刷毛の種類もこれらに限定されるものではない。 さらに、 上記刷毛に関しては、 自由端の毛切り (あるいはプロファイル) 形状 と刷毛長を適宜設定することにより、 毛束先端面を単一平面状としたり、 山切り
状としたり、 凹凸形状とすることができる。 さらには、 植毛面の外側と内側、 先 端部と後端部などで異なった毛束構成としてもよい。 図面の簡単な説明
図 1 Aは本発明に係る歯ブラシの一実施の形態において、 平線を用いて植毛穴 に 2つ折りに植毛された毛束を示す模式斜視図であり、 図 1 Bはその断面図であ り、 図 1 Cは最近接する 2つの植毛穴の略示平面図である。
図 2 A〜図 2 Eは、 植毛穴の形状と刷毛の植毛状態についての他の例をそれそ れ示す平面図である。
図 3 Aは実施例 1に係る歯ブラシのヘッド部を略示する拡大平面図であり、 図 3 Bは該実施例における最近接する植毛穴部分の拡大平面図である。
図 4は、 実施例 2に係る歯ブラシのへッド部の略示拡大平面図である。
図 5は、 実施例 3に係る歯ブラシのへッド部の略示拡大平面図である。
図 6は、 実施例 4に係る歯ブラシのへッド部の略示拡大平面図である。
図 7は、 実施例 5に係る歯ブラシのヘッド部の略示拡大平面図である。
図 8は、 実施例 6に係る歯ブラシのへッド部の略示拡大平面図である。
図 9は、 実施例 7に係る歯ブラシのへッド部の略示拡大平面図である。
図 1 0は、 実施例 8に係る歯ブラシのへッド部の略示拡大平面図である。 図 1 1は、 実施例 9に係る歯ブラシのヘッド部の略示拡大平面図である。 図 1 2は、 実施例 1 0に係る歯ブラシのへヅド部の略示拡大平面図である。 図 1 3は、 実施例 1 1に係る歯ブラシのへッド部の略示拡大平面図である。 図 1 4は、 実施例 1 2に係る歯ブラシのへヅド部の略示拡大平面図である。 図 1 5は、 実施例 1 3に係る歯ブラシのへッド部の略示拡大平面図である。 図 1 6は、 実施例 1 4に係る歯ブラシのへッド部の略示拡大平面図である。 図 1 7は、 実施例 1 5に係る歯ブラシのへッド部の略示拡大平面図である。 図 1 8は、 実施例 1 6に係る歯ブラシのへッド部の略示拡大平面図である。 図 1 9は、 実施例 1 7に係る歯ブラシのへッド部の略示拡大平面図である。 図 2 O Aは実施例 1 8に係る歯ブラシの全体を略示する拡大平面図であり、 図 2 0 Bは該歯ブラシのへッド部の略示拡大断面図である。
図 2 1は、 実施例 1 9に係る歯ブラシのへッド部の略示拡大平面図である。 図 2 2は、 実施例 2 0に係る歯ブラシのへッド部の略示拡大平面図である。 図 2 3は、 実施例 2 1に係る歯ブラシのへッド部の略示拡大平面図である。 図 2 4は、 実施例 2 2に係る歯ブラシのへッド部の略示拡大平面図である。 図 2 5は、 実施例 2 3に係る歯ブラシのへッド部の略示拡大平面図である。 図 2 6 Aは、 実施例 2 4に係る歯ブラシを略示する拡大平面図であり、 図 2 6 Bは該実施例におけるへッド部の拡大平面図である。
図 2 7は、 従来例 (比較例 1 ) に係る歯ブラシのヘッド部の略示拡大平面図で める。
図 2 8は、 他の従来例 (比較例 2 ) に係る歯ブラシのへッド部の略示拡大平面 図である。
図 2 9は、 さらに別の従来例 (比較例 3 ) に係る歯ブラシのヘッド部の略示拡 大平面図である。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図 1 A〜図 1 Cに本発明に係る歯ブラシの一実施の形態を示す。
図において、 1は複数本の刷毛 2を束ねて構成された毛束であって、 この毛束 1を、 平線 3を用いて 2つ折りにして歯ブラシへヅド部の植毛面 5の植毛穴 4に 打ち込むことにより固定している。 本発明においては、 この毛束 1の植毛に際し て、 最近接する植毛穴 4と 4との間の穴縁間隔 Lを 1 . 0 mm以下とし、 かつ、 これら植毛穴 4 , 4, …に植毛される各毛束 1の刷毛 2の折り返された状態での 1穴当たりの刷毛断面積の総和すなわち折り返された刷毛部分の断面積の総和を 1 . 0 mm2以下となるように設定したものである。
最近接する植毛穴 4 , 4の穴縁間隔 Lと、 植毛される毛束 1の刷毛 2の断面積 の総和とを上記のような値に設定すると、 刷毛 2の 1本 1本が歯牙および歯肉に 届きやすくなり、 口腔疾患好発部位への毛先の到達性が改善される。 また、 少数 本の刷毛 2からなる毛束 1となるため、 従来不可能であつた細い毛束の連続した 動きを発現させることが可能となり、 歯頸部、 歯間乳頭部などの口腔粘膜に過大
な負荷をかけることなしに優れた歯垢除去、 歯肉マッサージ機能を発揮すること ができる。
なお、 上記実施の形態では、 植毛穴 4の穴形状を長円形、 刷毛 2の断面形状を 円形とし、 平線 3を長円形状をした植毛穴 4の長手方向と直交する向きに打ち込 んだ場合を示したが、 植毛穴 4の穴形状と刷毛 2の断面形状、 および平線 3の打 ち込み方向はこれに限定されるものではなく、 例えば図 2 A〜図 2 Eに示すよう に歯ブラシの仕様に応じて種々採用できるものである。
図 2 Aは、 植毛穴 4の穴形状を長円形、 刷毛 2の断面形状を円形とし、 平線 3 を長円形状になる植毛穴 4の長手方向に沿って打ち込んだ場合の例、 図 2 Bは、 植毛穴 4の穴形状を長方形、 刷毛 2の断面形状を円形とし、 平線 3を長方形状に なる植毛穴 4の長手方向に沿って打ち込んだ場合の例、 図 2 Cは、 植毛穴 4の穴 形状を角部を丸めた長方形、刷毛 2の断面形状を菱形(いわゆるダイヤモンド形) とし、 平線 3を角部を丸めた長方形状の植毛穴 4の長手方向に沿って打ち込んだ 場合の例、 図 2 Dは、 植毛穴 4の穴形状を円形、 刷毛 2の断面形状を円形とし、 平線 3を円形状になる植毛穴 4の所定の方向 (例えば、 へッド部の長手方向ある いは長手方向に直角な方向) に沿って打ち込んだ場合の例、 図 2 Eは、 植毛穴 4 の穴形状を円形、刷毛 2の断面形状を長方形とし、平線 3を所定の方向(例えば、 へッド部の長手方向あるいは長手方向に直角な方向) に沿って打ち込むことによ り、 断面長方形状になる刷毛 2を平線 3と平行に並べた場合の例を示すものであ る。 実施例
図 3 A〜図 2 6 Bに本発明に係る歯ブラシの具体的な実施例を示す。 また、 図 2 7〜図 2 9に比較例としての従来仕様の歯ブラシを示す。 これら実施例および 比較例中、 実施例 1 ~ 1 6 (図 3 A〜図 1 8 ) については、 表 1にその植毛仕様 を示した。 また、 実施例 1 7〜2 4 (図 1 9〜図 2 6 B ) については、 表 2にそ れそれの植毛仕様を含む歯ブラシの仕様を記載した。 そして、 比較例 1〜3 (図 2 7〜図 2 9 ) については、 表 3にその植毛仕様を示した。 なお、 説明を分かり 易くするため、 植毛穴 4 , 6のみを図示し、 植毛穴 4 , 6に植毛された毛束につ
JP2003/009636
10 いては図示を省略した。 また、 各図において、 黒く塗り潰された植毛穴 6は従来 仕様の植毛穴、 塗り潰されていない白抜きの植毛穴 4は本発明の条件を満たす植 毛穴を示すものである。
図 3 A〜図 5および図 17に示す実施例 1〜 3および実施例 15では、 1種類 の形状、 すなわち長方形もしくは略長方形あるいは円形の植毛穴 4が配備されて いるが、 図 6〜図 8および図 18に示す実施例 4〜6および実施例 16では、 植 毛穴 4は穴形状の異なる 2種、 すなわち長方形の植毛穴と円形、 正方形あるいは 楕円形の植毛穴とを組み合わせて配備している。 例えば、 図 3Aおよび図 3Bに 示す実施例 1では、最近接する植毛穴 4, 4間の穴縁間隔 Lを 0. 5mmとされ、 植毛穴 4には刷毛径が 7mi 1 (0. 178 mm) の刷毛 9本からなる毛束が 2 つ折りにされてそれそれ植毛されており、 植毛穴 1つ当たりの刷毛の断面積 (折 り返された刷毛部分の断面積) の総和は 0. 44mm2とされている。 また、 図 6および図 7に示す実施例 4および 5では、 いずれの形状の植毛穴 4にも同一の 刷毛径を有する所定本数の刷毛からなる毛束が 2つ折りにされて植毛されてい る。
図 8に示す実施例 6では、 楕円形の植毛穴 4には刷毛径が 7 m i 1 ( 0. 17 8 mm) の刷毛 8本からなる毛束が 2つ折りにされて植毛されており、 長方形の 植毛穴 4には刷毛径が 8 mi 1 (0. 203mm) の刷毛 6本からなる毛束が 2 つ折りにされて植毛されており、 植毛穴 1つ当たりの刷毛の断面積の総和はそれ それ 0. 50mm2および 0. 39mm2とされている。
図 9〜図 16に示す実施例?〜 14では、 本発明の条件を満たす植毛穴 4と従 来仕様による植毛穴 6とを組み合わせて配備してある。 本発明の条件を満たす植 毛穴 4には表 1に示すように刷毛径が 5 mi 1 (0. 127mm) 〜8mi 1 (0. 203mm) の所定本数の刷毛からなる毛束が植毛されており、 植毛穴 1 つ当たりの刷毛の断面積の総和は 1. 0mm2以下とされている。 一方、 従来仕 様の植毛穴 6には刷毛径が 5 m i 1 ( 0 · 127 mm)〜9mi l (0. 229 mm) の所定本数の刷毛からなる毛束が植毛されており、 植毛穴 1つ当たりの刷 毛の断面積の総和は 1. 5〜2. 46 mm2とされている。
図 22に示す実施例 20では、 植毛穴 4が外側の各 1列と内側の 4列とではそ
の向きが直交するように配置されているが、 平線は各植毛穴 4に対して歯ブラシ へッドの長手方向に対して直角な方向に打ち込まれている。 図 23に示す実施例 21では、小円形および大円形の植毛穴 4に刷毛径が 8mi 1 (0. 203 mm) の刷毛 4本あるいは 7本からなる毛束がそれそれ植毛されており、 略長方形の植 毛穴 4には刷毛径が 6mi 1 (0. 152mm) の刷毛 19本からなる毛束が植 毛されている。 図 24に示す実施例 22では鎖線で囲んだへッド部の先端側に位 置する植毛穴 4に刷毛径が 9mi 1 (0. 229 mm) の刷毛 5本からなる毛束 が植毛されており、 その他の植毛穴 4には刷毛径が 7 mi 1 (0. 178 mm) の刷毛 7本からなる毛束が植毛されている。また、図 25に示す実施例 23では、 円形および略長方形の植毛穴 4に刷毛径が 6 m i 1 ( 0. 152 mm) の刷毛 1 3本あるいは 25本からなる毛束がそれそれ 2つ折りにされて植毛されている。 図 26 Aに示す実施例 24では、 図 26 Bに示す鎖線の外側に位置する最外側 のへッド部領域の植毛穴 4に刷毛径が 6 mi 1 (0. 152 mm) の刷毛 8本か らなる毛束がそれそれ植毛されており、 鎖線で囲んだ内側の領域の植毛穴 4には 刷毛径が 8m i 1 (0. 203 mm)の刷毛 6本からなる毛束が植毛されている。
表 1
注 * 1 商標「サントプレン J でァドバンスト 'エラストマ一 'システムズ社 (Advanced Elastomer
Systems, L.P. )により製造販売されているォレフィン系エラストマ一である。
* 2 商標 「プリマロイ」 で三菱化学株式会社により製造販売されているポリエステル系エラ ストマ一である。
Φ 3 商標 「ミラストマー」で三井化学株式会社により製造販売されているォレフィン系エラ ストマーである。
表 3
比較例の植毛仕様
上記実施例 1〜2 4および比較例 1〜3の各歯ブラシについて、 疑似プラーク を用いた清掃力試験および専門パネラーによる使用試験を行なった。 その結果を 表 4に示す。 この試験結果から明らかなように、 本発明の歯ブラシは、 従来仕様 の歯ブラシに比べて歯頸部、 小窩裂溝部における歯垢除去能力、 歯間進入性に優 れ、 しかも従来仕様の歯ブラシに比べて心地良い使用感を得られることが確認さ れた。
なお、 表 4中の歯垢除去効果、 官能評価、 総合評価の各判定は、 それそれ以下 の基準によった。
( 1 ) 歯垢除去効果
◎:歯垢除去率 8 0 %以上
〇:歯垢除去率 5 0 %以上、 8 0 %未満
△:歯垢除去率 3 0 %以上、 5 0 %未満
X :歯垢除去率 3 0 %未満
歯垢除去率は、 下式によって算出した。 また、 プラーク占有面積は画像解析に より求めた。
歯垢除去率 (%) = { 1— (刷掃後のプラーク占有面積/刷掃前のプラーク占 有面積) } X 1 0 0
( 2 ) 官能評価
専門パネラー 2 0名によってそれぞれ評価し、 最も評価数の多い評価結果を当 該官能評価についての判定結果とした。
◎:非常に良い
〇:良い
厶:どちらとも言えない
X :良くない
( 3 ) 総合評価
◎:歯垢除去効果および官能評価の合計で◎が 3つ以上
〇:歯垢除去効果および官能評価の合計で◎が 1 ~ 2または〇が 3つ以上
△:歯垢除去効果および官能評価の合計で Xが 1 ~ 2
:歯垢除去効果および官能評価の合計で Xが 3つ以上
4
試験結果
歯垢除去効果 官能評価
使用歯ブラシ 総合評価 歯頸部 小窩裂溝部 心地良さ 歯間進入性 外観差別性
実施例 1(図 3) 〇 〇 ◎ ◎ ◎ ◎ 実施例 2 (図 4) ◎ 〇 △ ◎ ◎ 実施例 3 (図 5) ◎ ◎ 厶 ◎ ◎ ◎ 実施例 4〈図 6) 〇 ◎ ◎ ◎ 〇 ◎ 実施例 5 (図 7) △ ◎ ◎ Δ ◎ ◎ 実施例 6 (図 8) 〇 〇 ◎ 〇 ◎ ◎ 実施例 7 (図 9) ◎ ◎ ◎ 〇 Δ ◎ 実施例 8 (図 10) ◎ ◎ ◎ ◎ 〇 ◎ 実施例 9 (図 11) 〇 〇 〇 △ Δ 〇 実施例 10(図 12) ◎ 〇 〇 〇 〇 〇 実施例 11(図 13) 〇 ◎ ◎ ◎ 〇 ◎ 実施例 12(図 14) 〇 Δ 〇 厶 ◎ 〇 実施例 13(図 15) △ ◎ ◎ △ ◎ ◎ 実施例 14(図 16) 〇 〇 〇 △ △ 〇 実施例 15(図 Π) ◎ ◎ ◎ 〇 ◎ ◎ 実施例 16(図 18) ◎ △ 〇 〇 〇 〇 実施例 17(図 19) ◎ 〇 ◎ ◎ ◎ ◎ 実施例 18(図 20) ◎ 〇 ◎ ◎ ◎ 実施例 19(図 21) ◎ 〇 ◎ ◎ 〇 ◎ 実施例 20(図 22) ◎ ◎ 〇 〇 ◎ ◎ 実施例 21 (図 23) 〇 ◎ 〇 〇 〇 〇 実施例 22(図 24) ◎ ◎ ◎ 〇 ◎ ◎ 実施例 23 (図 25) 〇 〇 〇 ◎ 〇 〇 実施例 24(図 26) ◎ ◎ 〇 〇 ◎ 比較例 1(図 27) △ X △ X X X 比較例 2 (図 28) X 〇 X △ 〇 △ 比較例 3 (図 29) 厶 X △ X △ X