JPWO2019188772A1 - リチウム複合酸化物、二次電池用電極材料、二次電池及びリチウム複合酸化物の製造方法 - Google Patents

リチウム複合酸化物、二次電池用電極材料、二次電池及びリチウム複合酸化物の製造方法 Download PDF

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Abstract

酸化物結晶粒子と、前記酸化物結晶粒子の表面に複合アニオン化層を備えるスピネル構造のリチウム複合酸化物であって、化学組成を示す一般式が下記式(1)で示され、前記複合アニオン化層は、酸化物結晶粒子の結晶表面の終端酸素原子の少なくとも一部が、硫黄イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、フッ素イオン、窒素イオンからなる群より選択される1種以上のアニオンで置換された層であることを特徴とする、リチウム複合酸化物。LiNia−xMn2−a−yMx+yO4−bAb・・・(1)[0<a≦0.6、0≦b≦1、0≦x≦0.1、0≦y≦0.1、a−x>0.4、2−ay>1.4;Mは、Ti、V、Cr、Fe、Co、Cu、Zu、Snからなる群より選択される1種以上の金属元素;Aは硫黄イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、フッ素イオン、窒素イオンからなる群より選択される1種以上のアニオン]

Description

本発明は、リチウム複合酸化物、二次電池用電極材料、二次電池及びリチウム複合酸化物の製造方法に関する。
本願は、2018年3月30日に、日本に出願された特願2018−066581号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
リチウム複合酸化物は、リチウム二次電池の正極活物質として用いられている。リチウム二次電池は、既に携帯電話用途やノートパソコン用途などの小型電源として実用化されている。更に自動車用途や電力貯蔵用途などの中型、又は大型電源においても適用が試みられている。このように適用範囲の拡大に伴い、リチウム二次電池の性能を向上させることは重要な課題である。
ところで近年では、電解質として固体電解質を用いる、いわゆる固体電池に関する研究が進められている。固体電池は電極のみならず電解質も固体となるため、電極を構成する粒子と電解質を構成する粒子との界面の接触面積は小さくなる。このため、電解質として電解液を用いる場合に比べてリチウムイオンや電子の移動が困難になりやすい。従って、固体電池用途を考慮する場合には、界面状態を制御することが重要となる。
例えば非特許文献1には、溶融塩を溶媒とする結晶成長プロセス(フラックス法)を用いて、リチウムイオン伝導に適した結晶面で覆われた酸化物型リチウムイオン伝導体材料(正・負極活物質および固体電解質)の単結晶粒子を製造したことが記載されている。非特許文献1に記載の方法によれば、リチウムイオン二次電池の急速充放電反応試験において、著しい性能向上が確認されている。
N. Zettsu et al., J. Mater. Chem. A 2015
電池性能の多くは、結晶粒子の表面の原子配列や化学状態で決まることがわかってきている。リチウムイオン電池の種々の電池性能を向上させるため、結晶粒子の表面状態の制御にはさらなる改良の余地がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、種々のリチウムイオン電池性能を向上させ、さらには固体電池にも応用可能なリチウム複合酸化物、これを用いた二次電池用電極材料、二次電池及びリチウム複合酸化物の製造方法を提供することを課題とする。
本発明は下記の[1]〜[12]を包含する。
本発明の第一の態様は、[1]に述べるリチウム複合酸化物を提供する。
[1]酸化物結晶粒子と、前記酸化物結晶粒子の表面に複合アニオン化層を備えるスピネル構造のリチウム複合酸化物であって、化学組成を示す一般式が下記式(1)で示され、前記複合アニオン化層は、酸化物結晶粒子の結晶表面の終端酸素原子の少なくとも一部が、硫黄イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、フッ素イオンからなる群より選択される1種以上のアニオンで置換された層であることを特徴とする、リチウム複合酸化物。
LiNia−xMn2−a−yx+y4−b・・・(1)
[一般式(1)中、0<a≦0.6、0≦b≦1、0≦x≦0.1、0≦y≦0.1、a−x>0.4、2−a−y>1.4である。Mは、Ti、V、Cr、Fe、Co、Cu、Zu、Snからなる群より選択される1種以上の金属元素である。Aは硫黄イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、フッ素イオン、窒素イオンからなる群より選択される1種以上のアニオンである。]
第一の態様のリチウム複合酸化物は、以下の特徴を好ましく含む。
[2]前記アニオンが硫黄イオンである、[1]に記載のリチウム複合酸化物。
本発明の第二の態様は、以下の二次電池用電極材料を提供する。
[3][1]又は[2]に記載のリチウム複合酸化物を含む二次電池用電極材料。
本発明の第三の態様は、以下の二次電池用電極材料を提供する。
[4][3]に記載の二次電池用電極材料を備える二次電池。
本発明の第四の態様は、以下のリチウム複合酸化物の製造方法を提供する。
[5][1]又は[2]に記載のリチウム複合酸化物の製造方法であって、リチウム化合物と、少なくともマンガン及びニッケルを含む前駆体と、反応促進剤とを、混合し、焼成して酸化物結晶粒子を得る工程と、得られた酸化物結晶粒子の結晶表面の終端酸素原子の少なくとも一部を、硫黄イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、フッ素イオン、窒素イオンからなる群より選択される1種以上のアニオンで置換して複合アニオン化層を形成する工程と、を備えるリチウム複合酸化物の製造方法。
さらに、本発明は以下の態様を含む。
[6]前記アニオンがフッ素イオンである、[1]に記載のリチウム複合酸化物。
[7]前記一般式(1)中、bが0より大きい、[1]に記載のリチウム複合酸化物。
[8]上記式(1)において、2−a−y≧1.45である、[1]に記載のリチウム複合酸化物。
[9]LiNi0.5Mn1.53.850.15、LiNi0.5Mn1.5 .90.1、LiNi0.5Mn1.53.920.08、LiNi0.5Mn .53.890.11、及び、LiNi0.5Mn1.53.780.22からなる群から選択される少なくとも1つである、[1]に記載のリチウム複合酸化物。
[10]前記酸化物結晶粒子を得る工程と、前記複合アニオン化層を形成する工程との間に、カーボンナノ粒子を形成する工程を含み、前記カーボンナノ粒子が、前記複合アニオン化層を形成する工程で、前記酸化物結晶粒子に複合アニオン層を形成するために使用される、[5]に記載のリチウム複合酸化物の製造方法。
[11]前記カーボンナノ粒子が、硫黄又はフッ素を含むグラファイト構造を有する、[10]に記載のリチウム複合酸化物の製造方法。
[12]前記カーボンナノ粒子が、ベンゼン、トルエン、ピリジン、チオフェン、フルオロベンゼンからなる群から選択される少なくとも1つの化合物から、ソリューションプラズマ反応によって形成される、[10]に記載のリチウム複合酸化物の製造方法。
本発明によれば、種々のリチウムイオン電池性能を向上させ、さらには固体電池にも応用可能なリチウム複合酸化物、これを用いた二次電池用電極材料、二次電池、及びリチウム複合酸化物の製造方法を提供することができる。
実施例において製造したコイン型電池の概略断面図である。 実施例1及び比較例1のリチウム複合酸化物の粉末XRDパターンを示す図である。 実施例3〜5及び比較例1のリチウム複合酸化物の粉末XRDパターンを示す図である。 実施例3〜5及び比較例1のフッ素置換リチウム複合酸化物と酸素欠損型リチウム複合酸化物の結晶形態のSEM画像を示す図である。 実施例1と2、及び比較例1で得られた化合物について、硫黄置換による価電子帯スペクトル測定変化の結果を示す図である。 実施例1〜5及び比較例1における、定電流充放電曲線の結果を示す図である。 実施例3〜5と比較例1における、フッ素置換による負荷特性に及ぼす効果を調べた結果を示す図である。 実施例1〜2における、硫黄置換体を正極活物質とするR2032型ハーフセルの交流インピーダンス測定の結果を示す図である。
以下に、本発明を実施するための好ましい例について詳細に説明する。以下の説明は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。本発明の範囲内において、特に制限の無い限り、必要に応じて、数、量、材料、形状、位置、種類などを、変更、追加、省略、及び/又は交換することも可能である。
<リチウム複合酸化物>
本実施形態は、酸化物結晶粒子と、前記酸化物結晶粒子の表面に複合アニオン化層を備えるスピネル構造のリチウム複合酸化物である。
本実施形態のリチウム複合酸化物は、化学組成を示す一般式が下記式(1)で示される。複合アニオン化層は、酸化物結晶粒子の結晶表面の終端酸素原子の少なくとも一部が、硫黄イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、フッ素イオン、窒素イオンからなる群より選択される1種以上のアニオンで置換されている層である。
LiNia−xMn2−a−yx+y4−b・・・(1)
[一般式(1)中、0<a≦0.6、0≦b≦1、0≦x≦0.1、0≦y≦0.1、a−x>0.4、2−a−y>1.4である。Mは、Ti、V、Cr、Fe、Co、Cu、Zu、Snからなる群より選択される1種以上の金属元素である。Aは硫黄イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、フッ素イオン、窒素イオンからなる群より選択される1種以上のアニオンである。]
本実施形態において、「酸化物結晶粒子の表面」とは、例えば表面から少なくともXPS(X線光電子分光法)で確認できる深さまでの領域である。具体的には、例えばリチウム複合酸化物の表面から100nmまでの領域は含まれる。「酸化物結晶粒子の表面」には、一次粒子の表面に加え、一次粒子が凝集することにより形成される二次粒子の表面も含むものとする。すなわち、酸化物結晶粒子の表面とは、一次粒子の表面であってもよく、二次粒子の表面であってもよく、あるいは、一次粒子と二次粒子の両方の表面であってよい。
・化学組成式
本実施形態のリチウム複合酸化物は、化学組成が下記式(1)で表される。
LiNia−xMn2−a−yx+y4−b・・・(1)
[一般式(1)中、0<a≦0.6、0≦b≦1、0≦x≦0.1、0≦y≦0.1、a−x>0.4、2−a−y>1.4である。Mは、Ti、V、Cr、Fe、Co、Cu、Zu、Snからなる群より選択される1種以上の金属元素である。Aは硫黄イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、フッ素イオン、窒素イオンからなる群より選択される1種以上のアニオンである。]
上記式(1)において、a−x≧0.5が好ましい。
上記式(1)において、2−a−y≧1.45が好ましく、2−a−y≧1.48がより好ましい。
上記式(1)において、0<x+y≦0.1が好ましく、0<x+y≦0.08がより好ましい。
上記式(1)において、0≦b≦0.5が好ましく、0≦b≦0.3がより好ましい。前記bの範囲は、0<b≦1.0であってもよく、0<b≦0.7であることが好ましく、0<b≦0.6であることも好ましく、0<b≦0.2であることも好ましい。
前記aは、必要に応じて、0<a≦0.10、0.10<a≦0.30、及び0.30<a≦0.60の何れかであってもよい。
前記xは、必要に応じて、0≦x≦0.03、0.03≦x≦0.06、及び0.06≦x≦0.10のいずれであってもよい。
前記yは、必要に応じて、0≦x≦0.03、0.03≦x≦0.06、及び0.06≦x≦0.10のいずれであってもよい。
Aは硫黄イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、フッ素イオン、窒素イオンからなる群より選択される1種以上のアニオンである。
・複合アニオン化層
本実施形態のリチウム複合酸化物は、表面に複合アニオン化層を備える。複合アニオン化層は、酸化物結晶粒子の結晶表面の終端酸素原子の少なくとも一部が、硫黄イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、フッ素イオン、窒素イオンからなる群より選択される1種以上のアニオンで置換されている層である。複合アニオン化層の厚さは任意に選択できる。例えば、0nmを超え5nm以下の厚みであってもよく、1nm以上3nm以下の厚みであってもよいが、これらのみに限定されない。
複合アニオン化層を形成することにより、リチウム複合酸化物単体では得ることができない新たな機能を有するリチウム複合酸化物となる。特定のアニオンに置換されている複合アニオン化層は、ヤング率が低い層である。このため、リチウム複合酸化物表面が柔軟であり、充放電に伴うリチウムイオンの吸蔵と脱離の際の抵抗が小さくなると考えられる。
例えば、本実施形態のリチウム複合酸化物をバルク型の固体電池の固体電解質に用いた場合、結晶構造の格子定数を制御でき、活物質層と固体電解質層との界面抵抗を低減できる。さらに、バンド構造を制御でき、電子の局在化を防止できる。
また、本実施形態のリチウム複合酸化物を正極活物質又は負極活物質として用いた場合、電荷移動抵抗を低抵抗化できる。また、格子定数を制御できるため、異相界面での格子歪みや格子ずれを解消できる。
置換するアニオン種は、リチウム複合酸化物の表面に所望の機能を付与するため、適宜選択すればよい。例えば、Aとして硫黄イオンを選択した場合、リチウム複合酸化物の表面のヤング率を、硫化物相当の低ヤング率とすることができる。これにより、リチウム複合酸化物単体では達成困難な、約15℃から20℃の室温近傍温度での異相界面形成を行うことができる。リチウム複合酸化物の表面にこのような機能を付与する場合には、Aとして硫黄イオンを選択することが好ましい。
<リチウム複合酸化物の製造方法>
本実施形態のリチウム複合酸化物の製造方法は、リチウム化合物と、少なくともマンガン及びニッケルを含む前駆体と、反応促進剤(フラックス)とを、前記式(1)で表される組成比となるように混合し、酸化物結晶粒子を得る工程と、得られた酸化物結晶粒子の表面に複合アニオン化層を形成する工程とを備える。
[酸化物結晶粒子を得る工程]
本工程では、リチウム化合物と、少なくともマンガン及びニッケルを含む前駆体と、反応促進剤(フラックス)とを混合し、混合物を形成する。リチウム化合物と、少なくともマンガン及びニッケルを含む前駆体の混合物を先に形成してもよい。混合方法としては、特に限定されることはなく、一般的な混合機を使用することができる。たとえば、シェーカミキサ、Vブレンダ、リボンミキサ、ジュリアミキサ、レーディゲミキサなどを使用することができ、微粉が発生しない程度に十分に混合されればよい。また本工程では、得られた混合物について、後述する焼成を行う。
・リチウム化合物
本実施形態で使用するリチウム化合物は、必要に応じて選択できる。好ましい例として、水酸化リチウム、塩化リチウム、硝酸リチウムおよび炭酸リチウムからなる群より選ばれる1種以上の無水物並びに該1種以上の水和物を挙げることができる。
・少なくともマンガン及びニッケルを含む前駆体
本実施形態で使用する少なくともマンガン及びニッケルを含む前駆体は、必要に応じて選択できる。
好ましい例として、マンガンを含む前駆体として、硝酸マンガン六水和物、硫酸マンガン五水和物、塩化マンガン4水和物の少なくとも1種を挙げることができる。
ニッケルを含む前駆体として、硝酸ニッケル六水和物、硫酸ニッケル五水和物、塩化ニッケル4水和物の少なくとも1種を挙げることができる。マンガン及びニッケルの両方を含む前駆体を用いてもよい。なお本発明は上記例のみには限定されない。
・反応促進剤(フラックス)
本実施形態で使用する反応促進剤(フラックス)は、必要に応じて選択できる。具体的には、NaCl、KCl、RbCl、CsCl、CaC1、MgCl、SrCl、LiCl、BaCl及びNHClなどの塩化物、NaCO、KCO、RbCO、CsCO、CaCO、MgCO、SrCO及びBaCOなどの炭酸塩、KSO、NaSOなどの硫酸塩、NaF、KF、NHFなどのフッ化物、等が挙げられる。
この中でも、KCl、KCO、KSOが好ましい。また、反応促進剤を2種以上併用することもできる。2種以上を使用する場合はその比率は任意に選択できる。
反応促進剤を混合物に含有させる方法や条件や量やタイミングは特に限定されず、必要に応じて選択できる。例えば、少なくともマンガン及びニッケルを含む前駆体をリチウム化合物と混合するときに、反応促進剤を添加すればよい。
反応促進剤は、焼成後の酸化物結晶粒子に残留していてもよく、洗浄、蒸発等により除去されていてもよい。
以下に、酸化物結晶粒子を得る工程における焼成について、説明する。
本工程においては、リチウム化合物と、少なくともマンガン及びニッケルを含む前駆体とを、前記式(1)で表される組成比となるように混合し、反応促進剤の存在下で、すなわち、反応促進剤を更に含んだ混合物の焼成を行うことで、混合物の反応を促進させることができる。反応促進剤を加えるタイミングは任意に選択できる。
焼成における保持温度は、用いる遷移金属元素の種類、沈殿剤、及び反応促進剤の種類や、量に応じて、適宜調整すればよい。
本実施形態においては、保持温度の設定は、反応促進剤の融点を考慮することが好ましい。反応促進剤の融点マイナス200℃以上反応促進剤の融点プラス200℃以下の範囲で、焼成における保持を行うことが好ましい。
保持温度として、具体的な例としては、200℃以上1150℃以下の範囲を挙げることができ、300℃以上1050℃以下が好ましく、500℃以上1000℃以下がより好ましい。
また、前記保持温度で保持する時間も必要に応じて選択できるが、例えば、0.1時間以上20時間以下が挙げられ、0.5時間以上10時間以下が好ましい。前記保持温度までの昇温速度は、通常50℃/時間以上400℃/時間以下であることが好ましく、前記保持温度から室温までの降温速度は、通常10℃/時間以上400℃/時間以下であることが好ましい。
なお焼成における環境は任意に選択できるが、例えば乾燥空気雰囲気下、酸素雰囲気下、不活性雰囲気下で行われることが好ましい。
焼成工程により、得られる酸化物結晶粒子の表面に、酸素欠損が自発的に生じる。
酸化物結晶粒子の粒径は任意に選択できる。例を挙げると、酸化物結晶粒子の一次粒子の粒径は、0.1μm以上2.0μm以下であってもよく、0.2μm以上1.9μm以下であってもよく、0.3μm以上1.8μm以下がより好ましい。一次粒子の粒径は、走査型電子顕微鏡により得られた画像から得ることができる。
酸化物結晶粒子は、以下の一般式で示される組成を有することが好ましい。
LiNia−xMn2−a−yx+y ・・・(2)
(一般式(2)中、0<a≦0.6、0≦x≦0.1、0≦y≦0.1、a−x>0.4、2−a−y>1.4である。Mは、Ti、V、Cr、Fe、Co、Cu、Zu、Snからなる群より選択される1種以上の金属元素である。)
[複合アニオン化層を形成する工程]
本工程では、上記酸化物結晶粒子とカーボンナノ粒子を用いて、酸化物結晶粒子に複合アニオン化層を形成する。
・カーボンナノ粒子を得る工程
本工程は、カーボンナノ粒子を得ることができれば特に限定されない。例えば非特許文献「“Enhancement of ORR Catalytic Activity
by Multiple Hetero−atom Doped Carbon Materials”Phys.Chem.Chem.Phys.,2015,17,407」に記載の方法に従ってカーボンナノ粒子の形成を実施できる。
具体的には、上記文献の方法に従い、アニオン源には任意のアニオン種を含むカーボンナノ粒子を好ましく用いる。このようなカーボンナノ粒子は、液中でのグロー放電プラズマ反応場で重合し、製造できる。任意のアニオン種の例としては、硫黄イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、フッ素イオン、窒素イオンからなる群より選択される1種以上のアニオンなどが挙げられる。ベンゼンやトルエンなどの芳香族低分子化合物に、ピリジンやチオフェンなどの複素環式化合物である複素環ビルディングブロック、及び/又はフルオロベンゼンなどの上記芳香族化合物の部分ハロゲン化物を、混合した溶液を、ソリューションプラズマ反応により、より具体的には、ソリューションプラズマ反応場で重合する。この反応により、カーボンナノ粒子を、より具体的には擬グラファイト構造をもつカーボンナノ粒子を、得ることができる。前記擬グラファイト構造とは、例えば六角格子構造であることを意味する。
ソリューションプラズマを発生させるためのパルス電圧の印加条件は、任意に選択でき、例えば二次電圧を1000V以上2000V以下、パルス幅を1.0μs以上2.0μs以下、繰り返し周波数を10kHz以上30kHz以下とすればよい。
またソリューションプラズマを実施する時間は任意に選択できるが、例えば1分間から20分間実施すればよく、5分間以上15分間以下が好ましい。
ソリューションプラズマ反応は液体で行われるため、液中でのプラズマによる処理の後、所定の温度で、処理が終わった溶液を乾燥させてもよい。乾燥温度は任意に選択できるが80℃以上200℃以下の温度が例として挙げられる。
前記芳香族低分子化合物は必要に応じて任意に選択することができ、例えば、ベンゼンやチオフェンなどであってもよい。
芳香族低分子化合物の分子量は任意に選択でき、例えば10以上200以下、50以上150以下である。
前記複素環式化合物は必要に応じて任意に選択することができ、例えば、ピリジン、チオフェンなどであってもよい。
前記複素環式化合物の分子量は任意に選択でき、例えば10以上200以下、50以上150以下である。
上記芳香族化合物の部分ハロゲン化物は必要に応じて任意に選択することができ、例えば、フッ化物、ヨウ化物、塩化物などであってもよい。
このハロゲン化物の分子量は任意に選択でき、例えば10以上200以下、50以上150以下である。
なお必要に応じて、芳香族低分子化合物は使用を省略することも可能である。
なお本発明で使用できるカーボンナノ粒子の粒径は任意に選択できる。例を挙げると1nm以上10nm以下であってもよく、2nm以上9nm以下であってもよく、3nm以上8nm以下がより好ましい。 また本発明で使用されるカーボンナノ粒子は、グラファイト骨格部分を少なくとも有することが好ましい。前記骨格部分は、炭素以外の元素を含んでも良い。複素環式化合物をソリューションプラズマ条件下で重合させた、前記グラファイト骨格部分を少なくとも有するカーボンナノ粒子であることがより好ましい。前記グラファイト構造には、窒素や硫黄やフッ素などのアニオン種を、その骨格中に含むことができる。また、本発明で使用されるカーボンナノ粒子の具体例としては、硫黄置換ヘテロナノカーボン粒子や、フッ素置換ヘテロナノカーボン粒子を挙げることができる。
・酸化物結晶粒子とカーボンナノ粒子とを反応させる工程
硫黄を含むカーボンナノ粒子を用いて、硫黄イオンで置換した複合アニオン化層を形成する場合を例に説明する。
酸化物結晶粒子とカーボンナノ粒子は混合し、必要に応じて選択される温度で焼成される。焼成温度は任意に選択でき、例を挙げれば、300℃以上1000℃以下、400℃以上900℃以下、500℃以上800℃以下である。
焼成時間は任意に選択でき、例えば1時間以上20時間以下、2時間以上15時間以下である。酸化物結晶粒子とカーボンナノ粒子の混合比は任意に選択できるが、例えば、モル比で、酸化物結晶粒子:カーボンナノ粒子=80〜90:10〜20が挙げられる。
本例では、酸素欠損した酸化物結晶粒子結晶と、硫黄を含むカーボンナノ粒子を500℃以下の温度で焼成する。
このような焼成により、LiNia−xMn2−a−yx+y4−bで表されるリチウム複合酸化物を製造することができる。
また、焼成の雰囲気としては、大気、酸素、窒素、アルゴンまたはそれらの混合ガスを用いることができる。すなわち、不活性ガス、中性ガス、酸化性ガスなどの雰囲気下を使用することができるが、大気雰囲気が好ましい。
本実施形態において、複合アニオン化層が形成されていることの確認方法は、X線回折測定、X線光電子分光測定、紫外線光電子分光測定等により行うことができる。
得られたリチウム複合酸化物の塊状物は、必要に応じてロールミル等の解砕機にて解砕され、残留リチウム成分や反応促進剤を除去するために洗浄され、乾燥に付される。
なお、乾燥粉末は、必要に応じロールミル等により解砕される。ここで、解砕とは、凝集粒子を分散することや、解きほぐすことをいう。
得られたリチウム複合酸化物の粒子の粒径は任意に選択できる。例えば粒子単体(一次粒子)の粒径は0.1μm以上2.0μm以下であってもよく、0.2μm以上1.9μm以下であってもよく、0.3μm以上1.8μm以下がより好ましい。一次粒子の粒径は、走査型電子顕微鏡により得られた画像から得ることができる。得られたリチウム複合酸化物の形状は任意に選択できるが、例えば、八面体形状、概略八面体形状、又は、切頂面及び/又は切稜面を有する八面体形状又は概略八面体形状であってよい。これら酸化物は多孔質であってもよい。
<二次電池用電極材料>
本実施形態は、前記リチウム複合酸化物を用いた二次電池用電極材料である。二次電池用電極材料としては、二次電池用正極活物質、二次電池用負極活物質、固体電池用電解質等が挙げられる。
<リチウム二次電池用正極>
本実施形態のリチウム二次電池用正極は、上記した本発明のリチウム複合酸化物を有すること以外は限定されるものではない。
本実施形態の正極は、まず本発明のリチウム複合酸化物、導電材およびバインダーを含む正極合剤を調整することで製造することができる。
(導電材)
本実施形態の正極が有する導電材としては、炭素材料を用いることができる。炭素材料として黒鉛粉末、カーボンブラック(例えばアセチレンブラック)、繊維状炭素材料などを挙げることができる。カーボンブラックは、微粒で表面積が大きいため、少量を正極合剤中に添加することにより正極内部の導電性を高め、充放電効率および出力特性を向上させることができる、ただし、多く入れすぎるとバインダーによる正極合剤と正極集電体との結着力、および正極合剤内部の結着力がいずれも低下し、かえって内部抵抗を増加させる原因となる。よって適切な量で使用されることが好ましい。
(バインダー)
本実施形態の正極が有するバインダーとしては、熱可塑性樹脂を用いることができる。この熱可塑性樹脂の例としては、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVdFということがある。)、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEということがある。)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオロビニルエーテル系共重合体などのフッ素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;を挙げることができる。
正極合剤をペースト化する場合、用いることができる有機溶媒としては、N,N―ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミンなどのアミン系溶媒;テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒;酢酸メチルなどのエステル系溶媒;ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPということがある。)などのアミド系溶媒;が挙げられる。
<リチウム二次電池>
本発明のリチウム二次電池は、上記した本発明のリチウム複合酸化物を用いること以外は、限定されるものではない。
すなわち、本発明のリチウム二次電池は、上記したリチウム二次電池用正極を有すること以外は、従来公知のリチウム二次電池と同様の構成とすることができる。本発明のリチウム二次電池は、正極、負極、電解液、その他必要な部材を有する構成とすることができる。
(負極)
負極の活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出できる化合物を単独乃至は組み合わせて用いることができる。リチウムイオンを吸蔵及び放出できる化合物の一例としては、リチウム等の金属材料、チタン、ケイ素、スズ等を含有する合金材料、グラファイト、コークス、有機高分子化合物焼成体又は非晶質炭素等の炭素材料、その他、酸化ケイ素、LiCoN、CuO、Vなどのセラミックス材料、酸化ケイ素の表面を炭素で被覆した複合体、炭素マトリクス中にナノシリコンを分散させた複合体およびその混合物が挙げられる。
これらの活物質は単独で用いるだけでなく、これらを複数種類混合して用いることもできる。これらの物質のうち、負極活物質として、チタン含有酸化物(たとえば、ブロンズ構造の酸化チタンであるTiO(B)、チタン酸リチウムであるLiTi12)を用いることが好ましい。
例えば、負極活物質としてリチウム金属箔を用いる場合、銅等の金属からなる集電体の表面にリチウム箔を圧着することで形成できる。
また、負極活物質として合金材料、炭素材料を用いる場合は、負極活物質と結着材、導電助剤等を水、N−メチルピロリドン等の溶媒中で混合した後、銅等の金属からなる集電体上に塗布され形成することができる。上記結着材としては、高分子材料から形成されることが望ましく、リチウム二次電池内の雰囲気において化学的・物理的に安定な材料であることが望ましい。
例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ポリイミド(PI)、フッ素ゴム等が挙げられる。
また導電助剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、グラフェン、非晶質炭素等などが例示できる。また、導電性高分子ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセンなどが例示できる。
電解液は、正極及び負極の間のイオンなどの荷電担体の輸送を行う媒体であり、特に限定しないが、リチウムイオン二次電池が使用される雰囲気下で物理的、化学的、電気的に安定なものが望ましい。
(電解液)
例えば、電解液としては、LiBF、LiPF、LiCFSO、LiN(CF SO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)の中から選ばれた1種以上を支持電解質とし、これを有機溶媒に溶解させた電解液が好ましい。
有機溶媒としては任意に選択でき、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等及びこれらの混合物が例示できる。中でもカーボネート系溶媒を含む電解液は、高温での安定性が高いことから好ましい。また、ポリエチレンオキサイドなどの固体高分子に上記の電解質を含んだ固体高分子電解質やリチウムイオン伝導性を有するセラミック、ガラス等の固体電解質も使用可能である。
正極と負極との間には、電気的な絶縁作用とイオン伝導作用とを両立する部材であるセパレータを介装することが望ましい。電解質が液状である場合にはセパレータは、液状の電解質を保持する役割をも果たす。セパレータとしては、多孔質合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)やガラス繊維からなる多孔質膜、不織布が例示できる。更に、セパレータは、正極及び負極の間の絶縁を担保する目的で、正極及び負極よりも更に大きい形態を採用することが好ましい。
正極、負極、電解質、セパレータなどは何らかのケース内に収納することが一般的である。ケースは、特に限定されるものではなく、公知の材料、形態で作成することができる。すなわち、本発明のリチウム二次電池は、その形状には特に制限を受けず、コイン型、円筒型、角型等、種々の形状の電池として使用できる。また、本発明のリチウム二次電池のケースについても限定されるものではなく、金属製あるいは樹脂製のその外形を保持できるケース、ラミネートパック等の軟質のケース等、種々の形態の電池として使用できる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(1)リチウム複合酸化物の製造
リチウム複合酸化物のリチウム源として塩化リチウムを、ニッケル源として硝酸ニッケル六水和物を、マンガン源として硝酸マンガン六水和物をLi:Ni:Mnのモル比が1.0:0.50:1.5となるように混合した。フラックスとして、塩化リチウムと塩化カリウムの混合液を用いた。フラックスの量は溶質に対して重量比で約5倍とした。これらをアルミナ製のるつぼに投入した。るつぼを電気炉内に入れ、大気雰囲気下で、加熱温度:15℃/分、保持時間:10時間、保持温度:700℃、冷却速度:200℃/時間、停止温度:500℃の条件で加熱処理をした。加熱処理後、温水に浸漬してフラックスを除去した。これにより、実施例1ではLiNi0.5Mn1.54‐δの酸素欠損型リチウム複合酸化物を得た。
(2)硫黄置換ヘテロナノカーボン粒子の合成
原料化合物として、常温で液体のチオフェン(シグマアルドリッチ(株)製)を80mL用意し、これらを原料化合物液として用いた。ついで、原料化合物液中でプラズマを発生させた。この実施例においては、上記で用意した原料化物液を、ガラス製のビーカーからなる容器に入れ、マグネチックスターラーからなる撹拌装置により撹拌を行った。また、プラズマを発生させるための一対の電極が用意された。これら電極は、所定の間隔を以て原料化合液中に配設され、絶縁部材としてのフッ素樹脂を介して、ガラス製のビーカー中に保持した。
具体的には、この実施例においては、電界を局所的に集中させることが可能な針状の電極を用いた。電極は、直径が1.0mmのタングステンワイヤー(ニラコ社製)で構成し、電極間距離を0.3mmに設定した。この他、電界集中を妨げる余分な電流を抑えるために先端部(例えば、数mm程度)のみを露出させて、後の部分はフッ素樹脂からなる絶縁部材で絶縁した。
この実施例では、絶縁部材は電極を容器に固定するとともに、電極と容器との水密を保つための栓をも兼ねた構成となっている。すなわち、絶縁部材は蓋としても使用された。電極は外部電源に接続されており、この外部電源から所定の条件のパルス電圧が印加される。外部電源としては、バイポーラパルス電源(株式会社栗田製作所製、MPP04−A−30)を用いた。
本実例において、ソリューションプラズマを発生させるためのパルス電圧の印加条件は、二次電圧:1500V、パルス幅:1.5μs、繰り返し周波数:20kHzとし、この条件で、各原料化合物含有液中にソリューションプラズマを発生させた。当初、原料化合物含液は無色透明であったが、液中プラズマの発生直後から黄色みを帯び、約5分後には褐色に変色し、約10分後には黒色で不透明に変化した。この変色は、原料化合物であるチオフェンが重合してグラファイト骨格を形成したためであると考えられる。
このような液中プラズマによる処理の後、溶液を約100℃で乾燥させると、ビーカーの底に黒色の粉末が得られた。以上のように、原料化合物液中で約60分間にわたり液中でプラズマを発生させることにより、約0.30gの黒色粉末を得た。この粉末を乳鉢で粉砕して微細化した。微細化物の、FT−IRやX線回折などの分析から、チオフェンが重合してグラファイト骨格が形成されていることを確認できた。X線光電子分光測定の結果から、本実施形態で得られた硫黄置換ヘテロナノカーボン粒子に含まれるCとOとSの組成比は63.3:12.4: 24.3at%であった。
(3)硫黄置換リチウム複合酸化物の製造
上記で製造した酸素欠損型リチウム複合酸化物と硫黄置換ヘテロナノカーボン粒子を85:15のモル比で混合した。これをアルミナ製のるつぼに投入した。るつぼを電気炉内に入れ、700℃で10時間、大気中で加熱処理をした。化学組成比はX線光電子分光測定から求めた。これにより、実施例1ではLiNi0.5Mn1.53.850.1 の硫黄置換リチウム複合酸化物を得た。
<実施例2>
(1)硫黄置換リチウム複合酸化物の製造
上記実施例1で製造した酸素欠損型リチウム複合酸化物と硫黄置換ヘテロナノカーボン粒子を90:10のモル比で混合したこと以外は、上記実施例1と同様の方法により、置換量の異なる硫黄置換リチウム複合酸化物を得た。実施例2ではLiNi0.5Mn1. 3.90.1の硫黄置換リチウム複合酸化物を得た。
<実施例3>
(1)フッ素置換ヘテロナノカーボン粒子の合成
原料化合物として、チオフェンのかわりに、常温で液体のフルオロベンゼン(シグマアルドリッチ(株)製)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様の方法により、フッ素置換ヘテロカーボン粒子を得た。原料化合物液中で約60分間にわたり液中でプラズマを発生させることにより、約0.60gの黒色粉末を得た。本実施形態で得られたフッ素置換ヘテロナノカーボン粒子に含まれるCとOとFの組成比は93.9: 3.64: 2.37at% であった。
(2)フッ素置換リチウム複合酸化物の合成
上記実施例1で製造した酸素欠損型リチウム複合酸化物を、前記フッ素置換ヘテロナノカーボン粒子と以下のモル比で混合したこと以外は、上記実施例1と同様の方法によりフッ素置換リチウム複合酸化物を得た。実施例3では、酸素欠損型リチウム複合酸化物とフッ素置換ヘテロナノカーボン粒子を10:1のモル比で混合することにより、LiNi0. 5Mn1.53.920.08のフッ素置換リチウム複合酸化物を得た。
<実施例4>
(1)フッ素置換リチウム複合酸化物の合成
上記実施例1で製造した酸素欠損型リチウム複合酸化物を、前記フッ素置換ヘテロナノカーボン粒子と以下のモル比で混合こと以外は、上記実施例1と同様の方法によりフッ素置換リチウム複合酸化物を得た。実施例4では、酸素欠損型リチウム複合酸化物とフッ素置換ヘテロナノカーボン粒子を5:1のモル比で混合することにより、LiNi0.5Mn1 .53.890.11のフッ素置換リチウム複合酸化物を得た。
<実施例5>
(1)フッ素置換リチウム複合酸化物の合成
上記実施例1で製造した酸素欠損型リチウム複合酸化物を、前記フッ素置換ヘテロナノカーボン粒子と以下のモル比で混合こと以外は、上記実施例1と同様の方法によりフッ素置換リチウム複合酸化物を得た。実施例5では、酸素欠損型リチウム複合酸化物とフッ素置換ヘテロナノカーボン粒子を5:2のモル比で混合することにより、LiNi0.5Mn1 .53.780.22のフッ素置換リチウム複合酸化物を得た。
<コイン型電池の製造>
本実施例及び比較例のリチウム複合酸化物を、リチウムイオン二次電池の正極として用いたコイン型のリチウムイオン二次電池を製造した。
図1は、作成したコイン型電池10の概略断面図である。正極1として上記で作製した実施例1〜5の硫黄ならびにフッ素置換リチウム複合酸化物を、および比較例1として、実施例1で形成した酸素欠損型リチウム複合酸化物をそれぞれ用いた。正極1は、正極活物質1bがアルミニウムよりなる集電体1の表面に形成されている。負極2は、リチウム金属よりなる負極活物質2bが負極集電体2aの表面に一体に形成されている。電解液にはエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを質量比で7:3になるように混合した有機溶媒に、LiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように添加した、非水溶媒電解液3を用いた。
正負極間には、セパレータ7(ポリエチレン製の多孔質膜)を挟持した。上述の正極1や負極2などの発電要素を、上述の非水電解液と共に、ステンレス製のケース(正極ケース4と負極ケース5から構成されている)中に収納した。正極ケース4と負極ケース5との間の絶縁性とを担持した。
具体的には、以上のようにして、本実施例のコイン型のリチウムイオン二次電池が製造された。
まず、上記の方法で得られた各リチウム複合酸化物(正極活物質)と導電材(デンカブラック)とバインダー(ポリフッ化ビニリデン)とを、正極活物質:導電材:バインダー=90:5:5(質量比)の組成となるように加えて混練した。このことにより、ペースト状(粘度;5.12Pa・s)の正極合剤を調製した。正極合剤の調製時には、N−メチル−2−ピロリドンを有機溶媒として用いた。
得られた正極合剤を、集電体となる厚さ20μmのAl箔に塗布して120℃で8時間真空乾燥を行い、正極を得た。この正極の電極面積は1.65cmとした。つまり、正極1は、リチウム複合酸化物よりなる正極活物質1bがアルミ箔よりなる集電体1aの表面に一体に形成されている。
負極2は、リチウム金属よりなる負極活物質2bが負極集電体2aの表面に一体に形成されている。
電解液には、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを質量比で7:3になるように混合した有機溶媒に、LiPFを1.0mol/Lの濃度となるように添加した、非水溶媒電解液3を用いた。
正負極間に、セパレータ7(ポリエチレン製の多孔質膜)を挟持させた、発電要素を、上述の非水電解液と共に、ステンレス製のケース(正極ケース4と負極ケース5から構成されている)中に収納した。正極ケース4と負極ケース5とは正極端子と負極端子とを兼ねている。
正極ケース4と負極ケース5との間には、ポリプロピレン製のガスケット6を介装することで、密閉性と正極ケース4と負極ケース5との間の絶縁性とを担保した。
以上により、本実施例のコイン型のリチウムイオン二次電池が製造された。
<評価>
≪粉末XRD測定≫
製造された実施例1〜5の、硫黄ならびにフッ素置換リチウム複合酸化物と、酸素欠損型リチウム複合酸化物の結晶構造を、粉末XRD測定により評価した。それぞれのリチウム複合酸化物の粉末XRDパターンを、図2と図3にそれぞれ示す。図2は、実施例1で得られた酸素欠損型リチウム複合酸化物と、硫黄置換リチウム複合酸化物の評価結果を表す。図3は、実施例1で得られた酸素欠損型リチウム複合酸化物と、実施例3〜5で得られたフッ素置換リチウム複合酸化物の評価結果を表す。いずれにおいても、酸素または酸素欠陥を異種アニオンと置換することにより、回折線は低角側にシフトした。このとき、置換量に伴い広角側へのシフト量は大きくなる傾向にあった。
≪SEM観察≫
製造された実施例1〜5の硫黄ならびにフッ素置換リチウム複合酸化物と酸素欠損型リチウム複合酸化物の結晶形態を、FE−SEM観察により評価した。硫黄置換体に関しては無置換体と比べて変化はなく、いずれにおいても八面体形状の結晶が観察された。また置換量に対する影響も見られなかった。一方で、フッ素置換体では、図4に示す通り置換により切頂面や切稜面が出現し、さらに過剰のF置換では結晶の多孔質化が認められた。置換するアニオンの価数やイオン半径による変化が形態変化に反映されたと考える。図4に、実施例1で得られた酸素欠損型リチウム複合酸化物と、実施例3〜5で得られたフッ素置換リチウム複合酸化物を示す。
≪価電子帯スペクトル測定≫
製造された実施例1〜5の硫黄ならびにフッ素置換リチウム複合酸化物と酸素欠損型リチウム複合酸化物の電子状態を、X線光電子分光法による価電子帯スペクトル測定により評価した。いずれにおいても、アニオンを格子酸素または酸素欠陥と置換することにより、フェルミレベル近傍における電子密度の増大が認められた。
一例として、実施例1と2で形成された化合物に基づく、硫黄置換による価電子帯スペクトル測定変化の結果を図5に示す。縦軸の強度は電子密度に依存し、横軸の0の位置がフェルミ準位近傍に相当する。このことから、上記のように格子酸素または酸素欠陥を硫黄イオンと置換することにより、フェルミレベル近傍における電子密度が増大していることがわかる。このとき、置換量に対して変化量の変化はほとんどない。これらの結果は、電子伝導性が増大していることと同じ意味である。
フッ素イオン置換においても同様の効果が認められている。第一原理DFT計算の結果から、硫黄イオンやフッ素イオンが配位したMnまたはNiなどのフェルミ準位近傍の電池密度の顕著な増大が認められた。
≪定電流充放電測定≫
実施例1〜5の硫黄ならびにフッ素置換リチウム複合酸化物と酸素欠損型リチウム複合酸化物の結晶を電極活物質とする、R2032型ハーフセルを形成した。このハーフセルについて、開回路電圧が安定した後、25℃で0.2Cとして、4.8Vとなるまで充電し、その後3.5Vとなるまで放電したときの定電流充放電曲線の結果を図6にまとめた。
アニオンを格子酸素または酸素欠陥と置換することにより、比容量の増大が見られる。これは、結晶表面におけるリチウムイオンの脱挿入反応が高効率化された結果、反応抵抗が低くなった可能性を示唆している。また、フッ素置換体においては、非特許文献「Dae−wook Kim et al, Full picture discovery
for mixed−fluorine anion effects on high−voltage spinel lithium nickel manganese oxide cathodes, NPG Asia Materials (2017)
9,」記載の結果と類似の結果であり、過剰のF置換によるレドックス不活性Mn3+/Mn4+生成によるものと考えられる。いずれにおいても、アニオンを格子酸素または酸素欠陥と置換することにより、電極電解液界面におけるリチウムイオン拡散が高効率化されることが認められた。これは酸素よりも分極率が低いアニオンを置換したことにより、リチウムイオンを束縛する力が弱くなりリチウムイオンが高効率に移動できるようになったと考えられる。
≪負荷特性試験≫
実施例1〜5の硫黄ならびにフッ素置換リチウム複合酸化物と酸素欠損型リチウム複合酸化物の結晶を電極活物質とするR2032型ハーフセルについて、開回路電圧が安定した後、25℃で0.2〜5Cとして、4.8Vとなるまで充電し、その後3.5Vとなるまで、充電時と同じ0.2〜5Cの電流密度で放電したときの放電容量変化を調べた。いずれの場合においても、アニオンを格子酸素または酸素欠陥と置換することにより、高い電流密度条件下でも大きな放電容量が得られた。
一例として、実施例3〜5で形成された化合物に基づく、フッ素置換による負荷特性に及ぼす効果を調べた結果を図7に示す。フッ素置換により高い電流密度条件下でも大きな放電容量が得られた。さらに、置換量と放電容量は線径の関係ではなく、特定の置換量で放電容量は最大値をとることがわかった。本実施形態では、LiNi0.5Mn1.5 3.890.11のときに最も優れた負荷特性が得られることがわかった。
同様の結果は硫黄置換体においても見られる。負荷特性が最大値を示す置換量には最大値があり、過剰の置換は内部抵抗が増大する。例えば、過剰置換による内部抵抗の増大は交流インピーダンス測定の結果からも認められる。図8には、上記硫黄置換体を正極活物質とするR2032型ハーフセルの交流インピーダンス測定の結果を示す。電池を作製し、開回路電圧が安定した後、25℃で測定した。充電を一度行っていない電池をもちいた。
酸素欠損型の無置換体では抵抗が大きく、図8で示す周波数範囲では円弧が閉じないほど抵抗は大きい。これに対して、硫黄置換により円弧の直径が極端小さくなることから、電池の内部抵抗の低下が認められる。しかし、過剰の置換により円弧の直径が大きくなっていることから、硫黄置換量が多くなると内部抵抗が増加することがわかる。
これらの結果から、過剰の置換は活物質の内部まで置換することになり電池の性能を劣化する可能性を示唆している。電解液または固体電解質界面における反応抵抗の低抵抗化を目的とする場合は、最表面層のアニオン置換が有効である。
本発明は、種々のリチウムイオン電池性能を向上させ、さらには固体電池にも応用可能なリチウム複合酸化物、これを用いた二次電池用正極活物質及び二次電池、リチウム複合酸化物の製造方法を提供できる。
1 正極
1a 集電体
1b 正極活物質
2 負極
2a 負極集電体
2b 負極活物質
3 非水溶媒電解液
4 正極ケース
5 負極ケース
6 ガスケット
7 セパレータ
10 コイン型電池

Claims (12)

  1. 酸化物結晶粒子と、前記酸化物結晶粒子の表面に複合アニオン化層を備えるスピネル構造のリチウム複合酸化物であって、
    化学組成を示す一般式が下記式(1)で示され、
    前記複合アニオン化層は、酸化物結晶粒子の結晶表面の終端酸素原子の少なくとも一部が、硫黄イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、フッ素イオン、窒素イオンからなる群より選択される1種以上のアニオンで置換された層であることを特徴とする、リチウム複合酸化物。
    LiNia−xMn2−a−yx+y4−b・・・(1)
    [一般式(1)中、0<a≦0.6、0≦b≦1、0≦x≦0.1、0≦y≦0.1、a−x>0.4、2−a−y>1.4である;Mは、Ti、V、Cr、Fe、Co、Cu、Zu、Snからなる群より選択される1種以上の金属元素である;Aは硫黄イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、フッ素イオン、窒素イオンからなる群より選択される1種以上のアニオンである。]
  2. 前記アニオンが硫黄イオンである、請求項1に記載のリチウム複合酸化物。
  3. 請求項1又は2に記載のリチウム複合酸化物を含む二次電池用電極材料。
  4. 請求項3に記載の二次電池用電極材料を備える二次電池。
  5. 請求項1又は2に記載のリチウム複合酸化物の製造方法であって、
    リチウム化合物と、少なくともマンガン及びニッケルを含む前駆体と、反応促進剤とを、混合し、焼成して酸化物結晶粒子を得る工程と、
    得られた酸化物結晶粒子の結晶表面の終端酸素原子の少なくとも一部を、硫黄イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、フッ素イオン、窒素イオンからなる群より選択される1種以上のアニオンで置換して複合アニオン化層を形成する工程と、を備えるリチウム複合酸化物の製造方法。
  6. 前記アニオンがフッ素イオンである、請求項1に記載のリチウム複合酸化物。
  7. 前記一般式(1)中、bが0より大きい、請求項1に記載のリチウム複合酸化物。
  8. 上記式(1)において、2−a−y≧1.45である、請求項1に記載のリチウム複合酸化物。
  9. LiNi0.5Mn1.53.850.15、LiNi0.5Mn1.53.9 0.1、LiNi0.5Mn1.53.920.08、LiNi0.5Mn1.5 3.890.11、及び、LiNi0.5Mn1.53.780.22からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載のリチウム複合酸化物。
  10. 前記酸化物結晶粒子を得る工程と、前記複合アニオン化層を形成する工程との間に、カーボンナノ粒子を形成する工程を含み、
    前記カーボンナノ粒子が、前記複合アニオン化層を形成する工程で、前記酸化物結晶粒子に複合アニオン化層を形成するために使用される、
    請求項5に記載のリチウム複合酸化物の製造方法。
  11. 前記カーボンナノ粒子が、硫黄又はフッ素を含むグラファイト構造を有する、
    請求項10に記載のリチウム複合酸化物の製造方法。
  12. 前記カーボンナノ粒子が、ベンゼン、トルエン、ピリジン、チオフェン、フルオロベンゼンからなる群から選択される少なくとも1つの化合物から、ソリューションプラズマ反応によって形成される、請求項10に記載のリチウム複合酸化物の製造方法。
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