JPWO2013035737A1 - 新規ビフィズス菌及びその利用 - Google Patents

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Abstract

腸管に留まり、腸管内で増殖可能なビフィドバクテリウム属細菌を提供する。腸管細胞への接着能及びムチン資化能を有することを特徴とするビフィドバクテリウム属細菌。

Description

本発明は、腸管に留まり、かつ腸管で増殖できる新規なビフィドバクテリウム属細菌、及びその利用に関する。
ビフィドバクテリウム属細菌はヒトの腸内菌叢における主要細菌で、便秘や下痢の改善等の整腸作用、血清コレステロール上昇抑制作用、免疫賦活作用等、ヒトの健康に対して有益な作用を有することが知られており、各種発酵飲食品や生菌製剤等の形態で多数の製品が販売されている。
ビフィドバクテリウム属細菌は主として生菌の状態で上記の効果を発揮すると考えられており、発酵飲食品や生菌製剤中のビフィドバクテリウム属細菌の生残性を高め、より多くの生菌を摂取するための工夫が種々なされてきた。しかし、ビフィドバクテリウム属細菌が単に腸管を通過するだけでは、上記の効果を十分に発揮できない可能性も指摘されており、ビフィドバクテリウム属細菌が腸管に留まり、かつ、腸管内で増殖することが重要であると考えられている。
腸管に留まるためには、腸管への接着能を有することが必要とされる。腸管への接着能を有する細菌として乳酸菌ではラクトバチルスGG(ATCC 53103)、ラクトバチルス・パラカゼイ KW3110等(特許文献1,2)が報告されている。また、報告例は少ないものの、ビフィドバクテリウム属細菌としてはビフィドバクテリウム・ビフィダム WB1003(特許文献3)が報告されている。
特表平11−507934号公報 特開2005−139160号公報 WO99/64023号国際公開パンフレット
しかしながら、前記の乳酸菌やビフィドバクテリウム属細菌は、腸管に接着はするが、腸管内で増殖しなければその効果を十分に発揮することは不可能である。
従って本発明は、腸管に留まるだけでなく腸管内で増殖することができるビフィドバクテリウム属細菌を提供することを課題とする。
そこで本発明者らは、上記課題を解決するため、腸管細胞への接着能に加えて、腸管粘膜の主成分であるムチン資化能を有することを指標として、数多くのビフィドバクテリウム属細菌をスクリーニングしてきた結果、腸管細胞への接着能及びムチン資化能を有し、腸管に留まるだけでなく腸管内で増殖可能な新規なビフィドバクテリウム属細菌を見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、腸管細胞への接着能及びムチン資化能を有することを特徴とするビフィドバクテリウム属細菌を提供するものである。
また、本発明は、前記ビフィドバクテリウム属細菌を含有することを特徴とする飲食品、特に発酵乳飲食品を提供するものである。
さらに、本発明は、腸管細胞への接着能及びムチン資化能を指標としてビフィドバクテリウム属細菌を選抜することを特徴とする腸管に留まり、腸管内で増殖可能なビフィドバクテリウム属細菌のスクリーニング方法を提供するものである。
本発明のビフィドバクテリウム属細菌は、腸管細胞への接着能及びムチン資化能を有するため、腸管に留まり、かつ、腸管内で増殖することができ、腸管内においてビフィドバクテリウム属細菌が有する生理効果を効果的かつ持続的に発揮することができる。また、これらの生理効果を有する飲食品、特に発酵乳飲食品の製造に好適に利用することができる。
HT−29細胞への接着能を有するB.ビフィダム YIT 11926の接着画像を示す図である(図中、黄色の蛍光を発色している箇所がHT−29細胞に接着したYIT 11926を示す)。 HT−29細胞への接着能を有するB.ビフィダム YIT 11939の接着画像を示す図である(図中、黄色の蛍光を発色している箇所がHT−29細胞に接着したYIT 11939を示す)。 HT−29細胞への接着能を有さないB.ビフィダム Y11077の接着画像を示す図である(図中、黄色の蛍光を発色している箇所がHT−29細胞に接着したY11077を示す)。 HT−29細胞への接着能を有さないB.ビフィダム YIT 11082の接着画像を示す図である(図中、黄色の蛍光を発色している箇所がHT−29細胞に接着したYIT 11082を示す)。
本発明のビフィドバクテリウム属細菌は、腸管細胞への接着能及びムチン資化能を有し、腸管細胞への接着能を有することで腸管に留まることができ、ムチン資化能を有することで腸管内で増殖することができる。
本発明において、「腸管細胞への接着能を有する」とは、対象となるビフィドバクテリウム属細菌が腸管に留まることができる程度に腸管細胞に接着できる能力を有することを意味し、接着部位や接着の様式等は問わない。具体的には、ヒト大腸がん由来細胞であるHT−29細胞に対し、十分量(HT−29細胞1個当たり50個以上)のビフィドバクテリウム属細菌を2時間作用させたとき、HT−29細胞1個当たり1個以上のビフィドバクテリウム属細菌が接着することを言う。HT−29細胞1個当たり2個以上の細菌が接着することが好ましく、3個以上の細菌が接着することがより好ましく、3〜10個の細菌が接着することがさらに好ましい。接着する細菌数が多いほど、より効率的に腸管に留まることができるため、本発明のビフィドバクテリウム属細菌として好適に用いることができる。
また、「ムチン資化能を有する」とは、対象となるビフィドバクテリウム属細菌を、ムチンのみを糖源とする培地で48時間培養したときの濁度(クレット値、Klett−Summerson比色計、No.66フィルター)が50以上であることを言う。クレット値は75以上が好ましく、100以上がより好ましく、100〜200がさらに好ましい。クレット値が高いほど、腸管内での増殖能が高いため、本発明のビフィドバクテリウム属細菌として好適に用いることができる。
ムチン資化能の試験に用いられる培養培地としては、糖源を除いた培地にムチンを添加したものを用いればよく、糖源を除いた培地の組成は、Rogosa培地、M−ILS培地、PY培地、GAM培地、TOSプロピオン酸培地等の組成とすることができる。添加するムチンはヒト腸管由来ムチンが好ましいが、ブタ胃ムチンで代用できる。ムチンの添加量は培地中に0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましく、0.5〜2質量%がさらに好ましい。なお、糖源が存在しなくても増殖する菌がまれに存在するため、対照として糖源を除いた培地で対象となるビフィドバクテリウム属細菌を培養し、クレット値を確認しておくことが望ましい。糖源を除いた培地でのクレット値が10以上の場合は、ムチンのみを糖源とする培地のクレット値から糖源を除いた培地でのクレット値を差し引き、上記の判定基準に当てはめればよい。
本発明の対象となるビフィドバクテリウム属細菌の種類は特に限定されないが、例えば、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(B.longum)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(B.bifidum)、ビフィドバクテリウム・アニマーリス(B.animalis)、ビフィドバクテリウム・ズイス(B.suis)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(B.infantis)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(B.adolescentis)、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム(B.catenulatum)、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム(B.pseudocatenulatum)、ビフィドバクテリウム・ラクチス(B.lactis)、ビフィドバクテリウム・グロボサム(B.globosum)、ビフィドバクテリウム・アンギュラータム(B.angulatum)、ビフィドバクテリウム・デンティウム(B.dentium)等が挙げられる。中でも、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ビフィダムは以前から乳製品に数多く使用されている安全性が高い菌種で、種々の生理効果も報告されていることから好ましく、特にビフィドバクテリウム・ビフィダムが好ましい。
本発明では、後述の実施例に示すように、HT−29細胞1個当たりの接着菌数が1個以上、クレット値が50以上であるビフィドバクテリウム属細菌を選抜した。一般的なビフィドバクテリウム属細菌では、HT−29細胞1個当たりの接着菌数が0.1〜0.6個、クレット値が10〜40程度であるが、上記の判定基準で選抜された本発明のビフィドバクテリウム属細菌は、腸管細胞への接着能及びムチン資化能を有するため、腸管に留まり、腸管内で増殖することができ、ビフィドバクテリウム属細菌が有する生理効果を効果的かつ持続的に発揮することができる。なお、本発明のビフィドバクテリウム属細菌は、胆汁酸含有培地でも増殖し、優れた胆汁酸耐性を有し、経口で生きた状態で腸内に到達できる。
このようにして選抜した新規の菌株を、ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 11926(FERM BP−11504)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 11939(FERM BP−11505)として、平成23年9月6日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託した。これらの菌株は、以下のような菌学的性質を有する。
(1)ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 11926
本菌は健康成人より分離され、科学的性質は、グラム陽性多形性桿菌、偏性嫌気性菌、至適生育温度37℃である。YIT 11926より得られた16S rDNA塩基配列をデータベースで検索して菌種を同定した。ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 11926の16S rDNA塩基配列は、ビフィドバクテリウム・ビフィダムDSM20456(accession No.M38018)と99.5%の相同性を示し、ビフィドバクテリウム・ビフィダムと同定された。
(2)ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 11939
本菌は健康成人より分離され、科学的性質は、グラム陽性多形性桿菌、偏性嫌気性菌、至適生育温度37℃である。YIT 11939より得られた16S rDNA塩基配列をデータベースで検索して菌種を同定した。ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 11939の16S rDNA塩基配列は、ビフィドバクテリウム・ビフィダムDSM20456(accession No.M38018)と99.6%の相同性を示し、ビフィドバクテリウム・ビフィダムと同定された。
本発明のビフィドバクテリウム属細菌の利用形態は特に制限されず、凍結乾燥したものであってもよく、あるいはこれら細菌を含む培養物として利用することもできるが、いずれの形態であっても、細菌が生菌の状態であることが好ましい。
本発明のビフィドバクテリウム属細菌は、固体又は液体の医薬用無毒性担体と混合して、慣用の医薬品製剤の形態で利用することもできる。このような製剤としては、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤、凍結乾燥製剤等が挙げられる。これらの製剤は製剤上の常套手段により調製することができる。上記の医薬用無毒性担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、ゼラチン、アルブミン、水、生理食塩水等が挙げられる。また、必要に応じて、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤、賦形剤等の慣用の添加剤を適宜添加することもできる。
本発明のビフィドバクテリウム属細菌は、上記のような製剤とするだけでなく、飲食品に配合して使用することもできる。飲食品に配合する場合は、そのまま、または種々の栄養成分と共に含有せしめればよい。具体的に本発明のビフィドバクテリウム属細菌を飲食品に配合する場合は、飲食品として使用可能な添加剤を適宜使用し、慣用の手段を用いて食用に適した形態、すなわち、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ペースト等に成形してもよく、また種々の食品、例えば、ハム、ソーセージ等の食肉加工食品、かまぼこ、ちくわ等の水産加工食品、パン、菓子、バター、粉乳に添加して使用したり、水、果汁、牛乳、清涼飲料、茶飲料等の飲料に添加して使用してもよい。なお、飲食品には、動物の飼料も含まれる。
本発明のビフィドバクテリウム属細菌は、ビフィドバクテリウム属細菌が有する整腸作用等の生理効果を効果的かつ持続的に発揮させることができる。特に、腸管に留まり、腸管内で増殖することができることから、ビフィドバクテリウム属細菌を継続的に摂取しなくても、例えば、隔月、隔週、隔日のように摂取間隔を開けた場合や摂取期間が短くても生理効果が期待できるため、経済的なメリットも大きい。
さらに飲食品としては、本発明のビフィドバクテリウム属細菌を生菌の状態で含有する発酵乳飲食品、発酵豆乳、発酵果汁、発酵野菜汁等の発酵飲食品が好適に用いられ、特に発酵乳飲食品の利用が好ましい。発酵乳飲食品の製造は常法に従えばよく、例えば発酵乳を製造する場合には、殺菌した乳培地に本発明のビフィドバクテリウム属細菌を単独又は他の微生物と同時に接種培養し、これを均質化処理して発酵乳ベースを得る。次に別途調製したシロップ溶液を添加混合し、ホモゲナイザー等で均質化し、更にフレーバーを添加して最終製品に仕上げればよい。このようにして得られる発酵乳飲食品は、シロップ(甘味料)を含有しないプレーンタイプ、ソフトタイプ、フルーツフレーバータイプ、固形状、液状等のいずれの形態の製品とすることもできる。
かかる発酵乳飲食品にはシロップ等の甘味料、乳化剤、増粘(安定)剤、各種ビタミン等の任意成分を配合することができる。シロップとしては、グルコース、ショ糖、フルクトース、果糖ブドウ糖液糖、ブドウ糖果糖液糖、パラチノース、トレハロース、ラクトース、キシロース、麦芽糖、蜂蜜、糖蜜等の糖類、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット、還元水飴、還元麦芽糖水飴等の糖アルコール、アスパルテーム、ソーマチン、スクラロース、アセスルファムK、ステビア等の高甘味度甘味料が挙げられる。また、発酵乳飲食品には、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤、寒天、ゼラチン、カラギーナン、グァーガム、キサンタンガム、ペクチン、ローカストビーンガム、ジェランガム、カルボキシメチルセルロース、大豆多糖類、アルギン酸プロピレングリコール等の増粘(安定)剤を配合してもよい。この他にも、ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンE類等のビタミン類、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、マンガン等のミネラル分、クエン酸、乳酸、酢酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸等の酸味料、クリーム、バター、サワークリーム等の乳脂肪、ヨーグルト系、ベリー系、オレンジ系、花梨系、シソ系、シトラス系、アップル系、ミント系、グレープ系、アプリコット系、ペア、カスタードクリーム、ピーチ、メロン、バナナ、トロピカル、ハーブ系、紅茶、コーヒー系等のフレーバー類、ハーブエキス、黒糖エキス等を配合することも可能である。
発酵乳飲食品の製造には、本発明のビフィドバクテリウム属細菌以外の微生物を併用することも可能である。このような微生物としては例えば、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(B.longum)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(B.bifidum)、ビフィドバクテリウム・アニマーリス(B.animalis)、ビフィドバクテリウム・ズイス(B.suis)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(B.infantis)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(B.adolescentis)、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム(B.catenulatum)、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム(B.pseudocatenulatum)、ビフィドバクテリウム・ラクチス(B.lactis)、ビフィドバクテリウム・グロボサム(B.globosum)、ビフィドバクテリウム・アンギュラータム(B.angulatum)、ビフィドバクテリウム・デンティウム(B.dentium)等の本発明のビフィドバクテリウム属細菌以外のビフィドバクテリウム属細菌、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・アシドフィルス(L.acidophilus)、ラクトバチルス・プランタラム(L.plantarum)、ラクトバチルス・ブヒネリ(L.buchneri)、ラクトバチルス・ガリナラム(L.gallinarum)、ラクトバチルス・アミロボラス(L.amylovorus)、ラクトバチルス・ブレビス(L.brevis)、ラクトバチルス・ラムノーザス(L.rhamnosus)、ラクトバチルス・ケフィア(L.kefir)、ラクトバチルス・パラカゼイ(L.paracasei)、ラクトバチルス・クリスパタス(L.crispatus)、ラクトバチルス・ゼアエ(L.zeae)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(L.helveticus)、ラクトバチルス・サリバリウス(L.salivalius)、ラクトバチルス・ガセリ(L.gasseri)、ラクトバチルス・ファーメンタム(L.fermentum)、ラクトバチルス・ロイテリ(L.reuteri)、ラクトバチルス・デルブルッキィ サブスピーシーズ.ブルガリカス(L.delbrueckii subsp.bulgaricus)、ラクトバチルス・デルブルッキィ サブスピーシーズ.デルブルッキィ(L.delbrueckii subsp.delbrueckii)、ラクトバチルス・ジョンソニー(L.johnsonii)等のラクトバチルス属細菌、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)等のストレプトコッカス属細菌、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.ラクチス(Lactococcus lactis subsp.lactis)、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.クレモリス(Lactococcus lactis subsp.cremoris)等のラクトコッカス属細菌、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(E.faecium)等のエンテロコッカス属細菌、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属細菌、サッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyses cerevisiae)、トルラスポラ・デルブルッキィ(Torulaspora delbrueckii)、キャンジダ・ケフィア(Candida kefyr)等のサッカロマイセス属、トルラスポラ属、キャンジダ属等に属する酵母が挙げられる。本発明のビフィドバクテリウム属細菌と共にラクトバチルス属細菌、ストレプトコッカス属細菌、ラクトコッカス属細菌から選ばれる1種以上を併用して発酵乳飲食品を製造すると高い嗜好性が得られ、飲食が容易となるため好ましい。
本発明のビフィドバクテリウム属細菌を使用する場合の投与量に厳格な制限はないが、その好適な投与量は生菌数として1日当たり10cfu〜1013cfuであり、特に10cfu〜1012cfuが好ましい。また、継続的な投与ではなく、例えば、隔月、隔週、隔日のように投与間隔を開けた場合や短い摂取期間でもその生理効果が期待できる。
腸管細胞への接着能及びムチン資化能を指標とすることで、腸管に留まり、腸管内で増殖可能なビフィドバクテリウム属細菌をスクリーニングすることができる。すなわち、多くの候補菌株の中から、前述の腸管細胞への接着能に関する判定基準、ムチン資化能に関する判定基準を用いてビフィドバクテリウム属細菌を選抜することで、腸管細胞への接着能及びムチン資化能を有し、腸管に留まり、腸管内で増殖可能なビフィドバクテリウム属細菌を得ることができる。
また、腸管細胞への接着能のみを有し、腸管に留まるビフィドバクテリウム属細菌や、ムチン資化能のみを有し、腸管内で増殖可能なビフィドバクテリウム属細菌も前述の判定基準を用いて得ることができる。すなわち、腸管細胞への接着能が基準値以上、ムチン資化能が基準値未満の菌株を選抜すれば、腸管細胞への接着能のみを有し、腸管に留まるビフィドバクテリウム属細菌を得ることができ、ムチン資化能が基準値以上、腸管細胞への接着能が基準値未満の菌株を選抜すれば、ムチン資化能のみを有し、腸管内で増殖可能なビフィドバクテリウム属細菌を得ることができる。
さらに、ビフィドバクテリウム属細菌以外の細菌についても、前述の判定基準を用いることで、当該細菌が腸管細胞への接着能やムチン資化能を有するか否か判定することができる。
以下、実施例を挙げて本発明の内容をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制約されるものではない。
[実施例1]腸管細胞への接着能及びムチン資化能を有するビフィドバクテリウム属細菌の選抜
(1)ムチン資化能
B.adolescentisB.bifidumB.breveB.catenulatumB.longumB.pseudocatenulatumB.angulatumB.animalisB.infantisB.globosumB.lactisB.dentiumL.rhamnosusの13菌種の試験菌株を使用した。
ビフィズス菌は0.7%グルコース添加GAM嫌気液体培地に凍結保存した試験菌液を1%接種し、24時間前培養した。乳酸菌(L.rhamnosus)はMRS液体培地に凍結保存した試験菌液を1%接種し、24時間前培養した。M−ILSの乳糖をムチン(和光、ブタ胃製)に置換した培地(ムチン添加量は1%)に前培養菌を1%接種し(初発菌数は10/ml・培地となる)、48時間後にクレット値を測定した。また糖質を加えないM−ILS培地でも48時間培養を行い、クレット値を測定した。
(2)腸管細胞への接着能
(1)と同様の13菌種の試験菌株を使用した。
ヒト大腸がん由来の細胞HT−29は10%FBS添加RPMI−1640培地で培養し、使用した。
ビフィズス菌は0.7%グルコース添加GAM嫌気液体培地で、乳酸菌(L.rhamnosus)はMRS液体培地で24時間培養し、PBSで2回洗浄したのち、10%FBS添加RPMI−1640培地にDAPI染色法による菌数が5×10/ml・培地となるように懸濁した。
HT−29をチャンバー付スライドグラスにコンフルエントになるまで培養後、10%FBS添加RPMI−1640に懸濁した菌懸濁液を400μl加えた(HT−29細胞1個当たりの試験菌株菌数は300個となる)。37℃、5%CO下で2時間インキュベートした後、10%FBS添加RPMI−1640培地で2回、PBSで1回洗浄し、非接着の細菌を取り除き、2%PFAを加えて4℃で一晩固定した。96%エタノール処理後、ビフィズス菌に対しては蛍光色素Cy5で標識したビフィドバクテリウム特異的プローブBif153(腸内細菌学雑誌 18:141−146、2004)、乳酸菌に対しては蛍光色素Cy5で標識した乳酸菌特異的プローブLab158(Microb.Ecol.Health Dis.11:3−12、1999)を用いてハイブリダイゼーションし、DAPI染色剤の添加された封入剤で封入し蛍光顕微鏡システムにて蛍光画像を取得し、画像処理ソフトを用いてHT−29細胞1個当たりの各試験菌株の接着菌数を定量化した。
(3)結果
表1及び表2に各試験菌株のムチン資化能と接着能を示した。図1、2にHT−29細胞への接着能を有する菌株の画像、図3、4に接着能のない菌株の画像を示した。
ビフィズス菌12菌種のムチン資化能、腸管細胞への接着能を調べたところ、選抜基準(HT−29細胞1個当たりの接着菌数が1個以上かつクレット値が50以上)を満たす新規の2菌株(YIT 11926、YIT 11939)が見出された。
上記の2菌株以外にムチン資化能を有するビフィズス菌の菌株が3株(Y11077、YIT11082、A−43)あったが、これらの3菌株はいずれも腸管細胞への接着能が低かった。また、腸管細胞への接着能は、YIT 11926、YIT 11939以外にYIT10155、31−2、YIT 4044、YIT 4018が有していたが、これらの4菌株はいずれもムチン資化能が低かった。ムチン資化能、腸管細胞への接着能は、同一の種においても菌株毎のバラツキが非常に大きく、同一の種が有する特有の傾向は見られなかった。
L.ラムノーサス GGは腸管への接着能を有する乳酸菌として知られているが(特許文献1)、今回の試験系でもYIT 11939と同等の腸管細胞への接着能を示した。
一方、GG株のムチン資化能について、糖質なしの培地でのクレット値が76を示したことから、GG株は糖源が存在しなくても増殖できる菌と判断され、ムチン添加培地でのクレット値(97)から上記の値(76)を差し引いた値(21)で判定すると、ムチン資化能を有しないと判断された。
上記以外に、多数のビフィズス菌を用いて、ムチン資化能(合計340株)、腸管細胞への接着能(合計60株)を調べたが、上記の選抜基準を満たす菌株は、YIT 11926、YIT 11939以外には得られなかった。
また、一部のビフィズス菌については胆汁酸耐性も調べた。具体的に、GAM液体培地で嫌気的に定常期まで培養した菌液30μlを、0.2%の胆汁酸を添加した3mlのGAM液体培地に接種して37℃で嫌気的に培養し、24時間後に菌体濁度(クレット値)をKlett−Summerson比色計(No.66フィルター)で測定した。胆汁酸含有培地での増殖性を示すクレット値が高いことは、消化管内での生存率、増殖率が高いことを示し、胆汁酸含有培地での増殖性がクレット値で100以上であるビフィズス菌は、多数の菌が生きた状態で腸内に到達することができる。
YIT 11926のクレット値は125、YIT 11939は135であり、B.bifidumのタイプストレインであるYIT 4039は、胆汁酸添加GAM培地で殆ど生育が認められなかった。一般的なビフィズス菌の胆汁酸含有培地での増殖性は、クレット値で0〜数十程度であることから、YIT 11926、YIT 11939は高い胆汁酸耐性を有していることが明らかになった。
[実施例2]発酵乳飲食品の製造
15%脱脂乳に3%グルコースを添加して殺菌し、ビフィドバクテリウム・ビフィダムYIT 11939を1%接種し、37℃で24時間培養してヨーグルトベース210gを得た。一方、砂糖97g、乳化鉄0.2gを水に溶解し、全量を790gとして殺菌し、シロップを得た。上記のようにして得られたヨーグルトベースとシロップを混合し、香料を1g添加した後、15Mpaで均質化して容器に充填して発酵乳飲料を得た。得られた発酵乳飲料は外観・風味ともに良好で、保存安定性も良好であった。
[実施例3]発酵乳飲食品の製造
全粉乳124gを水506gに溶解し、135℃で3秒間殺菌した後、ビフィドバクテリウム・ブレーベを0.5%、ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 11926を1%、ラクトバチルス・アシドフィルスを0.001%接種し、37℃でpH5.3まで培養し、15MPaで均質化して、菌液630gを得た。一方、パラチノース98g、ニンジンジュース8g、DHA含有油2.5g、乳化カルシルム7g、ラクトフェリン0.1g、ビタミンD0.02g、香料1gを水に溶解し、水を加えて全量を370gとした後、120℃で3秒間殺菌してシロップ液を得た。菌液、シロップ液を混合し、テトラブリック容器に充填して、pH;5.6、酸度;3.4、無脂乳固形分;8.7%、乳脂肪分;3.2%の発酵乳を得た。得られた発酵乳飲料は外観・風味ともに良好で、保存安定性も良好であった。
[実施例4]錠剤の製造
下記の処方で各種成分を混合して造粒・乾燥・整粒した後に、打錠して錠剤を製造した。
(処方) (mg)
本発明の細菌菌体の乾燥物1) 20
微結晶セルロース 100
乳糖 80
ステアリン酸マグネシウム 0.5
メチルセルロース 12
1)ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 11926の生菌体を凍結乾燥して製造した。
[実施例5]清涼飲料の製造
下記処方により、常法に従って各成分を配合し、均質化して清涼飲料を得た。得られた清涼飲料は褐色瓶に充填後、アルミキャップにて封印し、加熱処理を施した。得られた清涼飲料は外観・風味ともに良好で、保存安定性も良好であった。
(処方) (g)
本発明の細菌菌体の乾燥物1)
香料 0.8
水 100
還元澱粉糖化物 24
果糖 18
1)ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 11939の生菌体を凍結乾燥して製造した。

Claims (9)

  1. 腸管細胞への接着能及びムチン資化能を有することを特徴とするビフィドバクテリウム属細菌。
  2. 腸管細胞への接着能が、HT−29細胞1個当たりの接着菌数が1個以上である請求項1記載のビフィドバクテリウム属細菌。
  3. ムチン資化能が、ムチンのみを糖源とする培地で48時間培養したときの濁度(クレット値、Klertt−Summerson比色計、No.66フィルター)が50以上である請求項1又は2記載のビフィドバクテリウム属細菌。
  4. ビフィドバクテリウム・ビフィダムである請求項1〜3のいずれか1項記載のビフィドバクテリウム属細菌。
  5. ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 11926(FERM BP−11504)又はビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 11939(FERM BP−11505)である請求項4記載のビフィドバクテリウム属細菌。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項記載のビフィドバクテリウム属細菌を含有することを特徴とする飲食品。
  7. 発酵乳飲食品である請求項6記載の飲食品。
  8. 更に、甘味料を含有するものである請求項6又は7記載の飲食品。
  9. 腸管細胞への接着能及びムチン資化能を指標としてビフィドバクテリウム属細菌を選抜することを特徴とする腸管に留まり、腸管内で増殖可能なビフィドバクテリウム属細菌のスクリーニング方法。
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